説明

可逆性感熱記録媒体、可逆性感熱記録ラベル、部材、及び画像処理方法

【課題】サーマルヘッド等の熱源へのカス付着が少なく、搬送速度の早い状態での消去特性に優れる可逆性感熱記録媒体を提供すること。
【解決手段】支持体上に電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得る可逆性感熱組成物を含有する可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、該可逆性感熱記録層中に含有される樹脂成分が、水酸基価100〜250(KOHmg/g)のポリオール樹脂を架橋させたものであり、更に電子受容性化合物として下記式(1)で表される尿素化合物を用いることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【化10】


(式中nは23以上の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録媒体、可逆性感熱記録ラベル、部材、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、OA化の進展と共にファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などの出力用紙として、また最近ではプリペイドカードやポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されているが、環境問題、リサイクルの視点から、何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体の開発が望まれており、本発明者らは特許第2981558号公報(特許文献1)において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これらと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、その発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。
【0003】
しかし、繰り返し書き換えるに従い、サーマルヘッドやセラミックヒーター等の熱源に付着するカスの堆積により発色画像の濃度低下を起こす頻度が上昇し、更に、この現象はプリンターの搬送速度が速くなるにしたがって熱源からの印加エネルギーが増大するためにカス付着も増加する傾向にあり、その影響で印字不良(濃度低下、カスレ、ヌケ等)が引き起こされており、プリンターの高速化を図っていく上で大きな障害となっている。
【0004】
繰り返し印字時の問題を解決するために、従来様々な検討がされてきた。例えばサーマルヘッドへのカス付着防止手段としては電子線硬化タイプ樹脂とフィラーからなる保護層を設ける方法が特開2000−25336号公報(特許文献2)、特開平11−240251号公報(特許文献3)に提案されているが、この方法はサーマルヘッドから可逆性感熱記録層への熱伝播に対する障壁を設けることになることから発消色感度特性の低下を引き起こす問題があり有効な方法とは言い切れず、特に搬送速度を高速する場合にはその問題が増幅されてしまう。別の手段として、特開2005−53124号公報(特許文献4)に保護層にシリコン樹脂を利用する方法、特開2002−166649号公報(特許文献5)に保護層の表面粗さを特定の条件にする方法、特開平9−267568号公報(特許文献6)に有機物質を含有するバリア層を設ける方法が提案されているが、これらの方法も発消色感度特性の低下を引き起こす問題があり有効な方法とは言えない。
【0005】
一方、別の手段として特開平10−230680号公報(特許文献7)や特許第3734346号公報(特許文献8)では記録層樹脂を架橋させることによる強度向上を提案しているが、これらの方法だけでは発消色の機能が十分ではなく、例えば発色濃度が十分に得られないために、付随的に他の保存特性などにも影響するので好ましくない。
【0006】
更に媒体以外での実現方法として特開平8−45038号公報(特許文献9)、特開平7−164648号公報(特許文献10)ではクリーニング部材を用いたサーマルヘッド上のカスを除去する方法や特開平6−199041号公報(特許文献11)ではサーマルヘッド上に液体を塗る方法が提案されているが、これらの方法は可逆性感熱記録媒体の発消色プロセスとは別のプロセスとして実施する方法であり、手間が掛かる、作業性が悪い等の問題があり根本的な課題解決手段とは言えない。
【0007】
このような状況の中で、カス付着が少なくて、搬送速度が速く、消去特性に優れる可逆性感熱記録材料の提案が求められている。
【0008】
【特許文献1】特許第2981558号公報
【特許文献2】特開2000−25336号公報
【特許文献3】特開平11−240251号公報
【特許文献4】特開2005−53124号公報
【特許文献5】特開2002−166649号公報
【特許文献6】特開平9−267568号公報
【特許文献7】特開平10−230680号公報
【特許文献8】特許第3734346号公報
【特許文献9】特開平8−45038号公報
【特許文献10】特開平7−164648号公報
【特許文献11】特開平6−199041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、サーマルヘッド等の熱源へのカス付着が少なく、搬送速度の早い状態での消去特性に優れる可逆性感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、カス付着と消去特性の両性能を同時に高くする方法を種々検討した結果、可逆性感熱記録層中に含有される樹脂成分として水酸基価の大きなポリオール樹脂を架橋させたものを用い、更に、電子受容性化合物として炭素数23個以上のアルキル基とフェノール基を有する尿素誘導体を用いることによりカス付着と消去性を同時に満足できる水準が実現できることを発見し本発明に至った。
