説明

可動刃、用紙切断装置、およびプリンタ

【課題】長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない可動刃を提供する。
【解決手段】ギロチン式の用紙切断装置における可動刃22において、その幅方向の両端にあって刃先部22aよりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃12との噛み合わせを案内する対のガイド部22cは、製造における打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側Prの外縁部の角部を除去する加工がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙やラベルシート等の用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を自動的に切断する用紙切断装置に用いられ、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の用紙切断装置は、固定刃と、固定刃を可動刃に対して加圧する付勢手段とを備えた固定刃ユニットと、可動刃と、駆動源に接続され、可動刃をストローク方向に駆動する駆動手段とを備えた可動刃ユニットとを有している。固定刃および可動刃は、プリンタ内の用紙通路における印字済みの用紙の表裏面を挟んで対向している。
【0003】
固定刃および可動刃を有する用紙切断装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
用紙切断装置の一例として、固定刃ユニットおよび可動刃ユニットに備えられた固定刃および可動刃のみを示す図1(a)〜(c)を参照すると、可動刃72は、固定刃12の刃先部と噛み合う刃先部72aと、用紙Sの幅方向に対応した可動刃72の幅方向の両端において刃先部72aよりも噛み合い先頭側(図中、上側)に向かって突出し、切断の際に固定刃12との噛み合わせを案内する対のガイド部72cとを有している。尚、対のガイド部72cは、図1(b)に示されるような曲げ加工がなされている。
【0005】
この用紙切断装置は、次のように動作する。図1(a)中の右から左に向かって搬送される用紙Sが一旦停止され、駆動手段によって可動刃72がストローク方向Kに動く(上昇する)。固定刃12と可動刃72とは付勢手段によって互いに圧接(噛み合わせ)状態にあるため、鋏の原理で用紙Sは切断され、プリンタの排紙口から排出される。
【0006】
一般に、可動刃は、金型を用いて板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される。
【0007】
外形の打ち抜き加工後、曲げ加工により、図1(b)に示されるように先端(固定刃との噛み合い先頭)に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反った形状の対のガイド部が形成される。
【0008】
打ち抜き加工の際、図示しない可動金型が、板金材に対して図1(c)中の矢印Pで示される向きに打ち込まれる。図1(c)において、符号Pfは打ち抜き前方側を示し、符号Prは打ち抜き後方側を示す。
【0009】
ところで、板金材の打ち抜き加工後には、図1(c)に示されるように、打ち抜き前方側Pfの外縁部はダレと呼ばれる形状を呈する一方、打ち抜き後方側Prの外縁部はカエリと呼ばれる形状を呈している。尚、図1(c)をも含め、本明細書に添付の図面においては、説明の便宜上、ダレおよびカエリの大きさや形状は、誇張して描かれている。
【0010】
可動刃の刃先部としては、固定刃の刃先部と噛み合わせが必要であるため、ダレが無い外縁部、即ち、打ち抜き後方側の外縁部が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−347485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したごとく、打ち抜き加工によって外形が形成される可動刃においては、打ち抜き後方側の外縁部にカエリが生じている。このカエリは、対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部にも生じている。このため、固定刃に対する可動刃の噛み合いに伴い、対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部のカエリ、特に、可動刃のストローク方向に延在するカエリが固定刃の表面に摺動する。そして、当初は図2(a)および(b)に示されるように固定刃12に対する可動刃72の噛み合わせが問題なくなされていたとしても、用紙切断装置の稼働時間の経過に伴って対のガイド部72cのカエリによる固定刃12の磨耗が進行する。この結果、図2(c)および(d)に示されるように、対のガイド部72cのカエリが固定刃12の元来の表面よりも食い込むことになり、その分だけ可動刃72が固定刃12側にズレることになる。この場合、可動刃72の刃先部72aが固定刃12に衝突してロックしたり破損したりすることで、用紙の切断ができなくなるといった不具合を生ずる虞がある。
【0013】
それ故、本発明の課題は、長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない可動刃を提供することである。
【0014】
本発明の他の課題は、上記のような可動刃を有する用紙切断装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の課題は、上記のような用紙切断装置を有するプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に用いられ、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃であって、固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において前記刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有し、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される可動刃において、前記対のガイド部は、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされていることを特徴とする可動刃が得られる。
【0017】
前記対のガイド部は、噛み合い先頭側に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反っており、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの噛み合い先頭を含む所定の先端領域を除く部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされていてもよい。
【0018】
