説明

可視光応答性二酸化塩素発生剤の組成ならびに当該組成による二酸化塩素徐放製品

【課題】 未使用時長期保存安定性の確保、使用状態の一時停止の実現、使用時の異物混人、誤飲をあらかじめ予防できる高い安全性を確保した製品形態、使用時の外的環境に左右されず常に一定の二酸化塩素を放出する製品形態の設計。
【解決手段】 可視光応答性光触媒材料と亜塩素酸塩を混合してなる可視光応答性二酸化塩素発生剤を容器内に収容し、防水透湿性の栓によって密封し、熱源および光源を備えた機構に可視光応答性二酸化塩素発生剤を収容した容器を取り付け、使用時には、可視光を照射の有無によって二酸化塩素の発生の有無を制御できる可視光応答性二酸化塩素発生剤ならびに当該組成を用いた二酸化塩素徐放製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の任意の箇所に設置し、空間内の殺菌・ウイルスの不活化・花粉症原因タンパク質などアレルゲンタンパク質の変性・悪臭物質の消臭といった空間内の衛生管理を目的に、二酸化塩素を未使用時にまたは不要時には発生させず、必要なときにだけ発生させることを可視光によって可能にする二酸化塩素の発生方法ならびに、当該方法によって得られた可視光応答性二酸化塩素を徐放させる製品形態に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は細菌・ウイルス・悪臭物質・花粉症アレルゲンタンパク質・鉄マンガン除去などの用途に優れた効果を発揮することは周知であり、水道水の消毒、産業廃水の浄化、空調冷却塔内の菌対策、循環式温浴施設の菌対策、空間の消毒など多くの産業的用途で二酸化塩素を利用した製品が実用化されている。
【0003】
しかし、その優れた特性を一般家庭などで使用する場合、未使用保管時の保存安定性と使用時の作業性、そして使用中の安全性の3つの問題を整合させることが難しく、家庭用ではこの種の二酸化塩素発生剤はほとんど販売されていない。例外的に販売された製品であっても、使用時に活性化剤を添加する製品形状であったため、使用初期には濃度が高くなりすぎ安全性を損なうため、使用場所によっては、気分が悪くなるといった問題が発生した。
【0004】
米国産業衛生専門家会議による二酸化塩素暴露時の基準値は、TLV−TWA0.1ppm、TWA0.3ppm。米国立労働安全衛生研究所によれば同基準値は、TWA0.3ppmとされており、従来の製品では二酸化塩素ガスの徐放が適切に管理することができず、二酸化塩素暴露濃度の基準値を大きく上回ることがあり、その結果上記のような問題が発生した。
【0005】
先行技術文献によれば、二酸化塩素ガスの徐放製剤には2種類の使用形態がある。第一の方法は、亜塩素酸塩と酸を別々に分けて、使用時に両者を混合し二酸化塩素を発生させる形態であり、第二の方法はあらかじめ亜塩素酸塩と酸を混合し二酸化塩素を発生させたものをゲル状などにするものである。
【0006】
第一の方法は、未使用時の保存安定性の点で優れているが、使用時にはいわばコップに入った亜塩素酸塩の水溶液に酸化剤とゲル化剤を入れるという製品形態であるがゆえに、使用時の作業性を良くするためには、こぼれたりすることがないように主剤を収納し、酸化剤を入れる主剤容器の開口部はある程度の大きさが必要であり、さらにそのような形状であるため、二酸化塩素ガスの放出が使用初期には反応が促進し大きく高濃度になり、その後は低濃度になってしまうため、振れ幅が極めて大きく、使用後の安全性の点では欠陥製品であった。
【0007】
第二の方法は、特許出願公開平11−27808、特許第4109165号で提案されている方法であり、具体的には亜塩素酸塩溶液を吸水性の樹脂に吸着させ、ゲル化する際に粘土質や二酸化塩素ガスを吹き込む方法である。このようにすることで事前に二酸化塩素を含有したゲル剤を作っておく事が可能になり、使用する際に酸化剤や活性化剤を添加する手間が必要ないとされている。
【0008】
しかし、この方法では未使用時の保存性がまったく保証できない。二酸化塩素は塩化ビニル樹脂、テフロン、ABSを除いて、その他の汎用的な樹脂を侵すため、容器であっても二酸化塩素を長期間収容していると劣化して容器が割れてしまう。また、一般的なポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどを素材としたフィルムなどを積層し袋状に加工したものに、二酸化塩素の溶液やゲルを入れた場合もより短期間で袋が破袋してしまい、このような製品形態では販売できなかった。
【0009】
また、二酸化塩素に対する耐薬品性を担保しえる素材を選択し容器を成型し、内部に二酸化塩素ゲルを収容し、かつ二酸化塩素ガスに対するバリア性に優れた蓋材で密封しても、二酸化塩素ゲルを収めた容器内に空隙があれば、保存時に二酸化塩素ガスがゲルから離脱し、空隙部分に拡散してしまうため、蓋をあけた直後に二酸化塩素ゲルに含まれる二酸化塩素濃度が一気に低下する。さらに蓋材がバリア性の素材と基材とを積層したフィルムによって構成されている場合は、高濃度の二酸化塩素に暴露し続ける結果、デラミが発生したり、最悪の場合はフィルムそのものの劣化によって内容物が漏れることもある。従って、長期間性能低下なく保存維持することが極めて難しく、例えば、3年間の保存による性能低下を10%未満に維持するといった製品設計を行うことができなかった。
【0010】
さらに、近年ではプラズマ放電などにより電荷を帯びたイオンを生成し、空間に放出させることで、空間に浮遊するウイルスや細菌に付着し、発生したOHラジカルなどが菌やウイルスを不活化すると喧伝する製品が実用化されているが、これらの製品では発生したイオンが消滅するまでの時間が数秒と極めて短く、効果が限定される上、衣服や器物に付着した細菌やウイルスに対してはほとんど効果がないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許出願公開昭60−161307
【特許文献2】特許出願公開昭64−71804
【特許文献3】特許出願公開平9−202706
【特許文献4】特許出願公開2002−370910
【特許文献5】特許出願公開平11−27808
【特許文献6】特許第4109165号
【特許文献7】特許出願公開平6−233985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明によって解決しようとする課題は、以下に述べる4つの課題をすべて解決する空間衛生管理用二酸化塩素徐放製品の組成ならびに製品形態を開発することにある。
【0013】
第一の課題は、未使用時の長期保存安定性を維持することである。第一の課題が有する技術的問題は2つある。従来の技術では、すでに二酸化塩素となった液体やゲルを容器あるいは袋に入れた状態では、樹脂の劣化、二酸化塩素濃度の低下が不可避的に発生し、可能とする技術であっても1年程度しか実際には性能を維持することが出来ず、より長期間性能を維持することは、二酸化塩素の沸点が11℃であり、蒸気圧が101kpaであることからわかるように、原理的に何らかの担体に二酸化塩素を封じ込めた状態で濃度を維持することは非常に困難である。
【0014】
つまり1つ目の問題は、二酸化塩素そのものの物性故に長期間液体やゲルなどの担体に封じ込めておくことが難しいという点である。
【0015】
2つ目は二酸化塩素を収容する容器や袋の材質の問題である。二酸化塩素は、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂以外のあらゆる樹脂を侵し、金属も腐食させるため、容器や袋の選定が極めて困難になる。原理的にあらかじめ二酸化塩素を液体ないしゲルなどにした製品において、より広範囲での使用を前提とした製品設計を行うと、必然的に内部の二酸化塩素濃度を高濃度にしなければならず、その結果、収容する容器や袋は長期間高濃度の二酸化塩素に暴露するため、極めて高い水準の耐二酸化塩素性が求められ、コスト的にも製品設計的にも困難を極める。
【0016】
第二の課題は、使用時の簡便な作業性を提供することと未使用時の安全性の問題である。最も簡便な作業性は最初から二酸化塩素ゲルや液体の状態になっており、蓋をあければ使用可能な状態にしておくことであるが、それが従来の技術では製品として要求される長期保存安定性を維持することが不可能であることは第一の課題で明らかとなった。
【0017】
そこで、市販されている製品では、使用時に亜塩素酸塩の水溶液にゲル化剤と酸化剤を混合したものをふりかけて二酸化塩素の発生とゲル化を行う製品やあらかじめ酸化剤の水溶液に吸水性樹脂などを加えて膨潤させた状態にした上で、使用時に亜塩素酸塩の水溶液を添加するタイプの製品が流通している。これらの製品では、添加剤を加えるという作業を行うため、必然的に作業をしやすい製品形態に加工せざるを得ず容器形状や材質が限定されてしまう。その結果、従来市販されている製品形態の中でも、活性化剤を容器に添加するという形態であるが故に、予期していない薬品が添加されるリスクを排除することができない。特に亜塩素酸塩の水溶液の入った容器に、酸化剤とゲル化材の粉末を入れるタイプの製品では、誤ってハイターなどの次亜塩素酸溶液が混合した場合、急激な反応によって、極めて危険な濃度の二酸化塩素や塩素ガスが発生する可能性が否定できない。ハイターに限らず、急激な反応を起こす可能性のある重曹などは日常的に家庭にあるものであり、さらには、誤飲の可能性もあり使用者の安全面で問題があった。
【0018】
さらに、亜塩素酸塩の水溶液を収容する場合、それが樹脂製の容器であっても袋であっても、二酸化塩素の時と同様に素材を劣化させてしまうため、長期保存安定性の点でも難しく、特に袋状に加工した場合、PP・PE・PET・NYなど汎用的に袋材の作成に用いられる素材では1年以内に破袋してしまう問題もあった。そのため、従来技術ではダブルバック形式によって主剤と活性化剤を反応させる技術も応用することができなかった。
【0019】
第三の課題は、使用後の二酸化塩素ガスの空間内における徐放性の問題である。上述の国際機関が定める通り、二酸化塩素は有用な物質であるが、高濃度では毒性も存在する。従って、製品としては所与の空間において任意の濃度に保たれることが必要であり、そのためには徐放性を与える製品設計が必要であった。しかし、従来の技術では、第一、第二の課題があったため、徐放性の問題が事実上無視されてしまい、濃度が高濃度になりすぎる場合や、低濃度になりすぎて効果が期待できない欠陥製品が販売されるに至った。
【0020】
第四の課題は、従来のあらゆる二酸化塩素徐放製品が不可能であった、徐放性の用時制御の問題である。上述の通り、近年販売されているすべての二酸化塩素徐放剤は、その製品形態上、亜塩素酸塩に活性剤を添加するという反応機構であるため、一旦反応を開始すると途中で反応を停止することができず、途中で使用を中断し、その後再開するといった用時制御が不可能であった。この点はいうまでも無駄であり、非効率である。
【発明を解決するための手段】
【0021】
本発明は、第一の課題を解決するための方法として、鋭意検討を重ねた結果、可視光応答性光触媒材料と亜塩素酸塩を単に混合するだけで、暗所保管時には二酸化塩素を発生させず、明所においては二酸化塩素が発生する可視光応答性二酸化塩素発生剤が得られることを発見した。
【0022】
その結果、第一の課題である長期保存安定性の問題はすみやかに解決される。なぜなら、未使用時には遮光性のケースや袋に可視光応答性二酸化塩素発生剤を収容するだけで、長期保存安定性が保たれるからである。
【0023】
さらにこの可視光応答性二酸化塩素発生剤は第二の課題の解決にも極めて有効である、なぜなら従来の製品のように二酸化塩素を保存する方法ではないため、濃度の低下を考慮する必要はなく、前駆物質たる亜塩素酸塩にあらかじめ活性剤として機能する可視光応答性光触媒材料を添加しておくことで、蛍光灯程度の光量下に晒すだけで二酸化塩素の発生を促すことができるため、従来の製品のように活性剤を添加するといった作業をまったく必要としないからである。
【0024】
第三の課題は、徐放性の問題である。従来の方法では防水透湿性フィルムによりガス透過量を任意に制御する方法があったが、外部環境の温度変化によってガス透過量は必然的に変化する問題点があった。しかし、本発明によれば熱源および光源を製品に組み込みことにより、防水透湿性を有し所定の温度下において一定のガス透過量を有する素材によって作成された栓を使用することで外部環境の変化によらず、一定の温度、一定の光源、一定のガス透過量を得る事ができるため、常に安定した二酸化塩素の徐放性を得る事が可能となる。
【0025】
本発明の最大の特徴は第四の課題を解決した点にある。従来の二酸化塩素発生における前駆物質である亜塩素酸塩に可視光応答性光触媒材料を単に混合添加するという一見単純でありながら、コロンブス的転回によって光の有無を二酸化塩素の発生の有無に変換することが可能になり、その結果反応を一時的に停止し二酸化塩素の放出を任意に一時停止させることが可能になった。
【発明の効果】
【0026】
本発明の可視光応答性二酸化塩素徐放性製品は、使用者の任意のタイミングで二酸化塩素を発生させ、空間内に徐放させることを実現した。
【0027】
未使用時においては、暗所に保管するだけで年単位で長期間保存安定性が保たれる。光を二酸化塩素発生の契機とするため、可視光応答性二酸化塩素発生剤を収容する容器は、完全に密閉した可視光応答性二酸化塩素発生剤に直接触れない容器構造を選択することができる。これにより乳幼児や認知症患者などの誤飲を予防することができるようになる。
【0028】
さらに、製品に光源および熱源を組み込むことにより、従来の製品のように活性剤添加直後に極めて徐放性が極大化する問題もなく、常に同じ徐放性を得ることができるため、空間内の濃度制御が容易であり、安全性の点でも従来の製品を上回る。
【0029】
加えて、従来の製品では、常時発生し続けるため、例えば公衆トイレなどに設置した場合、人がいない夜間も二酸化塩素が発生し続け、しかも閉鎖した空間であるため、翌日二酸化塩素濃度が安全性のACGIHなどの暴露濃度基準値を上回る場合があるが、本発明の可視光応答性二酸化塩素徐放性製品であれば、夜間においては発生を停止することも、発生量を減少させることも可能になり、効率・安全性の両方の点で従来製品にない機能性を提供することが可能になる。
【0030】
空間に放出される二酸化塩素の発生から消滅までの時間は、近年販売されているイオン発生器の数百倍から数万倍の期間維持され、さらに器物や衣服などに付着した細菌やウイルスに対しても顕著な効果がある。加えて当該発明による可視光応答性二酸化塩素発生剤は必ずしもイオン発生器のような電源を必要とせず、蛍光灯程度の光源であっても十分に機能するため、コスト面でも有利である。
【0031】
製品としての形態では、従来の活性剤を容器に添加するタイプやダブルバックなどの袋タイプなどと異なり、可視光応答性二酸化塩素材料を収容し、二酸化塩素ガス放出部分を備えるだけの製品形態であるため、製品設計上のデザインの自由度が格段に広げることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の詳細な内容について説明する。まず、請求項第一項から第五項の本発明の可視光応答性二酸化塩素発生剤の基本的な原料となる薬剤の選択について述べる。
【0033】
本発明において使用される亜塩素酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムのような亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸カルシウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩があげられるが、亜塩素酸ナトリウムがもっとも入手しやすく使用上もコストの面でも問題なく利用できる。
【0034】
可視光応答性光触媒材料としては、既知のものをすべて使用することが出来、使用上の制約は何もない。代表的な材料としては酸化タングステンと酸化鉄の混和したもの、あるいは酸化タングステンと白金の混和したもの、同様に酸化タングステンと酸化鉄と白金を混和したものなどがあげられるがなんらこの材料に制約を受けるわけではなく、可視光で光触媒作用を得られる材料であば、コスト面で許す範囲でいかなる材料でも選択することが可能である。
【0035】
また、上述のように選択された原料は、特別な操作をまったく必要とせず、単純に混和したのみで可視光に応答し二酸化塩素が発生する。
【0036】
可視光応答性光触媒材料と混和する亜塩素酸塩は粉末であるだけでなく、水溶液として使用することができる。一般的な光触媒材料による浄化作用は、必ず光触媒材料と浄化対象となる物質が触れなければならず、その効果は光触媒加工された表面に限られるが、亜塩素酸塩と混和することにより、可視光との応答により二酸化塩素が発生し、発生した二酸化塩素が空間全体に拡散するため、単なる光触媒加工による浄化作用以上の浄化効果を得る事が出来る。
【0037】
可視光応答性光触媒作用による効果は、当然に可視光を必要とするため、もっとも望ましい可視光応答性光触媒作用による二酸化塩素の生成方法は、可視光応答性光触媒材料を亜塩素酸溶液内に均一に分散させた状態であるが、亜塩素酸塩粉末と可視光応答性光触媒材料粉末を混合した態様であっても、まったく問題なく二酸化塩素を発生させることができる。ただし、可視光応答性光触媒材料は希少であり高価でもあるあめ、再利用する事が望ましいため、理想的な可視光応答性二酸化塩素発生剤の組成は、固体の可視光応答性光触媒材料と液体の亜塩素酸塩水溶液である。このような組成とすることで、亜塩素酸塩水溶液からすべての二酸化塩素が発生したのちは、可視光応答性光触媒材料はそのままに、亜塩素酸塩水溶液のみを容易に取り替えることが可能になり、可視光応答性光触媒材料を廃棄することなく再利用する事ができる。
【0038】
可視光応答性光触媒材料を亜塩素酸塩溶液に入れる場合、亜塩素酸塩溶液の濃度は、実用上いかなる濃度でもまったく問題なく使用できる。本発明による可視光応答性二酸化塩素発生剤の場合、一般的な徐放性二酸化塩素発生剤のように活性剤を添加する製品と異なり、反応が急激に進まないため、亜塩素酸塩溶液が高濃度であっても何ら問題なく使用できるが、亜塩素酸塩の量が発生する二酸化塩素量を規定するため、より高濃度であるほうが効果の持続性の点で望ましい。一方で、国内法規上亜塩素酸塩は25%以上では劇物とされるため、より望ましい亜塩素酸塩濃度は、0.1%から25%未満であればよく、さらに望ましくは5%から25%未満である。
【0039】
0.1%未満では、発生させうる二酸化塩素の総量が少なすぎて実用的でなく、25%以上では劇物に該当するため、毒劇物法上の制約を受けるため25%未満が取扱の点で望ましい。
【0040】
請求項3および請求項4にあるように可視光応答性光触媒材料をゲル化あるいは多孔質体に担持する方法は、可視光応答性光触媒材料と亜塩素酸塩の接触面積を極大化するための方法であり、可視光応答性光触媒材料をゲル化あるいは多孔質体に担持させることにより、少量の可視光応答性光触媒材料で効果的に二酸化塩素を発生させることが可能になる。
【0041】
ゲル化剤は亜塩素酸塩水溶液との反応性がなければ、任意のものを使用することができる。例えば、アラビアガム・トラガントガム・カラヤガム・アラビノガラクタン・カラギーナン・寒天・アルギン酸・キサンタンガム・ジェランガム・カードラン・プルラン・セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム・ポリアクリル酸ナトリウムから任意のものを選ぶことができるが、必ずしもこれらに限られるものではなく、亜塩素酸塩と可視光応答性光触媒材料の接触面積を極大化させる目的に資するものであれば、いかなる材料を使用することも可能である。
【0042】
同様に多孔質体に担持させる方法としては、ケイ酸ナトリウムの水溶液に可視光応答性光触媒材料を分散させ、硫酸や塩酸など酸を用いてケイ酸ゲルを作成し、乾燥、洗浄工程を経て、可視光応答性光触媒材料担持多孔質ケイ酸ゲルを作成、亜塩素酸塩水溶液に浸漬する。
【0043】
使用する可視光応答性光触媒材料は、亜塩素酸溶液の量に対して、0.1%未満であれば十分であり、望ましい使用量は0.001%から0.1%未満であり極少量の可視光応答性光触媒材料で十分な二酸化塩素の発生量が得られる。
【0044】
可視光応答性光触媒材料と亜塩素酸塩溶液を混合してなる可視光応答性二酸化塩素発生剤を収容する容器としては、亜塩素酸塩に対して耐薬品性を有する素材であれば、任意の材料を使用できる。具体的にはガラス・塩ビ・ABS・PETなどの素材をあげることができる。
【0045】
二酸化塩素ガスが放出するガス透過部分は、シリコンなど任意のガス透過量を有する素材や有機あるいは無機の樹脂素材に微細孔を1以上あけることで、ガス透過量を制御した防水透湿性素材を自由に選択することができる。ガス透過量は製品を実際に使用する空間によって任意の量を選択すればよい。
【0046】
一般的にガス透過量は内圧、ガス透過部分の面積、ガス透過部分の厚み、温度によって変化する。従って、請求項5、請求項6、請求項7にあげたように製品化においてより望ましい形態は、二酸化塩素ガス透過量が常に一定になるように熱源を製品に組み込むことが望ましい。また、本発明になる可視光応答性二酸化塩素発生剤においては、蛍光灯程度の光量であっても十分に二酸化塩素を発生させうるが、より安定した二酸化塩素の放出を確保するためには、発光ダイオードなどの光源を別途組み込むことが望ましい。
【0047】
熱源はニクロム線など一般的ないかなるものを用いてもよく電子回路でもって温度を制御し20℃から80℃、より望ましくは30℃から50℃で一定に保たれることが良い。20℃未満の低温では熱源を設置する意味がなく、80℃以上の高温になると火傷などの恐れがあり、また、蒸散も早くなるため有効期間が短くなりすぎる。亜塩素酸塩および可視光応答性光触媒材料を混和してなる可視光応答性二酸化塩素発生剤を収容した容器を熱源により暖めることで、容器内部の気体または液体の循環を促し、より効果的に亜塩素酸塩と可視光応答性光触媒材料を接触させることができる。
【0048】
光源は、発光ダイオードや蛍光灯など可視光を発するものであれば自由に選択できるが、美観や省エネルギー効率、コストを重視すれば発光ダイオードがもっとも効果的である。
【0049】
熱源および光源の製品への組み込みは、求められる製品性能によって決定すればよく、必ずしも光源および熱源の組み込みを必須の要件とするものではないが、二酸化塩素徐放性を安定させることができるため、用途に応じて組み込むことが望ましい。
【0050】
次に実施例、ならびに比較例によって本発明の効果を説明する。
【0051】
表1は、実施例1および実施例2および比較例1を各調整し、使用条件を変化させた状態で二酸化塩素の放出を確認したものである。使用期間は使用条件毎に1週間とし、使用期間▲1▼から使用期間▲4▼は連続的に測定している。
【表1】

【0052】
実施例1亜塩素酸ナトリウム25%溶液50mlをガラス製容器に入れる。酸化タングステン0.1g酸化鉄0.1を混和し、1%アルギン酸水溶液20mlに分散させ、塩化カルシウム溶液滴下し水洗して得た可視光応答性光触媒アルギン酸カルシウムゲルを5gをガラス容器に入れる。ガラス容器はシリコン栓で密封する。
【0053】
実施例2亜塩素酸ナトリウム0.5g酸化タングステン0.2g酸化鉄0.2gを混和しガラス容器に入れる。ガラス容器はシリコン栓で密封する。
