可視光線透過度が高い軟性金属積層板
【課題】本発明による軟性金属積層板は、透過度が高くなることでICパッケージングの際に不良率を低める効果をもたらす。
【課題を解決するための手段】本発明は、可視光線透過度が高い軟性金属積層板に関するものであって、本発明による軟性金属積層板は、高分子フィルムと、前記高分子フィルムの一面にクロムまたはニッケル−クロム合金のコーティングにより形成されるタイコート(tie coat)層と、前記タイコート層上に形成される金属シード層と、前記金属シード層の露出面に形成される金属伝導層とを有し、光透過度(λ=600nmにおいて)が63%から80%であることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】本発明は、可視光線透過度が高い軟性金属積層板に関するものであって、本発明による軟性金属積層板は、高分子フィルムと、前記高分子フィルムの一面にクロムまたはニッケル−クロム合金のコーティングにより形成されるタイコート(tie coat)層と、前記タイコート層上に形成される金属シード層と、前記金属シード層の露出面に形成される金属伝導層とを有し、光透過度(λ=600nmにおいて)が63%から80%であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性金属積層板に関するものであって、より詳しくは、可視光線透過度が高い軟性金属積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷回路とは、部品を接続する電気配線を回路設計に従って配線図形で表現したものであって、これを適当な方法で絶縁物の上に電導体として再現したものを印刷回路基板(Printed Circuit Board;PCB)または印刷配線基板(Printed Wiring Board;PWB)と言う。
【0003】
印刷回路基板は各種の部品を接続する電気配線を回路設計に従って配線図形で表現したものであり、各種の部品を連結するか支持する役割を果たす。特に、ノート型パソコン、携帯電話、PDA、小型ビデオカメラ及び電子手帳などの電子機器の発達に伴い印刷回路基板の需要が増大した。ひいては、上記の電子機器は携帯性が強調されているためますます小型化及び軽量化されて行きつつある。したがって、印刷回路基板はさらに集積化、小型化、軽量化されている。これによって、軟性材料であるポリエステル(Polyester)またはポリイミド(Polyimide)のような耐熱性プラスチックフィルムからなる軟性印刷回路基板(Flexible Print Circuit Board;FPCB)の使用が増大している。このような軟性印刷回路基板は、撓み、重ね、折れ、巻かれ、捻れなどの柔軟性を持っているため小型電子機器や薄型電子部品にも多く用いられている。
【0004】
軟性印刷回路基板に回路を形成する前の原板を軟性金属積層板とし、このような軟性金属積層板は軟性の良いフィルムに導電体金属を接着して製造することが一般的である。しかし、フィルムと金属との接着が容易ではないため、フィルム表面の粗度を制御するか、フィルム表面を活性化させるか、またはフィルムとの結合に優れた金属を付着してタイコート(tie coat)層を形成するなどの方法を通じてフィルムと金属の接着力を増大させる方法が講じられている。
【0005】
しかし、上記のような方法で軟性金属積層板を製造しても軟性金属積層板にパターニング工程を施す場合、温度上昇によって接着層が剥離されるか、素子実装作業の際フィルムに残渣が残留するなどの問題点が発生する。特に、フィルムに残留する残渣により軟性金属積層板の可視光線透過度が低くなって、IC(Integrated Circuit)パッケージング工程におけるギャングボンディング(gang bonding)の際に回路を整列するのに難しいという問題点がある。一般に、ICパッケージング工程においては、軟性金属積層板と集積回路(IC)の整列時反射を通じて整列をするか透過を通じて整列をするが、上述したようにフィルムに残渣が残留して軟性金属積層板の光透過度が低い場合、不良率が増加する問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであって、可視光線透過度が高い軟性金属積層板を提供するのにその目的がある。
【0007】
本発明の他の目的及び長所は下記の説明によって理解されることができ、本発明の実施例によってより明らかになる。また、本発明の目的及び長所は特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を果たすために、本発明による軟性金属積層板は、高分子フィルムと、前記高分子フィルムの一面にクロムまたはニッケル−クロム合金のコーティングにより形成されるタイコート層と、前記タイコート層上に形成される金属シード層と、前記金属シード層の露出面に形成される金属伝導層とを含み、可視光線透過度が63%から80%であることを特徴とする。
【0009】
上記タイコート層の厚さは50〜200オングストローム(Å)であることが望ましい。
【0010】
また、好ましくは、前記金属シード層は、スパッタリングまたは真空蒸着法のいずれか一つにより形成される。
【0011】
また、好ましくは、前記金属シード層は、上記タイコート層上にスパッタリング方式により形成された第1シード層と、前記第1シード層に真空蒸着法により形成された第2シード層とを含むことができる。
【0012】
