説明

可搬型折りたたみ式簡易堤防

【課題】 本発明は、軽量で容易に運搬ができ、迅速かつ容易に組立ができ、浮き上がったり、ズレが生ずることのない簡易堤防を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る簡易堤防Aは、矩形の覆い板10と、該覆い板10と同幅の矩形をなし、該覆い板10の略中間高さの位置からヒンジ結合にて連設された支承板20と、覆い板10と支承板20とのいずれか一方にヒンジ結合され、覆い板10が支承板20に支承された設置状態において覆い板10と支承板20との左右端により形成される下部の三角状領域を閉塞する閉塞板30と、覆い板10の下端に接着した、覆い板10が支承板20に支承された設置状態において支承板20の下を通過する長さを有する堤防被覆シート40と、さらに堤防被覆シート40に連設した浸食防止シート50とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の氾濫などによる堤防の越水防止ために、迅速かつ簡単に設置して水害を防止する可搬型折りたたみ式簡易堤防(以下、単に「簡易堤防」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから河川などの越水防止として、土嚢を積み上げたり、堰板を設置するなどの対策がとられている。また、近年、特許文献1に示されるように、垂直壁で構成される複数の四角い枠体を連設し、その前側フレーム下端部から底シートを延設し、アンカーピンにより固定する越水防止装置が提案されており、平時には自治体の倉庫などに小さく折り畳んで収納しておき、河川の増水時などの必要に応じて設置し、底シートの上に土砂や土嚢などを積載して使用するものである。
【0003】
さらに、特許文献2に示されるように、通常は折り畳んで収納庫に収めておき、緊急時に堤防上に持ち出し、水を注入して膨らませる三角柱型や枕型の形状のものであって、これを必要な高さに積み上げて固定して臨時の堤防を形成する折り畳み式の簡易フェンスが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の越水防止装置は、現場における組立に時間と労力を要し、しかも、四角い枠体内に土嚢を詰めなければならず、緊急時に間に合わないおそれがある。また、上記特許文献2に記載の簡易フェンスは、水を注入するのに時間と労力を要し、緊急時に間に合わないおそれがある。
【0005】
そこで、図6に示すように、輸送労力軽減のために軽量で、即座に組立が可能なフレーム型簡易堤防100が提案された。このフレーム型簡易堤防100は、水平設置部を形成する水平シャフト111と該水平シャフト111から傾斜して連設された傾斜シャフト112とからなるフレーム110と該フレーム110と着脱可能な止水板120とからなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−283505号公報
【特許文献2】特開2005−220721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のフレーム型簡易堤防100は、図5において、図の右側に水面が来る場合、止水板120の上面に水圧がかかるため、止水板120を剛性の高い材料で製作することが必要となり、また、フレーム110も剛性の高い材料で製作することが必要となる。また、図5において、図の左側に水面が来る場合、止水板120の下面に水圧がかかるため、止水板120の剛性は弱くてもよいが、浮き上がりやズレが生ずる問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来品の欠点を解消し、軽量で容易に運搬ができ、迅速かつ容易に組立ができ、浮き上がったり、ズレが生ずることのない簡易堤防を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る簡易堤防は、矩形の覆い板と、該覆い板の略中間高さの位置からヒンジ結合にて連設された支承板とからなり、支承板側が水域側に向けて堤防上に並置されるものであることを特徴とするものである。また、覆い板が支承板に支承された設置状態において覆い板と支承板との左右端により形成される下部の三角状領域を閉塞するシートや板からなる閉塞片を設けた構成としてもよい。さらに、覆い板下端に、覆い板が支承板に支承された設置状態において支承板の下を通過する長さを有する堤防被覆シートを設けた構成としてもよい。さらにまた、覆い板下端に、覆い板が支承板に支承された設置状態において支承板が位置するのとは逆側に延出するシートや板からなる浸食防止片を設けた構成としてもよい。