説明

可変セラミックコンデンサ

【課題】固定電極に対して可変電極を押圧して、その押圧力を固体誘電体に付加したとき、その押圧力が固体誘電体に対して二次元的情報として反映される構造の可変コンデンサを提供する。
【解決手段】固定電極11と、その固定電極の上に導電性接着材12を介して接合された誘電体セラミックス層13と、その誘電体セラミック層の上方に所定空間Sを介して基端部14aで支持体15に片持ち支持した可変電極14とを以て可変コンデンサを構成するとともに、その可変コンデンサの可変電極の先端部を前記誘電体セラミックス層に向かって押圧したとき、その押圧力に相応して可変電極と前記誘電体セラミック層との接触面積が変化させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体としてセラミック層を使用する可変セラミックコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図5に示すように、絶縁支持台1の上に薄膜状の固定電極2と、その固定電極2の上に所定高さhの空間Sを介して薄膜状の可変電極3を配置した構造の可変コンデンサ(公知技術)が知られている(特許第3389605号明細書)。この可変コンデンサの電極2,3間にバイアス電圧が加えられると、薄膜状の電極2,3の間隔の変化に相応して静電容量値が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3389605号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年、いわゆるタッチパネルを手で押圧して、その押圧力の多寡により構成要素の一部分を作動させる電子機器が普及させるに至った。そこで、このような電子機器に前記公知技術を組み込んでみると、第一に、前記可変電極3を三次元的に変形させる必要があるため、押圧力を感覚的に調節することが困難であるという問題がある。第二に、可変電極3の変形時に可変電極3が絶縁支持台1上の一部領域を不確実に摺動するので、押圧力と可変容量との関係が安定しないという問題がある。
【0005】
そこで本発明者は、上記の問題を解消し得る可変コンデンサを提案すべく、鋭意、研究したところ、前記空間を固体空間するとともに、その固体空間を固定電極に通電可能に維持しながら一体化し、さらに前記可変電極に加わる押圧力を前記固定空間に対して二次元情報として出力させればよいという事実を見出し、本発明を完成した。
【0006】
従って、本発明の課題は、固定電極に対して、その上方から可変電極を押圧して、その押圧力を固体誘電体に付加したとき、その押圧力が固定誘電体に対して二次元的情報として反映される構造の可変コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するために、固定電極と、該固定電極の上に導電性接着材を介して接合された誘電体セラミックス層と、該誘電体セラミック層の上方に所定空間を介して基端部で被支持体に片持ち支持した可変電極とからなり、その可変電極の先端部を前記誘電体セラミックス層に向かって押圧したとき、その押圧力に相応して可変電極と前記誘電体セラミック層との接触面積を変化させた構造の可変セラミックコンデンサとする。なお、ここで所定空間とは、前記公知技術における誘電空間とは異なり、実質上静電容量値を変化させることがない小空間を意味する。
【0008】
本発明に係る可変コンデンサは、このように構成されているので、可変電極をその上から押圧すると、可変電極はその基端部において被支持体に片持ち支持されているので、自由端である先端部がまず誘電体セラミック層に当接する。さらに可変電極に上からより大きな押圧力を加えると、その押圧力に相応して可変電極と誘電体セラミック層との接触面積が2次元状に増大する。誘電体セラミック層は固定電極に導電性接着材により接合かつ両者は通電可能になっているので、可変電極と導電性接着材との間に電圧が印加されているとき、誘電体セラミック層内において分極が起こる。
【0009】
本発明は前記の課題をより具体的かつ効果的にかいけつするために、前記導電性接着材として、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂成分に金属粒子及び/又はを混合させたものを使用する。また、この接着材において、金属箔がサンドウィッチさせるという手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したように、本発明は、固定電極に対してその上方から可変電極を押圧して、その押圧力を固体誘電体に付加したとき、その押圧力が固定誘電体に対して二次元的情報として反映され、その結果、可変コンデンサに前記押圧力に相応した静電容量値の電荷を蓄積可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る可変セラミックコンデンサが駆動する前の状態を示す断面図である。
【図2】同じく可変セラミックコンデンサが駆動開始した直後の状態を示す断面図である。
【図3】同じく駆動途中の状態にある可変セラミックコンデンサの状態を示す断面図である。
【図4】同様に最終の駆動状態にある可変セラミックコンデンサの状態を示す断面図である。
【図5】従来技術に係る可変セラミックコンデンサが駆動する前の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本発明に係る可変セラミックコンデンサ10は、全体として、縦3mm、横3mm、高さ0.2mmの直方体の空間に収まる大きさを有し、図示しない電子基板等に固定される固定電極11と、その固定電極11の上に導電性接着材12を介して接合された板状の誘電体セラミックス層13とを有している。
【0013】