また、前記可視光線の波長は、600nmであることが望ましい。
【0013】
一方、本発明による軟性金属積層板の上記タイコート層は、0.6ないし0.7kgf/cmの剥離強度を有することを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念をもとに解釈されなければならない。従って、本明細書に記載された実施例は本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1aから図1dは、本発明の好ましい一実施例による軟性金属積層板の製造工程の手順による断面図であり、図2は、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板製造方法の工程手順図である。
【0016】
図1及び図2に関し、本発明の一実施例による軟性金属積層板の製造方法は、軟性金属積層板の製造に必要な高分子フィルム10を用意する段階(S10)、所定の比率で製造されたニッケル−クロム合金を前記高分子フィルムの一面にコーティングしてタイコート層20を形成する段階(S20)、タイコート層20に金属シード層30を形成する段階(S30)及び金属シード層30に金属伝導層40を形成する段階(S40)を含む。
【0017】
段階S10においては、耐熱高分子フィルムを真空状態で活性化イオンを通じて表面処理して軟性金属積層板の製造に必要な高分子フィルム10を用意する。ここで、高分子フィルム10は軟性金属積層板の基礎部材として、屈曲性と機械的強度に優れた物質を用いる。好ましくは、高分子フィルム10としては、高い耐熱性と屈曲性及び優れた機械的強度を有する物質であるポリイミドフィルムを用いる。
【0018】
段階S20においては、高分子フィルム10に金属からなるタイコート層20を真空成膜法により形成する(段階S20)。具体的に、高分子フィルム10を5E−6 Torrの真空が維持されるチャンバ内に搬入し、アルゴン、酸素、窒素などのガスまたはこれらの混合ガスを1E−1〜1E−3 Torrになるように注入した後、プラズマで乾式処理して高分子フィルム10の表面を改質する。次いで、チャンバ内の真空度を1.5E−3 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で金属ターゲット(ニッケル−クロム合金の金属ターゲット)を用いてスパッタリング工程を進めることで高分子フィルム10上にタイコート層20を形成する。
【0019】
ここで、タイコート層0の厚さが薄過ぎると、耐熱性と耐蝕性が脆弱になって高温処理後、または回路形成の際めっき液浸透によって剥離される恐れがある。タイコート層20は、高分子フィルム10と金属シード層30を堅く結合させるために形成されるものであるため、厚過ぎる必要はない。従って、タイコート層20の厚さは50〜200Åになるようにすることが望ましい。また、過度な表面改質は光透過度を低下させる原因となるため、適切な表面処理をすることが望ましい。
【0020】
一方、本発明の実施例においてはタイコート層20を形成する方法としてスパッタリング方式を採用したが、本発明はこれに限定されるのではなく、真空蒸着法など公知の他の方式が採用できることは勿論である。
【0021】
次いで、工程S30においては、チャンバ内の真空度を1.5E−3 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で銅または銅合金ターゲットを用いてスパッタリング工程を進めることでタイコート層20上に金属シード層30を形成する。
【0022】
工程S40においては、金属シード層30に金属伝導層40を形成する。金属伝導層40は、めっき液を用いる電解めっき方式を用いて形成させる。好ましくは、上記金属伝導層40は銅または銅合金層である。
【0023】
図3は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板の断面を概略的に示した断面図であり、図4は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板の製造工程の手順図である。図3または図4において図1または図2と同一の参照符号の構成は同一の構成要素とし、その詳細な説明は省略する。
【0024】
図3または図4に関し、金属シード層30は、第1金属シード層31と第2金属シード層32との二重層を形成する。このため、金属シード層30の製造工程は、第1金属シード層31の形成工程と第2金属シード層32の形成工程に区分して行われる。工程S31において、チャンバ内の真空度を1.5E−3 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で銅または銅合金ターゲットを用いてスパッタリング工程を進めることでタイコート層20上に第1金属シード層31を形成し、工程S32においては、チャンバ内の真空度を1.5E−4 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で真空蒸着法を用いて第1金属シード層31上に第2金属シード層32を形成する。
【0025】
次に、実験例を通して本発明の目的を果たすためのタイコート層の最適な組成と厚さを開示する。
【0026】
実施例1
