説明

可変式屈折表面

可変式屈折表面を提供する光学素子(200;300)である。この素子は、少なくとも一つの側壁(270)によって定形されたチャンバ室(215)を有し、チャンバ室(215)は、チャンバ室(215)を通って延びる光軸(90)を有する。チャンバ室(215)は、光軸(90)を横断して広がるメニスカス(225)上で接する第1の流体(220)と第2の流体(230)を収容する。メニスカス(225)の外周は、前記側壁(270)によって拘束される。両流体(220、230)は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する。第1のエレクトロウェッティング電極(242;243)は、前記側壁(270)に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置される。第2のエレクトロウェッティング電極(280)は、メニスカス(225)を貫通して延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変式の屈折表面を提供する素子、そのような素子を有する装置、ならびにそのような素子および装置を製作する方法に関する。そのような素子は、これに限られるものではないが、光学式走査装置内の球面収差の補正に特に適している。
【背景技術】
【0002】
各種光学系において、収差が生じることは、光学系の特性が低下するため好ましいことではない。
【0003】
例えば、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルビデオディスクまたはデジタル多用途ディスク)およびBD(ブルーレイディスク)のような光ディスクは、情報記録媒体として知られており、この情報は光学的に記録され再生される。歪んだ光ディスクは、走査ビームにコマ収差を発生させる原因となり、これにより光学記録系の再生信号が劣化する。また光学系は、温度変化にも影響を受け、例えば、光学記録系の対物レンズの温度が上昇した場合、球面収差が生じ、これにより再生信号の劣化が生じる。
【0004】
いくつかの光ディスクは、2または3以上の情報層を有する。ある情報層から別の情報層に(例えば2層ディスクにおいて第1層から第2層に)走査が切り替えられた際に、走査ビームが横断すべき被覆層の厚さの差異によって、球面収差が生じる。両方の情報層を正確に読み出すためには、そのような球面収差を補正する必要がある。
【0005】
従来の技術では、そのような好ましくない収差を補正するため、ビーム経路内に切り替え可能な液晶セルが提供される。このセルは、多様な量の球面収差が得られるように調整され、セルに電圧を印加することによって、球面収差の量が制御される。欧州特許出願公開第1,168,055号には、そのような収差補正装置が示されている。そのような液晶装置の一つの問題は、この装置には比較的高額な液晶セルが必要となることである。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,168,055号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本願あるいは他に示されている、従来の1または2以上の問題に対応した光学素子を提供することを課題とする。
【0007】
特に本発明は、球面収差補正に適した、比較的安価な光学素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様では、可変式の屈折表面を提供する光学素子であって、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室、
該チャンバ室を通って延びる光軸、
前記チャンバ室に収容され、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接する第1の流体と第2の流体であって、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、第1の流体と第2の流体、
前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極、および
前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極、
を有する光学素子が提供される。
【0009】
そのような素子では、両電極によってメニスカスの形状が変化されても良い。メニスカスは、その形状が変化し得る、効果的な屈折表面を提供する。メニスカスを貫通して延びる電極の使用によって、メニスカスは、球面収差の補正に適した形状を含む、多様な新しい形状に変形される。そのような素子は、液晶セルに比べて製作コストが比較的安価である。
【0010】
