説明

可変容量圧縮機

【課題】圧縮側受圧面に生じる摩耗を抑制することができるとともに、連結機構で生じる無駄な振動をも抑制することができる可変容量圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明に係る可変容量圧縮機1は、駆動軸10と一体に回転するロータ21と、駆動軸10の軸心に対して傾斜自在な斜板24とを一体に回転させる連結機構40を備える。連結機構40は、ロータ側突起41と斜板側突起42とによって構成される。斜板側突起42には、ロータ側突起41に当接するピンPが設けられる。ロータ側突起41には、ピンPが当接するとともに斜板24に作用する圧縮反力を受ける圧縮側受圧面53が設けられる。ピンPは、長尺状の本体部61と、本体部61の軸方向に対して傾斜した状態で本体部61と連なる傾斜部62とを有する。傾斜部62は、圧縮反力を受けていない初期状態と、圧縮反力を受ける圧縮反力受状態とにおいて、圧縮側受圧面53と線接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材と傾動部材とを一体に回転させる連結機構を備える可変容量圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等に装着される可変容量圧縮機(いわゆる、コンプレッサ)は、駆動軸と、駆動軸に固定されて駆動軸と一体的に回転するロータ(回転部材)と、駆動軸の軸心に対してピストンのストロークに応じて傾動自在な斜板(傾動部材)と、ロータと斜板とを連結する連結機構とを備える。
【0003】
駆動軸が回転するとロータと共に斜板が回転し、この斜板の傾斜角に応じてピストンが往復動する。連結機構は、ロータの回転を斜板に伝達しながら斜板の傾斜角を変化させることができるように、ロータと斜板とを連結している。これにより、斜板の傾斜角を変化させてピストンストロークを変化させることで、吐出容量を変化させることができるようになっている。
【0004】
このような連結機構は、図8に示すように、ロータ(不図示;図8では下側)から斜板(不図示;図8では上側)に向けて突設されたロータ側突起41と、斜板からロータに向けて突設された斜板側突起42とによって構成される。ロータ側突起41は、スリットS41により二股状に形成されている。一方で、斜板側突起42は、ロータ側突起41と同様にスリットS42により二股状に形成されており、二股状のロータ側突起41間(すなわち、ロータ側突起41のスリットS41内)においてロータ側突起41と回転方向に重なり合うように配置されている。これにより、ロータからの回転トルクが斜板に伝達される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、一方のロータ側突起41(41A)には、斜板側突起42のスリットS42間に固定されるピンPがスライド可能に当接する圧縮側受圧面53が設けられている。この圧縮側受圧面53には、斜板に作用する圧縮反力(軸方向荷重)を受圧する。また、他方のロータ側突起41(41B)には、圧縮反力を圧縮側受圧面53よりも受けにくい非圧縮側受圧面54が設けられている。また、ピンPの端部には、テーパ部Tが設けられている。これにより、フルストローク状態(エアコンオン時)において、ピストンからの大きな圧縮反力を圧縮側受圧面で受圧でき、圧縮側受圧面での偏摩耗を抑制することができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−64057号公報
【特許文献2】特開2006−233855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の可変容量圧縮機では、次の問題があった。すなわち、図8に示すように、ピンPの端部にテーパ部Tが設けられていることにより、図8(b)に示すフルストローク状態には圧縮側受圧面53での偏摩耗を抑制できるものの、図8(a)に示すデストローク状態(エアコンオフ時)においては、ピストンからの圧縮反力がなくなることに伴い、テーパ部Tが圧縮側受圧面53に対して偏当たり(点接触)してしまう場合がある。