説明

可動体支持装置

【課題】X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれの方向においてもリンクの剛性を得ることができる可動体支持装置を提供すること。
【解決手段】可動体支持装置10は、可動体18の移動範囲の中で、Z軸と一致する方向に可動体を支持可能な第1のリンク機構部20、X軸と一致する方向に支持可能な第2のリンク機構部30、及びY軸と一致する方向に支持可能な第3のリンク機構部40を有する。第1〜第3のリンク機構部20,30,40は2本の第1〜第3のリンク26,36,46を有する。第1〜第3のリンク26,36,46それぞれは可動体18の移動範囲の中で各軸に一致可能に延びるとともに、可動体18の移動範囲の中で隣り合うリンク機構部20,30,40のリンク26,36,46のなす角度が90度を取り得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を支持する可動体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の可動体支持装置としては、例えば、特許文献1に開示のパラレルメカニズム工作機械80が挙げられる。図8に示すように、パラレルメカニズム工作機械80の固定台81には、6本のリンク82〜87の一端が自在継手82a〜87aを介して支持されるとともに、6本のリンク82〜87の他端には可動体88が自在継手82b〜87bを介して支持されている。
【0003】
可動体88の下端寄りは、2本のリンク82,83よりなる第1リンク91により支持されている。パラレルメカニズム工作機械80の初期状態(駆動せず、停止した状態)では、リンク82がX軸方向に、リンク83がY軸方向に延びるとともに、リンク82、83は、互いのなす角度がほぼ90度になっている。
【0004】
可動体88の上端寄りは、2本のリンク84,85よりなる第2リンク92により支持されている。パラレルメカニズム工作機械80の初期状態(駆動せず、停止した状態)では、リンク84がX軸方向に、リンク85がY軸方向に延びるとともに、リンク84、85は、互いのなす角度がほぼ90度になっている。
【0005】
また、可動体88の下端寄りにおいて、第1リンク91の反対側には、規制リンク86が設けられ、この規制リンク86は、主に可動体88のZ軸周りの回転自由度を拘束する。さらに、可動体88の上端は、リンク87により固定台81から吊下げ支持されている。
【0006】
そして、パラレルメカニズム工作機械80においては、可動体88に加わるX軸方向の外力は2本のリンク82,84で、Y軸方向の外力は2本のリンク83,85で、軸方向に直接受承することができる。また、Z軸方向の外力については、リンク87の軸方向に直接受承することができる。このため、それらリンク82〜85,87に加わる外力が分力によって増幅されることがほとんどなく、リンク82〜85,87で外力に耐えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−126956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1のパラレルメカニズム工作機械80においては、Z軸方向の外力については、リンク87だけで受承するため、Z軸方向の剛性がX軸方向及びY軸方向に比べて小さいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれの方向においてもリンクの剛性を得ることができる可動体支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、可動体の移動範囲の中で、Z軸と一致する方向に前記可動体を支持可能な第1のリンク機構部、X軸と一致する方向に前記可動体を支持可能な第2のリンク機構部、及びY軸と一致する方向に前記可動体を支持可能な第3のリンク機構部を有し、前記各リンク機構部が、駆動源と、該駆動源に一端が揺動可能に支持されるとともに、前記可動体に他端が揺動可能に支持された2本のリンクと、からなり、各リンク機構部の2本のリンクそれぞれが前記可動体の移動範囲の中で各軸に一致可能に延びるとともに、前記第1〜第3のリンク機構部により前記可動体が各軸回りの回転が規制された状態で支持され、さらに、前記可動体の移動範囲の中で隣り合うリンク機構部のリンクのなす角度が90度を取り得るように構成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