説明

可撓性の弁座を有したトラニオン搭載ボール弁

【課題】弁の最大定格圧力と等しい差圧に相当する状況にあっても、ボールの両側に対するシール能力を保証することができるトラニオン搭載ボール弁を提供する。
【解決手段】本発明のトラニオン搭載ボール弁においては、弁座リング36,38の少なくとも一方の頭部は、長軸Aに対して径方向に向けられた少なくとも1つの環状溝66を有する。環状溝66にはバックアップリング70が収容されている。バックアップリング70は、弁座リング36,38とバックアップリング70との間に長軸Aと平行な弾性力を与えるように設けられた弾性の予負荷素子に結合されている。弾性予負荷素子は、バックアップリング70の対向する2つの角セクタに対して作用する。角セクタのそれぞれは、回転軸Bに直交するバックアップリング70の直径軸に関して対称である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプライン用のトラニオン搭載ボール弁(trunnion-mounted ball valve)に関する。
【背景技術】
【0002】
トラニオン搭載ボール弁において、ボールは、ボールに作用する流体圧によって発生する側方荷重(side loads)が軸受によって吸収されるように、弁体に回転可能に接続される。2つの独立したフロート弁座リングは、弁の長軸に沿って移動自在である。弁座リングは、弁の二方向の密閉性(bi-directional tightness)を保証するそれぞれの弁座を有している。低圧においては、弁座シール作用は、弁座リングに作用するバネの信頼性によって達成される。圧力が増加するにつれて、流体圧が弁座リングをボールに向けて押圧することになる。
【0003】
トラニオン搭載ボール弁の設計および製造における主たる問題の1つは、弁が差圧にさらされたとき、両方の弁座のシール能力を保証することである。最も重大な状況は、弁の最大定格圧力と等しい差圧に弁がさらされる場合である。この状況においてボールは、加圧側に加わる圧力で変形をし、ボールの変形のせいで非加圧側の弁座がシール能力を失う傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許出願公開第2105010号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0120556号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題を克服するトラニオン搭載ボール弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載のトラニオン搭載ボール弁によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るトラニオン搭載ボール弁の分解斜視図。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図。
【図3】図2中の矢印IIIによって示される詳細の拡大図。
【図4】図2中の矢印IVによって示される弁座リングの部分断面斜視図。
【図5】図4中の矢印Vによって示される方向における正面図。
【図6】図5の線VI−VIに沿った断面図。
【図7】図6中の矢印VIIによって示される詳細の拡大図。
【図8】図6中の矢印VIIIによって示される詳細の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を純粋に非限定的な例として与えられる添付の図面を参照して説明する。
図1および図2を参照すると、本発明のトラニオン搭載ボール弁は、参照符号10によって示されている。弁10は、中心体14および2つの管状部分16を有する弁体12を備えており、管状部分16は、中心体14の両側に設置されてボルト18により中心体14に固定されている。中心体14は空洞20を有している。管状部分16はそれぞれダクト22を備えており、ダクト22は、共通の長軸Aと、空洞20に対向するそれぞれの内側末端とを有している。
【0009】
ボール24は、中心体14の空洞20内に収容されている。ボール24は2つの一体型トラニオン26を有しており、トラニオン26は、弁体12に固定されているそれぞれの支持体28と回転可能に係合している。ボール24は、長軸Aに直交する回転軸Bの周りで弁体12に対して回転可能である。ステム30は、中心体14の穴32を通って回転軸Bと同軸状に延びており、一方のトラニオン26に固定されている。ボール24は、ダクト22の直径とほぼ等しい直径の貫通孔34を有している。ボール24は、貫通孔34がダクト22に対して整列する開位置と、貫通孔34がダクト22に対して横切る閉位置との間において、回転軸Bの周りで回転可能である。
【0010】
弁10は、ダクト22の直径以上の内径をそれぞれ有する第1の弁座リング36および第2の弁座リング38を備えている。弁座リング36,38は、長軸Aに沿って移動自在であり、ボール24の両側に当接する弁座40がそれぞれに設けられている。
【0011】
図3および図4を参照すると、第1の弁座リング36は、案内部44および頭部46を備えた金属材料からなる一体物である。案内部44は、各管状部分16の対応する案内面と摺動可能に係合する円筒状の案内面48を有している。
【0012】
弁座リング36の円筒状の外面52にはシール要素50が取り付けられている。シール要素50は、弁座リング36の円筒状の外面52および管状部分16の円筒状の内面56に対してシール接触を確立する2つのOリング54を担持している。弁座リング36の径方向面62,64と管状部分16の間には、第1の組の圧縮バネ58および第2の組の圧縮バネ60が設けられている。圧縮バネ58,60は、弁座リング36をボール24に向けて付勢し、弁座40をボール24の球面に接触させた状態に保つ。ダクト22内の流体圧は、弁座リング36をボール24に向けて付勢する力を増大させる。
【0013】
弁座40は、頭部46の表面に一体的に形成されている。したがって、弁座リング36とボール24の間のシール接触は金属同士のものとなる。
弁座リング36の頭部46は第1の環状溝66および第2の環状溝68を有しており、環状溝66,68は、長軸Aに対して径方向に向けられており、かつ長軸Aの方向において互いに離間している。各環状溝66,68は、閉鎖端および開口端を有している。環状溝66,68の開口端はそれぞれ反対方向を向いている。図示した実施形態においては、第1の環状溝66(弁座40に近い方のもの)は、その径方向内側末端において開口しており、第2の環状溝68(弁座40から遠い方のもの)は、その径方向外側末端において開口している。
【0014】
環状溝66,68の径方向深さは、長軸Aに平行で弁座40を通る線が環状溝66,68の両方と交差するようにされている。各環状溝66,68は、半円の環状壁によってその閉鎖端において互いに接続された2つの平行で平坦な径方向壁を有している。
【0015】
図4〜図8を参照すると、弁座リング36は、各環状溝66,68に挿入される第1のバックアップリング70および第2のバックアップリング72を備える。特に図7および図8に示すように、径方向においてバックアップリング70,72は、実質的に各環状溝66,68の深さ全体に延びている。バックアップリング70,72の厚みは、各環状溝66,68の厚みよりもわずかに小さく、その結果、環状溝66,68の径方向面とバックアップリング70,72の対応する径方向面との間には長手方向において小さい遊びが存在する。各バックアップリング70,72は、各環状溝66,68にバックアップリング70,72を組み付けることができるようにするために、2つ以上のセクタ(sector)によって形成されている。好ましくは、各環状溝66,68の閉鎖端と各バックアップリング70,72の内側末端との間には、第1のOリング74および第2のOリング76が介在されている。第1の環状溝66の開口端に対応して金属保持リング80が取り付けられていることが好ましい。
【0016】
弁座リング36は、弁座リング36とバックアップリング72との間に長軸Aと平行な弾性力を与えるように設けられた弾性の予負荷(プレロード)素子82を備えている。弾性予負荷素子82は複数の圧縮バネ84を備えており、圧縮バネ84は、環状溝68内に開けられて長軸Aと平行に向けられた各穴86に挿入されている。穴86は、周方向に間隔をおいて配置されている。各圧縮バネ84は好ましくは、バックアップリング72に直接に当接する第1の端部と、各穴86のねじ部分と係合するネジ88に当接する第2の端部とを有するらせんバネによって構成されている。
【0017】
図5を参照すると、弾性予負荷素子82は、回転軸Bに直交するバックアップリング72の直径軸D1に関して対称なバックアップリング72の対向する2つの角セクタ(angular sector)αに対して主に、好ましくはもっぱらそれのみに対して作用する。2つのセクタαのそれぞれの角度範囲は、好ましくは60°〜90°である。圧縮バネ84は、2つのセクタαの角度方向において等間隔で配置されている。バネ84によって与えられる弾性力は、各ネジ88を締めるか緩めることによって調整することができる。
【0018】
図5および図8を参照すると、弁座リング36は複数の位置決めネジ90を備えており、各位置決めネジ90は、バックアップリング72の各位置決め穴94に係合するテーパ状の端部92を有している。位置決めネジ90は、回転軸Bと平行なバックアップリング72の直径軸D2に近接して配置されている。位置決めネジ90は、長軸Aと平行に延びる頭部46の各ネジ穴96に係合する。
【0019】
図2を参照すると、第2の弁座リング38は、弁座リング36について簡略化した構造を有していてもよい。図2に示す例において、第2の弁座リング38は、環状溝66を一つだけしか備えていない。好ましいシールの方向がわからない場合には、第1の弁座リング36の場合と同様、第2の弁座リング38にも2つの環状溝を設けてもよい。
【0020】
それぞれバックアップリング70,72を有した2つの環状溝66,68を弁座リング36または38に設ける場合には、弾性予負荷素子82を一方または両方のバックアップリング70,72に結合させてもよい。
【0021】
弁が差圧にさらされたときには、より低い圧力にさらされているボールの側部が、圧力の高い側に作用する力の働きで変形する。圧力差が弁の最大定格圧力と等しい場合には、低圧側のボールの変形は相当なものとなる。差圧下におけるボールの変形を分析したところ、回転軸Bに直交するボールの直径に関して対称な2つのセクタにボールのより大きな変形が集中することがわかった。本発明に係る弾性予負荷素子82は、差圧条件下でより大きな変形を受けるボール24の領域において弁座40の接触圧を高めるように設計されている。
【0022】
弁座リング36の頭部46に2つの環状溝66,68を設けることによって、弁座40により大きな可撓性が与えられる。したがって、弁座40は、ボールが差圧条件下において変形した場合に、ボールとのシール接触を維持することができる。弾性予負荷素子82は、最大に変形するボールの領域における弁座40の接触を改善するものである。
【0023】
本発明は、弁の最大定格圧力と等しい差圧に相当する最も重大な状況にあっても、ボール24の両側に対するシール能力を保証することができるという効果を有する。
【符号の説明】
【0024】
12:弁体、14:中心体、16:管状部分、20:空洞、22:ダクト、24:ボール、34:貫通孔、36,38:弁座リング、40:弁座、44:案内部、46:頭部、66,68:環状溝、70,72:バックアップリング、82:弾性予負荷素子、84:圧縮バネ、86:穴、88:ネジ、90:位置決めネジ、A:長軸、B:回転軸、D1:直径軸、α:角セクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心体(14)および対向する2つの管状部分(16)を備えた弁体(12)であって、中心体(14)は空洞(20)を有し、管状部分(16)はそれぞれダクト(22)を備え、ダクト(22)は、共通の長軸(A)と、空洞(20)に対向するそれぞれの内側末端とを有することと、
弁体(12)に回転可能に接続されたトラニオン搭載ボール(24)であって、前記ボール(24)は、開位置と閉位置の間において前記長軸(A)に直交する回転軸(B)の周りで回転可能であり、ボール(24)は貫通孔(34)を有し、貫通孔(34)は、前記開位置においては前記ダクト(22)に対して整列し、前記閉位置においてはダクト(22)に対して横切ることと、
第1および第2の弁座リング(36,38)であって、各弁座リング(36,38)は、前記長軸(A)の方向において各管状部分(16)と摺動可能に係合する案内部(44)と、弁座(40)を有する頭部(46)とを備え、第1および第2の弁座リング(36,38)の弁座(40)は、前記ボール(24)の両側に当接することと
からなるトラニオン搭載ボール弁において、
前記弁座リング(36,38)の少なくとも一方の頭部(46)は、前記長軸(A)に対して径方向に向けられた少なくとも1つの環状溝(66,68)を有し、環状溝(66,68)にはバックアップリング(70,72)が収容されており、バックアップリング(70,72)は、弁座リング(36,38)とバックアップリング(70,72)との間に前記長軸(A)と平行な弾性力を与えるように設けられた弾性の予負荷素子(82)に結合されており、弾性予負荷素子(82)は、バックアップリング(72)の対向する2つの角セクタ(α)に対して作用し、前記角セクタ(α)のそれぞれは、前記回転軸(B)に直交するバックアップリング(70,72)の直径軸(D1)に関して対称であることを特徴とするトラニオン搭載ボール弁。
【請求項2】
前記弁座リング(36,38)の少なくとも一方は2つの環状溝(66,68)を有し、環状溝(66,68)は、前記長軸(A)に対して径方向に向けられており、かつ前記長軸(A)の方向において互いに離間しており、前記環状溝(66,68)のそれぞれは開口端および閉鎖端を有し、これら環状溝(66,68)の開口端は反対方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載のトラニオン搭載ボール弁。
【請求項3】
前記環状溝(66,68)のそれぞれはバックアップリング(70,72)を備えることを特徴とする請求項2に記載のトラニオン搭載ボール弁。
【請求項4】
前記弾性予負荷素子(82)は複数の圧縮バネ(84)を備え、圧縮バネ(84)は、弁座リング(36,38)の頭部(46)の各穴(86)に収容されており、圧縮バネ(84)は、周方向において互いに間隔をおいて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトラニオン搭載ボール弁。
【請求項5】
各圧縮バネ(84)は、バックアップリング(70,72)に直接に当接する第1の端部と、調整ネジ(88)に当接する第2の端部とを有することを特徴とする請求項4に記載のトラニオン搭載ボール弁。
【請求項6】
前記弁座リング(36,38)は複数の位置決めネジ(90)を備え、位置決めネジ(90)は、弁座リング(36,38)の頭部(46)に対する所定の位置にバックアップリング(70,72)を固定するためにバックアップリング(72)と協働することを特徴とする請求項1に記載のトラニオン搭載ボール弁。
【請求項7】
前記角セクタ(α)のそれぞれは60°〜90°の角度範囲を有することを特徴とする請求項1に記載のトラニオン搭載ボール弁。
【請求項8】
各弁座リング(36,38)は、ボール(24)との間で金属同士のシール接触を確立することを特徴とする請求項1に記載のトラニオン搭載ボール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−33189(P2011−33189A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173109(P2010−173109)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(510209661)ヴァルバルト ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (2)
【氏名又は名称原語表記】VALBART S.R.L.
【Fターム(参考)】