また、支承板において、その少なくとも上下端に通水口を設けた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明に係る簡易堤防は、部材が少ないことにより軽量であるため運搬が容易であり、また、構造が簡単であるため組立が極めて簡単であり、短時間で運搬及び組立ができるので、緊急時に十分対応できるものである。また、該簡易堤防は、その支承板にて低位の越水を受け止めて越水を防ぐことができる。一方、高位の越水は覆い板にて受け止め、その際は支承板が水没しているために、その水圧を閉塞が受け止めながら水圧が支承板を加圧するので、簡易堤防がズレたり浮き上がったりするのを防止でき、安定して高位の越水を防ぐことができる。なお、閉塞片を板で形成した場合には、支承板にかかる水圧を閉塞片が受け止めて支えるので、簡易堤防全体の安定性が向上する。堤防被覆シートを設けた場合には、堤防上面に凹凸があり、堤防上面と簡易堤防との間に隙間が生じていても、この堤防被覆シートにより隙間が覆い隠されるので、堤防上面と簡易堤防との隙間からの越水を防止することができ、堤防内部に水が侵入するのを防止する。浸食防止片を設けた場合には、簡易堤防を越水した水により簡易堤防の背面部の土が浸食されるのを防止することができる。支承板の上下端に通水口を設けた場合には、上下の通水口から水が侵入すれば、内部の空気が排出されるので、簡易堤防の浮き上がりが防止でき、また、堤防被覆シートとの組合せにより簡易堤防の自重が増加するので、摩擦抵抗が上がってズレることがより一層防止できる。また水が引いたときには、下端の通水口から水が排出されるので、折り畳んで片付ける際に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係る簡易堤防を2個組み立てた状態を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る簡易堤防の断面図である。
【図3】実施例1に係る簡易堤防の折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】実施例1に係る簡易堤防の使用状態図である。
【図5】実施例1に係る簡易堤防の使用状態における断面図である。
【図6】従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施例を添付の図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1〜図3において、Aは簡易堤防を示し、該簡易堤防Aは、主として覆い板10、支承板20、閉塞板30、堤防被覆シート40及び浸食防止シート50にて構成される。
【0014】
覆い板10は、幅約900mmで長さ約1200mmの矩形のコンクリートパネル製で構成される。支承板20は、覆い板10と同幅の約900mmで長さ約1000mmの矩形のコンクリートパネルで構成され、覆い板10の長さ方向約577mmの位置から蝶番hによりヒンジ結合にて連設されている。なお、支承板20は、覆い板10と必ずしも同幅に形成しなくてもよい。また、支承板20には、その上下端に上部通水口20aと下部通水口20bが設けられている。閉塞板30は、支承板20に蝶番hによりヒンジ結合され、覆い板10が支承板20に支承された設置状態において覆い板10と支承板20との左右端により形成される下部の三角状領域を閉塞し、覆い板10と支承板20とを支持するようになっている。このように構成したことにより、組立時において、奥行き約1170mmで高さ約1000mmの簡易堤防Aが完成する。なお、覆い板10、支承板20及び閉塞板30は組立時おいて隣接する各板同士が固定されるように留め具(不図示)を設けている。なお、閉塞板30は、板材により形成されるものに限られるものではなく、防水シート等の布帛にて形成してもよい。
【0015】
堤防被覆シート40は、覆い板10下端に接着して設けられている。この堤防被覆シート40は、覆い板10が支承板20に支承された設置状態において支承板20の下を通過する適宜の長さを有している。
【0016】
浸食防止シート50は、覆い板10の下端に、覆い板10が支承板20に支承された設置状態において支承板10が位置するのとは逆側に延出するように、堤防被覆シート40に接着されている。なお、浸食防止シート50を板材にて構成すね場合には、覆い板10の下端に蝶番によりヒンジ結合する。
【0017】
以上のように簡易堤防Aを構成したことにより、覆い板10の上に支承板20を、閉塞板30を上側して折り重ねる。そして、閉塞板30を支承板20側に折り重ねて、堤防被覆シート40を巻回する。このように操作すれば、図3に示すように折り畳んだコンパクトな状態にすることができる。前記の折り畳み操作を逆にすれば簡単に組み立てることができる。