可動体支持装置において、前記2本のリンクは、互いに平行をなすことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の可動体支持装置において、前記2本のリンクの両端は、それぞれボールジョイントにより連結されていることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の可動体支持装置において、前記ボールジョイントは、前記2本のリンクの両端に回転可能に支持されたボールと、該ボールに対し摺動可能に支持された球面軸受と、からなり、前記リンクの両端の前記ボールは付勢部材により前記リンクの軸方向に沿って互いに引寄せられる方向又は相反する方向に付勢されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれの方向においてもリンクの剛性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の可動体支持装置を示す斜視図。
【図2】実施形態の可動体支持装置を示す側面図。
【図3】実施形態の可動体支持装置を示す模式図。
【図4】可動体支持装置の動作状態を示す斜視図。
【図5】リンク及びボールジョイントを示す部分断面図。
【図6】複数の可動体支持装置を集約してなる工作機械を模式的に示す平面図。
【図7】(a)〜(e)は別例の可動体支持装置を示す模式図。
【図8】背景技術を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を工作機械における可動体支持装置に具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。
図1に示すように、工作機械における可動体支持装置(以下、支持装置10と記載する)のフレーム11は、四角枠状の下フレーム12と、下フレーム12の3つの角部から立設された第1〜第3支持フレーム13a〜13cと、第1〜第3支持フレーム13a〜13cに支持された四角枠状の上フレーム14と、から形成されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、上フレーム14の下面には、矩形状の第1の支持板15が固定されるとともに、この第1の支持板15には第1のリンク機構部20が支持されている。また、第1支持フレーム13aには、矩形状の第2の支持板16が固定されるとともに、この第2の支持板16には第2のリンク機構部30が支持されている。さらに、下フレーム12には、矩形状の第3の支持板17が固定されるとともに、この第3の支持板17には第3のリンク機構部40が支持されている。そして、第1〜第3のリンク機構部20,30,40により、略三角錐状をなす可動体18が、その上面18aを水平に維持した状態でX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向へ移動可能に支持されている。すなわち、可動体18は、第1〜第3のリンク機構部20,30,40により、XYZの各軸回りの回転が規制された状態で支持されている。この可動体18には、図示しないツールが支持され、可動体18の移動に伴いツールが移動するようになっている。
【0017】
第1のリンク機構部20において、第1の支持板15には、第1の支持ブラケット15aが固定されるとともに、この第1の支持ブラケット15aには、第1のサーボモータM1に連結された第1の減速機G1が支持されている。なお、第1のサーボモータM1には、図示しないコントローラが信号接続されている。また、第1の減速機G1には、第1のカップリングC1を介して第1のクランク軸21が接続されている。なお、第1の支持板15には、一対のクランク軸支持部材22が固定されるとともに、各クランク軸支持部材22には、第1のクランク軸21が回転可能に支持されている。
【0018】
第1のクランク軸21の両端部には、それぞれ細板状をなすアーム23の基端が第1のクランク軸21に一体で固定されている。そして、第1のクランク軸21が回転すると、両アーム23が第1のクランク軸21を回動中心として同期して回動するようになっている。両アーム23の先端には、第1の回動軸24が回動可能に支持されている。第1の回動軸24の各アーム23からの突出端には、ボールジョイント25を介して第1のリンク26の一端が揺動可能に支持されている。また、2本の第1のリンク26の他端は、ボールジョイント27を介して第1の連結軸28に揺動可能に支持されている。なお、第1の連結軸28は、可動体18の上側面に固定された一対の連結軸支持部材29によって回動可能に支持されている。
