説明

可逆性ヒートセットされた弾性繊維、および、その製造法、ならびに、それらより製造された製品。

【課題】 逆行ヒートセットされた弾性繊維を提供すること。
【解決手段】 本発明の被覆繊維は、A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、およびB.非弾性繊維を含む被覆、を含む。前記繊維は、(a)延伸応力を延伸繊維に対し適用して被覆繊維を延伸し、(b)(a)の延伸された被覆繊維を、オレフィンポリマーの結晶融点より高い温度に、オレフィンポリマーの少なくとも一部が融解するのに充分な時間加熱し、(c)前記延伸および加熱した(b)の被覆繊維をオレフィンポリマーの結晶融点よりも低い温度に、ポリマーを固化するために充分な時間冷却し、そして(d)被覆繊維から延伸応力を除去することを含む方法により、ヒートセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヒートセット特性を有する弾性繊維、布、および、その他の製品に関
する。1つの態様においては、本発明はヒートセット可能な弾性繊維に関し、別の態様に
おいては、可逆的(reversibly)にヒートセットが可能である弾性繊維に関す
る。これらの繊維は、織物もしくは編物、または、不織布素材の製造に用いることができ
る。さらに別の態様において本発明は、弾性芯および非弾性被覆を含む被覆繊維に関し、
さらに別の態様においては、芯が架橋ポリマー、例えばオレフィンポリマーであり、そし
て被覆が天然繊維、例えば綿または羊毛であるような繊維に関する。本発明の別の態様は
、被覆された繊維を製造する方法、被覆された繊維を染色する方法、被覆された繊維を織
物または編物に仕立てる方法、および、被覆された繊維より作られた製品を含む。
【背景技術】
【0002】
優れた弾性を持つ繊維はさまざまな布の製造に必要であり、よってさまざまな耐久品、
例えばスポーツ衣料、家具用布張り、および、衛生関連製品の製造に用いられている。弾
性は性能特性であり、布が着用者の身体または物品の外縁に沿う能力の1つの尺度である
。好適には、布は繰り返し使用される間、例えば体の伸び屈み、および、その他の高温(
例えば布が洗濯および乾燥の間に受けるようなもの)の繰り返しの間、良い装着感を維持
する。
【0003】
通常は、繊維がバイアス応力の適用後に高いパーセント弾性回復(すなわち低いパーセ
ント永久ひずみ)を持つ場合、弾性であると特徴づけられる。理想的には、弾性素材は、
3つの重要な特性の組み合わせにより特徴づけられる。(i)低いパーセント永久ひずみ
、(ii)ひずみに対する低い応力または荷重、および、(iii)低いパーセント応力
緩和または荷重緩和。換言すると、弾性素材は下記の特性を有すると特徴づけられる。(
i)素材の延伸に要する応力または荷重が低い(例えば低いバイアス応力)、(ii)素
材の延伸後、応力または荷重除去緩和が無い、または低い、および、(iii)延伸、バ
イアス、または、ひずみ力の適用を除いた後、元の寸法への回復が完全であるかまたは高
い。
【0004】
ヒートセットは、繊維、または、例えば布のような繊維から作られた製品を、寸法的な
制限下で高温にさらすというプロセスであり、通常その温度は、繊維または製品が後述の
ような加工(例えば染色)、または使用(例えば洗濯、乾燥、および/または、アイロン
がけ)で経験するいかなる温度よりも高い。繊維または製品をヒートセットする目的は、
それらに寸法安定性(例えば伸び縮みに対する予防または防止)を付与するためである。
ヒートセットの構造的な機構は、繊維モルフォロジー、繊維の凝集作用、および、熱転移
を含む、数多くの要因に依存する。
【0005】
通常、被覆および非被覆弾性繊維は両方とも、編成、製織、およびそれに類似した作業
の間延伸され、すなわち、バイアス応力を経験し、繊維が伸長または延長される。周囲温
度であっても、大幅な延伸により永久ひずみが生じる。すなわち、延伸した部分の一部は
バイアス力が解放されても回復しない。延伸された繊維を熱にさらすことによって、永久
ひずみを増大させることが可能であり、この結果「ヒートセット」繊維が得られる。した
がって、この繊維は、当初の延伸前の長さより長い、新たな緩和長さをとる。体積保存に
基づき、新しいデニール、すなわち繊維の直径は、永久延伸という要因により低められる
。すなわち、新しいデニールは、元々のデニールを永久延伸比率で除したものと等しい。
これは、「リデニーリング(redeniering)」として知られ、弾性繊維、および、弾性繊
維より製造された布の、重要な性能特性と考えられている。ヒートセット、および、繊維
または製品の再デニール化プロセスは、好適な実施態様中で示されるヒートセット実験で
さらに詳述する。
【0006】
スパンデックスは、セグメント化されたポリウレタン弾性素材であり、ほぼ理想的な弾
性特性を発揮することが知られている。しかし、スパンデックスは、酸素、塩素、および
高温に対し、特に湿度のあるところでは、耐環境性が低い。このような特性、特に塩素に
対する耐性が低いことは、スパンデックスに、水着や、塩素漂白の中で洗濯することが望
ましい白色衣料類のような衣料用途において、明らかな不都合をもたらしている。
【0007】
その上、スパンデックス繊維は、その硬領域/軟領域のセグメント化構造ゆえに、可逆
的にヒートセットしない。スパンデックスにおいて、ヒートセットは分子結合の切断と再
形成を伴う。繊維は元の寸法への「復元力」を全く残さず、したがって熱処理前方向に戻
る駆動力を持たない。このヒートセットは可逆性(reversible)ではない。
【0008】
弾性繊維、ならびに、均一に分枝した直鎖状または実質的に直鎖状のエチレン/α−オ
レフィンインターポリマー類のようなポリオレフィン類を含む他の素材は、例えば、米国
特許第5,272,236号、第5,278,272号、第5,322,728号、第5
,380,810号、第5,472,775号、第5,645,542号、第6,140
,442号、および、第6,225,243号の記載として知られている。またこのよう
な素材は、特に水分の存在下で、酸素、塩素、および高温に対して優れた耐性を示すこと
も知られている。しかし、ポリオレフィンポリマー素材類は、高温、すなわち周囲温度ま
たは室温よりも高い温度にさらされることによって収縮することも知られている。
【0009】
架橋ポリエチレンが高温に対する安定性を向上させることは既知である。WO99/6
3021およびUS6,500,540は、実質的に硬化、照射、または、架橋された(
または、硬化、照射、もしくは、架橋可能な)、密度が0.90g/ccより低く、場合
により少なくとも1つの窒素安定剤を含むと特徴付けられる、均一に分枝したエチレンイ
ンターポリマー類を含む弾性製品を記載する。このような製品は、高い加工温度において
、および洗濯の後に、充分な弾性を維持する必要のある用途に有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は逆行(reversed)ヒートセットされた弾性繊維を記載する。本発明の
繊維は、温度安定性を有するポリマー、例えば、熱可塑性ウレタンまたはオレフィンを含
む。本発明の繊維はポリマー類のブレンドを含んでいてもよく、単一、複合、または、多
成分の構成をとることが可能であり、そして、ヤーン(yarn)に紡ぐことができる。
【0011】
1つの実施態様において、本発明は逆行ヒートセットされたヤーンを製造する方法であ
り、前記ヤーンは、
A.融点を持ち、熱安定性を有するポリマーを含む弾性繊維、および、
B.非弾性繊維を含み、前記方法は、
(a)延伸応力を弾性繊維に対し適用して延伸し、
(b)(a)の延伸された弾性繊維をヤーンに加工し、
(c)(b)のヤーンを一体に巻き取り、
(d)(c)のヤーンを、ポリマーのクリスタライト(crystalite)の少な
くとも一部が融解する温度まで加熱し、および、
(e)(d)のヤーンをステップ(d)よりも低い温度に冷却することを含む。
【0012】
別の実施態様において、本発明は可逆性ヒートセットされた被覆繊維であり、前記被覆
繊維は、
A.実施的に架橋された、温度安定性の、オレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯
、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含む。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、可逆性ヒートセットされた被覆繊維を製造する方法
であり、前記被覆繊維は、
A.結晶融点を有し、実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾
性繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆を含み、前記方法は、
(a)延伸応力を弾性繊維に対し適用して延伸し、
(b)(a)の延伸された被覆繊維を、オレフィンポリマーのクリスタライトの少なく
とも一部が融解する温度に、前記オレフィンポリマーの少なくとも一部が融解するのに充
分な時間加熱し、
(c)前記延伸および加熱した(b)の被覆繊維をステップ(b)よりも低い温度に冷
却し、そして、
(d)被覆繊維から延伸応力を除去することを含む。
【0014】
1つの実施態様において、可逆性ヒートセットされた被覆繊維は、延伸前の長さの少な
くとも2倍に延伸され、別の実施態様において、延伸された被覆繊維は、オレフィンポリ
マーの結晶融解点より少なくとも約5℃高い温度で加熱される。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、可逆性のヒートセット可能、または、ヒートセット
された被覆繊維を含む、ヒートセット可能な、または、ヒートセットされた布であり、前
記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、
および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含む。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、逆行性ヒートセットされた被覆繊維を含むヒートセ
ット布であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、
および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含む。
【0017】
別の実施態様において、本発明は延伸可能な不織布であり、
A.個々の繊維、または、糸が、ランダムにインターレイ(interlay)された
構造を有するウェブまたは布であり、前記繊維は、実質的に架橋された、温度安定性のポ
リマーを含む弾性繊維を含み、場合により、