前記対のガイド部は、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされていてもよい。
【0019】
前記対のガイド部は、打ち抜き後方側の外縁部が、角部を除去する加工によって面取形状を呈していてもよい。あるいは、前記対のガイド部は、打ち抜き後方側の外縁部が、角部を除去する加工によってR形状を呈していてもよい。
【0020】
本発明によればまた、固定刃と、前記可動刃とを有し、印字された用紙を介して前記可動刃を前記固定刃に噛み合わせることによって用紙を切断することを特徴とする用紙切断装置が得られる。
【0021】
本発明によればさらに、用紙に印字を行う構成と、前記用紙切断装置とを有することを特徴とするプリンタが得られる。
【0022】
また、本発明によれば、用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に適用され、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃の製造方法であって、固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において前記刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有し、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される可動刃の製造方法において、打ち抜き加工後に、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工を行うことを特徴とする可動刃の製造方法が得られる。
【0023】
打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの噛み合い先頭を含む所定の先端領域を除く部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工を行うと共に、前記対のガイド部が、噛み合い先頭側に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反るように曲げ加工を行ってもよい。
【0024】
打ち抜き加工後に、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみ角部を除去する加工をしてもよい。
【0025】
前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部を、角部を除去する加工によって面取形状に形成してもよい。あるいは、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部を、角部を除去する加工によってR形状に形成してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明による可動刃は、長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)、(b)、(c)は、本発明の関連技術としての可動刃を含む用紙切断装置の要部を示す断面図、用紙切断装置の要部を示す斜視図、可動刃を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の関連技術としての可動刃を含む用紙切断装置の動作を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施例1による可動刃を有する用紙切断装置を搭載したプリンタを示す図である。
【図4】(a)および(b)は、本発明の実施例1による可動刃を含む用紙切断装置の要部を示す斜視図および断面図である。
【図5】(a)および(b)は、本発明の実施例2による可動刃を含む用紙切断装置の要部を示す斜視図および断面図である。
【図6】(a)および(b)は、本発明の実施例3による可動刃を含む用紙切断装置の要部を示す斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による可動刃は、用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に用いられ、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断するものであって、固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有している。可動刃の外形は、板金材を打ち抜き加工することによって形成される。
【0029】
特に、本可動刃においては、打ち抜き加工後に、対のガイド部の幅方向の打ち抜き後方側の外縁部が面押し加工されている。
【0030】
尚、対のガイド部が先端(固定刃との噛み合い先頭)に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反った形状である場合、噛み合い先頭を含む所定の先端領域の打ち抜き後方側の外縁部の面押し加工は不要である。
【0031】
本可動刃は、上記構成により、外形の打ち抜き加工後に、対のガイド部の幅方向の打ち抜き後方側の外縁部に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰され(均され)、長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない。
【0032】
以下、図面を参照して、本発明による可動刃、用紙切断装置、およびプリンタの実施例を説明する。
【実施例1】
【0033】
本発明の実施例1の可動刃は、ロール紙やラベルシート等の用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を自動的に切断する用紙切断装置に用いられ、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断するものである。
【0034】
図3を参照すると、本発明の実施例1のプリンタは、ロール紙S1が装填される下フレーム110と、下フレーム110を開放自在に覆蓋する上フレーム120と、下フレーム110に搭載され、ロール紙S1から用紙Sを図中左向きに繰り出すプラテン130と、プラテン130の周面上の用紙Sに対して印字を行う例えばサーマルタイプの印字ヘッド140とを有している。
【0035】
本プリンタはさらに、印字がなされた用紙Sを切断する用紙切断装置160と、本プリンタの動作を司る下フレーム110内に組み込まれた制御基板150とを有している。
【0036】
用紙切断装置160は、上フレーム120に取り付けられ、固定刃12を備えた固定刃ユニット10と、固定刃ユニット10の下方に印字がなされたロール紙Sを介して対向するように下フレーム110に取り付けられ、可動刃22を備えた可動刃ユニット20とによって構成されている。
【0037】
固定刃ユニット10は、固定刃フレーム11と、固定刃フレーム11に支持された固定刃12と、固定刃12を可動刃22に対して加圧する図示しない付勢手段とを有している。