【0011】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 支持体上に電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得る可逆性感熱組成物を含有する可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、該可逆性感熱記録層中に含有される樹脂成分が、水酸基価100〜250(KOHmg/g)のポリオール樹脂を架橋させたものであり、更に前記電子受容性化合物として下記式(1)で表される尿素化合物を用いることを特徴とする可逆性感熱記録媒体である。
【0012】
【化2】

(式中、nは23以上の整数を表す)
<2> 前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体の前記支持体の前記可逆性感熱記録層を形成する面とは反対の面に、接着剤層(粘着剤層)を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録ラベルである。
<3> 情報記憶部と可逆表示部を有し、該可逆表示部が、少なくとも前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体を有するものであることを特徴とする情報記録部を有する部材である。
<4> 情報記憶部と可逆表示部を有し、該可逆表示部が、少なくとも前記<2>に記載の可逆性感熱記録ラベルを有するものであることを特徴とする情報記録部を有する部材である。
<5> 前記情報記憶部を有する部材が、カード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットのいずれかである前記<3>から<4>のいずれかに記載の情報記憶部を有する部材である。
<6> 前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体、前記<2>に記載の可逆性感熱記ラベル、又は前記<3>から<5>のいずれかに記載の情報記憶部を有する部材のうちのいずれかが有する前記可逆性感熱記録層を加熱することにより画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理方法である。
<7> サーマルヘッドを用いて画像を形成する前記<6>に記載の画像処理方法である。
<8> サーマルヘッド又はセラミックヒータを用いて画像を消去する前記<6>に記載の画像処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、高速印字時でも画像堅牢性、消去特性、および繰り返し耐久性に優れたものであるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、フェノール化合物を用いる可逆的感熱記録媒体は、加熱温度および/または加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得るものである。
この基本的な発色・消色現象を説明する。
図1はこの記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。初め消色状態(A)にある記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度T1でロイコ染料と顕色剤が溶融混合し、発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、初期と同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)を再び昇温していくと発色温度より低い温度T2で消色が起き(DからE)、ここから降温すると初期と同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組合せにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0015】
本発明の記録媒体では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図1に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0016】
本発明者らはサーマルヘッド加熱のような極めて短い加熱時間で消去を行なうためには、発色状態(C)から消色温度(T2)に加熱した際に、顕色剤の結晶化の速さが重要であると考え、種々の検討を行なった。
その結果、一般式(1)で示される尿素系化合物が消去性能が特に優れることを本発明者らは見出した。
【0017】
【化3】

(式中nは23以上の整数を表す)
【0018】
一般式(1)の構造を有する尿素系フェノール化合物は特許第3328077号公報で提案されており、その中でnが大きくなるほど好ましいが、nが22以上になると製造コストの点で好ましくなくなると記載されている。しかし、nが22以上の長鎖アルキル基のものをどのように合成し、精製し、同定して、これを用いどのような性能の可逆性感熱記録材料を確認したかについては具体的な記載はなく、したがって、どのような理由で製造コストの点から好ましくないのか定かではないが、実際には、nが22以上の長鎖アルキル基のものの合成はさほど簡単ではなかった。本発明者らは、nが22以上の化合物を鋭意合成し、評価した結果、nが22以上特にnが27以上になると消去性と画像の堅牢性が格段に向上することを発見した。更に、より好ましい範囲としてはnが27から32であることを見出した。
【0019】
本発明の顕色剤に加え、さらに種々公知の可逆性感熱記録媒体に用いられるフェノール性電子受容性化合物を混合することができる。
【0020】