B.非弾性フィルムまたは不織布層を含む。
【0018】
そのような不織布は、本発明の別の実施態様における、不織布を製造する方法によって
、製造可能であり、
a)個々のポリマー性繊維または糸がランダムにインターレイされた構造を有する、可
逆性ヒートセットされた弾性ウェブ、または、繊維を形成し、
b)前記ウェブまたは布に延伸応力を適用しながら、前記ウェブまたは布を、前記ポリ
マーのクリスタライトが少なくとも部分的に融解する温度で加熱することにより、ヒート
セットし、
c)ステップc)の布が、まだヒートセット手順からの延伸状態にある間に、ステップ
c)の布を非弾性層に張り合わせ、
d)まだ延伸状態にある間に、前記積層構造体を冷却し、
e)前記積層構造体を、前記可逆性ヒートセット層が、少なくとも部分的に延伸前の状
態に収縮するように再加熱する、ことを含む。
【0019】
別の実施態様において、本発明は、可逆性ヒートセット可能な被覆繊維を染色する方法
であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性であり、融点を有するオレフィンポリマーを含む
弾性繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、前記方法は、
(a)被覆繊維をヒートセットし、
(b)前記ヒートセットされた被覆繊維を、スプール(spool)に巻き取り、そし
て、
(c)スプールに巻かれたままの状態で、前記ヒートセットされた被覆繊維を染色する
ことを含む。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、染色された可逆性ヒートセット可能な被覆繊維から
布を製織する方法であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性であり、融点を有するオレフィンポリマーを含む
弾性繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、前記方法は、
(a)被覆繊維をヒートセットし、
(b)前記ヒートセットされた被覆繊維を、スプール(spool)に巻き取り、そし
て、
(c)スプールに巻かれたままの状態で、前記ヒートセットされた被覆繊維を染色し、
(d)染色された、ヒートセットされた被覆繊維から布を製織し、および、
(e)布が製織された後、被覆繊維のヒートセットを逆行させることを含む。
【0021】
この実施態様の変形において、本発明は、染色された可逆性ヒートセット可能な被覆繊
維から布を製織する方法であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性であり、融点を有するオレフィンポリマーを含む
弾性繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、前記方法は、
(a)前記ヒートセットされた被覆繊維をスプールに巻き取り、
(b)スプールに巻かれたままの状態で、前記ヒートセットされた被覆繊維を染色し、
(c)前記染色された、ヒートセットされた被覆繊維から布を製織し、および、
(d)布が製織された後、前記被覆繊維のヒートセットを逆行させることを含む。
【0022】
ヒートセットされた被覆繊維は、布の横糸方向、縦糸方向、または、両方向に織り込む
ことができる。布が編成される場合には、ヒートセットされた被覆繊維は、繊維に対する
張力を適用し、または適用せずに、布に編み込まれることが可能である。ヒートセットさ
れた被覆繊維は、横編み、または、縦編みの用途に使用可能である。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、逆行ヒートセットされた弾性素材、例えば、フィル
ム、または、不織布であり、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性素材、および、
B.非弾性素材、を含む。
【0024】
本発明において、弾性繊維として使用可能な代表的なオレフィンポリマー類は、均一分
枝エチレンポリマー類、および、均一分枝した実質的に直鎖状のエチレンポリマー類であ
る。被覆として用いることができる代表的な非弾性繊維は、天然繊維であり、例えば綿ま
たは羊毛である。
【0025】
被覆繊維は芯(core)と被覆(cover)を含む。本発明の目的においては、芯は1つ以
上の弾性繊維を含み、被覆は1つ以上の非弾性繊維を含む。被覆繊維の製造時およびその
非延伸状態では、被覆は芯の繊維より長く、一般的には著しく長い。被覆は従来の方法に
より、一般的にはらせん状に巻き付ける構造で、芯を取り巻く。非被覆繊維は被覆されて
いない繊維である。本発明の目的においては、編み繊維またはヤーン、すなわちそれぞれ
が非延伸状態においておよそ同じ長さで、互いに絡み合わされたまたは撚り合わされた、
2つ以上の繊維束またはフィラメント(弾性および/または非弾性)からなる繊維は、被
覆繊維ではない。しかし、これらのヤーンは被覆繊維の芯と被覆のいずれか、または両方
に用いることができる。本発明の目的においては、弾性被覆に覆われた弾性芯からなる繊
維は、被覆繊維ではない。
【0026】
繊維または繊維から製造された布に加えられた、ヒートセット延伸の完全または実質的
可逆性は、有用な特性であり得る。例えば、被覆繊維を染色および/または製織の前にヒ
ートセットすることが可能な場合は、恐らく繊維が巻き取り作業中に延伸することがより
少なくなるため、染色および/または製織のプロセスはより効率的である。これはすなわ
ち、繊維が最初にスプールに巻き取られる染色および製織作業に、有用であり得る。染色
および/または製織が完了すると、被覆繊維または被覆繊維を含む布は緩和されてもよい
。この手法は、特定の製織作業に要する繊維量を減らすのみならず、その後の縮みをも防
止する。
【0027】
本発明の代替的な実施態様においては、弾性で可逆性ヒートセットされた非被覆繊維を
、硬質(すなわち非弾性)繊維またはヤーンと、例えば編物内で隣り合わせて、または織
物の一方向または両方向で製織または編成し、可逆性ヒートセットの布を製造する。本発
明の代替的な実施態様においては、可逆性ヒートセットされた繊維で不織布層を製造し、
続いて非弾性フィルムまたは不織布を積層することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、弾性の芯、および、非弾性の被覆を含む、延伸前の被覆繊維の概略図である。
【図2】図2は、弾性芯、および、非弾性被覆を含む、延伸後の被覆繊維の概略図である。
【図3】図3は、延伸した、および、延伸を緩和した被覆繊維を、染色、および、製織するプロセスの概略図である。
【図4】図4は、200℃で1分間ヒートセットしたライクラ繊維の、荷重−伸長曲線を示す。
【図5】図5は、1分間、3×の延伸率において190、200、および210℃でそれぞれヒートセットしたライクラ繊維の、荷重−伸長曲線に対するヒートセット温度の影響を示す。
【図6】図6は、200℃で1分間ヒートセットしたAFFINITYに適用した延伸率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
一般的定義
「繊維」とは、直径対長さの比率が約10よりも大きい素材を意味する。繊維は、一般
的に直径によって分類される。フィラメント繊維は、一般的に個別の繊維の直径が約15
デニール、通常は約30デニールよりも大きいと定義される。細デニール繊維は、一般的
に直径が約15デニールよりも小さい繊維をさす。マイクロデニール繊維は、一般的に約
100ミクロンデニールよりも小さい直径を有する繊維と定義される。
【0030】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」とは、決まった長さの素材の非
連続ストランド(すなわち、予め決められた長さの断片に切断または分割されたストラン
ド)である「ステープル繊維」とは対照的に、不確定の(すなわち予め決まっていない)
長さの、単一、連続ストランドの素材(material)を意味する。「マルチフィラメント繊
維」とは、2つ以上のモノフィラメントを含む繊維を意味する。
【0031】
「光開始剤」とは、紫外線光への暴露によって、ポリマーにラジカルサイトを発生させ
る化学組成物を意味する。
【0032】
「光架橋剤」とは、ラジカルを発生させる開始剤の存在下で、2つのポリマー鎖間で共
有結合性の架橋を生成させる化学組成物を意味する。
【0033】
「光開始剤/架橋剤」とは、紫外線光への暴露によって、2つのポリマー鎖間に共有結
合性の架橋を生成可能な、2つ以上の反応性化学種(例えばフリーラジカル類、カルベン
類、ニトレン類など)を生成する化学的組成物を意味する。
【0034】
紫外線光、紫外線または類似の用語は、波長が約150から約700ナノメートルの電
磁スペクトルの照射線領域をさす。本発明の目的において、紫外線光は可視光線を含む。
【0035】
「温度安定性」および類似の用語は、繊維またはその他の構造体もしくは製品が、例え
ば本発明の繊維から製造した布または他の構造体もしくは製品の製造、加工(例えば染色
)、および/または、クリーニング中に経験されるような、約200℃の温度にさらされ
た後に、引っ張りおよび収縮の繰り返しの間にも、実質的にその弾性を維持することを意
味する。
【0036】
「弾性(elastic)」とは、繊維が、100%伸び(2倍の長さ)までの1回の延伸後および4回の延伸後に、延伸された長さの少なくとも50パーセントが回復することを意味する。弾性は、繊維の「永久ひずみ」により記載することもできる。永久ひずみは弾性の逆である。繊維がある点まで延伸され、その後延伸以前の初期位置まで解放されて、続いてまた延伸される。繊維が荷重を引っ張りはじめる地点は、パーセント永久ひずみと規定される。「弾性素材(elastic material)」はまた、公知技術においては、「エラストマー類」および「エラストマー性の」とよばれる。弾性素材(場合により弾性製品とよばれることもある)には、ポリマーそのものだけではなく、繊維、フィルム、ストリップ、テープ、リボン、シート、コーティング、および、成型品などの形状のポリマーが含まれるが、それらに限定されるものではない。好適な弾性素材は繊維である。弾性素材は、硬化または未硬化、照射済みまたは未照射、および/または、架橋または未架橋の、それぞれどちらでもよい。熱可逆性のため、弾性繊維は好適には実質的に架橋または硬化されている。
【0037】
「非弾性素材」とは例えば繊維のような素材で、上述の定義のように弾性ではないもの
をさす。
【0038】
「ヒートセット」および類似の用語は、繊維、ヤーン、または、布が加熱され、使用中
の形状変化を最小化するような、最終的な捲縮(crimp)または分子配置になるプロ
セスを意味する。「ヒートセットされた」繊維、またはその他の製品は、ヒートセットの