本発明の別の態様では、可変式の屈折表面を提供する光学素子を有する装置であって、前記素子は、少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室;該チャンバ室を通って延びる光軸;前記チャンバ室に収容され、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接する第1の流体と第2の流体であって、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、第1の流体と第2の流体;前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極;および前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極;を有する、装置が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、可変式の屈折表面を提供する光学素子を製作する方法であって、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室であって、該チャンバ室を通って延びる光軸を有するチャンバ室を提供するステップ;前記チャンバ室に、第1の流体と第2の流体を充填するステップであって、前記両流体は、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接し、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、ステップ;前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極を提供するステップ;および前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極を提供するステップ;を有する光学素子を製作する方法が提供される。
【0012】
さらに本発明の別の態様では、可変式の屈折表面を提供する光学素子を提供するステップを有する、光学装置を製作する方法であって、前記素子は、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室;該チャンバ室を通って延びる光軸;前記チャンバ室に収容され、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接する第1の流体と第2の流体であって、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、第1の流体と第2の流体;前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極;および前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極;を有する、光学装置を製作する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一例としての添付の概略図面を参照することで、本発明をより理解し、同じ実施例を効果的に実施する方法を理解することができる。
【0014】
発明者は、屈折率の異なる2流体の間にメニスカスを有するエレクトロウェッティング装置を用いて、収差の補正ができることを見出した。
【0015】
エレクトロウェッティング装置は、エレクトロウェッティング現象を利用して作動される装置である。エレクトロウェッティング法では、三相帯の接触角が印加電圧によって変化する。三相帯は、2流体と1つの固体とで構成される。通常の場合、流体の少なくとも一方は,液体である。
【0016】
流体とは、なんらかの外力に応じてその形状が変化する物質であって、流動性があり、チャンバ室の輪郭に一致し易く、気体、蒸気、液体および流動性のある固体と液体の混合物を含む。
【0017】
図1には、本発明の実施例による素子200を示す。素子200は、光学素子であり(すなわち、装置に入射される光の特性が変化するように調整されており)、この実施例では、素子200は、可変式の屈折表面を提供するように配置される。すなわちその屈折表面や構造(例えば形状、または光学軸に対する傾斜角)は、変化し得る。
【0018】
素子200は、メニスカス225の上部で接する第1の流体220と、第2の流体230とを有し、2流体は、不混和性である。第1の流体220は、シリコンオイルやアルカンのような、非導電性、非極性液体である。そのようなオイルの一例としては、ポリジメチル(8〜12%)−フェニルメチシロキサン共重合体があり、この屈折率はn=1.425である。第2の流体230は、導電性または極性のある液体であって、例えば食塩水を含む水(または水とエチレングリコールの混合物)である。通常の場合、水は屈折率がn=1.334であるが、食塩の溶解量によってこの値は変化し得る。
【0019】
2流体220、230は、等しい比重となるように調製されることが好ましい。これにより2流体間において、配向とは無関係にレンズ機能が生じる、重力効果が最小限に抑制される。2流体220、230は、異なる屈折率を有し、2流体間のメニスカス界面225は、屈折表面として作用し、表面に入射された光を屈折する。
【0020】
