説明

可視光通信装置

【課題】同一色の可視光を利用する可視光多重化通信を実現できる可視光通信装置を提供することにある。
【解決手段】可視光通信システム1において、異なる複数のボーレートで変調した複数の送信データを生成し、当該各変調データを多重化して重畳した可視光100を発光部12から発光させて送信するデータ送信部10を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を利用したデータ多重化通信を実現する可視光通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)を使用するLED照明が普及されつつある。このLED照明は応答特性や制御特性が優れているため、可視光通信への利用が推進されている。
【0003】
可視光通信は、LED照明機器などから発光される照明光(可視光)を搬送波(キャリア)として、送信データで変調することによりデータ通信を実現する通信方法である。即ち、可視光通信は、可視光に送信データを重畳して送信するデータ通信方法である。
【0004】
LED照明機器などの照明機器は、建物内や道路等に多数設置されている。従って、新たに可視光の発光設備を準備することなく、既存の照明機器を利用して可視光通信を容易に実現することが可能である。
【0005】
ところで、データ通信では、複数の送信データを多重化させて送信することが要求される。LED照明光を利用する可視光通信では、同一色のLED照明光をキャリアとして、複数の送信データを多重化させた場合に、可視光同士の干渉の影響により受信側でデータ復調が困難になる問題がある。
【0006】
このような問題を解決する方法として、赤色、緑色、青色の3色(RGB)の可視光(RGB可視光)をキャリアとして使用して、複数の送信データを多重化させて送信する可視光多重化通信方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−81703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
RGB可視光を使用する可視光多重化通信方法は、データ多重化通信が可能である。しかしながら、この可視光多重化通信方法は、RGB可視光を発光するためのLED発光機器が必要となる。このため、既存の同一色(同一波長)のLED照明を利用するという可視光通信の有用性が得られないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、同一色の可視光を利用する可視光多重化通信を実現できる可視光通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点は、異なる複数のデータ伝送速度の送信データで、同一色の可視光を変調した多重化可視光を利用する可視光通信装置である。
【0011】
本発明の観点に従った可視光通信装置は、可視光を発光する発光手段と、複数の送信データを複数の異なるデータ伝送速度で変調した変調データに変換し、当該各変調データを多重化した多重化データを生成する生成手段と、前記多重化データを前記可視光に重畳して送信する送信手段とを備えた構成である。
【0012】
また、本発明の観点に従った可視光通信装置は、前記送信手段により送信される可視光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光した可視光から設定されたデータ伝送速度で変調された変調データを抽出するフィルタ手段と、前記フィルタ手段により抽出された変調データから該当する送信データを復調する受信手段とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同一色の可視光を利用する可視光多重化通信を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に関する可視光通信システムの要部を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関するデータ送信部の構成を説明するためのブロック図。
【図3】本実施形態に関する第1のデータ送信方法を説明するためのタイミングチャート。
【図4】本実施形態に関する第2のデータ送信方法を説明するためのタイミングチャート。
【図5】本実施形態に関するデータ受信部の構成を説明するためのブロック図。
【図6】本実施形態に関するデータ受信部のボーレートフィルタの構成を説明するためのブロック図。
【図7】第2の実施形態に関する可視光通信システムの要部を示すブロック図。
【図8】第2の実施形態に関するデータ送信方法を説明するためのタイミングチャート。
【図9】本実施形態に関する第3の実施形態に関する可視光通信システムの要部を示すブロック図。
【図10】第3の実施形態に関するデータ送受信の方法を説明するためのタイミングチャート。
