説明

可動家具部材に用いられる自己開閉装置

【課題】必要に応じて使用者が交換または調整することができるように、技術知識のない作業者でも容易に取り付け可能であって、さらに、市場への普及を促進するために低コストを実現することができる可動家具部材の自己閉鎖装置を提供する。
【解決手段】自己閉鎖装置(1)は、第一スライダーを支持する支持体(2)を有する固定ガイド(8)を備える。第一スライダーは、支持体(2)内において、第一弾性手段(5)作用により、スライド軸(100)に沿って往復動可能に摺動し得るものであり、且つ、スライド軸の方向に往復動可能に摺動する駆動要素に設けられた第一駆動手段と係合可能である。支持体(2)は、第一スライダーを移動させるための第一移動手段を含む。第一移動手段は、第一スライダーを駆動手段から解放させるために、第一スライダーに設けられたガイド手段と係合するように適応されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己閉鎖装置に関するものであって、特に、水平方向または鉛直方向に摺動または揺動する可動家具部材の自己閉鎖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ドアや家具の引き出しといった可動家具部材を、事実上自動的に開閉させる装置が、市場に存在している。一つの実施例として、家具部材の引き出しを開くために、キャッチとして知られている装置が、現在使用されている。この装置には、僅かな押力によって開放され、開放されると弾性力によって引き出しを押し出すプッシング要素が、実質的に設けられている。これにより、ハンドルが設けられていない場合において、使用者が引き出しを把持し、完全に開くことを可能とする制御された移動がもたらされる。
【0003】
これとは逆に、引き出しの閉鎖を実行するために、自己閉鎖装置が用いられている。自己閉鎖装置は、通常、引き出しの固定ガイドに連結され、スライダーを支持するための支持体を有している。スライダーは、支持体に設けられた溝内を移動可能となっている。スライダーは、通常、溝内を、バネの作用と反対に、およびバネの作用に従って移動するものであって、駆動要素によって作動される。駆動要素は、引き出しの取り出し可能ガイドに一体的に設けられている。引き出しを開くと自己閉鎖装置が作動され、引き出しが再度閉じられたときに、自己閉鎖装置が、例えばピンを介して、引き出しの移動の最後の部分において、引き出しの移動の制御をし、引き出しを完全に閉鎖した位置にまでバネにより復帰させる。
【0004】
通常は、減速装置も、自己閉鎖装置と協働している。減速装置は、閉鎖バネにより引き起こされる衝撃を減じさせ、引き出しの閉鎖の衝撃を弱める。
【0005】
上記の観点から、自動開放システムを、可動家具部材の自己閉鎖システムと統合することが如何に困難であるか、容易に理解されるであろう。なぜならば、通常、作用するキャッチの力と自己閉鎖装置の力とは、互いに相反する傾向があり、いずれか一方の開閉を妨げることとなるからである。
【0006】
このため、時に極端に複雑なシステムが、設計されてきた。この目的のために、このような複雑なシステムは、作用する力を克服し、部分的ではあるが事実上可動家具部材の自動的な開閉を可能とするために、電動モータによって移動される部材を利用している。
【0007】
これらのソリューションは、時には若干非効率となってしまう。なぜならば、これらは、適時コンスタントに操作できない傾向があり、且つ、継続的なメインテナンスを必要とする。また、高コストとなる傾向があり、あるタイプの家具への適用を不適合としてしまう。
【0008】
可動部が引き出しから構成されている場合においては、自己閉鎖装置は、例えばその移動のためのガイドの上に区別なく配置される。代わりに、ヒンジによって揺動するドアの場合においては、装置は、好ましくは、ヒンジが配置されている部分と反対の家具部材の一部上に配置される。すなわち、使用者によって外部から力が加えられると、装置を操作するのに十分となるようにドアを移動させることが可能となる。ドアは、その端部が当接する側部から完全に離隔するように移動するとともに開く。そして、その結果、駆動要素と自己閉鎖システムのスライダーとの間の相互作用が、より複雑となってしまう。
【0009】