プロセスを経た繊維または製品である。1つの実施態様において、熱可塑性ポリマーを含
む「ヒートセット」繊維またはその他の製品は、バイアス応力下で延伸され、低くともポ
リマーのクリスタライト(crystallites)の少なくとも一部が融解する最低温度まで熱せ
られ(以後「ヒートセット温度」とよぶ)、前記ヒートセット温度よりも低温に冷却され
た後に、バイアス応力が除去される。「逆行ヒートセットされた繊維(reversed heat-se
t fiber)」とは、バイアス応力無しで、ポリマーのヒートセット温度よりも高い温度に
再加熱された、延伸前またはそれに近い長さに戻る、ヒートセットされた繊維である。「
可逆性ヒートセット可能な繊維(reversibly heat-settable fiber)」または「可逆性ヒ
ートセットされた繊維(reversible heat-set fiber)」とは、ヒートセットされた場合
に、バイアス力の非存在下で、繊維を形成するポリマーの融点より高温に繊維を加熱する
ことによって、そのヒートセット特性が逆行可能な繊維(または、フィルムのような、そ
の他の構造体)である。
【0039】
「放射された」または「照射された」とは、弾性ポリマーもしくはポリマー組成物、ま
たは、弾性ポリマーもしくは弾性組成物を含む成形品が、パーセントキシレン抽出物の低
下が計測される結果(すなわち不溶性ゲルの増加)には関わらず、少なくとも3メガラド
(または3メガラドと同等)の照射線量を受けることを意味する。好適には、照射を受け
た結果、実質的な架橋が引き起こされる。「放射された」または「照射された」とはまた
、場合によって光開始剤および光架橋剤と共に、適当な被爆量の紫外線を用いて架橋を誘
発することをさすことがある。
【0040】
「実質的に架橋した」および類似の用語は、成形された、または製品の形状をしたポリ
マーのキシレン抽出物が70重量パーセント以下(すなわちゲル含有率が30重量パーセ
ント以上)、好適には、40重量パーセント以下(すなわちゲル含有率が60重量パーセ
ント以上)であることを意味する。キシレン抽出物(およびゲル含有率)は、ASTM
D−2765に基づき決定される。
【0041】
「硬化した」および「実質的に硬化した」とは、成形されたまたは製品の形状をしたポ
リマーが、実質的架橋を誘発する処理の対象となり、または前記処理にさらされることを
意味する。
【0042】
「硬化可能な」および「架橋可能な」とは、成形されたまたは製品の形状をしたポリマ
ーが、硬化または架橋されておらず、実質的架橋を誘発する処理の対象となったり、また
は前記処理にさらされなかったりしたことを意味する(しかし、この成形されたまたは製
品の形状をしたポリマーは、このような処理の対象となったりまたはさらされたりするこ
とで、実質的な架橋を達成する添加物(類)または官能基を含む)。
【0043】
「ホモフィル繊維(homofil fiber)」とは、その全長を通じて単一のポリマー部位ま
たは領域を持ち、(複合繊維のように)その他いかなる別の明確なポリマー領域を持たな
い繊維を意味する。
【0044】
「複合繊維(bicomponent fiber)」とは、その全長を通じて、2つ以上の明確なポリ
マー部位または領域を持つ繊維を意味する。複合繊維はまた、複合または多成分の繊維と
しても知られる。ポリマー類は、通常互いに相違するが、2つまたはそれ以上の成分の場
合は、同種のポリマーから成る可能性がある。ポリマー類は、複合繊維の断面にわたる実
質的に明確な領域に配置され、通常は複合繊維の全長に沿って継続的に延長する。複合繊
維の構造は、例えば被覆/芯(または鞘/芯)の配置(ポリマーの1つが他のポリマーに
よって包まれる)、並列状の配置、パイ状の配置、または、「海−島」状の配置の場合が
ある。複合繊維は、米国特許、第6,225,243号、第6,140,442,号、第
5,382,400号、第5,336,552号、および、第5,108,820号にお
いて、さらに詳細に説明されている。
【0045】
「メルトブロウン(Meltblown)繊維」とは、融解した熱可塑性ポリマー組成
物を、複数の細かい、通常は円形のダイキャピラリーを通じて、糸またはフィラメントを
細くして直径を減少させるように機能する高速の気体流(例えば空気)中に合流するよう
押し出すことによって成形される繊維である。フィラメントまたは糸は、高速の気体流に
よって運ばれ、収集用の表面上に堆積し、平均直径が通常10ミクロンよりも小さいラン
ダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0046】
「メルトスパン繊維」は、少なくとも1つのポリマーを融解した後、融解状態の繊維を
ダイの直径(または他の断面の形)よりも小さい直径(または他の断面の形)に延伸する
ことによって形成される繊維である。
【0047】
「スパンボンド繊維」とは、複数の細かい、通常は円形の紡糸口金のダイキャピラリー
を通して、融解した熱可塑性ポリマー組成物をフィラメントとして押し出すことによって
形成される繊維である。押し出されたフィラメントの直径は急速に減少し、その後フィラ
メントは収集用の表面上に堆積して、平均直径が通常約7から約30ミクロンの間である
ランダムに分散された繊維のウェブを形成する
【0048】
「不織布」とは、編成された布のように識別可能な態様ではないが、ランダムにインタ
ーレイされた個別の繊維または糸の構造を有する、ウェブまたは布を意味する。本発明の
弾性繊維は、不織布構造だけではなく、非弾性素材と組み合わせて複合構造の弾性不織布
の製造に用いることができる。
【0049】
「ヤーン」とは、編成、製織、または他の方法で編み合わすことによる織布の形成に適
した形状の、連続した紡織繊維、フィラメント、または素材の糸を意味する。連続した長
さは、撚り合わされた、または他の方法で絡み合わされた2つ以上の繊維を含んでいても
よい。「被覆」ヤーンまたは繊維とは、識別可能で異なっていてもよい内側(「芯」)お
よび外側(「被覆」)の繊維要素を有する複合構造を意味する。本発明の被覆繊維の芯お
よび被覆のうち、1つまたはその両方はヤーンを含むことができ、また含まなくてもよい
。芯がヤーンの場合、芯のヤーンを形成するすべてのモノフィラメントは、弾性でなくて
はならない。
【0050】
ポリマー類
可逆性ヒートセット可能であることを示す温度安定性の弾性ポリマーはいずれも、本発
明の実施に用いることができる。したがって、本発明で用いられるためには、ポリマーは
結晶融点を有する必要がある。適切なポリマー類としては、架橋された熱可塑性ポリオレ
フィン類が好適である。
【0051】
本発明の実施には、様々なポリオレフィンポリマー類を用いることができるが(例えば
、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー類、エチレン/スチレンコ
ポリマー類(ESI)、および、触媒で変性されたポリマー類(CMP)、例えば、部分
的または完全に水素化した、ポリスチレンまたはスチレン/ブタジエン/スチレンブロッ
クコポリマー類、ポリビニルシクロヘキサン、EPDM)エチレンポリマー類が好適なポ
リオレフィンポリマー類である。均一分枝エチレンポリマー類はより好適であり、均一分
枝した実質的に線状のエチレンインターポリマーは特に好適である。
【0052】
「ポリマー」は、同一または異なる種類のモノマー類を重合し製造される高分子化合物
を意味する。「ポリマー」という一般語は、「インターポリマー」と共に「ホモポリマー
」、「コポリマー」、「ターポリマー」なる用語を包含する。「インターポリマー」とは
、少なくとも2つの異なる種類のモノマー類の重合によって製造されるポリマーを意味す
る。「インターポリマー」という一般語は、「コポリマー」(通常2つの異なるモノマー
類から製造されたポリマーをさす)という用語と共に、「ターポリマー」(通常3つの異
なるモノマー類から製造されたポリマーをさす)という用語を包含する。
【0053】
「ポリオレフィンポリマー」とは、1つ以上の単純オレフィン類から誘導される熱可塑
性ポリマーを意味する。ポリオレフィンポリマーは、1つ以上の置換基、例えば、カルボ
ニル、スルフィドのような官能基を有することができる。本発明の目的において、「オレ
フィン類」は、1つ以上の二重結合を有する脂肪族、脂環式、および芳香族化合物を含む
。代表的なオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキサン、
1−オクテン、4−メチル−1ペンテン、ブタジエン、シクロヘキセン、ジシクロペンタ
ジエン、スチレン、トルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0054】
「触媒で変性されたポリマー(catalytically modified polymer)」とは、水素化芳香
族ポリマーを意味し、例えば、米国特許第6,172,165号に記載されたものが挙げ
られる。具体的なCMPは、ビニル芳香族化合物および共役ジエンの水素化ブロックコポ
リマー(例えばスチレンおよび共役ジエンの水素化ブロックコポリマー)を含む。
【0055】
本発明で用いられる好適なポリマー類は、エチレンと、少なくとも1つのC3〜C20α
−オレフィン、および/または、C4〜C18ジオレフィン、および/または、アルケニル
ベンゼンとの、エチレンインターポリマー類である。エチレンとC3〜C12α−オレフィ
ンとのコポリマーが特に好適である。エチレンとの重合に有用な、適切な不飽和コモノマ
ー類は、例えばエチレン性不飽和モノマー類、共役もしくは非共役ジエン、ポリエン類、
アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマー類の例としては、プロピレ
ン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテ
ン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのような、C3〜C20α
−オレフィン類が挙げられる。好適なコモノマー類としては、プロピレン、1−ブテン、
1−ペンテン、1−へキセン、4−メチルー1−ペンテン、1−ヘプテン、および1−オ
クテンが挙げられ、1−オクテンが特に好適である。その他の好適なモノマー類には、ス
チレン、ハロ−、または、アルキル置換スチレン類、ビニルベンゾシクロブタン、1,4
−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、および、ナフテン類が含まれる(例えば、シク
ロペンテン、シクロへキセン、および、シクロオクテン)。
【0056】
好適には、エチレンインターポリマーは、ASTM D−1238、条件190℃/2
.16キログラム(kg)に従い決定されたメルトインデックスが、50グラム/10分
(g/10分)より低く、さらに好適には、10グラム/10分(g/10分)より低い

