説明

可動梯子用の安全ブロック取付治具

【課題】既設の可動梯子に対し、所定の治具を適宜取り付けて安全ブロックを設置することにより、可動梯子や固定梯子を介した昇降時における作業員の安全を確保しながら、作業員が迅速に昇降することができ、また、当該治具の撤去も極めて容易である、可動梯子用の安全ブロック取付治具を提供する。
【解決手段】本発明は、種々の立坑に沿って設置している固定梯子の上部に連設されている可動梯子に安全ブロックを取り付けるための、可動梯子用の安全ブロック取付治具であり、可動梯子を形成する2本の縦支柱の上端部分にそれぞれ固定される一対の掛止体と、一対の掛止体の間に固定される安全ブロックの吊り下げ棒により構成され、一対の掛止体は、縦支柱の上端部分に当がう装着部と、装着部から側方に向けて延設された張出片から形成され、安全ブロックの吊り下げ棒は、安全ブロックのスライド防止部材を備え、掛止体を形成している張出片の先端側部分に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを地下に敷設している設備に設けられている換気孔や、マンホール等の種々の立坑に設置している固定梯子の上部に連設されている可動梯子に安全ブロックを取り付けるための、可動梯子用の安全ブロック取付治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルを地中に敷設している設備に設けられている換気孔や、マンホール等の種々の立坑100には、例えば、図9に示すように、固定梯子101や、この固定梯子101の上部に連設されている可動梯子102が存在している。
【0003】
この固定梯子101や可動梯子102は、いずれも2本の縦支柱103と、縦支柱103の間に所定の間隔を開けて配置された複数の横棧104により構成されている。
【0004】
可動梯子102は、固定梯子101よりも若干幅狭に構成されて、固定梯子101の上部に連設されている。この可動梯子102は、自身の縦支柱103の上端が、固定梯子101の縦支柱103の上端に並んで立坑100内に収容されている位置から、図9に示すように、上方に移動して、蓋105を開けている立坑100から突出できるように固定梯子101に取り付けられている。
【0005】
尚、可動梯子102を使用しないときは、可動梯子102の縦支柱103の上端が、固定梯子101の縦支柱103の上端に並ぶ位置まで移動して立坑100内に収容され、立坑100の蓋105が閉じられる。
【0006】
そして、立坑100に設置されている固定梯子101や可動梯子102を介して作業員Sが昇降するとき、作業員Sが足を滑らせる等して、誤って固定梯子101や可動梯子102から落下してしまう危険性がある。
【0007】
その為、作業員Sの落下防止対策を施す必要がある。
【0008】
この一対策として、例えば、図10に示すように、作業員Sが装着している安全ベルト106に、2個の安全装置107を取り付けることがある。
【0009】
安全装置107は、装置内に収容されているロープ108と、ロープ108の先端に取り付けたフック109を備えている。このロープ108は、装置内からの引き出しと、装置内への引き戻しが自在となっている。
【0010】
この安全装置107を使用して作業員Sが可動梯子102を昇降するとき、例えば、図10に示すように、それぞれの安全装置107からロープ108を所定の長さに引き出し、2個のフック109を可動梯子102の横棧104に段違いとなるように引っ掛けて、作業員Sの安全を確保しながら、作業員Sが可動梯子102を昇降するのである。
【0011】
この他、作業員Sの落下を防止するものとして、特許文献1に示すような、安全帯付き垂直昇降用梯子200が存在する。この垂直昇降用梯子200は、図11(a)に示すように、2本の縦支柱201間に、横棧202を複数配置したもので、支縦支柱201は、断面が略I形のアルミニウム合金製の形材から成る。
【0012】
また、図11(a)に示すように、縦支柱201の一方に安全器203を介して安全帯204を取り付けており、図11(b)に示すように、他端のフック状の掛止装置205を、梯子200を昇降する作業員Sのベルト位置等に掛け止めする。
【0013】
安全器203は、略I形断面の縦支柱201のフランジ部分をレール部として上下方向に移動自在になっているが、作業員Sが足を滑らす等したときに、作業員Sの体重による下向きの荷重が生じると、安全器203のリンク機構が働き、レール部を挟み込んで安全器203の移動を阻止し、作業員Sの墜落を防止している。
【0014】