さらに、通常は前述したキャッチ装置と組み合わせるために、異なるタイプのヒンジが、市場において利用可能となっており、特に、閉鎖方向にドアを押すための弾性装置と組み込まれる、選択的に減速装置によって補助される、または、開放方向にドアを押すための弾性装置を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の技術的目標は、上記した従来技術の欠点を取り除くことができる可動家具部材の自己閉鎖装置を提供することである。この技術的目標の範囲において、本発明の目的は、如何なるタイプの通常または特別のメインテナンスを要することなく長期に亘る有効性を確証しつつ、開放システムと組み合わせることが可能であり、高信頼性且つ操作が非常に容易な、特に可動家具部材に用いられる自己閉鎖装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、必要に応じて使用者が交換または調整することができるように、技術知識のない作業者でも容易に取り付け可能であって、さらに、市場への普及を促進するために低コストを実現することができる可動家具部材の自己閉鎖装置を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、占有スペースが限定的であって、如何なるタイプの家具にも取り付け可能な可動家具部材の自己閉鎖装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る技術的目標、これらの目的、および他の目的は、添付された本願請求項1に基づく、特に可動家具部材に用いられる自己閉鎖装置を提供することによって達成される。
【0014】
さらに、本発明の他の特徴は、本願従属請求項によって定められる。
【0015】
本発明のさらなる特徴や利点は、本発明に係る可動家具部材の自己閉鎖装置の好ましい(しかしながら排他的ではない)実施形態の説明から、より明確に示されるであろう。本発明の好ましい実施形態は、以下に示す図面において限定的ではない実施例により図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の好ましい実施形態に係る装置の平面図であって、ドアが閉じており、駆動要素が初期位置にある状態を示す図である。
【図2】図1に示す装置であって、駆動ピンが第一スライダーの後方スロットから外れた状態を示す。
【図3】図1に示す装置であって、駆動ピンが第一スライダーの後方スロットの側壁に当接し、ドアが使用者によって把持可能となるのに適する程度に開かれた位置にある状態を示す。
【図4】図1に示す装置であって、使用者によって外部から加えられる動作を通して、駆動ピンが第一スライダーから外れ、ドアが駆動要素から解放された状態を示す。
【図5】図1に示す装置であって、駆動要素が後退する間に、駆動ピンが第一スライダーの後方スロット側壁に当たった状態を示す。
【図6】図1に示す装置であって、ドアが開かれ、駆動要素が初期位置に復帰した状態を示す。
【図7】図1に示す装置を線7−7にて切断した断面図を示す。
【図8】図1に示す装置が家具部材に取り付けられ、カバーによって覆われている状態を示す。
【図9】図1に示す装置の固定ガイドの平面図を示す。
【図10】図1に示す装置の固定ガイドのカバー内側の平面図を示す。
【図11】図1に示す装置の駆動要素の平面図を示す。
【図12】図1に示す装置の第二スライダーの側面図を示す。
【図13】本発明の第二の好ましい実施形態に係る自己閉鎖装置を備える引き出し用のガイドの右側部分の平面図を示す。
【図14】図13に示す装置の一部を拡大した拡大図を示す。
【図15】図13に示す装置の平面図であって、引き出し(図示せず)が閉鎖位置にある状態を示す。
【図16】図15に示す装置であって、引き出しに軽い力が加えられ、引き出しが家具部材の内部へとさらに後退し、スライダーが第二バネの作用方向の反対に移動した後の状態を示す。
【図17】図13に示す装置であって、駆動ピンがスライダーの前方スロット側壁に当接し、引き出しが使用者によって把持可能となるのに適する程度に開かれている状態を示す。
【図18】図13に示す装置であって、使用者によって外部から加えられる動作を通して、スライダーの前方スロットと係合した駆動ピンが、ガイド手段が第一移動手段から外れるまで、スライダーを駆動している状態を示す。
【図19】図13に示す装置であって、スライダーのガイド手段が第二移動手段と係合し、駆動ピンがスライダーから外れた状態を示す。
【図20】図13に示す装置であって、駆動ピンがスライダーの後方スロットと係合した、引き出しの閉鎖ステップを示す。
【図21】本発明に係る自己閉鎖装置の適用可能な変形例を示し、弾性的に柔軟なストッパーが、機械的なストッパーに置換されたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明においては、同様の部材には同じ参照番号を付すものとする。
【0018】
図1〜12に示された本発明の第一の好ましい実施形態を参照して、本発明に係る可動家具部材の自己閉鎖装置が、全体的に参照番号1として示されている。
【0019】
本実施形態において特に言及する家具部材の可動部103は、家具部材本体に対して揺動するドアである。しかしながら、これは、より一般的に、引き出しや、その他同様の部材であってもよい。さらに、上記したように、本発明は、一般的な住宅用ドアといった類のものに適用することも可能である。自己閉鎖装置1は、好ましくは、家具部材の固定部116に取り付けられた固定ガイド8に連結され、第一スライダー3を支持する支持体2を備える。第一スライダー3は、溝4の後端から前端の間を、第一弾性手段、具体的には第一バネ5の作用に反して、および第一バネ5の作用に従って、スライド軸100に沿って往復動可能に移動する。
