説明

可変分光素子、分光装置および内視鏡装置

【課題】光学基板の傾きを調整する場合でも、光学基板を変形させることなく平行性を保ちながら間隔を制御する。
【解決手段】ベース部材2と、光軸方向に間隔を空けて対向する2つの光学基板4a,4bと、ベース部材2と一方の光学基板4aとの間に並列に光軸に交差する方向に間隔をあけて配置され、2つの光学基板4a,4bを光軸方向に移動させる複数のアクチュエータ4cと、アクチュエータ4cと一方の光学基板4aとを接続する弾性材料からなる接続部材8とを備える可変分光素子1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変分光素子、分光装置および内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対向面に反射膜を有し間隔を空けて対向する2つの光学基板と、その2つの光学基板の間隔と傾きを調整するアクチュエータとを備え、2つの光学基板の平行性を保ちながら間隔を制御する可変分光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エタロン型の可変分光素子は、2つの光学基板の間隔に応じた波長の光のみを透過させることができるフィルタであり、その透過特性は、光学面の平面度と平行度に依存する。特許文献1の可変分光素子などでは、その製造時の組み立て誤差や経時的な変化による2つの光学面の平行度を、複数のアクチュエータにより調整することで高い透過率を得るものである。一方で可変分光素子の小型化を実現する上で、光学基板の厚みを薄くすることが有効である。しかしながら、特許文献1の可変分光素子は、光学基板が駆動機構であるアクチュエータの一定の面積を有する端面と一体的に接合されているので、光学基板の傾きを調整するために、複数のアクチュエータに異なる変位量を付与すると、光学基板とアクチュエータとの接合部に局所的な応力集中が発生し、厚みの薄い光学基板では、光学面が変形してしまい、透過特性が低下してしまう不都合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、厚みが薄く剛性の低い光学基板の傾きを調整する場合でも、光学基板を変形させることなく、傾きおよび間隔を精度よく制御することができる可変分光素子、分光装置および内視鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、ベース部材と、光軸方向に間隔を空けて対向する2つの光学基板と、前記ベース部材と一方の前記光学基板との間に並列に前記光軸に交差する方向に間隔をあけて配置され、前記2つの光学基板を前記光軸方向に移動させる複数のアクチュエータと、該アクチュエータと前記一方の光学基板とを接続する弾性部材からなる接続部材とを備える可変分光素子を提供する。
【0007】
本発明によれば、複数のアクチュエータに同一の変位量を付与することにより、一方の光学基板を並進移動させて、2つの光学基板の間隔を変化させ、光学基板を光軸方向に通過する光の波長帯域を変化させることができる。一方、並列に配置された複数のアクチュエータに異なる変位量を与えると、光学基板の各部が異なる量だけ変位させられることにより、光学基板の傾斜角度が変化させられる。この場合に、光学基板とアクチュエータとの間に配置された接続部材が弾性変形させられることにより、アクチュエータと光学基板との間に発生する局所的な応力が分散され、光学基板に過度の応力集中が発生することを防止して、光学基板の変形を防止しながら光学基板の傾斜角度を変化させることができる。これにより、2つの光学基板を変形させることなく、精密に平行な位置関係を達成することができ、入射される光を高精度に分光することができる。
【0008】
上記発明においては、前記接続部材が、複数のアクチュエータに掛け渡される形状を有し、各前記アクチュエータと前記一方の光学基板との間に配置される高剛性部分と、該高剛性部分の間に配置され該高剛性部分により剛性の低い低剛性部分とを備えるとしてもよい。
【0009】
このようにすることで、複数のアクチュエータに対して単一の接続部材を掛け渡すので、少ない部品点数で簡易に組立でき、製造コストの安価な可変分光素子を提供できる。この場合に、光学基板の傾斜角度を変化させるために、複数のアクチュエータに異なる変位量を付与すると、アクチュエータと光学基板との間に発生する応力が、高剛性部分の弾性変形および低剛性部分のさらに大きな弾性変形によって分散され、光学基板を撓ませることなく精度良く傾斜角度を変化させることができる。
【0010】
上記発明においては、前記低剛性部分が、前記高剛性部分より薄肉に形成されていてもよい。
このようにすることで、簡易な構成で高剛性部分に比べ低剛性部分を変形させやすくすることができ、接続部材を一体的に構成しながら、アクチュエータの駆動力を効率良く光学基板に伝え、かつ、光学基板の変形を効果的に防止することができる。
【0011】
上記発明においては、前記接続部材が、前記一方の光学基板の周縁に沿って配置される環状に形成され、前記低剛性部分が、前記光軸に交差する方向に貫通する貫通孔を有するとしてもよい。