【0054】
表1から明らかなように本発明によってなる可視光応答性二酸化塩素発生剤は、光があれば二酸化塩素が発生し、暗所で保存すると発生が停止抑制され、その後再度可視光を当てることで再生成が可能である。期間▲3▼の暗所保管においては期間▲2▼までの間にすでに容器内で発生していた二酸化塩素が期間▲3▼開始2日目まで徐放したが、その後は二酸化塩素が検出されなくなり、実施例1では溶液が亜塩素酸ナトリウム水溶液と同様のほぼ無色透明の液体になっていた。期間▲4▼で再度発光ダイオードにより可視光を照射すると、再びに酸化塩素の発生が始まり、期間▲1▼および▲2▼と同様の二酸化塩素濃度が検出された。
【0055】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によって得られた用時二酸化塩素発生剤の場合、従来の製品とは異なり、長期間の保存安定性があり、さらに二酸化塩素の放出を一時的に停止する事ができるため、より効果的に空間の衛生管理に使用することができる。また、防水性の容器を使用すれば水中でも使用できるため、水中および空間の殺菌・ウイルスの不活化・消臭・花粉症アレルゲンタンパク質の変性・防カビ・防藻の用途において任意の容量を任意の濃度で処理することが可能であり、食品の殺菌・浄化槽の殺菌およびトリハロメタン類の管理・産業廃水の浄化・冷却塔、家庭用、業務用の温浴設備の循環水の殺菌・畜産施設の空間殺菌に幅広く用いることが可能であり、利用可能な産業分野は飲食店・畜産・空調管理・温浴施設・図書館・鉄道・ホテル・一般家庭・工場・消防・警察・浄化槽など微生物汚染および臭気の問題を処理水または空間内に潜在的に抱えるすべての施設において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸塩と可視光応答性光触媒材料を混合することを特徴とする可視光応答性二酸化塩素発生剤
【請求項2】
請求項1に記載の可視光応答性光触媒材料が酸化タングステンと酸化鉄または白金の一方または酸化鉄と白金を混合したものからなる可視光応答性二酸化塩素発生剤
【請求項3】
請求項1に記載の可視光応答性光触媒材料を多孔質体に担持させることを特徴とする可視光応答性二酸化塩素発生剤
【請求項4】
請求項1に記載の可視光応答性光触媒材料をゲル化剤によってゲルにすることを特徴とする可視光応答性二酸化塩素発生剤
【請求項5】
請求項1に記載の可視光応答性二酸化塩素発生剤を二酸化塩素および亜塩素酸塩に対する耐薬品性の高い容器に収容し、防水透湿性を有するガス透過量が任意に制御された素材によってなる栓で容器を密閉することを特徴とする可視光応答二酸化塩素徐放製品
【請求項6】
請求項5に記載の可視光応答二酸化塩素徐放剤に光源を組み込むことで使用時の外部環境の光量に左右されることなく、光源から得られる光量によって一定の二酸化塩素が発生されることを特徴とする可視光応答性二酸化塩素徐放製品
【請求項7】
請求項5に記載の可視光応答二酸化塩素徐放剤に熱源を組み込むことで使用時の外部環境の温度差に左右されることなく、一定の温度に可視光応答性二酸化塩素発生剤が保たれ、二酸化塩素の放出量が一定に保たれることを特徴とする可視光応答性二酸化塩素徐放製品
【請求項8】
請求項5に記載の可視光応答二酸化塩素徐放剤に光源および熱源を組み込むことにより、使用時の外部環境の光量および温度差に影響されることなく、常に一定の二酸化塩素が発生されることを特徴とする可視光応答性二酸化塩素徐放製品

【公開番号】特開2012−111673(P2012−111673A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277449(P2010−277449)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508133053)有限会社クリーンケア (4)
【Fターム(参考)】