【0020】
溝4は、スライド軸100に沿って、直線状に延在している。
【0021】
第一スライダー3は、駆動要素6に設けられた第一駆動手段と係合可能となっている。駆動要素6は、固定ガイド8の内部に後退した位置と、固定ガイド8の外に引き出された位置との間を、スライド軸100に沿って往復動可能に移動する。溝4は、その後端領域において、第一スライダー3をスライド軸100と交差する方向に移動させるための第一移動手段を有する。第一移動手段は、第一スライダー3に設けられた特定のガイド手段と係合するように適応されている。
【0022】
さらに、溝4は、その前端領域において、第一スライダー3をスライド軸100と交差する方向に移動させるための第二移動手段を有する。第二移動手段も、第一スライダー3に設けられた特定のガイド手段と係合するように適応されている。
【0023】
第一移動手段は、溝4に設けられた中間側方キャビティー10と後方カーブ11とを含む。一方、第二移動手段は、溝4に設けられた前方カーブ14を含む。前方カーブ14は、中間側方キャビティー10と後方カーブ11と同じ側に向けて、溝4から延びている。
【0024】
一方、ガイド手段は、前方ガイドピン12と後方ガイドピン13とを含む。
【0025】
前方ガイドピン12および後方ガイドピン13は、溝4の中間側方キャビティー10および後方カーブ11にそれぞれ係合するように適応されている。また、前方ガイドピン12は、溝4の前方カーブ14に代替的に係合するように適応されている。
【0026】
第一スライダー3は、後方スロット109と前方スロット110とを有し、駆動ピン106が、後方スロット109および前方スロット110に選択的に係合する。
【0027】
後方スロット109および前方スロット110は、それぞれ、これらの間に位置する分離面113から突出して延びる側壁111および側壁112を含む。側壁111および112は、駆動ピン106を係止するためのものである。
【0028】
具体的には、分離面113は平面であって、側壁111および112は、平面である分離面113から側方に突出して延びている。
【0029】
自己閉鎖装置1は、弾性的に柔軟なストッパー9をさらに備える。ストッパー9は、支持体2に固定されており、第一スライダー3のガイド手段が溝4の第一移動手段に係合する前に、第一スライダー3と直接的または間接的に当接する。
【0030】
ストッパー9は、スライド軸100に沿う主軸を有する。ストッパー9は、固定部9aと、可動部9bとを有し、固定部9aと可動部9bとの間には、バネ(図示せず)が挿入されている。このバネは、第一バネ5よりも大きな弾性力を有している。これにより、第一スライダー3が摺動自在となっているときに、可動部103を閉鎖位置に相当する位置に停止させることができる。
【0031】
また、自己閉鎖装置1は、可動部103と駆動要素6とを着脱可能に連結する連結手段104を備える。
【0032】
連結手段104は、例えば可動部103の内側面と駆動要素6の前端とに固定された、公知の磁気的または機械的な連結手段を有していてもよい。
【0033】
磁気的に連結する場合においては、連結手段によって行使される連結力は、使用者によって適度に力が加えられたことによって、連結を解除することが可能となるように調整される必要がある。機械的に連結する場合においては、連結手段は、駆動要素6が引き出された位置において、要素を分離することができるようにする必要がある。
【0034】
第一の好ましい実施形態において、自己閉鎖装置1は、閉鎖方向に向けて可動部103を押す力を行使するヒンジを有する家具部材に取り付けられている。また、固定ガイド8によって保持される第二スライダー101が、設けられている。第二スライダー101は、第二弾性手段、具体的には第二バネ102の作用に反して、および第二バネ102の作用に従って、スライド軸100に沿って往復動可能に移動する。
【0035】
第二スライダー101は、駆動要素6に設けられた第二駆動手段107と係合可能となっている。この場合において、連結手段の連結力は、第一および第二弾性手段、特に第一バネ5および第二バネ102によって駆動要素6に間接的に加えられる閉鎖方向に向けた弾性力の合力よりも、大きく設定される必要がある。
【0036】
駆動要素6は、棒状本体105を含み、固定ガイド8のカバー115に設けられたガイド要素114に、摺動可能に支持されている。
【0037】
棒状本体105の軸は、スライド軸100に沿って延びている。
【0038】
駆動要素6の第一駆動手段は、棒状本体105の軸と交差する方向に延在する駆動ピン106を含む。駆動ピン106は、第一スライダー3と係合するように適応されている。
【0039】
駆動要素6の第二駆動手段は、棒状本体105から側方に延出するタブ107を含む。第二駆動手段は、第二スライダー101に設けられたガイドスロット108内を摺動するように規定されている。