この場合、圧縮側受圧面53に摩耗が生じる可能性があるとともに、連結機構で無駄な振動が発生してしまう可能性もあり、この摩耗や振動については未だ改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、圧縮側受圧面に生じる摩耗を抑制することができるとともに、連結機構で生じる無駄な振動をも抑制することができる可変容量圧縮機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、駆動軸と一体に回転する回転部材(ロータ21)と、前記駆動軸の軸心に対して傾斜自在な傾動部材(斜板24)とを一体に回転させる連結機構(連結機構40)を備え、前記連結機構は、前記回転部材から前記傾動部材に向けて突設された回転部材側突起(ロータ側突起41)と、前記傾動部材から前記回転部材に向けて突設された傾動部材側突起(斜板側突起42)とによって構成される可変容量圧縮機(可変容量圧縮機1)であって、前記回転部材側突起及び前記傾動部材側突起の何れか一方には、他方の前記回転部材側突起又は前記傾動部材側突起に当接するピン(ピンP)が設けられ、他方の前記回転部材側突起又は前記傾動部材側突起には、前記ピンが当接するとともに前記傾動部材に作用する圧縮反力を受ける圧縮側受圧面(圧縮側受圧面53)が設けられ、前記ピンは、長尺状の本体部(本体部61)と、前記本体部の軸方向に対して傾斜した状態で前記本体部と連なる傾斜部(傾斜部62)とを有し、前記傾斜部は、前記圧縮反力を受けていない初期状態と、前記圧縮反力を受ける圧縮反力受状態とにおいて、前記圧縮側受圧面と線接触することを要旨とする。
【0010】
かかる特徴によれば、傾斜部は、初期状態(デストローク状態)と圧縮反力受状態(フルストローク状態)とにおいて、圧縮側受圧面と線接触する。これにより、初期状態や圧縮反力受状態に関わらず、ピンが圧縮側受圧面に対して偏当たり(点接触)してしまうことを防止できる。このため、圧縮側受圧面に生じる摩耗を抑制することができるとともに、連結機構で生じる無駄な振動をも抑制することができる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記回転部材側突起及び前記傾動部材側突起の少なくとも一方は、前記圧縮側受圧面を有する圧縮側突起(圧縮側突起41A)と、前記圧縮反力を前記圧縮側受圧面よりも受けない非圧縮側受圧面(非圧縮側受圧面54)を有する非圧縮側突起(非圧縮側突起41B)とによって構成され、前記圧縮側突起の少なくとも一部は、前記非圧縮側突起よりも低いことを要旨とする。
【0012】
かかる特徴によれば、圧縮側突起の少なくとも一部は、非圧縮側突起よりも低い。これにより、傾斜部は、圧縮側受圧面と線接触し易くなり、ピンが圧縮側受圧面に対して偏当たりしてしまうことをより確実に防止できる。このため、圧縮側受圧面に生じる摩耗を確実に抑制することができるとともに、連結機構で生じる無駄な振動をも確実に抑制することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記圧縮側突起の高さは、前記圧縮反力受状態での前記ピンを支持する位置では前記非圧縮側突起の高さよりも低く、前記初期状態での前記ピンを支持する位置では前記非圧縮側突起の高さと同等であることを要旨とする。
【0014】
かかる特徴によれば、圧縮側突起の高さは、圧縮反力受状態でのピンを支持する位置では非圧縮側突起の高さよりも低く、初期状態でのピンを支持する位置では非圧縮側突起の高さと同等である。これにより、傾斜部は、初期状態(デストローク状態)と圧縮反力受状態(フルストローク状態)とにおいて、圧縮側受圧面とより線接触し易くなるため、ピンが圧縮側受圧面に対して偏当たりしてしまうことをより確実に防止できる。
【0015】
本発明の第4の特徴は、本発明の第2又は第3の特徴に係り、前記圧縮側受圧面及び前記非圧縮側受圧面は、前記傾動部材の傾斜角を変化させるように、前記駆動軸の軸心に対して傾斜することを要旨とする。
【0016】
かかる特徴によれば、圧縮側受圧面及び非圧縮側受圧面は、傾動部材の傾斜角を変化させるように、駆動軸の軸心に対して傾斜する。これにより、傾動部材がスライドし易くなり、駆動軸の軸心に対して傾動部材の傾角が変化し易くなるため、冷媒を確実に圧縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特徴によれば、圧縮側受圧面に生じる摩耗を抑制することができるとともに、連結機構で生じる無駄な振動をも抑制することができる可変容量圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施形態に係る可変容量圧縮機1のフルストローク状態(初期状態)を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る可変容量圧縮機1のデストローク状態(圧縮反力受状態)を示す縦断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る連結機構40近傍を示す斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る連結機構40近傍を示す側面図(図3のA矢視図)である。