本発明において用いられるロイコ染料は単独又は混合して用いることができ、例えば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。 本発明において用いられるロイコ染料の具体例としては、以下のものが挙げられる。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、等が挙げられる。
【0021】
中でも、特にロイコ染料として2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3−トルイジノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオランおよび2−キシリジノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランのうち少なくとも1種以上を用いることで、発色濃度、消去性および画像部の保存安定性が良好で、発色色調が純黒色で鮮明な印字画像が得られる。ロイコ染料と顕色剤はマイクロカプセル中に内包させて用いることもできる。
【0022】
本発明において、ロイコ染料、顕色剤とともに可逆性感熱記録層の形成に用いられるバインダー樹脂の役割としては、組成物の各材料が記録消去の熱印加によって片寄ることなく均一に分散した状態を保つことにあり、耐熱性の高い架橋樹脂を用いることが好ましい。本発明においては樹脂成分として、水酸基価100〜250(KOHmg/g)の範囲にあるポリオール樹脂と架橋成分の組み合わせたものを架橋させたものを用いる。ポリオール樹脂としては、アクリルモノマーのランダム共重合、ブロック共重合等によって得られるアクリルポリオール、メタクリルポリオールをはじめとして、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリビニルブチラール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、また近年注目されているバイオマスに由来するプラスチック類として大豆ポリオール等を用いることができる。中でもアクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、が好ましく、さらにアクリルポリオールが好ましい。これらを架橋させるために複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート系架橋剤を組み合わせる。
【0023】
また、アクリルポリオール樹脂においては構成の違いによってその特性に違いがあり、水酸基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4―ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが用いられるが、特に第1級水酸基をもつモノマーを使用した方が塗膜のワレ抵抗性や耐久性が良いことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく用いられる。
【0024】
本発明のポリオールにおいて、水酸基価は100から250(KOHmg/g)のものである。水酸基価が100を下回った場合、架橋膜の剛性が低く、繰り返し耐久性評価を進めると膜の破壊が起きやすくなる。一方で250を超える場合は完全に膜を架橋することができず、未架橋成分が発色系に悪影響を与えるために好ましくない。さらに好ましい水酸基価としては150から220である。この水酸基価の範囲内にある樹脂が用いられた可逆性感熱記録材料であるか否かは、残存水酸基の量やエーテル結合の量を分析すること等により確認することができる。
【0025】
本発明に用いられる硬化剤としては、従来公知のイソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ化合物等が挙げられる。その中でもイソシアネート系硬化剤が好ましく用いられる。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらをトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール化合物とのアダクト体や、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体、ブロックドイソシアネート等が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。これらを単独、あるいは混合でポリオール樹脂と組み合わせることができる。
【0026】
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。架橋促進剤としては、例えば1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、有機すず化合物などの金属化合物などが挙げられる。また、硬化剤は添加した全量が架橋反応をしていても、していなくても良い。すなわち、未反応硬化剤が存在していても良い。この種の架橋反応は経時的に進行するため、未反応の硬化剤が存在していることは架橋反応が全く進行していないことを示すのではなく、未反応の硬化剤が検出されたとしても、架橋状態にある樹脂が存在しないということにはならない。また、本発明におけるポリマーが架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法として、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。すなわち、非架橋状態にあるポリマーは、溶媒中に該ポリマーが溶け出し溶質中には残らなくなるため、溶質のポリマー構造の有無を分析すればよい。本発明で用いるアクリルポリオール樹脂は一般的に、メタクリル酸メチル、スチレン、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のモノマー成分と、メタクリル酸−(2−ヒドロキシ)エチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の水酸基を有するモノマー成分から選択された複数のモノマー混合物をベースとし、必要に応じアクリル酸等の他成分を加え、適宜選択して触媒と混合した後、ラジカル重合法により共重合させて得ることができる。