【0040】
最後に、自己閉鎖装置1は、駆動要素6の後方側において固定ガイド8に支持されたイジェクター20を備える。
【0041】
イジェクター20は、可動スピンドル20bを内部に含む固定部20aを有する。イジェクター20は、可動部103の開放へ向けた初期移動を生じさせるために、棒状本体105の後壁に対して作用するように適応されている。イジェクター20が生じさせる力は、例えばヒンジに組み込まれている部材のような、如何なる独立した閉鎖装置によって可動部103に行使される力よりも大きくなるように設定される。
【0042】
しかしながら、イジェクター20によって行使される押出力は、第一バネ5の弾性力よりも小さくなるように設定される。
【0043】
イジェクター20は、行使される押力を公知の方法で調整するための装置を、有利に備えていてもよい。
【0044】
また、イジェクター20は、スライド軸100に沿う主軸を有している。
【0045】
本発明に係る自己閉鎖装置の動作は、特に以下に実質的に述べる説明と図面とから明確となるであろう。
【0046】
図1は、可動部103が閉鎖されている状態における自己閉鎖装置1を示す。この最初のステップにおいては、可動部103が閉鎖され、駆動要素6に連結されており、駆動ピン106は、第一スライダー3の後方スロット109と係合している。このとき、第一スライダー3は、第一のアイドル位置に保持されており、弾性的に柔軟なストッパー9と対向して当接している。ストッパー9のバネは、圧縮されてはいないが、第一スライダー3をこの位置に保持するために組み込まれている。駆動要素6の後端は、イジェクター20のヘッドと当接している。ここで、イジェクター20の力は、第一バネ5の力よりも小さいので、スピンドル20bは、このとき後退位置に配置される。
【0047】
次いで、図2に示すように、駆動要素6が後退する第二のステップにおいて、第一スライダー3が、(例えば使用者によって)可動部103に負荷される外部からの押力によって、第二の位置にまで後退移動する。第一スライダー3が第二の位置に配置されている状態においては、前方ガイドピン12および後方ガイドピン13は、それぞれ、溝4に設けられた中間側方キャビティー10および後方カーブ11に係合する。そして、第一スライダー3がスライド軸100と交差する方向に移動することによって、駆動ピン106が後方スロット109との係合から解放される。
【0048】
次いで、図3に示すように、第三のステップにおいて、駆動ピン106が後方スロット109から解放され、駆動要素6にイジェクター20から押力が加えられ、且つ一時的に第一バネ5からも(通常は使用者からも)解放されることから、駆動要素6が外へ引き出されることとなる。この結果、可動部103が、開放に向けた最初の移動を行うこととなる。この駆動要素6の最初の開放移動は、駆動ピン106が、第一スライダー3に設けられた前方スロット110の突出した側壁112と係合したときに終了する。
【0049】
この第一〜第三のステップにおいては、タブ107は、ガイドスロット108内を自由に摺動する。
【0050】
次いで、図4に示すように、第四のステップにおいて、(例えば使用者によって)可動部103を引く力が外部から加えられた結果、第一スライダー3に設けられた前方スロット110の側壁112と係合する駆動ピン106が第一スライダー3を移動させ、これにより、前方ガイドピン12および後方ガイドピン13が、溝4に設けられた中間側方キャビティー10および後方カーブ11からそれぞれ解放される。そして、第一スライダー3がスライド軸100と交差する方向に移動することによって、駆動ピン106が前方スロット110に係合する。第四のステップの間に、タブ107は、ガイドスロット108の前端と接触した後に、第二スライダー101に対する駆動を開始する。タブ107は、第二スライダー101の前端が固定ガイド8の前壁に当たるまで、第二スライダー101を移動させる。そして、その結果、駆動要素6のさらなる前進がブロックされる。第二スライダー101が移動の終端位置にまで到達する前に、前方ガイドピン12が、溝4に設けられた前方カーブ14と係合する。これにより、第一スライダー3が、スライド軸100と交差する方向に移動し、その結果、駆動ピン106が、前方スロット110との係合から解放される。連結手段104によってもたらされる連結力は、駆動要素6が前方へ駆動されるように、第一バネ5および第二バネ102によって行使される復帰力の合力よりも大きくなるように設定される。駆動要素6が引き出されて移動の終端に到達するとき、磁気的な連結手段の場合は、可動部103に掛けられた引く力が、連結手段によってもたらされる連結力に対して優勢となり、機械的な連結手段の場合は、連結が解除される。こうして、可動部103は、駆動要素6から解放され、完全に開いた状態の位置まで引き出される。
【0051】