そして、固定電極11としては、Al,Cu,Au,Ag,Fe,Ni単体又はそれらを含有する合金等の金属から平面状に形成されており、具体的には、ステンレススチールから形成されている。導電性接着材としては、固定電極11及び誘電体セラミック層13に対し親和性のあるアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤又はシリコン系接着剤に上記金属及び/又はカーボンの微粒子が混合された導電性接着材が使用される。この種の接着材は、不定形状態で使用されるが、誘電体セラミックス層13に対する接合工程におけるハンドリング性を向上させるために、AlやCu箔を前記接着剤でサンドウィッチさせた定型状態、すなわち、金属箔で補強された導電性両面接着材を使用する。前記誘電体セラミック層13として誘電性能を発揮するセラミックなら任意に使用可能であるが、好ましくは、誘電率が2500のチタン酸バリウムが使用される。
【0014】
本発明に係る可変セラミックコンデンサ10において前記誘電体セラミック層13の上に所定の高さh、例えば0.05〜1.5mm、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.3〜0.75mm の空間Sを介して、可変電極14が被支持体、好ましくはタッチパネル15に片持ち支持されている。可変電極14をタッチパネル15に片持ち支持する方法としては、その基端部14aをタッチパネル14に接着する方法、一体成形する方法、かしめる方法等が採用されるとともに、先端部14aと誘電体セラミック層12との間に面接触しない程度の空間が生成可能に支持する方法が採用される。
【0015】
また、前記可変電極15としては、前記固定電極11と実質的に同一材質の金属から厚みが0.01〜0.1mmの帯状に形成されるが、好ましくは、押圧されたとき、新たな形状が形成されないような記憶保持合金が使用される。
【0016】
このような構造の可変セラミックコンデンサは、電源16と目的とする電子部品の駆動部分であるアクチュエータ17との間に組み込まれる。そして、可変電極14の先端部14bを誘電体セラミックス層13に向かって上から押圧して、その押圧力Pに相応して可変電極14と前記誘電体セラミック層13との接触面積Aが変化させる。
【0017】
すなわち、図2に示すように、まだ、可変電極14を誘電体セラミック層13に当接させていない状態、すなわち、押圧力P0がゼロの状態にあった可変セラミックコンデンサ10に対して、図3に示すように、更に所定の押圧力P1を付加すると、可変電極14と前記誘電体セラミック層13は、接触面積Aに相当する長さL1を以て両者は接触して、例えば、2〜3pFの静電容量値を出力する。同様にさらに押圧力を高めてそれをP2にすると、前記の長さL2は更に延びて、例えば、5〜8pFの静電容量値を出力する。また、上記静電容量値を制御する方法として、誘電率のより高い誘電体セラミックを使用する方法、誘電体セラミック層の厚みを小さくする方法、固定電極が誘電体セラミック層と接触する接触面のうち、前者の接触面をメタライズする方法の少なくとも一つの方法を採用してもよい。
【0018】
なお、本発明に係る可変コンデンサ10においては、可変電極14に対する押圧力がP0の状態、すなわち、初期状態では誘電体セラミックス層13と可変電極14との間に僅かな空間Sが存在するので、厳密に言うと、静電容量値が0.3pF以下の空気コンデンサが形成されるが、そのコンデンサによる静電容量値は、可変コンデンサの適用領域においてはほとんど問題にならない。
【0019】
このように構成される本発明に係る可変コンデンサは、これが組み込まれた電子機器を操作する人が感覚的に可変電極14の押圧することにより、連続的な静電容量値を出力し、その静電容量値をそのままアナログ値として又はデジタル値に変換してアクチュエータを作動させる分野に利用することができる。
【0020】
また、本発明に係る可変コンデンサは、固定電極が導電性接着材を介して誘電体セラミックス層に対して最初から一体化した状態でアクチュエータに組み込んで使用する態様に具体化できるばかりでなく、アクチュエータが組み込まれた導電性シャーシに対して、導電性両面接着材を使用して誘電体セラミック層と可変電極とを所定の位置関係を以て組み付けて、本発明に係る可変コンデンサに組み立てることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、電子機器等において、そこに組み込まれている可変コンデンサの可変電極をその上方から下方に押圧し、その押圧力の多寡を静電容量値として主力することにより、前記電子機器のアクチュエータを制御する分野に広く利用できる。
【符号の説明】
【0022】
10:可変コンデンサ
11:固定電極
12:導電性接着材
13:誘電体セラミック層
14:可変電極
15:支持体
16:電源
17:アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極(11)と、該固定電極の上に導電性接着材(12)を介して接合された誘電体セラミックス層(13)と、該誘電体セラミック層の上方に所定空間(S)を介して基端部(14a)で被支持体(15)に片持ち支持した可変電極(14)とからなり、その可変電極の先端部(14b)を前記誘電体セラミックス層に向かって押圧したとき、その押圧力(P)に相応して可変電極と前記誘電体セラミック層との接触面積(A)を変化させるようにした構造の可変セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記導電性接着材(1)は、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂成分に金属粒子及び/又はカーボン粒子を混合させたものである請求項1記載の可変セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記導電性接着材(1)において、金属箔がサンドウィッチされている請求項1記載の可変セラミックコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−278195(P2010−278195A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128705(P2009−128705)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(591149089)株式会社MARUWA (35)