【0027】
その他、バインダー樹脂として例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類などを混合することができる。熱架橋性成分、光架橋性成分を加えてもよい。硬化膜の特性調整のためにエチレングリコールやグリセリン等の低分子ジオール化合物を混合することもできる。
【0028】
可逆性感熱記録層の乾燥・硬化方法は塗布・乾燥後、必要に応じて硬化処理を行なう。恒温槽等を用いて比較的高温で短時間でも良く、また、比較的低温で長時間かけて熱処理しても良い。架橋反応の具体的な条件としては反応性の面から30℃〜130℃程度の温度条件で1分〜150時間程度加温することが好ましい。より好ましくは40℃〜100℃の温度条件で2分〜120時間程度加温することが好ましい。また、製造では生産性を重視するので、架橋が充分完了するまで時間をかけるのは困難である。したがって、乾燥過程とは別に架橋工程を設けてもよい。架橋工程の条件としては40℃〜100℃の温度条件で2分〜120時間程度加温することが好ましい。
可逆性感熱記録層の膜厚は1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜15μmである。
【0029】
また、本発明の可逆性感熱記録層には、必要に応じて可逆性感熱記録層の塗布特性などを改善したりするために従来公知の添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、たとえば界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤などがある。
【0030】
なお、本発明において、可逆性感熱記録層中の発色成分と樹脂の割合は、発色成分1に対して0.1〜10が好ましく、これより少ないと可逆性感熱記録層の熱強度が不足し、これより多い場合には発色濃度が低下して問題となる。
【0031】
更に、前記の特徴を有する顕色剤と、消色促進剤として分子中に少なくとも1つ以上のN原子またはO原子を含む2価の基を有する化合物を併用することにより、消去状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され消去速度が格段に速くなることがわかった。
【0032】
本発明で用いる消色促進剤としては分子中にアミド基(−NHCO−)、2級アミド基(>NCO−)、ウレタン基(−NHCOO−)、尿素基(−NHCONH−)、ケトン基(−CO−)、ジアシルヒドラジド基(−CONHNHCO−)、スルホン基(−SO2−)等を有する化合物が好ましく、中でも、アミド基、2級アミド基、ウレタン基を有する化合物が特に好ましく、例えばアミド基、ウレタン基を有する化合物としては下記一般式(2)〜(9)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【表1】

(式中、R,R,R,R8,R9は炭素数1以上22以下の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、不飽和アルキル基を示し、R8,R9は環を形成していてもよく、形成される環はN原子、O原子またはS原子を介していてもよく、芳香族環、脂肪族環を有していてもよい。またアルキル基は水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。Rは炭素数1〜18の2価の官能基、Rは炭素数4〜18の3価の官能基を示す。またYはN原子またはO原子を含む2価の基を示し、sは0または1の整数を示す。)
【0034】
、R、R、R8、R9の好ましい例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ステアリル基、ベヘニル基、オレイル基および末端に水酸基を有する炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。またR8、R9の他の好ましい例としてはメチル基、エチル基、ベンジル基、フェニルエチル基、シクロヘキシルメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられ、環状の構造を形成する場合にはブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、−C24OC24−基、−CNC−基、−COCOC−基等が挙げられる。Rの好ましい例としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、−COC−基、−COC−基、−COCOC−基等が挙げられる。
またRの好ましい例として、
【0035】
【化4】

等が挙げられる。
Yの好ましい例としてはアミド基、ウレタン基、尿素基、ケトン基、ジアシルヒドラジド基等が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
