説明

可動連絡橋

【課題】伸縮ラダーの動きが異常となった緊急時に、伸縮ラダーの船舶からのオートリリースを可能にして、伸縮ラダーと船舶双方の破損を防止し得る可動連絡橋を提供する。
【解決手段】伸縮ラダーの固定ラダーの下側に、原動機5と原動機5からの出力の伝達を受ける固定ホイール10を支持する回転軸11と噛合いクラッチ13とが配備され、噛合いクラッチ13は、回転軸11に一体に回転可能にされてその軸方向に移動可能に設置される作用部14と、回転軸11に回転自在に軸支されて作用部14と噛合する従動部15とから成り、作用部14と従動部15は、伸縮ラダーの強制伸縮動作時及びロック時において噛合し合い、それ以外の場合は、従動部15は移動ラダーの動きに呼応してフリー回転可能にされ、伸縮ラダーのロックは、作用部14が、伸縮ラダーの異常な動きの検出に基づいて動作して従動部15に噛合することにより行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動連絡橋、より詳細には、桟橋に着桟する船に、作業員が通行するために桟橋から架け渡される橋であって、船の揺動に追従可能な伸縮ラダー方式の可動連絡橋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着桟した船舶と桟橋との間に、作業員等が通行するための可動連絡橋が渡される。可動連絡橋の多くは、ラダーとして伸縮可能且つ起伏、旋回可能にされた伸縮ラダーを採用しており、船舶の着桟時に架橋するに当たり、起伏用ウインチや揺動アクチュエータ等の作用で、伸縮ラダーを起こした状態で船舶の甲板上に旋回させ、所定位置において伸縮ラダーを降ろし、その先端部に設置されているワークラダーをオンデッキさせる。かくして、桟橋と船舶との間の通行が可能となる。
【0003】
この架橋状態において船舶が風、波によって揺動すると、ワークラダーが甲板上に支持されている場合、伸縮ラダー並びにその伸縮駆動機構に逆負荷がかかり、それらの損傷、故障を招くおそれがある。そこで、かかる事態の発生を回避するために、架橋後に船が揺動した際、伸縮ラダーがその動きに追従して伸縮自在となるようにされるのである。そして、そのために従来は、例えば、伸縮駆動機構を構成する原動機と減速機を連結するカップリングにクラッチを配備し、そのクラッチを切る方法が取られていた。
【0004】
従来用いられているクラッチは噛合い式クラッチ(矩形歯)であって、そのクラッチ入切操作は、クラッチの回転を止めた状態において、作業員が目視にて歯の位置合わせを行いつつレバー操作するものであった。
【0005】
船舶の揺動が異常に大きくなった場合に、伸縮ラダーの異常な動きを検出するセンサーを配備し、その信号により自動的に起伏ウインチによってラダーを吊り上げ、船舶から切り離す機能(緊急離脱、オートリリース)を具備させることが考えられるが、伸縮ラダーが伸縮自在の状態において作動させると、伸縮ラダーが滑走し、船舶と連絡橋を損傷するおそれがある。
【0006】
また、従来の方法によった場合は、人的操作によってクラッチを入れて伸縮ラダーをロックするまで、伸縮ラダーの吊り上げ操作を行うことができないため、緊急事態発生時に、即座に伸縮ラダーと船舶との切り離し操作を行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−26083号公報
【特許文献2】特開2003−27417号公報
【特許文献3】特開2003−313812号公報
【特許文献4】特許第4542948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術における問題点を解決するためになされたものであって、伸縮ラダーの動きが異常となった緊急時に、伸縮自在状態にある伸縮ラダーの動きを抑止するためのクラッチの入操作が直ちに自動的に行われることを可能にし、以て、手動によるクラッチの入操作の手間を省くと共に、人的操作の場合に起こり得るクラッチ入切の遅延や誤操作をなくし、以て、伸縮ラダーの船舶からのオートリリースを可能にして、伸縮ラダーと船舶双方の破損を防止し得る可動連絡橋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、着桟した船舶と桟橋との間に架け渡される可動連絡橋であって、固定ラダーと前記固定ラダーに支持されてそれに沿って移動する移動ラダーとから成る伸縮ラダーを備え、前記固定ラダーの下側に、減速機を介