【0038】
可動刃ユニット20は、可動刃ハウジング21と、可動刃ハウジング21内にてストローク方向Kに可動に支持された可動刃22と、可動刃22に取り付けられた図示しないラックと、図示しない駆動源に接続され、ラックおよび可動刃22をストローク方向Kに駆動する図示しないピニオンギアとを有している。
【0039】
図4(a)および(b)を参照すると、本発明の実施例1の可動刃22は、刃先部22aと、対のガイド部22cとを有している。
【0040】
刃先部22aは、固定刃12と噛み合うことにより、用紙の切断機能を奏する。
【0041】
対のガイド部22cは、用紙S(図3)の幅方向に対応した可動刃22の幅方向の両端において、刃先部22aよりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃12との噛み合わせを案内するものである。
【0042】
可動刃22の外形は、板金材を打ち抜き加工することによって形成される。
【0043】
図4(b)から明らかなように、可動刃22においては、対のガイド部22cが、外形の打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側Prの外縁部が面押し加工されている。対のガイド部22cは、打ち抜き後方側Prの外縁部が、面押し加工によって面取形状を呈している。
【0044】
可動刃22は、上記構成により、外形の打ち抜き加工後に、対のガイド部の幅方向両側の打ち抜き後方側Prの外縁部に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰され(均され)、長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない。尚、対のガイド部は先端(固定刃との噛み合い先頭)に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反った形状であるため、噛み合い先頭を含む所定の先端領域の打ち抜き後方側の外縁部の面押し加工は不要である。
【0045】
次に、可動刃22の製造方法を説明する。
【0046】
まず、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される。外形の打ち抜き加工により、打ち抜き後方側Prの外縁部にはカエリが生じている。
【0047】
次いで、対のガイド部22cの打ち抜き後方側Prの外縁部を面押し加工する。対のガイド部22cは、打ち抜き後方側Prの外縁部が、面押し加工によって面取形状になる。即ち、打ち抜き後方側Prの外縁部に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰される(均される)。即ち、対のガイド部における幅方向両側の打ち抜き後方側外縁部の角部が除去される。
【0048】
続いて、曲げ加工により、用紙切断装置に組み付けられた時に先端に向かうにつれて固定刃12から離れるような形状の対のガイド部22cが形成される。
【0049】
以上のようにして、本発明の実施例1による可動刃22が製造された。
【実施例2】
【0050】
本発明の実施例2は、対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみが面押し加工されている点が実施例1と異なる。このため、実施例1と同一または同様部には同一または同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
図5(a)および(b)を参照すると、本発明の実施例2による可動刃22’は、実施例1と同様に、刃先部22aと、対のガイド部22c’とを有している。刃先部22aは、固定刃12と噛み合うことにより、用紙の切断機能を奏する。
【0052】
対のガイド部22c’は、用紙の幅方向に対応した可動刃22’の幅方向の両端において、刃先部22aよりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃12との噛み合わせを案内するものである。
【0053】
可動刃22’の外形は、板金材を打ち抜き加工することによって形成される。
【0054】
図5(b)から明らかなように、可動刃22’においては、対のガイド部22c’が、外形の打ち抜き加工後に、対のガイド部の打ち抜き後方側Prの外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみが面押し加工されている。対のガイド部22c’は、打ち抜き後方側Prの外縁部のうちの可動刃22’の幅方向内側に位置する部分が、面押し加工によって面取形状を呈している。
【0055】
ここで、固定刃12は、可動刃22’と協働して用紙を切断すべく、図5(a)および(b)に示されるように、用紙の幅方向に対応した固定刃12の幅方向に反った形状を呈している。このため、可動刃22’の打ち抜き後方側Prの外縁部のうち、可動刃22’の幅方向外側に位置する部分は、固定刃12の表面に接することがなく、この部分にカエリが生じていたとしても問題がない。一方、可動刃22’の対のガイド部の打ち抜き後方側Prの外縁部のうち、可動刃22’の幅方向内側に位置する部分は、固定刃12の表面に接するため、この部分のカエリを面押し加工によって除去し、角部も除去している。
【0056】
可動刃22’は、上記構成により、外形の打ち抜き加工後に、対のガイド部の打ち抜き後方側Prの外縁部のうちの可動刃22’の幅方向内側に位置する部分に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰され(均され)、長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない。尚、対のガイド部は先端(固定刃との噛み合い先頭)に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反った形状であるため、噛み合い先頭を含む所定の先端領域の打ち抜き後方側の外縁部の面押し加工は不要である。
【0057】
尚、実施例2による可動刃22’は、実施例1によるプリンタを示す図3を流用的に参照すると、図3の用紙切断装置160において、可動刃22に代えて用いられる。
【0058】
次に、可動刃22’の製造方法を説明する。
【0059】
まず、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される。外形の打ち抜き加工により、打ち抜き後方側Prの外縁部にはカエリが生じている。
【0060】
次いで、対のガイド部22c’の打ち抜き後方側Prの外縁部のうちの可動刃22’の幅方向内側に位置する部分のみを面押し加工する。対のガイド部22c’は、打ち抜き後方側Prの外縁部のうちの可動刃22’の幅方向内側に位置する部分が、面押し加工によって面取形状になる。即ち、打ち抜き後方側Prの外縁部のうちの、対のガイド部の可動刃22’の幅方向内側に位置する部分に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰される(均される)。即ち、対のガイド部の打ち抜き後方側外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分の角部が除去される。
