説明

古紙再生装置の抄紙装置

【課題】小規模店舗等の室内に設置可能で、環境に優しくかつランニングコストも低く、高い機密性を保持できる古紙再生装置の抄紙装置を提供する。
【解決手段】抄紙装置3は、前工程のパルプ製造部2から送られてくるスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙とする抄紙工程部50と、この抄紙工程部50で抄紙形成された湿紙RP0を乾燥させて再生紙RPとする乾燥工程部52と、この乾燥工程部52で乾燥処理された乾紙RPをカレンダ処理するカレンダロール部53とを備えてなり、このカレンダロール部53は、乾燥工程部52の下流側端位置に隣接して設けられて、乾燥工程部52から排出される乾紙RPを表裏両側から転動加圧してカレンダ処理する構成とされている。これにより、表裏両面の平滑度が均一で良好な再生紙RPを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙再生装置の抄紙装置に関し、さらに詳細には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置において、スラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
官公庁や一般企業等の各種事業所の日常業務はもちろんのこと、一般家庭の日常生活においても、使用済みや不要となった各種書類いわゆる古紙が発生している。これらの古紙は、ゴミとして廃棄されたり、焼却されたりして、廃棄処分されることになる。
【0003】
一方、限りある地球資源の有効利用という機運の世界的な高まりのなかで、近時、廃棄処分されてきた古紙を、廃棄処分することなく再生利用するための技術が種々開発されている。
【0004】
これらの古紙再生技術は、ほとんどが製紙業界において採用実施されており、その古紙再生設備には、通常の製紙設備同様、再生紙の高速大量生産と高品質化を目的として、広大な敷地、莫大な投資、および紙抄きに使われる大量の水や薬品などが必要とされる。
【0005】
また、古紙再生にあっては多くの人手による古紙回収作業が必要であり、しかも、この古紙回収には、多人数による異物混入、古紙再生紙への知識不足による分別不良、忌避品の除去不足などの問題があり、せっかく古紙を回収しても、これらの古紙を100%再生紙として再生するには、専門業者による再度の選別や洗浄等の作業を余儀なくされている。さらに、極秘文書などの古紙は、機密上の問題から古紙回収には簡単に出されることはなく、焼却処分されてしまうため、リサイクル化が進んでいない。
【0006】
これらの古紙回収の問題を解決するには、古紙発生元において自前で再生利用することができるような技術の開発が有効であり、この観点から特許文献1に記載されるような装置が開発提案されている。
【0007】
この装置は、少量の水を加えながら古紙を少しずつ引きちぎり細かく裁断する方式の湿式シュレッダであり、このシュレッダにより裁断処理された裁断屑は社外の古紙再生工場等へ送られて、再生紙の原料として再利用されている。
【0008】
この湿式シュレッダによる裁断屑はパルプ化されて紙片の形態を留めていないので、高い機密性を保持することができ、極秘文書などの古紙のリサイクル化を促進するという効果が期待できる。
【0009】
しかしながら、この湿式シュレッダは、かなり大型の装置で、大きな設置スペースを必要とすることから、多量の古紙が発生する大きな事業所等においてのみ使用可能なものであり、大きな設置スペースがなく、発生する古紙も少量であるような小規模店舗や個人事務所、あるいは一般家庭には不向きないしは使用不可能であった。しかも、裁断処理された裁断屑は再生紙の原料として再利用されるといっても、古紙再生工場等の大規模工場でのみ処理可能なもので、紙再生のためのコストも高くつき、不経済であった。
【0010】
【特許文献1】特開平6−134331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現する抄紙装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的とするところは、上記抄紙装置を備えた古紙再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明の抄紙装置は、古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置を構成し、前工程のパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙装置であって、上記パルプ製造部から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙工程部と、この抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥させて乾紙とする乾燥工程部と、この乾燥工程部で乾燥処理された乾紙をカレンダ処理するカレンダロール部とを備えてなり、このカレンダロール部は、上記乾燥工程部の下流側端位置に隣接して設けられて、上記乾燥工程部から排出される上記乾紙を表裏両側から転動加圧してカレンダ処理する構成とされていることを特徴とする。
【0014】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記カレンダロール部は、上記乾紙を上下から挟圧する上下一対のカレンダロールを備え、これらカレンダロールのうち、上側のカレンダロールは高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされるとともに、下側のカレンダロールは、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、弾性材料からなる弾性層が形成される。
【0015】
(2)上記一対のカレンダロールの少なくとも一方は、加熱手段を備えた熱カレンダロールの形態とされる。
【0016】
(3)上記カレンダロール部の一対のカレンダロールの回転速度は、上記乾燥工程部における乾紙の搬送速度と同期して制御されて、平滑で所望の紙質の再生紙が得られる構成とされる。
【0017】
(4)上記抄紙工程部は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する抄紙コンベアを備え、この抄紙コンベアは、上記パルプ懸濁液を濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルトがその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされ、上記網状ベルトにおける抄紙工程長さは、上記什器サイズの装置ケース内における上記網状ベルトの直線状走行方向長さの範囲内に設定される。
【0018】
(5)上記網状ベルトの抄紙工程長さは、その抄き網構造の濾過脱水率および網状ベルトの走行速度との関係で、上記パルプ懸濁液が適正な坪量に抄かれるのに十分であるとともに、上記網状ベルトを備える上記抄紙コンベアが什器サイズの装置ケース内に収容し得るように設定される.
【0019】
(6)上記網状ベルトは、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされる.
【0020】
(7)上記抄紙コンベアは、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルトと、この網状ベルトを走行駆動する駆動モータとを備えてなる.
【0021】
(8)上記抄紙工程部は、上記抄紙コンベアの抄紙工程開始端位置に設けられて、上記パルプ製造装置からの上記パルプ懸濁液を上記抄紙コンベアに供給するパルプ供給部を備え、このパルプ供給部により、上記パルプ懸濁液が上記抄紙コンベアの網状ベルト上面に均一に広がり供給される構成とされる。
【0022】
(9)上記乾燥工程部は、上記抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を受け取り搬送する無端ベルトの形態とされた平滑面ベルトと、この平滑面ベルトを走行駆動する駆動モータとを備えてなり、上記平滑面ベルトは、上記抄紙工程部から送られる湿紙の表面を平滑化する平滑面を有する。
【0023】
(10)上記抄紙工程部および乾燥工程部の連係部に、上記湿紙を圧搾脱水する脱水ロール部を備える。
【0024】
(11)上記脱水ロール部は、上記抄紙工程部の網状ベルトおよび上記乾燥工程部の平滑面ベルトを上下両側から挟圧状に転動圧搾して、上記網状ベルト上の湿紙を圧搾脱水する構成とされる。
【0025】
(12)上記乾燥工程部は、上記平滑面ベルト上の湿紙を加熱乾燥する加熱乾燥工程部を備える。
【0026】
(13)上記抄紙工程部、脱水ロール部および乾燥工程部が共用の駆動源により駆動される構造とされる。
【0027】
また、本発明の古紙再生装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙工程部と、これらパルプ製造部および抄紙工程部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、上記抄紙工程部が上述した抄紙装置から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の抄紙装置によれば、前工程のパルプ製造部から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙工程部と、この抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥させて乾紙とする乾燥工程部と、この乾燥工程部で乾燥処理された乾紙をカレンダ処理するカレンダロール部とを備えてなり、このカレンダロール部は、上記乾燥工程部の下流側端位置に隣接して設けられて、上記乾燥工程部から排出される上記乾紙を表裏両側から転動加圧してカレンダ処理する構成とされているから、上記乾燥工程部で得られた乾紙の表裏面にしわ等が発生あるいは残存して、その平滑度が悪かったり、あるいは表裏面の平滑度差が大きい場合でも、上記カレンダロール部により乾紙が上下から挟まれて、所定の紙厚が得られるまで均一にプレス加工(カレンダ処理)されて、上記表裏両面に良好な平滑度が得られる。
