説明

可変洗浄流フィルタアッセンブリ、燃料システムおよび燃料流フィルタリング方法

【課題】可変の洗浄流フィルタアッセンブリを提供する。
【解決手段】
可変洗浄流フィルタアッセンブリ54は、入口62、被フィルタ流ポート64および燃焼流ポート66を画定するハウジング60と、洗浄フィルタ74と、洗浄速度制御コーン68と、を備える。洗浄速度制御コーン68は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54の軸Aに沿ってガイド76によって案内され、ハウジング60内で付勢部材70によって付勢され最小位置と最大位置との間で移動する。燃料流Fは、入口62から可変洗浄流フィルタアッセンブリ54に流入し、洗浄速度制御コーン68と洗浄フィルタ74との間を流れ、燃焼流と被フィルタ流とに分流される。燃焼流は洗浄流として作用し、洗浄フィルタ74によって捕捉された異物を運び去る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国海軍によって発注された契約番号N00019−02−C−3003下で米国政府の支援によりなされたものである。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、フィルタリングシステムに関し、特に、該システムの洗浄フィルタに関する。
【背景技術】
【0003】
エンジンシステムは、通常、異物(汚染物)に対して敏感な構成要素を備える。このような異物に対して敏感な構成要素には、燃料内の異物を除去するろ過システムが必要とされる。
【0004】
圧力および流れを供給するポンプは、通常、定容量形ポンプであり、つまり、流れが速度とともに線形に変化する。定常運転の間、過度なポンプ流は、迂回し、再循環する。従来の固定形状を有する洗浄フィルタは、この過度なポンプ流を洗浄流として使用していた。従来の洗浄フィルタろ過システムを洗浄する際、ポンプの運転許容範囲(エンベロープ)にわたる洗浄流の範囲で洗浄が行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、改善された可変型の洗浄流フィルタアッセンブリを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な実施例による可変洗浄流フィルタアッセンブリは、入口、少なくとも1つの被フィルタ流ポートおよび少なくとも1つの出口ポートを画定するハウジングと、少なくとも1つの被フィルタ流ポートに隣接してハウジング内に配置された洗浄フィルタと、洗浄フィルタに対してハウジング内で付勢される洗浄速度制御コーンと、を備える。洗浄速度制御コーンは、最小位置と最大位置の間で移動可能である。
【0007】
本発明の例示的な実施例による燃料システムは、主燃料ポンプと、この主燃料ポンプと流体連通する可変洗浄流フィルタアッセンブリと、を備える。可変洗浄流フィルタアッセンブリは、洗浄フィルタに対して移動可能な洗浄速度制御コーンを備え、洗浄速度制御コーンは、主燃料ポンプからの燃料流を、システムによって要求される燃焼流と、被フィルタ流とに分流させるように、最小位置と最大位置との間で移動可能である。燃焼流は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ内で洗浄フィルタによって捕捉された異物を運び去る洗浄流として作用する。
【0008】
本発明の例示的な実施例による燃料流をフィルタリングする方法は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ内で洗浄フィルタに対して洗浄速度制御コーンを付勢するステップを含み、洗浄速度制御コーンは、最小位置と最大位置との間で移動可能であり、可変洗浄流フィルタアッセンブリは、燃料流を、要求されたシステムへの燃焼流と、被フィルタ流とに分流させる。燃焼流は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ内で洗浄フィルタによって捕捉された異物を運び去る洗浄流として作用する。
【0009】
本発明の種々の特徴および利点が、以下に記載した例示的な実施例を示す発明を実施するための形態から当業者に明らかになるであろう。発明を実施するための形態に伴う図面について、以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】燃料システムの概略図。
【図2A】可変洗浄流フィルタアッセンブリの透視断面図。
【図2B】第1の位置における図2Aの半径方向の出口を有する可変洗浄流フィルタアッセンブリの断面図。
【図2C】第2の位置における図2Aの半径方向の出口を有する可変洗浄流フィルタアッセンブリの断面図。