メニスカス225の少なくとも一部は、光軸90を横断するように広がっている。ここで、横断という言葉は、メニスカス225が光軸90と垂直に交わる場合に限定されるものではなく、メニスカスが光軸90に対して平行以外の状態で広がる場合を含む。
【0021】
メニスカス225の形状が変化すると、素子200によって提供される屈折機能が変化する。メニスカス225の形状は、エレクトロウェッティング現象によって、装置の外周に沿って延伸する環状電極242と電極260の間に電圧を印加することによって、およびメニスカス225を通過して延伸する電極280と電極260の間に電圧を印加することによって、調整される。この特定の実施例では、電極280は、光軸90に沿って延びる。そのような電圧の印加は、メニスカス225と当該電極を覆う表面との接触角を変化させる。表面の構造と電極によって、収差の補正に適したメニスカス形状が提供される。
【0022】
光が装置を通過できるように、少なくとも装置の対向する面(図に示された向きでは、上面および底面)は、透明になっている。この特定の実施例では、素子は、シリンダ210状の側壁を備えるチャンバ室215を有する。光は、シリンダの透明端部212、214を通って、チャンバ室215に入射し、ここから放射することができる。流体220、230は、密閉空間、またはシリンダ210の側壁によって定形されたチャンバ室215に収容される。シリンダ210の内面の一方の端部(電極260の端部)は、親水性であり、極性流体230が引き寄せられる。シリンダ210の他方(すなわち、反対側の端部および側壁の内側)は、撥水性コーティング270によってコーティングされる。電極280と電極を被覆するコーティング270は、いずれも透明である。あるいは、少なくとも一つの電極280と、コーティング270を光吸収表面(例えば黒色)とし、例えば電極屈折光のような光のアーチファクトを抑制しても良い。
【0023】
流体230と接する電極260の領域は、全てを親水性材料で構成しても良く、あるいは親水性層をコーティングして構成しても良い(例えば二酸化珪素またはガラス)。電極260は、薄い絶縁層で被覆しても良く、この場合電極は、流体230と容量的に結合される。
【0024】
この特定の実施例では、内表面の親水性領域260は、透明親水性導電体(例えばインジウムスズ酸化物)で全面が被覆され、流体と電気的に接する電極が形成される。
【0025】
シリンダの内表面のある領域が親水性となり、また内表面の他の領域が撥水性となるように調整することによって、この2流体系の装置の安定性が大きく向上することは明らかである。極性流体は、非極性流体のみが付着することが好ましい内表面のいかなる部位にも付着せず、逆も同様である。
【0026】
この状態は、極性流体230が、撥水性コーティング270の一部と接することを排斥するものではないことに留意する必要がある。親水性層の目的は、極性流体の位置を定めることであり、すなわち極性流体を所望の位置(しばしば、少なくとも形状の一部を定形する位置)に維持することである。従って、比較的狭小の親水性領域でも、この目的に利用できる。例えば、装置の内表面全体が撥水性である場合、極性流体は、これらの領域から離れた場所で、ある形状または位置に維持される。
【0027】
エレクトロウェッティング技術は、極性または導電性流体の表面の濡れ性の向上に利用することができる。初期のこの濡れ性が小さい場合(極性流体の場合、一般にこれは撥水性表面を意味し、例えばテフロン(登録商標)のような表面である)、電圧によって、この濡れ性を大きくすることができる。初期の濡れ性が大きい場合(極性流体の場合、一般にこれは、親水性表面と呼ばれ、例えば二酸化珪素の表面である)、電圧を印加しても、比較的小さな影響しか生じない。従ってエレクトロウェッティング装置では、三相帯は、最初の状態では撥水性の層と接することが好ましい。メニスカス225は、電極242および280とは電気的に接触されていないことに留意する必要がある。両電極は、絶縁被覆層によって流体から分離される。
【0028】
濡れ性の異なる領域は、全体を撥水性または親水性材料で形成することができることは明らかである。あるいはこの領域は、他の材料を、例えば浸漬コーティングまたは化学蒸着法を用いて、撥水性または親水性物質でコーティングすることによって形成することも可能である。
【0029】
図2および3には、メニスカス225の異なる構造を示す。
【0030】
この構造は、エレクトロウェッティング効果を利用して、接触角を変化させることによって変化し、メニスカス225の電極280を取り囲む表面、またはチャンバ室215の内表面と接するメニスカスの外周部が変形する。
【0031】
この特定の実施例では、素子200は、素子が2構造間で切り替えられるように(すなわち流体、濡れ性の異なる表面、および選定される電圧範囲が)調整され、両構造は、光出力を全く提供しない(すなわちメニスカスは、レンズとして作用しない)。両方の構造において、メニスカスの中央とメニスカスの外周は、光軸に沿って等距離にある(すなわち図に示す軸によって定められるように、同じ前記位置にある)。図2に示す構造では、メニスカスは、平坦または平面的であって、メニスカスには、いかなる収差も生じない。
【0032】
