説明

可動性の容器クロージャを備えた実験用容器

本発明は、容器クロージャを備えた容器、特に可動性のクロージャアセンブリを備えた実験用容器に関する。この実験用容器(10)は、外側に延びるネックを備えたコンテナであってコンテナの内部へとつながる開口部を有するコンテナと、被案内部材及び案内部材を含む少なくとも1つの案内装置(26)と、容器クロージャ及び前記少なくとも1つの案内装置の一部である少なくとも1つの被案内部材を含むクロージャアセンブリとを含んでいて、前記容器クロージャが前記開口部から離れる方へ移動して前記コンテナの内部へ通じさせるようにされていて、前記少なくとも1つの案内装置が前記クロージャアセンブリの移動を案内し、且つそれを前記容器クロージャが前記開口部から取り外される位置においても前記コンテナと連結したままにすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器クロージャを備えた容器、特に可動性のクロージャアセンブリを備えた実験用容器に関する。この実験用容器は、コンテナの内部へと通じる開口部を備えた外側に延びるネックを含むコンテナと、被案内部材及び案内部材を含む少なくとも1つの案内装置と、容器クロージャ及び前記少なくとも1つの案内装置の一部である少なくとも1つの被案内部材を含むクロージャアセンブリとを含むものであって、前記容器クロージャが、前記コンテナの内部へと通じる前記開口部から離れるように移動するようにされていて、前記少なくとも1つの案内装置は、前記クロージャアセンブリの移動を案内し、且つ、前記容器クロージャが前記開口部から取り外される位置においても前記コンテナと連結してそのクロージャアセンブリを保持することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
種々の材料で作られていて、付随する閉鎖手段を備えた幅広い用途向けの容器が設計され、使用されてきた。実験室では、容器は、例えば培地で微生物、細胞又は組織培養物を培養するために、用いられる。そのような容器は、円筒形の壜、平丸皿又は角形フラスコなどの種々の形状であり得る。
【0003】
例えば、米国特許第6818438号明細書では、底壁を有するほぼ六角形のコンテナを備えた組織培養フラスコが開示されており、その底壁からフラスコの一つの側壁まで斜面が延在し、且つその側壁から実質的に管状のネックがそこから前方に延びて、このネックは物質を例えばピペット又はスクレーパーを用いて入れるか又は取り出すためのコンテナ内部へと通じる開口部を有している。
【0004】
実験室における培養容器の通常の取り扱い中に、前記容器を開閉しなければならないことが多く、その場合、例えば培地を交換するため、細胞を植えつけるため、又は培養細胞を取り出すなどのために、多数のフラスコを取り扱わなければならないことが多い。
【0005】
一般に用いられる容器は、多くの場合、何らかの形状のねじ付き容器クロージャ及び対応するねじ付きネックを利用している。開閉するには、容器に対して容器クロージャを繰り返し回転させる必要がある。通常、この操作は手で行われ、一定の時間を要し、そして更に、とりわけ所定の時点で多くの容器を取り扱う場合には、最も人間工学的な所作ではない。加えて、これらのねじ付き容器クロージャを開閉するためには、容器クロージャによって容器に多少の力を加えなければならない場合が多く、そのため片手では容器クロージャを開けることも閉めることもできない。
【0006】
その上、容器を開閉してコンテナの内部へ通じるようにするためには、容器クロージャを通気する位置に配置しなければならないことも多く、すなわち、ネックの開口部はなおも容器クロージャで覆われているが、周囲空気とのガス交換が起こり得る。閉鎖位置から通気位置への変更は、例えば、ねじ付き容器クロージャの部分回転により行うことができ、そのためその容器クロージャは通気位置においてまだネック上にある。
【0007】
例えば国際公開第88/01605号パンフレットに開示されているように、汚染を防止するため及び容器の内容物を無菌状態で維持するために容器内部と周囲空気とのガス交換を可能にするが汚染物の侵入を防止する細孔径の疎水性フィルターエレメントを使用することがある。
【0008】
これらの一般に用いられるねじ付き容器クロージャとねじ付きネックには、いくつかの実用上の問題がある。容器を開閉するには操作のたびに容器に対して容器クロージャを繰り返し回転させなければならないことに加え、この操作には、容器クロージャによって容器に多少の力を加えなければならないため、両手を(容器をつかむために一方の手を、容器クロージャを回転させるためにもう一方の手を)使うことが必要である。