【図11】第3の実施形態の変形例に関するデータ送受信の方法を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は本実施形態に関する可視光通信システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0017】
(可視光通信システムの構成)
図1に示すように、本実施形態の可視光通信システム1は、データ送信部10及び発光部であるLED(発光ダイオード)12とを含むデータ送信側と、複数のデータ受信部20A〜20Cを含むデータ受信側とから構成されている。
【0018】
本実施形態では、データ送信側は、LED照明機器に含まれる単一色のLED12を発光部として、LED12から発光された照明光(以下、可視光と表記する場合がある)100を搬送波(キャリア)として、複数の送信データを多重化して送信するデータ送信部10を有する。データ送信部10は、LED12を駆動するための電源部11を含む。
【0019】
一方、本実施形態のデータ受信側は、各データ受信部20A〜20Cに対応する受光部21A〜21Cを有する。受光部21A〜21Cは、データ送信側の発光部であるLED12から発光された可視光100を受光して電気信号に変換するフォトダイオードなどの受光素子からなる。各データ受信部20A〜20Cはそれぞれ、受光部21A〜21Cを駆動する電源部22A〜22Cを含む。各データ受信部20A〜20Cはそれぞれ、可視光100に重畳された多重化送信データから該当する送信データを復調して受信データとして抽出する。
【0020】
(データ送信部及びデータ送信方法)
図2は、本実施形態に関するデータ送信部の構成を説明するためのブロック図である。図3は、本実施形態に関するデータ送信方法(便宜的に第1のデータ送信方法とする)を説明するためのタイミングチャートである。
【0021】
本実施形態の可視光通信方法としては、送信データであるデジタルデータを搬送波である可視光100に対して直接的に重畳し、多重化して送信するベースバンド通信方式である。データ送信部10は、図2に示すように、複数の送信データA〜Cに対応する送信データ作成部13A〜13Cと、変調部14A〜14C、波形合成部15及びLED駆動部16を有する。
【0022】
送信データ作成部13A〜13Cは、例えばネットワーク(LANなど)に接続されたサーバなどのコンピュータから伝送された複数の送信データA〜Cから、可視光多重化通信により送信するための複数の送信データA〜Cを作成する。本実施形態では、送信データ作成部13A〜13Cにより作成される各送信データA〜Cは、データ内容及び送信先がそれぞれ異なる場合を想定する。但し、各送信データA〜Cは送信先がそれぞれ異なり、データ内容が同一でもよい。
【0023】
変調部14A〜14Cはそれぞれ、異なるデータ伝送速度(ボーレート:baud rate)、即ち高速ボーレート、中速ボーレート、低速ボーレートにより各送信データA〜Cを変調する。即ち、変調部14Aは、送信データAを高速ボーレートで変調する。変調部14Bは、送信データBを中速ボーレートで変調する。変調部14Cは、送信データCを低速ボーレートで変調する。ここで、本実施形態では、1ボー(1秒間に伝送する1データ単位)は、例えば4ビットである。また、便宜的に、変調部14A〜14Cにより変調されたデータを変調データ信号と呼ぶことがある。
【0024】
波形合成部15は、変調部14A〜14Cにより変調された各送信データA〜Cに対応するパルス信号波形(変調データ信号)を合成する。波形合成部15は、例えば異なるボーレートの各送信データA〜Cを順番に配列するようにパルス信号波形を合成する。LED駆動部16は、波形合成部15からの送信データ信号(合成されたパルス信号波形)に応じた駆動電流を出力し、LED12を駆動する。LED12は、異なるボーレートにより変調された変調データ信号A〜Cを重畳したLED照明光(可視光データ)100を発光する。
【0025】
(第1のデータ送信方法)
図3は、本実施形態の可視光多重化通信方法において、データ送信部10による第1のデータ送信方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0026】
データ送信部10では、図3(A)に示すように、変調部14Aは、送信データ作成部13Aにより作成された送信データAを高速ボーレートで変調したパルス信号波形(変調データ信号)を出力する。また、図3(B)に示すように、変調部14Bは、送信データ作成部13Bにより作成された送信データBを、送信データAより相対的に低速のボーレートで変調したパルス信号波形を出力する。即ち、変調部14Bは、中速ボーレートまたは低速ボーレートで送信データBを変調したパルス信号波形を出力する。
【0027】