本発明者は次のような過程を経て軟性金属積層板を製造した。まず、高分子フィルムの表面を乾式処理した後スパッタリング方式によりニッケル−クロム合金からなるタイコート層を形成した。このとき、タイコート層の組成と厚さは、下記表1に示された条件で多様に変化させた。それから、タイコート層上にスパッタリング方式により第1金属シード層を形成し、電子ビーム蒸発方式の真空蒸着により第2金属シード層を形成し、電解めっきにより8μmまで金属伝導層を形成して軟性金属積層板の製造を完了した。
【0027】
それから、軟性金属積層板上に耐酸テープまたはフォトレジストを用いて10cm×3mm大きさのマスクパターンを形成した。次いで、FeCl3 45%、45℃のエッチング溶液に軟性金属積層板を40秒間浸漬させてマスクパターンが形成された部分を除いた残りの部分の金属層を除去した。それから、常温の蒸溜水に3〜5回洗浄し、超音波洗浄機を用いて10分間2回以上洗浄して残留物を完全に除去し、圧縮窒素を吹いて水気を除去して試料製作を完了した。
【0028】
上記のような方法を通して試料製作を完了した後、剥離強度を測定し、サンプルを錫めっきしてパターンフィルム部位の残渣の存在可否を光学顕微鏡で確認した。
【0029】
下記[表1]は、30種のケースにタイコート層の組成と厚さを変化させて試料を製作した後、各試料に対する剥離強度を測定した結果と光学顕微鏡で観察した結果をまとめたものである。[表1]において、パターンのフィルム部位に残渣が残っている場合「○」で表示し、残渣が残っていない場合「×」で表示した。
【表1】
【0030】
一方、図5は、第8実施例に従って製造された軟性金属積層板の上面を光学顕微鏡で撮影した写真であり、図6は、第18実験例に従って製造された軟性金属積層板の上面を光学顕微鏡で撮影した写真であり、図7は、第23実験例に従って製造された軟性金属積層板の上面を光学顕微鏡で撮影した写真である。図面において、明るい部分がエッチングによって金属を除去した部分である。
【0031】
前記表1と図5から図7に関し、実験例1から15に示したように、ニッケル−クロム合金のニッケル含有比率が70%以下の場合には、フィルムに残渣があるため軟性金属積層板としての使用が適切ではないことを確認することができ、実験例16ないし30に示したように、ニッケル−クロム合金のニッケル含有比率が80%以上の場合には、タイコート層20の厚さとは関係なくフィルムに残渣が残っていないことを確認することができる。また、実験例16から30で測定されたタイコート層20の剥離強度は実験例1から15で示す接着力の強いクロムのみからなるタイコート層20の剥離強度と類似に測定されることが確認できる。従って、最適の剥離強度は具体的に、常温で0.60kgf/cm以上及び高温処理後0.3kgf/cm上の剥離強度を維持しながら最適なエッチング性を維持するためにニッケルとクロムの成分比を80:20〜95:5に維持することが望ましい。
【0032】
実施例2
前記実験例1の各サンプルに対して可視光線領域における光透過度を測定した実験例を説明する。下記[表2]は、前記実験例1の各軟性金属積層板サンプルの可視光線透過度を測定した結果である。
【表2】
【0033】
上記[表2]に示したように、前記実験例(1)のようにニッケルとクロムの成分比を80:20〜95:5に維持して製造された軟性金属積層板(実験例16から30)は、可視光線領域(特に、λ=600nm)において63%以上の透過度を示す。望ましくは、63%から80%で、さらに望ましくは64%から72%の可視光線透過度を示す。
【0034】
また、図8は、本発明の一実施例による軟性金属積層板の可視光線透過度を示したグラフであって、原材料フィルムの可視光線透過度801と前記実験例23の軟性金属積層板の可視光線透過度803を示したグラフである。図8に示したように、可視光線領域(λ=600nm)において原材料フィルムの光透過度は72.6%であり、本発明による軟性金属積層板の光透過度は原材料対比97.2%を示す。すなわち、本発明による軟性金属積層板の可視光線透過度は原素材フィルムの透過度対比90%以上である。同時に、図8に示したように、赤外線領域に近づくにつれて光透過度はさらに優れるようになる。
【0035】
以上のように、本発明は限定された実施例と図面とによって説明されたが、本発明はこれに限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なのは言うまでもない。
【0036】
本発明によると、タイコート層の組成と厚さを最適化することで接着力とエッチング性に優れ、原材料フィルムへの残渣を除去して可視光線領域における透過度を向上させICパッケージング工程で不良率を減らす効果がある。これによって顧客の工程性向上を図るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本明細書に添付される下記の図面は本発明の望ましい実施例を例示するものであって、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【図1a】図1aは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図1b】図1bは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図1c】図1cは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図1d】図1dは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の望ましい実施例による軟性金属積層板製造方法の工程手順図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板の断面を概略的に示した図面である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板製造方法の工程手順図である。