【図5】図5(a)は、フルストローク状態における連結機構40近傍を示す模式図(図3のB−B対応)であり、図5(b)は、デストローク状態における連結機構40近傍を示す模式図(図3のC−C対応)である。
【図6】図6は、ロータ側突起41とピンPとの関係を示す模式図である。
【図7】図7は、ピンPのみを示す斜視図である。
【図8】図8は、従来の連結機構近傍を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る可変容量圧縮機の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)可変容量圧縮機の構成、(2)可変容量の制御、(3)連結機構の構成、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。
【0020】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0021】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0022】
ここで、本実施形態に係る可変容量圧縮機1は、駆動軸10と一体に回転するロータ21(回転部材)と、駆動軸10の軸心に対して傾斜自在な斜板24(傾動部材)とを一体に回転させる連結機構40を備える。この連結機構40は、ロータ21から斜板24側に向けて突設されたロータ側突起41(回転部材側突起)と、斜板24からロータ21側に向けて突設された斜板側突起42(傾動部材側突起)とによって構成される。また、ロータ側突起41及び斜板側突起42の何れか一方には、他方のロータ側突起41又は斜板側突起42に当接するピンPが設けられる。また、他方のロータ側突起41又は斜板側突起42には、ピンPが当接するとともに斜板24に作用する圧縮反力を受ける圧縮側受圧面53が設けられる。このピンPは、長尺状の本体部61と、本体部61の軸方向に対して傾斜した状態で本体部61と連なる傾斜部62とを有する。傾斜部62は、圧縮反力を受けていない初期状態と、圧縮反力を受ける圧縮反力受状態とにおいて、圧縮側受圧面53と常に線接触する。
【0023】
(1)可変容量圧縮機の構成
以下において、本実施形態に係る可変容量圧縮機1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る可変容量圧縮機1のフルストローク状態(初期状態)を示す縦断面図である。図2は、本実施形態に係る可変容量圧縮機1のデストローク状態(圧縮反力受状態)を示す縦断面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、可変容量圧縮機1は、シリンダブロック2と、該シリンダブロック2の前端面に接合されるフロントヘッド4と、シリンダブロック2の後端面にバルブプレート9を介して接合されるリアヘッド6とを備えている。これらシリンダブロック2、フロントヘッド4及びリアヘッド6は、複数のスルーボルトBによって締結固定されて、可変容量圧縮機1のハウジングを構成している。
【0025】
シリンダブロック2は、略円柱状に形成され、円周方向に複数の等間隔に配置されたシリンダボア3を有する。フロントヘッド4は、シリンダブロック2の前端面に接合されて該シリンダブロック2との間にクランク室5を形成する。リアヘッド6は、シリンダブロック2の後端面にバルブプレート9を介して接合され内部に吸入室7および吐出室8を形成する。
【0026】
バルブプレート9は、シリンダボア3と吸入室7とを連通する吸入孔11と、シリンダボア3と吐出室8とを連通する吐出孔12とを備えている。
【0027】
バルブプレート9のシリンダブロック2側には、吸入孔11を開閉する図示せぬ弁機構が設けられ、一方、バルブプレート9のリアヘッド6側には、吐出孔12を開閉する図示せぬ弁機構が設けられている。バルブプレート9とリアヘッド6との間にはガスケットが介在し、吸入室7と吐出室8の密閉性が保持されている。
【0028】
シリンダブロック2及びフロントヘッド4の中心の支持孔19、20には軸受17、18を介して駆動軸10が軸支され、この駆動軸10がクランク室5内で回転自在となっている。