【0057】
好適なエチレンインターポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)で測定した結晶化度
が26重量パーセント(wt%)よりも低く、好適には15重量パーセント(wt%)以
下である。
【0058】
好適な均一分枝エチレンポリマー類(これらに限定されるものではないが、例えば実質
的に直鎖状のエチレンポリマー類)は、−30から150℃の間にDSCを用いて測定さ
れる単一の融解ピークを有し、これは2つ以上の融点を持つ、従来のチーグラー触媒によ
って重合された、不均一に分枝したエチレンポリマー類(例えば、LLDPEおよびUL
DPEまたはVLDPE)とは対照的である。単一融解ピークは、示差走査熱量計を用い
て、インジウムおよび脱イオン水を基準として測定される。DSC法は、5〜7mgのサ
ンプル量を用い、「第1の加熱」で約180℃を4分間維持し、10℃/分で−30℃に
冷却して3分間維持し、そして10℃/分で150℃まで加熱し、「第2の加熱」の熱流
量対温度の曲線を得る。ポリマーの融解熱の総量は、曲線よりも下の領域によって算出さ
れる。
【0059】
「均一分枝エチレンポリマー」とは、コモノマー(類)が、所定のポリマー分子内でラ
ンダムに分散し、実質的にすべてのポリマー分子が同じエチレン対コモノマーモル比を有
する、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを意味する。エチレンインターポリマ
ーという用語は、チーグラーバナジウム、ハフニウム、および、ジルコニウム触媒システ
ム、メタロセン触媒系、または、幾何拘束触媒系として公知の、いわゆる均一、または、
シングルサイト触媒系を用いて製造されたものを意味する。このようなポリマー類は、短
鎖分枝分布が狭く、長鎖分枝を有さない。このような「線状」の、均等に分枝した、また
は、均一なポリマー類は、米国特許第3,645,992号に記載のように製造されたも
の、バッチ反応器中でいわゆるシングルサイト触媒類を用いて製造された、比較的エチレ
ン含有量の高いもの(米国特許第5,026,798号および第5,055,438号に
記載)、ならびに、バッチ反応器中で幾何拘束触媒類を用いて製造された、比較的オレフ
ィン含有量の高いもの(米国特許第5,064,802、および、EP0416815A
2に記載)を含む。本発明での使用に適当な均一分枝直鎖状エチレンポリマー類は、タフ
マーの名称で三井化学株式会社から、ならびにEXACTおよびEXCEEDの名称で、
Exxon Chemical Companyから販売されている。
【0060】
照射、硬化、または架橋の前の、均一分枝エチレンポリマー類は、23℃において、密
度が0.90g/cm3より低く、好適には0.89g/cm3以下、そしてさらに好適に
は約0.88g/cm3以下である。照射、硬化、または架橋する前の、均一分枝エチレ
ンポリマーは、23℃において、ASTM D792によって測定された密度が約0.8
55g/cm3より大きく、好適には0.860g/cm3以上、さらに好適には約0.8
65g/cm3以上である。0.89g/cm3よりも高い密度においては、高温での縮み
抵抗力(特に、低いパーセント応力および加重緩和において)は、好ましいレベルよりも
低い。密度が約0.855g/cm3よりも低いエチレンインターポリマー類は、低い靱
性、非常に低い融点、ならびに、操作性の問題、例えばブロッキングおよび粘着性(少な
くとも架橋前において)を示すため、好適ではない。
【0061】
本発明の実施に用いる均一分枝エチレンポリマー類が有する、短鎖分枝度が10メチル
/1000全炭素以下のポリマーの重量パーセントは、15より低く、好適には10より
低く、より好適には5より低く、そして最も好適には約0である。換言すると、エチレン
ポリマーは、例えば昇温溶出分別(TREF)(分析昇温溶出分別(ATREF)として
も知られる)手法、または、赤外線もしくは13C核磁気共鳴(NMR)分析を用いて測定
された、測定可能な高密度ポリマーフラクションを全く有さない(例えば、0.94g/
cm3以上の密度を持ったフラクションを有さない)。エチレンインターポリマーの組成
(モノマー)分布(CD)(しばしば短鎖分枝分布(SCBD)ともよばれる)、は、例
えば、Wildらの、Journal of Polymer Science,Pol
y.Phys.Ed.,Vol.20,p.441、または、米国特許第4,798,0
81号、もしくは、第5,008,204号、または、L. D. CadyによるTh
e Role of Comonomer Type and Distributio
n in LLDPE Product Performance,SPE Regio
nal Technical Conference,Quaker Square H
ilton,Akron,Ohio,October 1−2,pp.107−119
(1985)に記載のように、TREFによって容易に測定することができる。エチレン
インターポリマーの組成分布はまた、米国特許第5,292,845号、第5,089,
321号および第4,798,081号、ならびに、J.C.Randallによる、
ev.Macromol.Chem.Phys.,C29,pp.201−317に記載
の技術に基づく13C NMR分析を用いて測定することができる。組成分布、および、そ
の他の組成情報はまた、スペイン、バレンシア州の、PolymerCharより市販の
CRYSTAF fractionalysis packageといった、再結晶分析
分別を用いて測定することもできる。
【0062】
本発明にて使用される、実質的に直鎖状のエチレンポリマー類は、特異な種類の化合物
であり、米国特許第5,272,236号、第5,278,272号、第5,665,8
00号、第5,986,028号、および、第6,025,448号にさらに記載される