【0019】
図5に示すように、ボールジョイント25は、第1の回動軸24の突出端に回動可能に支持されたボール25aと、このボール25aを取り囲む球面軸受25bとからなり、この球面軸受25bに第1のリンク26の一端が連結されている。また、ボールジョイント27は、第1の連結軸28の突出端に回動可能に支持されたボール27aと、このボール27aを取り囲む球面軸受27bとからなり、この球面軸受27bに第1のリンク26の他端が連結されている。このため、第1のリンク26は、ボールジョイント25,27によって左右方向へ揺動可能に支持されている。
【0020】
第1の回動軸24と、第1の連結軸28とは、互いに平行をなすとともに、2本の第1のリンク26は、互いに平行をなすリンク対を構成している。また、第1の回動軸24には、第1のコイルバネF1の一端が連結されるとともに、この第1のコイルバネF1の他端は第1の連結軸28に連結されている。そして、第1の回動軸24と、第1の連結軸28とは、付勢部材としての第1のコイルバネF1の圧縮方向への付勢力により、互いに平行を維持した状態で引寄せられる方向に付勢されている。このため、第1の回動軸24に一体のボール25aと、第1の連結軸28に一体のボール27aとは、第1のコイルバネF1の付勢力により互いに引寄せられる方向に付勢されている。よって、各ボール25a,27aは、各球面軸受25b,27bの内周面に押し付けられている。
【0021】
図2に示すように、第1のクランク軸21の軸方向中央には、アーム23とは逆方向に延びるバランサ21aが固定されるとともに、このバランサ21aにより、アーム23が下方へ引張られることを規制している。
【0022】
図1及び図2に示すように、支持装置10が駆動せず、かつ可動体18に外力が付与されていない初期状態では、可動体18は第1のリンク機構部20により上フレーム14から吊下げ支持されている。そして、第1のリンク26は、可動体18の移動範囲の中で鉛直方向(Z軸方向)に延びており、可動体18は第1のリンク機構部20によりZ軸方向に支持されている。
【0023】
そして、第1のサーボモータM1が駆動されると、第1の減速機G1によって減速された回転数で第1のクランク軸21が回転するようになっている。また、第1のクランク軸21の回転に連動して、アーム23が回動すると、第1の回動軸24が回動する。さらに、第1の回動軸24の回動に連動して、第1のリンク26がZ軸方向へ変位すると、この変位に伴い第1の連結軸28が回動する。その結果、可動体18が、Z軸回りの回転が規制されてZ軸方向へ変位するようになっている。
【0024】
次に、第2のリンク機構部30について説明する。
第2のリンク機構部30において、第2の支持板16には、第2の支持ブラケット16aが固定されるとともに、この第2の支持ブラケット16aには、第2のサーボモータM2に連結された第2の減速機G2が支持されている。なお、第2のサーボモータM2には、図示しないコントローラが信号接続されている。また、第2の減速機G2には、第2のカップリングC2を介して第2のクランク軸31が接続されている。なお、第2の支持板16には、一対のクランク軸支持部材32が固定されるとともに、各クランク軸支持部材32には第2のクランク軸31が回転可能に支持されている。
【0025】
第2のクランク軸31の両端部には、それぞれ細板状をなすアーム33の基端が第2のクランク軸31に一体で固定されている。そして、第2のクランク軸31が回転すると、両アーム33が第2のクランク軸31を回動中心として同期して回動するようになっている。両アーム33の先端には、第2の回動軸34が回動可能に支持されている。第2の回動軸34の各アーム33からの突出端には、ボールジョイント35を介して第2のリンク36の一端が回動可能に支持されている。また、2本の第2のリンク36の他端は、ボールジョイント37を介して第2の連結軸38に回動可能に支持されている。なお、第2の連結軸38は、可動体18の左側面に固定された一対の連結軸支持部材39によって回動可能に支持されている。
【0026】