【図5】図5は、本発明の第8実験例に従って製造された軟性金属積層板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図6】図6は、本発明の第18実験例に従って製造された軟性金属積層板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図7】図7は、本発明の第23実験例に従って製造された軟性金属積層板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図8】図8は、本発明の第23実験例に従って製造された軟性金属積層板の可視光線透過度を示したグラフである。
【符号の説明】
【0038】
10…高分子フィルム 20…タイコート層
30…金属シード層 31…第1金属シード層
31…第2金属シード層 40…金属伝導層
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性金属積層板に関するものであって、より詳しくは、可視光線透過度が高い軟性金属積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷回路とは、部品を接続する電気配線を回路設計に従って配線図形で表現したものであって、これを適当な方法で絶縁物の上に電導体として再現したものを印刷回路基板(Printed Circuit Board;PCB)または印刷配線基板(Printed Wiring Board;PWB)と言う。
【0003】
印刷回路基板は各種の部品を接続する電気配線を回路設計に従って配線図形で表現したものであり、各種の部品を連結するか支持する役割を果たす。特に、ノート型パソコン、携帯電話、PDA、小型ビデオカメラ及び電子手帳などの電子機器の発達に伴い印刷回路基板の需要が増大した。ひいては、上記の電子機器は携帯性が強調されているためますます小型化及び軽量化されて行きつつある。したがって、印刷回路基板はさらに集積化、小型化、軽量化されている。これによって、軟性材料であるポリエステル(Polyester)またはポリイミド(Polyimide)のような耐熱性プラスチックフィルムからなる軟性印刷回路基板(Flexible Print Circuit Board;FPCB)の使用が増大している。このような軟性印刷回路基板は、撓み、重ね、折れ、巻かれ、捻れなどの柔軟性を持っているため小型電子機器や薄型電子部品にも多く用いられている。
【0004】
軟性印刷回路基板に回路を形成する前の原板を軟性金属積層板とし、このような軟性金属積層板は軟性の良いフィルムに導電体金属を接着して製造することが一般的である。しかし、フィルムと金属との接着が容易ではないため、フィルム表面の粗度を制御するか、フィルム表面を活性化させるか、またはフィルムとの結合に優れた金属を付着してタイコート(tie coat)層を形成するなどの方法を通じてフィルムと金属の接着力を増大させる方法が講じられている。
【0005】
しかし、上記のような方法で軟性金属積層板を製造しても軟性金属積層板にパターニング工程を施す場合、温度上昇によって接着層が剥離されるか、素子実装作業の際フィルムに残渣が残留するなどの問題点が発生する。特に、フィルムに残留する残渣により軟性金属積層板の可視光線透過度が低くなって、IC(Integrated Circuit)パッケージング工程におけるギャングボンディング(gang bonding)の際に回路を整列するのに難しいという問題点がある。一般に、ICパッケージング工程においては、軟性金属積層板と集積回路(IC)の整列時反射を通じて整列をするか透過を通じて整列をするが、上述したようにフィルムに残渣が残留して軟性金属積層板の光透過度が低い場合、不良率が増加する問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであって、可視光線透過度が高い軟性金属積層板を提供するのにその目的がある。
【0007】
本発明の他の目的及び長所は下記の説明によって理解されることができ、本発明の実施例によってより明らかになる。また、本発明の目的及び長所は特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を果たすために、本発明による軟性金属積層板は、高分子フィルムと、前記高分子フィルムの一面にクロムまたはニッケル−クロム合金のコーティングにより形成されるタイコート層と、前記タイコート層上に形成される金属シード層と、前記金属シード層の露出面に形成される金属伝導層とを含み、可視光線透過度が63%から80%であることを特徴とする。
【0009】
上記タイコート層の厚さは50〜200オングストローム(Å)であることが望ましい。
【0010】
また、好ましくは、前記金属シード層は、スパッタリングまたは真空蒸着法のいずれか一つにより形成される。
【0011】
また、好ましくは、前記金属シード層は、上記タイコート層上にスパッタリング方式により形成された第1シード層と、前記第1シード層に真空蒸着法により形成された第2シード層とを含むことができる。
【0012】
また、前記可視光線の波長は、600nmであることが望ましい。
