説明

可変電圧型変圧器

【課題】本発明は、別電源を必要とせず、簡単な構成にして二次巻線の電圧を無段階に変化できる可変電圧型変圧器を提供することにある。
【解決手段】本発明は、閉磁路を構成する鉄心2と、この鉄心2に夫々巻装された一次巻線3及び二次巻線4と、これら一次巻線3と二次巻線4との間に位置する鉄心2の磁路面積を無段階に調整させる磁路面積調整手段(8,9)とを設けたものである。
このように構成することで、二次巻線4に流れる磁束量を無段階に調整することができるので、二次巻線4に発生する電圧を無段階に変化させることができるのである。
したがって、磁束量を調整するための制御巻線や、この制御巻線に電流を流す別電源、さらには、別電源からの電流の流量を調整する電流調整装置などは一切不用になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は負荷に応じて二次電圧を変化させることができる可変電圧型変圧器に係り、特に、商用電源と負荷との間の電圧を無段階に変化させることができる可変電圧型変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用電源と負荷との間の電圧を無段階に変化させることができる可変電圧型変圧器は、例えば特許文献1に開示のように、既に提案されている。
【0003】
この特許文献1に開示の可変電圧型変圧器は、変圧器の鉄心内を流れる主磁束の量を、制御磁束を逆方向に流すことで調整し、これによって二次巻線の電圧を調整しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−44051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の可変電圧型変圧器によれば、二次巻線の電圧を無段階に変化させることができるので、木目細かな電圧調整が行なえる利点がある。
【0006】
しかしながら、このような可変電圧型変圧器は、制御磁束を発生させるための制御巻線と、さらにこの制御巻線に電流を流す別電源と、電流の流量を調整する電流調整装置が必要となり、その結果、可変電圧型変圧器としての部品点数が増加すると共に、変圧器全体を大型化する問題がある。
【0007】
本発明の目的は、別電源を必要とせず、簡単な構成にして二次巻線の電圧を無段階に変化できる可変電圧型変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、閉磁路を構成する鉄心と、この鉄心に夫々巻装された一次巻線及び二次巻線と、これら一次巻線と二次巻線との間に位置する鉄心の磁路面積を無段階に調整させる磁路面積調整手段とを設けたのである。
【0009】
このように、一次巻線と二次巻線との間に位置する鉄心の磁路面積を磁路面積調整手段によって無段階に調整することで、二次巻線に流れる磁束量を無段階に調整することができ、それによって二次巻線に発生する電圧を無段階に変化させることができるのである。
【0010】
したがって、磁束量を調整するための制御巻線や、この制御巻線に電流を流す別電源、さらには、別電源からの電流の流量を調整する電流調整装置などは一切不要になり、その結果、変圧器としての構成は定電圧型変圧器の構成とほとんと同じとなる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、別電源を必要とせず、簡単な構成にして二次巻線の電圧を無段階に変化できる可変電圧型変圧器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による可変電圧型変圧器の一実施の形態を示す一部破断斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の可変電圧型変圧器の鉄心と巻線を示す斜視図。
【図4】図3の平面図。
【図5】図3の概念図。
【図6】図5の等価回路図。
【図7】磁路断面最大の状態を示す模式図。
【図8】磁路断面減少時の状態を示す模式図。
【図9】図5の変形例を示す概念図。
【図10】図9の等価回路図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による可変電圧型変圧器の一実施の形態を、図1〜図8に基づいて説明する。
【0014】