次いで、図5に示すように、第五のステップにおいて、第二スライダー101が、第二バネ102を介して駆動要素6を固定ガイド8の内部へと後退させる。このステップの間に、後方スロット109の側壁111と係止している駆動ピン106が、最初に第一スライダー3をスライド軸100と交差する方向に移動させ、前方ガイドピン12を前方カーブ14との係合から解放させる。その結果、第一スライダー3が、第一バネ5を介して、第一ステップの位置(図6)にまで戻されることとなる。
【0052】
家具部材が、その揺動において開放方向に向けた押力を与える弾性システムを有するヒンジを備えている場合は、駆動要素6は、再度閉じるときに揺動部と再連結するために、引き出された位置に留まる必要がある。したがって、このタイプのヒンジは、第二スライダーや第二弾性手段を不要とし、減速装置をイジェクターの位置に選択的に設けることを可能とする。この減速装置は、スライダー3が駆動要素6と連結されたときにスライダー3を後退させる第一バネ5によってもたらされる揺動部の閉鎖移動を減速させるために設けられるものである。このように、自己閉鎖装置は、使用者がドアまたは引き出しを把持することを補助するとともに、その閉鎖動作をガイドすることにより、単純かつ機能的なドアまたは引き出しの開閉を可能とする。
【0053】
次に、図13〜図20に示された、本発明に係る第二の好ましい実施形態について説明する。
【0054】
本発明に係る可動家具部材に用いられる自己閉鎖装置が、全体的に参照番号1として示されている。本実施形態において特に言及する家具部材の可動部103は、引き出しである。しかしながら、これは、より一般的に、家具部材本体に対して揺動するドアや、その他同様の部材であってもよい。さらに、上記したように、本発明は、一般的な住宅用ドアといった類のものに適用することも可能である。自己閉鎖装置1は、固定ガイド8に連結され、スライダー3を支持する支持体2を備える。スライダー3は、第一弾性手段、具体的には第一バネ5の作用に反して、および第一バネ5の作用に従って、スライド軸100に沿って往復動可能に移動する。第一バネ5は、一端がスライダー3の拡張部に設けられた連結部150に連結され、他端が支持体2の拡張部に設けられた連結部151に連結されている。スライダー3は、駆動要素6に設けられた駆動手段と係合可能となっている。駆動要素6は、引き出しの引き出し可能ガイド7に一体的に設けられており、スライド軸100に沿って往復動可能に移動する。
【0055】
しかしながら、支持体2を引き出し可能ガイド7に連結し、駆動要素6を固定ガイド8に連結することも可能である。支持体2は、スライダー3を移動させる第一移動手段を有し、スライダー3を駆動手段から解放するために、スライダー3に設けられた特定のガイド手段と係合するように適応されている。
【0056】
弾性的に柔軟なストッパー9がさらに設けられており、スライダー3が、第一移動手段におけるガイド手段と係合する前において、直接的または間接的に対向して当接している。
【0057】
ストッパー9は、スライド軸100の方向に沿う主軸を有する。ストッパー9は、固定部9aと、可動部9bとを有し、固定部9aと可動部9bとの間には、バネ(図示せず)が挿入されている。このバネは、第一バネ5よりも大きな弾性力を有している。これにより、スライダー3が摺動自在となっているときに、可動部103を閉鎖位置に相当する位置に停止させることができる。
【0058】
連結手段は、スライド軸100と交差する方向に延び、スライダー3と係合するように適応された駆動ピン106を有する。支持体2は、溝4を有する。溝4は、その後端領域においてスライダー3をスライド軸100と交差する方向に移動させる第一移動手段を有し、その前端領域において、スライダー3をスライド軸100と交差する方向に移動させるための第二移動手段を有する。第二移動手段は、スライダー3に設けられたガイド手段と係合するように適応されている。
【0059】
溝4は、スライド軸100に沿って、直線状に延在している。
【0060】
第一移動手段は、溝4に設けられた中間側方キャビティー10と後方カーブ11とを含む。一方、第二移動手段は、溝4に設けられた前方カーブ14を含む。前方カーブ14は、中間側方キャビティー10と後方カーブ11と同じ側に向けて、溝4から延びている。ガイド手段は、前方ガイドピン12と後方ガイドピン13とを含む。
【0061】
前方ガイドピン12および後方ガイドピン13は、溝4の中間側方キャビティー10および後方カーブ11にそれぞれ係合するように適応されている。また、前方ガイドピン12は、溝4の前方カーブ14に代替的に係合するように適応されている。
【0062】
スライダー3は、後方スロット109と前方スロット110とを有し、駆動ピン106が、後方スロット109および前方スロット110に選択的に係合する。
【0063】
後方スロット109および前方スロット110は、それぞれ、これらの間に位置する分離面113から突出して延びる側壁111および側壁112を含む。側壁111、112は、駆動ピン106を係止するためのものである。
【0064】
