説明

可搬記録媒体、可搬記録媒体の制御方法、及び可搬記録媒体の制御プログラム

【課題】日本国内でデファクトスタンダードとして普及しているJIS X 6319−4等を含めた各種の非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースを判別することのできる可搬記録媒体、可搬記録媒体の制御方法、及び可搬記録媒体の制御プログラムを提供する。
【解決手段】無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信するアンテナ回路11と、前記アンテナ回路が検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納するメモリ16と、前記メモリに格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別する信号処理部15と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬記録媒体、可搬記録媒体の制御方法、及び可搬記録媒体の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードや非接触インタフェースを具備した携帯端末などの可搬記録媒体に関し、複数の通信方式(非接触通信インタフェース)に関する標準化の進行に伴い、標準仕様に即した複数種類の可搬記録媒体が開発されてきている。従来、可搬記録媒体は、対応する非接触通信インタフェースを備えた非接触カードリーダライタとの組み合わせで開発されることが多い。そのため、ある非接触通信インタフェースを備えた可搬記録媒体は、それとは異なる非接触通信インタフェースを備えた非接触カードリーダライタとは相互に通信できず、昨今開発が進んでいる複数の非接触通信インタフェースを備えた可搬記録媒体の利用において、非接触カードリーダライタに対応する非接触通信インタフェースを判別することが課題であった。
【0003】
これに対し、特定の非接触通信インタフェースを複数備えた可搬記録媒体において、非接触カードリーダライタから送信される信号波形に基づき、非接触カードリーダライタに対応する非接触通信インタフェースを判別する従来技術が存在する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4167120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、特定の種類の非接触通信インタフェースのみ(具体的には、ISO/IEC14443のタイプAカード及びタイプBカード用の非接触通信インタフェースの2つの非接触通信インタフェースのみ)を備えた可搬記録媒体における非接触通信インタフェースの判別方法である。したがって、例えば日本国内でデファクトスタンダードとして普及しているJIS X 6319−4等、タイプA及びタイプBカード用の非接触通信インタフェース以外の非接触通信インタフェースを判別することができなかった。
【0006】
したがって、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、日本国内でデファクトスタンダードとして普及しているJIS X 6319−4等を含めた各種の非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースを判別することのできる可搬記録媒体、可搬記録媒体の制御方法、及び可搬記録媒体の制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る可搬記録媒体は、
複数の非接触通信インタフェースを備える可搬記録媒体であって、
無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信するアンテナ回路と、
前記アンテナ回路が検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納するメモリと、
前記メモリに格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別する信号処理部と、
を有することを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る可搬記録媒体の制御方法は、
複数の非接触通信インタフェースを備える可搬記録媒体の制御方法であって、
無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信するステップと、
前記検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納するステップと、
前記格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る可搬記録媒体の制御プログラムは、
複数の非接触通信インタフェースを備える可搬記録媒体として動作するコンピュータに、
無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信する手順と、
前記検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点における物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納する手順と、