して回転駆動力を出力する原動機と、前記出力の伝達を受ける固定ホイールを固定支持する回転軸と、前記回転軸に配置される噛合いクラッチとが配備され、前記噛合いクラッチは、前記回転軸に一体に回転可能にされると共にその軸方向に移動可能に設置される作用部と、前記回転軸に回転自在に軸支されていて前記作用部と噛合する従動部とから成っていて、前記作用部と前記従動部は、前記伸縮ラダーの強制伸縮動作時及び前記伸縮ラダーのロック時において噛合し合い、それ以外の場合において前記従動部は前記移動ラダーの動きに呼応してフリー回転可能にされ、前記伸縮ラダーのロックは、前記作用部が、前記伸縮ラダーの異常な動きの検出に基づいて動作して前記従動部に噛合することにより行われることを特徴とする可動連絡橋である。
【0010】
一実施形態においては、前記作用部を構成するクラッチ本体の周面に摺動溝が形成され、前記摺動溝内に、作動レバーの中間部が取り付けられたスライダーが摺動可能に収められ、前記作動レバーは一端が枢着されると共に他端部に電動シリンダーのロッド端が連結され、前記作用部と前記従動部の各対向面に互いに噛合し合う環状歯が配設される。そして、前記噛合いクラッチの環状歯は、鋸歯状を呈するものとされる。
【0011】
前記伸縮ラダーにその異常な動きを検出するセンサーが配備され、前記電動シリンダーは、前記センサーからの異常検出信号に基づいて動作し、前記作動レバーを介して前記クラッチ本体を前進させて、その環状歯と前記従動部の環状歯を噛合させて前記移動ラダーの動きをロックする。また、前記センサーからの異常検出信号に基づく前記電動シリンダーによる伸縮ラダーのロック動作に呼応して、起伏ウインチによる前記伸縮ラダーの吊り上げ動作がなされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る可動連絡橋は上記のとおりであって、伸縮ラダーの動きが異常となった緊急時に、噛合いクラッチが自動的に動作して移動ラダーをロックして伸縮ラダーの自由な伸縮動作を抑え、それに連動して伸縮ラダーの吊り上げ操作を行うようにすることができるため、伸縮ラダーの船舶からのオートリリースが可能となり、以て、伸縮ラダーと船舶双方の破損を防止し得る効果がある。
【0013】
また、伸縮ラダーの自由な伸縮動作を抑えるためのクラッチの入切操作が人手によらずに自動化されるため、人的操作による手間が省かれると共に、人的操作の場合に起こり得るクラッチ入切の遅延や誤操作をなくすことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る可動連絡橋の全体構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る可動連絡橋の全体構成を示す部分切截平面図である。
【図3】本発明に係る可動連絡橋の要部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。図1は本発明に係る可動連絡橋の全体構成を示す正面図であり、図2はその部分切截平面図である。そこに示されるように、本発明に係る可動連絡橋は、固定ラダー2と固定ラダー2に支持されてそれに沿って移動する移動ラダー3とから成る伸縮ラダー1を備えたものである。伸縮ラダー1は、例えば、幅広の固定ラダー2の内側に、それよりも少し幅狭に形成した移動ラダー3を、ローラーを用いる等してスライド可能に収めて構成される。図示したものは2段伸縮であるが、3段伸縮、あるいは、それ以上のものとすることもできる。移動ラダー1の先端には、船舶の甲板に接地するワークラダー23が取り付けられる。
【0016】
伸縮ラダー1は、桟橋に立設された支持フレーム31に水平方向及び垂直方向に旋回可能に設置される。例えば、水平方向への旋回駆動は、支持フレーム31に配備された揺動形アクチュエータ32によって行われ、垂直方向への起伏駆動は、支持フレーム31に配備された、図示せぬ起伏用ウインチによって行われる(起伏用ウインチから伸びて、支持フレーム31上端部のプーリに掛け回されたワイヤーが、固定ラダー2の中程に配設される図示せぬプーリに掛け回される。)。これらの起伏・旋回駆動機構自体は、従来のものと特に変わりはない。
【0017】
固定ラダー2の下側に、カップリング6及び減速機7を介して回転駆動力を出力する原動機5と、その出力の伝達を受ける固定ホイール10を固定支持する回転軸11と、回転軸11に配置される噛合いクラッチ13とが配備される。12は、回転軸11の端部を軸支する軸受である。これらの原動機5、減速機7、噛合いクラッチ13等は、固定ラダー2の下面に設置されるケース4内に配置される。