【0063】
実質的に直鎖状のエチレンポリマー類は、上記の、および、例えば米国特許第3,64
5,992号に記載される、均一分枝直鎖エチレンポリマー類として公知の種のポリマー
類とは、大きく異なる。重要な相違は、実質的に直鎖状のエチレンポリマー類は、均一分
枝直鎖エチレンポリマー類における「直鎖」という用語のような、従来の意味においての
直鎖状のポリマー主鎖を持たないことである。
【0064】
本発明の使用に好適な、均一分枝の実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、
(a)メルトフロー比、I10/I2≧5.63、
(b)式
(Mw/Mn) ≦ I10/I2−4.63
で規定される、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定された、分子量分布Mw/Mn

(c)前記実質的に直鎖状のエチレンポリマーの、表面メルトフラクチャー開始時の臨
界剪断速度が、前記直鎖状エチレンポリマーの表面メルトフラクチャー開始時の臨界剪断
速度より、少なくとも50パーセント大きく、ここで、前記実質的に直鎖状のエチレンポ
リマー、および、前記直鎖エチレンポリマーは、同一のコモノマー、またはコモノマー類
を含み、前記直鎖エチレンポリマーは、前記実質的に直鎖状のエチレンポリマーの10パ
ーセントの範囲内のI2、および、Mw/Mnを有し、ここで、前記実質的に直鎖状のエチ
レンポリマー、および、前記直鎖エチレンポリマーの、それぞれの臨界剪断速度が、同一
の融解温度において、気体押出レオメーターを用いて測定される、気体押出レオロジー、
(d)−30℃と150℃の間にある、単一のDSC融解ピーク、ならびに、
(e)約0.890g/cm3以下の密度、
を有する。
【0065】
「流動加工性指数」(PI)のようなその他のレオロジー特性、および、メルトフラク
チャーに関する臨界剪断速度、および、臨界剪断応力の測定は、気体押出レオメーター(
GER)を用いて行われる。気体押出レオメーターは、M.Shida,R.N.Shr
off、および、L.V.Cancioinの、Polymer Engineerin
g Science,Vol.17,No.11,p.770(1977)、および、V
an Nostrand Reinhold Co.発行の、JohnDealyの、
heometers for Molten Plastics,pp.97−99(1
982)に記載されている。実質的に直鎖状のエチレンポリマー類のPIは、前記実質的
に直鎖状のエチレンポリマーのそれぞれ10%以内のI2、Mw/Mnおよび密度を有する
、従来の直鎖状エチレンポリマーのPIの70パーセント以下である。
【0066】
少なくとも1つの均一分枝エチレンポリマーが用いられる、本発明のこれらの実施態様
においては、Mw/Mnは、好適には3.5よりも小さく、更に好適には3.0より小さく
、最も好適には2.5よりも小さく、特別には約1.5から約2.5の範囲、最も特別に
は約1.8から約2.3の範囲にあることが好ましい。
【0067】
ポリオレフィンは、他のポリマー類とブレンドできる。ポリオレフィンとのブレンドに
適当なポリマー類は、様々な供給業者から市販されており、以下のものに限定されるもの
ではないが、例としては、エチレンポリマー(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)
、ULDPE、中密度ポリエチレン(MDPE)、LLDPE、HDPE、均一分枝直鎖
状エチレンポリマー、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、グラフト改質エチレンポリマ
ー、ESI、エチレン酢酸ビニルインターポリマー、エチレンアクリル酸インターポリマ
ー、エチレン酢酸エチルインターポリマー、エチレンメタクリル酸インターポリマー、エ
チレンメタクリル酸アイオノマー、など)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロ
ピレン(例えば、ホモポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ランダムブ
ロックポリプロピレンインターポリマーなど)、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポ
リ乳酸インターポリマー、熱可塑性ブロックポリマー(例えば、スチレンブタジエンコポ
リマー、スチレンブタジエンスチレントリブロックコポリマー、スチレンエチレン−ブチ
レンスチレントリブロックコポリマーなど)、ポリエーテルブロックコポリマー(例えば
PEBAX)、コポリエステルポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックポリマー
類(例えばHYTEL)、エチレン一酸化炭素インターポリマー(例えば、エチレン/一
酸化炭素コポリマー(ECO)、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素(EAACO)ター
ポリマー、エチレン/メタクリル酸/一酸化炭素(EMAACO)ターポリマー、エチレ
ン/酢酸ビニル/一酸化炭素(EVACO)ターポリマー、および、スチレン/一酸化炭
素(SCO))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および、塩素化ポリエチレン
などの他のポリオレフィン類、ならびにそれらの混合物が挙げられる。換言すると、本発
明の実施に用いるポリオレフィンは、2つ以上のポリオレフィン類のブレンド、または、
1つ以上のポリオレフィン類と、ポリオレフィン以外の1つ以上のポリマー類とのブレン
ドでもよい。本発明の実施に用いたポリオレフィンが、1つ以上のポリオレフィンと、ポ
リオレフィン以外の1つ以上のポリマー類とのブレンドの場合、前記ポリオレフィン類は
、ブレンドの総重量の少なくとも約1、好適には少なくとも約50、より好適には少なく
とも約90重量パーセントを構成する。
【0068】
1つの実施態様において、エチレンインターポリマーは、ポリプロピレンポリマーとブレ
ンドされる。本発明における使用に適当なポリプロピレンポリマー類は、弾性および非弾
性ポリマー類の両方を含み、例えば、ランダムブロックプロピレンエチレンポリマー類が
挙げられる。適当なポリプロピレンポリマー類は、例えばMontell Polyol
efins、および、Exxon Chemical Companyのような、多くの
製造者より入手可能である。適切なポリプロピレンポリマー類は、ExxonからESC
ORENEおよびACHIEVEの名称で供給される。
【0069】
本発明に用いる適切なグラフト変性ポリマー類は公知であり、無水マレイン酸および/
または他のカルボニル含有エチレン性不飽和有機ラジカルを有する、多様なエチレンポリ
マー類を含む。代表的なグラフト改質ポリマー類は、無水マレイン酸でグラフト改質され
た均一分枝エチレンポリマーとして、米国特許第5,883,188号に記載される。
【0070】
本発明に用いる、適切なポリ乳酸(PLA)は、文献中で周知である(例えば、D.M
.Biggらの、Effect of Copolymer Ratio on the
Crystallinity and Properties of Polylac
tic Acid Copolymers,ANTEC96,pp.2028−2039
、WO90/01521、EP0515203A、および、EP0748846A2を参
照。適切なポリ乳酸ポリマー類は、カーギル・ダウよりEcoPLAの名称で市販されて
いる。
【0071】
本発明に使用される、適切な熱可塑性ポリウレタンポリマー類は、The Dow Ch
emical CompanyからPELLATHANEの名称で市販されている。
【0072】
適切なポリオレフィン一酸化炭素インターポリマー類は、公知の高圧フリーラジカル重
合法を用いて製造可能である。しかし、これらはまた、従来のチーグラーナッタ触媒類、
または、上述および上記に参照の、いわゆる均一触媒系を用いても製造可能である。
【0073】
エチレンアクリル酸インターポリマーのような、適切なフリーラジカル開始高圧カルボ
ニル含有エチレンポリマー類は、ThomsonおよびWaplesの米国特許第3,5
20,861号、第4,988,781号、第4,599,392号、および第5,38
4,373に開示された方法を含む、公知の技術のいずれかによって製造可能である。
【0074】
本発明に使用される、適切なエチレン酢酸ビニルインターポリマーは、Exxon C
hemical Company およびDu Pont Chemical Comp
anyを含む、多様な供給者から市販されている。
【0075】
適切なエチレン/アルキルアクリレートインターポリマー類は、多様な供給者から市販
されている。適切な、エチレン/アクリル酸インターポリマー類は、The Dow C
hemical Companyより、PRIMACORの名称で市販されている。適切
なエチレン/メタクリル酸インターポリマー類は、Du Pont Chemical
CompanyからNUCRELの名称で市販されている。
【0076】
塩素化ポリエチレン(CPE)、特に塩素化された実質的に直鎖状のエチレンポリマー
類は、公知の技術に基づいてポリエチレンを塩素化することにより製造可能である。好適
には、塩素化ポリエチレンは、30重量パーセント以上の塩素を含む。本発明の使用され
る適切な塩素化ポリエチレンは、The Dow Chemical Companyか
らTYRINの名称で市販されている。
【0077】
ポリオレフィンと、1つ以上のその他のポリマーのブレンドは、ヒートセットが可逆性
であるために、当然ながら、充分な弾性を保持しなければならない。ポリオレフィンと、
ブレンドポリマーの両方が、同様の弾性を有する場合、相対的なそれぞれの量は、例えば
0:100から100:0重量パーセントのように、広い範囲におよぶ。ブレンドポリマ
ーの弾性が小さい、または、弾性がない場合、ブレンド中のブレンドポリマーの量は、ポ
リオレフィンの弾性を弱める程度によって決まるだろう。ポリオレフィンが均一分枝エチ
レンポリマー、特に実質的に直鎖状の均一分枝エチレンポリマーであるブレンド、および
、ブレンドポリマーが非弾性ポリマー、例えば結晶化ポリプロピレンまたはPLAの場合
、ポリマーを混ぜるポリオレフィンの重量比率は通常、99:1と90:10の間である