前記格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別する手順と、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明における可搬記録媒体、可搬記録媒体の制御方法、及び可搬記録媒体の制御プログラムによれば、日本国内でデファクトスタンダードとして普及しているJIS X 6319−4等を含めた各種の非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る可搬記録媒体1の構成図である。
【図2】メモリ16に格納される閾値のデータ例である。
【図3】可搬記録媒体1が非接触カードリーダライタから受信する受信信号の波形図の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る可搬記録媒体1の動作を示すフローチャートである。
【図5】所定の非接触通信インタフェースによる信号の波形と、可搬記録媒体1が計測した振幅値のタイミングを図示した概念図である。
【図6】メモリ16に格納される測定データ例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施形態に係る可搬記録媒体1のブロック図である。本発明の実施の形態に係る可搬記録媒体1は、アンテナ回路11と、クロック再生部12と、増幅回路13と、AD変換回路14と、信号処理部15と、メモリ16と、判別結果出力部17とを備える。このうち、信号処理部15及びメモリ16は、可搬記録媒体1の論理回路内に備えられる。可搬記録媒体1は、複数の非接触通信インタフェースを備えており、以下では第1の通信インタフェース、第2の通信インタフェース、及び第3の通信インタフェースを備えているものとして説明する。例えば第1の通信インタフェースはISO/IEC14443のタイプAカード用の非接触通信インタフェースであり、第2の通信インタフェースはISO/IEC14443のタイプBカード用の非接触通信インタフェースであり、第3の通信インタフェースはJIS X 6319−4用の非接触通信インタフェースであるが、これに限定されない。
【0014】
アンテナ回路11は、非接触カードリーダライタから、所定の非接触通信インタフェースにより送信された無変調波形を検知し、また、リクエスト信号を受信する。
【0015】
クロック再生部12は、可搬記録媒体1にて用いるクロックを再生する。具体的にはクロック再生部12は、非接触カードリーダライタから送信された信号によりアンテナ回路11に発生する13.56MHzの交流電圧を基にして、可搬記録媒体1にて用いるクロックを再生する。可搬記録媒体1は、当該クロックを基準にして、非接触カードリーダライタとの同期を行い、また可搬記録媒体1における各種処理のタイミングを制御する。
【0016】
増幅回路13は、アンテナ回路11が検知した無変調波形又はリクエスト信号を増幅する。AD変換回路14は、増幅回路13により増幅された無変調波形又はリクエスト信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0017】
信号処理部15は、AD変換回路14がデジタル信号に変換した無変調波形又はリクエスト信号の物理量を計測し、計測した物理量を計測データとしてメモリ16に格納する。なお当該物理量は、好ましくは振幅値である。以下、物理量は振幅値であるものとして説明するがこれに限定されない。なお、信号処理部15は、無変調波形の振幅を時々刻々と観測し、無変調波形と判断した時点における信号の振幅値をメモリ16に格納することにより、受信した信号が無変調波形又は変調波形であるかを判別することができるものとし、当該無変調波形の判別は、特許文献1に記載されている手法等を用いる。
【0018】
また信号処理部15は、メモリ16に格納した計測データ及び非接触通信インタフェース判別用の第1の閾値又は第2の閾値を取得し、メモリ16に格納した計測データに基づき所定の演算をし、第1の閾値又は第2の閾値以上であるか否かを判定する。当該判定により信号処理部15は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースを判別する。
【0019】
また信号処理部15は、カウンタ用の変数であるiを適宜設定及びインクリメントし、無変調波形又はリクエスト信号の振幅値を所定数取得する。好ましくは無変調波形又はリクエスト信号の振幅値は、当該カウンタ用の変数iにより番号が付けられ、i番目の無変調波形又はリクエスト信号の振幅値はi番目の計測データとしてメモリ16に格納される。
【0020】
メモリ16には、信号処理部15が計測した無変調波形又はリクエスト信号の振幅値の計測データと、非接触通信インタフェース判別用の第1の閾値及び第2の閾値と、カウンタ用の変数であるiとが格納される。
【0021】
判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースの判別結果を出力する。出力結果は、好ましくは図示しないSDカード、フラッシュメモリ等のメディアに記録する。可搬記録媒体1は、当該出力結果に基づき、非接触カードリーダライタに対応する非接触通信インタフェースに自律的に切り替えて非接触カードリーダライタと通信を行う。