【0013】
一方、本発明による軟性金属積層板の上記タイコート層は、0.6ないし0.7kgf/cmの剥離強度を有することを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念をもとに解釈されなければならない。従って、本明細書に記載された実施例は本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1aから図1dは、本発明の好ましい一実施例による軟性金属積層板の製造工程の手順による断面図であり、図2は、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板製造方法の工程手順図である。
【0016】
図1及び図2に関し、本発明の一実施例による軟性金属積層板の製造方法は、軟性金属積層板の製造に必要な高分子フィルム10を用意する段階(S10)、所定の比率で製造されたニッケル−クロム合金を前記高分子フィルムの一面にコーティングしてタイコート層20を形成する段階(S20)、タイコート層20に金属シード層30を形成する段階(S30)及び金属シード層30に金属伝導層40を形成する段階(S40)を含む。
【0017】
段階S10においては、耐熱高分子フィルムを真空状態で活性化イオンを通じて表面処理して軟性金属積層板の製造に必要な高分子フィルム10を用意する。ここで、高分子フィルム10は軟性金属積層板の基礎部材として、屈曲性と機械的強度に優れた物質を用いる。好ましくは、高分子フィルム10としては、高い耐熱性と屈曲性及び優れた機械的強度を有する物質であるポリイミドフィルムを用いる。
【0018】
段階S20においては、高分子フィルム10に金属からなるタイコート層20を真空成膜法により形成する(段階S20)。具体的に、高分子フィルム10を5E−6 Torrの真空が維持されるチャンバ内に搬入し、アルゴン、酸素、窒素などのガスまたはこれらの混合ガスを1E−1〜1E−3 Torrになるように注入した後、プラズマで乾式処理して高分子フィルム10の表面を改質する。次いで、チャンバ内の真空度を1.5E−3 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で金属ターゲット(ニッケル−クロム合金の金属ターゲット)を用いてスパッタリング工程を進めることで高分子フィルム10上にタイコート層20を形成する。
【0019】
ここで、タイコート層0の厚さが薄過ぎると、耐熱性と耐蝕性が脆弱になって高温処理後、または回路形成の際めっき液浸透によって剥離される恐れがある。タイコート層20は、高分子フィルム10と金属シード層30を堅く結合させるために形成されるものであるため、厚過ぎる必要はない。従って、タイコート層20の厚さは50〜200Åになるようにすることが望ましい。また、過度な表面改質は光透過度を低下させる原因となるため、適切な表面処理をすることが望ましい。
【0020】
一方、本発明の実施例においてはタイコート層20を形成する方法としてスパッタリング方式を採用したが、本発明はこれに限定されるのではなく、真空蒸着法など公知の他の方式が採用できることは勿論である。
【0021】
次いで、工程S30においては、チャンバ内の真空度を1.5E−3 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で銅または銅合金ターゲットを用いてスパッタリング工程を進めることでタイコート層20上に金属シード層30を形成する。
【0022】
工程S40においては、金属シード層30に金属伝導層40を形成する。金属伝導層40は、めっき液を用いる電解めっき方式を用いて形成させる。好ましくは、上記金属伝導層40は銅または銅合金層である。
【0023】
図3は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板の断面を概略的に示した断面図であり、図4は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板の製造工程の手順図である。図3または図4において図1または図2と同一の参照符号の構成は同一の構成要素とし、その詳細な説明は省略する。
【0024】
図3または図4に関し、金属シード層30は、第1金属シード層31と第2金属シード層32との二重層を形成する。このため、金属シード層30の製造工程は、第1金属シード層31の形成工程と第2金属シード層32の形成工程に区分して行われる。工程S31において、チャンバ内の真空度を1.5E−3 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で銅または銅合金ターゲットを用いてスパッタリング工程を進めることでタイコート層20上に第1金属シード層31を形成し、工程S32においては、チャンバ内の真空度を1.5E−4 Torrに維持しアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で真空蒸着法を用いて第1金属シード層31上に第2金属シード層32を形成する。
【0025】
次に、実験例を通して本発明の目的を果たすためのタイコート層の最適な組成と厚さを開示する。
【0026】
実施例1