【0029】
また、上記抄紙装置を抄紙部として備える古紙再生装置にあっては、以下に列挙するような優れた特有の効果が得られ、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などにも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる古紙再生装置を提供することができる。
【0030】
(1)什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部(上記抄紙装置)を備えてなる小型簡素な構造の古紙再生装置が実現し、これにより、古紙を廃棄処分することなく、古紙発生元において自前で再生利用することができ、古紙の廃棄を軽減して、ゴミ問題解決に役立つばかりか、限りある資源を有効利用することができる。
【0031】
特に、この種の古紙は機密上の問題からリサイクル化が進んでおらず、上記のように古紙発生元において自前で再生利用することができることにより、資源有効利用の効果は顕著である。
【0032】
(2)また、古紙発生場所に、製紙工場や古紙再生工場の大規模な設備と同様な機能を有するコンパクトな古紙再生設備が設置されることにより、小規模店舗や一般家庭などにおいても、連続して紙の循環使用を可能にすることができ、さらには、古紙の回収廃棄に要する輸送費や焼却費等の各種経費も不要となって、経済的である。
【0033】
(3)装置構造がコンパクトで、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などにも設置可能であり、この観点からも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【0034】
(4)古紙が発生する場所に配置されて、発生した古紙が離解処理されて古紙パルプとされるとともに、この古紙パルプが、上記抄紙部により抄紙されて再生紙とされ、これにより、上記古紙が、その発生場所内において再生紙として循環使用される構成とされていることにより、古紙に記載された文字や線図等の各種情報が古紙の発生場所外へ拡散することが全くなく、この点からも、機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができ、高い機密性を保持することができ、また資源の有効利用を図ることもできる。
【0035】
すなわち、本発明の抄紙装置を抄紙部として備える古紙再生装置を使用することにより、その使用に係る一定の系(例えば、学校、病院、市役所、法律事務所、特許事務所、一般家庭等)の外へ上記各種情報が拡散するおそれが全くなくなる。
【0036】
換言すれば、例えば従来周知のシュレッダの場合、古紙が裁断されて小片となり、そこに記載された文字や線図が判読不能となったとしても、裁断された紙片は焼却場等で廃棄処分されることになるため、上記系外への拡散を完全に防止することはできない。この点に関して、上記系外への拡散を防止する目的で、系内の倉庫に保管するという方法も考えられるが、反面、そのような保管場所の確保が必要となり、対象となる紙も一回の使用のみでは、資源の有効利用という観点から効率が悪い。
【0037】
これに対して、本発明の古紙再生装置によれば、古紙に記載される各種情報がその使用に係る系外へと拡散しまうことは全くなく、しかも、資源を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0039】
本発明に係る古紙再生装置が図1〜図9に示されており、この古紙再生装置1は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙UPを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙UPとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
【0040】
古紙再生装置1は、図9に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図1に示すように、パルプ製造部2、抄紙部3および制御部4を主要部として構成され、抄紙部3は、後述するように、抄紙工程部50、脱水ロール部51、乾燥工程部52およびカレンダロール部53を備える。これら装置構成部2〜4は、装置ケース5内に装置収容されてなるコンパクト設計とされるとともに、上記パルプ製造部2および抄紙部3の駆動源は、一般家庭用交流電源により駆動する電動駆動源とされている。
【0041】
装置ケース5は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース5は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、その底部には移動手段としてキャスタ6、6、…が設けられて、設置床面上を方向自在に移動可能とされている。また、装置ケース5の天板部には、古紙UPを投入するための投入口5aが設けられるとともに、側部には、再生紙RP、RP、…を受け取るための再生紙受取トレー7が取外し可能に設けられている。この再生紙受取トレー7には、装置ケース5の排出口5bが臨んで設けられており、この排出口5bから排出される再生紙RP、RP、…が順次積層状に受け取られる。
【0042】
パルプ製造部(パルプ製造装置)2は、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプを製造する工程部位で、古紙UPを攪拌破砕して離解する離解部10と、この離解部10で離解された古紙UPを叩解する叩解部11とからなり、図示の実施形態においては、これら離解部10および叩解部11が古紙パルプUPを所定時間循環させる循環式とされている。
【0043】
離解部10は、古紙UPを攪拌する攪拌装置12と、この攪拌装置12に水を供給する給水部13とを備えてなる。
【0044】
攪拌装置12は、攪拌槽15、攪拌インペラ16および駆動モータ17を備えてなる。攪拌槽15は、図2に示すように、その天井壁に、装置ケース5の外部に対して開閉可能な構造を有する投入口5aが設けられるとともに、その内部に、上記攪拌インペラ16が回転可能に設けられている。攪拌槽15の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙UPの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約1.5リットルの水を加えて、A4判のPPC(plain paper copier)古紙UPを8枚程度(約32g)一度に攪拌処理(バッチ処理)できる容積を有する攪拌槽15とされている。
【0045】
また、攪拌インペラ16は、攪拌槽15の傾斜した底面部位に設けられるとともに、駆動モータ17の回転軸17aに駆動連結されて、駆動モータ17により連続的にまたは間欠的に正逆回転駆動される。駆動モータ17としては具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ17が制御部4に電気的に接続されている。
【0046】
このように攪拌インペラ16が正逆回転されることにより、古紙UPがA4判の大きさのままで攪拌される場合でも、攪拌インペラ16の正回転後の逆回転による水の噴流作用により、古紙UPが有効に分散させられる結果、攪拌インペラ16に絡みつくのが有効に防止されて、これにより、古紙UP、UP、…の均一な離解・叩解が実現する。
【0047】
給水部13は、図1に示すように、白水回収槽20および給水ポンプ21を備えてなる。白水回収槽20は、後述するように、抄紙部3において濾過脱水される白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)を回収するもので、この白水回収槽20に回収された白水Wが、給水ポンプ21により、上記攪拌装置12の攪拌槽15に攪拌用の水として供給される。
【0048】
また、この給水部13は、後述するように、パルプ濃度調整部25の濃度調整用給水部としての機能も兼備し、この目的のため、白水回収槽20内の白水Wを濃度調整槽26に濃度調整用の水として供給する濃度調整用給水ポンプ27を備えている。28および29は、白水回収槽20内に設けられた下限水位用フロートスイッチと上限水位用フロートスイッチをそれぞれ示している。
【0049】
そして、攪拌装置12において、装置ケース5の投入開口つまり投入口5aから攪拌槽15内に投入された古紙UP、UP、…は、駆動モータ17による攪拌インペラ16の正転・逆転動作により、給水部13から供給された水Wの中で所定時間(図示の場合は3分〜5分間)だけ攪拌され、これにより、離解・叩解されて、古紙パルプUPPとなる。
【0050】
叩解部11は、少なくとも一台の叩解機を備え、図示の実施形態においては一台の叩解機30を備えてなる。
【0051】
叩解機30は、上記離解部10で離解された古紙UPを加圧叩解するとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類を磨砕微細化するものである。