図3に示す構造では、メニスカスはドーナツ状であり、従ってメニスカスによって生じる波面歪みは、球面収差となる。そのような球面収差を適用して、好ましくない球面収差を相殺することができる。
【0033】
前述の実施例は、一例として示されたに過ぎず、他の各種配置が可能であることは当業者には明らかである。例えば前述の例では、電極280は、光軸に沿って(すなわち円筒状チャンバ室215の中央を通るように)延伸しているが、電極は、メニスカス225を通って延伸していれば、チャンバ室内のいかなる位置に設置することも可能である。
【0034】
また前述のチャンバ室は、円筒状となるように示されているが、チャンバ室は、いかなる所望の形状にしても良いことは明らかである。チャンバ室は、円状の断面を有しても、あるいはいかなる他の所望の断面を有しても良く、例えば楕円、正方形または長方形であっても良い。
【0035】
チャンバ室の側壁は、実質的に光軸と平行になるように示されているが、側壁はいかなる所望の形状にもできることは勿論であり、光軸90に対していかなる角度としても良い。例えば、電極に電圧を印加する必要のない、平面(または平坦)メニスカスを得るため、チャンバ室の側壁および中央の電極壁を光軸から傾斜させて(換言すれば、チャンバ室と電極280とを円錐状に、あるいは円錐台状にして)、初期のメニスカスの側壁との接触角が、光軸90と垂直な平面内に属するようにしても良い。チャンバ室の側壁だけを傾斜させることも可能である。この場合、中央電極には、平坦なメニスカスが得られるように、電圧が印加される。
【0036】
前述の実施例では、2つの構造間を切り替えることの可能なメニスカスについて示した。しかしながらメニスカスは、いかなる数の所望の構造間で切り替えられても良い。メニスカス構造は、連続的に変化しても良い。前述の実施例では、メニスカスは、2構造間で切り替えられるが、両構造が光出力を提供することはない。しかしながら、メニスカスが、光出力を有する構造間で切り替えられるようにしても良く、例えば光出力が得られない構造と光出力が得られる構造の間で切り替えられるようにしても良い。
【0037】
前述の実施例では、単一の電極がメニスカスを通り、単一の電極がメニスカスの外周に作用するように示されているが、1または2以上の別の電極を提供しても良いことは明らかである。
【0038】
例えば図4には、本発明の別の実施例の断面図を示すが、この例では、チャンバ室215の周囲に沿って延伸する単一の環状電極242の代わりに、素子300は、チャンバ室215の周囲に沿って等間隔で設置された4つの別個の電極243、244、245、246を有する。
【0039】
そのような構造では、異なる電極に異なる電圧を印加することによって、メニスカスを多様な形状で構成することが可能となる。例えば、電極244と246での接触角が等しくなり、電極243での接触角がより鋭角となり、電極245での接触角がより鈍角となるように電圧が印加された場合、コマ波面変形に類似し、コマ収差の生じるメニスカス構造が得られる。
【0040】
あるいは、電極244と246を覆うメニスカスの外周が同じ接触角であり、電極243と245を覆うメニスカスは同じ接触角であるが、Z軸に沿った(すなわち光軸90に沿った)位置が異なる場合、非点収差波面の変形と類似し、非点収差の生じる形状のメニスカス225が得られる。
【0041】
従って、図4に示すそのような素子300を用いて、好ましくない収差を相殺するための所望の様々な収差を形成することができる。
【0042】
そのような素子は、様々な光学装置に設置することができることは明らかである。
【0043】
図5には、対物レンズ18を有し、光記録担体2を走査する装置1を示す。記録担体は、透明層3を有し、その片側には情報層4が配置されている。情報層の透明層とは反対の側は、保護層5によって外界の影響から保護される。透明層の装置と面する側は、入射面6と呼ばれる。透明層3は、記録担体の基板として作用し、情報層を機械的に支持する。
【0044】
あるいは透明層は、情報層を保護する機能のみを有しても良い。この場合、機械的支持は、情報層の反対側の層によって提供され、例えば保護層5によって、または別の情報層と、情報層4に接続された別の透明層によって提供される。
【0045】
情報は、実質的に平行、同心円状または螺旋状の図示されていないトラックに配置された、光学的に検知できるマークの状態で記録担体の情報層4に保管される。マークは、いかなる光学的に読み取ることのできる形状であっても良く、例えばピット状、周囲部とは反射率や磁化方向の異なる領域、またはこれらの形状の組み合わせである。
【0046】
走査装置1は、放射線源11を有し、この放射線源は、放射線ビーム12を放射する。放射線源は、半導体レーザーであっても良い。ビームスプリッタ13は、コリメータレンズ14の方向に発散放射線ビーム12を反射し、コリメータレンズで発散ビーム12は、平行ビーム15に変換される。平行ビーム15は、対物レンズ系18に入射される。
【0047】