【0029】
クランク室5内には、駆動軸10に固設された「回転部材」としてのロータ21と、駆動軸10にその軸方向に摺動自在で且つその軸心に対してピストン29のストロークに対して傾動自在な「傾動部材」としての斜板24と、ロータ21と斜板24とを連結する連結機構40とが設けられている。
【0030】
連結機構40は、斜板24の傾斜角変更を許容しつつロータ21と斜板24とが一体に回転するように、ロータ21と斜板24とを連結している。斜板24は、駆動軸10に装着されたハブ25と、このハブ25のボス部25aに固定された斜板本体26とを備えている。斜板24の斜板本体26には、半球状の一対のピストンシュー30、30を介してピストン29が連結されている。このピストン29は、シリンダボア3に摺動自在に収容されている。
【0031】
駆動軸10が回転すると、この駆動軸10と一体にロータ21が回転し、連結機構40を介してロータ21とともに斜板24が回転する。斜板24の回転は、一対のピストンシュー30、30を介してピストン29の往復動に変換され、ピストン29がシリンダボア3内で往復動する。このピストン29の往復動により、吸入室7内の冷媒がバルブプレート9の吸入孔11を通じてシリンダボア3内に吸入されたのち圧縮され、バルブプレート9の吐出孔12を通じて吐出室8へと吐出される。
【0032】
(2)可変容量の制御
次に、本実施形態に係る可変容量圧縮機1の制御について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0033】
図1及び図2に示すように、可変容量圧縮機1には、ピストン29の後面側のクランク室圧とピストン29の前面側の吸入室圧の差圧(圧力バランス)を調整して斜板24の傾角を変化させるために、圧力制御機構が設けられている。圧力制御機構は、クランク室5と吸入室7とを連通する抽気通路(不図示)と、クランク室5と吐出室8とを連通する給気通路(不図示)と、この給気通路の途中に設けられ給気通路を開閉制御する制御弁33とを備えている。
【0034】
制御弁33で給気通路を開くと給気通路を通じて吐出室8の冷媒がクランク室5に流れ込んでクランク室圧が上昇する。これにより、クランク室圧と吸入室圧との圧力バランスにより斜板24の傾斜角が小さくなる。結果、ピストンストロークが小さくなり、吐出量が減少する。
【0035】
逆に、制御弁33で給気通路を閉じると抽気通路を通じてクランク室5の冷媒が吸入室7に除々に抜けていくことでクランク室圧が低下する。これにより、クランク室圧と吸入室圧との圧力バランスにより斜板24の傾斜角が大きくなる。結果、ピストンストロークが大きくなり、吐出量が増加する。なお、斜板24の傾斜角は、ハブ25がシリンダブロック2側に近接移動すると斜板24の傾斜角が減少し、一方、ハブ25がシリンダブロック2から離れる方向に移動すると斜板24の傾斜角が増大する。
【0036】
(3)連結機構の構成
次に、上述した連結機構40の構成について、図3〜図6を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る連結機構40近傍を示す斜視図である。図4は、本実施形態に係る連結機構40近傍を示す側面図(図3のA矢視図)である。図5(a)は、フルストローク状態における連結機構40近傍を示す模式図(図3のB−B対応)であり、図5(b)は、デストローク状態における連結機構40近傍を示す模式図(図3のC−C対応)である。図6は、ロータ側突起41とピンPとの関係を示す模式図である。図7は、ピンPのみを示す斜視図である。
【0037】
(3.1)連結機構の概略構成
図3〜図5に示すように、連結機構40は、ロータ21(回転部材)と斜板24(傾動部材)とを一体に回転させる。この連結機構40は、ロータ21から斜板24側に向けて突設された「回転部材側突起」としてのロータ側突起41と、斜板24からロータ21側に向けて突設された「傾動部材側突起」としての斜板側突起42とによって構成されている。
【0038】
ロータ側突起41及び斜板側突起42は、回転トルク伝達方向Ft(=駆動軸10の回転方向)に重なり合っており、ロータ21の回転トルクが斜板24に伝達される。このロータ側突起41及び斜板側突起42は、駆動軸10の軸方向XY延びる(回転トルク伝達方向Ftと直交する)スリットS41,S42により二股状に形成される。この斜板側突起42のスリットS42間には、斜板側突起42の圧入孔43sに圧入固定されるとともにロータ側突起41に当接するピンPが設けられる。このピンPを介してロータ側突起41のスリットS41内に斜板側突起42が摺動自在に狭持される。