【図2D】図2Aの半径方向の出口を有する可変洗浄流フィルタアッセンブリにおける構成要素の分解図。
【図3】軸方向の出口を有する、他の可変洗浄流フィルタアッセンブリの断面図。
【図4A】軸方向の出口を有する、さらに別の可変洗浄流フィルタアッセンブリの透視断面図。
【図4B】図4Aの軸方向の出口を有する可変洗浄流フィルタアッセンブリの断面図。
【図4C】図4Aの軸方向の出口を有する可変洗浄流フィルタアッセンブリの後方部分を示す図。
【図4D】図4Aの軸方向の出口を有する可変洗浄流フィルタアッセンブリの分解図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54を用いる燃料システム50を概略的に示している。燃料システム50は、主燃料ポンプ52を備え、この主燃料ポンプ52は、燃料流Fをポンプ出口から可変洗浄流フィルタアッセンブリ54へと通流させる。可変洗浄流フィルタアッセンブリ54からの燃料流Fは、洗浄流として作用する燃焼用の燃料流(燃焼流)GGと、フィルタリングされた燃料流(被フィルタ流)FFと、に分流される。燃焼流GGおよび被フィルタ流FFの少なくとも一方は、半径方向の通路(図2A)または軸方向の通路(図4A)を通って可変洗浄流フィルタアッセンブリ54から流出する。被フィルタ流FFは、複数の異物に対して敏感な構成要素(異物敏感要素)56へと流れる。さらに、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54は、ガスタービン以外のシステムにも用いられることを理解されたい。
【0012】
異物敏感要素56に要求されただけの燃料流が被フィルタ流FFによってもたらされるため、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54内に洗浄流が過剰に供給されない。このため、燃焼流GGが洗浄流として用いられるが、燃焼流GGは、比較的高い「ターンダウン比(turn down ratio)」、つまり最大流と最小流との比を有していてもよい。高ターンダウン比のため、従来の固定形状を有する洗浄フィルタは、この固定洗浄フィルタの基準洗浄速度範囲を満たさない。本発明の可変洗浄流フィルタアッセンブリ54によって、効果的に作動するために要求される範囲内に洗浄流が維持される。
【0013】
図2Aを参照すると、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54は、ハウジング60を有し、このハウジング60は、入口62と、少なくとも1つの被フィルタ流FFポート64と、少なくとも1つの燃焼流GGポート66と、を画定する(図2Dにも図示する)。ハウジング60内において、洗浄速度制御コーン68は、最小位置(図2B)と最大位置(図2C)との間で移動するように、バネなどの付勢部材70によって付勢される。付勢部材70は、ガイド76に取付けられたバネ受け72に対して作用する。ガイド76によって、洗浄速度制御コーン68が可変洗浄流フィルタアッセンブリ54の軸Aに沿って軸方向に移動するように案内される。
【0014】
洗浄フィルタ74は、円錐形状をなしており、最小位置(図2B)において洗浄速度制御コーン68と洗浄フィルタ74との間ギャップが小さくなるように、対応する円錐形状の洗浄速度制御コーン68を受ける。この制御された最小のギャップは、最小のギャップが洗浄フィルタ74によって捕捉された異物を運び去るのに十分な洗浄速度をもたらす低流状態に対応する。燃料ポンプ52からの流れが増すと、洗浄速度制御コーン68における圧力降下および流れの運動量の力が変化する。洗浄速度制御コーン68は、付勢部材70に当接し、流れおよび圧力がバランスのとれた状態の位置に定着する。このように、洗浄速度制御コーン68が移動することにより、例えば、システムに要求される流れ(つまり、燃焼流)または被フィルタ流の増加などに応じた燃料ポンプからの流れに比例して、洗浄速度制御コーン68と洗浄フィルタ74との間のギャップが増す。この移動および可変のギャップにより、洗浄速度が比較的一定に維持され、洗浄フィルタ74によって捕捉された異物が燃焼流GG(つまり、洗浄流)とともに運び去られる。
【0015】
洗浄速度制御コーン68と洗浄フィルタ74との間のギャップは、流体の静圧の降下を生じさせる比較的早い流体速度を有するため、これにより、洗浄速度制御コーン68に閉方向の圧力荷重(closing pressure load)つまり正味の閉方向の力が生じる。この潜在的な閉方向力を抑制するため、洗浄速度制御コーン68と洗浄フィルタ74との間における円錐形のギャップの下流において、少なくとも1つの圧力差生成開口部(activation deltaP window)78がガイド76に設けられる。ガイドのスリーブ部分80を貫通して開口部78を配設してもよい。1つまたは複数の開口部78が配設されてもよく、また種々の流れの状態に対してコーンの位置を制御する正味の正の力(net positive force)をもたらす圧力差(デルタP)が最適となるような形状を有していてもよい。