また、作業員Sの落下を防止するものとして、特許文献2に示すような、マンホール用梯子300も存在する。このマンホール用梯子300は、図12(a)に示すように、梯子300の側面にストッパー兼用連結部材301を介して、安全帯のフック取付杆302を設けたものである。
【0015】
このフック取付杆302は、図12(b)に示すように、複数のストッパー兼用連結部材301を介して梯子に取り付けられている。その為、図12(a)に示すように、所定のロープを介して作業員S側のフック303をフック取付杆302に掛け止めすると、作業員Sが梯子から落下しても、フック303がストッパー兼用連結部材301によって梯子の途中で係止されるので、作業員Sの墜落を防止できるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−209672号公報
【特許文献2】実用新案登録第3157590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図10に示すように、作業員Sが身に付けている安全装置107からロープ108を所定の長さに引き出し、2個のフック109を可動梯子102の横棧104に段違いとなるように引っ掛けて、作業員Sの安全を確保する落下防止対策では、作業員Sが可動梯子102や固定梯子101を介して迅速に昇降することができないという弊害が生じている。
【0018】
具体的には、2個のフック109を可動梯子102の横棧104に段違いとなるように引っ掛ける作業と、2個のフック109を横棧104から外して、再度、他の横棧104に段違いとなるように引っ掛ける作業を連続して行わなければならず、その手順が煩雑となることから、可動梯子102や固定梯子101を介した昇降に、時間を費やしてしまうのである。
【0019】
この様な弊害を解消する措置として、可動梯子102の上部に、安全ブロック400を設置することが望まれている。
【0020】
この安全ブロック400は、作業員Sが可動梯子102や固定梯子101を介して昇降しているときに、足を滑らせる等して落下しそうになった場合であっても、その落下を阻止して、事故の発生を未然に防止するものである。
【0021】
一般的な安全ブロック400は、例えば、図13に示すように、ケース本体401と、このケース本体401内から引き出されているワイヤロープ402から構成されている。
【0022】
ワイヤロープ402は、ケース本体401内に収容されている所定のドラムに巻回されており、ドラムの回転によるケース本体401内からの引き出しと、ケース本体401内への引き戻しが自在となっている。
【0023】
ワイヤロープ402の先端部には、作業員Sが装着している安全ベルト106に掛け止めするフック403が取り付けられている。また、ケース本体401の上部には、固定リング404が取り付けられている。
【0024】
この安全ブロック400は、作業員Sが通常の速さで可動梯子102や固定梯子101を昇降しているときには、ワイヤロープ402がケース本体401から自動的に引き出され、また、ケース本体401に引き戻されて、作業員Sの昇降時にワイヤロープ402が邪魔にならないようにしている。
【0025】
しかし、作業員Sが何らかの原因により可動梯子102や固定梯子101から落下して、ワイヤロープ402がケース本体401から勢い良く引き出されるような事態が生じると、ケース本体401は、例えば、ワイヤロープ402が約25cm程度引き出された時点でワイヤロープ402の送り出しを停止して、作業員Sのそれ以上の落下を阻止するように作動するのである。
【0026】
この様に、安全ブロック400は、従来の弊害を解消しつつ、可動梯子102や固定梯子101を介した昇降時における作業員Sの安全を確保するための手段として非常に有効なものであるが、例えば、図9に示すように、蓋105を開けている立坑100から可動梯子102が突出しているような状況において、可動梯子102の上部には、安全ブロック400を吊り下げるようにして設置する部材が存在していない。
【0027】
その為、可動梯子102や固定梯子101を使用するときに、可動梯子102に適宜取り付けて、可動梯子102に安全ブロック400を吊り下げる治具が必要となるのである。
【0028】
この他、図11(a)(b)に示す縦支柱201の一方に安全器203を取り付ける作業員Sの落下防止対策、また、図12(a)(b)に示す梯子300の側面にストッパー兼用連結部材301を介して、安全帯のフック取付杆302を設けた作業員Sの落下防止対策は、いずれもその構造が複雑で、設置工事の費用が割高になってしまう。
【0029】