【0009】
通常、例えば培養物を取り扱うためのその他の器具、例えばピペット又はスクレーパーなどが必要なため使用者の一方の手は上記のような操作に必要なそうした器具によって占められているので、両手の使用には時間がかかる。言い換えれば、ネックから容器クロージャを取り外した後、使用者が、例えばピペットをつかむために、この手を使うことができるように、一時的に容器クロージャをどこかに保管する必要があり、逆の場合も同じである。容器クロージャを外しておくことは、無菌性という理由でも不利である。細胞培養物の取り扱いは無菌の垂直層流型フード下で行われることが多いため、気流を妨げる物体は乱流を引き起こし、その乱流により非無菌周囲空気が侵入する可能性がある。そのため、片方の腕だけをフード内に入れること又はフード内での2本の腕の移動を最小限にすることで、汚染の危険性が低下する。一方の手を容器クロージャを回転させることからその他の器具をつかむことへと変更する必要が常にない場合には、腕の移動が少なくなる。
【0010】
加えて、容器クロージャを外してそれを例えばフードの表面に置いておくときには、注意して行わないと容器クロージャ、使用者、及び/又はフードが汚染される可能性があるため、前記取り扱いは特定の訓練が必要である。更に、いくつかの容器を取り扱う、すなわち同時に開閉する場合には、容器クロージャがごちゃ混ぜになる可能性がある。
【0011】
米国特許第5398837号明細書では、容器クロージャ設計のもう1つの解決策が提案されている。ヒンジ式容器クロージャを備えた細胞培養フラスコが開示されている。前記容器クロージャは片手で開閉することができ、この場合、容器を開けるためにヒンジ式容器クロージャは傾いており、すなわち、コンテナの内部へ通じる位置に容器クロージャがあるときに容器クロージャはヒンジのところでネックに隣接したままである。この傾斜した向きには、容器クロージャの内面がネックの開口部の領域において露出されるため、例えばピペットとの接触が起こりそれゆえ汚染が起こる可能性があるという不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、本発明の課題は、片手だけを使うことにより容器の開閉が容易にできなくてはならない、容器クロージャで閉鎖可能な実験用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題は、コンテナの内部へと通じる開口部を有し外側に延びるネックを含むコンテナと、被案内部材及び案内部材を含む少なくとも1つの案内装置と、容器クロージャ及び前記少なくとも1つの案内装置の一部である少なくとも1つの被案内部材を含むクロージャアセンブリとを含む実験用容器であって、前記容器クロージャが、前記コンテナの内部へと通じる前記開口部から離れるように移動するようにされていて、前記少なくとも1つの案内装置は、前記クロージャアセンブリの移動を案内し、且つ、前記容器クロージャが前記開口部から取り外される位置においても前記コンテナと連結してそのクロージャアセンブリを保持することを特徴とする実験用容器を提供することによって解決された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】左利きの人用に適応させた蓋を備えた実験用容器の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】右利きの人用に適応させた蓋を備えた実験用容器の好ましい実施形態を示す図である。
【図3】蓋が閉鎖位置にある実験用容器の好ましい実施形態を示す図である。
【図4】蓋を閉じた実験用容器の好ましい実施形態を示す図であり、矢印は閉鎖方向を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の主要な実施形態によれば、実験用容器は、コンテナの内部へと通じる開口部を有し外側に延びるネックを含むコンテナと、被案内部材及び案内部材を含む少なくとも1つの案内装置と、容器クロージャ及び前記少なくとも1つの案内装置の一部である少なくとも1つの被案内部材を含むクロージャアセンブリとを含むものであって、この実験用容器は、前記容器クロージャが、前記コンテナの内部へと通じる前記開口部から離れるように移動するようにされており、前記少なくとも1つの案内装置は、前記クロージャアセンブリの移動を案内し、且つ、前記容器クロージャが前記開口部から取り外される位置においても前記コンテナと連結してそのクロージャアセンブリを保持することを特徴とする。
【0016】