一般式(2)〜(9)で表される化合物の具体的な例として以下のものが挙げられる。 C1123CONHC1225、C1531CONHC1633、C1735CONHC1837、C1735CONHC1835、C2141CONHC1837、C1531CONHC1837、C1735CONHCHNHCOC1735、C1123CONHCHNHCOC1123、C15CONHCNHCOC1735、C19CONHCNHCOC19、C1123CONHCNHCOC1123、C1735CONHCNHCOC1735、(CHCHC1435CONHCNHCOC1435(CH、C2143CONHCNHCOC2143、C1735CONHC12NHCOC1735、C2143CONHC12NHCOC2143、C1733CONHCHNHCOC1733、C1733CONHCNHCOC1733、C2141CONHCNHCOC2141、C1733CONHC12NHCOC1733、C17NHCOCCONHC1837、C1021NHCOCCONHC1021、C1225NHCOCCONHC1225、C1837NHCOCCONHC1837、C2143NHCOCCONHC2143、C1837NHCOC12CONHC1837、C1835NHCOCCONHC1835、C1835NHCOC16CONHC1835、C1225OCONHC1837、C1327OCONHC1837、C1633OCONHC1837、C1837OCONHC1837、C2143OCONHC1837、1225OCONHC1633、C1327OCONHC1633、C1633OCONHC1633、C1837OCONHC1633、C2143OCONHC1633、C1225OCONHC1429、C1327OCONHC1429、C1633OCONHC1429、C1837OCONHC1429、C2245OCONHC1429、C1225OCONHC1237、C1327OCONHC1237、C1633OCONHC1237、C1837OCONHC1237、C2143OCONHC1237、C2245OCONHC1837、C1837NHCOOCOCONHC1837、C1837NHCOOCOCONHC1837、C1837NHCOOCOCONHC1837、C1837NHCOOC12OCONHC1837、C1837NHCOOC16OCONHC1837、C1837NHCOOCOCOCONHC1837、C1837NHCOOCOCOCONHC1837、C1837NHCOOC1224OCONHC18371837NHCOOCOCOCOCONHC1837、C1633NHCOOCOCONHC1633、C1633NHCOOCOCONHC1633、C1633NHCOOCOCONHC1633、C1633NHCOOC12OCONHC1633、C1633NHCOOC16OCONHC1633、C1837OCOHNC12NHCOOC1837、C1633OCOHNC12NHCOOC1633、C1429OCOHNC12NHCOOC1429、C1225OCOHNC12NHCOOC1225、C1021OCOHNC12NHCOOC1021、C817OCOHNC12NHCOOC17
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

表中、n,n’,n’’,n’’’,n’’’’は0〜21の整数を示す。ただし全てが5以下であることはない。
【0040】
また、本発明によれば、可逆性感熱記録層上に架橋状態にある樹脂を含有する保護層を設けることができる。該保護層に用いられる樹脂としては、前述の可逆性感熱記録層と同様の熱硬化樹脂、および/または従来公知の紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂を用いることができる。さらに、本発明においては保護層中に従来公知の無機/有機のフィラー、滑剤、紫外線吸収性材料などを含有して用いても良い。保護層の形成において、保護層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法、乾燥・硬化方法等は上記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0041】
さらに、可逆性感熱記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による可逆性感熱記録層の変質防止、保護層に含まれる添加剤が可逆性感熱記録層へ移行する、あるいは、可逆性感熱記録層に含まれる添加剤が保護層へ移行することを防止する目的で、両者の間に中間層(第1保護層)を設けても良い。中間層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法、乾燥・硬化方法等は上記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。さらに、本発明においては中間層中に従来公知の無機/有機のフィラー、滑剤、紫外線吸収性材料などを含有して用いても良い。
【0042】
本発明の可逆性感熱記録媒体の支持体としては、紙、樹脂フィルム、PETフィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、可逆性感熱記録層を保持できるものであればよい。また、必要に応じた厚みのものが単独あるいは貼り合わす等して用いることができる。すなわち、好ましくは60〜150μmで、数μm程度から数mm程度まで任意の厚みの支持体が用いられる。
【0043】
また、本発明において、記録時に媒体に与えられた熱を有効利用して発色感度を向上させるために、支持体と可逆性感熱記録層の間に断熱層を設けることができる。断熱層は、有機または無機の微小中空体粒子を含有したバインダー樹脂を用いて塗布することにより形成できる。
断熱層には、前記の可逆性感熱記録層、中間層、保護層の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。また、断熱層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラーおよび/または各種有機フィラーを含有させることができる。その他、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
また、前記断熱層を設ける場合、接着剤層(粘着剤層)を介して設けることにより、クラック発生防止やバリの発生が改善される。
該接着剤層(粘着剤層)は、上記の各層と同様の塗工方式等で形成することができる。
【0044】
本発明の可逆性感熱記録ラベルは、上述した可逆性感熱記録媒体を構成する支持体の可逆性感熱記録層を形成する面と反対の面に、接着剤層(粘着剤層)を設けたものである。
この可逆性感熱記録ラベルには、接着剤層(粘着剤層)を形成したもの(無剥離紙型)と、その接着剤層(粘着剤層)の下に剥離紙をつけるもの(剥離紙型)とがあり、接着剤層(粘着剤層)を構成する材料としては、ホットメルト型のものが通常用いられる。
【0045】
接着剤層とは接着剤からなる層であり、粘着剤層とは粘着剤からなる層である。
接着剤も粘着剤も、2つの基材の間を取り持つ機能を有するものであるが、ここでいう接着剤とは、適用時には相対的に軟らかい状態で基材に馴染み、時間経過や加温冷却等の手段によって状態が変化して硬化し、双方の基材と強固に一体化するものを示す。一方で、粘着剤とは本質的に状態変化しないものを指し、初めから軟らかい半固体状物である。
【0046】
接着剤層(粘着剤層)の材料は、一般的に用いられているものが使用可能である。
例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、該可逆性感熱記録媒体を構成する少なくとも可逆性感熱層を可逆表示部として機能し、それと情報記憶機能のある部材(情報記憶部)と合わせて作製される情報表示記憶部材として用いることができる。
【0048】
次に、該情報表示記憶部材について説明する。
この情報記憶部と可逆表示部を有する部材としては、次の3つのものに大別できる。
(1)情報記憶機能のある部材の一部を可逆性感熱記録媒体の支持体として用い、そこに可逆性感熱層を直接形成したもの。
(2)情報記憶機能のある部材に、別途形成された、支持体上に可逆性感熱層を有する可逆性感熱記録媒体の支持体面を接着したもの。
(3)情報記憶機能のある部材に、前記可逆性感熱記録ラベルが接着剤層(粘着剤層)を介して、接着されたもの。
これら(1)、(2)、(3)の場合、情報記憶部と可逆表示部のそれぞれの機能が発揮できるよう設定されることが必要であり、そうでありさえすれば情報記憶部の設定位置は目的に応じて任意に選定でき、可逆性感熱記録媒体における支持体の可逆性感熱層を設けた面と反対側の面に設けることも、支持体と感熱層との間でも、あるいは感熱層上の一部に設けることもできる。
この情報記憶機能のある部材としては、特に限定されないが、一般的なカード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットを用いることができる。
【0049】
これらの例としては、ICカードや光カード等の厚手カード、フレキシブルディスク、光磁気記録ディスク(MD)やDVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスク、CD−R等の追記型ディスク、相変化形記憶材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)、ビデオテープカセット等を挙げることができる。
この可逆表示機能と情報記憶機能の双方を有する情報表示記憶部材は、例えばカードの場合で説明すると、情報記憶部に記憶された情報の一部を可逆性感熱記録層に表示することによって、カード所有者等は、特別な装置がなくてもカードを見るのみで情報を確認することができて、可逆性感熱記録媒体を適用しないカードに比べてその利便性が非常に向上することになる。
【0050】
情報記憶部は、必要な情報を記憶できるものでありさえすれば特に限定されないが、例えば、磁気記録、接触型IC、非接触型ICあるいは光メモリが有用である。
磁気記録層は、通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等のような金属化合物及び塩ビ系、ウレタン系及びナイロン系のような樹脂等を用いて支持体に塗工形成するか、または樹脂を用いず前記の金属化合物を用いて蒸着、スパッタリング等の方法により形成される。また、表示に用いる可逆性感熱記録媒体における可逆性感熱記録層をバーコード、2次元コード等のようなやり方で記憶部として用いることもできる。
【0051】
また、前記(3)の可逆性感熱記録ラベルを用いる例として、磁気ストライプ付塩化ビニル製カード等のように、支持体として可逆性感熱記録層の塗布が困難な厚手のもの場合には、その全面又は一部に接着剤層(粘着剤層)を設けることができる。
こうすることによって、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性を向上できる。
この接着剤層(粘着剤層)を設けた可逆性感熱記録ラベルとしては、上記の磁気付塩ビカードだけでなく、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0052】
また、この可逆性感熱記録ラベルは、フレキシブルディスク、MDやDVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ上の表示ラベルの代わりとして用いることができる。
さらに、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスクの場合には、直接ディスクに可逆性感熱記録ラベルを貼ることや、直接ディスク上に可逆性感熱記録層を設けることもできる。こうすることによって、それらの記憶内容の変更に応じて自動的に表示内容を変更する等の用途への応用が可能である。
【0053】
本発明の可逆性感熱記録ラベルは、CD−Rなどの追記型ディスク上に可逆性感熱記録ラベルを貼って、CD−Rに追記した記憶情報の一部を書換え表示することも可能である。
さらに、ビデオテープカセットの表示ラベルとして用いてもよい。
厚手カード、ディスクカートリッジ、ディスク上に熱可逆記録機能を設ける方法としては、上記の可逆性感熱記録ラベルを貼る方法以外に、それらの上に可逆性感熱記録層を直接塗布する方法や、予め別の支持体上に可逆性感熱記録層を形成しておき、厚手カード、ディスクカートリッジ、ディスク上に該感熱記録層を転写する方法等がある。
転写する場合には、可逆性感熱記録層上にホットメルトタイプ等の接着剤層(粘着剤層)を設けておいてもよい。