その為、可動梯子102の上部に安全ブロック400を吊り下げる措置に勝るものではない。
【0030】
さらに、これらの落下防止対策は、建設の当初から講じていれば有効であるものの、既設の可動梯子102や固定梯子101においては、特別な機構を新たに設置する大掛かりな追加の工事が必要となってしまう。
【0031】
その為、既設の可動梯子102や固定梯子101に対し、事後的に設置する措置として好ましいものではない。
【0032】
加えて、特別な機構が可動梯子102や固定梯子101に沿って設置されることから、狭い立坑100内において、既設の可動梯子102や固定梯子101に対して、そもそも設置できない場合もある。
【0033】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、既設の可動梯子に対し、所定の治具を適宜取り付けて安全ブロックを設置することにより、可動梯子や固定梯子を介した昇降時における作業員の安全を確保しながら、作業員が迅速に昇降することができ、また、当該治具の撤去も極めて容易である、可動梯子用の安全ブロック取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、種々の立坑に沿って設置している固定梯子の上部に連設されている可動梯子に安全ブロックを取り付けるための、可動梯子用の安全ブロック取付治具であり、可動梯子を形成する2本の縦支柱の上端部分にそれぞれ固定される一対の掛止体と、一対の掛止体の間に固定される安全ブロックの吊り下げ棒により構成され、一対の掛止体は、縦支柱の上端部分に当がう装着部と、装着部から側方に向けて延設された張出片から形成され、安全ブロックの吊り下げ棒は、安全ブロックのスライド防止部材を備え、掛止体を形成している張出片の先端側部分に固定されていることで、上述した課題を解決した。
【0035】
また、掛止体の装着部は、矩形状の垂設板と、垂設板の両端部分から側方に向けて延設された一対の挟持片を備え、垂設板は、可動梯子の横棧に上方から係止する切り欠き溝を有することで、同じく上述した課題を解決した。
【0036】
さらに、掛止体の装着部は、垂設板と一対の挟持片の上端部に、天板を固定していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0037】
また、可動梯子を形成する2本の縦支柱に所定の貫通孔を設ける一方、掛止体を形成する装着部の一対の挟持片に孔を設け、縦支柱の上端部分に掛止体を当がい、縦支柱の貫通孔と挟持片の孔を合致させた状態で、ボルト部材の軸部を貫挿して軸部の先端側にナットを螺合させていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0038】
加えて、掛止体を形成する張出片の先端側部分に孔を設ける一方、安全ブロックの吊り下げ棒の両端部分に雄ネジ部分を設け、両張出片の間に安全ブロックの吊り下げ棒を当がい、張出片の孔に吊り下げ棒の雄ネジ部分を貫挿し、雄ネジ部分に螺合している2個のナットにより張出片の孔の周辺を挟持していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0039】
また、安全ブロックの吊り下げ棒のスライド防止部材は、所定の間隔を保持して吊り下げ棒に固定された2枚の環板により形成されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0040】
さらに、スライド防止部材は、安全ブロックの吊り下げ棒の略中央部分に配置され、吊り下げ棒におけるスライド防止部材の両側部分は、作業員が手で握る持ち手部分となっていることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、種々の立坑に沿って設置している固定梯子の上部に連設されている可動梯子に安全ブロックを取り付けるための、可動梯子用の安全ブロック取付治具であり、可動梯子を形成する2本の縦支柱の上端部分にそれぞれ固定される一対の掛止体と、一対の掛止体の間に固定される安全ブロックの吊り下げ棒により構成されていることから、可動梯子を立坑から突出させて可動梯子と固定梯子を使用するときに、可動梯子を形成する2本の縦支柱に一対の掛止体を適宜固定して、当該一対の掛止体の間に安全ブロックの吊り下げ棒を簡単に固定できる。
【0042】
そして、一対の掛止体の間に配置されている安全ブロックの吊り下げ棒に安全ブロックを吊り下げることにより、可動梯子に対して安全ブロックを設置することが可能となる。
【0043】
その為、この安全ブロックを使用することにより、作業員は自身の安全を確保しながら、可動梯子や固定梯子を介して迅速に昇降することができる。