本発明の実験用容器は、ウイルス、微生物、菌類、組織細胞及び/又は組織培養物の培養などの培養用途、又は実験室で使用する液体の保管などの保管用途に使用することができる。使用目的に応じ、実験室及び安全性のガイドラインにも従って、コンテナ及び容器クロージャは好適な材料で作られなければならない。実験用容器を当業者に公知の好適な条件下でオートクレーブ処理することにより容器の少なくとも内部を無菌環境にするために、実験用容器はオートクレーブ処理可能な材料で作られることが更に好ましい場合がある。本発明の実験用容器を自動ステーションによって取り扱うことができることが更に好ましい場合がある。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記実験用容器は培養容器である。
【0018】
コンテナは種々の形状であってよく、例えば、円筒形の壜、平丸皿又は多角形フラスコとして形成することができる。コンテナは、ガラス又は好適なプラスチックなどの当業者に公知の任意の好適な材料で製作してよく、好ましくは、コンテナはポリスチレンで作られる。
【0019】
容器クロージャも種々の形状及び寸法であることができるが、但し容器クロージャはネックの開口部の上に位置しているときにその開口部を完全に覆うことができるようにされている。好ましくは、容器クロージャは実質的に円形の断面を有する。あるいはまた、もしくはそれに加えて、使用者が容器を開閉するため容器クロージャに触れたときに使用者の手がネックの外側面に触れるのを防ぐため、容器クロージャはネックの開口部のようにより大きな断面寸法を有することが好ましい場合がある。更に好ましくは、使用者の手の接触面まで拡張するため及び、例えばコンテナの内容物を汚染することになることがある、使用者が例えばコンテナのネックに触れるのを防ぐために、容器クロージャの縁はクロージャの平面から、好ましくはコンテナから離れたところへ、突出していることができる。容器を開けるか又は閉めたいときに、片手だけでの容器の開閉を更に容易にするために、例えば使用者の指との摩擦を、より大きくするように容器クロージャの側面は完全に滑らかではないことが更に好ましい場合がある。摩擦を増やすために、容器クロージャの側面に、例えば側面に沿って延在する溝を設けてもよい。
【0020】
容器クロージャ及びクロージャアセンブリは、プラスチック、例えばポリプロピレン又はポリスチレンなどの、当業者に公知の任意の好適な材料で製作することができる。
【0021】
容器クロージャ及び/又は案内装置は、好ましくは、容器クロージャ及び/又は案内装置を必要な場合には新しいものと交換できるように設計してもよい。
【0022】
案内装置は、当業者に公知の任意の案内装置でよく、そしてそれは必要に応じてネックの開口部から離れ、またそれを覆うためにそこへ戻る任意の方向への容器クロージャの移動を可能にする。ネックの開口部の平面の直接観察に関して見られるように、移動の方向は実質的に直線状でよく、又は任意の曲線経路をたどってもよい。案内装置によって案内される移動は、例えば、少なくとも1つの被案内部材の滑動に基づいてもよく、あるいは案内装置はローラーも使用してよい。
【0023】
案内装置とクロージャアセンブリは、容器クロージャが、コンテナのネックから離れるように移動するとき、コンテナの外面に触れないように配置することができる。案内装置は、容器クロージャを異なる位置に固定することができるように、例えば、容器クロージャの開口部から完全に取り外し又は開口部の上に配置することができるように、1以上の停止部材を含むことが更に好ましい場合がある。
【0024】
本明細書において使用する「移動」及び/又は「移動する」という用語は、ネックの開口部の平面に沿った任意の運動を意味することを意図している。容器クロージャは、前記少なくとも1つの案内部材の配置に応じて前記平面と実質的に平行に動かしてもよく、又は曲線経路に沿って動かしてもよく、あるいはそれらを任意に組合せてもよい。
【0025】
ネックの開口部から離れ又はそこへ戻る容器クロージャの移動の利点は、とりわけ、完全に移動している間、容器クロージャの内面が使用者から離れた方向に向くため、例えば容器クロージャの内面及び/又は使用者の手の汚染の危険性が低減するということにある。更に、容器クロージャは容器の開口部から完全に取り外すことができるため、例えば容器クロージャのヒンジ式配置とは違い、コンテナの内部へ完全に通じることができる。開口部から容器クロージャを完全に取り外すことにより、容器クロージャとの接触、例えばピペット又はスクレーパーとの接触の危険が、及びそのような汚染の危険が、大幅に低減する。容器クロージャはコンテナと連結したままであるため、2以上の容器を同時に開ける場合に、容器クロージャがごちゃ混ぜになるのがの防止される。更に、容器クロージャを外して例えばフードの表面に置いておく必要がないため、容器クロージャ、使用者、及び/又は例えばフードの表面のいかなる汚染も防がれる。