厚手カード、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセット等のように剛直なものの上に可逆性感熱記録ラベルを貼着したり、可逆性感熱記録層を設ける場合には、サーマルヘッドとの接触性を向上させ、画像を均一に形成するために弾力があり、クッションとなる層又はシートを剛直な基体とラベル又は可逆性感熱記録層の間に設けることが好ましい。
【0054】
本発明は、さらに、上記可逆性感熱記録媒体、上記情報記憶部を有する部材又は上記ラベルを用い、加熱により画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理方法を提供する。
画像の形成は、サーマルヘッド、レーザー等、該媒体を画像上に部分的に加熱可能である画像記録手段が用いられる。画像の消去は、ホットスタンプ、セラミックヒーター、ヒートローラー、熱風等やサーマルヘッド、レーザー等の画像消去手段が用いられる。
この中では、セラミックヒーターが好ましく用いられる。セラミックヒーターを用いることにより、装置が小型化でき、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。
セラミックヒーターの設定温度は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
また、画像消去手段としてサーマルヘッドを用いることにより、さらに装置全体の小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。形成用と消去用を兼ねて一つのサーマルヘッドとすれば、さらに小型化が可能となる。
一つのサーマルヘッドで形成と消去を行なう場合、一度前の画像を全部消去した後、あらためて新しい画像を形成してもよく、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を形成していくオーバーライト方式も可能である。
オーバーライト方式では、形成と消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。可逆性感熱記録層と情報記憶部を有するカードを用いる場合、上記の装置には、情報記憶部の記憶を読み取る手段と書き換える手段も含まれる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、文中、部又は%とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。
【0056】
実施例1
<可逆性感熱記録層の作製>
下記の構造の顕色剤(融点145℃) 4部
【0057】
【化5】

オクタデカン酸ペンタデシルアミド 0.5部
アクリルポリオール樹脂の40%酢酸エチル溶液 7部
(水酸基価:108、酸価:4.2、分子量:55,000)
メチルエチルケトン(MEK) 70部
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン1部、三井武田ケミカル社製タケネートD−110N(アダクト型キシリレンジイソシアネート75%酢酸エチル溶液)をMEKにて40%に希釈したもの4部を加え、良く攪拌し感熱記録層塗布液を調製した。上記組成の可逆性感熱記録層塗布液を250μm厚の白色PETフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、110℃3分で乾燥した後、60℃で24時間加熱して、膜厚約11μmの可逆性感熱記録層を設けた。
さらにこの記録層上に下記組成よりなる中間層液をワイヤーバーを用い塗布し、90℃1分で乾燥した後、60℃2時間加熱して、膜厚約1μmの中間層を設けた。更にこの中間層上に、下記組成よりなる保護層液をワイヤーバーを用いて塗工した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を12m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚5μmの保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0058】
〔中間層液〕
ポリエステルポリオール樹脂
(武田薬品工業社製タケラックU−21)の10%MEK溶液 100部
酸化亜鉛(住友大阪セメント社製) 10部
コロネートHL(日本ポリウレタン社製) 15部
【0059】
〔保護層液〕
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂 7部
(大日本インキ社製C7−157)
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性アクリル酸エステル 3部
(日本化薬社製KAYARADDPCA−120)
シリカ(水沢化学社製P−527) 1.5部
酢酸エチル 90部
【0060】
実施例2
実施例1において感熱記録層中のアクリルポリオール樹脂を水酸基価200、酸価4.7のアクリルポリオール5.5部とし、タケネートD−110Nの希釈物を2部から5.5部に変えた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0061】
実施例3
実施例1において感熱記録層中のアクリルポリオール樹脂を水酸基価250、酸価4.0のアクリルポリオール5部とし、タケネートD−110Nの希釈物を2部から6部に変えた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0062】
実施例4
実施例1において顕色剤として下記化合物(融点143℃)を用いた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0063】
【化6】

【0064】
実施例5
実施例1において感熱記録層中のアクリルポリオール樹脂を水酸基価135のポリカプロラクトンポリオール(ダウ社TONE0210)40%溶液6.5部とし、タケネートD−110Nの希釈物を2部から4.5部に変えた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0065】
比較例1