【0044】
この様に、本発明に係る可動梯子用の安全ブロック取付治具を使用することにより、作業員の落下防止対策が何ら施されていない可動梯子に対して、安全ブロックを事後的に設置できるのである。
【0045】
また、種々の作業が終了し、可動梯子を立坑内に収容して立坑を閉鎖するときには、安全ブロックを取り外して、可動梯子に取り付けている掛止体と吊り下げ棒を簡単に撤去できる。
【0046】
さらに、一対の掛止体は、縦支柱の上端部分に当がう装着部を備えている為、縦支柱への取り付けが容易である。また、装着部から側方に向けて延設された張出片を備え、安全ブロックの吊り下げ棒が、張出片の先端側部分に固定されていることから、安全ブロックの吊り下げ棒を、可動梯子から若干離れた位置に配置できる。
【0047】
その為、この吊り下げ棒に取り付ける安全ブロックも、立坑の中心に向けて張り出すように設置される。
【0048】
その結果、安全ブロックからワイヤロープが長く引き出されている状況であっても、ワイヤロープが固定梯子等に引っ掛かったり、立坑の内壁に存在する部材に絡み付くことがない。
【0049】
また、安全ブロックを立坑の中心に向けて張り出すように設置できることから、作業員が可動梯子や固定梯子を介して昇降する際に、安全ブロックのワイヤロープを、作業員の肩や背中側に配置できる。その為、作業員は、当該ワイヤロープの存在を意識することなく、迅速に昇降することができる。
【0050】
特に、作業員が可動梯子の位置に存在し、安全ブロックのワイヤロープが短い場合であっても当該ワイヤロープを作業員の肩や背中側に配置できるので、作業員が可動梯子に乗り込むときや、可動梯子から離れるときにも、安全ブロックのワイヤロープが邪魔にならない。
【0051】
また、安全ブロックの吊り下げ棒は、安全ブロックのスライド防止部材を備えていることから、このスライド防止部材に安全ブロックを吊り下げることにより、安全ブロックは、片寄ることが無く、常に立坑の中心に向けて張り出すように設置されている状態が維持される。
【0052】
さらに、掛止体の装着部は、矩形状の垂設板と、垂設板の両端部分から側方に向けて延設された一対の挟持片を備えていることから、装着部を縦支柱の上端部に当がったときに、縦支柱の内側の側面に垂設板を当接した状態で、一対の挟持片により縦支柱の前後の側面を挟み込むことができる。
【0053】
そして、装着部は、垂設板に可動梯子の横棧に上方から係止する切り欠き溝を有することから、可動梯子の横棧にこの切り欠き溝を当がうことにより、装着部が縦支柱に沿って下方へ移動することがない。
【0054】
また、掛止体の装着部は、垂設板と一対の挟持片の上端部に、天板を固定していることから、装着部を縦支柱の上端部に当がったときに、縦支柱の内側の側面に垂設板が当接し、一対の挟持片により縦支柱の前後の側面を挟み込んだ状態で、縦支柱の上面に天板が当接することとなり、装着部が縦支柱に沿って下方へ移動することがない。
【0055】
加えて、可動梯子を形成する2本の縦支柱に所定の貫通孔を設ける一方、掛止体を形成する装着部の一対の挟持片に孔を設け、縦支柱の上端部分に掛止体を当がい、縦支柱の貫通孔と挟持片の孔を合致させた状態で、ボルト部材の軸部を貫挿して軸部の先端側にナットを螺合させていることから、縦支柱の上端部分に掛止体を確実に固定できる。
【0056】
この様に、掛止体の装着部を縦支柱の上端部に当がったときに、縦支柱の内側の側面に垂設板を当接した状態で、一対の挟持片により縦支柱の前後の側面を挟み込んで装着部の前後方向の移動が規制されおり、また、装着部の切り欠き溝が可動梯子の横棧に下方から支持され、同様に、装着部の天板が縦支柱の上面に下方から支持されて、装着部の下方向への移動が規制されている。
【0057】
そして、縦支柱の貫通孔と挟持片の孔を合致させた状態で、ボルト部材の軸部を貫挿して軸部の先端側にナットを螺合させることにより、装着部の前後・左右・上下方向の移動が規制されて、縦支柱の上端部分に掛止体を確実に固定できるのである。
【0058】
その結果、作業員が何らかの原因により可動梯子や固定梯子から落下し、作業員が安全ブロックのワイヤロープにより吊り下げられて安全ブロックに大きな荷重が加えられたような場合であっても、縦支柱の上端部分から掛止体が外れてしまう事態の発生を確実に阻止している。
【0059】
そして、安全ブロックにより作業員の体重をしっかりと支えてその落下を阻止することにより、梯子を介した昇降時における作業員の安全を確保しているのである。
【0060】