【0026】
少なくとも1つの案内部材は付加的な部材であってもよく、又は本発明の好ましい実施形態によれば、容器のコンテナによって提供してもよい。少なくとも1つの案内部材はコンテナと一体形成することが更に好ましい。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、案内装置は、クロージャアセンブリの移動を可能にし、それゆえネックの開口部から離れ又はそこへ戻る容器クロージャがいずれの場合においても少なくとも2方向に移動するのを可能にするように設計される。好ましくは、容器クロージャは、いずれの場合においても、少なくとも3方向に、更に好ましくは少なくとも4方向に、なお好ましくは少なくとも5方向に、移動可能であることができる。これには、右利きの人だけでなく左利きの人でも本発明による容器を使うことができ、及び/又はこの容器を容器の異なる方向に容易に開け閉めできるという利点がある。
【0028】
本発明のもう1つの実施形態によれば、実験用容器は2つの案内装置を含むことができ、そしてそれらはネックの相対する側に配置されるのが好ましい。
【0029】
本発明の更なる実施形態によれば、少なくとも1つの案内装置は、互いに係合するスライダーとトラックを含む。少なくとも1つのスライダーが被案内部材として働き、少なくとも1つのトラックが案内部材として働く。両方の部材とも、相互に対応しそしてネックの開口部から離れ及びそこへ戻る容器クロージャの移動を可能にすることを条件に、任意の好適な方法で形成することができる。例えば、スライダーは実質的に長方形の断面を有することができ、トラックはスライダーの三辺が溝の壁によって少なくとも部分的に囲まれるように対応する長方形の溝であることができる。
【0030】
本発明のもう1つの実施形態によれば、案内装置は、移動可能なフレームを形成するように、組み立てた状態においてお互いどうしの間隔が実質的に同じでネックの相対する側に配置される2つのスライダーと、組み立てた状態において当該スライダーを連結しネックの相対する側に配置される2つの部材とを含む。当該フレームはより安定した構成要素を提供する。このフレームは、実質的に平面式に設けることができ、又は例えばコンテナの湾曲した側壁に適合するよう湾曲させて設けることができる、ということを理解すべきである。
【0031】
本明細書において使用する、組立状態というのは、クロージャアセンブリがコンテナに既に配置されており、そして少なくとも1つの被案内部材が少なくとも1つの案内部材と係合している状態を意味することを意図している。容器クロージャは、コンテナのネック開口部を覆うように位置していてもよく、又は開口部から離れて位置していてもよい。
【0032】
本発明のもう1つの実施形態によれば、ネックの開口部の平面に面している容器クロージャ内面及び/又はネック開口部は、追加して又は代替として、容器クロージャが容器を閉める位置にあるときに容器の開口部をシールするためのシール手段を含むことができる。それによってもたらされる開口部のシールにより、例えば汚染物の侵入が更に防止され及び/又はガス交換が抑制される。
【0033】
シール手段としては、好ましくは、容器クロージャの内面に突起又はストッパーを設けることができ、この突起又はストッパーは容器開口部をシールするため当該開口部に挿入されるのに適合しており、加えて又は代替として、容器クロージャの内面に、容器クロージャによって容器を閉じるときにネックの前端部を受け入れるのに適合させた溝を設けてもよい。その代わりに、又はそれに加えて、ネックの前端部に及び/又は容器クロージャの内面に配置されるシールリングを設けてもよい。
【0034】
本発明のこの実施形態によれば、ネックの開口部から離れ及び/又はそこへ戻る容器クロージャの移動が前記シール手段によって抑止されるため、移動前に容器クロージャを挿入位置から移動可能な位置へと動かさなければならないこと、すなわち、係合しているシール手段を外し開口部の平面に沿った移動ができるように容器クロージャを開口部の平面から離れるように動かさなければないことを、理解すべきである。
【0035】
本発明の更なる実施形態によれば、容器クロージャは、それを閉鎖位置から開放位置へと変更するために、またその逆のためにも、回転させることができるようにされており、その開放位置から容器クロージャを、コンテナの内部へ通じるよう開口部から離れるように移動させることができる。