このようにすることで、貫通孔によって断面係数を低減し、簡易に低剛性部分を構成でき、アクチュエータの作動を効率良く光学基板に伝えながら、光学基板の撓みを防ぐことができる。
【0012】
上記発明においては、前記2つの光学基板の間隔寸法を複数箇所において検出するセンサと、該センサにより検出された複数の間隔寸法に応じて前記アクチュエータを制御する制御部とを備えるとしてもよい。
このようにすることで、光学基板の間隔がセンサによって複数箇所において検出され、その検出結果に基づいて、制御部により光学基板どうしが精密に平行かつ狙いの間隔となるようにアクチュエータが制御される。これにより、光学基板どうしの平行度を向上し、高い透過率を得ることができる。
【0013】
また、上記発明においては、ベース部材と、他方の前記光学基板との間に配置され、前記一方の光学基板に対して前記他方の光学基板をその光軸方向に並進移動させる並進用アクチュエータを備えていてもよい。
このようにすることで、並進移動させるときと傾斜角度を変化させるときとで異なるアクチュエータを用いることができ、制御を単純化することができる。また、光学基板の傾斜角度を変化させるときは、弾性部材からなる接続部材が弾性変形するため、光学基板の撓みを防止することができ、光学基板の平行性を保ちながら精度良く光を透過させることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記接続部材と、前記一方の光学基板との間に該光学基板より硬質の支持部材を備えていてもよい。
このようにすることで、光学基板の傾斜角度を変化させるときに、接続部材の弾性変形により緩和された不均一な応力が光学基板に伝達されるのを、支持部材によってさらに確実に抑えることができ、より効果的に光学基板の撓みを抑えることができる。
【0015】
また、本発明は、上記いずれかの可変分光素子と、該可変分光素子により分光された光を撮影する撮像素子とを備える分光装置を提供する。
本発明によれば、上記可変分光素子により精度よく分光された光を撮像素子により撮影して、鮮明な分光画像を得ることができる。
また、本発明は、上記可変分光素子を備える内視鏡装置を提供する。
このようにすることで、所望の波長帯域の光を精度よく分光して、患部等を鮮明に観察することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、厚みの薄い剛性の低い光学基板を用いた可変分光素子の光学基板間の傾きを調整する場合でも、光学基板を変形させることなく、平行性を保ちながら間隔を制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る可変分光素子を示す縦断面図である。
【図3】図2の可変分光素子の変形例を示す縦断面図である。
【図4】図3の可変分光素子における接続部材を光軸方向から見た図である。
【図5】図3の可変分光素子の変形例を示す(a)斜視図および(b)斜視断面図である。
【図6】内視鏡装置に備えられる撮像ユニットを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る可変分光素子1は、図1に示されるように、ベース部材2と、光軸方向に間隔をあけて対向配置され対向面に反射膜(光学コート層)3が設けられた2つの円板状の光学基板4a,4bと、ベース部材2と一方の光学基板4aとの間に並列に配置され、光学基板4aを光軸方向に変位させる複数のアクチュエータ4cと、該光学基板4a,4bの間隔を検出するセンサ5と、該センサ5により検出された間隔に応じてアクチュエータ4cを制御する制御部6とを備えるエタロン型の光学フィルタである。
光学基板4aおよびアクチュエータ4cは、光学基板4aより硬質の支持部材15を介して弾性材料からなる接続部材8により接続されている。
光学基板4bは、ベース部材2に固定された枠部材7に直接固定されている。
【0019】
アクチュエータ4cは積層型の圧電素子であり、本実施形態においては、光学基板4aの周縁に沿って周方向に等間隔をあけて4箇所に設けられている(図1においては2つのアクチュエータ4cのみ表示し、他の2つのアクチュエータ4cについては、見やすくするために図示を省略している。)。
この可変分光素子1は、アクチュエータ4cの作動により、光学基板4a,4bの間隔寸法を変化させ、それによって、光軸方向に透過する光の波長帯域を変化させることができるようになっている。
【0020】
2つの光学基板4a,4bには、該光学基板4a,4bの間隔を検出するためのセンサ5が備えられている。 センサ5は、静電容量方式のものであって、光学基板4a,4bの光学有効径外の外周に備えられ、4対のセンサ電極5a,5bを有している。これらのセンサ電極5a,5bは、光学基板4a,4bの外周部に沿って等間隔に配置され、相互に対向するように配置されている。
【0021】
制御部6は、4対の各センサ電極5a,5bの検出電圧により、アクチュエータ4cをそれぞれ別々に制御することで、2つの光学基板4a,4bの間隔および傾きを調整できるようになっている。