【0078】
同様に、非弾性被覆繊維は、1つ以上の上述のブレンドポリマー類と混合することがで
きる。しかし、混合する場合は、通常および好適には、別の非弾性繊維、例えば結晶化ポ
リプロピレンまたはPLAとの混合である。弾性繊維と混合された場合は、被覆繊維に望
ましくない弾性が付与されないように、混合中の弾性繊維量は制限される。
【0079】
架橋
本発明の実施において、弾性ポリマーおよび弾性ポリマーを含む製品の架橋、硬化、ま
たは、照射は、電子ビーム、ベータ、ガンマ、UV−、および、コロナ照射;管理された
加熱;過酸化物;アリール化合物;および、シリコン(シラン)およびアジドカップリン
グ、ならびに、それらの混合を含む、公知の技術のいずれかによって達成されるが、これ
らに限定されない。シラン、電子ビーム、および、UV照射(光開始剤、光架橋剤、およ
び/または、光開始剤/架橋剤を使用して、または使用せず)は、ポリマーまたはポリマ
ーを含む製品を、実質的に架橋または硬化するために、好適な技術である。好適な架橋、
硬化、および、照射の技術は、米国特許第6,211,302号、第6,284,842
号、第5,824,718号、第5,525,257号、および、第5,324,576
号、EP0490854、ならびに、2003年2月5日にParvinder Wal
iaらが出願した、米国特許仮出願に記載されている。
【0080】
添加剤
酸化防止剤、例えばCiba Geigy Corp製造の、Irgafos168、
Irganox1010、Irganox3790、および、chimassorb94
4は、製造、または、二次加工の過程のアンドゥ(undo)劣化を防止するため、およ
び/または、グラフト化または架橋の程度をより良くコントロール(例えば過剰なゲル化
の防止)するために、エチレンポリマーに加えることができる。工程内の添加物、例えば
ステアリン酸カルシウム、水、フルオロポリマーなどを、残存触媒の非活性化、および/
または、加工性の改良のような目的にも使用してもよい。Tinuvin 770(Ci
ba−Geigy製)は、光安定剤として用いることができる。
【0081】
ポリオレフィンポリマーは、充填されていても、非充填でもよい。充填されている場合
、充填剤の量は、高温時の熱耐性または弾性のいずれかに対して悪影響を与えるであろう
量を超えるべきではない。充填剤が存在する場合、充填剤の量は通常、ポリオレフィンポ
リマーの総重量(または、1つのポリオレフィンポリマーと、1つ以上の他のポリマー類
とのブレンドの場合は、ブレンドの総重量)に基づいて、0.01から80重量パーセン
トの間である。代表的な充填剤としては、カオリンクレー、水酸化マグネシウム、酸化亜
鉛、シリカ、および、炭酸カルシウムが挙げられる。好適な実施態様において、充填剤が
存在する場合、充填剤が架橋反応に干渉する傾向を防止、または、遅延させるであろう素
材によって、充填剤をコーティングする。ステアリン酸は、そのような充填剤コーティン
グの実例である。
【0082】
繊維および他の製品の製造
本発明における芯の繊維は、どのようなプロセスによって製造されたホモフィル繊維、
または、複合繊維でもよい。ホモフィル繊維を製造する従来のプロセスには、米国特許第
4,340,563号、第4,663,220号、第4,668,566号、または第4
,322,027号に開示されたシステムを用いる、メルトスパンまたはメルトブロウン
、ならびに、米国特許第4,413,110号に開示されたシステムを用いるゲルスパン
が含まれる。繊維は直接、追加の延伸なしに、最終的な直径にメルトスパンすることがで
き、または、より大きな直径にメルトスパンした後、繊維を延伸する既存技術を用いて、
所望の直径に加熱または冷却延伸することができる。
【0083】
複合繊維は、少なくとも繊維の一部にエチレンポリマーを有する。例えば、鞘/芯の複
合繊維(すなわち芯を同心円状に鞘が囲む)において、エチレンポリマーは、鞘、または
、芯のどちらかにも含まれる可能性がある。一般的、および、好適には、エチレンポリマ
ーは複合繊維の鞘の成分であるが、エチレンポリマーが芯の成分の場合は、鞘の成分は、
芯の架橋を妨げるものであってはならず、例えば、紫外線が芯の架橋に用いられる場合、
ポリマー芯が実質的に架橋するため、充分な紫外線が透過できるように、鞘の成分は紫外
線に対し透明または半透明である必要がある。異なるポリマー類もまた、同一繊維中の鞘
および芯としてそれぞれ使用可能であり、好適には両成分は弾性である。その他の種類の
複合繊維もまた、本発明の範囲内であり、並列状に複合した繊維(例えば、本発明におけ
るポリオレフィンが繊維の表面の少なくとも一部を構成する、ポリマー類が分離した領域
を持つ繊維)のような構造も含まれる。
【0084】
繊維の形態は限定されない。例えば、一般的な繊維は円い断面の形状を持つが、場合に
より繊維は三つに分かれた形状(trilobal shape)、または、平たい(す
なわち「リボン」様の)形状のような、異なった形状をとる。本発明の弾性芯の繊維は、
繊維の形状によって限定されない。
【0085】
繊維の直径は、様々な方法で計測、および、報告される。一般的に、繊維の直径は、フ
ィラメントあたりのデニールによって計測される。デニールは繊維用語で、9000メー
トルの長さの繊維あたりのグラム数によって規定される。本発明の弾性芯の繊維は、繊維
の弾性への影響がほとんど無しに、広範囲の直径をとることができる。繊維のデニールは
、しかし、最終製品の性能に適合させるために調整可能であり、よって好適には、連続し
て巻かれたフィラメントが、約1から約20,000デニール/フィラメントである。そ
れでもなお、好適にはデニールは20よりも大きく、好都合には約40デニール、または
、約70デニールであってもよい。このような選好は、耐久衣料は通常40デニールを超
える繊維を用いるという事実による。
【0086】
被覆繊維
本発明の被覆繊維は、芯と被覆を含む。本発明の目的においては、芯は1つ以上の弾性
繊維を含み、被覆は1つ以上の非弾性繊維を含む。上述のように、弾性繊維は、均一分枝
エチレンポリマーを含む。一般的な被覆繊維としては、綿、麻、羊毛、絹などのような天
然繊維、または、ポリエステル(例えばPETまたばPBT)もしくはナイロンのような
合成繊維が挙げられる。被覆繊維は、一般的などのような方法によって製造してもよい。
【0087】
図1は、延伸前の状態の被覆繊維を示す。繊維は、らせん状に巻き付く非弾性の被覆に
よって取り囲まれた弾性芯を含む。このような状態において、被覆繊維は、芯の繊維より
も非常に長い。
【0088】
図2は、図1の被覆繊維が、延伸または伸長された状態を示す。ここでは、芯の繊維と
被覆繊維の長さの違いは、芯の繊維を長くすることによって減少する。芯の繊維が、適当
な量の延伸によっても全く延伸しない場合、芯の繊維の延伸は、芯まわりの被覆の巻きつ
きに固有のたるみの一部またはすべてを除去する。
【0089】
被覆繊維のヒートセットは、(i)バイアス応力を適応することによって、芯の繊維を
延伸し、(ii)芯の繊維を、少なくとも芯の繊維を含むエチレンポリマーのクリスタラ
イトが少なくとも部分的に融解する温度まで加熱し(iii)一部、または、すべてのエ
チレンポリマーが融解するまで、芯の繊維を、ステップ(ii)を上回る温度に保ち(i
v)融解した芯の繊維を、ステップ(ii)よりも低い温度に冷却し、そして(v)繊維
のバイアス応力を除去することを含む。被覆繊維はこの時点で「緩和状態」にあり、延伸
前の繊維から除去される延伸量に応じて、硬質繊維、または、硬質に近似した繊維として
振る舞う。延伸されたヒートセット被覆繊維が、オレフィンポリマーのクリスタライトが
少なくとも部分的に融解する温度より高い温度に再加熱されるが、バイアス応力が無い場
合、被覆繊維は延伸以前の長さまたはそれに近い長さに戻る。この繊維は、これによって
、逆行ヒートセットされた繊維と呼ばれる。
【0090】
好適なポリエチレンの芯の繊維のためには、ステップ(ii)の温度は少なくとも30
℃であり、さらに好適には少なくとも40℃、そして、最も好適には少なくとも約50℃
である。
【0091】
いったんヒートセットおよび緩和されると、被覆繊維は硬質繊維酷似の挙動をし、これ
は効率的な染色、整経(warping)、製織(weaving)、または、編成(knitting)に、被
覆繊維をよく順応させる。図3は、延伸および緩和された被覆繊維の、染色および編成の
1つの実施態様を図示する。被覆繊維は、ヒートセットおよび緩和された後、スプールに
収集される。
【0092】
被覆繊維は染色の準備のために、スプールから穿孔した円錐に移され、既存技術のいず
れかによって染色された後、製織の工程に用いられる。通常、染色された被覆繊維は、横
糸方向に織り込まれ、横糸の伸縮性が与えられる。それは場合によって縦糸方向に織り込
まれ、縦糸の伸縮性が与えられてもよい。それはまた縦糸、および、横糸の双方に織り込
まれ、双方向の伸縮性を与えられてもよい。横糸の製織の間、硬直な、または、「凍結さ
れた(frozen)」繊維は、ある程度はより効率的な製織をもたらす。これは、伸縮性の欠
如、および、端部に沿ったヤーンの無駄が省かれた結果である。編地の製造において、ヒ
ートセットされた(または硬直なもしくは凍結した)繊維またはヤーンは、当該繊維また
はヤーンに適用される張力と共に、または、張力無しに、布に織り込まれることができる

【0093】
本発明のヒートセットされた被覆ヤーンを織り込んだ布が得られたら、その布は、ヒー
トセットを逆行させるために、ヒートセットされた被覆ヤーンのクリスタライトが少なく
とも部分的に融解する温度にさらされ得る。好適には、のり抜き、スカーリング、または
、マーセル化のような、布の湿式の加工段階の一部として、高温が適用される。好適には
、生繊維材料の形成後の最初の段階の温度は約70℃であり、さらに好適には、40から
60℃の間である。このように、比較的低い温度でヒートセットを逆行させることは、繊
維が延伸前の長さに戻ることを最大化する結果となることが、発見された。ヒートセット
の逆行後は、弾性の過度な劣化無しに、繊維を高温にさらすことができる。
【0094】
かわりに被覆繊維を、延長または延伸された状態で、スプールまたは円錐に巻き取って
もよい。染色のような後処理の間、染浴の温度は繊維のヒートセットに充分である。ヒー
トセットされた繊維は続いて染色から取り除かれ、製織または編成のような他の加工に直
接使用されることがある。ライクラ繊維の場合、染色の間ヒートセットされていないため
、繊維は収縮してコーンが圧壊する可能性がある。そして、製織および編成のために、異
なるスプールにさらに移されることが必要である。本発明の可逆性ヒートセットされた繊
維またはヤーンは、弾性繊維の製造を著しく改善する。なぜならば、ヤーンの弾性のヒー
トセットが可能になり、非弾性繊維として加工(染色、製織、編成など)した後、弾性を
そのような加工の後に回復させることができるからである。
【0095】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、これを限定するものではない。特に記載
のない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量基準である。
【実施例】
【0096】
好ましい実施態様の説明
素材
・2000ppmのChimassorbtm944、2000ppmのCyanoxtm
1790、500ppmのIrganox1076、および、800ppmのPepqに
よって安定化された、ENGAGEポリエチレン(0.87g/cc、5MI)。8−エ
ンドラインの紡績機器を用いた、70デニールのスパン。外部冷却を有するN2内で、2
2.4メガラドで照射される電子ビーム。
・ライクラ162C、70デニール。
【0097】
ヒートセット実験
約10〜20センチメートルの長さの繊維試料をスプールから切り取り、一端をテフロ
TMコーティングされたシートに貼り付けた。自由な方の端部を、その後所望の延伸に達
するまで固定された端部の反対側に移動した後、シートに固定した。正確な延伸は、延伸
前に繊維の中間部分に約5cm離して2つ付けられた照合マークの距離により測定される
。適用された延伸率、Xappは以下のように定義される。

app=延伸長さ/延伸前長さ
【0098】
この実験において、Xappは1.5、2、3および4であった(これは50、100、
200、および、300%の伸長に対応する)。その後シートを、180から210℃の
範囲の所望のヒートセット温度で平衡に達した対流オーブンの中に入れた。1、2または
3分の暴露時間の後、シートをオーブンから取り出し室温に置いた。繊維は数秒で室温に
達した。繊維の両端を止めるテープは、この実験の間はそのままであるが、繊維の延伸時
、特に高い延伸率の時には、僅かに繊維のすべりが生じた。繊維の延伸は照合マークによ
って測定されるため、このすべりは実験結果に影響を与えなかった。
【0099】
繊維が室温に達した後、繊維の両端を互いに接近させるためにシートを丸め、これによ
って制約のない回復をさせた。繊維は、5分間の回復時間の後にシートから外し、以下の
定義
set=セット長さ/延伸前長

による「固定された」延伸を測定した。この繊維の新規デニールは以下の通りである。

新規デニール=初期デニール/Xset
【0100】
リデニーリング効率(パーセント)は、以下のように定義できる。

EffREDN=(Xset−1/Xapp−1)×100
【0101】
ライクラについては、その他2つの効果もまた、それぞれ1つの実験中で考察した。水
分の存在下における、ヒートセットの効果、および、室温における延伸ではなく、オーブ
ン中における延伸を適用する効果。上記の実験をすべて5度づつ繰り返し実施し、表に示
す結果は平均値である。500%分-1速度における標準的手順によって、荷重‐伸長カー
ブを得た。
【0102】
自由収縮
ヒートセットおよびコントロールされた繊維の自由(制約の無い)収縮は、元々の長さ
が約20cmの繊維試料を、90℃に保った水槽に浸して測定した。収縮した長さを、繊
維が室温に戻った後に測定した。収縮率は、以下に定義される。

S={(最終長さ−初期長さ)/初期長さ}×100

ヒートセットされた繊維において、収縮後に残る延伸Xfinal

final=収縮長さ/初期延伸前長さ

である。
【0103】
ヒートセットプロセスの、総合的な効率(パーセント)は、以下に定義される。

効率=(Xfinal−1)/(Xapp−1)×100

総合的な効率は、収縮率が0のときのリデニーリング効率に等しい。
【0104】
計算例
・元々100デニールである、長さ10センチの繊維を、20センチに延伸した。
app=2