波形合成部15は、変調部14Aから出力された高速ボーレート(例えば100kH程度の高い周波数)で変調したパルス信号波形と、変調部14Bから出力された中速または低速のボーレート(例えば10kH程度の低い周波数)で変調したパルス信号波形とを重ね合わせるように合成する。LED駆動部16は、図3(C)に示すように、波形合成部15により合成されたパルス信号波形に応じた駆動電流を出力し、LED12を駆動する。ここで、図3(C)に示す駆動電流波形において、送信データBの論理レベル“0”に対応する部分は、論理レベル“1”に対応する部分に対して低レベルである。
【0028】
(データ受信部)
図5は、本実施形態に関するデータ受信部の構成を説明するためのブロック図である。
【0029】
本実施形態では、データ受信部20A〜20Cはそれぞれ、基本的には図5に示すようなデータ受信部20と同一構成である。データ受信部20は、電気信号変換部23と、ボーレートフィルタ24と、復調部25と、データ出力部26とを有する。
【0030】
電気信号変換部23は、受光部21から出力される受光信号(電気信号)に対して増幅、波形等化などの信号処理を実行し、パルス信号波形のデータ信号(変換信号230)に変換する。ボーレートフィルタ24は、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタの各フィルタによるフィルタリングを実行し、予め設定されているボーレートのパルス信号波形(変調データ信号)を抽出する。
【0031】
ボーレートフィルタ24は概念的な構成として、図6に示すように、各ボーレート(高速、中速、低速)に対応するフィルタ24A〜24Cを含み、予め設定されているボーレートに応じたフィルタ24A〜24Cのいずれかが機能する。ボーレートフィルタ24は、例えばフィルタ24Aが機能している場合、電気信号変換部23からの変換信号230から高速ボーレートのパルス信号波形(変調データ信号A)を抽出する。同様に、ボーレートフィルタ24は、例えばフィルタ24Bが機能している場合、電気信号変換部23からの変換信号230から中速ボーレートのパルス信号波形(変調データ信号B)を抽出する。また、ボーレートフィルタ24は、例えばフィルタ24Cが機能している場合、電気信号変換部23からの変換信号230から低速ボーレートのパルス信号波形(送信データC)を抽出する。
【0032】
復調部25は、ボーレートフィルタ24により抽出されたボーレート(高速、中速、低速など)のパルス信号波形から元の送信データ(A,B,C)を復調する。データ出力部26は、復調部25により復調されたデータ信号から指定のフォーマットなどに変換した受信データ300を出力する。
【0033】
以上のようにして本実施形態のデータ送信部10は、図3(C)に示すように、LED照明光(可視光)100を搬送波として、異なるボーレートにより変調された送信データA,Bを多重化した可視光データを送信する。この場合、データ送信部10のLED照明光100は、同一色、同一波長の照明光である。なお、LED照明光100は、オンとオフのディーティ比が同じであれば、同じ明るさを維持できる。
【0034】
一方、データ受信部20は、データ送信部10からのLED照明光(可視光)100を受光すると、当該受光信号から予め設定されているボーレートの送信データを復調し、受信データ300として出力する。具体的には、図1に示すように、データ受信部20Aは、受光部21Aで受光した可視光(A,Bの多重化データ信号)100から、図3(A)に示すように、高速ボーレートの変調データ信号Aを抽出し、元の送信データAを復調する。また、データ受信部20Bは、受光部21Bで受光した可視光(A,Bの多重化データ信号)100から、図3(B)に示すように、中速ボーレートの変調データ信号Bを抽出し、元の送信データBを復調する。
【0035】
従って、本実施形態の可視光通信システムであれば、同一色、同一波長のLED照明光を利用し、送信データを直接的に可視光に重畳させるベースバンド通信方式による可視光多重化通信を実現することができる。
【0036】
(第2のデータ送信方法)
図4は、本実施形態の可視光多重化通信方法において、データ送信部10による第2のデータ送信方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0037】
このデータ送信方法では、図4(A)に示すように、変調部14Aは、送信データ作成部13Aにより作成された送信データAを高速ボーレートで変調したパルス信号波形(変調データ信号)を出力する。また、変調部14Bは、送信データ作成部13Bにより作成された送信データBを中速ボーレートで変調したパルス信号波形を出力する。さらに、変調部14Cは、送信データ作成部13Cにより作成された送信データCを低速ボーレートで変調したパルス信号波形を出力する。
【0038】
波形合成部15は、図4(B)に示すように、高速ボーレートで変調したパルス信号波形(変調データ信号A)、中速ボーレートで変調したパルス信号波形(変調データ信号B)及び低速ボーレートで変調したパルス信号波形(変調データ信号C)をそれぞれ順番に配列するように合成したパルス信号波形を出力する。従って、LED駆動部16は、図4(B)に示すように、波形合成部15により合成されたパルス信号波形に応じた駆動電流を出力し、LED12を駆動する。