【0022】
図2は、メモリ16に格納される非接触通信インタフェース判別用の閾値データを示す。図2には、第1の閾値及び第2の閾値が格納され、夫々閾値は、“1.75”及び“0.05”である。該閾値データは、非接触通信インタフェース判別用に、非接触通信インタフェース毎に設けられる。
【0023】
図3は、可搬記録媒体1が検知する無変調波形及びリクエスト信号の先頭部分の波形例を示す。図3の波形は、表記の都合上、波形の包絡線を描いたものであるが、実際には、搬送周波数13.56MHzのキャリアで満たされている。図3は、無変調波形及びリクエスト信号の非接触通信インタフェースを3種類、それぞれ図3(a)〜図3(c)に示している。本発明の一実施形態に係る可搬記録媒体1は、概略として図3(a)〜図3(c)に示される無変調波形及びリクエスト信号の先頭部分の波形の特徴点を示す物理量に基づき、非接触通信インタフェースを判別する。
【0024】
図3(a)は、第1の通信インタフェースによる波形の一例である。例えばISO/IEC14443により規定されたタイプAカード用の非接触通信インタフェースの波形は、該波形により表される。図3(a)の横軸は時間であり縦軸は信号の振幅(信号の電圧値)を示す。
【0025】
図3(a)に示すように当該波形には、はじめに一定時間、無変調波形が存在する。無変調波形の振幅は一定値(Hi)である。無変調波形に続いて、リクエスト信号が存在する。リクエスト信号は、非接触カードリーダライタが、可搬記録媒体1の存在を検出するための信号である。図3(a)に示すリクエスト信号の先頭部分は、スタートビットと、ビット「0」と、ビット「1」と、ビット「1」と、ビット「0」とを備える。スタートビットは、32個の低振幅値(Lo)及びそれに続く96個の高振幅値(Hi)により構成される。なお具体的には、図3(a)における低振幅値の値は0であり、すなわち該期間はポーズの期間である。なお1個とは、時間の一単位を示しており、好ましくは0.0737μ秒(1/13.56MHz)である。スタートビットは128個の時間単位の信号から構成されており、合計で約94μ秒間の信号である。同様にビット「0」及びビット「1」も、合計で約94μ秒間の信号である。
【0026】
上記スタートビットに続いて、図3(a)に示すリクエスト信号の先頭部分には、ビット「0」が存在する。ビット「0」は、スタートビットと同様に、32個の低振幅値(Lo)及びそれに続く96個の高振幅値(Hi)により構成される。
【0027】
上記ビット「0」に続いて、図3(a)に示すリクエスト信号の先頭部分には、ビット「1」が2つ存在する。はじめの2つのビット「1」は、64個の高振幅値(Hi)と、それに続く32個の低振幅値(Lo)と、それに続く32個の高振幅値(Hi)により構成される。2つのビット「1」に続いて、ビット「0」が存在する。当該ビット「0」は、スタートビット後のビット「0」とは異なり、128個の高振幅値(Hi)により構成される。
【0028】
図3(b)は、第2の通信インタフェースによる波形の一例である。例えばISO/IEC14443により規定されたタイプBカード用の非接触通信インタフェースの波形は、該波形により表される。図3(a)と同様、図3(b)の横軸は時間であり縦軸は信号の振幅(信号の電圧値)を示す。
【0029】
図3(b)に示すように、当該波形には、はじめに一定時間、無変調波形が存在する。無変調波形の振幅は一定値(Hi)である。無変調波形に続いて、リクエスト信号が存在する。図3(b)に示すリクエスト信号の先頭部分は、SOF信号により構成される。SOF信号は、低振幅値(Lo)のみにより構成されている。具体的には、図3(b)における低振幅値の値は、例えば、無変調波形の振幅が3.5[V]のとき、3.15[V]である。当該値は無変調波形の振幅の約90%である。
【0030】
図3(c)は、第3の通信インタフェースによる波形の一例である。例えばJIS X 6319−4用の非接触通信インタフェースによる波形は、該波形により表される。図3(a)と同様、図3(c)の横軸は時間であり縦軸は信号の振幅(信号の電圧値)を示す。
【0031】
図3(c)に示すように、当該波形は、はじめに一定時間、無変調波形が存在する。無変調波形の振幅は一定値(Hi)である。無変調波形に続いて、リクエスト信号が存在する。図3(c)に示すリクエスト信号の先頭部分は、10個のビット「0」を備える。
【0032】
図3(c)のビット「0」は32個の低振幅値(Lo)及びそれに続く32個の高振幅値(Hi)により構成される。図3(c)の1ビットは、64個の時間単位の信号から構成されており、約47μ秒間の信号である。なお具体的には、図3(c)における低振幅値の値は、例えば、無変調波形の振幅が3.5[V]のとき、3.15[V]である。当該値は無変調波形の振幅の約90%である。
【0033】
次に、本発明の一実施形態に係る可搬記録媒体1について、図4に示すフローチャートによりその動作を説明する。
【0034】