本発明者は次のような過程を経て軟性金属積層板を製造した。まず、高分子フィルムの表面を乾式処理した後スパッタリング方式によりニッケル−クロム合金からなるタイコート層を形成した。このとき、タイコート層の組成と厚さは、下記表1に示された条件で多様に変化させた。それから、タイコート層上にスパッタリング方式により第1金属シード層を形成し、電子ビーム蒸発方式の真空蒸着により第2金属シード層を形成し、電解めっきにより8μmまで金属伝導層を形成して軟性金属積層板の製造を完了した。
【0027】
それから、軟性金属積層板上に耐酸テープまたはフォトレジストを用いて10cm×3mm大きさのマスクパターンを形成した。次いで、FeCl3 45%、45℃のエッチング溶液に軟性金属積層板を40秒間浸漬させてマスクパターンが形成された部分を除いた残りの部分の金属層を除去した。それから、常温の蒸溜水に3〜5回洗浄し、超音波洗浄機を用いて10分間2回以上洗浄して残留物を完全に除去し、圧縮窒素を吹いて水気を除去して試料製作を完了した。
【0028】
上記のような方法を通して試料製作を完了した後、剥離強度を測定し、サンプルを錫めっきしてパターンフィルム部位の残渣の存在可否を光学顕微鏡で確認した。
【0029】
下記[表1]は、30種のケースにタイコート層の組成と厚さを変化させて試料を製作した後、各試料に対する剥離強度を測定した結果と光学顕微鏡で観察した結果をまとめたものである。[表1]において、パターンのフィルム部位に残渣が残っている場合「○」で表示し、残渣が残っていない場合「×」で表示した。
【表1】
【0030】
一方、図5は、第8実施例に従って製造された軟性金属積層板の上面を光学顕微鏡で撮影した写真であり、図6は、第18実験例に従って製造された軟性金属積層板の上面を光学顕微鏡で撮影した写真であり、図7は、第23実験例に従って製造された軟性金属積層板の上面を光学顕微鏡で撮影した写真である。図面において、明るい部分がエッチングによって金属を除去した部分である。
【0031】
前記表1と図5から図7に関し、実験例1から15に示したように、ニッケル−クロム合金のニッケル含有比率が70%以下の場合には、フィルムに残渣があるため軟性金属積層板としての使用が適切ではないことを確認することができ、実験例16ないし30に示したように、ニッケル−クロム合金のニッケル含有比率が80%以上の場合には、タイコート層20の厚さとは関係なくフィルムに残渣が残っていないことを確認することができる。また、実験例16から30で測定されたタイコート層20の剥離強度は実験例1から15で示す接着力の強いクロムのみからなるタイコート層20の剥離強度と類似に測定されることが確認できる。従って、最適の剥離強度は具体的に、常温で0.60kgf/cm以上及び高温処理後0.3kgf/cm上の剥離強度を維持しながら最適なエッチング性を維持するためにニッケルとクロムの成分比を80:20〜95:5に維持することが望ましい。
【0032】
実施例2
前記実験例1の各サンプルに対して可視光線領域における光透過度を測定した実験例を説明する。下記[表2]は、前記実験例1の各軟性金属積層板サンプルの可視光線透過度を測定した結果である。
【表2】
【0033】
上記[表2]に示したように、前記実験例(1)のようにニッケルとクロムの成分比を80:20〜95:5に維持して製造された軟性金属積層板(実験例16から30)は、可視光線領域(特に、λ=600nm)において63%以上の透過度を示す。望ましくは、63%から80%で、さらに望ましくは64%から72%の可視光線透過度を示す。
【0034】
また、図8は、本発明の一実施例による軟性金属積層板の可視光線透過度を示したグラフであって、原材料フィルムの可視光線透過度801と前記実験例23の軟性金属積層板の可視光線透過度803を示したグラフである。図8に示したように、可視光線領域(λ=600nm)において原材料フィルムの光透過度は72.6%であり、本発明による軟性金属積層板の光透過度は原材料対比97.2%を示す。すなわち、本発明による軟性金属積層板の可視光線透過度は原素材フィルムの透過度対比90%以上である。同時に、図8に示したように、赤外線領域に近づくにつれて光透過度はさらに優れるようになる。
【0035】
以上のように、本発明は限定された実施例と図面とによって説明されたが、本発明はこれに限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なのは言うまでもない。
【0036】
本発明によると、タイコート層の組成と厚さを最適化することで接着力とエッチング性に優れ、原材料フィルムへの残渣を除去して可視光線領域における透過度を向上させICパッケージング工程で不良率を減らす効果がある。これによって顧客の工程性向上を図るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本明細書に添付される下記の図面は本発明の望ましい実施例を例示するものであって、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【図1a】図1aは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図1b】図1bは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図1c】図1cは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図1d】図1dは、本発明の望ましい一実施例による軟性金属積層板を製造手順に従って示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の望ましい実施例による軟性金属積層板製造方法の工程手順図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板の断面を概略的に示した図面である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例による軟性金属積層板製造方法の工程手順図である。