【0016】
主燃料ポンプ52からの燃料流Fは、入口62から可変洗浄流フィルタアッセンブリ54に流入する。燃料は、洗浄速度制御コーン68と洗浄フィルタ74との間を流れるように案内される。洗浄フィルタ74に対して洗浄速度制御コーン68が移動することにより、洗浄速度制御コーン68のストロークに対して流れ領域が変化する。入口からの燃料流の一部は、洗浄フィルタ74を通って被フィルタ流FFポート64へと流れ、フィルタリングされた被フィルタ流FFとなる。燃料流の残部は、システムに要求される燃料流(つまり、燃焼流GG)となり、洗浄フィルタ74によって捕捉された異物を運び去る。燃焼流GGは、基本的に、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54を通って流れ、他方、被フィルタ流FFは、可変洗浄流フィルタアッセンブリ54の軸Aに対して実質的に直交する方向に導かれる。
【0017】
図3は、他の可変洗浄流フィルタアッセンブリ54Aの例示的な実施例を示している。可変洗浄流フィルタアッセンブリ54Aは、安定バルブ90に一体化された洗浄速度制御コーン68’を備える。つまり、洗浄速度制御コーン68’は、一体的な安定バルブ90を備える。
【0018】
遠心型の主燃料ポンプ52’からの燃料流は、入口62’から可変洗浄流フィルタアッセンブリ54Aに流入する。燃料は、安定バルブ90にわたって案内され、ポンプの安定稼動に対して適切な背圧を生じさせる。次いで、燃料は、前述のように、洗浄速度制御コーン68’と洗浄フィルタ74’との間を通流する。安定バルブ90と一体的な洗浄速度制御コーン68’は、ユニットとして動くように互いに固定されており、したがって、流れの関係に対し同じストロークを有する。
【0019】
図4Aは、さらに別の可変洗浄流フィルタアッセンブリ54Bの例示的な実施例を示している。可変洗浄流フィルタアッセンブリ54Bは、軸方向の燃焼流GGポート66”と、半径方向の被フィルタ流FFポート64”と、を備える(図4B,4C,4Dにも図示する)。可変洗浄流フィルタアッセンブリ54Bは、実質的に前述のように、燃焼流GGとともに作動する。この燃焼流GGは、ガイド76”のベース部分に位置するポート92を通って、ハウジング60”の軸Aに沿って配置された燃焼流GGポート66”から流出する。
【0020】
「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「上」、「下」などの相対的な位置を示す用語は、乗物の通常の運転姿勢を基準とするものであり、限定的に解釈されるものではないことを理解されたい。
【0021】
図示した実施例には特定の構成要素の配置が示されているが、他の配置であっても本発明の利点を得ることを理解されたい。
【0022】
特定のステップの順序が、図示、説明およびクレイムされているが、指示されていない限り、ステップを任意の順番で、別々にまたは組み合わせて実施してもよく、それでも、本発明の利点を得ることを理解されたい。
【0023】
上記の記載は、例示的なものであり、限定的なものではない。上記の教示を鑑みて種々の変更および修正が可能である。本明細書において非限定的な実施例が開示されているが、当業者であれば、特定の修正形態が本発明の範囲内にあることを理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内で実施されることを理解されたい。そのため、以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を決定するために検討されたい。
【符号の説明】
【0024】
50 燃料システム
52 主燃料ポンプ
54 可変洗浄流フィルタアッセンブリ
56 異物敏感要素
60 ハウジング
62 入口
64 被フィルタ流ポート
66 燃焼流ポート
68 洗浄速度制御コーン
70 付勢部材
72 バネ受け
74 洗浄フィルタ
76 ガイド
78 圧力差生成開口部
90 安定バルブ
92 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口、少なくとも1つの被フィルタ流ポートおよび少なくとも1つの燃焼流ポートを画定するハウジングと、
前記少なくとも1つの被フィルタ流ポートに隣接してハウジング内に配置された洗浄フィルタと、
洗浄フィルタに対してハウジング内で付勢される洗浄速度制御コーンと、
を備え、
前記洗浄速度制御コーンは、最小位置と最大位置の間で移動可能であることを特徴とする可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項2】
