説明

古紙解繊装置

【課題】 本発明は、掃除の手間を軽減可能に改良した古紙解繊装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 タンクを有し、このタンクの底壁部近傍にモータにより回転される回転羽を有する古紙解繊装置において、前記タンクの内部を上下に動く上下可動板を設け、この上下可動板の周辺部にゴム、軟質プラスチック、スポンジ、フェルトその他の弾性体で形成した帯状部材を設け、この帯状部材は前記タンクの内壁に当接させて古紙解繊装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙解繊装置に関し、掃除の手間を軽減可能に改良した古紙解繊装置に係る。
【背景技術】
【0002】
古新聞紙や使用済みのコピー紙などの古紙から再生紙を生成するなど、古紙を再利用することは従来から行われている(例えば、特許文献1参照)。
図1(a)及び図1(b)には本発明の発明者が既に特許出願を済ませてある改良前の古紙解繊システムを示している。
【0003】
図1(a)に示すように、古紙解繊システム1は、古紙を解繊して繊維素材を生成する古紙解繊装置2と、この古紙解繊装置2に所定量の水を注入する水注入装置3と、前記古紙解繊装置2で生成された繊維素材を吸い出す繊維素材吸出装置4とを備えて構成されている。
【0004】
前記古紙解繊装置2は、運転開始ボタン5を備え、その運転開始ボタン5がオペレータにより操作されると運転を開始する。
上記水注入装置3は、運転開始ボタン6と、水注入管7とを備え、運転開始ボタン6がオペレータにより操作されると、所定量の水が前記水注入管7を介して前記古紙解繊装置2に注入される。
【0005】
前記繊維素材吸出装置4は、運転開始ボタン8と、繊維素材吸出管9とを備え、運転開始ボタン8がオペレータにより操作されると前記古紙解繊装置2から繊維素材が前記繊維素材取出管9を介して吸出され、その吸い出された繊維素材を前記繊維素材吸出装置4の内部のタンクなどに貯める。
【0006】
図1(b)は、古紙解繊装置2の内部を示す図である。なお、図1(a)に示す構成と同じ構成部分には同じ符号を付けている。
図1(b)に示すように、古紙解繊装置2は、新聞紙、コピー紙、またはダンボール紙などの古紙を収容するタンク10と、このタンク10に着脱可能に設けられる繊維素材吸出管9と、前記タンク10の上部の開口部を密閉するための蓋11と、この蓋11に着脱可能に設けられる水注入管7と、タンク10内の底部に設けられ複数の羽を有する回転羽12と、ベルト13を介して回転羽12を回転させるモータ14とを備えて構成されている。
【0007】
まず、古紙解繊装置2は、オペレータにより運転開始ボタン5が操作されると、モータ14が駆動して回転羽12を回転させ、タンク10内に収容された古紙を解繊する。
また、オペレータは、古紙解繊装置2の運転前や運転中に、水注入装置3の運転開始ボタン6を操作して古紙解繊装置2のタンク10内に所定量の水を注入する。
【0008】
次に、古紙解繊装置2において古紙が解繊されパルプ状の繊維素材が生成された時点でオペレータにより繊維素材吸出装置4の運転開始ボタン8が操作されると、タンク10内の繊維素材が繊維素材吸出管9を通って繊維素材吸出装置4に貯められる。
【0009】
次に、タンク10内に収容される古紙の量とタンク10内に注入される水の量との関係について説明する。
表1は、上記古紙解繊システム1において解繊される1kgの古紙の解繊状態を、所定の注水量毎(0kg、0.2kg、0.3kg、0.5kg、0.6kg、0.65kg、0.7kg、0.8kg、1kg、1.3kg)に示す表である。なお、この実験で使用する古紙は、新聞紙250g、コピー紙250g、チラシ250g及び雑誌250gの計1kgの古紙とする。また、古紙解繊装置2の回転羽12の駆動時間は、全ての所定の注水量に対してそれぞれ3〜6分程度とする。
【0010】
【表1】

【0011】
表1に示すように、古紙を解繊することが可能な古紙1kgに対する注水量は、0.6〜0.8kg程度であり、特に良好な解繊状態(ほぼ全ての古紙がパルプ状に解繊され圧縮しても廃液がでない状態)にすることが可能な注水量は、0.65〜0.7kg程度となる。
【0012】
また、古紙1kgに対して注水量が少ない場合(例えば、注水量が0〜0.5kgの場合)は、埃や静電気が発生したり、パルプ状にならなかったりする。また、古紙1kgに対して注水量が多い場合(例えば、注水量が1kg以上の場合)は、団子状になったり、パルプ状にならなかったりする。