【0039】
一方、データ受信部20Aは、受光部21Aで受光した可視光(A,B,Cの多重化データ信号)100から、図4(B)に示すように、高速ボーレートの変調データ信号200Aを抽出し、元の送信データAを復調する。また、データ受信部20Bは、受光部21Bで受光した可視光100から、中速ボーレートの変調データ信号200Bを抽出し、元の送信データBを復調する。さらに、データ受信部20Cは、受光部21Cで受光した可視光100から、低速ボーレートの変調データ信号200Cを抽出し、元の送信データCを復調する。
【0040】
このような第2のデータ送信方法によって、同一色、同一波長のLED照明光を利用し、送信データを直接的に可視光に重畳させるベースバンド通信方式による可視光多重化通信を実現することができる。第2のデータ送信方法は、一種の時分割多重化通信方法である。
【0041】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に関する可視光通信システムの構成を説明するためのブロック図である。図7に示すように、本実施形態の可視光通信システムは、一方のデータ送受信部30Aと他方のデータ送受信部30Bとから構成されており、いわゆる双方向可視光通信システムである。
【0042】
データ送受信部30Aは、電源部31A、発光部32A、及び受光部33Aを有する。同様に、データ送受信部30Bは、電源部31B、発光部32B、及び受光部33Bを有する。データ送受信部30Aでは、発光部32Aは、LED照明機器に含まれる単一色のLEDから搬送波(キャリア)として照明光(可視光)100Aを発光する。また、データ送受信部30Bでは、発光部32Bは、LED照明機器に含まれる単一色のLEDから搬送波(キャリア)として照明光(可視光)100Bを発光する。
【0043】
データ送受信部30Aは、送信データAを高速ボーレートで変調し、この変調データ信号(パルス信号波形)を当該LED照明光100Aに重畳して送信する。即ち、データ送受信部30Aは、図2に示すように、送信データ作成部13A、変調部14A、及びLED駆動部16に相当する構成を有する。データ送受信部30Aは、図8(A)に示すように、例えば送信データAを高速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を生成し、これを重畳したLED照明光100Aを発光する。
【0044】
データ送受信部30Bは、送信データBを中速(又は低速)ボーレートで変調し、この変調データ信号(パルス信号波形)を当該LED照明光100Bに重畳して送信する。即ち、データ送受信部30Bは、図2に示すように、送信データ作成部13B、変調部14B、及びLED駆動部16に相当する構成を有する。データ送受信部30Bは、図8(B)に示すように、例えば送信データBを中速(又は低速)ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を生成し、これを重畳したLED照明光100Bを発光する。
【0045】
このような双方向からのデータ送信に対して、データ送受信部30Aは、図5に示すような構成を有し、受光部33Aで受光したLED照明光(可視光)から、予め決められたボーレートで変調された変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データを復調する。即ち、データ送受信部30Aは、受光部33Aで受光したLED照明光100Bから、中速(又は低速)ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データBを復調する。
【0046】
一方、データ送受信部30Bは、図5に示すような構成を有し、受光部33Bで受光したLED照明光(可視光)から、予め決められたボーレートで変調された変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データを復調する。即ち、データ送受信部30Bは、受光部33Bで受光したLED照明光100Aから、高速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データAを復調する。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、一方のデータ送受信部30Aと他方のデータ送受信部30B間の双方向可視光通信システムにおいて、相互に異なるポーレートでの変調データ信号を重畳したLED照明光を送信する。従って、双方の可視光100A,100Bが干渉するような場合でも、双方で受光したLED照明光から元の送信データA,Bを確実に復調できる。これにより、双方ともに同一色、同一波長のLED照明を使用する場合でも、確実な双方向可視光通信を実現することができる。