第2の回動軸34と、第2の連結軸38とは、互いに平行をなすとともに、2本の第2のリンク36は、互いに平行をなすリンク対を構成している。また、第2の回動軸34には、付勢部材としての第2のコイルバネF2の一端が連結されるとともに、この第2のコイルバネF2の他端は第2の連結軸38に連結されている。そして、第2の回動軸34と、第2の連結軸38とは、第2のコイルバネF2の圧縮方向への付勢力により、互いに平行を維持した状態で引寄せられる方向に付勢されている。なお、ボールジョイント35,37は、第1のリンク機構部20におけるボールジョイント25,27と同様の構成をなすのでその説明を省略する。そして、ボールジョイント35,37において、第2の回動軸34に一体のボールと、第2の連結軸38に一体のボールとは、第2のコイルバネF2の付勢力により互いに引寄せられる方向に付勢されている。よって、各ボールは、各球面軸受の内周面に押し付けられている。
【0027】
支持装置10が駆動せず、かつ可動体18に外力が付与されていない初期状態では、可動体18は、第2のリンク機構部30により側方から支持されている。そして、第2のリンク36は、可動体18の移動範囲の中でX軸方向に延びており、可動体18は第2のリンク機構部30によりX軸方向に支持されている。
【0028】
そして、第2のサーボモータM2が駆動されると、第2の減速機G2によって減速された回転数で第2のクランク軸31が回転するようになっている。また、第2のクランク軸31の回転に連動して、アーム33が回動すると、第2の回動軸34が回動する。さらに、第2の回動軸34の回動に連動して、第2のリンク36がX軸方向へ変位すると、この変位に伴い第2の連結軸38が回動する。その結果、可動体18が、X軸回りの回転が規制されてX軸方向へ変位するようになっている。
【0029】
続いて、第3のリンク機構部40について説明する。
第3のリンク機構部40において、第3の支持板17には、第3の支持ブラケット17aが固定されるとともに、この第3の支持ブラケット17aには、第3のサーボモータM3に連結された第3の減速機G3が支持されている。なお、第3のサーボモータM3には、図示しないコントローラが信号接続されている。また、第3の減速機G3には、第3のカップリングC3を介して第3のクランク軸41が接続されている。なお、第3の支持板17には、一対のクランク軸支持部材42が固定されるとともに、第3のクランク軸41は、クランク軸支持部材42に回転可能に支持されている。
【0030】
第3のクランク軸41の両端部には、それぞれ細板状をなすアーム43の基端が第3のクランク軸41に一体で固定されている。そして、第3のクランク軸41が回転すると、両アーム43が第3のクランク軸41を回動中心として同期して回動するようになっている。両アーム43の先端には、第3の回動軸44が回動可能に支持されている。第3の回動軸44の各アーム43からの突出端には、ボールジョイント45を介して第3のリンク46の一端が回動可能に支持されている。また、2本の第3のリンク46の他端は、ボールジョイント47を介して第3の連結軸48に回動可能に支持されている。なお、第3の連結軸48は、可動体18の右側面に固定された一対の連結軸支持部材49によって回動可能に支持されている。
【0031】
第3の回動軸44と、第3の連結軸48とは、互いに平行をなすとともに、2本の第3のリンク46は、互いに平行をなすリンク対を構成している。また、第3の回動軸44には、付勢部材としての第3のコイルバネF3の一端が連結されるとともに、この第3のコイルバネF3の他端は第3の連結軸48に連結されている。そして、第3の回動軸44と、第3の連結軸48とは、第3のコイルバネF3の圧縮方向への付勢力により、互いに平行を維持した状態で引寄せられる方向に付勢されている。なお、ボールジョイント45,47は、第1のリンク機構部20におけるボールジョイント25,27と同様の構成をなすのでその説明を省略する。そして、ボールジョイント45,47において、第3の回動軸44に一体のボールと、第3の連結軸48に一体のボールとは、第3のコイルバネF3の付勢力により互いに引寄せられる方向に付勢されている。よって、各ボールは、各球面軸受の内周面に押し付けられている。
【0032】
支持装置10が駆動せず、かつ可動体18に外力が付与されていない初期状態では、可動体18は第3のリンク機構部40により下フレーム12に支持されている。そして、第3のリンク46は、可動体18の移動範囲の中でY軸方向に延びており、可動体18は第3のリンク機構部40によりY軸方向に支持されている。
【0033】