光学基板4aの光学基板4bに対する傾斜角度を変化させるときは、複数のアクチュエータ4cにそれぞれ傾きに応じた異なる変位量が付与されるようになっている。
【0022】
このとき、各アクチュエータ4cと光学基板4aとの間の接続部材8には、アクチュエータの幅方向に分布する不均一な応力が発生するが、接続部材8が弾性変形することで光学基板4aに伝達される応力が分散され、光学基板4aに過度の応力集中が発生することが防止されるようになっている。したがって、光学基板4aの各部が異なる量だけ変位させられることにより、光学基板4aを変形させることなく傾斜角度が変化させられるようになっている。
【0023】
さらに、接続部材8と光学基板4aとの間に、光学基板4aより硬質の支持部材15を備えることで、弾性材料からなる接続部材8を弾性変形させてもなお残る応力分布を光学基板4aより硬質の支持部材15によって受けることにより、光学基板4aが変形することを防ぐことができ、より精密に2つの光学基板4a,4bの平行性を保ち光軸方向の間隔寸法を正確に制御することができる。
【0024】
このように構成された本実施形態に係る可変分光素子1の作用について説明する。
本実施形態に係る可変分光素子1によれば、平行に間隔をあけた2つの光学基板4a,4bの光学有効径の領域に光を入射させることにより、光学基板4a,4bの間隔寸法に応じて定まる波長の光のみが2つの光学基板4a,4bを透過し、残りの光は反射される。
【0025】
光学基板4a,4b間の間隔寸法は、光学基板4a,4bの対向面に対向して配置されているセンサ電極5a,5b間に形成された静電容量を示す電圧信号により検出される。本実施形態に係る可変分光素子1においては、4組のセンサ電極5a,5bにより光学基板4a,4bの間隔寸法が、4箇所において検出される。
【0026】
そして、各センサ電極5a,5bにより検出された間隔寸法をもとに、制御部6により各アクチュエータ4cへの駆動信号がフィードバック制御される。
4つのアクチュエータ4cの作動により4箇所において2つの光学基板4a,4bの間隔寸法を独立に変化させることで、光学基板4aの傾きを2次元的に変化させて、光学基板4a,4bの平行度を精密に制御することにより、透過特性を向上させることができる。さらに、2つの光学基板4a,4bの平行度を維持しながら間隔寸法を変化させることにより、光学基板4a,4bを透過する光の波長を選択し、所望の波長帯域の光を他の波長帯域の光から分光することができる。
【0027】
この場合において、2つの光学基板4a,4bの光軸方向の間隔寸法のうち傾斜角度を変化させるときは、等間隔に配置された4本のアクチュエータ4cに異なる変位量を付与することで、光学基板4aの傾きを変化させる。
本実施形態に係る可変分光素子1によれば、各アクチュエータ4cと光学基板4aとを接続する弾性材料からなる接続部材8が弾性変形することにより応力が分散されて、応力分布が緩和され、光学基板4aに過度の応力集中が発生することを防止することができる。つまり、光学基板4aを変形させること無く傾き状態を変化させることが可能になり、透過特性を低下させずに、2つの光学基板4a,4bの間隔および平行を精密に制御することができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態に係る可変分光素子9について以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る可変分光素子9と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
本実施形態に係る可変分光素子9は、図2に示されるように、光学基板4bが支持部材7およびアクチュエータ4dを介してベース部材2に取り付けられている。
アクチュエータ4dは、光学基板4bを光学基板4aに対して光軸方向に並進移動させる並進用アクチュエータとして、光学基板4bの周縁に沿って周方向に等間隔をあけて2箇所に設けられている。また、アクチュエータ4cは光学基板4aの傾斜角度を変化させるための傾斜用アクチュエータである。
【0030】
また、本実施形態においては、センサ電極5a,5bにより検出された間隔寸法をもとに、制御部6によりアクチュエータ4dへの駆動信号がフィードバック制御される。このとき、2箇所のアクチュエータ4dは同一の変位量が付与されるようになっている。
【0031】
つまり、アクチュエータ4cを作動させて、光学基板4a,4bが平行となるように光学基板4aの傾きを制御した後に、アクチュエータ4dを同時に同一の変位量だけ作動させることにより、光学基板4bを並進移動させて、2つの光学基板4a,4bの光軸方向の間隔寸法を変化させることで、該2つの光学基板4a,4bを透過する光の波長を変更し、これにより所望の波長帯域の光を他の波長帯域の光から分光することができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、図3に示すように、光学基板4a,4bの位置を入れ替えた可変分光素子10を採用してもよい。光学基板4bは支持部材16を介してアクチュエータ4dと接続されている。