【0018】
噛合いクラッチ13は、回転軸11に固定されて一体に回転する作用部14と、回転軸11に回転自在に軸支されていて作用部14と噛合する従動部15とから成っていて、従動部15は、移動ラダー3の動きに呼応してフリー回転可能となるようにされる。
【0019】
作用部14は、回転軸11に一体に回転可能にされると共に、その軸方向に移動可能に設置されるクラッチ本体16と、クラッチ本体16の従動部15との対向面に配備される環状歯17とから成る。クラッチ本体16は、回転軸11に一体に回転可能となると共にその軸方向に移動可能となるように、回転軸11に対してスプライン結合され、あるいは、キー結合される。また、クラッチ本体16の周面に摺動溝18が形成され、その摺動溝18内にスライダー19が摺動自在に収装される。スライダー19は、作動レバー20の中間部に取り付けられる。作動レバー20は、その一端部が枢軸20aによって枢支され、他端部に、電動シリンダー21のロッド端が連結される。通例、電動シリンダー21は、枢軸22に軸支されて旋回可能に設置される。
【0020】
従動部15は、軸受を介して回転軸11に設置される軸支板23と、軸支板23との間に自由ホイール24を挟み、軸支板23及び自由ホイール24と一体に設置される環状歯25とから成る。環状歯25は環状歯17に対応するもので、互いに噛合し合う。好ましい実施形態においては、環状歯17、25は、従来用いられているような矩形歯ではなく、鋸歯状を呈するものとされる。そのようにすることにより、矩形歯におけるような位置合わせが不要となり、且つ、一方又は双方が回転している場合においても無理なく噛合可能となる。
【0021】
上記構成の噛合いクラッチ13は、伸縮ラダー1の強制的伸縮操作の際及び伸縮ラダー1のロック操作の際に入動作し、その他の場合においては切状態を維持する。その入操作は、電動シリンダー21の伸動作によって行われる。即ち、電動シリンダー21が伸動作すると、そのロッド端が連結されている作動レバー20が枢軸20aを軸に枢動し、それに伴い、作動レバー20の中間部に取り付けられていて摺動溝18内に収まっているスライダー19が摺動溝18の側壁を押すように作用する。その結果作用部14は、スプライン結合又はキー結合されている回転軸11に沿って従動部15側に移動していき、やがてその環状歯17が環状歯17に噛合する。
【0022】
環状歯17と環状歯25はこのようにして噛合するが、伸縮ラダー1の強制的伸縮操作の際には、原動機5が始動してその回転駆動力が、カップリング6、減速機7、出力ホイール8、出力チェーン9及び固定ホイール10を介して回転軸11に伝達される。そして、回転軸11と一体に回転する作用部14の環状歯17から、これに噛合する従動部15の環状歯25へと伝達され、環状歯25と一体の自由ホイール24から、中間チェーン26を介して上方に設置されているドライブホイール27に伝達され、ドライブホイール27によって端部が移動ラダー3に連結されているドライブチェーン28が進退駆動される。このドライブチェーン28の進退動作に伴って移動ラダー3が前進し又は後退し、以て、伸縮ラダー1が伸び又は縮まることは、従来の場合と同じである。
【0023】
上記操作によって伸縮ラダー1を所定位置にまで伸ばした後、電動シリンダー21が縮動作して作動レバー20を逆方向に回動させると、環状歯17と環状歯25の噛合関係が解除されて自由ホイール24が解放され、回転軸11を軸にフリー回転可能となる。かくして、船舶が揺動した際に、伸縮ラダー1がその船舶の動きに追従して伸縮しようとして、換言すれば、移動ラダー3が前進又は後退しようとしてドライブチェーン28を引き又は戻すように作用しても、自由ホイール24が回転軸11を軸にフリー回転してドライブチェーン28に対して何らの移動抑止力も及ぼさないため、移動ラダー3は所定の範囲内において自由に移動可能となり、伸縮ラダー1の自由伸縮動作が阻害されることはない。
【0024】
この伸縮ラダー1の自由伸縮動作時において、風波の影響で船舶の揺れがある程度以上になって伸縮ラダー1の揺動が異常レベルに達すると、この異常事態を伸縮ラダー1の適宜個所に設置されている図示せぬセンサーが検出し、電動シリンダー21に入操作信号を送出すると共に、起伏ウインチに起動作信号を送出する(実際には、制御装置を通して信号のやり取りがなされる。)。この信号を受けて、電動シリンダー21が動作して噛合いクラッチ13を入状態にして伸縮ラダー1をロックすると共に、起伏ウインチが起動作して伸縮ラダー1の吊上げ動作をする。