【0036】
好ましくは、閉鎖位置から開放位置へと変更するには約90°の角度の回転が必要である。
【0037】
本明細書において使用する、閉鎖位置というのは、例えば周囲空気とのガス交換及び/又はコンテナ内の培養細胞の汚染を防止するように、容器クロージャがネックの開口部を閉じるため、そして好ましくはそれをシールするために、ネックの開口部に置かれている位置を意味することを意図している。本明細書において使用する開放位置という用語は、コンテナと周囲の環境とのガス交換を可能にする容器クロージャの位置を意味することを意図しており、そのため当該開放位置は通気位置と呼ばれることもある。開放位置では、容器クロージャはなおもネックの開口部の上にあるため、フラスコの内部へ直接通じることが防がれる。ネックの開口部から離れるように容器クロージャを移動させるのは、開放位置において容器クロージャを回転させるときに初めて可能になる。
【0038】
本発明の更なる利点は、コンテナの開口部を通気位置かあるいは気密位置のいずれかにおいて覆うことができ、そのため本発明による実験用容器を例えば嫌気性条件下又は好気性条件下のいずれかでの培養のために使用してもよいということにある。
【0039】
そのような回転可能な容器クロージャは、1つの好ましい実施形態によれば、ネックの開口部を覆うのに適合した上部と、この上部からネック開口部の外側に延びる少なくとも1つの側部セグメントとを含むことができ、そして案内装置、好ましくは被案内部材が、閉鎖位置において、容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメントとともにネックの外側面を取り囲む完全なリムを提供するのに適合した少なくとも1つの更なるセグメントを含む一方で、開放位置において、前記上部からネック開口部の外側に延びる前記少なくとも1つのセグメント及び案内装置の前記少なくとも1つのセグメントが、当該リムの少なくとも1つの領域が除去されへこまされてこの領域へのクロージャの移動を可能にするように前記少なくとも1つの側部セグメントが前記少なくとも1つの更なるセグメントで覆われるように配置される。閉鎖位置において完全なリムを提供するセグメントは、閉鎖位置においてネックの外側面を少なくとも部分的に覆うような寸法であり、そのため、前記面との直接接触が防止されて、その結果例えばコンテナの内容物の汚染の危険性が更に低減される。必要に応じて、当該セグメントは、コンテナのネックから離れ又はそこへ戻る容器クロージャの移動中に当該セグメントがある程度まで弾性変形するのを可能にする材料で製作することができる。
【0040】
好ましくは、容器クロージャの回転中に前記側部セグメントと接触するのを防止するための手段を設ける。例えば、前記上部の断面寸法がリムの直径より大きくなるように容器クロージャを設計してもよい。更に好ましくは、使用者の手の接触面まで拡張するため、及び例えばコンテナの内容物を汚染することになる可能性のある、使用者が例えばコンテナのネックに触れることを防ぐために、容器クロージャの前記上部の縁はクロージャ平面から、好ましくはコンテナから離れて、突出してもよい。容器を開けるか又は閉めたいときに、片手だけで容器を開閉するのを更に容易にするため、例えば使用者の指との摩擦をより大きくするように、容器クロージャの前記上部の側面が完全に滑らかではないことが更に好ましい場合がある。摩擦を大きくするためには、容器クロージャの側面に例えば当該側面に沿って延在する溝を設けてもよい。
【0041】
本発明の1つの実施形態によれば、容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメントと前記ネックとの間に解除式案内及びロック手段を設ける。該解除式案内及びロック手段は、容器クロージャの閉鎖位置への固定を増進するとともに、開放位置から閉鎖位置へと、また逆の場合も同様に、変更するときに、容器クロージャの回転を案内し、それゆえ開口部の平面を離れ又はそこへと向かう前記クロージャ上部の運動を更に案内するため、これらの手段には有益な効果がある。加えて、該案内及びロック手段は、容器が誤って開くことを防止する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、解除式案内及びロック手段は、ネックの外側面に面している容器クロージャの前記少なくとも1つの側部セグメントの内面にねじ付きセグメントを備え、ネックの外側面は、容器クロージャの回転中、容器クロージャの閉鎖位置において係合するための対応するねじ山又は対応する少なくとも1つのねじ付きネックセグメントを備える。このねじ山は、回転運動を案内し、そして更に、容器クロージャの閉鎖位置において縁を完全に閉鎖するように容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメントがネックの外側面から正確な間隔をおいて位置するのを確実にする。好ましくは、縁面の気密性を向上させるために、閉鎖位置において隣接配置されるセグメントの側面にシール手段を設けることができる。