【0018】
図4及び図5は、堤防B上に簡易堤防Aを並置した状態を示し、堤防被覆シート40は堤防Bから河川側の斜面に垂下するように設置し、浸食防止シート50は簡易堤防の背面部側の堤防を被覆するように設置する。
【0019】
このように設置すれば、低位の越水は、簡易堤防Aの支承板20にて受け止められ、越水を防ぐことができる。その際、支承板20の下端の通水口20bから水が侵入すると共に簡易堤防Aの内部の空気が排出されるので、簡易堤防Aの浮き上がりが防止できる。また、簡易堤防A内に侵入した水により簡易堤防Aの自重が増加するので、摩擦抵抗が上がってズレることがより一層防止できる。
【0020】
高位の越水は、支承板20が水没している状態で覆い板10にて受け止められ、越水を防ぐことができる。その際は支承板20に水圧がかかり、この水圧は閉塞板30により受け止められ、簡易堤防Aが水圧により破損することを防止する。また、その水圧は支承板20を加圧するので、簡易堤防Aがズレたり浮き上がったりするのを防止できる。しかも上下の通水口20a、20bから簡易堤防A内水が侵入して充満し、内部の空気が排出されると共に簡易堤防Aの自重が増加するので、簡易堤防Aの浮き上がりが防止でき、また、摩擦抵抗が上がって簡易堤防Aのズレがより一層防止でき、安定して高位の越水を防ぐことができる。
【0021】
堤防被覆シート40は、低位の越水時及び高位の越水時のいずれの場合でも、水没して水圧がかかって固定される状態となるので、簡易堤防Aがずれるのを防ぐ役目を果たす。また、堤防Bの上面に凹凸があり、堤防Bの上面と簡易堤防Aとの間に隙間が生じていても、この堤防被覆シート40により隙間が覆い隠されるので、堤防Bの上面と簡易堤防Aとの隙間からの越水を防止することができる。
【0022】
なお、下端の通水口20bは、水が引いたときには、この通水口20bから水が排出されるので、簡易堤防Aを折り畳んで片付ける際に便利である。
【0023】
浸食防止シート50は、簡易堤防Aを水が越水しても、当該水により簡易堤防Aの背面部の土が浸食されるのを防止することができるので、堤防決壊を防止する機能を果たす。
【0024】
このように構成した本実施例に係る簡易堤防Aは、覆い板10、支承板20、閉塞板30及び堤防被覆シート40にて構成されるので、部材が少ないことにより軽量であるため運搬が容易であり、また、構造が簡単であるため組立が極めて簡単であり、短時間で運搬及び組立ができるので、緊急時に十分対応できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る簡易堤防は、河川・湖沼あるいは貯水池などの水域における増水時における堤防の嵩上げ、道路冠水時の水侵入防止壁に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
A……簡易堤防
B……堤防
10……覆い板
20……支承板
20a……支承板上端の通水口
20b……支承板下端の通水口
30……閉塞板
40……堤防被覆シート
50……浸食防止シート
h……蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の覆い板と、該覆い板の略中間高さの位置からヒンジ結合にて連設された支承板とからなり、
支承板側が水域側に向けて堤防上に並置されるものであることを特徴とする可搬型折りたたみ式簡易堤防。
【請求項2】
覆い板が支承板に支承された設置状態において覆い板と支承板との左右端により形成される下部の三角状領域を閉塞する閉塞片を設けたことを特徴とする請求項1に記載の可搬型折りたたみ式簡易堤防。
【請求項3】
覆い板下端に、覆い板が支承板に支承された設置状態において支承板の下を通過する長さを有する堤防被覆シートを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型折りたたみ式簡易堤防。
【請求項4】
覆い板下端に、覆い板が支承板に支承された設置状態において支承板が位置するのとは逆側に延出する浸食防止片を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可搬型折りたたみ式簡易堤防。
【請求項5】
支承板において、その少なくとも上下端に通水口を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可搬型折りたたみ式簡易堤防。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate