説明

可撓性容量式タッチセンサ

【課題】軽量、可撓性、透明な容量式タッチセンサの提供。
【解決手段】第1面と第2面を有する薄肉可撓性透明基板と、第1面上の抵抗材料であって、薄肉、透明、連続的で可撓性の、かつ第1面上でタッチセンサ用のアクティブタッチ領域表面を覆う第1層と、第1層と電気的連通状態の複数の薄肉可撓性な、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該アクティブタッチ領域内で第1層に電位を印加するための電極と、電極に、および電極から、電気信号伝送用の薄肉可撓性電気リード線と、第1層に電気的連通状態の複数の薄肉可撓性な導電領域であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ第1層全体にわたり電位をアクティブタッチ領域内で線形化するための構図を形成する導電領域とを含み、第2面上に、センサの電磁線保護用透明の導電材料の別の可撓性層を有する、容量式タッチセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサ、特に容量式タッチセンサ、および容量式タッチセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサは、コンピュータシステムにフレンドリーなインターフェースを提供すべく広く使用されている。ユーザがフィンガータッチまたはスタイラスによりモニタを介してシステムと直接対話することができるように、通常、センサは、コンピュータシステムのモニタ上に固定される。
【0003】
タッチセンサは、二つの大きなカテゴリー、すなわち、ディジタルタッチセンサとアナログタッチセンサとに分類される。ディジタルタッチセンサのタッチ表面は、複数の個別セグメントに分割される。これらのセグメントの各々は、タッチ時に個別信号を生成する。したがって、検出解像度は、指またはスタイラスが接触した特定のセグメントの認識に限定される。一方、アナログタッチセンサからの信号は個別的ではない。検出解像度は、センサおよびその制御電子部品の総合感度によってのみ制限される。
【0004】
アナログおよびディジタルタッチセンサのいずれにおいても、指またはスタイラスがタッチ表面に接触する箇所を決定するさまざまな技術が利用される。これらの技術としては、抵抗検出、容量検出、音響検出、および光検出が挙げられる。しかし、大多数のタッチセンサでは、抵抗検出技術または容量検出技術のいずれかが使用される。
【0005】
抵抗式タッチセンサでは、基板上に配置された軟質隔膜が利用される。隔膜と基板との対向表面は、透明導電性膜で被覆される。隔膜と基板との間には、絶縁性ドットスペーサが挟設される。軟質隔膜がユーザにより押圧されると、隔膜の導電性膜は基板の導電性膜に接触する。この接触により、隔膜と基板との間に電流が流れる。コントローラは、導電性表面上に印刷された種々の電極または母線から流れてくる電流を比較することにより、接触箇所を識別する。
【0006】
容量式タッチセンサでは、可動部品は利用されない。容量式タッチセンサでは、固体絶縁性基板上に抵抗コーティングを直接堆積させる。この基板は、通常、ガラス製である。基板の角に配置された電極により、コーティングに電界を確立する。これらの電極に接続されたコントローラにより、これらの各電極を通って流れる電流の量を監視する。ユーザの指または導電性スタイラスが抵抗コーティングに接触するまたはそのごく近傍内に来ると、指またはスタイラスとコーティングとの間で容量結合が誘発される。この結合により、少量の電流がコーティングおよび各電極を通って流れる。ユーザの身体および接地を介する容量結合により、コントローラに戻る電流路が完成する。コントローラは、これらの各電極を通って流れる電流の量からタッチ箇所のデカルト座標、すなわち、X座標およびY座標を計算する。
【0007】
容量式タッチセンサはまた、タッチセンサに対する測定対象物の近接度を検出するように機能させることができる。この場合、タッチセンサとの物理的接触は必要でない。容量結合は、センサから測定対象物を分離する空間を介して測定対象物とセンサとの間で生じる。
【0008】
抵抗センサは可動部品を必要とするため、容量式タッチセンサよりも複雑であり、多くの場合、製造コストが高くなる。また、抵抗式タッチセンサでは、異なる屈折率を有する分離された複数の層を用いるため、その光学素子の性能が低下する。明るい環境に置かれるタッチセンサは、ディスプレイのコントラストを保持するために低反射タッチスクリーンを必要とする。この問題は、抵抗式タッチセンサではとくに重大である。過度に高輝度のディスプレイを用いればこの問題を克服することができるが、そのようなディスプレイは、追加の電力を必要とし、ディスプレイのコストを増大させる。したがって、この解決策は、バッテリーで動作する機器には望ましくない。
【0009】
アナログ容量式タッチセンサは、それほど複雑でなく、より良好な光学素子を提供するが、この機器に固体硬質基板を使用すると、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、携帯電話などのようなモバイルコンピュータ化システムに対するその適合性が低下する。そのようなセンサの重量およびその破壊能力もまた、そのようなシステムでそれを使用するうえで影響する重要な因子である。モバイル機器はまた、静止装置よりもはるかに多くの機械的屈曲を受ける。そのような機器に硬くて脆く、重い構成部品を組み入れると、軽くて可撓性のある構成部品に適合せず、そのような可撓性のある構成部品が機能しなくなるおそれがある。類似の要件は、乗物内に取付けられるディスプレイおよび壁に取付けられる大型ディスプレイにもあてはまる。脆くて硬い基板はまた、製品においてディスプレイの厚さを増大させるが、その厚さは目立たないほうが商業的に有利である。
【0010】
ガラス基板をベースとするタッチセンサはまた、モニタ上またはディスプレイ上にセンサを取付けるための特製フレームを必要とする。そのようなフレームは、機器の重量、コスト、および複雑度をさらに増大させる。平坦な固体基板はまた、不均一面または曲面を有するディスプレイまたはモニタにうまく整合せず、硬質基板を湾曲させるには高価な処理が必要である。さらに、ガラス材料のタッチセンサは、カットガラスの個別基板から製造しなければならない。そのような製造は、コストおよび時間がかかる。これらの欠点はいずれも、いくつかの用途で既存の容量式タッチセンサの魅力を低減させる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、容量式タッチセンサの欠点の多くを克服する。本発明は、低価格で軽量で可撓性で透明な容量式タッチセンサおよびそのようなタッチセンサを製造する効率的で低コストの方法を提供する。本発明に係るタッチセンサは低コストで軽量で可撓性であるにもかかわらず、該タッチセンサは予想外に高い耐久性を有するので、多くの環境およびさまざまな機器で満足に動作させることができる。本発明はまた、可撓性透明タッチセンサのアクティブタッチ領域を保護すべく保護材料からなる薄肉透明可撓性層を提供する。この保護材料は、タッチセンサの性能および耐久性を実質的に増大させる。
【0012】
一態様において、本発明は、可撓性容量式タッチセンサを提供する。このタッチセンサは、第1の面と第2の面とを有する薄肉可撓性な透明基板を備える。抵抗材料からなる第1の層を基板の第1の面に適用する。この第1の層は、薄肉で透明で電気的に連続で可撓性であり、基板の第1の面上で、アクティブタッチ領域に一致する表面を覆う。アクティブタッチ領域内で第1の層にわたって電位を受けて、測定対象物がアクティブタッチ領域に接触する箇所であるXおよびY位置の点を示す電気信号を伝送するように、第1の層を適合化する。
【0013】
可撓性容量式タッチセンサは、好ましくは、第1の層に電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性電極を備える。これらの電極をアクティブタッチ領域の周囲に沿って配置し、電位を印加するように適合化する。可撓性容量式タッチセンサはまた、好ましくは、電極に、および電極から、電気信号を伝送すべく電極に電気的に接触した状態にある複数の薄肉可撓性電気リード線を備える。好ましくは、複数の薄肉可撓性導電領域もまた、タッチセンサに含まれる。導電領域は、第1の層に電気的に導通した状態であり、アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置される。導電領域は、電極により印加された第1の層全体にわたる電位をアクティブタッチ領域内で線形化するように適合化された構図を形成する。
【0014】
可撓性容量式タッチセンサはまた、好ましくは、保護材料からなる第2の層を備える。タッチセンサの構成に依存して、すなわち、基板のどちらの面がタッチセンサのアクティブタッチ表面に対応するかに依存して、この第2の層は、第1の層上または基板の第2の面上のいずれかに存在する。第2の層はまた、薄肉で透明で可撓性であり、アクティブタッチ領域内で第1の層または基板の第2の面のいずれかの実質的に全表面を覆う。保護材料の力学的性質により、この第2の層に可撓性および耐久性の両方を付与する。第2の層は、摩耗および使用時の表面損傷からアクティブタッチ表面を保護する。
【0015】
タッチセンサはまた、接着材料からなる第3の層を備えていてもよい。この場合もタッチセンサの構成に依存して、この第3の層は、第1の層上または基板の第2の面上のいずれかに存在しうる。この第3の層は、薄肉で透明で可撓性である。この第3の層はまた、好ましくは、感圧性である。接着材料により、支持構造体またはディスプレイ前面にタッチセンサを取付けることが可能になる。第3の層は、好ましくは、アクティブタッチ領域内で第1の層または基板の第2の面のいずれかの実質的に全表面を覆う。この層で実質的にこの全表面を覆うことにより、タッチセンサが固定される表面との平滑な接触が得られる。別の方法では、第1の層または第2の面の周囲に沿ってのみ少量の接着材料を適用することも可能である。
【0016】
接着材料からなる第3の層は、好ましくは、可撓性タッチセンサがディスプレイに取付けられるまでこの層の露出表面を覆う剥離可能なシートを含む。このディスプレイは、フレキシブルディスプレイであってもよい。
【0017】
電極、リード線、および導電領域は、抵抗材料からなる第1の層上または基板の第1の面上に存在しうる。後者の場合、抵抗材料からなる第1の層は、電極、リード線、および導電領域を覆う。他の実施形態では、電極、リード線、および導電領域は、保護材料からなる第2の層上に存在し、容量結合を介して抵抗材料からなる第1の層に連通する。この容量結合は、保護材料に低レベルの導電性を付与することにより増大させることが可能である。他の実施形態では、導電領域を覆うアクティブタッチ領域の周囲に沿って基板の第2の面上または絶縁層上にリード線を堆積させる。
【0018】
好ましくは、アクティブタッチ領域内で第1の層にわたって印加される電位を提供し、かつ人の指や導電性スタイラスなどの測定対象物がアクティブタッチ領域に接触する箇所であるXおよびY位置の点を示す電気信号を受取るコントローラに、容量式タッチセンサを接続する。このコントローラは、好ましくは、同様にこのXおよびY位置を示すさらなる電気信号を提供する。コントローラは、好ましくは、電気リード線に接続され、電極に交流電圧を提供する。コントローラは、好ましくは、これらの各電極を通って流れる電流の量を監視し、これらの量に基づいてさらなる電気信号を提供する。
【0019】
基板は、好ましくは、約3ミル〜9ミルの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)の透明シートである。好ましい厚さは、約7ミルである。抵抗材料からなる第1の層は、好ましくは、約100オーム/平方〜約4,000オーム/平方の抵抗を有する透明導電性酸化物、たとえば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化インジウム、酸化ケイ素インジウム、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛インジウム、酸化スズアンチモン、または酸化スズの層である。この層は、最も好ましくは、約1,000オーム/平方の抵抗および約200オングストローム〜500オングストロームの厚さを有するITOである。このほかの実施形態では、第1の層は、基板の第1の面に接触した状態にある第1の抵抗材料からなる第1のコーティングと、第1のコーティングに接触した状態にある第2の抵抗材料からなる第2のコーティングと、を含む。第2の抵抗材料は、好ましくは、第1の抵抗材料よりも高い耐久性を有する。第1の抵抗材料は、好ましくは酸化スズインジウムであり、第2の抵抗材料は、好ましくは酸化スズである。
【0020】
電極、リード線、および導電領域を堆積させるために、導電性インクを使用してもよい。この導電性インクは、好ましくは、銀エポキシ導電性インクである。基板は、基板の周囲から延在するテールを備えていてもよく、電気リード線は、このテールを超えて延在しうる。リード線に電気的に接触した状態にあるこのテールの端部に電気コネクタを取付けてもよい。
【0021】
保護材料からなる第2の層は、好ましくは、樹脂の摩擦係数を減少させるためにフッ素またはメチル基が結合したオルガノシロキサン化合物またはこれらの化合物の組合せを含有する樹脂から作製される。樹脂は、好ましくはアクリレート系樹脂である。第2の層はまた、この保護層の耐摩耗性を増大させるためにシリカのような無機化合物を含有していてもよい。このほかの実施形態では、第2の層は、抵抗材料からなる第1の層に接触した状態にある第1の材料からなる第1のコーティングと、この第1のコーティングに接触した状態にある第2の材料からなる第2のコーティングと、を含む。この実施形態では、第1のコーティングのモジュラス(硬度)は、好ましくは、第2のコーティングのモジュラスよりも小さい。この実施形態用の第1の材料として第1のポリマーを用いることが可能であり、第2の材料として第2のポリマーを用いることが可能である。ここで、第1のポリマーのモジュラスは、第2のポリマーのモジュラスよりも小さい。
【0022】
さらに他の実施形態では、保護材料からなる第2の層は、この層に低レベルの導電性を付与する物質を含有する。この物質は、無機導電性粒子または真性導電性ポリマーを含みうる。この実施形態では、保護材料からなる第2の層は、好ましくは、約0.1オーム−cm〜1012オーム−cmの抵抗率を有する。上述したように、第2の層に低レベルの導電性を付与すると、抵抗層と指またはスタイラスとの間で伝送されるタッチ信号が増大する。
【0023】
保護材料からなる第2の層はまた、この表面から反射される光を拡散させる粗面を含んでいてもよい。この粗面を提供するために、第2の層に透明または半透明な粒子を含有させてもよいし、機械的エンボス加工を施してもよい。これらの粒子を含む材料は、粒子の摩擦係数を減少させかつ粒子の耐摩耗性を増大させるように選択することも可能である。さらに他の実施形態では、可撓性容量式タッチセンサは、導電性材料からなる第4の層を含む。タッチセンサの構成に依存して、この第4の層は、基板の第2の面上または抵抗材料からなる第1の層を覆う絶縁層上のいずれかに存在しうる。この第4の層は、過度の電磁線、特に、センサを取付けるディスプレイから放出される過度の放射線による妨害からタッチセンサを保護する。
【0024】
他の態様において、本発明は、複数の可撓性容量式タッチセンサを製造する方法を提供する。この方法によれば、薄肉可撓性な透明基板を提供する。この基板は、第1の面、第2の面を有し、複数の個別のセクションに分割するのに十分な程度に大きい。これらの各セクションは、容量式タッチセンサの1つに対応する。
【0025】
この方法によれば、好ましくは保持リールから収容リールに基板を巻取ることにより、基板は複数の処理ステーションを通過する。製造工程のステップは、この工程時にこれらの処理ステーションで行われる。これらの処理ステーションを通過する基板の伝送を1回以上行ってもよい。この製造工程によれば、抵抗材料からなる薄肉で可撓性で透明で電気的に連続的な第1の層を基板の第1の面上に適用する。抵抗材料からなる第1の層上にまたはそれに導通した状態で、複数の薄肉可撓性の電極、電気リード線、および導電領域を配置する。これらのセクションの周囲に沿って、これらのリード線、電極、および導電領域を配置する。好ましくは、タッチセンサの構成に依存して第1の層上または基板の第2の面上のいずれかに、保護材料からなる薄肉可撓性の第2の層を適用する。好ましくは、実質的に導電領域から種々の電気リード線を電気的に分離するために、第1の層を貫通してまたは第1の層および第2の層を貫通して複数の薄肉細長ラインを切削する(ただし、これらのリード線が電極に接続する箇所を除く)。好ましくは、レーザーを用いてこの切削を行う。次に、複数の容量式タッチセンサを提供するために、この場合も好ましくはレーザーを用いて、第1の層、基板、および存在する場合には第2の層を完全に貫通して種々のセクションの周囲に沿って切削する。
【0026】
この製造工程はまた、第1の層上または基板の第2の面上のいずれかに(この場合もタッチセンサの構成に依存する)1つ以上の処理ステーションで接着材料からなる薄肉透明可撓性層を適用することを含んでいてもよい。他の選択肢として、基板を製造システムに通す前に、接着材料からなるこの層を基板にあらかじめ設けておいてもよい。基板は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシートであり、抵抗材料は、好ましくは酸化スズインジウム(ITO)である。酸化スズインジウムは、好ましくは真空蒸着(たとえば、スパッタリング)により堆積させる。電極、リード線、および導電領域は、好ましくは導電性インク、最も好ましくは銀エポキシ導電性インクを含み、この導電性インクは、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷により堆積させる。保護材料は、好ましくは、表面滑性を増大させるように変性されたアクリレート系樹脂を含み、この樹脂は、好ましくはスプレー塗布またはグラビア塗布により堆積させる。
【0027】
製造プロセスはまた、過度の電磁線からセンサを保護するために1つ以上の処理ステーションで導電性材料からなる層を適用する工程を含んでいてもよい。タッチセンサの構成に依存して、この導電性層を、基板の第2の面または第1の層を覆う絶縁層のいずれかに適用することが可能である。また、接着材料の露出表面上に剥離可能なシートを固定する工程を含んでいてもよい。他の選択肢として、剥離可能なシートを接着材料にあらかじめ取付けておいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1および2は、それぞれ、本発明に係る可撓性容量式タッチセンサ1の平面図および概略断面図である。適切なコントローラ(図示せず)に接続すると、タッチセンサ1は、ユーザの指や導電性スタイラスなどの測定対象物がタッチセンサ1のアクティブタッチ領域2に接触したときまたはそのごく近傍内に来たときにその箇所を検出する。タッチセンサ1は、この接触箇所のデカルト座標、すなわち、XおよびY位置を示す信号を提供する。タッチセンサ1はまた、アクティブ領域2に対する測定対象物の近接度を検出するように機能することも可能である。
【0029】
タッチセンサ1は、薄肉可撓性な透明絶縁性基板3を備える。本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「透明」であるとして記載または列挙された物質または材料には、部分透過性であるにすぎない物質または材料、たとえば「半透明」である物質または材料が包含される。図6に単独で示された基板3は、一般に長方形の形状であり、1つの縁から延在する細長いテール21を有する。しかしながら、基板3の形状は、長方形以外、たとえば、円形、正方形、三角形、または多角形であってもよい。基板3は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシートを含む。PETの代わりに、基板3は、ポリカーボネートポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリイミドポリエーテルイミド、三酢酸セルロース、ポリエチレンナフタレートなどの他の好適な材料の可撓性シートであってもよい。
【0030】
基板3は、好ましくは約7ミルの厚さを有する。しかしながら、基板3の厚さは、約3ミル〜約15ミルまで変化しうる。基板3は、より好ましくは約3ミル〜約9ミルの範囲を有する。しかしながら、基板3は、基板に適用された材料が基板を屈曲させたときに過度に応力を受ける可能性のある厚さよりも薄い厚さを有していなければならない。一方、基板3は、ディスプレイの取扱いおよびそれへの適用が過度に困難になるほど薄肉であってはならない。
【0031】
図2に示されるように、基板3の上面を抵抗材料からなる薄肉透明可撓性層5で被覆する。抵抗層5に適した材料は、透明導電性酸化物、好ましくは酸化スズインジウム(ITO)である。他の選択肢として、比較的低い温度で基板3に適用することのできる他の透明導電性酸化物、たとえば、酸化インジウム、酸化ケイ素インジウム、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛インジウム、酸化スズアンチモン、または酸化スズを利用することも可能である。抵抗層5は、スパッタリングなどの真空蒸着により基板3に適用することが可能である。この層は、好ましくは約1,000オーム/平方の抵抗を有する。しかしながら、抵抗層5の抵抗は、約100オーム/平方〜約4,000オーム/平方まで変化しうる。
【0032】
抵抗層5は、好ましくは、基板3のアクティブ領域2を覆う材料の連続コーティングを含む。他の選択肢として、抵抗層5は、抵抗層5に適用される材料の接着性を改良するために、いくつかの不連続部を含んでいてもよい。たとえば、抵抗層5は、そのような材料と基板3との直接的接触を提供するために複数の小さい開口を含んでいてもよい。しかしながら、抵抗層5は、アクティブ領域2内で電気的に連続していなければならない。つまり、抵抗層5上のすべての点から抵抗層5上の他のすべての点への通路が、この層の境界と交差することなくアクティブ領域2内で利用可能でなければならない。
【0033】
抵抗層5の厚さは、タッチセンサ1の屈曲時における過度の応力を回避しかつ光透過率を改良するために、できるだけ薄くなければならない。一方、抵抗層5の厚さは、製造時にこの層の連続性またはその材料特性を損なうほど薄くてはならない。抵抗層5の適切な厚さは、約200オングストローム〜約500オングストロームである。
【0034】
製造時に屈曲、引掻き、および化学変化に耐える抵抗層5の能力を高めるために、2層のコーティング、すなわち、抵抗材料からなる第1のコーティングおよびこの第1のコーティングよりも耐久性のある抵抗材料からなる第2のコーティングから、この層を構成することが可能である。第1のコーティングは、好ましくはITOであり、第2のコーティングは、好ましくは酸化スズ(SnO2)である。もちろん、この目的のために他の好適な材料を使用することも可能である。
【0035】
図1および2を再度参照すると、タッチセンサ1はまた、アクティブ領域2の角の近傍で抵抗層5の表面上に堆積させた電極9を備える。これらの電極は、電気リード線7に接続され、抵抗層5内でアクティブ領域2にわたって電位を印加するように適合化される。抵抗層5上に堆積させた電極9、電気リード線7、および導電領域11(以下で論じる)の構図を、図4に独立に示す。
【0036】
アクティブ領域2の寸法を最大にすべく、電気リード線7を基板3の外周に沿って堆積させる。これらの電気リード線は、これらの周辺領域からテール21を越えてテール21の端部に取付けられた電気コネクタ(図示せず)まで延在する。タッチセンサ1をディスプレイに固定する際、電極9に交流電圧を伝送するためのコントローラにこのコネクタを接続する。この目的のために延長ケーブルを使用することも可能である。コントローラはまた、これらの各電極を通って流れる電流の量を監視する。これらの量に基づいて、このコントローラは、人の指もしくは導電性スタイラスがアクティブ領域2に接触したとき、またはそのごく近傍内に来たときにそのXおよびY位置を示す信号を提供する。そのようなコントローラについては、たとえば、米国特許第4,353,552号(ペッパー(Pepper))に記載されている。その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。また、適切なコントローラを用いれば、アクティブ領域2に対する測定対象物の近接度を検出するようにタッチセンサ1を機能させることもできる。そのような場合、アクティブ領域2との物理的接触は不要である。容量結合は、測定対象物とアクティブ領域2とを分離する空間を介して測定対象物とアクティブ領域2との間で生じる。
【0037】
同様に、基板3の周囲に沿って抵抗層5上に導電領域11を堆積させる。導電領域11は、当技術分野で公知のごとく、電極9により生成される電位を抵抗層5内でアクティブ領域2にわたって線形化するための構図を形成する。導電領域のそのような線形化構図についての説明は、たとえば、米国特許第4,371,746号(ペッパー)に提供されている。その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。この線形化構図により、所与の電極と、アクティブ領域2の接触が生じる箇所と、の間の距離に直線的に対応するように、各電極9から電流が流れる。上述したように、これらの導電領域の構図を図4に独立に示す。
【0038】
電極9、電気リード線7、および導電領域11を抵抗層5上に堆積させるのではなく、むしろ、電極9、電気リード線7、および導電領域11を基板3の前面に堆積させ、電気リード線7、電極9、および導電領域11全体に抵抗層5を堆積させることも可能である。また、アクティブ領域2の寸法を最大にすべく、電気リード線7を基板3の背面上に堆積させ、これらのリード線を、基板3の縁周辺に延在する導電性テープのような導電性材料によりまたは導電性材料で被覆された基板3における開口を介して、電極9に接続することも可能である。
【0039】
このほかの実施形態では、アクティブ領域2の寸法を増大させるべく、抵抗層5および導電領域11を覆うように基板3の周囲に沿って薄肉絶縁材料からなる層を堆積させることが可能である。次に、電気リード線7をこの絶縁層上に堆積させることが可能である。この絶縁材料を電極9上に堆積させることも可能であり、その場合には、電気リード線7と電極9との間に電気接続を提供すべく、導電性インクで被覆された開口を絶縁層に設けることが可能である。2000年2月2日に出願され、譲受人が本出願と同一である米国仮特許出願第60/179,874号に記載されている材料および方法を、この実施形態に使用することが可能である。米国仮特許出願第60/179,874号の内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0040】
電極9、電気リード線7、および導電領域11は、熱硬化銀エポキシなどのような導電性インクの薄肉可撓性堆積物からなる。この導電性インクは、スクリーン印刷またはインクジェット印刷により基板3上に堆積させることが可能である。
【0041】
タッチセンサ1の外観を良くし、かつ電極9、電気リード線7、および導電領域11の保護を強化すべく、これらの電極、リード線、および導電領域全体に絶縁性インクのコーティング(図示せず)を堆積させることが可能である。さまざまな色のそのようなインクを用いて、製造業者の名称、製造物のロゴ、製品番号などのようなタッチセンサ1に関する情報を印刷することが可能である。また、導電性または非導電性インクを用いて識別表示または他の情報を印刷するために、抵抗層5上の識別領域19(図1)を使用することも可能である。この領域で導電性インクを使用する場合、以下で説明するように、たとえば抵抗層5にレーザー切削ラインを設けることにより、その領域を抵抗層5から電気的に分離しなければならない。
【0042】
図2を再度参照すると、タッチセンサ1はまた、保護層13を備える。この層は、好ましくは、電極9、電気リード線7、および導電領域11を含めて抵抗層5の実質的に全表面を覆う。別の方法では、保護層13は、アクティブ領域2のみまたはアクティブ領域2の一部分のみを覆うものであってもよい。また、さらなる代替実施形態では、電極9、電気リード線7、および導電領域11を保護層13上に堆積させることも可能である。このさらなる代替実施形態では、これらの導電領域と抵抗層5との間の電気的連通は、容量結合を介して行われる。この容量結合は、以下で説明するように、保護層13に低レベルの導電性を付与することにより、増大させることが可能である。
【0043】
好ましくは、保護層13は、樹脂、好ましくは熱硬化アクリレート系樹脂からなる薄肉可撓性な透明層である。別の方法では、紫外線、プラズマ線、または電子ビーム線に暴露することにより、この樹脂を硬化させることも可能である。樹脂を化学的に重合させることも可能である。抵抗層5、電極9、電気リード線7、および導電領域11の表面に、樹脂をスプレーすることも可能である。別の方法では、グラビア塗布工程のときと同じように、樹脂で被覆されたローラーに基板3を通して牽引することにより、この樹脂を適用したり、真空中でモノマー源から堆積させたりすることも可能である。しかしながら、電極9、電気リード線7、および導電領域11の雄型への損傷を防止し、かつそのようなローラーに通して基板3を牽引することにより保護層13中に発生する可能性のある不連続部を防止するうえで、スプレー塗布が好ましい。このほかの方法として、保護層13をスクリーン印刷により適用することも可能である。スクリーン印刷により保護層13を選択的に堆積させることが可能であるが、この技術は、スプレー法またはグラビア法と比較して製造効率が悪いという問題を抱えている。
【0044】
保護層13は、人の指先もしくは指の爪、またはコイン、ペン、宝石、および他の用具がアクティブ領域2に接触することにより生じる可能性のある損傷から抵抗層5を保護する。保護層13はまた、たとえばこの表面上にこぼれた液体により短絡を起こすことがないように導電印刷領域を絶縁するうえでも役立つ。
【0045】
保護層13の感触を良くしかつその耐久性をさらに増大させ、しかもこの層と抵抗層5との間の屈曲応力を減少させるべく、化合物をベース樹脂と組合せたり、化合物をベース樹脂に置換したりすることにより、保護層13の滑性を増大させること、すなわち、この層の摩擦係数を減少させることが可能である。これらの化合物としては、シロキサン、フッ素、およびメチル基を有する1種以上の化合物が挙げられる。たとえば、ダイネオン(Dyneon)から市販されているような塗布可能なフルオロ熱可塑性物質または3Mフルオラド(Fluorad(商標))FX−189のようなフッ素化アクリレートを、この目的のために使用することが可能である。そのような化合物をベース樹脂と組合せる代わりに、より硬質の下層のアクリレートコートを覆うようにまたは抵抗層5および上側コートの両方に対して増大した接着性を提供する他の材料からなる下層コート全体に、オーバーコーティングとしてそのような化合物を適用することも可能である。保護層13はまた、シリコーンなどのオルガノシロキサン化合物、もしくはオルガノシロキサン、フルオロカーボンを含有する化合物、またはこれらの化合物の組合せから完全配合することが可能である。摩耗に耐える保護層13の能力をさらに増大させるために、シリカのような無機化合物を単独でまたは滑性を増大させる以上に明記した化合物と組合せてベース樹脂に添加することが可能である。
【0046】
このほかの実施形態では、保護層13は二層構成である。第1の層は、抵抗層5に接触した状態で存在し、第1の層を覆って環境に暴露される第2の層よりも軟質である。したがって、第1の層のモジュラスは、第2の層のモジュラスよりも小さい。この代替実施形態では、屈曲時における抵抗層5と保護層13との間の応力が減少するので、屈曲の結果として抵抗層5中で応力破壊を起こす可能性は減少する。
【0047】
保護層13のそのような二層構造は、それぞれ異なる硬度を有する2種のポリマーからこの層を作製することにより得ることが可能である。外層を形成するポリマーのモジュラスは、内層を形成するポリマーのモジュラスよりも高くなければならない。保護層13を形成するポリマーの硬度が抵抗層5から保護層13の表面まで徐々に増大するように、そのような構造中で追加の層を利用することも可能である。
【0048】
抵抗層5中の応力により引き起こされる抵抗層5中の破壊をさらに防止すべく、基板3、抵抗層5、および保護層13の中立応力面に抵抗層5を配置することが可能である。
【0049】
容量結合は保護層13と抵抗層5との間で生じるため、容量結合の効率を増大させるべく保護層13は好ましくは薄肉である。しかしながら、保護層13の適切な厚さは、この層の誘電率にある程度依存する。十分な保護および容量結合の両方を提供する保護層13の適切な厚さは、ほとんどの場合、約1ミクロン〜約5ミクロンである。
【0050】
しかしながら、保護層13の配合に使用される材料に、これらの材料に低レベルの導電性を付与する物質を添加することにより、保護層13の厚さおよびこの層と抵抗層5との間の結合の大きさを増大させることができる。これらの物質としては、導電性酸化物粉末のような導電性粒子が挙げられる。別の方法では、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレン、およびポリ複素環ビニレンのような真性導電性ポリマーを含むように保護層13を配合することもできる。保護層13の抵抗率(導電率の逆数)は、一般的には、約0.1オーム−cm〜約1012オーム−cmの範囲でなければならない。
【0051】
保護層13は、反射光およびグレアを減少させるために粗面を有していてもよい。この層を形成するアクリレート系樹脂または他の材料と透明粒子を混合することにより、この粗面を形成することができる。複合保護層の耐摩耗性または耐引掻性を改良すべく、これらの粒子を選択することができる。たとえば、オルガノシロキサン化合物、フルオロカーボン化合物、またはこれらの化合物の組合せのいずれかで構成された粒子を選択すれば、より低い摩擦係数および改良された耐久性を有する表面を得ることができる。この目的のために有機化合物と無機化合物との混合物を使用することもできる。この層に滑らかな接触表面を提供すべく、これらの粒子を保護層13から突出させてもよい。他の方法として、エンボス加工の工程が抵抗層5に損傷を与えないのであれば、そのような表面を形成するために保護層13に機械的エンボス加工を施すこともできる。また、抵抗層5上にスプレーされる樹脂または他の材料の液滴の形状、サイズ、および粘度を選択的に制御して保護層13を形成することにより、粗面を形成することもできる。
【0052】
タッチセンサ1に関して以上に述べた以外の検出技術または構造を利用するタッチセンサのアクティブタッチ領域の保護層を構築するために、保護層13の特徴および性質を利用することが可能である。たとえば、これらの特徴または性質の1つ以上を利用する保護層を用いて、米国特許第5,650,597号、同第4,686,332号、または同第4,931,782号などに記載されている構造またはタッチ検出技術を利用する可撓性タッチセンサのアクティブタッチ領域を保護するための保護層を構築することが可能である。これらの特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0053】
電気リード線7は、抵抗層5にわたって電極9および導電領域11により生成された線形化電位が、導電領域11のリード線上の信号を妨害しないように、導電領域11から電気的に分離されていなければならない。図1に示されるように、抵抗層5内に薄肉ライン17を切削することにより、そのような電気的分離を行うことが可能である。これらのラインの構図を図5に独立に示す。先に述べたように、導電性インクを用いて識別領域19に識別表示を印刷する場合にも、この領域を分離するように抵抗層5中にライン17を切削しなければならない。好ましくはレーザーを用いてライン17を切削する。他の方法として、化学的または機械的エッチングを用いてライン17を切削することも可能である。
【0054】
図2を参照すると、タッチセンサ1はまた、基板3の底面上に接着層15を備えていてもよい。接着層15は、好ましくは、基板3の実質的に全底面を覆う接着材料からなる薄肉透明可撓性感圧層である。ディスプレイ上もしくは他の機器上でタッチセンサ1を頻繁に交換する必要のある用途または全表面光学積層を行っても顕著な利益が得られない用途では、基板の背面の周囲にのみ接着層15を適用してもよい。タッチセンサ1の保存および輸送を容易にするために、接着層15の露出表面を剥離可能なシート(図示せず)で覆ってもよい。接着層15を用いれば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、もしくは携帯用コンピュータのディスプレイなどのアクティブディスプレイの表面に、またはポスター、投票カード、もしくは他の印刷物などの非アクティブディスプレイに、タッチセンサ1を容易に固定することができる。もちろん、そのような固定を行う前に、この剥離可能なシートは除去される。
【0055】
タッチセンサ1の代替実施形態を図3に示す。この実施形態では、基板3の底面がタッチ表面である。この図に示されるように、接着層15は、抵抗層5、電極9、電気リード線7、および導電領域11を覆う。一方、保護層13は、このタッチ表面を保護するために基板3の底面を覆う。したがって、この実施形態では、接着層15と保護層13の位置が逆である。基板3の底面から接触が行われるので、保護層13および基板3の両方が、抵抗層5、電極9、電気リード線7、および導電領域11を指先、器具などによる損傷から保護する。しかしながら、この実施形態では、保護層13および基板3を介する抵抗層5と人の指先や導電性スタイラスなどとの間の容量結合の大きさは減少する。したがって、保護層13への接触の結果としてコントローラに伝送される信号は、小さい振幅を有する。しかしながら、基板3および保護層13に低レベルの導電性を付与することにより、この容量結合を増大させることが可能である。しかしながら、この実施形態は、低いSN比を生じる環境では、または低い感度を有するコントローラを用いる場合には、それほど望ましくないかもしれない。この実施形態でも、いくらか効率は低くなるが、以下で論じる背面遮蔽層を付加する。
【0056】
多量の雑音を放出するディスプレイ上でタッチセンサ1を使用する場合にSN比を増大させるべく、接着層15を適用する前に、基板3の背面に導電性材料からなる遮蔽層(図示せず)を適用してもよい。この導電性材料は、ディスプレイから放出される雑音の多い信号からタッチセンサ1を保護する役割を担う。この遮蔽層に使用される材料は、抵抗層5に使用される材料と類似のものであってよいが、より低いシート抵抗を有するものでなければならない。抵抗層5に使用される材料と同様に、この遮蔽層もまた、薄肉で透明で可撓性でなければならない。
【0057】
上述したように、図2の実施形態では、基板3と接着層15との間に遮蔽層を配置する。しかしながら、図3の実施形態では、最初に、抵抗層5、電極9、電気リード線7、および導電領域11全体に絶縁層を適用しなければならず、次に、この絶縁層全体に遮蔽層を適用する。その後、遮蔽層全体に接着層15を適用する。
【0058】
図7は、本発明に係る可撓性容量式タッチセンサ41のさらなる代替実施形態を示している。この実施形態では、基板51の境界領域49は、実質的にタッチセンサ41のアクティブタッチ領域43を越えて延在する。装飾用グラフィックス47または情報、たとえば、タッチセンサ41もしくはディスプレイまたはタッチセンサ41が適用もしくは接続される他の機器に関する情報またはそれらの使用説明を、境界領域49内に印刷することが可能である。好ましくは、非導電性インクをそのような印刷に使用する。しかしながら、境界領域49がアクティブ領域43から電気的に分離されている場合、導電性インクをこの目的に使用することも可能である。
【0059】
図7に示されるように、ボタン45のようなグラフィックスまたは英数字の情報をアクティブ領域43内で基板51上に印刷することも可能である。アクティブ領域43との電気的干渉を防止するために、通常、非導電性インクをこの目的に使用しなければならない。この印刷は、基板51上に行ってもよいし、他の方法としてアクティブ領域43の抵抗層上または保護層上に行ってもよい。
【0060】
アクティブ領域43の周囲に沿った電気リード線7を図7に示す。しかしながら、境界領域49内に、たとえば、基板51の周囲に沿って、電気リード線7を配置することも可能である。そのような配置にすれば、タッチセンサ41の製造が容易になる可能性がある。
【0061】
上記の実施形態のいずれかの構造を有する複数の可撓性容量式タッチセンサを製造するためのシステムおよび方法を図8に模式的に示す。この図に示されるように、この製造工程時、PETのような基板材料の長いシート33をリール23からリール25上にまたはリール25からリール23上に巻取る。リール23および25の代わりに、図8の製造ステーションにシート33を分配する他の手段、たとえば、シート33が取出される第1の受器およびシート33が収容される第2の受器を使用することも可能である。
【0062】
シート33を図9に示す。シート33の寸法は、このシートを複数の個別セクション61に分割するのに十分な大きさである。これらの各セクションは、1個のタッチセンサに対応する。製造工程時、処理ステーション27、29、および31のような処理ステーションでは、種々の材料層がシート33に適用され、上記の可撓性容量式タッチセンサの実施形態を作製するのに必要な種々の処理ステップが行われる。リール23とリール25との間にシート33を1回通過させる間または一連のそのような通過の間、これらのステップを行うことができる。
【0063】
たとえば、これらの製造ステップとしては、次のステップが挙げられる。(1)シート33の上面に薄肉可撓性な透明抵抗材料の層を堆積させるステップ、(2)セクションのそれぞれに対して複数の薄肉可撓性電極を抵抗材料上に堆積させるステップ、(3)セクションのそれぞれに対して複数の薄肉可撓性電気リード線を抵抗材料上に堆積させるステップ、(4)セクションのそれぞれに対して複数の薄肉可撓性導電領域を抵抗材料上に堆積させるステップ、(5)抵抗材料、電極、リード線、および導電領域全体に薄肉可撓性な透明保護材料の層を堆積させるステップ、(6)実質的に電気リード線から導電領域を電気的に分離するために(これらのリード線を電極に接続する箇所を除く)、セクションのそれぞれに対して種々の位置で抵抗層を貫通してまたは抵抗層および保護層の両方を貫通して細長ラインを切削するステップ、ならびに(7)各セクションの周囲に沿って、保護層、抵抗層、および基板を貫通切断して、複数の可撓性容量式タッチセンサを提供するステップ、が挙げられる。
【0064】
接着層と、シート33を図8に示される製造ステップに通す前にこの接着層にあらかじめ取付けられた剥離可能なシートと、の両方を有するシート33を提供することができる。他の方法として、接着層および剥離可能なシートをこの製造工程の追加のステップとしてシート33に適用することも可能である。
【0065】
上記のリールツーリール(reel to reel)製造工程を用いれば、可能性のある多数の用途を有する複数の低価格な可撓性容量式タッチセンサを効率的に低コストで製造することが可能である。そのような用途の一例は、可撓性コレステリック液晶ディスプレイ(LCD)、反射ツイストネマティックLCD、ジリコン(Gyricon)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、または電気泳動ディスプレイなどの可撓性アクティブディスプレイにタッチセンサを適用することである。他のそのような用途は、グラフィックスポスターなどの可撓性パッシブディスプレイにタッチセンサを適用することである。本発明に従って製造される可撓性容量式タッチセンサは、低価格で耐久性が高く、多くの環境中でおよびさまざまな機器と併用して十分に動作することができる。
【0066】
特定の実施形態を参照して本発明について説明してきたが、当然のことながら、これらの実施形態は、本発明の原理および用途を単に例示したにすぎない。また、当然のことながら、次の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これらの例示的実施形態に多くの変更を加えることが可能である。
【0067】
本発明の実施の態様について以下に列記する。
[実施態様1]
第1の面と第2の面とを有する薄肉可撓性透明基板と、
前記第1の面上の抵抗材料からなる第1の層であって、薄肉、透明、連続的で可撓性であり、かつ該第1の面上でタッチセンサ用のアクティブタッチ領域に一致する表面を覆っている、該第1の層と、
前記第1の層と電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性な電極であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該アクティブタッチ領域内で該第1の層にわたって電位を印加するように適合化されている電極と、
該電極に、および該電極から、電気信号を伝送するための、該電極に電気的に接触した状態にある複数の薄肉可撓性電気リード線と、
前記第1の層に電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性な導電領域であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該第1の層全体にわたり該電位を該アクティブタッチ領域内で線形化するように適合化された構図を形成する導電領域と、
を含む、可撓性容量式タッチセンサであって、前記第2の面上に、前記センサを電磁線から保護するための、透明の導電材料の別の可撓性層をさらに有する、容量式タッチセンサ。
[実施態様2]
前記第1の層上に保護材料からなる第2の層をさらに含み、該第2の層が、薄肉で可撓性で透明であり、かつ前記アクティブタッチ領域内で前記第1の層の全表面を覆っており、また、前記保護材料が前記保護材料の摩擦係数を減少させる化合物を含む、実施態様1に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様3]
前記化合物が、オルガノシロキサンおよびフルオロカーボンの一方または両方を含む、実施態様2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様4]
前記第2の層が、真性導電性ポリマーを含む、実施態様1又は2に記載の容量式タッチセンサ。
【0068】
本発明に係る発明の実施の態様について以下に列記する。
[実施態様1]
第1の面と第2の面とを有する薄肉可撓性透明基板と、
前記第1の面上の抵抗材料からなる第1の層であって、薄肉、透明、連続的で可撓性であり、かつ該第1の面上でタッチセンサ用のアクティブタッチ領域に一致する表面を覆っている、該第1の層と、
前記第1の層と電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性な電極であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該アクティブタッチ領域内で該第1の層にわたって電位を印加するように適合化されている電極と、
該電極に、および該電極から、電気信号を伝送するための、該電極に電気的に接触した状態にある複数の薄肉可撓性電気リード線と、
前記第1の層に電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性な導電領域であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該第1の層全体にわたり該電位を該アクティブタッチ領域内で線形化するように適合化された構図を形成する導電領域と、
を含む、可撓性容量式タッチセンサ。
[実施態様2]
前記第1の層上に保護材料からなる第2の層をさらに含み、該第2の層が、薄肉で可撓性で透明であり、かつ前記アクティブタッチ領域内で前記第1の層の実質的に全表面を覆っている、実施態様1に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様3]
実質的に前記導電領域を前記電気リード線から電気的に分離するために、前記第1の層の連続性が、前記導電領域と前記電気リード線との間で薄肉細長ラインにより中断されている、実施態様1または2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様4]
前記タッチセンサが、硬質基板に積層されるように適合化されている、実施態様1〜3のいずれか1項に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様5]
前記第1の層が、前記前面上の第1の抵抗材料からなる第1のコーティングと、該第1のコーティング上の第2の抵抗材料からなる第2のコーティングと、を含む、実施態様1〜4のいずれか1項に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様6]
前記第1の抵抗材料が酸化スズインジウムであり、かつ前記第2の抵抗材料が酸化スズである、実施態様5に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様7]
前記電極、前記リード線、および前記導電領域が、銀エポキシ導電性インクを含む、実施態様1〜6のいずれか1項に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様8]
前記保護材料が、前記保護材料の摩擦係数を減少させる化合物を含む、実施態様2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様9]
前記化合物が、オルガノシロキサンおよびフルオロカーボンの一方または両方を含む、実施態様8に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様10]
可撓性ディスプレイをさらに含み、その際前記可撓性容量式タッチセンサが可撓性ディスプレイに連結されている、実施態様1〜9のいずれか1項に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様11]
前記第2の層が、前記第2の層から反射された光を拡散する粗面を含む、実施態様2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様12]
前記第2の層が、前記粗面を形成する透明粒子を含有する、実施態様11に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様13]
センサを電磁線から保護するために、前記第2の面上に透明導電性材料からなる他の可撓性層をさらに含む、実施態様1〜12のいずれか1項に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様14]
前記第2の層が、前記第1の層上の第1の材料からなる第1のコーティングと、前記第1のコーティング上の第2の材料からなる第2のコーティングと、を含み、該第1のコーティングのモジュラスが、該第2のコーティングのモジュラスよりも小さい、実施態様2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様15]
前記第1の材料が第1のポリマーであり、前記第2の材料が第2のポリマーあり、かつ該第1のポリマーのモジュラスが該第2のポリマーのモジュラスよりも小さい、実施態様14に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様16]
前記第1の層が、前記第2の層、前記第1の層、および前記基板の中立応力面に位置する、実施態様2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様17]
前記第2の層が、前記第2の層に低レベルの導電性を付与する物質を含む、実施態様2に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様18]
前記物質が無機導電性粒子を含む、実施態様17に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様19]
前記物質が真性導電性ポリマーを含む、実施態様17に記載の容量式タッチセンサ。
[実施態様20]
前記電極、前記リード線、および前記導電領域を覆う絶縁性インクのコーティングをさらに含む、実施態様1〜19のいずれか1項に記載の容量式タッチセンサ。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明による可撓性容量式タッチセンサの平面図である。
【図2】図1に示される可撓性容量式タッチセンサの図1のライン2−2に沿った概略断面図である。
【図3】本発明による可撓性容量式タッチセンサの代替実施形態の概略断面図である。
【図4】電極、電気リード線、および導電領域のみを示す図1の可撓性容量式タッチセンサの平面図である。
【図5】抵抗層中のレーザー切削部のみを示す図1の可撓性容量式タッチセンサの平面図である。
【図6】基板のみを示す図1の可撓性容量式タッチセンサの平面図である。
【図7】本発明による可撓性容量式タッチセンサの代替実施形態の平面図である。
【図8】本発明による可撓性容量式タッチセンサを製造するための製造システムの概略図である。
【図9】図8に示される製造システムによる可撓性容量式タッチセンサの製造に使用するための基板材料のシートの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面とを有する薄肉可撓性透明基板と、
前記第1の面上の抵抗材料からなる第1の層であって、薄肉、透明、連続的で可撓性であり、かつ該第1の面上でタッチセンサ用のアクティブタッチ領域に一致する表面を覆っている、該第1の層と、
前記第1の層と電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性な電極であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該アクティブタッチ領域内で該第1の層にわたって電位を印加するように適合化されている電極と、
該電極に、および該電極から、電気信号を伝送するための、該電極に電気的に接触した状態にある複数の薄肉可撓性電気リード線と、
前記第1の層に電気的に連通した状態にある複数の薄肉可撓性な導電領域であって、前記アクティブタッチ領域の周囲に沿って配置され、かつ該第1の層全体にわたり該電位を該アクティブタッチ領域内で線形化するように適合化された構図を形成する導電領域と、
を含む、可撓性容量式タッチセンサであって、前記第2の面上に、前記センサを電磁線から保護するための、透明の導電材料の別の可撓性層をさらに有する、容量式タッチセンサ。
【請求項2】
前記第1の層上に保護材料からなる第2の層をさらに含み、該第2の層が、薄肉で可撓性で透明であり、かつ前記アクティブタッチ領域内で前記第1の層の全表面を覆っており、また、前記保護材料が前記保護材料の摩擦係数を減少させる化合物を含む、請求項1に記載の容量式タッチセンサ。
【請求項3】
前記化合物が、オルガノシロキサンおよびフルオロカーボンの一方または両方を含む、請求項2に記載の容量式タッチセンサ。
【請求項4】
前記第2の層が、真性導電性ポリマーを含む、請求項1又は2に記載の容量式タッチセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−151807(P2008−151807A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58293(P2008−58293)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【分割の表示】特願2002−582491(P2002−582491)の分割
【原出願日】平成14年3月25日(2002.3.25)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】