また、本実施形態においては、アクチュエータ4cは4つ、アクチュエータ4dは2つ、センサ電極5a,5bは4対設けるとしたが、数はこれに限定されるものではない。
【0033】
また、本実施形態においては、アクチュエータ4cおよびアクチュエータ4dの制御方法が、上述した方法に限定されるものではない。
また、本実施形態においては、並進移動用のアクチュエータ4dとして、単一の円筒形のものを採用してもよい。このようにすることで、光学基板4bを並進移動させる際に可変分光素子9の構造を単純化でき、配線数等を減らすことができる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態に係る可変分光素子10について以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る可変分光素子10と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る可変分光素子10は、図4に示されるように、接続部材8が4本のアクチュエータ4cに掛け渡される一体的な円環状の形状を有している。
接続部材8は、光学基板4aとアクチュエータ4cとの間に光学基板4aより硬質の支持部材15を介して配置される高剛性部分8aと、該高剛性部分8aの間に配置され高剛性部分8aより剛性の低い低剛性部分8bとを備えている。図中、斜線部分は高剛性部分8aである。
【0036】
このように構成された本実施形態に係る可変分光素子10によれば、光学基板4aの傾斜角度を変化させる場合に、各アクチュエータ4cに異なる変位量を付与し、接続部材8を弾性変形させる。このとき、比較的剛性の高い高剛性部分8aは、小さく弾性変形させられることによってアクチュエータ4cの変位を光学基板4aに伝達し、比較的剛性の低い低剛性部分8bは、大きく弾性変形させられることにより、応力を十分に分散させる。
【0037】
これにより、光学基板4aを確実に変位させつつ、光学基板aに過度の応力集中が発生することを防ぐことができる。したがって、光学基板4aを変形させることなく、精度良く傾斜角度を変化させることができる。
また、本実施形態に係る可変分光素子10によれば、接続部材8を単一の部材で構成することにより、部品点数を少なくしてコストを低減することができるとともに、組立容易性を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、低剛性部分8bが、高剛性部分8aより薄肉に形成されていてもよい。
このようにすることで、低剛性部分8bの剛性を高剛性部分8aの剛性より、簡易に低くすることができる。これにより、アクチュエータ4cの作動による応力を効率よく分散し、傾斜角度を変化させることによる光学基板4aの変形を防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態においては、低剛性部分8bにスリット11等の貫通孔を設けることにより、高剛性部分8よりも簡易に剛性を低下させることにしてもよい。
図5に示されるように、スリット11の数により、高剛性部分8aの剛性と低剛性部分8bの剛性とを異ならせることができる。これにより、アクチュエータ4cを作動させることにより生じる応力を効率よく吸収し、光学基板4aの変形を防ぐことができる。
【0040】
図5においては、枠部材7に、スリット11を設けることで弾性材料からなる接続部材8を構成し、スリット11の数を周方向に異ならせることにより、高剛性部分8aと低剛性部分8bとを構成し、部品点数を減らしている。また、枠部材7にアクチュエータ4cを収容する収容部17を設けることにより、複数のアクチュエータ4cを枠部材7に組み付けた組立体の形態でベース部材2に一度に固定することができ組立容易性をさらに向上している。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る分光装置および内視鏡装置について、図6を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る可変分光素子9と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る内視鏡装置は、図6に示されるように、第1のレンズ13aと、可変分光素子9と、第2のレンズ13bと撮像素子14とを備える撮像ユニット12を備えている。
また、本実施形態に係る分光装置は、可変分光素子9と撮像素子14とにより構成されている。
【0043】
このように構成された本実施形態に係る分光装置および内視鏡装置の作用について以下で説明する。本実施形態に係る内視鏡装置を用いて生体の体腔内の撮影対象を撮像するには、挿入部を体腔内に挿入し、その先端を体腔内の撮影対象に対向させ、照明光を照射する。撮影対象の表面において反射された照明光は、第1のレンズ13aにより略平行光に変換されて可変分光素子9に入射される。そして、可変分光素子9を透過した反射光が第2のレンズ13bにより撮像素子14の撮像面に結像される。