【0043】
本発明のもう1つの実施形態によれば、容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメント及び前記案内装置によって提供される少なくとも1つの更なるセグメントは、閉鎖位置から開放位置へと、また逆の場合も同様に、変更するときに、それらのセグメントの移動を案内するための案内手段を備えている。
【0044】
容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメントが前記ネックに面している表面にスロットを含むこと、及び案内装置によって提供される少なくとも1つの更なるセグメントが該スロットと係合するようにされた対応する突起を含むことが、更に好ましい。
【0045】
本発明のもう1つの実施形態によれば、容器クロージャ及び案内装置は各々、2つのセグメントを備え、各セグメント対の2つのセグメントは相手セグメントと反対側に配置される。これらのセグメントは、セグメントの各々がリムの4分の1を構成して、そのため容器クロージャの開放位置においてリムの2つの4分の1部分が嵌め込まれ、クロージャアセンブリをその嵌め込み部のいずれかへと移動させてコンテナの内部へ通じることができるように設計することができる。
【0046】
本発明の更なる実施形態によれば、ネックは更に、あるいは上記とは別に、前記上部から延びる少なくとも1つの側部セグメントが開放位置において位置する少なくとも1つの領域において平坦にしてもよい。この少なくとも1つの平坦領域は、容器クロージャの開放位置におけるコンテナ内部と周囲空気とのガス交換を促進する。好ましくは、その平坦化は、容器クロージャがネック開口部の上方へ又はそこから離れるように移動するのを容易にするために、移動方向に沿って行った。
【0047】
本発明のもう1つの実施形態によれば、容器クロージャは、容器クロージャの前記上部の内側に配置されるフィルターを更に含むことができる。このフィルターは、例えば、ウイルス、微生物、菌類などのあらゆる汚染物がコンテナ内部へ侵入するのを防止するのに好適な、当業者に公知の任意のフィルターでよい。好ましくは、フィルターは疎水性フィルターであることができる。フィルターの細孔の大きさは、コンテナ内部と周囲空気とのガス交換を可能にするが汚染物の侵入を防止するように選択することができる。好ましくは、細孔の大きさは0.1〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2〜0.5μmの範囲であり、更に好ましくは0.23〜0.25μmの範囲である。あるいはまた、容器クロージャの上部を、上述の適切な細孔の大きさを有するフィルター材料で製作してもよい。
【0048】
本発明のもう1つの実施形態によれば、実験用容器は、容器クロージャの閉鎖位置においてやはりガス交換が可能であるように、容器クロージャの上部に設けた換気ユニットを含んでもよい。
【0049】
本発明の更なる実施形態によれば、コンテナは、底面、上面、及び側壁を有する実質的に六角形のコンテナであり、前記ネックが側壁から延び、前記クロージャアセンブリはネックの開口部から離れて2方向に転じるようにされていて、その転じる方向はコンテナの底面及び/又は上面と実質的に平行である。このような容器は積み重ねて保管することができ、この場合、容器を積み重ねておいて容器クロージャを容易に取り外すことができ、及び/又はネックの開口部の上で交換することができる。
【0050】
本発明による容器は、DNアーゼ、RNアーゼ、又は発熱物質あるいはそれらの任意の組合せを含まない無菌状態にし得る。加えて又はそれとは別に、コンテナに仕分け(grading)領域及び/又は標識領域を設けてもよい。
【0051】
もう1つの態様によれば、本発明は、ウイルス、微生物、菌類、組織細胞及び/又は組織培養物の培養用の上記の実験用容器の使用に関する。
【0052】