はじめに、信号処理部15は、非接触カードリーダライタから送信された無変調波形の振幅値を計測する。そして信号処理部15は、計測した振幅値をメモリ16に格納する(ステップS1)。具体的には、アンテナ回路11が、非接触カードリーダライタから送信された無変調波形を検知し、続いて増幅回路13が当該波形を増幅し、さらにAD変換回路14が当該信号をアナログデータからデジタルデータに変換する。そして信号処理部15は、当該デジタルデータに基づき、無変調波形の振幅値を計測し、計測データとしてメモリ16に格納する。また信号処理部15は、計測した無変調波形のデータに0.5を乗じた値を第1の閾値としてメモリ16に格納する。図2に示す閾値データのうち、第1の閾値はこのようにして格納されたデータであり、図2では、無変調波形の振幅値が3.50[V]であった場合の例を示している。なお当該無変調波形の振幅値は、可搬記録媒体1における電源電圧等、システム条件によって異なる値をとり得る。
【0035】
次に信号処理部15は、無変調波形に後続する、リクエスト信号の信号送出開始直後の変調波形の信号の振幅値を計測し、計測した振幅値をメモリ16に格納する(ステップS2)。なおここでは、リクエスト信号の信号送出開始直後とは、リクエスト信号の信号送出開始から約23.5μ秒以内の期間を意味する。当該振幅値は、非接触通信インタフェースの判別のための最初の特徴点を示す物理量となる。具体的には、アンテナ回路11が、非接触カードリーダライタから送信された信号を受信し、続いて増幅回路13が当該信号を増幅し、さらにAD変換回路14が当該信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして信号処理部15は、当該デジタル信号に基づき、変調波形の信号の振幅値を計測する。
【0036】
続いて信号処理部15は、メモリ16から、ステップS2で格納した変調波形の振幅値と、ステップS1で格納した第1の閾値とを取得する。そして信号処理部15は、変調波形の振幅値が、第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS3)。第1の閾値未満であればステップS4に進み、第1の閾値以上であればステップS5に進む。
【0037】
ステップS3において変調波形の振幅値が第1の閾値未満であった場合、判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースが第1のインタフェースであると判別して判別結果を出力し(ステップS4)、処理が終了する。該判別結果は、好ましくは図示しないSDカード、フラッシュメモリ等のメディアに記録する。そして可搬記録媒体1は、当該判別結果に基づき、非接触カードリーダライタに対応する第1の通信インタフェースに自律的に切り替えて非接触カードリーダライタと通信を行う。
【0038】
ステップS3において変調波形の振幅値が第1の閾値以上であった場合、信号処理部15は、後続する変調波形であるリクエスト信号の振幅値を(N+1)回計測し、計測した振幅値をメモリ16に格納する。以下、Nは10であるとして説明するがこれに限られず、Nは10より多くても、少なくてもよい。複数回計測する間隔(以下、サンプリング間隔という。)は、クロック再生部12により再生されたクロックに基づき信号処理部15が制御する。サンプリング間隔は、好ましくは23.5μ秒である。なおサンプリング間隔は、各非接触通信インタフェースの中で、HiとLoの時間変動が発生する間隔が最も短い非接触通信インタフェースの間隔に基づき定める。図3(a)〜図3(c)に示す各非接触通信インタフェースの信号波形によると、HiとLoの時間変動が発生する間隔が、図3(c)において最も短く、23.5μ秒であるため、サンプリング間隔は当該時間間隔に基づき定めることで最も効率よく処理できる。なお、当該複数の振幅値は、非接触通信インタフェースの判別のための特徴点を示す物理量となる。
【0039】
リクエスト信号の振幅値を複数回計測するために、まず信号処理部15は、カウンタ用の変数のiを2に設定する(ステップS5)。続いて信号処理部15は、i番目、すなわち2番目のリクエスト信号の振幅値を計測し、計測した振幅値をメモリ16に格納する(ステップS6)。具体的には、アンテナ回路11が、非接触カードリーダライタから送信された信号を受信し、続いて増幅回路13が当該信号を増幅し、さらにAD変換回路14が当該信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして信号処理部15は、当該デジタル信号に基づき、リクエスト信号の振幅値を計測する。
【0040】
続いて信号処理部15は、変数iがN+1、すなわち11以上であるか否かを判定する(ステップS7)。現時点ではiが2であるため、ステップS8に進む。
【0041】
続いて信号処理部15は、変数iの値をインクリメント、すなわちiの値に1を加算する(ステップS8)。iは2であるため、インクリメントの結果、iは3となる。
【0042】
このようにiの値がN+1、すなわち11になるまでステップS6からステップS8を繰り返すことにより、信号処理部15は、2番目〜11番目のリクエスト信号の振幅値を計測し、計測した振幅値を計測データとしてメモリ16に格納する。
【0043】
ステップS7において信号処理部15が、iの値がN+1以上(すなわち11以上)であると判定した場合、信号処理部15は、リクエスト信号の振幅値のうち、時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値を算出する(ステップS9)。そして信号処理部15は、算出した時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値をメモリ16に格納する。