【0013】
次に、表2は、古紙の解繊状態が良好な場合の注水量を、古紙の種類毎に示す表である。なお、この表2の実験における古紙解繊装置2の運転時間は、全ての古紙の種類対してそれぞれ6分間とする。
【0014】
【表2】

【0015】
表2に示すように、解繊状態が良好な注水量は、コピー紙の場合0.6kg、新聞紙の場合0.8kg、チラシの場合0.65kg、雑誌の場合0.65kgとなる。
このように、古紙1kgを解繊する場合は、古紙の種類により若干変化するが、解繊する古紙の重さに対して60〜80%の重さの水を使用することが望ましい。すなわち、例えば、古紙解繊装置2において1kgの古紙を解繊する場合は、水注入装置3から600〜800g程度の水を古紙解繊装置2のタンク10内に注入することが望ましい。
【0016】
このように、古紙解繊システム1により生成された繊維素材は、圧縮しても廃液がでないようにすることができる。また、古紙解繊システム1により生成された繊維素材は、ほぼ全てをパルプ状にすることができる。
【特許文献1】特開2000−290898号 (第2〜4頁、第1〜3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、改良前の前記古紙解繊システム1における前記タンク10の内壁には古紙の解繊が進むにつれて内部の水が蒸発し、水滴として付着し、更に、その水滴に解繊された繊維状の紙がびっしりと粘り付く。そのため、古紙の解繊作業を終えた後前記タンク10内の掃除をするとなると、束子やデッキブラシを用いてごしごしとこそぎ落す必要があり掃除に多くの時間と労力を費やすと云った不都合があった。
【0018】
そこで、本発明は、掃除の手間を軽減可能に改良した古紙解繊装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために本発明では、以下のような構成を採用した。
すなわち、タンクを有し、このタンクの底壁部近傍にモータにより回転される回転羽を有する古紙解繊装置において、前記タンクの内部を上下に動く上下可動板を設け、この上下可動板の周辺部にゴム、軟質プラスチック、スポンジ、フェルトその他の弾性体で形成した帯状部材を設け、この帯状部材は前記タンクの内壁に当接させて古紙解繊装置を構成する。そして、前記上下可動板は透明板で形成することもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の古紙解繊装置は、古紙の解繊中にタンクの内壁に付着する繊維状の紙を排除する上下可動板を設けたので、掃除の手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図2は、本発明の実施形態の古紙解繊装置を示す斜視図であり、図3は古紙解繊装置の概略中央断面図である。また、図4は蓋体を開いてはいるが、上下可動板がタンクの開口に残った状態を示す概略平面図である。図5は蓋体を閉じた状態を示す斜視図である。これらの図において、古紙解繊装置21はタンク22を有し、このタンク22の上部には蓋体23を設けてある。この蓋体23のほぼ中央部には後記する上下可動板を上下に動かす上下駆動装置24を固定してある。この上下駆動装置はラックピニオン機構とモータ25を一体化して構成されたもので、一般に市販されているものであるが、他の構成の上下駆動装置を用いることも可能である。前記上下駆動装置24は上下に可動し得る可動軸26を有しており、この可動軸26の下端部は前記タンク22の開口の形状に合わせて形成してある上下可動板27のほぼ中央部に保定されている。即ち、前記可動軸26は角柱であり、下端部両側壁にねじ溝が形成されている。一方、不図示の底壁を有する角筒(小型の枡のような形体)を設けており、この角筒の底壁にはねじ溝を形成してある。そして、前記上下可動板27は支持板28を介して前記上下可動板27側からねじを前記角筒の底壁のねじ溝にねじ込んで前記角筒に固定している。また、前記可動軸26の下端部は前記角筒に嵌合させ前記角筒の両側壁から前記角柱の下端部両側壁のねじ溝にねじをねじ込んで前記角筒に固定される。
【0022】
前記上下可動板27は上から覗いて内部を透視できるよう透明板、例えば、透明プラスチック板で形成してあるが、不透明板で形成することもある。なお、上下可動板27には空気の抜き孔を幾つか穿設し、上下可動板27を動かし易くしても良い。また、上下可動板を不透明版で形成する場合には、空気の抜き孔と内部の状況を把握するための覗き孔の役を兼任する例えば直径約10cm程度の円孔を上下可動板に穿設すると良い。