そして、第3のサーボモータM3が駆動されると、第3の減速機G3によって減速された回転数で第3のクランク軸41が回転するようになっている。また、第3のクランク軸41の回転に連動して、アーム43が回動すると、第3の回動軸44が回動する。さらに、第3の回動軸44の回動に連動して、第3のリンク46がY軸方向へ変位すると、この変位に伴い第3の連結軸48が回動する。その結果、可動体18が、Y軸回りの回転が規制されてY軸方向へ変位するようになっている。
【0034】
図3の模式図に示すように、支持装置10の初期状態においては、第1のリンク機構部20の第1のリンク26と、第2のリンク機構部30の第2のリンク36とがなす角度は90度になっている。また、支持装置10の初期状態において、第1のリンク機構部20の第1のリンク26と、第3のリンク機構部40の第3のリンク46とがなす角度も90度になっている。
【0035】
次に、支持装置10の作用について説明する。
支持装置10においては、コントローラに対し、可動体18を移動させる位置情報が入力されると、その移動情報に応じた指令信号がコントローラから第1〜第3のサーボモータM1〜M3へ出力される。すると、指令信号に基づき、第1〜第3のサーボモータM1〜M3の駆動量が制御されるとともに、第1〜第3の減速機G1〜G3により回転数が減速され、その回転数に応じて第1〜第3のリンク26,36,46の移動量が制御される。その結果、可動体18は、位置情報で指定された位置へ移動し、可動体18に支持されたツールも位置情報で指定された位置へ移動する。
【0036】
図4に示すように、可動体18の移動範囲において、第1〜第3のクランク軸21,31,41と、第1〜第3の回動軸24,34,44と、第1〜第3の連結軸28,38,48の回動により、第1のリンク26と第2のリンク36、及び第1のリンク26と第3のリンク46は70〜110度の角度範囲内で変位する。そして、可動体18の移動範囲の中で、第1のリンク26はZ軸と一致する方向に支持される場合もあれば、Z軸からずれた方向に支持される場合もある。また、可動体18の移動範囲の中で、第2のリンク36はX軸と一致する方向に支持される場合もあれば、X軸からずれた方向に支持される場合もある。さらに、可動体18の移動範囲の中で、第3のリンク46はY軸と一致する方向に支持される場合もあれば、Y軸からずれた方向に支持される場合もある。
【0037】
このため、可動体18に加わるZ軸方向の外力は、第1のリンク機構部20における2本の第1のリンク26でZ軸方向に直接受承され、X軸方向の外力は、第2のリンク機構部30における2本の第2のリンク36で、X軸方向に直接受承される。さらに、Y軸方向の外力についても、第3のリンク機構部40における2本の第3のリンク46で、Y軸方向に直接受承される。
【0038】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1のリンク機構部20により、可動体18をその移動範囲の中でZ軸に一致する方向に支持可能とするとともに、第2のリンク機構部30により、可動体18をその移動範囲の中でX軸に一致する方向に支持可能とし、さらに、第3のリンク機構部40により、可動体18をその移動範囲の中でY軸に一致する方向に支持可能とした。また、支持装置10は、可動体18の移動範囲の中で、2本の第1のリンク26と、2本の第2のリンク36とが90度を取り得るように構成するとともに、2本の第1のリンク26と、2本の第3のリンク46とが90度を取り得るように構成した。このため、可動体18の移動範囲の中では、第1〜第3のリンク26,36,46は、互いのなす角度が70〜110度となり、それぞれ軸方向がXYZの各軸方向にほぼ沿うように延びる。したがって、第1〜第3のリンク26,36,46に加わる外力が分力によってほとんど増幅されることがなく、第1〜第3のリンク26,36,46で外力に耐えることができる。
【0039】
(2)特にZ軸方向においては、2本の第1のリンク26で外力を受承する。よって、背景技術のように1本のリンクでZ軸方向の外力を受承する場合と比べると、Z軸方向の剛性を高めることができる。また、Z軸回りの回転力に対しては、2本で受承することができる。よって、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれの方向においてもリンク26,36,46の剛性を得ることができる。
【0040】
(3)支持装置10では、それぞれ2本の第1〜第3のリンク26,36,46により可動体18が支持され、可動体18の回転が規制されている。このため、可動体18に例えば回転工具が支持されている場合、可動体18に回転力が作用しても、その回転力を2本の第1〜第3のリンク26,36,46で受承することができる。したがって、回転力が第1〜第3のサーボモータM1〜M3に作用することを防止することができ、第1〜第3のサーボモータM1〜M3で回転力を受承する必要がないため、第1〜第3のサーボモータM1〜M3を大型化する必要もない。
【0041】
そして、第1〜第3のサーボモータM1〜M3を大型化する必要がないため、第1〜第3のサーボモータM1〜M3を高精度、かつ高速で駆動させることが可能になり、可動体18を指定された位置に正確に移動させることができ、しかも、高速で移動させることができる。
【0042】
(4)第1〜第3のリンク26,36,46は、それぞれ2本ずつ互いに平行をなす。このため、第1〜第3のリンク26,36,46に作用する外力を2本のリンクで均等に分散して受承することができる。
【0043】
(5)第1〜第3のリンク26,36,46の一端は、それぞれボールジョイント25,35,45によって第1〜第3の回動軸24,34,44に対し揺動可能に支持され、他端はそれぞれボールジョイント27,37,47によって第1〜第3の連結軸28,38,48に対し揺動可能に支持されている。また、第1〜第3の回動軸24,34,44と第1〜第3の連結軸28,38,48とは、第1〜第3のコイルバネF1〜F3によって互いに引寄せられている。このため、第1〜第3のコイルバネF1〜F3の付勢力によって、ボールジョイント25,27,35,37,45,47のボール25a,27aに、球面軸受25b,27bを押し付けることができる。その結果として、ボールジョイント25,27,35,37,45,47のがたつきを抑えることができ、第1〜第3のリンク26,36,46を介した可動体18の位置決めを高精度で行うことができる。
【0044】
(6)支持装置10は、第1〜第3のリンク機構部20,30,40により、Z軸方向、X軸方向、及びY軸方向に沿ってそれぞれ2本の第1〜第3のリンク26,36,46を変位させて、可動体18の位置を制御する。すなわち、Z軸方向、X軸方向、及びY軸方向全て同じ構成になっている。このため、背景技術のように、X軸方向及びY軸方向は2本のリンクで可動体の位置制御を行うとともに、Z軸方向においては1本のリンクで可動体の位置制御を行い、さらに、規制リンクで可動体の回転を規制するようにした場合と比べると、本実施形態の支持装置10は、可動体18の位置制御を簡単に行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図6の模式図に示すように、支持装置10を複数並設し、複数の支持装置10を協調させて動作させてもよい。この場合、各支持装置10において、フレーム11の第1〜第3支持フレーム13a〜13cが形成されていない部位を互いに突き合わせるように支持装置10を並設する。このように構成すると、複数の可動体18を近接させて1箇所に集約して配置することができ、各可動体18に支持されたツールによる作業を1箇所で集中して行うことが可能になる。その結果として、ツールによる作業効率が向上するとともに、複数のツールによる連携作業も可能になる。
【0046】
○ 図7(a)に示すように、可動体70を四角箱状に想定した場合、可動体70の上面70aにおいて、X軸方向とY軸方向が交差する位置にある2組の角部のうち、一方の角部それぞれに第1のリンク26を連結して可動体70をZ軸方向に支持する。また、可動体70の左側面70bの対角線上に位置する2組の角部のうち、一方の角度それぞれに第2のリンク36を連結して可動体70をX軸方向に支持する。さらに、可動体70の後面70cの対角線上に位置する2組の角部のうち、一方の角部それぞれに第3のリンク46を連結して可動体70をY軸方向に支持してもよい。
【0047】
○ 図7(b)に示すように、図7(a)に示す態様に対し、第1〜第3のリンク26,36,46を連結する角部を他方の角部に変更してもよい。
○ 図7(c)に示すように、可動体70を四角箱状に想定した場合、可動体70の上面70aにおいて、X軸方向に延びる2辺のうち可動体70の後面70c側の辺の両端それぞれに第1のリンク26を連結して可動体70をZ軸方向に支持する。また、可動体70の上面70aにおいて、Y軸方向に延びる2辺のうち可動体70の左側面70b側の辺の両端それぞれに第2のリンク36を連結して可動体70をX軸方向に支持する。さらに、可動体70の後面70cにおいて、Z軸方向に延びる2辺のうち可動体70の左側面70b側の辺の両端それぞれに第3のリンク46を連結して可動体70をY軸方向に支持してもよい。
【0048】
○ 図7(d)に示すように、図7(c)に示す態様において、第1〜第3のリンク26,36,46を連結する辺を他方の辺に変更してもよい。
○ 図7(e)に示すように、可動体70を四角箱状に想定した場合、可動体70の上面70aにおいて、Y軸方向に延びる対向する2辺の中央それぞれに第1のリンク26を連結して可動体70をZ軸方向に支持する。また、可動体70の左側面70bにおいて、Z軸方向に延びる対向する2辺それぞれに第2のリンク36を連結して可動体70をX軸方向に支持する。さらに、可動体70の後面70cにおいて、X軸方向に延びる対向する2辺それぞれに第3のリンク46を連結して可動体70をY軸方向に支持してもよい。
【0049】
○ 実施形態では、第1〜第3のリンク26,36,46の両端をボールジョイント25,27,35,37,45,47で支持したが、ボールジョイントを、2方向の角度自由度を有する連結機構、例えば、ユニバーサルジョイントや二股自在継手に変更してもよい。
【0050】
○ 実施形態では、第1〜第3のコイルバネF1〜F3の付勢力により、第1〜第3のリンク26,36,46の両端のボールを互いに引寄せられる方向に付勢したが、付勢部材を空気バネやコイルバネに変更して、ボール同士を相反する方向に付勢してもよい。
【0051】
○ 付勢部材として第1〜第3のコイルバネF1〜F3に具体化したが、付勢部材は板バネ、ゴム等に変更してもよい。
○ 実施形態では、可動体支持装置10を、工作機械に適用したが、可動体支持装置は、工作機械以外にも、可動体をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能に支持するものに適用してもよい。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の可動体支持装置を複数並設し、前記可動体を1箇所に集約配置可能に構成された工作機械。
【符号の説明】
【0053】
F1〜F3…付勢部材としての第1〜第3のコイルバネ、G1〜G3…駆動源を構成する第1〜第3の減速機、M1〜M3…駆動源を構成する第1〜第3のサーボモータ、10…可動体支持装置、18,70…可動体、20…第1のリンク機構部、25,27,35,37,45,47…ボールジョイント、25a,27a…ボール、25b,27b…球面軸受、26,36,46…第1〜第3のリンク、30…第2のリンク機構部、40…第3のリンク機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体の移動範囲の中で、Z軸と一致する方向に前記可動体を支持可能な第1のリンク機構部、
X軸と一致する方向に前記可動体を支持可能な第2のリンク機構部、
及びY軸と一致する方向に前記可動体を支持可能な第3のリンク機構部を有し、
前記各リンク機構部が、
駆動源と、
該駆動源に一端が揺動可能に支持されるとともに、前記可動体に他端が揺動可能に支持された2本のリンクと、からなり、
各リンク機構部の2本のリンクそれぞれが前記可動体の移動範囲の中で各軸に一致可能に延びるとともに、前記第1〜第3のリンク機構部により前記可動体が各軸回りの回転が規制された状態で支持され、さらに、前記可動体の移動範囲の中で隣り合うリンク機構部のリンクのなす角度が90度を取り得るように構成されている可動体支持装置。
【請求項2】
前記2本のリンクは、互いに平行をなす請求項1に記載の可動体支持装置。
【請求項3】
前記2本のリンクの両端は、それぞれボールジョイントにより連結されている請求項1又は請求項2に記載の可動体支持装置。
【請求項4】
前記ボールジョイントは、前記2本のリンクの両端に回転可能に支持されたボールと、該ボールに対し摺動可能に支持された球面軸受と、からなり、前記リンクの両端の前記ボールは付勢部材により前記リンクの軸方向に沿って互いに引寄せられる方向又は相反する方向に付勢されている請求項3に記載の可動体支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240167(P2012−240167A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113800(P2011−113800)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】