洗浄フィルタの形状が、円錐形であることを特徴とする請求項1に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項3】
洗浄速度制御コーンの形状が、円錐形であることを特徴とする請求項1に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項4】
前記入口および少なくとも1つの燃焼流ポートは、ハウジングの長手方向の軸上に位置することを特徴とする請求項1に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項5】
洗浄フィルタの下流に位置する少なくとも1つの圧力差生成開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項6】
少なくとも1つの圧力差生成開口部が、洗浄速度制御コーンと洗浄フィルタとの間の円錐形のギャップの下流に位置し、かつ、洗浄速度制御コーンの移動を部分的に制御することを特徴とする請求項5に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項7】
洗浄速度制御コーンと洗浄フィルタとの間の円錐形のギャップの下流に位置する少なくとも1つの圧力差生成開口部をさらに備え、該圧力差生成開口部が、洗浄速度制御コーンの移動を部分的に制御することを特徴とする請求項1に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項8】
洗浄速度制御コーンに取付けられた安定バルブをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の可変洗浄流フィルタアッセンブリ。
【請求項9】
主燃料ポンプと、
前記主燃料ポンプと流体連通する可変洗浄流フィルタアッセンブリと、
を備え、
可変洗浄流フィルタアッセンブリは、洗浄フィルタに対して移動可能な洗浄速度制御コーンを備え、洗浄速度制御コーンは、主燃料ポンプからの燃料流を燃焼流と被フィルタ流とに分流させるように、最小位置と最大位置との間で移動可能であり、燃焼流は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ内で洗浄フィルタによって捕捉された異物を運び去る洗浄流として作用することを特徴とする燃料システム。
【請求項10】
可変洗浄流フィルタアッセンブリは、主燃料ポンプの出口に取付けられることを特徴とする請求項9に記載の燃料システム
【請求項11】
主燃料ポンプの出口と連通する入口、被フィルタ流を通流させる少なくとも1つの被フィルタ流ポート、および燃焼流を通流させる少なくとも1つの燃焼流ポートを画定するハウジングと、
ハウジング内で洗浄フィルタに対して付勢され、最小位置と最大位置の間で移動可能である洗浄速度制御コーンと、
をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の燃料システム
【請求項12】
洗浄フィルタに対して移動可能な洗浄速度制御コーンと、
洗浄速度制御コーンとともに移動可能なように洗浄速度制御コーンに取付けられた洗浄速度制御コーンに取付けられた安定バルブと、
をさらに備え、
洗浄速度制御コーンは、最小位置と最大位置との間で移動可能であることを特徴とする請求項9に記載の燃料システム
【請求項13】
燃料流をフィルタリングする方法であって、
可変洗浄流フィルタアッセンブリ内で洗浄フィルタに対して洗浄速度制御コーンを付勢するステップを含み、
洗浄速度制御コーンは、最小位置と最大位置との間で移動可能であり、
可変洗浄流フィルタアッセンブリは、燃料流を燃焼流と被フィルタ流とに分流させ、
燃焼流は、可変洗浄流フィルタアッセンブリ内で洗浄フィルタによって捕捉された異物を運び去る洗浄流として作用することを特徴とする燃料流フィルタリング方法。
【請求項14】
燃料ポンプの出口に可変洗浄流フィルタアッセンブリを取り付けるステップと、
背圧をもたらすとともに燃料ポンプの安定した作動を維持するように、洗浄速度制御コーンに安定バルブを取り付けるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の燃料流フィルタリング方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2010−7661(P2010−7661A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135623(P2009−135623)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】