【0023】
前記上下可動板27の周辺部にはゴム、軟質プラスチック、スポンジ、フェルトその他の弾性体で形成したほぼ一定幅の帯状部材29を設けており、この帯状部材29の外周端は前記上下可動板27の外周端よりも外側へやや食み出すように設定してある。そして、前記帯状部材29は前記上下可動板27と抑え板30とにより挟着される。即ち、前記抑え板30は金属板(例えば、アルミニウム)で形成し、前記帯状部材29を前記上下可動板27と前記抑え板30とで挟んだ状態で要所要所をねじとナットで止着する。なお、前記支持板28も前記抑え板30と同様に金属板(例えば、アルミニウム)で形成し、要所要所をねじとナットで止着するようにしてもよい。なお、前記タンクの底部には古紙を解繊するための回転羽31a、31b及びこれらを回転させるためのモータ32a、32bを設けてあるが、モータと回転羽を各々一つづつ設けて構成される古紙解繊装置やモータと回転羽を各々三つ以上設けて構成される古紙解繊装置にも本発明を適用することができる。
【0024】
而して、前記蓋体23を開けて、タンク内に古紙と適量の水を入れ、前記蓋体23を閉じる。この時、前記帯状部材29の外周端は前記タンク22の内壁に当接している。運転を開始した後、解繊状態に応じて徐々に前記上下可動板27を下げて行く。その結果、前記帯状部材29の外周端は前記タンク22の内壁を摺動して行く。従って、前記タンク22の内壁に付着した繊維状の紙は前記帯状部材29の外周端によって排除される。運転終了の頃には前記上下可動板27はかなり下方に下げられ、前記上下可動板27が位置する部分よりも上方の前記タンク22の内壁にはほとんど繊維状の紙は付着していない状態になる。それ故、掃除に多くの時間と労力を費やす必要がなくなる。また、前記上下可動板27を透明板で形成した場合には古紙の解繊状態を目視によって確かめることができるので、前記上下可動板27を下げて行く好機を容易に把握できる。なお、前記帯状部材29には要所要所に切り込み又は空気の抜き孔を設け前記上下可動板27を円滑に動かせるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)及び(b)は改良前の古紙解繊システムを示す図である。
【図2】本発明の実施形態の古紙解繊装置を示す概略斜視図である。
【図3】古紙解繊装置の概略中央断面図である。
【図4】蓋体を開いてはいるが、上下可動板がタンクの開口に残った状態を示す概略平面図である。
【図5】蓋体を閉じた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 古紙解繊システム
2 古紙解繊装置
3 水注入装置
4 繊維素材吸出装置
5 運転開始ボタン
6 運転開始ボタン
7 水注入管
8 運転開始ボタン
9 繊維素材吸出管
10 タンク
11 蓋
12 回転羽
13 ベルト
14 モータ
21 古紙解繊装置
22 タンク
23 蓋体
24 上下駆動装置
25 モータ
26 可動軸
27 上下可動板
28 支持板
29 帯状部材
30 抑え板
31a 回転羽
31b 回転羽
32a モータ
32b モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクを有し、該タンクの底壁部近傍にモータにより回転される回転羽を有する古紙解繊装置において、
前記タンクの内部を上下に動く上下可動板を設け、該上下可動板の周辺部にゴム、軟質プラスチック、スポンジ、フェルトその他の弾性体で形成した帯状部材を設け、該帯状部材は前記タンクの内壁に当接させてあることを特徴とする古紙解繊装置。
【請求項2】
前記上下可動板は透明板で形成してある請求項1記載の古紙解繊装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−77381(P2006−77381A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266009(P2004−266009)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000108801)タマパック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】