具体的には、分離面113は平面であって、側壁111、112は、平面である分離面113から外方に突出して延びている。
【0065】
イジェクター20は、引き出しに対して開放に向けた初期移動をもたらすように適応されており、自己閉鎖装置1に連結されてもよい。
【0066】
イジェクター20は、引き出し可能ガイド7に一体的に設けられているストッパー21と相互作用するように適応されている。しかしながら、イジェクター20が生じさせる力は、第一バネ5によって行使される力よりも小さくなるように設定される。
【0067】
イジェクター20は、可動スピンドル20bを内部に含む固定部20aを有する。イジェクター20は、行使する押力を一定とするための、公知の方法に係る装置を有し、スライド軸100に沿う主軸を有している。
【0068】
図示されてはいないが、構造的な変形例として、イジェクターは、固定ガイドに設けられた傾斜、および/または傾斜を重力によってスライド可能な引き出しのスライドガイドに置き換えられてもよい。
【0069】
また、図示されてはいないが、構造的なさらなる変形例として、イジェクターは、引き出しをスライドさせることが可能な反発力を発生させる磁石に置き換えられてもよい。これにより、他の実施例と同様に、使用者が引き出しを把持することを補助することができる。
【0070】
本発明に係る自己閉鎖装置1の動作は、特に以下に実質的に述べる説明と図面とから明確となるであろう。
【0071】
図15は、引き出しが閉鎖されている状態における自己閉鎖装置1を示す。駆動ピン106は、スライダー3の後方スロット109と係合している。このとき、スライダー3は、第一のアイドル位置に保持されており、弾性的に柔軟なストッパー9と対向して当接している。ストッパー9のバネは、圧縮されてはいないが、スライダー3をこの位置に保持するために組み込まれている。ストッパー21は、イジェクター20のヘッドと対向して当接している。このとき、イジェクター20のスピンドル20bは、後退位置に配置されている。なぜならば、イジェクター20の弾性力は、第一バネ5の弾性力より小さくなるように設定されているからである。
【0072】
次いで、図16に示すように、スライダー3が、(例えば使用者によって)引き出しに負荷される外部からの押力によって後退移動する。スライダー3がこの位置に配置されている状態においては、前方ガイドピン12および後方ガイドピン13は、それぞれ、溝4に設けられた中間側方キャビティー10および後方カーブ11に係合する。そして、スライダー3がスライド軸100と交差する方向に移動することによって、駆動ピン106が後方スロット109との係合から解放される。
【0073】
次いで、図17に示すように、駆動ピン106が後方スロット109から解放され、イジェクター20から押力が加えられ、且つ一時的に第一バネ5からも(通常は使用者からも)解放されることから、駆動要素6が外へ向けて移動することとなる。この結果、引き出しが、開放に向けた最初の移動を行うこととなる。この引き出しの最初の開放移動は、駆動ピン106が、スライダー3に設けられた前方スロット110の突出した側壁112と係合したときに終了する。
【0074】
次いで、図19に示すように、前方ガイドピン12が、溝4に設けられた前方カーブ14と係合する。これにより、スライダー3が、スライド軸100と交差する方向に移動し、その結果、駆動ピン106が、前方スロット110との係合から解放される。こうして引き出しは、完全に開いた状態の位置まで引き出される。
【0075】
次いで、図20に示すように、閉鎖ステップにおいて、引き出しは、使用者によって閉じる方向に向けて押される。このステップの間に、後方スロット109の側壁111と係止している駆動ピン106が、まずスライダー3をスライド軸100と交差する方向に移動させ、前方ガイドピン12を前方カーブ14との係合から解放させる。その結果、スライダー3が、バネ5を介して、第一ステップの位置(図15)にまで戻されることとなる。
【0076】
全体のシステムがよりコンパクトに構成される必要がある場合は、イジェクターは、弾性的に柔軟な要素の後方側において、支持体2に取り付けられてもよい。
【0077】
さらに、上記したように、イジェクターを、磁石や、引き出しを移動させるのに適したその他のシステムのみならず、傾斜ガイドに置き換えることも可能である。
【0078】
次に、図21を参照すると、弾性的に柔軟なストッパー9が、支持体2に設けられた段差120によって構成された機械的なストッパーに置き換えられた実施形態を示している。この段差120は、スライダー3と交差するように配置されている。スライダー3は、その後壁119が段差120と当接するように配置されている。外部から可動家具部材に加えられる力によって、引き出し可能ガイド7に一体的に設けられている駆動ピン106は、スライダー3に形成された傾斜面118に押し当てられる。これにより、スライダー3は、段差120に沿って側方に移動させられ、適切に設けられた側方スロット10、11の内部に入り込むこととなる。その結果、駆動ピン106が解放され、引き出し可能ガイド7が、イジェクター20a、20bによって開放方向に向けて押し出されることとなる。