可変電圧型変圧器1は、大きくは、閉磁路を構成するように形成された鉄心2と、この鉄心2に巻装された一次巻線3と、この一次巻線3から離れた位置の鉄心2に巻装された二次巻線4と、これらを支持収納する筐体5とで構成されている。
【0015】
そして、通常の定電圧型変圧器と同じように、一次巻線3は、例えば商用電源6に接続されており、二次巻線4は、負荷7に接続されている。
【0016】
前記鉄心2の一次巻線3と二次巻線4との間には、鉄心2に流れる磁束の流通方向と直行するようにねじ穴8が設けられており、このねじ穴8には磁性ねじ9が進退可能に捻じ込まれている。
【0017】
一方、筐体5には、磁性ねじ9に臨んで貫通穴(図示せず)が形成され、この貫通穴を貫通して前記磁性ねじ9の一端が筐体5の外側に突出している。尚、前記磁性ねじ9に連結ロッドを連結してその一端を筐体5の外側に突出するように構成してもよい。そして、筐体5から突出した磁性ねじ9或いは連結ロッドの他端にはつまみ10が取付けられている。
【0018】
このように構成された可変電圧型変圧器1において、図7に示すように、鉄心2のねじ穴8を埋めるように磁性ねじ9が捻じ込まれている場合、磁路面積、云い代えれば、鉄心2の断面積は100%確保されることになり、一次巻線3によって発生する磁束はほとんど二次巻線4側に到達し、二次巻線4の巻数に対応する電圧Vが発生する。
【0019】
そして、負荷7の状況に応じて二次巻線4の電圧Vを低くしたい場合には、図8に示すように、ねじ穴8を埋めていた磁性ねじ9を緩めて引出すことで、磁路面積、云い代えれば、鉄心2の断面積は減少し、一次巻線3によって発生する磁束の通過量は制限される。したがって、二次巻線4側に到達する磁束量は減少し、二次巻線4に発生する電圧Vは低くなる。
【0020】
このように本実施の形態によれば、磁性ねじ9の捻じ込み量によって磁路面積を無段階に調整することができ、二次巻線4に発生する電圧を無段階に調整することができる。そのために、磁束量を調整するための制御巻線や、この制御巻線に電流を流す別電源、さらには、別電源からの電流の流量を調整する電流調整装置などを特別に設ける必要がない。その結果、別電源を必要とせず、簡単な構成にして二次巻線4の電圧を無段階に変化できる可変電圧型変圧器1を得ることができる。
【0021】
ところで、上記実施の形態において、ねじ穴8と磁性ねじ9とが、本発明による磁路面積調整手段や断面積調整手段を構成することになる。
【0022】
さらに、つまみ10の外周に目印を付け、対向する筐体5の表面に目盛りを付けることで、作業者はつまみ10をどの角度回動させれば、二次巻線4に所望の電圧Vが発生するのを把握することができる。ただ、磁性ねじ9を直接回動させると、回動回数の割りに磁性ねじ9のねじ穴8からの進退距離が少ないので、磁性ねじ9とつまみ10との間に歯車等の変則手段を介在させて、僅かな回動により磁性ねじ9の進退距離を大きくするようにしてもよい。
【0023】
次に、図9及び図10に基づいて本発明による可変電圧型変圧器1の変形例を説明する。
【0024】
尚、図1〜図8と同符号は基本的に同一構成部材を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0025】
本変形例と前記実施の形態と異なる構成は、鉄心2の構成である。即ち、本変形例においては、鉄心2を一次側鉄心2Aと二次側鉄心2Bとに分割し、一次側鉄心2Aには一次巻線3を巻装し、二次側鉄心2Bには二次巻線4を巻装し、さらに、一次側鉄心2Aに本発明による磁路面積調整手段を構成するねじ穴8と磁性ねじ9とを備えたのである。
【0026】
本変形例において、一次側鉄心2Aを固定箇所、例えば家屋の壁に設置し、二次側鉄心2Bを電源を必要とする製品と一体化することで、必要時にのみ壁に設置した一次側鉄心2Aに二次側鉄心2Bを接触あるいは近接させて電源をとることができる。例えば、本変形例において、負荷7に充電可能なバッテリーを接続した場合には、二次巻線4との間に充電器11を介在させることで、バッテリーの必要電圧に応じて磁性ねじ9を進退させることで、必要な電圧を充電することができる。
【0027】
尚、本変形例において、一次側鉄心2Aに本発明による磁路面積調整手段を構成するねじ穴8と磁性ねじ9とを備えたが、必ずしもこの構成に特定されるものではなく、二次側鉄心2Bに磁路面積調整手段を構成するようにしてもよい。
【0028】