【0048】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態に関する可視光通信システムの構成を説明するためのブロック図である。図9に示すように、本実施形態の可視光通信システムは、一方のデータ送受信部40と他方のデータ送受信部50とから構成されており、いわゆる双方向可視光通信システムである。
【0049】
データ送受信部40は、電源部41、発光部42、及び受光部43を有する。データ送受信部40では、発光部42は、LED照明機器に含まれる単一色のLEDから搬送波(キャリア)として照明光(可視光)100を発光する。データ送受信部40は、例えば送信データAを高速ボーレートで変調し、この変調データ信号(パルス信号波形)を当該LED照明光100に重畳して送信する。即ち、データ送受信部40は、図2に示すように、送信データ作成部13A、変調部14A、及びLED駆動部16に相当する構成を有する。データ送受信部40は、図10(A)に示すように、例えば送信データAを高速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を生成し、これを重畳したLED照明光100を発光する。
【0050】
一方、データ送受信部40は、図5に示すような構成を有し、受光部43で受光した可視光(反射光400)から、予め決められたボーレートで変調された変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データを復調する。即ち、データ送受信部40は、受光部43で受光した反射光400から、図10(B)に示すように、例えば低速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データCを復調する。
【0051】
次に、データ送受信部50は、電源部51、液晶シャッタ52と反射板(コーナーキューブ)53を含む反射光部、及び受光部54を有する。データ送受信部50は、図5に示すような構成を有し、受光部54で受光したLED照明光(可視光)100から、図10(A)に示すような高速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データAを復調する。
【0052】
また、データ送受信部50は、データ送受信部40からのLED照明光100を受光したときに、反射板53によりデータ送受信部40の方向に反射する。このとき、データ送受信部50は、液晶シャッタ52の透過、遮断を、図10(B)に示すような低速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)に応じて制御する。
【0053】
ここで、データ送受信部50は、図2に示すように、送信データ作成部13C及び変調部14Cに相当する構成を有し、図10(B)に示すように、例えば送信データCを低速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を生成する。これにより、データ送受信部50は、液晶シャッタ52と反射板53を含む反射光部から、図10(C)に示すように、LED照明光(可視光)100に重畳された変調データ信号(図10(A)のパルス信号波形)と、液晶シャッタ52の制御に応じて生成される変調データ信号(図10(B)のパルス信号波形)とを合成したパルス信号波形が重畳された反射光400を反射する。
【0054】
前述したように、データ送受信部40は、受光部43で反射光400を受光し、反射光400から低速ボーレートで変調した変調データ信号を抽出する。即ち、データ送受信部40は、図10(C)に示すように、反射光400に重畳された合成パルス信号波形(受信データ)から、図10(B)に示すような低速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出する。データ送受信部40は、抽出した変調データ信号(パルス信号波形)から、データ送受信部50からの元の送信データCを復調する。
【0055】
なお、図10(C)において、合成パルス信号波形(受信データ)は、LED照明光100に対してレベルが低い反射光400から抽出するため、信号レベルは、図10(A)に示す信号レベルよりも低下する。また、合成パルス信号波形の中で、液晶シャッタ52の遮断時に対応する信号レベルは、透過時の場合と比較して低レベルとなる。
【0056】
以上のようにして本実施形態によれば、一方のデータ送受信部40と他方のデータ送受信部50間の双方向可視光通信システムにおいて、一方のデータ送受信部40のLED照明光100と、他方のデータ送受信部50からの反射光400を利用して、双方向可視光通信を行なう。この場合、LED照明光100と反射光400とが干渉しても、双方向からの送信データのボーレートが異なるため、それぞれの受信部で各送信データを確実に復調することが可能となる。従って、一方のデータ送信側のみに設けられたLED照明機器で、双方向可視光通信を実現できる。