【0044】
続いて信号処理部15は以下の数式1における左辺の値Xを算出し、値Xが第2の閾値以上か否かを判定する(ステップS10)。
【0045】
【数1】

【0046】
右辺のNは、本事例の場合、前述のように10である。また右辺の“計測データn”は、n番目の計測データを表す。
【0047】
すなわち信号処理部15は、数式1により、時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値から、該差分の絶対値の総和を算出し、該総和を無変調波形の振幅値をN倍した値により除算した値Xを算出する。そして信号処理部15は、値Xが、第2の閾値以上か否かを判定する。
【0048】
ステップS10の判定の結果、値Xが第2の閾値未満である場合には、判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースが第2のインタフェースであると判別して判別結果を出力し(ステップS11)、処理が終了する。該判別結果は、好ましくは図示しないSDカード、フラッシュメモリ等のメディアに記録する。そして可搬記録媒体1は、当該判別結果に基づき、非接触カードリーダライタに対応する第2の通信インタフェースに自律的に切り替えて非接触カードリーダライタと通信を行う。なお、可搬記録媒体1は、当該出力結果に基づき、非接触カードリーダライタと通信を行う。
【0049】
ステップS10の判定の結果、値Xが第2の閾値未満である場合には、判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースが第3のインタフェースであると判別して判別結果を出力し(ステップS12)、処理が終了する。該判別結果は、好ましくは図示しないSDカード、フラッシュメモリ等のメディアに記録する。そして可搬記録媒体1は、当該判別結果に基づき、非接触カードリーダライタに対応する第3の通信インタフェースに自律的に切り替えて非接触カードリーダライタと通信を行う。なお、可搬記録媒体1は、当該出力結果に基づき、非接触カードリーダライタと通信を行う。
【0050】
以下、具体的に図3(a)〜図3(c)に示す各非接触通信インタフェースにおける信号を受信した場合の動作について、図5及び図6を用いて詳細に説明する。
【0051】
(第1の通信インタフェースによる信号を受信した場合の動作例)
図5(a)は、第1の通信インタフェースにより送信された波形と、可搬記録媒体1が上記の動作によって計測する振幅値のタイミングを図示した概念図である。図5(a)の波形は、表記の都合上、波形の包絡線を描いたものであるが、実際には、搬送周波数13.56MHzのキャリアで満たされている。図5(a)に示す概念図では、信号処理部15が、1番目の計測データ(以下、計測データ1という。)を取得していることを図示している。
【0052】
可搬記録媒体1が図5(a)に示す信号を受信した場合、上記動作に基づき信号処理部15はメモリ16に、図6(a)に示す計測データを格納する。具体的には図5(a)に示す信号を可搬記録媒体1が受信した場合、信号処理部15は、ステップS1において無変調波形の振幅値を格納する。また、信号処理部15は、ステップS2において変調波形の振幅値を格納する。信号処理部15がメモリ16に格納した無変調波形の計測データ及び変調波形の計測データ1はそれぞれ、3.50[V]及び0.00[V]である。
【0053】
続いて信号処理部15は、ステップS3において、変調波形の振幅値が0.00であることから第1の閾値未満、すなわち1.75未満であると判定する。
【0054】
そしてステップS4において、判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースは第1のインタフェースであると判別した結果を出力する。
【0055】
なお、上記の例では信号処理部15は後続する変調波形の計測データを計測せず、該計測データをメモリ16に格納しない。図6(a)ではメモリ16に当該データを格納していないことを斜線により示している。
【0056】
(第2の通信インタフェースによる信号を受信した場合の動作例)
図5(b)は、図3(b)に示す第2の通信インタフェースにより送信された波形と、可搬記録媒体1が上記の動作によって計測する振幅値のタイミングを図示した概念図である。図5(b)の波形は、表記の都合上、波形の包絡線を描いたものであるが、実際には、搬送周波数13.56MHzのキャリアで満たされている。図5(b)に示す概念図においては、信号処理部15が、1番目の計測データから11番目の計測データ(以下、計測データ1〜計測データ11という)を取得していることを図示している。
【0057】
可搬記録媒体1が図5(b)に示す信号を受信した場合、上記動作に基づき信号処理部15はメモリ16に、図6(b)に示す計測データを格納する。具体的には図5(b)に示す信号を可搬記録媒体1が受信した場合、信号処理部15は、ステップS1において無変調波形の振幅値を格納する。また、信号処理部15は、ステップS2において変調波形の振幅値を格納する。信号処理部15がメモリ16に格納した無変調波形の計測データ及び変調波形の計測データ1はそれぞれ、3.50[V]及び3.15[V]である。
【0058】
続いて信号処理部15は、ステップS3において、変調波形の振幅値が3.15であることから第1の閾値以上であると判定する。そしてステップS5に進み、信号処理部15は後続する変調波形であるリクエスト信号の計測データを計測する。