【0061】
続いて、曲げ加工により、用紙切断装置に組み付けられた時に先端に向かうにつれて固定刃12から離れるような形状の対のガイド部22c’が形成される。
【0062】
以上のようにして、本発明の実施例2による可動刃22’が製造された。
【実施例3】
【0063】
本発明の実施例3は、面押し加工でR形状に加工する点が実施例1と異なる。このため、実施例1と同一または同様部には同一または同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
図6(a)および(b)を参照すると、本発明の実施例3による可動刃22”は、実施例1と同様に、刃先部22aと、対のガイド部22c”とを有している。刃先部22aは、固定刃12と噛み合うことにより、用紙の切断機能を奏する。
【0065】
対のガイド部22c”は、用紙の幅方向に対応した可動刃22”の幅方向の両端において、刃先部22aよりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃12との噛み合わせを案内するものである。
【0066】
可動刃22”の外形は、板金材を打ち抜き加工することによって形成される。
【0067】
図6(b)から明らかなように、可動刃22”においては、対のガイド部22c”が、外形の打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側Prの外縁部が面押し加工されている。対のガイド部22c”は、打ち抜き後方側Prの外縁部が、面押し加工によってR形状を呈している。
【0068】
可動刃22”は、上記構成により、外形の打ち抜き加工後に、対のガイド部の打ち抜き後方側Prの外縁部に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰され(均され)、長期に亘って固定刃の磨耗を引き起こすことがない。尚、対のガイド部は先端(固定刃との噛み合い先頭)に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反った形状であるため、噛み合い先頭を含む所定の先端領域の打ち抜き後方側の外縁部の面押し加工は不要である。
【0069】
尚、実施例3による可動刃22”は、実施例1によるプリンタを示す図3を流用的に参照すると、図3の用紙切断装置160において、可動刃22に代えて用いられる。
【0070】
次に、可動刃22”の製造方法を説明する。
【0071】
まず、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される。外形の打ち抜き加工により、打ち抜き後方側Prの外縁部にはカエリが生じている。
【0072】
次いで、対のガイド部22c”の打ち抜き後方側Prの外縁部を面押し加工する。対のガイド部22c”は、打ち抜き後方側Prの外縁部が、面押し加工によってR形状になる。即ち、打ち抜き後方側Prの外縁部に生じたカエリが潰され(均され)、角部も潰される(均される)。即ち、対のガイド部における幅方向両側の打ち抜き後方側外縁部の角部が除去される。
【0073】
続いて、曲げ加工により、用紙切断装置に組み付けられた時に先端に向かうにつれて固定刃12から離れるような形状の対のガイド部22c”が形成される。
【0074】
以上のようにして、本発明の実施例3による可動刃22”が製造された。
【0075】
尚、前述した実施例2についても、実施例3と同様に、面押し加工でR形状に加工するようにしてもよい。
【0076】
また、実施例1〜3においては、面押し加工で、対のガイド部における幅方向両側の打ち抜き後方側外縁部の角部を除去する加工を行う旨記述したが、研削加工で角部を除去する加工を行ってもよい。
【0077】
尚、以上説明した実施例の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、以下の付記は、本発明を何等限定するものではない。
【0078】
[付記1]
用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に用いられ、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃であって、
固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において前記刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有し、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される可動刃において、
前記対のガイド部は、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされていることを特徴とする可動刃。
【0079】
[付記2]
前記対のガイド部は、噛み合い先頭側に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反っており、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの噛み合い先頭を含む所定の先端領域を除く部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされている上記付記に記載の可動刃。
【0080】
[付記3]
前記対のガイド部は、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされている上記付記に記載の可動刃。
【0081】
[付記4]
前記対のガイド部は、打ち抜き後方側の外縁部が、角部を除去する加工によって面取形状を呈している上記付記に記載の可動刃。
【0082】
[付記5]
前記対のガイド部は、打ち抜き後方側の外縁部が、角部を除去する加工によってR形状を呈している上記付記に記載の可動刃。
【0083】
[付記6]
固定刃と、上記付記に記載の可動刃とを有し、印字された用紙を介して前記可動刃を前記固定刃に噛み合わせることによって用紙を切断することを特徴とする用紙切断装置。
【0084】
[付記7]
用紙に印字を行う構成と、上記付記に記載の用紙切断装置とを有することを特徴とするプリンタ。
【0085】
[付記8]
用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に適用され、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃の製造方法であって、