【0079】
実用上において、本発明に係る自己閉鎖装置が、使用者が引き出しを把持することを補助するとともに、引き出しの閉鎖をガイドし、引き出しの簡単且つ機能的な開閉を実現するのに如何に有利であるかが明らかである。
【0080】
このように想到された本発明においては、本発明の概念の範囲内において、多くの修正や変形を加えることが可能である。さらに、細部に係る構成は、全て技術的に同様である要素によって置き換えることも可能である。
【0081】
実用上において、使用される材料や寸法は、要求や技術状況に応じて如何なるものに設定されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 自己閉鎖装置、2 支持体、3,101 スライダー、4 溝、5,102 バネ、6 駆動要素、7 引き出し可能ガイド、8 固定ガイド、9,21 ストッパー、9a,20a,116 固定部、9b,103 可動部、10 中間側方キャビティー、11,14 カーブ、12,13,106 ピン、20 イジェクター、20b スピンドル、100 スライド軸、104 連結手段、105 棒状本体、107 タブ、108,109,110 スロット、111,112 側壁、113,118 面、114 ガイド要素、119 後壁、120 段差、150,151 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具部材の可動部(103)の自己閉鎖装置(1)であって、
第一スライダー(3)を支持する支持体(2)を有する固定ガイド(8)を備え、
前記第一スライダー(3)は、前記支持体(2)内において、第一弾性手段(5)の作用に反して、および第一弾性手段(5)の作用に従って、スライド軸(100)に沿って往復動可能に摺動し得るものであり、且つ、前記スライド軸(100)の方向に往復動可能に摺動する駆動要素(6)に設けられた第一駆動手段と係合可能であり、
前記支持体(2)は、前記第一スライダー(3)を移動させるための第一移動手段を含み、
前記第一移動手段は、前記第一スライダー(3)を前記駆動手段から解放させるために、前記第一スライダー(3)に設けられたガイド手段と係合するように適応されており、
前記ガイド手段が前記第一移動手段に係合する前に、前記第一スライダー(3)が直接的または間接的に当接する機械的または弾性的に柔軟なストッパー(9、120)をさらに備えることを特徴とする、自己閉鎖装置。
【請求項2】
前記第一駆動手段は、前記第一スライダー(3)と係合するように適応された駆動ピン(106)を有することを特徴とする、請求項1に記載の自己閉鎖装置。
【請求項3】
前記支持体(2)は、溝(4)を有し、
前記溝(4)は、その後端領域において、前記第一スライダー(3)を移動させるための前記第一移動手段を含み、その前端領域において、前記第一スライダー(3)に設けられた前記ガイド手段と係合するように適応され、前記第一スライダー(3)を前記スライド軸(100)と交差する方向に移動させるための第二移動手段を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の自己閉鎖装置。
【請求項4】
前記第一移動手段は、前記溝(4)に設けられた中間側方キャビティー(10)および後方カーブ(11)を有することを特徴とする、請求項3に記載の自己閉鎖装置。
【請求項5】
前記第二移動手段は、前記溝(4)に設けられ、前記溝(4)に対して、前記中間側方キャビティー(10)および前記後方カーブ(11)が設けられている領域と同じ側に配置された前方カーブ(14)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の自己閉鎖装置。
【請求項6】
前記ガイド手段は、前方ガイドピン(12)および後方ガイドピン(13)を有し、
前記前方ガイドピン(12)および後方ガイドピン(13)は、前記溝(4)に設けられた前記中間側方キャビティー(10)および前記後方カーブ(11)にそれぞれ係合するように適応され、
前記前方ガイドピン(12)は、さらに、前記前方カーブ(14)に代替的に係合するように適応されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項7】
前記第一スライダー(3)は、前記駆動ピン(106)が選択的に係合する後方スロット(109)および前方スロット(110)を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項8】
前記前方スロット(110)および前記後方スロット(109)は、前記駆動ピン(106)を係止するために、前方スロット(110)と前記後方スロット(109)とを分離する分離面(113)から突出する側壁(112、111)を、それぞれ有することを特徴とする、請求項7に記載の自己閉鎖装置。