【0052】
叩解機30は、図3に示すように、微小な叩解隙間をもって対向配置されるとともに、相対的に移動する複数(図示の場合は二つ)の叩解部材31、32を主要部として構成され、具体的には、離解部10の攪拌槽15に連通可能な叩解槽33と、この叩解槽33内に相対的に移動可能に設けられた上記叩解部材31、32と、これら叩解部材31、32を相対的に移動させる駆動源34とを備えてなる。
【0053】
図示の叩解機30においては、具体的には図示しないが、上記叩解部材31、32が相対的に回転する回円盤状の形態とされ、上側の叩解部材31が固定側とされるとともに、下側の叩解部材32が回転側とされてなる。
【0054】
叩解槽33は、上記一対の叩解部材31、32を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上側槽33aと下側槽33bが相互に螺合結合されてなる上下分割構造を備える。この叩解槽33は、上側槽33aの天部中央部に供給口35が開設されるとともに、下側槽33bの円筒側部に排出口36が開設されており、これら供給口35および排出口36は、それぞれ図示しない配管を介して、上記離解部10の攪拌槽15に連通可能に接続されている。なお、具体的には図示しないが、上記供給口35が上記攪拌槽15の底部位置に連通可能とされるとともに、上記排出口36が上記攪拌槽15の上部位置に連通可能とされている。
【0055】
上側の固定側叩解部材31は、上記上側槽33aの天部内側面に適宜の固定手段により固定的に設けられており、この固定側叩解部材31に対して、下側の回転側叩解部材32が微小な叩解隙間Aをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。
【0056】
この回転側叩解部材32は、回転基台38上に一体的に設けられるとともに、この回転基台38の回転支軸38aが、上記叩解槽33の底部の底部中央の開口37を介して、叩解槽33の外部へ臨み、回転駆動源である駆動モータ34の回転軸34aに直接取り付け固定されて、ダイレクトモータ構造とされている。この駆動モータ34としては具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ34が制御部4に電気的に接続されている。
【0057】
上記微小な叩解隙間Aを形成する両叩解部材31、32の対向面31a、32a同士は協働して叩解作用面を形成する。これら対向する叩解作用面31a、32aは、多数の砥粒が結合材により結合されてなる砥石面の形態とされ、また、両叩解作用面31a、32aは、図3に示すように、その径寸法が互いの対向方向へ連続的に大きくなるテーパ面形状とされて、その間に両円錐形状の叩解隙間Aが形成される。
【0058】
また、上記固定側叩解部材31の叩解作用面31aの中心部位には、叩解槽33の供給口35に同軸状に連通する入口39が形成されるとともに、両叩解部材31、32の叩解作用面31a、32aの外周縁部31b、32b間に形成される環状隙間40が叩解槽33の排出口36に連通する出口とされている。
【0059】
また、これに関連して、回転側叩解部材32の叩解作用面32aには、複数の案内リブ41、41、…が周方向へ等間隔をもって設けられるとともに、回転側叩解部材32を支持する回転基台38の外周には、複数のブレード42、42、…が周方向へ所定間隔をもって設けられている。
【0060】
回転側叩解部材32の回転により、上記複数の案内リブ41、41、…は、上記入口39から叩解隙間Aに流入する古紙パルプUPPを上記出口40へ案内する作用をなし、また、上記複数のブレード42、42、…は、この出口40から排出される古紙パルプUPPを、遠心力で上記叩解槽33の排出口36へ向けて押出すポンプ作用をなす。
【0061】
上記叩解隙間Aの間隙寸法は、0.05mm〜0.8mm程度に設定されている。なお、この叩解隙間Aの間隙寸法は、叩解槽33の上側槽33aと下側槽33bを相対的に回転操作して、それらの螺合部分を螺進退させることで、微調整可能とされている。このように、叩解隙間Aの間隙寸法が目的に応じて微調整可能とされることにより、上記叩解作用面31a、32aの協働作用には、装置機械構造の強度と駆動力に応じた高い圧力と摺動力が得られる。また、叩解隙間Aの間隙寸法を調整することにより、叩解部11の叩解速度(叩解時間)を適宜調整することも可能である。
【0062】
しかして、駆動モータ34により、回転側叩解部材32が固定側叩解部材31に対して回転駆動された状態において、上記離解部10の攪拌槽15から叩解槽33の供給口35へ供給される古紙パルプUPPは、上記入口39から叩解隙間Aに流入して、この叩解隙間Aを通過しながら、相対的に回転する叩解作用面31a、32aによる加圧叩解作用を受けるとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類が磨砕微細化され、この後、上記出口40から叩解槽33の排出口36を介して、再び上記攪拌槽15へ還流される(図3における矢符で示される流通経路を参照)。
【0063】
なお、上記叩解槽33の供給口35および排出口36は、開閉手段により開閉可能とされている。この開閉手段の具体的構造は図示しないが、例えば、従来公知の手動または自動の開閉弁が設けられてなる。これら開閉弁は、叩解部11が運転停止時には上記供給口35および排出口36を閉止して、攪拌装置12の攪拌槽15からの古紙UPや古紙パルプUPPの叩解槽33への流入を阻止する一方、叩解部11の運転時には供給口35および排出口36を開口して、攪拌槽15と叩解槽33との間での古紙パルプUPPの循環回流を許容する。
【0064】
この場合、離解部10が叩解部11と同時に駆動していると、叩解槽33は、離解部10の攪拌槽15と共に古紙パルプUPPが回流するパルプ回流槽を構成して、このパルプ回流槽10、23を循環回流する古紙パルプUPPは、離解部10による攪拌離解作用と、叩解部11による加圧叩解作用およびインキ磨砕微細化作用を順次繰り返して受けることになる。この結果、後述する抄紙部3で抄紙再生される再生紙RPにとっての最適な紙力強度が確保されるとともに、白色度の高い再生紙RPを得ることができる(脱墨と同等な効果が得られる)。
【0065】
パルプ濃度調整部25は、攪拌槽15の下流側に設けられて、攪拌槽15で製造された古紙パルプUPPの濃度を後続の抄紙に適した適正濃度に調整するものである。このパルプ濃度調整部25は、攪拌槽15で製造された古紙パルプUPPを貯留する濃度調整槽26と、この濃度調整槽26に水を供給する濃度調整用給水部とを備えてなり、この濃度調整用給水部としては、前述したごとく、給水部13が兼用されている。
【0066】
濃度調整槽26の内容積は、攪拌装置12によりバッチ処理される古紙UPの枚数(量)に応じて設定される。図示の実施形態においては、前述したように、8枚程度(約32g)のA4判の古紙UPがバッチ処理されるので、これに対応した量の古紙パルプUPPの濃度を調整できる容積を有する濃度調整槽26とされている。
【0067】
これに関連して、上記攪拌装置12の攪拌槽15の底部には、排水口15bが設けられており、この排水口15bは図示しない排水弁により開閉動作される構成とされている。この排水弁は具体的には電磁開閉弁からなり、上記制御部4に電気的に接続されている。
【0068】
パルプ濃度調整部25の具体的な濃度調整方法は、上記濃度調整槽26において、攪拌槽15内でバッチ処理にて製造された古紙パルプUPPの全量に対して、上記濃度調整用給水部13から水Wが加水されて、これら古紙パルプUPPと水Wの合計体積が所定値になることにより、所定濃度のパルプ懸濁液PSとなるように構成されている。なお、調整されるべきパルプ懸濁液PSの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部3における抄紙能力を考慮して設定され、図示の場合は約0.1%濃度に設定されている。43は、濃度調整槽26内に設けられたフロートスイッチで、濃度調整槽26内のパルプ懸濁液PSの量(古紙パルプUPPと水Wの合計体積)が上記所定値になったときの水位を検知する。
【0069】
しかして、上記濃度調整槽26において、上記攪拌槽15(および叩解槽33)で製造された古紙パルプUPPの全量が、攪拌槽15の排水口15bから自重で濃度調整槽26内へ落下供給されるとともに、この古紙パルプUPPに対して、濃度調整用給水部13から白水Wが上記所定値になるまで加水されて(フロートスイッチ43により検知)、これにより古紙パルプUPPの濃度が調整されて、所定濃度のパルプ懸濁液PSとされる。
【0070】
図示の実施形態においては、上記古紙パルプUPPの全量(約32gの古紙UP+1.5リットルの水W)に対して、上記濃度調整用給水部13から希釈用の水Wが加水されて、古紙パルプUPPと水Wの合計体積(全量)が32リットルになるように制御され、これにより、約0.1%濃度(目標濃度)のパルプ懸濁液PSが調製される。この濃度調整されたパルプ懸濁液PSは、第一懸濁液供給ポンプ44により、次工程の抄紙部3のパルプ供給槽85へ送られる。
【0071】
なお、上記攪拌槽15の排水口15bから古紙パルプUPPが濃度調整槽26内へ落下供給される間、攪拌槽15内においては、給水部13から給水ポンプ21により水Wが供給されるとともに、駆動モータ17により攪拌インペラ16が回転して、攪拌槽15内の洗浄が行われる。
【0072】
以上のように、給水部13の給水源は、白水回収槽20に回収される抄紙部3で脱水された白水Wであり、換言すれば、抄紙部3で脱水回収される白水Wは、すべて上記離解部10の攪拌装置12およびパルプ濃度調整部25で帰還利用される水循環方式とされている。
【0073】