・延伸した繊維をヒートセットし、回復した長さは、15センチと測定された。
set=1.5
新規デニール=66.7
EffREDEN=50%
【0105】
その後、15センチの繊維を90℃の水にさらすと、14センチに収縮した。
S=6.7%
final=1.4
Eff=40%
【0106】
収縮力の測定
90℃の水中における、長さが拘束された試料の収縮力は、延伸シュリンクフィルム用
の装置を用いて測定される。これらの実験では、装置が正確に測定できる充分な力を得る
ために、10本の繊維の束を用いた。ヒートセット試料では、布が弾性繊維に加える拘束
をシミュレートするために、繊維をXappに保った。水に浸した後、すべての試料に見ら
れる力は、速やかに定常値に減少した。10秒の暴露時間における値を記録した。時間の
経過とともに収縮力がより緩和するのは、ライクラにおいては妥当だが、AFFINIT
Y繊維においては、後者は架橋されているため妥当しない。
【0107】
結果および考察
ヒートセットおよびリデニーリング
ヒートセットの実験で収集したデータについて、表I(a)にライクラのデータ、表I
(b)にAFFINITYのデータをまとめた。以下の観察結果が得られた。
【0108】
・両方の繊維において、部分的リデニーリングのみが可能である。同等の条件下では、
AFFINITYのリデニーリング効率はライクラのそれよりも高い。
・AFFINITYおよびライクラの両方において、延伸の増大に伴いリデニーリング
効率は低下する。
・ヒートセット時間が長くなると、ライクラのリデニーリング効率は増大するが、AF
FINITYの場合は大きく影響されない。
【0109】
・ライクラのリデニーリング効率は、温度を下げると著しく低下するが、AFFINIT
Yでは低下しない。
・ライクラでは、水の存在によってリデニーリングは影響されない。また、ヒートセッ
ト温度で延伸を適用しても、室温での延伸およびその後のヒートセットと、異なる結果は
得られなかった。この観測結果のためのデータは、表Iには報告されていない。
【0110】
荷重−伸長カーブ
ヒートセットされた繊維の荷重―伸長カーブを図4から6に示す。図4は、200℃で
1分間ヒートセットされたライクラに適用された延伸率の影響である。
【0111】
図4に見られるように、ヒートセットの最も顕著な結果は、延伸の増加に伴い、伸展性
が次第に減少することである。延伸の適用とともに増加する実際のデニールあたりの荷重
が減少する一方で、破断時の荷重もまた減少する。しかし、布の性能という観点からは、
繊維あたりのグラム荷重は、デニールには無関係の関連数量である。興味深いことに、初
期モジュラスが延伸の増加に伴い減少する一方で、100%伸長を超えると逆もまた真と
なる。
【0112】
図5は、3×の延伸率で1分間ヒートセットしたライクラの、ヒートセットの温度の影
響に関する。190℃、200℃、および、210℃にさらされた繊維はすべて、破断点
伸びが大体同じだった。破断時の荷重は、温度の上昇とともに低下した。
【0113】
最後に図6は、200℃で1分間ヒートセットされたAFFINITYに適用された延
伸率の効果に関する。一般的な特徴はライクラ(図4)に類似するが、破断点伸びは、4
×の延伸に対して約100%の歪みに低下する。制御されたAFFINITY繊維の伸展
性は、ライクラのそれよりも約200%低いため、これは予想外ではない。
【0114】
延伸ヒートセットが、通常、AFFINITYおよびライクラの両方のモジュラスを増
加させた一方で、繰り返し負荷による繊維の機械的処理は、1サイクル後ですら荷重を顕
著に減少させる。
【0115】
自由収縮実験
繊維の制約無しの収縮は、熱処理した、または熱処理しない繊維に残存する潜在的収縮
を表すために有用である。しかし、前記の実験では、弾性繊維は織物の構造および寸法に
制約を受けており、布の収縮に直接的に関連していない。この点でより意味深い繊維の実
験が、ここに示す収縮力実験である。
【0116】
これらの実験をAFFINITY繊維に行うと、架橋されていないAFFINITY繊
維は、90℃の水にさらされた場合、約80から90%収縮する。収縮は鎖の配向に起因
し、繊維の巻き取り状態に依存する。鎖がその安定寸法へエントロピック収縮(entr
opic retraction)をすると、巨視的には絡み合い(entanglem
ent)の存在に起因する収縮を引き起こす。絡み合ったネットワークのモジュラスは、
非常に過渡的であり、融解状態におけるモジュラスを保つためには、架橋が要求されるこ
とに留意すべきである。
【0117】
22.4メガラドの照射量を照射された繊維は、90℃の水にさらされたときでも、わ
ずか約35〜40%しか収縮しない(表IIaの1列目)。収縮率のレベルの低下は、配
向した鎖の完全な収縮を防止する架橋の連結点による拘束を反映する。換言すると、エン
トロピックな張力中で配向した鎖は、配向状態中に形成された架橋ネットワークを、圧縮
状態にする。架橋された融解物の緩和レベルは、これら2つの圧力の均衡によって決定付
けられる。この効果は、配向状態中に架橋されたゴムに関する文献で周知である。
【0118】
架橋されたAFFINITYをヒートセットして、1×の延伸で融解しても、Xfinal
に示されるように、ヒートセットされていない繊維と比較して収縮レベルは変化しない(
表IIa、2列目)。これは、架橋ネットワークが永久的なものであり、熱処理によって
変えることができないからである。同様に、ヒートセット中の3×延伸もまた、当初の繊
維寸法に基づく最終的な収縮レベルを変化させない(表IIa、3列目)。例として、1
0cmの繊維が10cmに保たれたままヒートセットされ(1×延伸)、90℃にさらさ
れて長さが6、5cmに減少する(35%収縮)場合、ヒートセットされない繊維も同様
である。繊維が30cm(3×延伸)に延伸され、ヒートセットされる場合、結果的な長
さは25cm(2.5×延伸)であるが、90℃にさらされた場合、繊維は6.5cmの
長さに収縮する。これは、リデニーリングが可能であっても、ヒートセットが起こらない
ことを意味する。
【0119】
ライクラの自由収縮の結果を表II(b)に示す。収縮は1.5×延伸において最小で
あるが、3×延伸においてはヒートセット寸法の20%である。これによって、総合的な
ヒートセット効率は34%となり、これはかなり低い。発明者の研究室において計測され
たヒートセット効率、および、リデニーリング値は、最近のAATCC Symposi
um3において報告された、90%効率(おそらく1.5×延伸において)よりも、非常
に低い。この不一致の原因は、現在のところ不明である。
【0120】
収縮力の実験
収縮力の実験において、両端を固定し延伸した繊維の90℃での収縮力を測定した。こ
れらの試験は、使用中の布の収縮に関連するものである。なぜなら、布に織り込まれたら
、弾性繊維の寸法は布が寸法的に安定している限り大きく変化することはないからである
。この繊維実験が収縮力の重要性を示す一方で、この力がどれだけの布収縮を引き起こす
のかは、現在のところ不明である。
【0121】
実験結果を表IIIに示し、以下に要約する。
【0122】
・3×延伸で架橋したAFFINITY繊維においては、ヒートセットは繊維あたり約
2.5gの収縮力を低下させない。
・3×延伸したヒートセット無しのライクラにおいては、90℃における収縮力は、A
FFINITYのそれよりも大きい。AFFINITYと異なり、ライクラはヒートセッ
トすることによって、収縮力が減少する。
・3×延伸し、200℃で1分間ヒートセットしたライクラの収縮力は、AFFINI
TYのそれとおよそ同等である。ライクラの収縮力を減少させるためには、より長時間の
ヒートセットを要する。
【0123】
ライクラの有する傾向は予想されるものと一致する。リデニーリングが効率的であるほ
ど、収縮は小さい。AFFINITY繊維にとって、収縮力は架橋ネットワークの特性で
あり、ネットワークがそのまま存在する限り、それ以上緩和することは期待されない。
【0124】
布の実験
布は以下のように製造した。実験に用いられた布の製造は、80〜90℃でコーン染色
した生のヤーンまたはヤーンを含み、
リード幅:168cm、
エンドの総数:6136、
縦糸のヤーン数(Yarn count weft):60/1綿のメートル数毎グ
ラム、または「数メトリック(number metric)」または「Nm」(100
%綿)、
エンドの数/cm=36、
横糸のヤーン数(Yarn count warp):4.5×で、85/1Nm+
78dtex XLATM
ピック(pick)の数/cm=28、
製造:平織物(1:1)、
デント(dent)の総数:1825、
エンド/デント:2である。
【0125】
続いて、ヒートセットを逆行させるため布を加熱した。布の加熱方法は、100℃にお
ける15分間の煮沸処理後に空気乾燥させるか、または、60℃での洗浄工程の後、乾燥
器で加熱するかのどちらかであった。表IVに示す結果は、より低い温度下でヒートセッ
トが逆行された布は、幅がより小さいか、より高程度の延伸を有することを示す。
【0126】
表I
様々な弾性繊維のリデニーリング効率および煮沸効率
【表1】

【0127】
表I(a)
ライクラのヒートセット
【表1a】

【0128】
表I(b)
Affinityのヒートセット
【表1b】

【0129】
表II(a)
架橋したAffinity繊維の90℃における自由収縮実験
【表2a】

【0130】
表II(b)
ライクラの90℃における自由収縮実験
【表2b】

【0131】
表III
架橋したAffinityおよびライクラの、収縮力実験
【表3】

【0132】
表IV
ヒートセット逆行温度の影響
【表4】

【0133】
前述の実施態様において本発明は相当な詳細にわたり記載されたが、この詳細は説明を
目的とする。本発明には、以下の請求項に記載されている発明の精神および範囲から離れ
ない、数多くの変形および改良をなす事ができる。上記で引用された米国特許および特許
査定が下された米国特許出願の全ては、参照により本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆行ヒートセットされた、弾性繊維。
【請求項2】
温度安定性ポリマーを含む、請求項1の繊維。
【請求項3】
前記ポリマーが、熱可塑性ウレタンポリマーである、請求項2の繊維。
【請求項4】
前記ポリマーが、オレフィンポリマーである、請求項2の繊維。
【請求項5】
前記ポリマーが、均一分枝エチレンポリマーである、請求項4の繊維。
【請求項6】
前記ポリマーが、均一分枝した実質的に線状のエチレンポリマーである、請求項4の繊維

【請求項7】
前記ポリマーが、エチレンおよび少なくとも1つのC3〜C20α−オレフィンを含む、請
求項4の繊維。
【請求項8】
繊維のブレンドを形成するように1つ以上の追加の繊維をさらに含む、請求項1の繊維。
【請求項9】
前記1つ以上の逆行ヒートセットされた弾性繊維が温度安定性ポリマーを含む、請求項8
のブレンド。
【請求項10】
前記ポリマーが熱可塑性ウレタンポリマーである、請求項9のブレンド。
【請求項11】
前記ポリマーがオレフィンポリマーである、請求項9のブレンド。
【請求項12】
前記ポリマーが均一分枝エチレンポリマーである、請求項11のブレンド。
【請求項13】
前記ポリマーが均一分枝した実質的に線状のエチレンポリマーである、請求項12のブレ
ンド。
【請求項14】
逆行ヒートセットされたヤーンであり、前記ヤーンは、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維、および、
B.非弾性繊維、
を含む、ヤーン。
【請求項15】
芯および被覆の構成を含む、請求項14のヤーン。
【請求項16】
前記弾性繊維が芯を含む、請求項15のヤーン。
【請求項17】
前記弾性繊維がホモフィル繊維である、請求項16のヤーン。
【請求項18】
前記弾性繊維が複合繊維である、請求項16のヤーン。
【請求項19】
前記弾性繊維が多成分繊維である、請求項16のヤーン。
【請求項20】
前記弾性繊維が熱可塑性ポリウレタンポリマーを含む、請求項16のヤーン。
【請求項21】
前記弾性繊維がエチレンポリマーを含む、請求項16のヤーン。
【請求項22】
前記ポリマーが均一分枝エチレンポリマーである、請求項21のヤーン。
【請求項23】
前記ポリマーが均一分枝した実質的に線状のエチレンポリマーである、請求項22のヤー
ン。
【請求項24】
前記非弾性繊維が、綿、羊毛、麻、絹、PET、PBTおよびナイロンからなる群より選
択される、請求項22のヤーン。
【請求項25】
可逆性ヒートセットされた被覆繊維であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、
および、
B.非弾性繊維を含む被覆、
を含む、被覆繊維。
【請求項26】
前記弾性繊維がホモフィル繊維である、請求項25の被覆繊維。
【請求項27】
前記弾性繊維が複合繊維である、請求項25の被覆繊維。
【請求項28】
前記弾性繊維が均一分枝エチレンポリマーである、請求項25の被覆繊維。
【請求項29】
前記弾性繊維が均一分枝した実質的に線状のエチレンポリマーである、請求項25の被覆
繊維。
【請求項30】
前記均一分枝した実質的に線状のエチレンポリマーが、エチレンおよび少なくとも1つの
3〜C20α−オレフィンを含む、請求項29の被覆繊維。
【請求項31】
前記被覆が、綿、羊毛、麻、絹、PET、PBTおよびナイロンからなる群より選ばれる
、請求項25の被覆繊維。
【請求項32】
前記芯の前記弾性繊維がヤーンの一部である、請求項25の被覆繊維。
【請求項33】
逆行ヒートセットされたヤーンの製造方法であり、前記ヤーンは、
A.融点を有する熱安定性ポリマーを含む弾性繊維、および、
B.非弾性繊維、を含み、
前記方法は、
(a)延伸応力を前記繊維に対し適用して前記弾性繊維を延伸し、
(b)前記(a)の延伸された弾性繊維をヤーンに加工し、
(c)前記(b)のヤーンを一体に巻き取り、
(d)前記(c)のヤーンを、ポリマーのクリスタライト(crystalite)の
少なくとも一部が融解する温度まで加熱し、および、
(e)前記(d)のヤーンをステップ(d)の温度よりも低い温度に冷却すること、を
含む方法。
【請求項34】
追加のステップ、
(f)前記繊維から延伸力を除去し、および、
(g)ステップ(g)で得た前記ヤーンの長さが、ステップ(f)で得た前記ヤーンの
長さより短くなるよう、クリスタライトの少なくとも一部が融解する温度で前記ヤーンを
加熱すること、
を含む、請求項33の方法。
【請求項35】
請求項33に基づき製造されたヤーンを組み入れることを含む、縦糸巻きの製造方法。
【請求項36】
可逆性ヒートセットされた被覆繊維の製造方法であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、結晶融点を有する温度安定性オレフィンポリマーを含む弾性
繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、
前記方法は、
(a)延伸応力を前記被覆繊維に対し適用して、前期被覆繊維を延伸し、
(b)前記(a)の延伸された被覆繊維を、オレフィンポリマーのクリスタライトの少
なくとも一部が融解するように、充分な温度で充分な時間加熱し、
(c)前記延伸および加熱した(b)の被覆繊維をステップ(b)の温度よりも低い温
度に、融解したクリスタライトの少なくとも一部が固化するのに充分な時間冷却し、そし
て、
(d)前記被覆繊維から延伸応力を除去すること、
を含む方法。
【請求項37】
可逆性ヒートセットされた被覆繊維を含む布であり、前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、
および、
B.非弾性繊維を含む被覆、
を含む布。
【請求項38】
前記被覆繊維のヒートセットが逆行された、請求項37の布。
【請求項39】
可逆性ヒートセットされた被覆繊維を含むヒートセットされた布であり、前記被覆繊維は

A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、
および、
B.非弾性繊維を含む被覆、
を含む布。
【請求項40】
前記被覆繊維のヒートセットが逆行された、請求項39の布。
【請求項41】
被覆繊維を染色する方法であり、前記被覆繊維は、
A.結晶融点を有する温度安定性オレフィンポリマーを含む弾性繊維を含む芯、および

B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、
前記方法は、
(a)前記被覆繊維を、スプールに巻き取り、そして、
(b)スプールに巻かれたままの状態で、前記被覆繊維を染色すること、
を含む方法。
【請求項42】
前記被覆繊維が、約60℃を超える温度で染色される、請求項41の方法。
【請求項43】
可逆性ヒートセットされた被覆繊維から布を製織する方法であり、
前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、結晶融点を有する温度安定性オレフィンポリマーを含む弾性
繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、
前記方法は、
(a)前記被覆繊維をヒートセットし、
(b)前記ヒートセットされた被覆繊維を、一体に巻き取り、そして、
(c)前記ヒートセットされた被覆繊維から布を製織すること、
を含む方法。
【請求項44】
ステップ(c)の前に、前記ヒートセットされた被覆繊維を染色する、請求項43の方法

【請求項45】
(d)前記布が製織された後に、前記被覆繊維のヒートセットを逆行する、をさらに含む
、請求項43の方法。
【請求項46】
前記ヒートセットされた被覆繊維が、前記布の横糸および/または縦糸方向に織り込まれ
る、請求項43の方法。
【請求項47】
染色された、可逆性ヒートセット可能な被覆繊維から布を編成する方法であり、
前記被覆繊維は、
A.実質的に架橋された、結晶融点を有する温度安定性オレフィンポリマーを含む弾性
繊維を含む芯、および、
B.非弾性繊維を含む被覆、を含み、
前記方法は、
(a)前記被覆繊維をヒートセットし、
(b)前記ヒートセットされた被覆繊維を、スプールに巻き取り、
(c)スプールに巻かれたままの状態で、前記ヒートセットされた被覆繊維を染色し、
(d)前記染色され、ヒートセットされた被覆繊維から布を編成し、および、
(e)前記布が編成された後、前記被覆繊維のヒートセットを逆行させること
を含む、方法。
【請求項48】
逆行ヒートセットされた、弾性素材であり、
A.実質的に架橋された、温度安定性のオレフィンポリマーを含む弾性素材、および、
B.非弾性素材、
を含む、弾性素材。
【請求項49】
延伸可能な不織布であり、
A.個々の繊維または糸が、ランダムにインターレイ(interlay)された構造
を有するウェブまたは布であり、前記繊維は、実質的に架橋された、温度安定性のポリマ
ーを含む弾性繊維を含み、場合により、
B.非弾性フィルムまたは不織布層を含む、不織布。
【請求項50】
逆行ヒートセットされた、請求項49の布。
【請求項51】
延伸可能な不織布の製造方法であり、
a)個々のポリマー性繊維または糸がランダムにインターレイされた構造を有する、可
逆性ヒートセットされた弾性ウェブまたは布を形成し、
b)前記ウェブまたは布に延伸応力を適用しながら、前記ウェブまたは布を、前記ポリ
マーのクリスタライトが少なくとも部分的に融解する温度に加熱することにより、ヒート
セットし、
c)前記ステップb)の布が、まだヒートセット手順からの延伸状態にある間に、前記
ステップb)の布を非弾性層に張り合わせ、
d)まだ延伸状態にある間に、前記積層構造体を冷却し、
e)前記積層構造体を、前記可逆性ヒートセット層が、少なくとも部分的に延伸前の状
態に向けて収縮するように再加熱すること、
を含む、方法。
【請求項52】
ステップd)がステップc)の前に実行される、請求項51の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−287164(P2009−287164A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213384(P2009−213384)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【分割の表示】特願2003−576690(P2003−576690)の分割
【原出願日】平成15年3月11日(2003.3.11)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】