実施例1において感熱記録層中のアクリルポリオール樹脂を水酸基価80、酸価4.3のアクリルポリオール8部とし、タケネートD−110Nの希釈物を2部から3部に変えた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0066】
比較例2
実施例1において感熱記録層中のアクリルポリオール樹脂を水酸基価300、酸価5.1のアクリルポリオール4.5部とし、タケネートD−110Nの希釈物を2部から6.5部に変えた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0067】
比較例3
実施例1において顕色剤として下記化合物(融点145℃)を用いた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0068】
【化7】

【0069】
比較例4
実施例1において顕色剤として下記化合物(融点140℃)を用いた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0070】
【化8】

【0071】
比較例5
実施例1において顕色剤として下記化合物(融点141℃)を用いた以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0072】
【化9】

【0073】
(評価方法)
1.画像濃度、地肌濃度、消去残り量
作製した可逆性感熱記録媒体を、京セラ社製端面型サーマルヘッドKSB320AA(抵抗値1206オーム)とセラミックヒーター(4mm幅)を用いた感熱印字シュミレーターを用いて下記の条件で印字及び消去を行い、濃度をマクベス濃度計RD−914を用いて測定した。
・評価条件:印字速度5インチ/s、副走査密度8dot/mm
・画像濃度:印加エネルギーを1V刻みで電圧を変化させて印字したときの最大濃度を用いる。
・消去濃度:前記画像濃度で最大濃度を得た印加エネルギーでベタ画像を形成したものに対し、セラミックヒーター設定温度を5℃刻みで変化させて消去したときの最小消去濃度を用いる。
2.保存性
上記条件で作成したベタ画像を60℃の恒温槽に100時間保管し、保管後の濃度を測定した。
3.耐久性
上記条件にて同一画像を200回繰り返し消去印字し、画像部(ベタ)及び、それを消去した際の残存濃度を測定した。また、サーマルヘッドの様子を光学顕微鏡にて観察した。
○:試験開始前と同等
△:流れ方向下部にカスが堆積している
×:発熱体部にまでカスが堆積している
以上の評価結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の可逆性感熱発色組成物の発色・消色特性を示す図である。
【図2】可逆性感熱記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼った例を示す図である。
【図3】可逆性感熱記録ラベルをCD−RW上に貼った例を示す図である。
【図4】ビデオテープカセットの表示ラベルとして用いた例を示す図である。
【図5】本発明の画像処理装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
34 磁気ヘッド
38 セラミックヒーター
40 搬送ローラー
47 搬送ローラー
53 サーマルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得る可逆性感熱組成物を含有する可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、該可逆性感熱記録層中に含有される樹脂成分が、水酸基価100〜250(KOHmg/g)のポリオール樹脂を架橋させたものであり、更に前記電子受容性化合物として下記式(1)で表される尿素化合物を用いることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【化1】

(式中、nは23以上の整数を表す)
【請求項2】
請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体の前記支持体の前記可逆性感熱記録層を形成する面とは反対の面に、接着剤層(粘着剤層)を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録ラベル。
【請求項3】
情報記憶部と可逆表示部を有し、該可逆表示部が、少なくとも請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体を有するものであることを特徴とする情報記録部を有する部材。
【請求項4】
情報記憶部と可逆表示部を有し、該可逆表示部が、少なくとも請求項2に記載の可逆性感熱記録ラベルを有するものであることを特徴とする情報記録部を有する部材。
【請求項5】
前記情報記憶部を有する部材が、カード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットのいずれかである請求項3又は4に記載の情報記憶部を有する部材。
【請求項6】
請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体、請求項2に記載の可逆性感熱記ラベル、又は請求項3乃至5のいずれかに記載の情報記憶部を有する部材のうちのいずれかが有する前記可逆性感熱記録層を加熱することにより画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
サーマルヘッドを用いて画像を形成する請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
サーマルヘッド又はセラミックヒータを用いて画像を消去する請求項6に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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