対物レンズ系は、1または2以上のレンズおよび/または回折格子を有する。対物レンズ系18は、光軸19を有する。対物レンズ系18は、ビーム17を集束ビーム20に変換し、この集束ビームは、記録担体2の入射面6に入射する。対物レンズ系は、透明層3の厚みを通過する放射線ビームに適合された球面収差補正を有する。集束ビーム20は、情報層4上にスポット21を形成する。情報層4によって反射された放射線は、発散ビーム22を形成し、この放射線は、対物レンズ系18で実質的に平行ビーム23に変換された後、コリメータレンズ14によって集束ビーム24に変換される。ビームスプリッタ13は、収束ビーム24の少なくとも一部を検出系25の方向に透過させることによって、前方および反射ビームを分離する。検出系は、放射線を収集し、この放射線を電気出力信号26に変換する。信号プロセッサ27は、これらの出力信号を別の各種信号に変換する。
【0048】
信号の一つは、情報信号28であり、この値は、情報層4から読み出された情報を表す。情報信号は、誤差補正用の情報処理ユニット29で処理される。信号プロセッサ27からのその他の信号は、フォーカスエラー信号とラジアルエラー信号30である。フォーカスエラー信号は、スポット21と情報層4の間の軸方向の高さの差異を表す。ラジアルエラー信号は、情報層4の平面における、スポット21と、スポットによって走査される情報層内のトラックの中央との間の距離を表す。フォーカスエラー信号とラジアルエラー信号は、サーボ回路31に搬送され、このサーボ回路は、これらの信号をサーボ制御信号32に変換し、それぞれによって、フォーカスアクチュエータおよびラジアルアクチュエータが制御される。これらのアクチュエータは、図示されていない。フォーカスアクチュエータは、対物レンズ系18の焦点方向33における位置を制御し、これによりスポット21の実際の位置が制御され、スポット21は実質的に情報層4の平面に一致する。ラジアルアクチュエータは、対物レンズ系18の半径方向34における位置を制御し、これによりスポット21の半径方向の位置が制御され、スポット21は、情報層4に描かれたトラックの中央線に実質的に一致する。図においてトラックは、図の平面と垂直に通っている。
【0049】
また、図5に示すこの特定の実施例の装置は、記録担体2よりも厚い透明層を有する、第2の種類の記録担体の走査にも適合される。第2の種類の記録担体を走査するため、この装置は、放射線ビーム12または別の波長の放射線ビームを用いても良い。この放射線ビームのNAは、記録担体の種類に適合されても良い。これに応じて、対物レンズ系の球面収差補正が適合される。
【0050】
この特定の実施例では、素子200の提供によって、球面収差補正が可能となる。素子200は、ビーム経路に配置されるが、コリメータレンズ14と対物レンズ系18の間に設置されることが好ましい。ただし必要であれば、素子200は、対物レンズ系18内に組み込むことも可能であり、例えば、対物レンズとの一体部品としても良い。メニスカス制御システム400を用いて、素子200の電極に補正電圧を印加して、素子200によって所望の非球面収差補正が得られるようにすることができる。
【0051】
素子200の別の実施例では、素子200は、ディスクの傾斜によって生じるコマ収差を補正するコマ収差を提供する。
【0052】
前述の素子の提供によって、光学式走査装置を含む様々な光学系に用いられる、比較的安価な収差(非球面収差を含む)補償装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施例による光学素子の断面図である。
【図2】図1に示す素子のチャンバ室の透視図である。
【図3】メニスカスの一構造を示した、図1に示す素子のチャンバ室の断面図である。
【図4】本発明の別の実施例による素子の断面図である。
【図5】本発明の実施例による素子を備える装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変式の屈折表面を提供する光学素子であって、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室、
該チャンバ室を通って延びる光軸、
前記チャンバ室に収容され、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接する第1の流体と第2の流体であって、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、第1の流体と第2の流体、
前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極、および
前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極、
を有する光学素子。
【請求項2】
前記第2の電極は、前記光軸に沿って延びることを特徴とする請求項1に記載の素子。
【請求項3】
さらに電圧制御システムを有し、前記第1のエレクトロウェッティング電極に電圧が提供され、前記第2のエレクトロウェッティング電極に電圧が提供され、所定のメニスカス構造が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