この抄紙部3は、古紙再生装置1における最重要構成部位であり、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのみ処理可能であった再生紙製造のための抄紙を、事務所等の小さな設置空間に配置使用される複写機程度の形状寸法(什器サイズ)の装置ケース5内で実現するため、その構成装置50〜53は、以下に詳述するような種々の特徴構成を備えている。
【0074】
抄紙工程部50は、上記パルプ製造部2の離解部10から送られてくる水Wと古紙パルプUPPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙とする部位で、抄紙コンベア55とパルプ供給部56を主要部として構成されている。
【0075】
抄紙コンベア55は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送するもので、上記パルプ懸濁液PSを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト60がその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされている。
【0076】
具体的には、抄紙コンベア55は、パルプ懸濁液PSを抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト60と、この網状ベルト60を走行駆動する駆動モータ61とを備えてなる。
【0077】
網状ベルト60は、具体的には、所定幅を有する抄き網構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。
【0078】
この網状ベルト60を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液PSが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)(一般に「ナイロン」(登録商標)と呼ばれる)あるいはステンレス鋼(SUS)などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるPET製網状ベルト60とされている。
【0079】
また、網状ベルト60を構成する抄き網構造は、網目の細かいものや織り目の細かく平滑なものが好ましく、具体的には対象となる紙の特性に対応して選択されるが、特に以下の点が考慮される。
【0080】
(1)網状ベルト60の網目の大きさ:
網状ベルト60の網目の大きさは、好適には25メッシュ〜80メッシュに設定され、図示の実施形態においては、50メッシュの網状ベルト60が採用されている。
【0081】
(2)網状ベルト60の網目の線径:
網状ベルト60の網目は、メッシュ数(大きさ)だけでなく網の線径も大きく影響する。同じメッシュ数でも、線径が太いと網目の大きさが小さくなり、細いと大きくなり、これは網目の空間率、あるいは空気を通す度合いの通気度(cm3/cm2/sec)で表される。
【0082】
例えば、網目が細かくて通気度が悪くなると、濾水率も悪くなり、その結果、後述するパルプ供給部56の抄き枠体78が網状ベルト60の走行方向へ長くなって、装置の大型化を招く。また、逆に、網目が粗くて通気度が良すぎると、上記抄き枠体78は短くて装置も小型になるが、再生される再生紙RPは目の粗い紙質になり、表裏面の平滑度の差も大きくなって、平滑度の悪い紙となる。
【0083】
(3)織り構造:
網状ベルト60の網目の編み方としては、一重織り、二重織り、縦糸径と横糸径を変える等の方法があるが、多重織りでは後述する網状ベルト60を回転支持するロール径を大きくさせて、装置の大型化を招くことから、図示の実施形態においては、一重織りの網状ベルト60が使用されている。
【0084】
以上の諸条件を考慮して、網状ベルト60としては、抄紙時に古紙パルプUPPが網状ベルト60の網目から抜け落ちるのを防ぐため、網の線径が細くて、メッシュ数が多く、かつ通気度を落とさない網目構造のものが好ましく、図示の実施形態の網状ベルト60としては、平織りで、50メッシュのPET製網状ベルト60が使用されている。この網状ベルト60によれば、筆記に問題ない良好な紙質が得られることが実験的に判明している。
【0085】
さらに、網状ベルト60の幅寸法は、パルプ懸濁液PSを抄いて製造すべき再生紙RPの幅寸法よりも若干大きな所定幅寸法に設定される。
【0086】
網状ベルト60は、図1および図4に示すように、駆動ローラ65、従動ローラ66、支持ローラ67、脱水ロール70および予備脱水ロール74を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ65を介して、上記駆動モータ61に駆動連結されている。
【0087】
そして、上記網状ベルト60における抄紙工程長さLは、上記什器サイズの装置ケース5内における網状ベルト60の直線状走行方向長さ(図示の場合は図1および図4における左右方向長さ)の範囲内に設定されている。
【0088】
具体的には、上記網状ベルト60の抄紙工程長さLは、その抄き網構造の濾過脱水率および網状ベルト60の走行速度との関係で、パルプ懸濁液PSが適正な坪量に抄かれるのに十分であるとともに、網状ベルト60を備える上記抄紙コンベア55が什器サイズの装置ケース5内に収容し得るように設定されている。
【0089】
また、上記網状ベルト60の走行速度は、上述した諸条件を考慮して設定されるもので、好適には0.1m/分〜1m/分に設定され、図示の実施形態においては0.2m/分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも100m/分以上に設定され、早いものでは1000m/分をはるかに上回る速度に設定される。
【0090】
この網状ベルト60の走行速度は、特に抄紙工程における湿紙の坪量に影響し、網状ベルト60の走行速度が減小すると坪量は増加し、走行速度が増すと坪量が低下する。この場合、古紙パルプUPPの叩解度は網状ベルト60の濾水に影響し、叩解度およびパルプ濃度が一定条件で有れば、一定の坪量を得ることができる。
【0091】
これらの網状ベルト60の設計条件等に関連して、網状ベルト60は、図1および図4に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さLの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト60の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。この網状ベルト60の上向き傾斜角度αは、目的に応じて設定され、好適には3度〜12度に設定され、図示の実施形態においては6度に設定されている。
【0092】
上記網状ベルト60を走行駆動する駆動モータ61は、具体的には電動モータで、制御部4に電気的に接続されている。また、この駆動モータ61は、後述する脱水ロール部51および乾燥工程部52の走行駆動源としても共用され、この共用のための構造つまり駆動連結機構については後述する。
【0093】
パルプ供給部56は、上記網状ベルト60上に上記パルプ製造部2の離解部10からのパルプ懸濁液PSを供給する部位で、このパルプ供給部56により、パルプ懸濁液PSが上記網状ベルト60上面に均一に広がり供給される構成とされている。上記抄紙工程部50は、上記抄紙コンベア55の抄紙工程開始端位置に設けられている。
【0094】
図示のパルプ供給部56の具体的構造が図6および図8に示されている。すなわち、このパルプ供給部56において、上記網状ベルト60が上述のごとく走行方向へ向けて上向き傾斜状に配置されるとともに、この網状ベルト60の上下両側位置に、抄き枠体78および仕切り部材79がそれぞれ配置されてなる。
【0095】
抄き枠体78は、網状ベルト60の上面に摺接可能に配設されるもので、図6および図8に示すように、先端部つまり網状ベルト60の走行方向側端部が開放された平面コ字形状の本体枠80と、この本体枠80の後端部に設けられたオーバフロー槽81とを備える。
【0096】
上記本体枠80は、その下端面80aが傾斜走行する上記網状ベルト60の上面に摺接するように配されるとともに、本体枠80の枠内幅寸法W(図6参照)が製造すべき再生紙RPの幅寸法に設定されている。
【0097】
上記オーバフロー槽81は、上記本体枠80の後端部に一体的に固設されており、その前壁上端縁81aが水平直線状に形成されたオーバフロー部とされるとともに、このオーバフロー槽81内に、後述するパルプ供給槽85のパルプ懸濁液PSを供給する懸濁液供給配管90の供給開口90aが臨んで設けられている。
【0098】
そして、パルプ懸濁液PSが上記懸濁液供給配管90からオーバフロー槽81内に供給され貯留されて、オーバフロー槽81がパルプ懸濁液PSで満杯になると、さらなるパルプ懸濁液PSの供給により、パルプ懸濁液PSは、オーバフロー槽81のオーバフロー部81aから図7に矢符にて示されるようにオーバフローして、後述する仕切り部材79の平板部材82上に流下することとなる。
【0099】
仕切り部材79は、網状ベルト60の下面に摺接可能に配設されるもので、図6および図7に示すように、複数本の骨組み部材79a、79a、…からなる水切り可能なスノコ構造を備え、上記網状ベルト60の下面全幅を摺接支持する形状寸法を有するとともに、上記スノコ構造の基端側部位が平板部材82により閉塞されている。
【0100】
平板部材82は、上記抄き枠体78のオーバフロー槽81に対応した位置に設けられ、具体的には、図7に示すように、オーバフロー槽81からオーバフローするパルプ懸濁液PSの流下位置に対応して配置され、これにより、網状ベルト60におけるパルプ懸濁液PSの流下供給部位の網目が平板部材82により閉塞状態に支持されている。