以上説明の実施の形態及び変形例において、二次巻線4の電圧調整は、作業者が磁性ねじ9を回して調整するものであるが、二次巻線4の端子間に電圧計を設け、この電圧計を見ながら磁性ねじ9を回動させるようにしてもよく、さらには、二次巻線4の端子間の電圧を検出して、前記磁性ねじ9のねじ穴8からの進退を電動駆動するようにしてもよい。
【0029】
さらに、以上説明の実施の形態及び変形例において、本発明による磁路面積調整手段として、ねじ穴8と磁性ねじ9とを用いたが、例えば、鉄心2の磁束流通方向と直行する方向に空隙を設け、この空隙内に磁性板を抜き差しするように構成しても磁路面積を無段階に変化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上の説明は、可変電圧型変圧器1をバッテリーの充電用に使用する場合について説明したが、照明器具の明るさを、電圧を無段階に変化させて調光する調光器としても適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…可変電圧型変圧器、2…鉄心、2A…一次側鉄心、2B…二次側鉄心、3…一次巻線、4…二次巻線、5…筐体、6…商用電源、7…負荷、8…ねじ穴、9…磁性ねじ、10…つまみ、11…充電器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉磁路を構成する鉄心と、この鉄心に夫々巻装された一次巻線及び二次巻線と、これら一次巻線と二次巻線との間に位置する鉄心の磁路面積を機械的に無段階に調整させる磁路面積調整手段とを備えたことを特徴とする可変電圧型変圧器。
【請求項2】
前記磁路面積調整手段は、鉄心に流れる磁束の流通方向と直行する方向に形成されたねじ穴と、このねじ穴に進退可能にねじ込まれた磁性ねじとで構成されていることを特徴とする請求項1記載の可変電圧型変圧器。
【請求項3】
前記磁路面積調整手段は、鉄心の磁束流通方向と直行する方向に形成した空隙と、この空隙内に進退可能に抜き差しされる磁性板とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の可変電圧型変圧器。
【請求項4】
閉磁路を構成する鉄心と、この鉄心に夫々巻装された一次巻線及び二次巻線と、これら一次巻線と二次巻線との間に位置する鉄心の断面積を機械的に無段階に調整させる断面積調整手段とを備えたことを特徴とする可変電圧型変圧器。
【請求項5】
前記断面積調整手段は、鉄心に流れる磁束の流通方向と直行する方向に形成されたねじ穴と、このねじ穴に進退可能にねじ込まれた磁性ねじとで構成されていることを特徴とする請求項4記載の可変電圧型変圧器。
【請求項6】
前記断面積調整手段は、鉄心の磁束流通方向と直行する方向に形成した空隙と、この空隙内に進退可能に抜き差しされる磁性板とで構成されていることを特徴とする請求項4記載の可変電圧型変圧器。
【請求項7】
閉磁路を構成する鉄心と、この鉄心に夫々巻装された一次巻線及び二次巻線とを備え、前記鉄心は、前記一次巻線を巻装した一次側鉄心と前記二次巻線を巻装した二次側鉄心とに分割されており、これら一次側鉄心と二次側鉄心とで形成する閉磁路内に鉄心の断面積を機械的に無段階に調整させる断面積調整手段とを備えたことを特徴とする可変電圧型変圧器。
【請求項8】
前記断面積調整手段は、鉄心に流れる磁束の流通方向と直行する方向に形成されたねじ穴と、このねじ穴に進退可能にねじ込まれた磁性ねじとで構成されていることを特徴とする請求項7記載の可変電圧型変圧器。
【請求項9】
前記断面積調整手段は、鉄心の磁束流通方向と直行する方向に形成した空隙と、この空隙内に進退可能に抜き差しされる磁性板とで構成されていることを特徴とする請求項7記載の可変電圧型変圧器。
【請求項10】
閉磁路を構成する鉄心に夫々巻装された一次巻線及び二次巻線とを有し、二次巻線の電圧を無段階に調整させるに際し、前記鉄心の断面積を機械的に無段階に変化させて調整することを特徴とする可変電圧型変圧器の電圧調整方法。
【請求項11】
閉磁路を構成する鉄心に夫々巻装された一次巻線及び二次巻線とを有し、二次巻線の電圧を無段階に調整させるに際し、前記二次巻線間の電圧に基づいて前記鉄心の断面積を機械的に無段階に変化させて調整することを特徴とする可変電圧型変圧器の電圧調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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