【0025】
本発明に係る可動連絡橋においては、このようにして船舶の異常揺動時において、人的操作を介することなく、直ちに自動的に伸縮ラダー1のロック操作と吊り上げ操作とが連動してなされるため、即ち、伸縮ラダー1の船舶からのオートリリースが可能となるため、それらの操作が遅延して、伸縮ラダー1及び船舶双方の破損を招くおそれがない。また、伸縮ラダーをロックするためのクラッチの入切操作が人手によらないため、人的操作による手間が省かれると共に、人的操作の場合に起こり得るクラッチ入切の遅延や誤操作のおそれもないという利点がある。
【0026】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは言うまでもない。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
1 伸縮ラダー
2 固定ラダー
3 移動ラダー
4 ケース
5 原動機
6 カップリング
7 減速機
8 出力ホイール
9 出力チェーン
10 固定ホイール
11 回転軸
12 軸受
13 噛合いクラッチ
14 作用部
15 従動部
16 クラッチ本体
17 環状歯
18 摺動溝
19 スライダー
20 作動レバー
21 電動シリンダー
22 枢動軸
23 軸受板
24 自由ホイール
25 環状歯
26 中間チェーン
27 ドライブホイール
28 ドライブチェーン
31 支持フレーム
32 揺動形アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着桟した船舶と桟橋との間に架け渡される可動連絡橋であって、固定ラダーと前記固定ラダーに支持されてそれに沿って移動する移動ラダーとから成る伸縮ラダーを備え、
前記固定ラダーの下側に、減速機を介して回転駆動力を出力する原動機と、前記出力の伝達を受ける固定ホイールを固定支持する回転軸と、前記回転軸に配置される噛合いクラッチとが配備され、
前記噛合いクラッチは、前記回転軸に一体に回転可能にされると共にその軸方向に移動可能に設置される作用部と、前記回転軸に回転自在に軸支されていて前記作用部と噛合する従動部とから成っていて、前記作用部と前記従動部は、前記伸縮ラダーの強制伸縮動作時及び前記伸縮ラダーのロック時において噛合し合い、それ以外の場合において前記従動部は前記移動ラダーの動きに呼応してフリー回転可能にされ、前記伸縮ラダーのロックは、前記作用部が、前記伸縮ラダーの異常な動きの検出に基づいて動作して前記従動部に噛合することにより行われることを特徴とする可動連絡橋。
【請求項2】
前記作用部を構成するクラッチ本体の周面に摺動溝が形成され、前記摺動溝内に、作動レバーの中間部が取り付けられたスライダーが摺動可能に収められ、前記作動レバーは一端が枢着されると共に他端部に電動シリンダーのロッド端が連結され、前記作用部と前記従動部の各対向面に互いに噛合し合う環状歯が配設された、請求項1に記載の可動連絡橋。
【請求項3】
前記噛合いクラッチの環状歯は、鋸歯状を呈するものとされる、請求項2に記載の可動連絡橋。
【請求項4】
前記伸縮ラダーにその異常な動きを検出するセンサーが配備され、前記電動シリンダーは、前記センサーからの異常検出信号に基づいて動作し、前記作動レバーを介して前記クラッチ本体を前進させて、その環状歯と前記従動部の環状歯を噛合させて前記移動ラダーの動きをロックする、請求項2又は3に記載の可動連絡橋。
【請求項5】
前記センサーからの異常検出信号に基づく前記電動シリンダーによる伸縮ラダーのロック動作に呼応して、起伏ウインチによる前記伸縮ラダーの吊り上げ動作がなされる、請求項4に記載の可動連絡橋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87488(P2013−87488A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228663(P2011−228663)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000194077)杉田産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】