所定の構造は、実質的に平坦で、前記光軸と実質的に垂直な平面に広がるメニスカスを有することを特徴とする請求項3に記載の素子。
【請求項5】
所定の構造は、非平面状メニスカスを有し、前記メニスカスが前記第2の電極と接する位置と前記光軸に沿って実質的に同じ位置で、前記側壁と接する前記メニスカスの前記外周を有することを特徴とする請求項3または4に記載の素子。
【請求項6】
当該素子は、さらに、前記第1のエレクトロウェッティング電極の作用を受ける前記メニスカスの一部とは離れた、前記メニスカスの前記外周の一部に作用するように配置された、少なくとも第3のエレクトロウェッティング電極を有することを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の素子。
【請求項7】
少なくとも一つの前記側壁は、前記光軸に対してある角度で傾斜していることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の素子。
【請求項8】
前記第1および第2の流体は、実質的に同じ比重であることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の素子。
【請求項9】
可変式の屈折表面を提供する光学素子を有する装置であって、前記素子は、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室、
該チャンバ室を通って延びる光軸、
前記チャンバ室に収容され、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接する第1の流体と第2の流体であって、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、第1の流体と第2の流体、
前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極、および
前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極、
を有する、装置。
【請求項10】
さらにメニスカス制御システムを有することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
当該装置は、光記録担体の情報層を走査する光学式走査装置であり、当該装置は、放射線ビームを発生する放射線源と、前記情報層に前記放射線ビームを集束する対物レンズ系とを有することを特徴とする請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
可変式の屈折表面を提供する光学素子を製作する方法であって、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室であって、該チャンバ室を通って延びる光軸を有するチャンバ室を提供するステップ、
前記チャンバ室に、第1の流体と第2の流体を充填するステップであって、前記両流体は、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接し、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、ステップ、
前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極を提供するステップ、および
前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極を提供するステップ、
を有する光学素子を製作する方法。
【請求項13】
可変式の屈折表面を提供する光学素子を提供するステップを有する、光学装置を製作する方法であって、前記素子は、
少なくとも一つの側壁によって定形されたチャンバ室、
該チャンバ室を通って延びる光軸、
前記チャンバ室に収容され、前記光軸を横断して広がるメニスカス上で接する第1の流体と第2の流体であって、前記メニスカスの外周は、前記側壁によって拘束され、前記両流体は、実質的に不混和性であり、異なる屈折率を有する、第1の流体と第2の流体、
前記側壁に拘束された前記メニスカスの外周の少なくとも一部に作用するように配置された、第1のエレクトロウェッティング電極、および
前記メニスカスを貫通して延びる、第2のエレクトロウェッティング電極、
を有する、光学装置を製作する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501438(P2007−501438A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530789(P2006−530789)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050620
【国際公開番号】WO2004/102252
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】