【0039】
(3.2)ロータ側突起及び傾動部材側突起の構成
ロータ側突起41は、ピンPが当接するとともに斜板24に作用する圧縮反力Fp(軸方向荷重)を受ける圧縮側受圧面53を有する圧縮側突起41Aと、ピンPが当接するとともに圧縮反力Fpを圧縮側受圧面53よりも受けない非圧縮側受圧面54を有する非圧縮側突起41Bとによって構成される。
【0040】
圧縮側受圧面53及び非圧縮側受圧面54は、斜板24の傾斜角を変化させるように、駆動軸10の軸心に対して傾斜している。具体的には、図3、図4及び図6に示すように、圧縮側受圧面53及び非圧縮側受圧面54は、初期状態(デストローク状態)から圧縮反力受状態(フルストローク状態)にかけて、突起高さが低くなるように徐々に傾斜している。
【0041】
また、圧縮側突起41Aの少なくとも一部は、非圧縮側突起41Bよりも低く形成されている。具体的には、図5(a)及び図6に示すように、圧縮側突起41Aの高さH53は、圧縮反力受状態(フルストローク状態)でのピンPを支持する位置(図6の右側)では非圧縮側突起41Bの高さH54よりも低い。
【0042】
一方で、図5(b)及び図6に示すように、圧縮側突起41Aの高さH53は、初期状態(デストローク状態)でのピンPを支持する位置(図6の左側)では非圧縮側突起41Bの高さH54と同等である。なお、圧縮反力受状態とは、可変容量圧縮機1が冷媒を圧縮する際に斜板24に作用する圧縮反力Fpを圧縮側突起41A及び非圧縮側突起41Bが受けている状態を示し、初期状態とは、圧縮反力Fpを圧縮側突起41A及び非圧縮側突起41Bが受けていない状態を示す。
【0043】
(3.3)ピンの構成
図7に示すように、ピンPは、ロータ21及び斜板24の回転軌道の接線方向に延在している、言い換えると、回転トルク伝達方向Ftに向けて延在している。このピンPは、長尺状の本体部61と、本体部61の軸方向に対して傾斜した状態で本体部61と連なる傾斜部62とを有している。
【0044】
図3〜図5に示すように、本体部61は、斜板側突起42のスリットS42間、及び、斜板側突起42の一方の圧入孔43sを通過して外側まで延びた状態で設けられている。一方、傾斜部62は、斜板側突起42のスリットS42(すなわち、斜板側突起42の他方の圧入孔43s)よりも外側に設けられる。この傾斜部62は、図6に示すように、初期状態と圧縮反力受状態とにおいて、圧縮側受圧面53と常に線接触している。
【0045】
このように、斜板24が回転すると、ピストン29が往復動することによって、斜板24にピストン29からの圧縮反力Fpが加わる。この圧縮反力Fpは、ピンPと圧縮側受圧面53との当接により受け止められる。なお、ピンPとロータ21の圧縮側受圧面53との当接面間には大きな圧縮反力Fpが加わるため、ピンP及びロータ21の圧縮側受圧面53には焼き入れ加工などの硬度増強加工を施されることが好ましい。
【0046】
(4)作用・効果
以上説明した本実施形態では、傾斜部62は、初期状態(デストローク状態)と圧縮反力受状態(フルストローク状態)とにおいて、圧縮側受圧面53と線接触する。これにより、初期状態や圧縮反力受状態に関わらず、ピンPが圧縮側受圧面53に対して偏当たり(点接触)してしまうことを防止できる。このため、圧縮側受圧面53に生じる摩耗を抑制することができるとともに、連結機構40で生じる無駄な振動をも抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、圧縮側突起41Aの少なくとも一部は、非圧縮側突起41Bよりも低い。これにより、傾斜部62は、圧縮側受圧面53と線接触し易くなり、ピンPが圧縮側受圧面53に対して偏当たりしてしまうことをより確実に防止できる。このため、圧縮側受圧面53に生じる摩耗を確実に抑制することができるとともに、連結機構40で生じる無駄な振動をも確実に抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、圧縮側突起41Aの高さH53は、圧縮反力受状態でのピンPを支持する位置では非圧縮側突起41Bの高さH54よりも低く、初期状態でのピンPを支持する位置では非圧縮側突起41Bの高さH54と同等である。これにより、傾斜部62は、初期状態と圧縮反力受状態とにおいて、圧縮側受圧面53とより線接触し易くなるため、ピンPが圧縮側受圧面53に対して偏当たりしてしまうことをより確実に防止できる。
【0049】