【0057】
また、一方のデータ送受信部40側においては、自ら送信したデータを反射光400として受信できるため、送信データのエラーチェック、あるいは、相手側からの反射光400によるデータ送信との干渉によるコリジョン(衝突)チェックなどを行なうことが可能となる。このようなチェック処理により、エラーチェック等の状況に基づいて反射光400の受光レベルが弱い時は、データ送受信部40は、LED駆動部16での駆動電流を増大させることでLED照明光100の出力レベルを増大させる。これにより、反射光400の受光レベルが高くなり、結果として双方向可視光データ通信の品質を向上することが可能となる。
【0058】
[変形例]
図11は、第3の実施形態の変形例に関するタイミングチャートである。本変形例の可視光通信システムについては、図9に示す構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0059】
本変形例では、図11(A)に示すように、データ送受信部40は、送信データAを高速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)をLED照明光100に重畳して送信するときに、送信データの送信終了または相手側への送信要求を示すコマンド500をLED照明光100に重畳して送信する。
【0060】
一方、データ送受信部50は、受光部54で受光したLED照明光(可視光)100から、図11(A)に示すような高速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出し、元の送信データAを復調する。このとき、データ送受信部50は、コマンド500を復調することにより、データ送信の準備を開始する。
【0061】
データ送受信部50は、液晶シャッタ52の透過、遮断を、図11(B)に示すような低速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)に応じて制御することで、当該変調データ信号を反射光400に重畳して送信する。このとき、データ送受信部50は、同様にして送信データの送信終了または相手側への送信要求を示すコマンド500を反射光400に重畳して送信する。実際には、データ送受信部50は、液晶シャッタ52と反射板53を含む反射光部から、図11(C)に示すように、LED照明光(可視光)100に重畳された変調データ信号(図11(A)のパルス信号波形)と、低速ボーレートで変調した変調データ信号(図11(B)のパルス信号波形)とを合成したパルス信号波形が重畳された反射光400を反射する。
【0062】
データ送受信部40は、図11(C)に示すように、反射光400に重畳された合成パルス信号波形(受信データ)から、図11(B)に示すような低速ボーレートで変調した変調データ信号(パルス信号波形)を抽出して、データ送受信部50からの元の送信データCを復調する。このとき、データ送受信部40は、コマンド500を復調することにより、再度のデータ送信の準備を開始する。
【0063】
以上のようにして本変形例においても、第3の実施形態と同様に、一方のデータ送受信部40と他方のデータ送受信部50間の双方向可視光通信システムにおいて、LED照明光100と反射光400とが干渉しても、双方向からの送信データのボーレートが異なるため、それぞれの受信部で各送信データを確実に復調することが可能となる。従って、一方のデータ送信側のみに設けられたLED照明機器で、双方向可視光通信を実現できる。
【0064】
また、一方のデータ送受信部40側においては、自ら送信したデータを反射光400として受信できるため、送信データのエラーチェック、あるいは、相手側からの反射光400によるデータ送信との干渉によるコリジョン(衝突)チェックなどを行なうことが可能となる。このようなチェック処理により、エラーチェック等の状況に基づいて反射光400の受光レベルが弱い時は、データ送受信部40は、LED駆動部16での駆動電流を増大させることでLED照明光100の出力レベルを増大させる。これにより、反射光400の受光レベルが高くなり、結果として双方向可視光データ通信の品質を向上することが可能となる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…可視光通信システム、10…データ送信部、11…電源部、12…LED、
13A〜13C…送信データ作成部、14A〜14C…変調部、15…波形合成部、
16…LED駆動部、20,20A〜20C…データ受信部、
21,21A〜21C…受光部、22,22A〜22C…電源部、
23…電気信号変換部、24…ボーレートフィルタ、25…復調部、
26…データ出力部、30A,30B…データ送受信部、31A,31B…電源部、
32A,32B…発光部、33A,33B…受光部、40…データ送受信部、