この他、掛止体を形成する張出片の先端側部分に孔を設ける一方、安全ブロックの吊り下げ棒の両端部分に雄ネジ部分を設け、両張出片の間に安全ブロックの吊り下げ棒を当がい、張出片の孔に吊り下げ棒の雄ネジ部分を貫挿し、雄ネジ部分に螺合している2個のナットにより張出片の孔の周辺を挟持していることから、張出片の孔に安全ブロックの吊り下げ棒を確実に固定できる。
【0061】
その為、安全ブロックに大きな荷重が加えられた場合であっても、一対の掛止体の間に固定されている吊り下げ棒が外れてしまう事態の発生を確実に阻止している。
【0062】
また、安全ブロックの吊り下げ棒のスライド防止部材は、所定の間隔を保持して吊り下げ棒に固定された2枚の環板により形成されていることから、吊り下げ棒に沿った安全ブロックの左右方向の移動を確実に規制できる。
【0063】
さらに、スライド防止部材は、安全ブロックの吊り下げ棒の略中央部分に配置され、吊り下げ棒におけるスライド防止部材の両側部分は、作業員が手で握る持ち手部分となっていることから、作業員が可動梯子に乗り込むときに、吊り下げ棒の持ち手部分を手で握って、自らの安全を確保できる。また、可動梯子を昇ってきた作業員が地上に降りるときも、吊り下げ棒の持ち手部分を手で握って、体を引き上げることにより、自らの安全を確保しながら、迅速に可動梯子から離れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】可動梯子用の安全ブロック取付治具の、使用状態を示す斜視図である。
【図2】一対の掛止体の構成を示す分解斜視図である。
【図3】一対の掛止体の間に、安全ブロックの吊り下げ棒を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図4】安全ブロックの吊り下げ棒を取り付けている一対の掛止体を、可動梯子を形成する2本の縦支柱の上端部分に固定する状態を示す分解斜視図である。
【図5】安全ブロックの吊り下げ棒を取り付けている一対の掛止体を、可動梯子を形成する2本の縦支柱の上端部分に固定した状態を示す斜視図である。
【図6】一対の掛止体に取り付けている吊り下げ棒に、安全ブロックを吊り下げている状態を示す斜視図である。
【図7】可動梯子用の安全ブロック取付治具の、他の使用状態を示す斜視図である。
【図8】可動梯子用の安全ブロック取付治具の、他の構成を示す分解斜視図である。
【図9】立坑の蓋を開き、可動梯子を上方に移動させて立坑から突出させている状態を示す斜視図である。
【図10】作業員が装着している安全ベルトに2個の安全装置を取り付け、それぞれの安全装置からロープを所定の長さに引き出し、2個のフックを可動梯子の横棧に段違いとなるように引っ掛けて昇降している状態を示す斜視図である。
【図11】従来の垂直昇降用梯子の構成を示すもので、(a)は断面が略I形の2本の縦支柱の一方に、安全器を介して安全帯を取り付けている状態を示す斜視図、(b)はフック状の掛止装置を作業員のベルト位置等に掛け止めして、作業員が昇降している状態を示す側面図である。
【図12】従来のマンホール用梯子の構成を示すもので、(a)は梯子の側面にストッパー兼用連結部材を介して、安全帯のフック取付杆を設けている状態を示す斜視図、(b)はフック取付杆が、複数のストッパー兼用連結部材を介して、梯子に取り付けられている状態を示す側面図である。
【図13】安全ブロックの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0066】
本発明は、図1・図6に示すように、種々の立坑100に沿って設置している固定梯子101の上部に連設されている可動梯子102に安全ブロック400を取り付けるための、可動梯子102用の安全ブロック取付治具1である。
【0067】
尚、立坑100、固定梯子101、可動梯子102、安全ブロック400等の構成は、既に説明済みであることから、同一の構成には同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0068】
可動梯子102用の安全ブロック取付治具1は、図2乃至図4に示すように、可動梯子102を形成する2本の縦支柱103の上端部分にそれぞれ固定される一対の掛止体2と、一対の掛止体2の間に固定される安全ブロック400の吊り下げ棒3により構成されている。
【0069】
一対の掛止体2は、図2・図4に示すように、縦支柱103の上端部分に当がう装着部4と、装着部4から側方に向けて延設された張出片5から形成されている。
【0070】
また、掛止体2の装着部4は、図2に示すように、矩形状の垂設板6と、垂設板6の両端部分から側方に向けて延設された一対の挟持片7を備えている。この一対の挟持片7は、長方形状で、垂設板6と一対の挟持片7により、装着部4の全体は、上方から見て略コ字状に形成されている。
【0071】
さらに、垂設板6は、図2に示すように、切り欠き溝8を有している。この切り欠き溝8は、図4に示すように、可動梯子102の最上段に位置している横棧104に上方から係止するもので、垂設板6の下端部側が開放し、垂設板6の中程で閉鎖するように逆U字状に切り欠いて形成されている。
【0072】
また、掛止体2の装着部4は、図2に示すように、垂設板6と一対の挟持片7の上端部に、長方形状の天板9を固定している。
【0073】
装着部4は、縦支柱103の上端部分に当がうことから、図4・図5に示すように、垂設板6は縦支柱103の内側の側面103aと同一の幅を有している。同様に、一対の挟持片7は、縦支柱103の前後の側面103b,103cと同一の幅を有している。また、天板9も、縦支柱103の上面103dと同一の幅を有している。
【0074】
加えて、一対の挟持片7の下方部分には、図2に示すように、それぞれに所定の孔10を設けている。また、縦支柱103には、図4に示すように、所定の貫通孔103eを設けている。
【0075】
これらの挟持片7の孔10と縦支柱103の貫通孔103eは、縦支柱103の上端部分に掛止体2を当がったときに、それぞれが合致するように配置されている。
【0076】
この掛止体2を固定するときは、図4・図5に示すように、縦支柱103の上端部分に掛止体2を当がい、縦支柱103の貫通孔103eと挟持片5の孔10を合致させた状態で、ボルト部材Bの軸部Gを貫挿する。この軸部Gには、雄ネジが設けられている。
【0077】
そして、挟持片5の孔10と縦支柱103の貫通孔103eに挿入している軸部Gの先端にナットNを螺合させて、縦支柱103の上端部分に掛止体2を固定するのである(図5参照)。
【0078】
また、図2に示すように、装着部4を形成する一方の挟持片7(縦支柱103の側面103bに当接するもの)には、側方に向けて張出片5が延設されている。この張出片5は、挟持片7に対して90度の角度を維持するように配置されている。
【0079】
さらに、張出片5の先端側部分に、孔11を設けている。この孔11は、一対の掛止体2の間に、安全ブロック400の吊り下げ棒3を固定するためのものである。
【0080】
張出片5は、図2に示すように、その上縁が水平となるように延設されている。また、張出片5の下縁は、基端部側から先端部側にかけて上向きに若干傾斜しており、張出片5の全体として先端部側が僅かに細くなっている。
【0081】
張出片5の孔11を介して取り付ける安全ブロック400の吊り下げ棒3は、可動梯子102全体の幅(縦支柱103・横棧104・縦支柱103)よりも若干長くなるように形成されている。
【0082】
この吊り下げ棒3は、図3に示すように、その両端部分に、雄ネジ部分12を設けている。この雄ネジ部分12には、当該雄ネジ部分12に螺合している2個のナットNを備えている。また、2個のナットNの間には、2個のワッシャWが配置されている。
【0083】
そして、図3・図4に示すように、両張出片5の間に安全ブロック400の吊り下げ棒3を当がい、張出片5の孔11に吊り下げ棒3の雄ネジ部分12を貫挿し、雄ネジ部分12に螺合している2個のナットNにより張出片5の孔11の周辺を挟持して、掛止体2を形成している張出片5の先端側部分に吊り下げ棒3を固定するのである。
【0084】
この安全ブロック400の吊り下げ棒3は、図3に示すように、安全ブロック400のスライド防止部材13を備えている。スライド防止部材13は、所定の間隔を保持して吊り下げ棒3に固定された2枚の環板13a,13bにより形成されている。
【0085】
また、スライド防止部材13は、安全ブロック400の吊り下げ棒3の略中央部分に配置されている。その為、吊り下げ棒3におけるスライド防止部材13の両側部分は、作業員Sが手で握る持ち手部分となっている。
【0086】
ここで、安全ブロック取付治具1を取り付ける可動梯子102は、十分な強度を確保できるようにステンレス素材のものを対象とするのが好ましい。さらに、安全ブロック取付治具1の各部材(一対の張出片5、吊り下げ棒3、スライド防止部材13等)は、異種金属間腐食を防止できるように、可動梯子102を形成する素材と同一の素材を用いて形成されるのが好ましい。つまりステンレス素材の可動梯子102には、ステンレス素材の安全ブロック取付治具1の各部材を用いるのが最も好ましい。
【0087】
以下に、可動梯子102を形成する2本の縦支柱103の上端部分に、可動梯子102用の安全ブロック取付治具1を組み付ける手順を説明する。
【0088】
まず、図3に示すように、一対の掛止体2の張出片5の間に安全ブロック400の吊り下げ棒3を当がい、張出片5の孔11に吊り下げ棒3の雄ネジ部分12を貫挿する。このとき、雄ネジ部分12の基端部側にナットNを螺合させ、ワッシャWを配置しておく。
【0089】
この様に、張出片5の内側にナットNとワッシャWを配置した状態で、吊り下げ棒3の雄ネジ部分12の先端側を、張出片5の孔11から突出させる。
【0090】
次に、図3・図4に示すように、雄ネジ部分12の先端側にワッシャWを配置し、ナットNを螺合させる。このとき、2個のワッシャWが、張出片5の側面に強く当たっていない緩い状態にしておく。
【0091】
この様にして、図4に示すように、一対の掛止体2の張出片5の間に安全ブロック400の吊り下げ棒3を仮止めする。
【0092】
次に、図4・図5に示すように、縦支柱103の上端部分に掛止体2を当がい、縦支柱103の貫通孔103eと挟持片5の孔10を合致させた状態で、ボルト部材Bの軸部Gを貫挿する。
【0093】
そして、挟持片5の孔10と縦支柱103の貫通孔103eに挿入している軸部Gの先端にナットNを螺合させて、縦支柱103の上端部分に掛止体2を固定する。
【0094】
このとき、掛止体2は、縦支柱103の内側の側面103aに垂設板6を当接した状態で、一対の挟持片7により縦支柱103の前後の側面103b,103cを挟み込んで装着部4の前後方向の移動が規制されている。
【0095】
また、装着部4の切り欠き溝8が、可動梯子102の最上段に位置している横棧104に下方から支持され、同様に、装着部4の天板9が縦支柱103の上面103dに下方から支持されて、装着部4の下方向への移動が規制されている。
【0096】
そして、図4・図5に示すように、縦支柱103の貫通孔103eと挟持片7の孔10を合致させた状態で、部材Bの軸部Gを貫挿して軸部Gの先端側にナットNを螺合させることにより、装着部4の前後・左右・上下方向の移動が規制されて、縦支柱103の上端部分に掛止体2を確実に固定する。
【0097】
次に、一対の掛止体2の張出片5の間に仮止めしている吊り下げ棒3を、確実に固定する。
【0098】
具体的には、吊り下げ棒3の雄ネジ部分12に螺合している2個のナットNの位置を微調整しながら締め付けて、張出片5の孔11の周辺に2個のワッシャWを強く当て、張出片5の孔11の周辺を2個のワッシャWにより挟持して、掛止体2を形成している張出片5の先端側部分に吊り下げ棒3を固定するのである。
【0099】
最後に、図6に示すように、吊り下げ棒3に安全ブロック400を吊り下げるようにして取り付ける。
【0100】
具体的には、吊り下げ棒3のスライド防止部材13に安全ブロック400の固定リング404を掛け止めして、スライド防止部材13を形成する2枚の環板13a,13bの間に安全ブロック400の固定リング404を取り付けるのである。
【0101】
この様にして、可動梯子102用の安全ブロック取付治具1を介して、可動梯子102に安全ブロック400を取り付けてから、作業員Sは、安全ブロック400のケース本体401内からワイヤロープ402を引き出して、自らが装着している安全ベルト106に、ワイヤロープ402のフック403を掛け止めする。この一連の作業は、地上において行う。
【0102】
そして、作業員Sが可動梯子102に乗り込むときは、スライド防止部材13の両側部分である吊り下げ棒3の持ち手部分を手で握って、自らの安全を確保する。また、可動梯子102を昇ってきた作業員Sが地上に降りるときも、吊り下げ棒3の持ち手部分を手で握って、体を引き上げることにより、自らの安全を確保しながら、迅速に可動梯子102から離れる。
【0103】
また、作業員Sが可動梯子102を介して昇降するときは、図1に示すように、安全ブロック400のワイヤロープ402を、作業員Sの肩や背中側に配置して、作業員Sが当該ワイヤロープ402の存在を意識することなく昇降する。
【0104】
さらに、図7に示すように、安全ブロック400のワイヤロープ402が長く引き出されて、作業員Sが固定梯子101を介して昇降するときも、ワイヤロープ402が邪魔にならない。
【0105】
また、安全ブロック400から長く引き出されているワイヤロープ402が、固定梯子等に引っ掛かったり、立坑の内壁に接することもない。
【0106】
尚、可動梯子102用の安全ブロック取付治具1は、図1乃至図7に示す形状のものに限定されることはない。
【0107】