固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において前記刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有し、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される可動刃の製造方法において、
打ち抜き加工後に、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工を行うことを特徴とする可動刃の製造方法。
【0086】
[付記9]
打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの噛み合い先頭を含む所定の先端領域を除く部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工を行うと共に、
前記対のガイド部が、噛み合い先頭側に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反るように曲げ加工を行う上記付記に記載の可動刃の製造方法。
【0087】
[付記10]
打ち抜き加工後に、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみ角部を除去する加工を行う上記付記に記載の可動刃の製造方法。
【0088】
[付記11]
前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部を、角部を除去する加工によって面取形状に形成する上記付記に記載の可動刃の製造方法。
【0089】
[付記12]
前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部を、角部を除去する加工によってR形状に形成する上記付記に記載の可動刃の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上、本発明の幾つかの実施例について説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本願特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
10 固定刃ユニット
11 固定刃フレーム
12 固定刃
20 可動刃ユニット
21 可動刃ハウジング
22、22’、22”、72 可動刃
22a、72a 刃先部
22c、22c’、22c”、72c ガイド部
110 下フレーム
120 上フレーム
130 プラテン
140 印字ヘッド
150 回路基板
160 用紙切断装置
Pf 打ち抜き前方側
Pr 打ち抜き後方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に用いられ、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃であって、
固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において前記刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有し、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される可動刃において、
前記対のガイド部は、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされていることを特徴とする可動刃。
【請求項2】
前記対のガイド部は、噛み合い先頭側に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反っており、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの噛み合い先頭を含む所定の先端領域を除く部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされている請求項1に記載の可動刃。
【請求項3】
前記対のガイド部は、打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工がなされている請求項1または2に記載の可動刃。
【請求項4】
前記対のガイド部は、打ち抜き後方側の外縁部が、角部を除去する加工によって面取形状を呈している請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可動刃。
【請求項5】
前記対のガイド部は、打ち抜き後方側の外縁部が、角部を除去する加工によってR形状を呈している請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可動刃。
【請求項6】
固定刃と、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可動刃とを有し、印字された用紙を介して前記可動刃を前記固定刃に噛み合わせることによって用紙を切断することを特徴とする用紙切断装置。
【請求項7】
用紙に印字を行う構成と、請求項6に記載の用紙切断装置とを有することを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
用紙に印字を行うプリンタに搭載されて印字された用紙を切断する用紙切断装置に適用され、印字された用紙を固定刃と噛み合うことによって切断する可動刃の製造方法であって、
固定刃と噛み合う刃先部と、用紙の幅方向に対応した可動刃の幅方向の両端において前記刃先部よりも噛み合い先頭側に向かって突出し、切断の際に固定刃との噛み合わせを案内する対のガイド部とを有し、板金材を打ち抜き加工することによって外形が形成される可動刃の製造方法において、
打ち抜き加工後に、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工を行うことを特徴とする可動刃の製造方法。
【請求項9】
打ち抜き加工後に、打ち抜き後方側の外縁部のうちの噛み合い先頭を含む所定の先端領域を除く部分のみに打ち抜き後方側の外縁部の角部を除去する加工を行うと共に、
前記対のガイド部が、噛み合い先頭側に向かうにつれて固定刃から大きく離れるように反るように曲げ加工を行う請求項8に記載の可動刃の製造方法。
【請求項10】
打ち抜き加工後に、前記対のガイド部の打ち抜き後方側の外縁部のうちの可動刃の幅方向内側に位置する部分のみ角部を除去する加工を行う請求項8または9に記載の可動刃の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−121075(P2012−121075A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271129(P2010−271129)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【特許番号】特許第4817158号(P4817158)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】