【請求項9】
前記駆動要素(6)は、前記固定ガイド(8)のカバー(115)に設けられたガイド要素(114)内に摺動可能に支持されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項10】
前記可動部(103)と前記駆動要素(6)とを着脱可能に連結する連結手段(104)を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項11】
前記固定ガイドによって保持され、第二弾性手段(102)の作用に反して、および第二弾性手段(102)の作用に従って、前記スライド軸(100)に沿って往復動可能に摺動する第二スライダー(101)を備え、
前記第二スライダー(101)は、前記駆動要素(6)に設けられた第二駆動手段(107)と係合可能であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項12】
前記着脱可能な連結手段(104)は、前記第一弾性手段(5)および前記第二弾性手段(102)によって前記駆動要素(6)に対して間接的に負荷される弾性復帰力の合力よりも大きい連結力を有することを特徴とする、請求項10または11に記載の自己閉鎖装置。
【請求項13】
前記第二駆動手段は、前記駆動要素(6)から側方に延出し、前記第二スライダー(101)に設けられたガイドスロット(108)内を摺動するように規定されたタブ(107)を有することを特徴とする、請求項11に記載の自己閉鎖装置。
【請求項14】
前記固定ガイド(8)は、前記駆動要素(6)の後方側において、前記可動部(103)の開放へ向けた初期移動を生じさせるように適応されたイジェクター(20)を支持することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項15】
前記イジェクター(20)は、前記第一弾性手段(5)の弾性力よりも小さい押し出し力を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項16】
前記固定ガイド(8)は、前記駆動要素(6)の後方側において、前記可動部(103)の閉鎖移動を減速させるように前記駆動要素(6)の後部に対して作用するように適応された減速装置を支持することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項17】
前記駆動要素(6)は、引き出し可能ガイド(7)に一体的に設けられ、前記スライド軸(100)に沿って往復動可能に摺動することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項18】
前記第一弾性手段(5)は、前記弾性的に柔軟なストッパー(9)と当接する前記第一スライダー(3)に対して、前記弾性的に柔軟なストッパー(9)によって加えられる弾性力よりも小さな弾性力を負荷することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項19】
前記機械的なストッパーは、前記支持体(2)に設けられ、前記スライダー(3)と交差するように配置された段差(120)によって構成され、
前記スライダー(3)の後壁(119)が、前記段差(120)に繰り返し当接することを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の自己閉鎖装置。
【請求項20】
前記第一スライダー(3)は、傾斜面(118)を有し、
前記駆動ピン(106)が、前記第一スライダー(3)を前記段差(120)に沿って側方に移動させるように前記傾斜面(118)に押し当てられるように適応されていることを特徴とする、請求項19に記載の自己閉鎖装置。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の自己閉鎖装置(1)を備える家具部材であって、
前記可動部を閉鎖方向に向けて押す装置を有するヒンジを備える、家具部材。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の自己閉鎖装置(1)を備える家具部材であって、
前記可動部を開放方向に向けて押す装置を有するヒンジを備える、家具部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−505326(P2012−505326A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530394(P2011−530394)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006970
【国際公開番号】WO2010/043306
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(501199139)
【Fターム(参考)】