【0101】
また、上記パルプ供給部56の上流側には、このパルプ供給部56にパルプ懸濁液PSを供給されるパルプ供給槽85が設けられている。
【0102】
このパルプ供給槽85に貯留されるパルプ懸濁液PSは、下限水位用フロートスイッチ87および上限水位用フロートスイッチ88により検知されて、第二懸濁液供給ポンプ(懸濁液供給ポンプ)89により、上記パルプ供給部56のオーバフロー槽81内へ連続的に供給される構成とされている。
【0103】
しかして、上記パルプ供給槽85に貯留されるパルプ懸濁液PSが、第二懸濁液供給ポンプ89により、上記パルプ供給部56のオーバフロー槽81内へ供給され、このオーバフロー槽81に供給されたパルプ懸濁液PSは、図8および図7に示すように、オーバフロー槽81からオーバフローした後、平板部材82上に流下する。
【0104】
そして、パルプ懸濁液PSは、抄き枠体78の本体枠80と仕切り部材79との協働による滞留作用により、網状ベルト60上面に均一に拡散されるとともに、網状ベルト60の矢符方向への走行作用により、上記本体枠80により規定された幅寸法を保持しつつ網状ベルト60と共に搬送されながら、網状ベルト60の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙RP0となる。この濾過脱水された白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)は、前述したように、上記給水部13の白水回収槽20に回収される。
【0105】
なお、上記パルプ供給部56において、網状ベルト60の走行姿勢は左右水平になるように、つまり網状ベルト60の走行方向に対して垂直な断面における上面輪郭線が水平状態となるように走行支持されている。このように構成することにより、上記本体枠80と仕切り部材79の協働によるパルプ懸濁液PSの滞留状態に左右幅方向の偏りを生じるのが有効に防止されて、調整される湿紙RP0の厚みが左右幅方向に均一となり、結果として紙面全体の厚みが均一となる。
【0106】
なお、上記パルプ供給部56において、網状ベルト60の走行姿勢は左右水平になるように、つまり網状ベルト60の走行方向に対して垂直な断面における上面輪郭線が水平状態となるように走行支持されている。このように構成することにより、上記本体枠80と仕切り部材79の協働によるパルプ懸濁液PSの滞留状態に左右幅方向の偏りを生じるのが有効に防止されて、調整される湿紙RP0の厚みが左右幅方向に均一となり、結果として紙面全体の厚みが均一となる。
【0107】
脱水ロール部51は、上述の抄紙工程部50と後述の乾燥工程部52の連係部において、上記網状ベルト60上の湿紙RP0を圧搾脱水する部位である。
【0108】
具体的には、下流側の上記乾燥工程部52の後述する平滑面ベルト95と上流側の上記抄紙工程部50の網状ベルト60とが図1および図4に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト95と網状ベルト60の上下隣接部分が上記連係部とされて、上記脱水ロール部51が、これら網状ベルト60および平滑面ベルト95を上下両側から挟圧状に転動圧搾する構造とされている。
【0109】
上記脱水ロール部51は、脱水ロール70、プレスロール71および駆動モータ72を主要部として備えるととともに、その補助部として、予備脱水ロール74およびスラリー化防止ロール75が設けられている。
【0110】
脱水ロール70は、網状ベルト60に下側から転接するもので、具体的には、高剛性材料からなる円筒ロール70aの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層70bが巻装されてなる。脱水層70bは、親水性、吸水性および保水性に優れる材料からなり、好適には柔軟性に優れる微細連続気孔の多孔質材料からなる。また、脱水層70bの円筒ロール70aに対する巻装構造としては、ある程度厚みのある脱水層70bを円筒ロール70aの外周に一回巻きしたり、あるいは円筒状の脱水層70bを円筒ロール70aに外嵌する単層構造と、薄い脱水層70bを円筒ロール70aの外周に複数回巻きする多層構造とがある。
【0111】
図示の実施形態の脱水ロール70は、ステンレス鋼製円筒ロール70aの円筒外周面に、ミクロンサイズの超微細な連続気孔を有する超微細連続発泡材料からなる円筒状の脱水層70bが外嵌されてなる単層構造とされている。
【0112】
プレスロール71は、後述する乾燥工程部52の平滑面ベルト95を上側から転動加圧するもので、具体的には、高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされている。図示の実施形態のプレスロール71は、ステンレス鋼製円筒ロールからなる。
【0113】
これら脱水ロール70とプレスロール71は、具体的には単一の駆動モータ72に駆動連結されて、両ロール70、71が連動して回転駆動される。この場合、これら両ロール70、71は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト60、平滑面ベルト95の接触面(網状ベルト60の下面および平滑面ベルト95の上面)に対して、両ロール70、71の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
【0114】
具体的には、プレスロール71の回転速度が脱水ロール70の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト95の走行速度が、上記網状ベルト60の走行速度よりも大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部51により圧搾脱水された湿紙RP0が、下側の網状ベルト60の上面から上側の平滑面ベルト95の下面に転写移転される際に、湿紙RP0にテンションがかかって、湿紙RP0に皺が発生するのを有効に防止する。
【0115】
また、上記駆動モータ72は、図示の実施形態においては、後述するように、抄紙工程部50の駆動モータ61が共用とされている。
【0116】
そして、この駆動モータ72の駆動により、上記両ロール70、71が、上記両ベルト60、95を上下両側から挟圧状に転動圧搾して、網状ベルト60上の湿紙RP0に含まれている水分Mが上記網状ベルト60を介して上記脱水ロール70に吸水されて脱水される。この圧搾脱水された白水Wは、給水部13の白水回収槽20に回収される。
【0117】
この圧搾脱水の具体的メカニズムを図8(a)により説明すると、上記両ロール70、71の回転により、上面に湿紙RP0を載置した網状ベルト60と平滑面ベルト95が、その間に上記湿紙RP0を介在させた状態で、上記両ロール70、71間へ案内されて、上下両側から挟圧状に転動圧搾される。すると、湿紙RP0に含まれている水分Mは、上記両ロール70、71の上流側(図面において右側)へ搾り出されるが、上側の平滑面ベルト95が後述するように平滑面を有する孔のない構造であることから、この搾り出された水分Mはすべて下側の網状ベルト60の微細な連続気孔を通過して上記脱水ロール70の脱水層70bに吸水される。
【0118】
予備脱水ロール74およびスラリー化防止ロール75は、これら脱水ロール部51におけるプレスロール71と脱水ロール70による圧搾脱水作用を補助するために設けられている。
【0119】
予備脱水ロール74は、図1に示すように、脱水ロール部51の上流側において、上記網状ベルト60に下側から転接してテンションを与えるように配設されている。
【0120】
この予備脱水ロール74の具体的構造は、上記脱水ロール70と同様であり、高剛性材料からなる円筒ロール74aの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層74bが巻装されてなる。図示の実施形態の予備脱水ロール74は、ステンレス鋼製円筒ロール74aの円筒外周面に、ミクロンサイズの超微細な連続気孔を有する超微細連続発泡材料からなる円筒状の脱水層74bが外嵌されてなる単層構造とされている。
【0121】
そして、網状ベルト60上面に均一に拡散されて、この網状ベルト60と共に搬送される湿紙RP0は、網状ベルト60により濾過脱水されながら、上記予備脱水ロール74によっても複合的に吸水脱水されて、プレスロール71と脱水ロール70による圧搾脱水作用を予備的に補助する。
【0122】
スラリー化防止ロール75は、図1および図8(b)に示すように、脱水ロール部51の上流側近傍位置において、上記平滑面ベルト95を上側から転動加圧して、平滑面ベルト95を下側の網状ベルト60上の湿紙RP0に押さえ付けるように配設されている。
【0123】
そして、図8(b)を参照して、脱水ロール70とプレスロール71により、上面に湿紙RP0を載置した網状ベルト60と平滑面ベルト95が上下両側から挟圧状に転動圧搾されると、湿紙RP0に含まれている水分Mは、両ロール70、71の上流側(図面において右側)へ搾り出されるが、同時に、脱水ロール70自身が先の圧搾脱水の結果保水している水分Mもまた搾り出される。
【0124】
この場合、スラリー化防止ロール75が設けられていないとすると、図8(a)に示すように、両ロール70、71の上流側近傍位置においては、上側の平滑面ベルト95と下側の網状ベルト60との交差角度(これら両ベルト60、95が両ロール70、71による挟圧点を交点として挟む角度)が比較的大きく、これにより、上側の平滑面ベルト95が下側の網状ベルト60上の湿紙RP0に対して離隔した状態にある。このため、両ロール70、71の上流側へ搾り出された上記湿紙RP0に含まれている水分と脱水ロール70自身が保水していた水分の複合された水分Mの一部M´が、上記網状ベルト60を介して上記脱水ロール70に吸水されずに、湿紙RP0に吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうおそれがある。
【0125】
なお、上側の平滑面ベルト95と下側の網状ベルト60との交差角度がそれほど大きくない場合には、上記のような問題は起こらないため、上記スラリー化防止ロール75の設置を省略することも可能である。
【0126】
上記脱水ロール部51により圧搾脱水された湿紙RP0は、脱水ロール部51の下流側部位において、下側の網状ベルト60の上面から上側の平滑面ベルト95の下面に転写移転されて、平滑面ベルト95と共に搬送されて、乾燥工程部52による乾燥工程が実施される。
【0127】
なお、上記移転作用は平滑面ベルト95の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト60の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト95の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙RP0が上記平滑面ベルト95の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
【0128】
また、前述したように、平滑面ベルト95の走行速度は、網状ベルト60の走行速度よりも大きく設定されており、これにより、脱水ロール部51により圧搾脱水された湿紙RP0が、下側の網状ベルト60の上面から上側の平滑面ベルト95の下面に転写移転されるに際して、上記湿紙RP0に上記速度差によるテンションがかけられる結果、湿紙RP0は皺が寄ることなく平滑な状態で平滑面ベルト95に転写され得る。
【0129】
乾燥工程部52は、上記抄紙工程部50で抄紙形成された後、脱水ロール部51で圧搾脱水された湿紙RP0を乾燥させて再生紙RPとする部位で、乾燥コンベア91と加熱乾燥部92を主要部として構成されている。
【0130】
乾燥コンベア91は、脱水ロール部51で圧搾脱水された湿紙RP0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト95とこの平滑面ベルト95を走行駆動する駆動モータ96とを備えてなる。
【0131】
平滑面ベルト95は、湿紙RP0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。
【0132】
上記所定幅は、網状ベルト60と同様に、製造すべき再生紙RPの幅寸法よりも若干大きな寸法に設定される。また、平滑面構造の板材は、湿紙RP0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部97による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。さらに、上記所定長さは、湿紙RP0が完成品である再生紙RPに加熱乾燥されるのに十分な長さで、かつ装置ケース5における乾燥工程部52の収容空間に収容し得る大きさに設定される。
【0133】
この平滑面ベルト95は、図1および図4に示すように、駆動ローラ100、従動ローラ101、102、プレスロール71、スラリー化防止ロール75、平滑面仕上げロール103、103および予備脱水ロール74を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ100を介して、上記駆動モータ96に駆動連結されている。
【0134】
平滑面ベルト95を走行駆動する駆動モータ96は、前述したように、上記抄紙ネットコンベア部40および脱水ロール部41の走行駆動源としても共用され、この共用のための構造つまり駆動連結機構が図6に示されている。
【0135】
図4において、105は動力伝達ギヤ、106はスプロケット、107はスプロケット106、106間に掛け渡される動力伝達チェーン、および78は動力伝達軸をそれぞれ示している。
【0136】
上記動力伝達ギヤ105、105、…、スプロケット106、106、…の歯車比は、駆動源が単一の駆動モータ96であることから、駆動ローラ100、従動ローラ101、102、プレスロール71、スラリー化防止ロール75、平滑面仕上げロール103、103および予備脱水ロール74のすべてが、平滑面ベルト95に対して、互いに実質的に同一の周速度をもってそれぞれ転動接触するように設定されている。
【0137】
加熱乾燥部92は、上記平滑面ベルト95上の湿紙RP0を加熱乾燥する部位で、上記平滑面ベルト95の走行経路途中箇所に配されたヒータプレート109を加熱部として備える。
【0138】
図示の実施形態のヒータプレート109は、上記平滑面ベルト95の走行経路における水平走行部分に設けられており、具体的には、平滑面ベルト95における上記湿紙RP0の保持面である上面と反対側面つまり下面に摺接して設けられている。これにより、上記平滑面ベルト95上の湿紙RP0は、上記ヒータプレート109により加熱された平滑面ベルト95により間接的に加熱乾燥されることとなる。
【0139】
また、平滑面ベルト95の走行途中に、上記2つの平滑面仕上げロール103、103が配設されている。具体的には、これら平滑面仕上げロール103、103は、上記平滑面ベルト95の走行経路における水平走行部分において、上記ヒータプレート109と対向して並列状に配置されている。
【0140】
そして、両平滑面仕上げロール103、103は、平滑面ベルト95上の湿紙RP0を順次転動加圧して、平滑面ベルト95の表面に接触する湿紙RP0の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる。
【0141】
なお、図示の実施形態においては、2つの平滑面仕上げロール103、103が設けられているが、平滑面仕上げロールの配設数は目的に応じて適宜増減される。
【0142】
上記平滑面ベルト95における上記加熱乾燥部92の下流側には、剥離部材110が設けられている。この剥離部材110は、具体的には耐熱性を有する弾性ヘラの形態とされており、図示の実施形態の剥離部材110は、弾性変形可能な0.1〜0.3mm厚程度のステンレス鋼板の外周面にテフロン(登録商標)加工が施されてなり、その基端部が固定側に支持されるとともに(図示省略)、その先端エッジ110aが上記平滑面ベルト95の表面に弾発的に当接係止されている。
【0143】
そして、平滑面ベルト95上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙RPは、上記剥離部材110の先端エッジ110aにより、平滑面ベルト95の保持面から順次剥離されることとなる。
【0144】
カレンダロール部53は、上記乾燥工程部52で乾燥処理された再生紙(乾紙)RPをカレンダ処理するもので、乾燥工程部52の下流側端位置に隣接して設けられている。
【0145】
図示の実施形態のカレンダロール部53は、具体的には、図1および図4に示すように、上記剥離部材110に近接して設けられており、乾紙RPを上下から挟圧する上下一対のカレンダロール120、121と、これらカレンダロール120、121を回転駆動する駆動モータ122とを備えてなる。
【0146】
一対のカレンダロール120、121のうち、上側のカレンダロール120は高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされるとともに、下側のカレンダロール121は、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、弾性材料からなる弾性層が形成されてなる。このような構成とされているのは、以下のような条件による。
【0147】
すなわち、本古紙再生装置1のような什器サイズの小型装置に備えられるカレンダロール120、121も、自ずと小型にならざるを得ず、このような小型カレンダロール120、121の場合、そのロール剛性の低さから強いプレスを掛けられない。例えば、乾紙RPの表裏面が平滑になるまで強い圧力で加圧すると、上下カレンダロール120、121には、これら両ロール120、121間の間隙寸法よりも大きな撓みを生じてしまうことがあり、上下カレンダロール120、121がこのような撓み状態になると、乾紙RPが両ロール120、121間に存在しなくても、これらカレンダロール120、121同士が常に当接することになり、これではカレンダロール120、121のロール面120a、121aが早期に磨耗を始めてしまい、非常に寿命が短くなってしまう。
【0148】
そこで、この点を考慮して、図4に示すように、上側のカレンダロール120は、高剛性材料からなり、鏡面仕上げの円筒ロール面120aを有する円筒ロールの形態とされる一方、下側のカレンダロール121は、高剛性材料からなる円筒ロール121bの外周に、弾性材料が被覆されて(図示の場合はゴムライニングが施されて)弾性層121cの円筒ロール面121aが形成されてなる。
【0149】
また、上下カレンダロール120、121の配置を上記のようにしたのは、以下の理由による。
【0150】
すなわち、乾燥工程部52の平滑面ベルト95上で乾燥処理されて搬送される乾紙RPは、平滑面ベルト95の保持面から剥離されたとき、平滑面ベルト95に接着保持されていた下側面は平滑度が高く、上側面は下側面に比較して低い。
【0151】
したがって、高剛性材料からなり、鏡面仕上げの円筒ロール面120aを有する円筒ロールの形態とされて、平滑化作用の大きなカレンダロール120が、上側に配置されるとともに、高剛性材料からなる円筒ロール121bの外周に、弾性層121cを形成されてなるカレンダロール121が、上側に配置されている。