例えば、図8に示すように、可動梯子102を形成している縦支柱103の外側の側面に、所定の長さを有する一対の張出片50を直接固定して、安全ブロック取付治具1を構成しても良い。
【0108】
このとき、スライド防止部材13を有する吊り下げ棒30は、一対の張出片50において、先端側の内側面に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る可動梯子用の安全ブロック取付治具は、可動梯子と固定梯子が設置されている様々な立坑において、可動梯子に安全ブロックを適宜取り付けて、安全ブロックにより自身の安全を確保した上で、作業員が迅速に昇降できるものとして、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
S…作業員
B…ボルト部材
W…ワッシャ
100…立坑
101…定梯子
102…可動梯子
103…縦支柱
103a…側面
103b…側面
103c…側面
103d…上面
103e…貫通孔
104…横棧
105…蓋
106…安全ベルト
107…安全装置
108…ロープ
109…フック
200…垂直昇降用梯子
201…縦支柱
202…横棧
203…安全器
204…安全帯
205…掛止装置
300…マンホール用梯子
301…ストッパー兼用連結部材
302…フック取付杆
303…フック
400…安全ブロック
401…ケース本体
402…ワイヤロープ
403…フック
404…固定リング
1…安全ブロック取付治具
2…掛止体
3…吊り下げ棒
4…装着部
5…張出片
6…垂設板
7…挟持片
8…切り欠き溝
9…天板
10…孔
11…孔
12…雄ネジ部分
13…スライド防止部材
13a…環板
13b…環板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の立坑に沿って設置している固定梯子の上部に連設されている可動梯子に安全ブロックを取り付けるための、可動梯子用の安全ブロック取付治具であり、可動梯子を形成する2本の縦支柱の上端部分にそれぞれ固定される一対の掛止体と、一対の掛止体の間に固定される安全ブロックの吊り下げ棒により構成され、
一対の掛止体は、縦支柱の上端部分に当がう装着部と、装着部から側方に向けて延設された張出片から形成され、
安全ブロックの吊り下げ棒は、安全ブロックのスライド防止部材を備え、掛止体を形成している張出片の先端側部分に固定されていることを特徴とする、可動梯子用の安全ブロック取付治具。
【請求項2】
掛止体の装着部は、矩形状の垂設板と、垂設板の両端部分から側方に向けて延設された一対の挟持片を備え、垂設板は、可動梯子の横棧に上方から係止する切り欠き溝を有する請求項1に記載の可動梯子用の安全ブロック取付治具。
【請求項3】
掛止体の装着部は、垂設板と一対の挟持片の上端部に、天板を固定している請求項1または2に記載の可動梯子用の安全ブロック取付治具。
【請求項4】
可動梯子を形成する2本の縦支柱に所定の貫通孔を設ける一方、掛止体を形成する装着部の一対の挟持片に孔を設け、縦支柱の上端部分に掛止体を当がい、縦支柱の貫通孔と挟持片の孔を合致させた状態で、ボルト部材の軸部を貫挿して軸部の先端側にナットを螺合させている請求項1乃至3のいずれかに記載の可動梯子用の安全ブロック取付治具。
【請求項5】
掛止体を形成する張出片の先端側部分に孔を設ける一方、安全ブロックの吊り下げ棒の両端部分に雄ネジ部分を設け、両張出片の間に安全ブロックの吊り下げ棒を当がい、張出片の孔に吊り下げ棒の雄ネジ部分を貫挿し、雄ネジ部分に螺合している2個のナットにより張出片の孔の周辺を挟持している請求項1乃至4のいずれかに記載の可動梯子用の安全ブロック取付治具。
【請求項6】
安全ブロックの吊り下げ棒のスライド防止部材は、所定の間隔を保持して吊り下げ棒に固定された2枚の環板により形成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の可動梯子用の安全ブロック取付治具。
【請求項7】
スライド防止部材は、安全ブロックの吊り下げ棒の略中央部分に配置され、吊り下げ棒におけるスライド防止部材の両側部分は、作業員が手で握る持ち手部分となっている請求項1乃至6のいずれかに記載の可動梯子用の安全ブロック取付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−256532(P2011−256532A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129516(P2010−129516)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】