【0059】
信号処理部15は、続くステップS5〜ステップS7において、後続する複数のリクエスト信号の振幅値を計測し、メモリ16に順次格納する。信号処理部15がメモリ16に格納したリクエスト信号の計測データ2〜計測データ11はそれぞれ、3.15[V]、3.15[V]、3.15[V]、3.08[V]、3.08[V]、3.08[V]、3.15[V]、3.15[V]、3.22[V]、3.22[V]である。
【0060】
続いて信号処理部15は、ステップS9において、リクエスト信号の振幅値のうち、時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値を算出し、当該値をメモリ16に格納する。信号処理部15がメモリ16に格納した差分の絶対値はそれぞれ、0.00、0.00、0.00、0.07、0.00、0.00、0.07、0.00、0.07、0.00である。
【0061】
続いて信号処理部15は、ステップS10において、数式1に基づき、値Xを算出する。具体的には信号処理部15は、時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値から、該差分の絶対値の総和である0.21を算出する。そして信号処理部15は、該総和を、無変調波形の振幅値のN倍(10倍、この場合は35)により除算して値Xを算出する。そして信号処理部15は、当該値Xが0.006であり、第2の閾値未満であると判定する。
【0062】
そしてステップS11において、判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースは第2のインタフェースであると判別した結果を出力する。
【0063】
(第3の通信インタフェースによる信号を受信した場合の動作例)
図5(c)は、図3(c)に示す第3の通信インタフェースにより送信された信号の波形と、可搬記録媒体1が上記の動作によって計測した振幅値のタイミングを図示した概念図である。図5(c)の波形は、表記の都合上、波形の包絡線を描いたものであるが、実際には、搬送周波数13.56MHzのキャリアで満たされている。図5(c)に示す概念図においては、信号処理部15が、計測データ1〜計測データ11を取得していることを図示している。
【0064】
可搬記録媒体1が図5(c)に示す信号を受信した場合、上記動作に基づき信号処理部15はメモリ16に、図6(c)に示す計測データを格納する。具体的には図5(c)に示す信号を可搬記録媒体1が受信した場合、信号処理部15は、ステップS1において無変調波形の振幅値を格納する。また、信号処理部15は、ステップS2において変調波形の振幅値を格納する。信号処理部15がメモリ16に格納した無変調波形の計測データ及び変調波形の計測データ1はそれぞれ、3.50[V]及び3.15[V]である。
【0065】
続いて信号処理部15は、ステップS3において、変調波形の振幅値が3.15であることから第1の閾値以上であると判定する。そしてステップS5に進み、信号処理部15は後続する変調波形の計測データを計測する。
【0066】
信号処理部15は、続くステップS5〜ステップS7において、後続する複数の変調波形の振幅値を計測し、メモリ16に順次格納する。信号処理部15がメモリ16に格納した変調波形の計測データ2〜計測データ11はそれぞれ、3.50[V]、3.15[V]、3.50[V]、3.15[V]、3.50[V]、3.15[V]、3.43[V]、3.15[V]、3.50[V]、3.15[V]である。
【0067】
続いて信号処理部15は、ステップS9において、変調波形の振幅値のうち、時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値を算出し、当該値をメモリ16に格納する。信号処理部15がメモリ16に格納した差分の絶対値はそれぞれ、0.35、0.35、0.35、0.35、0.35、0.35、0.28、0.28、0.35、0.35である。
【0068】
続いて信号処理部15は、ステップS10において、数式1に基づき、値Xの値を算出する。具体的には信号処理部15は、時間的に隣接する振幅値の差分の絶対値から、該差分の絶対値の総和である3.36を算出する。そして信号処理部15は、該総和を、無変調波形の振幅値のN倍(10倍、この場合は35)により除算し、値Xを算出する。そして信号処理部15は、当該値Xが0.096であり、第2の閾値以上であると判定する。
【0069】
そしてステップS12において、判別結果出力部17は、非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースは第3のインタフェースであると判別した結果を出力する。
【0070】
このように本発明によれば、信号処理部15が、メモリ16に格納された無変調波形の振幅と、第1の閾値と、リクエスト信号送出直後の変調信号の振幅値により第1の通信インタフェースを判別することができ、かつ、メモリ16に格納された無変調波形の振幅と、第2の閾値と、前記リクエスト信号送出開始後において所定のサンプリングレートで取得した複数のリクエスト信号の振幅値に基づき第2の通信インタフェース及び第3の通信インタフェースを判別することができるため、日本国内でデファクトスタンダードとして普及しているJIS X 6319−4等を含めた各種の非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースを判別することができる。