【0152】
ちなみに、この逆の配置構成にした場合には、平滑度を上げたい乾紙RPの上側面に弾性層121cからなるロール面121aが当てられることになって、鏡面が得られず、十分な平滑度は得られず、一方、平滑度が高い乾紙RPの下側面に高剛性の鏡面であるロール面120aが当てられることにより、さらに鏡面仕上げになって、平滑度が増してしまい、その結果、乾紙RPの上下両面の平滑度差はさらに大きくなって、平滑度のバランスの悪い再生紙が出来上がってしまうことになる。
【0153】
上記一対のカレンダロール120、121の回転速度は、上記乾燥工程部52における乾紙RPの搬送速度つまり乾燥コンベア91の平滑面ベルト95の走行速度と同期して制御されて、平滑で所望の紙質の再生紙が得られる構成とされている。
【0154】
つまり、カレンダロール120、121の回転速度が乾燥工程部52搬送速度よりも遅いと、乾紙RPが弛んで、所望のカレンダ処理効果が得られず、逆に、カレンダロール120、121の回転速度が乾燥工程部52搬送速度よりも早いと、乾紙RPがカレンダロール120、121により引き破られてしまう。これを防止するため、カレンダロール120、121の回転速度を乾燥工程部52の搬送速度と同期させる必要がある。この目的のため、カレンダロール120、121を回転駆動する駆動モータ122が、制御部4に伝記的に接続されている。
【0155】
この両者の具体的な制御方法としては、例えば、これらカレンダロール120、121を回転駆動する駆動モータ122の回転速度が制御されて、カレンダロール120、121の回転速度を乾燥工程部52搬送速度よりも若干早めにし、乾紙RPのたるみが全く無くなったら、カレンダロール120、121を一旦回転停止させ、乾紙RPにたるみが出たら、再びカレンダロール120、121を回転させて、この制御を繰り返すことで、カレンダロール120、121の回転速度を乾燥工程部52の搬送速度と同期させる。
【0156】
しかして、上記乾燥工程部52の剥離部材110により平滑面ベルト95の保持面から順次剥離されて排出される乾紙RPは、カレンダロール部53において回転する上下一対のカレンダロール120、121間を通過しながら、その上下両側から挟持状に転動加圧されてカレンダ処理を施され、所定の紙厚が得られるまでプレス加工される。
【0157】
このカレンダロール部53の下流側には、カレンダロール部53によりカレンダ処理された乾紙つまり再生紙RPを所定形状寸法(図示の場合は長さ寸法のみ)に切断する定寸カッタ130が設けられている。この定寸カッタ130の具体的構造は図示しないが、例えば、従来公知の両サイドスリッターの形態とされ、ソレノイドによりギロチンカット動作する構造が採用され得る。
【0158】
そして、カレンダ処理された再生紙RPは、定寸カッタ130により所定長さ(図示の実施形態においては、A4版の縦寸法)に切断されて、再使用可能な形状寸法の再生紙RPとされ、装置ケース5の排出口5bから排出される。なお、この場合の所定長さでの切断は、平滑面ベルト95のベルト送り量またはカレンダロール120、121の回転送り量を近接スイッチ、エンコーダ等のセンサにより計測して行う。
【0159】
制御部4は、上述した離解部10および抄紙部3の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、CPU,ROM,RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0160】
この制御部4には、パルプ製造部2のパルプ製造工程および抄紙部3の抄紙工程を連続して実行させるためのプログラム等が組み込まれるとともに、各駆動部の駆動に必要な種々の情報、例えば、離解部10における攪拌装置12の駆動時間および給水部13の動作タイミング、あるいは、抄紙部3におけるコンベア部50、52の走行速度、カレンダロール部53の回転速度、加熱乾燥部92の駆動時間および定寸カッタ130の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されている。
【0161】
また、上記制御部4には、前述したように、各フロートスイッチ28、29、43、87、88および各駆動部17、21、44、61(72、96)、89、105、122、130が電気的に接続されており、制御部4は、これらの各種実測値およびデータに従って、上記各駆動部17、21、44、61(72、96)、89、105、122、130を制御する。
【0162】
しかして、以上のように構成された古紙再生装置1は、電源投入により起動して、制御部4により各駆動部が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース5の投入口5aに投入された古紙UP、UP、…は、パルプ製造部2、離解部10および叩解部11により離解・叩解処理されて、古紙パルプUPPが製造された後、さらにこの古紙パルプUPPが抄紙部3の抄紙工程部50、脱水ロール部51、乾燥工程部52およびカレンダロール部53により抄紙されて、再生紙RPとして再生され、装置ケース5の排出口5bから再生紙受取トレー7に排出される。
【0163】
以上のように構成された古紙再生装置1において、抄紙部(抄紙装置)3は、前工程のパルプ製造部2から送られてくるスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙とする抄紙工程部50と、この抄紙工程部50で抄紙形成された湿紙RP0を乾燥させて乾紙(再生紙)RPとする乾燥工程部52と、この乾燥工程部51で乾燥処理された乾紙RPをカレンダ処理するカレンダロール部53とを備えてなり、このカレンダロール部53は、上記乾燥工程部52の下流側端位置に隣接して設けられて、上記乾燥工程部52から排出される上記乾紙RPを表裏両側から転動加圧してカレンダ処理する構成とされているから、上記乾燥工程部52で得られた乾紙RPの表裏面にしわ等が発生あるいは残存して、その平滑度が悪かったり、あるいは表裏面の平滑度差が大きい場合でも、上記カレンダロール部53により乾紙が上下から挟まれて、所定の紙厚が得られるまで均一にプレス加工(カレンダ処理)されることにより、上記表裏両面に良好な平滑度が得られる。
【0164】
また、上記抄紙装置3を抄紙部として備える古紙再生装置1にあっては、以下に列挙するような優れた特有の効果が得られ、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などにも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる古紙再生装置を提供することができる。
【0165】
(1)什器サイズの装置ケース5内に、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプUPPを製造するパルプ製造部2と、このパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する抄紙部(抄紙装置)3とを備えてなる小型簡素な構造の古紙再生装置1が実現し、これにより、古紙UPを廃棄処分することなく、古紙UPの発生元において自前で再生利用することができ、古紙UPの廃棄を軽減して、ゴミ問題解決に役立つばかりか、限りある資源を有効利用することができる。
【0166】
特に、この種の古紙UPは機密上の問題からリサイクル化が進んでおらず、上記のように古紙UPの発生元において自前で再生利用することができることにより、資源有効利用の効果は顕著である。
【0167】
(2)また、古紙UPの発生場所に、製紙工場や古紙再生工場の大規模な設備と同様な機能を有するコンパクトな古紙再生設備が設置されることにより、小規模店舗や一般家庭などにおいても、連続して紙の循環使用を可能にすることができ、さらには、古紙UPの回収廃棄に要する輸送費や焼却費等の各種経費も不要となって、経済的である。
【0168】
(3)装置構造がコンパクトで、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などにも設置可能であり、この観点からも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【0169】
(4)古紙UPが発生する場所に配置されて、パルプ製造部2により、発生した古紙UPが離解処理されて古紙パルプUPPとされるとともに、抄紙部3により、上記古紙パルプUPPが抄紙されて再生紙RPとされ、これにより、上記古紙UPが、その発生場所内において再生紙RPとして循環使用される構成とされていることにより、古紙UPに記載された文字や線図等の各種情報が古紙UPの発生場所外へ拡散することが全くなく、この点からも、機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができ、高い機密性を保持することができ、また資源の有効利用を図ることもできる。
【0170】
すなわち、本実施形態の抄紙装置3を抄紙部として備える古紙再生装置1を使用することにより、その使用に係る一定の系(例えば、学校、病院、市役所、法律事務所、特許事務所、一般家庭等)の外へ上記各種情報が拡散するおそれが全くなくなる。
【0171】
換言すれば、例えば従来周知のシュレッダの場合、古紙が裁断されて小片となり、そこに記載された文字や線図が判読不能となったとしても、裁断された紙片は焼却場等で廃棄処分されることになるため、上記系外への拡散を完全に防止することはできない。この点に関して、上記系外への拡散を防止する目的で、系内の倉庫に保管するという方法も考えられるが、反面、そのような保管場所の確保が必要となり、対象となる紙も一回の使用のみでは、資源の有効利用という観点から効率が悪い。
【0172】
これに対して、本実施形態の古紙再生装置1によれば、古紙UPに記載される各種情報がその使用に係る系外へと拡散しまうことは全くなく、しかも、資源を有効に活用することができる。
【0173】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。一例として以下のような改変が可能である。
【0174】
図示の実施形態において、カレンダロール部53の一対のカレンダロール120、121の少なくとも一方が、加熱手段を備えた熱カレンダロールの形態とされてもよく、このような構造とされることにより、図示の実施形態のような熱カレンダロール構造を備えない場合に比較して、小径でプレス圧も小さいにも関わらず、所望の平滑度が得られて、乾紙RPの表裏面の平滑度差が少なることが試験的に判明している。ちなみに、この場合の熱カレンダロールの温度は135度に設定されていた。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の一実施形態である古紙再生装置の全体構成を、装置ケースを切開して示す正面図である。
【図2】同じく同古紙再生装置の全体構成を、装置ケースを切開して示す側面図である。
【図3】同古紙再生装置におけるパルプ製造部の叩解部の主要部を示す正面断面図である。
【図4】同古紙再生装置の抄紙部の概略構成を示す斜視図である。
【図5】同抄紙部における駆動連結機構を示す平面図である。
【図6】同抄紙部におけるパルプ供給部の構成を拡大して示す斜視図である。
【図7】同じく同パルプ供給部の構成を一部切開して示す正面図である。
【図8】同抄紙部における脱水ロール部の圧搾脱水の具体的メカニズムを説明するための模式図で、図8(a)は基本的な圧搾脱水メカニズムを示し、図8(b)はスラリー化防止ロールが脱水ロール部の上流側近傍位置に設けられている場合の圧搾脱水メカニズムを示す。
【図9】本発明の古紙再生装置の外観構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0176】
UP 古紙
CUP 裁断古紙
W 水(白水)
UPP 古紙パルプ
PS パルプ懸濁液
RP0 湿紙
RP 再生紙
L 網状ベルトの抄紙工程長さ
1 古紙再生装置
2 パルプ製造部(パルプ製造装置)
3 抄紙部(抄紙装置)
4 制御部
5 装置ケース
10 離解部
11 叩解部
50 抄紙工程部
51 脱水ロール部
52 乾燥工程部
53 カレンダロール部
55 抄紙コンベア
56 パルプ供給部
60 網状ベルト
61 駆動モータ
91 乾燥コンベア
92 加熱乾燥部
95 平滑面ベルト
96 駆動モータ
120 カレンダロール
121 カレンダロール
120a 円筒ロール面
121a 円筒ロール面
122 駆動モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置を構成し、前工程のパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙装置であって、
前記パルプ製造部から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙工程部と、
この抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥させて乾紙とする乾燥工程部と、
この乾燥工程部で乾燥処理された乾紙をカレンダ処理するカレンダロール部とを備えてなり、
このカレンダロール部は、前記乾燥工程部の下流側端位置に隣接して設けられて、前記乾燥工程部から排出される前記乾紙を表裏両側から転動加圧してカレンダ処理する構成とされている
ことを特徴とする古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項2】
前記カレンダロール部は、前記乾紙を上下から挟圧する上下一対のカレンダロールを備え、
これらカレンダロールのうち、上側のカレンダロールは高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされるとともに、下側のカレンダロールは、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、弾性材料からなる弾性層が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項3】
前記一対のカレンダロールの少なくとも一方は、加熱手段を備えた熱カレンダロールの形態とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項4】
前記カレンダロール部の一対のカレンダロールの回転速度は、前記乾燥工程部における乾紙の搬送速度と同期して制御されて、平滑で所望の紙質の再生紙が得られる構成とされている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項5】
前記抄紙工程部は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する抄紙コンベアを備え、
この抄紙コンベアは、前記パルプ懸濁液を濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルトがその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされ、
前記網状ベルトにおける抄紙工程長さは、前記什器サイズの装置ケース内における前記網状ベルトの直線状走行方向長さの範囲内に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項6】
前記網状ベルトの抄紙工程長さは、その抄き網構造の濾過脱水率および網状ベルトの走行速度との関係で、前記パルプ懸濁液が適正な坪量に抄かれるのに十分であるとともに、前記網状ベルトを備える前記抄紙コンベアが什器サイズの装置ケース内に収容し得るように設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項7】
前記網状ベルトは、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされている
ことを特徴とする請求項6に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項8】
前記抄紙コンベアは、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた前記網状ベルトと、この網状ベルトを走行駆動する駆動モータとを備えてなる
ことを特徴とする請求項5に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項9】
前記抄紙工程部は、前記抄紙コンベアの抄紙工程開始端位置に設けられて、前記パルプ製造装置からの前記パルプ懸濁液を前記抄紙コンベアに供給するパルプ供給部を備え、
このパルプ供給部により、前記パルプ懸濁液が前記抄紙コンベアの網状ベルト上面に均一に広がり供給される構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項10】
前記乾燥工程部は、前記抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を受け取り搬送する無端ベルトの形態とされた平滑面ベルトと、この平滑面ベルトを走行駆動する駆動モータとを備えてなり、
前記平滑面ベルトは、前記抄紙工程部から送られる湿紙の表面を平滑化する平滑面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項11】
前記抄紙工程部および乾燥工程部の連係部に、前記湿紙を圧搾脱水する脱水ロール部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項12】
前記脱水ロール部は、前記抄紙工程部の網状ベルトおよび前記乾燥工程部の平滑面ベルトを上下両側から挟圧状に転動圧搾して、前記網状ベルト上の湿紙を圧搾脱水する構成とされている
ことを特徴とする請求項11に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項13】
前記乾燥工程部は、前記平滑面ベルト上の湿紙を加熱乾燥する加熱乾燥工程部を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項14】
前記抄紙工程部、脱水ロール部および乾燥工程部が共用の駆動源により駆動される構造とされている
ことを特徴とする請求項7に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項15】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙工程部と、これらパルプ製造部および抄紙工程部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、
前記抄紙工程部は、請求項1から14のいずれか一つに記載の抄紙装置から構成されている
ことを特徴とする古紙再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−184700(P2008−184700A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17212(P2007−17212)
【出願日】平成19年1月28日(2007.1.28)
【出願人】(000106782)株式会社シード (52)
【Fターム(参考)】