41…電源部、42…発光部、43…受光部、50…データ送受信部、51…電源部、
52…液晶シャッタ、53…反射板(コーナーキューブ)、54…受光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を発光する発光手段と、
複数の送信データを複数の異なるデータ伝送速度で変調した変調データに変換し、当該各変調データを多重化した多重化データを生成する生成手段と、
前記多重化データを前記可視光に重畳して送信する送信手段と
を具備したことを特徴とする可視光通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前記送信手段から送信される可視光を受光する受光手段と、
前記受光手段で受光した可視光から、設定されたデータ伝送速度で変調された変調データを抽出するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段により抽出された変調データから送信データを復調する受信手段と
を具備したことを特徴とする可視光通信装置。
【請求項3】
前記生成手段は、
前記各送信データを複数の異なるデータ伝送速度に応じた周波数のパルス信号波形からなる変調データに変換し、当該各パルス信号波形を合成したデータ信号からなる前記多重化データを生成するように構成されている特徴とする請求項1に記載の可視光通信装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記各パルス信号波形を重ね合わせるように合成したデータ信号からなる前記多重化データを生成するように構成されている特徴とする請求項3に記載の可視光通信装置。
【請求項5】
前記生成手段は、
前記各パルス信号波形を順番に配列するように合成したデータ信号からなる前記多重化データを生成するように構成されている特徴とする請求項3に記載の可視光通信装置。
【請求項6】
可視光を発光する発光手段を含み、送信データを第1のデータ伝送速度で変調した変調データに変換し、当該変調データを前記可視光に重畳して送信する送信手段と、
前記送信手段から送信される可視光を受光する受光手段を含み、受光した可視光から前記第1のデータ伝送速度とは異なる第2のデータ伝送速度で変調された変調データを抽出し、当該変調データから該当する送信データを復調する受信手段と
を具備したことを特徴とする可視光通信装置。
【請求項7】
第1の送信データを送信するために発光された可視光を受光する受光手段と、
前記受光手段で受光した可視光から、設定された第1のデータ伝送速度で変調された変調データを抽出する手段と、
前記抽出された変調データから前記第1の送信データを復調する受信手段と、
第1のデータ伝送速度とは異なる第2のデータ伝送速度で、第2の送信データを変調した変調データを生成する手段と、
前記受光手段により受光した可視光の反射光に前記第2のデータ伝送速度で変調した変調データを重畳させて、前記反射光により前記第2の送信データを送信する送信手段と
を有することを特徴とする可視光通信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の前記可視光を発光する発光手段を有し、
前記反射光を受光する受光手段と、
前記反射光から前記第2のデータ伝送速度で変調した変調データを抽出する手段と、
前記抽出された変調データから前記第2の送信データを復調する受信手段と
を有することを特徴とする可視光通信装置。
【請求項9】
前記送信手段は、
前記反射光により前記第2の送信データを送信するときに、送信終了または相手側への送信要求を示すコマンドを前記反射光に重畳させて送信するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の可視光通信装置。
【請求項10】
前記反射光から前記第2のデータ伝送速度で変調した変調データ以外に、前記第1のデータ伝送速度で変調された変調データを抽出する手段と、
前記受信手段により、前記第1のデータ伝送速度で変調された変調データから復調された前記第1の送信データに基づいて、前記可視光または前記反射光のレベルをチェックするチェック手段と
を有する構成であることを特徴とする請求項8に記載の可視光通信装置。
【請求項11】
前記チェック手段のエラーチェック結果に基づいて、前記可視光の発光レベルを増大させるように制御する手段を有する構成であることを特徴とする請求項10に記載の可視光通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−109185(P2011−109185A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259219(P2009−259219)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】