【0071】
特に、高振幅値(Hi)と低振幅値(Lo)の差分が大きい図3(a)に示す第1通信インタフェースに係る受信信号の場合、信号処理部15は、リクエスト信号送出時点から起算して最初の振幅値の計測の時点で非接触通信インタフェースと判定するため、23.5μ秒という短時間で高速判定ができる。
【0072】
また、本発明によれば、信号処理部15がステップS5〜ステップS8により複数の変調波形の振幅値を計測し、当該複数の変調波形の振幅値に基づき非接触カードリーダライタの非接触通信インタフェースの判別をしているため、ASK10%のように高振幅値(Hi)と低振幅値(Lo)の区別が困難(特に、可搬記録媒体1又は非接触カードリーダライタを動かして使う場合には信号の振幅が時々刻々と変化するため顕著な問題となる)な場合であっても、より精度良く安定して非接触通信インタフェースの判別をすることができる。
【0073】
なお数式1では差分の絶対値を算出したがこれに限らず、差分の2乗の和でもよい。この場合、第2の閾値は適宜調整する。
【0074】
ここで、可搬記録媒体1として機能させるために、コンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、可搬記録媒体1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータの中央演算処理装置(CPU)によってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0075】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 可搬記録媒体
11 アンテナ回路
12 クロック再生部
13 増幅回路
14 AD変換回路
15 信号処理部
16 メモリ
17 判別結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非接触通信インタフェースを備える可搬記録媒体であって、
無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信するアンテナ回路と、
前記アンテナ回路が検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納するメモリと、
前記メモリに格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別する信号処理部と、
を有することを特徴とする可搬記録媒体。
【請求項2】
前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量は、前記リクエスト信号送出開始直後における変調波形の物理量であることを特徴とする請求項1に記載の可搬記録媒体。
【請求項3】
前記メモリは、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量として、前記リクエスト信号送出開始後において所定のサンプリングレートで取得した複数の変調波形の特徴点を示す物理量を格納し、
前記信号処理部は、前記複数の変調波形の特徴点を示す物理量に基づき、隣接する前記変調波形の特徴点を示す物理量の差分を算出し、該差分に基づいて、非接触インタフェースの種別を判別することを特徴とする請求項1に記載の可搬記録媒体。
【請求項4】
複数の非接触通信インタフェースを備える可搬記録媒体の制御方法であって、
無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信するステップと、
前記検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納するステップと、
前記格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別するステップと、
を含む可搬記録媒体の制御方法。
【請求項5】
複数の非接触通信インタフェースを備える可搬記録媒体として動作するコンピュータに、
無変調波形を検知し、該無変調波形に後続するリクエスト信号を受信する手順と、
前記検知した前記無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の変調波形の特徴点における物理量と、前記複数の非接触通信インタフェース毎に設定された複数の閾値とを格納する手順と、
前記格納された無変調波形の物理量と、前記リクエスト信号送出開始後の前記変調波形の特徴点を示す物理量と、前記複数の閾値とに基づき、前記複数の非接触インタフェースから所定の非接触インタフェースを判別する手順と、
を実行させるための可搬記録媒体の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54678(P2013−54678A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194110(P2011−194110)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】