本実施形態では、圧縮側受圧面53及び非圧縮側受圧面は、斜板24の傾斜角を変化させるように、駆動軸10の軸心に対して傾斜する。これにより、斜板24がスライドし易くなり、駆動軸10の軸心に対して斜板24の傾角が変化し易くなるため、冷媒を確実に圧縮することができる。
【0050】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0051】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、可変容量圧縮機1は、必ずしも実施形態で説明した構成である必要はなく、ロータ21(回転部材)と斜板24(傾動部材)とを一体に回転させる連結機構40を少なくとも備えていればよい。
【0052】
また、ロータ側突起41及び斜板側突起42は、駆動軸10の軸方向XY延びるスリットS41,S42により二股状に形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ロータ側突起41及び斜板側突起42の何れか一方のみがスリットにより二股状に形成されていてもよい。
【0053】
また、斜板側突起42のスリットS42間にピンPが設けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ロータ側突起41のスリットS41間にピンPが設けられていてもよい。この場合、ピンPが当接される圧縮側受圧面及び非圧縮側受圧面は、斜板側突起42に設けられることとなる。
【0054】
さらに、可変容量圧縮機1の各部材については、実施形態で説明した形状のみならず、その他の形状であってもよいことは勿論である。
【0055】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0056】
1…可変容量圧縮機
10…駆動軸
21…ロータ
24…斜板
40…連結機構
41…ロータ側突起
41A…圧縮側突起
41B…非圧縮側突起
42…斜板側突起
53…圧縮側受圧面
54…非圧縮側受圧面
P…ピン
61…本体部
62…傾斜部
S41,S42…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と一体に回転する回転部材と、前記駆動軸の軸心に対して傾斜自在な傾動部材とを一体に回転させる連結機構を備え、
前記連結機構は、前記回転部材から前記傾動部材に向けて突設された回転部材側突起と、前記傾動部材から前記回転部材に向けて突設された傾動部材側突起とによって構成される可変容量圧縮機であって、
前記回転部材側突起及び前記傾動部材側突起の何れか一方には、他方の前記回転部材側突起又は前記傾動部材側突起に当接するピンが設けられ、
他方の前記回転部材側突起又は前記傾動部材側突起には、前記ピンが当接するとともに前記傾動部材に作用する圧縮反力を受ける圧縮側受圧面が設けられ、
前記ピンは、
長尺状の本体部と、
前記本体部の軸方向に対して傾斜した状態で前記本体部と連なる傾斜部と
を有し、
前記傾斜部は、前記圧縮反力を受けていない初期状態と、前記圧縮反力を受ける圧縮反力受状態とにおいて、前記圧縮側受圧面と線接触することを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量圧縮機であって、
前記回転部材側突起及び前記傾動部材側突起の少なくとも一方は、
前記圧縮側受圧面を有する圧縮側突起と、
前記圧縮反力を前記圧縮側受圧面よりも受けない非圧縮側受圧面を有する非圧縮側突起と
によって構成され、
前記圧縮側突起の少なくとも一部は、前記非圧縮側突起よりも低いことを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の可変容量圧縮機であって、
前記圧縮側突起の高さは、前記圧縮反力受状態での前記ピンを支持する位置では前記非圧縮側突起の高さよりも低く、前記初期状態での前記ピンを支持する位置では前記非圧縮側突起の高さと同等であることを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の可変容量圧縮機であって、
前記圧縮側受圧面及び前記非圧縮側受圧面は、前記傾動部材の傾斜角を変化させるように、前記駆動軸の軸心に対して傾斜することを特徴とする可変容量圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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