【0044】
この場合において、本実施形態に係る内視鏡装置によれば、可変分光素子9にセンサが設けられており、センサにより2つの光学基板4a,4bの間隔寸法が検出されて、アクチュエータ4c,4dに加える電圧信号がフィードバック制御される。これにより、挿入部の先端を小径化することができ、小型でありながら光学基板4a,4bの間隔寸法を精度よく制御して、高精度に所望の波長帯域の光を分光し、鮮明な反射光画像を得ることができる。
【0045】
なお、本実施形態に係る分光装置および内視鏡装置においては、可変分光素子として図1〜図3のいずれかに示されたものを採用することとしてもよい。
また、アクチュエータ4c,4dの内側に第2のレンズ13bを配置したが、これに限定されるものではない。
【0046】
また、アクチュエータ4c,4dとしては圧電素子に代えて、磁歪素子を用いることとしてもよい。
また、本実施形態に係る分光装置および内視鏡装置においては、反射光画像を取得する装置について説明したが、これに代えて蛍光画像と反射光画像を取得するなど他の観察手法に用いることもできる。
【0047】
また、本実施形態においては、軟性鏡のみならず、硬性鏡に適用してもよい。また、観察対象としては生体に限らない。配管や機械、構造物などの内部を対象とする工業用内視鏡にも適用できる。
【0048】
また、本実施形態においては、撮像ユニット12に可変分光素子9を備える内視鏡装置について説明したが、これに代えて、挿入部の先端に配置された光源ユニットに可変分光素子を備える内視鏡装置としてもよい。
また、本実施形態においては内視鏡装置に備えられる分光装置を例示したが、これに限定されるものではなく、他の任意の装置に組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,9,10 可変分光素子
2 ベース部材
3 反射膜(光学コート層)
4a,4b 光学基板
4c アクチュエータ
5a,5b センサ電極
6 制御部
7 枠部材
8 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
光軸方向に間隔を空けて対向する2つの光学基板と、
前記ベース部材と一方の前記光学基板との間に並列に前記光軸に交差する方向に間隔をあけて配置され、前記2つの光学基板を前記光軸方向に移動させる複数のアクチュエータと、
該アクチュエータと前記一方の光学基板とを接続する弾性材料からなる接続部材とを備える可変分光素子。
【請求項2】
前記接続部材が、複数の前記アクチュエータに掛け渡される形状を有し、各前記アクチュエータと前記一方の光学基板との間に配置される高剛性部分と、該高剛性部分の間に配置され該高剛性部分より剛性の低い低剛性部分とを備える請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項3】
前記低剛性部分が、前記高剛性部分より薄肉に形成されている請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項4】
前記接続部材が、前記一方の光学基板の周縁に沿って配置される環状に形成され、
前記低剛性部分が、前記光軸に交差する方向に貫通する貫通孔を有する請求項2または請求項3に記載の可変分光素子。
【請求項5】
前記2つの光学基板の間隔寸法を複数箇所において検出するセンサと、
該センサにより検出された複数の間隔寸法に応じて前記アクチュエータを制御する制御部とを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の可変分光素子。
【請求項6】
前記ベース部材と他方の前記光学基板との間に配置され、前記一方の光学基板に対して前記他方の光学基板をその光軸方向に並進移動させる並進用アクチュエータを備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の可変分光素子。
【請求項7】
前記接続部材と、前記一方の光学基板との間に該光学基板より硬質の支持部材を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の可変分光素子。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の可変分光素子と撮像素子を備える分光装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の可変分光素子を備える内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143294(P2012−143294A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2009(P2011−2009)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】