本発明による容器を培養容器としての使用することに基づいて本発明を主として説明してきた。片手だけを使うことにより容器を容易に開閉することができることが望ましく及び/又は容器クロージャの内面の汚染を防止しなければならず及び/又は容器クロージャが容器と連結したままであることが望ましい他の用途にも、本発明による容器を使用してよいことが理解されるはずである。
【0053】
以下において添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態をほんの一例として説明するが、本発明をそれに限定するものではない。
【0054】
図1及び図2に示したように、本発明の好ましい実施形態による実験用容器(10)は、底面、上面(12)、及び側壁を有する実質的に六角形のコンテナを含む。2つの側面の壁(14、15)から、湾曲傾斜部(16)が容器のネック(18)まで延びている。このネックは実質的に円形の断面を有し、コンテナの底面及び上面と実質的に平行な二面で平坦化されている。この平坦部(20)は、容器クロージャ(22)の移動を容易にし、そしてまた容器クロージャの開放位置におけるガス交換を促進する。ネックの各々の非平坦領域の外面には、例えばネックの開口部の平面を離れる方へ及びそちらに向かう方へのクロージャ容器の移動を案内するねじ山セグメントが設けられている。
【0055】
クロージャアセンブリは、円形の上部及び該上部の内面から延びる2つの側部セグメント(24)を備えた容器クロージャ(22)と、移動可能なフレームを形成するように、互いに対し実質的に同じ距離に配置されている2つのスライダー及びこれらのスライダーを連結している2つの部材とを含む被案内装置(26)とを含んでなり、このフレームは更に容器クロージャの縁の一部をなす2つのセグメントを含む。
【0056】
可能性のフレームを案内するためのトラックはコンテナによって提供され、上方のトラックはコンテナの上面と一体形成され、下方のトラックはコンテナの底面と一体形成された2つのフラグメントをネックの反対側に含む。可動性フレームは湾曲されていて、双方の部材が容器クロージャの横の側壁の平面から最も遠くに配置されているスライダーを連結している。容器クロージャのリムは4つのセグメントを含んでいて、2つは容器クロージャの上部から延びており、2つは案内装置によって提供され、容器クロージャの上部から延びる2つの側部セグメントにはネック外面に面している内面にねじ山セグメントが設けられている。
【0057】
図3はクロージャアセンブリの閉鎖位置を示し、一方、図4は閉鎖位置にあるクロージャアセンブリを示し、蓋の閉鎖方向を矢印で示している。容器クロージャは90°の角度だけ回転されている。回転がねじ山セグメントによって案内されることにより、容器クロージャの上部はネック開口部の平面上を動き、それをシールして閉鎖する。開閉するためには容器クロージャを90°の角度だけ回転させる必要があるだけであり、一般に用いられるねじ付きネックと蓋で必要なように数回も回転させる必要がないので、本発明による容器の開閉にはそれほど時間がからない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に延びるネックを含むコンテナであって該コンテナの内部へと通じる開口部を有するコンテナと、
被案内部材及び案内部材を含む少なくとも1つの案内装置と、
容器クロージャ及び前記少なくとも1つの案内装置の一部である少なくとも1つの被案内部材を含むクロージャアセンブリと、
を含む実験用容器であって、
前記容器クロージャが前記開口部から離れる方へ移動して前記コンテナの内部へ通じさせるようにされていて、前記少なくとも1つの案内装置が前記クロージャアセンブリの移動を案内し、且つそれを前記コンテナと連結したままにすることを特徴とする、実験用容器。
【請求項2】
前記案内装置が、前記ネックの開口部から離れ又はそこへ戻る前記クロージャアセンブリの移動を、いずれの場合も少なくとも2方向において可能にするように設計されている、請求項1に記載の実験用容器。
【請求項3】
当該実験用容器が2つの案内装置を含んでいる、請求項1又は2に記載の実験用容器。
【請求項4】
各案内装置が互いに係合するスライダーとトラックとを含んでいる、請求項1〜3のいずれかに記載の実験用容器。
【請求項5】
前記案内装置が、実質的に互いに対し同じ距離に、且つ組立状態において前記ネックの相対する側に配置される、2つのスライダーと、前記スライダーを連結し、且つ組立状態において前記ネックの相対する側に配置される2つの部材とを含んでいる、請求項3又は4に記載の実験用容器。
【請求項6】