【図5】図5は、本発明の第8実験例に従って製造された軟性金属積層板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図6】図6は、本発明の第18実験例に従って製造された軟性金属積層板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図7】図7は、本発明の第23実験例に従って製造された軟性金属積層板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図8】図8は、本発明の第23実験例に従って製造された軟性金属積層板の可視光線透過度を示したグラフである。
【符号の説明】
【0038】
10…高分子フィルム 20…タイコート層
30…金属シード層 31…第1金属シード層
31…第2金属シード層 40…金属伝導層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムであって、
前記高分子フィルムの一面にクロムまたはニッケル−クロム合金のコーティングにより形成されるタイコート層と、
前記タイコート層上に形成される金属シード層と、
前記金属シード層の露出面に形成される金属伝導層とを有する可視光線透過度が63%から80%であることを特徴とする軟性金属積層板。
【請求項2】
前記タイコート層の厚さは、50〜200オングストローム(Å)であることを特徴とする請求項1に記載の軟性金属積層板。
【請求項3】
前記金属シード層は、スパッタリングまたは真空蒸着法のいずれかにより形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の軟性金属積層板。
【請求項4】
前記金属シード層は、前記タイコート層上にスパッタリング方式により形成された第1シード層と、
前記第1または2シード層に真空蒸着法により形成された第2シード層とを有することを特徴とする請求項1または2記載の軟性金属積層板。
【請求項5】
前記可視光線の波長は、600nmであることを特徴とする請求項1から4に記載の軟性金属積層板。
【請求項6】
剥離強度が0.6から0.7kgf/cmであることを特徴とする請求項1から5に記載の軟性金属積層板。
【請求項1】
高分子フィルムであって、
前記高分子フィルムの一面にクロムまたはニッケル−クロム合金のコーティングにより形成されるタイコート層と、
前記タイコート層上に形成される金属シード層と、
前記金属シード層の露出面に形成される金属伝導層とを有する可視光線透過度が63%から80%であることを特徴とする軟性金属積層板。
【請求項2】
前記タイコート層の厚さは、50〜200オングストローム(Å)であることを特徴とする請求項1に記載の軟性金属積層板。
【請求項3】
前記金属シード層は、スパッタリングまたは真空蒸着法のいずれかにより形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の軟性金属積層板。
【請求項4】
前記金属シード層は、前記タイコート層上にスパッタリング方式により形成された第1シード層と、
前記第1または2シード層に真空蒸着法により形成された第2シード層とを有することを特徴とする請求項1または2記載の軟性金属積層板。
【請求項5】
前記可視光線の波長は、600nmであることを特徴とする請求項1から4に記載の軟性金属積層板。
【請求項6】
剥離強度が0.6から0.7kgf/cmであることを特徴とする請求項1から5に記載の軟性金属積層板。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−284869(P2008−284869A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326497(P2007−326497)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(505297002)エルエス ケーブル リミテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】LS Cable Ltd.
【住所又は居所原語表記】19−20F ASEM Tower 159 Samsung−dong, Gangnam−gu, Seoul 135−090 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(505297002)エルエス ケーブル リミテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】LS Cable Ltd.
【住所又は居所原語表記】19−20F ASEM Tower 159 Samsung−dong, Gangnam−gu, Seoul 135−090 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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