前記ネックの開口部に面している前記容器クロージャの内面及び/又は前記ネックの開口部が、前記容器クロージャが前記ネックの開口部上に配置されるときに前記容器の開口部をシールするシール手段を含んでいる、請求項1〜5のいずれかに記載の実験用容器。
【請求項7】
前記容器クロージャが、回転して閉鎖位置から開放位置へと、また逆の場合も同様に、変わることができるように配置さており、その開放位置から前記容器クロージャを前記コンテナの内部へ通じる前記開口部から離れるように移動させることができる、請求項1〜6のいずれかに記載の実験用容器。
【請求項8】
前記容器クロージャが、前記ネックの開口部を覆うようにされている上部と、前記上部から前記ネック開口部の外側に延びる少なくとも1つの側部セグメントとを含んでおり、
前記案内装置が、閉鎖位置において、前記容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメントとともに前記ネックの外側面周囲に完全なリムを提供するようにされている少なくとも1つの更なるセグメントを含む一方で、前記クロージャの開放位置において、前記上部から前記ネック開口部の外側に延びる前記少なくとも1つのセグメント及び前記案内装置の前記少なくとも1つのセグメントが、前記リムの少なくとも1つの領域が嵌め込まれこの領域への前記クロージャの移動を可能にするように少なくとも1つの側部セグメントが前記少なくとも1つの更なるセグメントで覆われるように配置されている、請求項7に記載の実験用容器。
【請求項9】
前記容器クロージャの前記少なくとも1つの側部セグメントと前記ネックとの間に解除式案内及びロック手段が設けられている、請求項8に記載の実験用容器。
【請求項10】
前記解除式案内及びロック手段が、前記ネックの外側面に面している前記容器クロージャの前記少なくとも1つの側部セグメントの内面にねじ付きセグメントを含み、前記ネックの外側面が対応するねじ山又は対応する少なくとも1つのねじ付きネックセグメントを含んでいる、請求項9に記載の実験用容器。
【請求項11】
前記容器クロージャの少なくとも1つの側部セグメント及び前記案内装置によって提供される前記少なくとも1つの更なるセグメントが、これらのセグメントの移動を案内するための案内手段を含んでいる、請求項8〜10のいずれか1項に記載の実験用容器。
【請求項12】
前記容器クロージャの前記少なくとも1つの側部セグメントが前記ネックに面している面にスロットを含み、前記案内装置によって提供される前記少なくとも1つの更なるセグメントが前記スロットと係合するようにされた対応する突起を含む、請求項11に記載の実験用容器。
【請求項13】
前記容器クロージャ及び前記案内装置が各々2つのセグメントを備え、各セグメント対の2つのセグメントが相手セグメントと反対側に配置されている、請求項8〜12のいずれか1項に記載の実験用容器。
【請求項14】
前記ネックが前記少なくとも1つの領域において平坦化され、該領域には開放位置において前記上部から延びる前記少なくとも1つの側部セグメントが配置されている、請求項8〜13のいずれか1項に記載の実験用容器。
【請求項15】
前記容器クロージャが該容器クロージャの上部の内側に位置するフィルターを更に含んでいる、請求項1〜14のいずれかに記載の実験用容器。
【請求項16】
前記容器クロージャの前記上部に換気ユニットが設けられている、請求項1〜15のいずれかに記載の実験用容器。
【請求項17】
前記コンテナが、底面、上面、及び側壁を有する実質的に六角形のコンテナであり、前記ネックが側壁から延び、前記クロージャアセンブリが前記ネックの開口部から離れて2方向に移動するようにされていて、その移動方向が前記コンテナの底面及び/又は上面と実質的に平行である、請求項1〜16のいずれかに記載の実験用容器。
【請求項18】
ウイルス、微生物、菌類、組織細胞及び/又は組織培養物の培養への、請求項1〜17のいずれかに記載の実験用容器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−510641(P2011−510641A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544639(P2010−544639)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000617
【国際公開番号】WO2009/095255
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(501186645)エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】