説明

可逆性記録シート

【目的】 可逆性記録シートの裏面に弾性層と粘着層を設けることにより、貼付されたままで良好な品質の記録、消去することができる可逆性記録シートを得る。
【構成】 基材12上に、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱体層11を有するシートの裏面に、弾性層15、粘着層16を形成する可逆性記録シートは、粘着層16によって被接着物に貼ったままでその表面に記録、消去が可能となる。また、記録消去の際、弾性層15によって被接着物の凹凸と吸収することができ、良好な印字品質の記録、消去ができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可逆性記録シートに関し、さらに詳しくは印字後、種種の品物に貼るラベル状のシートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、表示ラベル類は一度印刷されて被表示物に添付されたらその表示情報を変えるためには1、差し込み枠等の固定手段がある場合は、固定手段から古いラベルを抜いて新たなラベルを差し込む。
【0003】2、粘着ラベルの場合は、剥がして新たなラベルを貼る。
【0004】3、粘着ラベルの場合は、新たなラベルを古いラベルの上に重ねて貼る。
【0005】4、粘着ラベルの場合は、表示情報のみをなんらかの方法で消去し、新たな情報を書き込む。
【0006】以上4つのいずれかの方法をとっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記4つの方法はそれぞれ以下のような課題を有している。
【0008】1の方法では、古いラベルを抜いて、新しいラベルを差し込むという2重手間がかかる。
【0009】2の方法は、何度も剥がしたり貼ったりすることで被接着面に粘着剤が残って汚れたり、粘着力の低下が起こる。また、一度貼った物を剥がすのに非常に手間がかかる。
【0010】3の方法は何枚か貼ってしまうと厚みが増したり、ズレたりして外観が悪くなる。
【0011】4の方法は、容易に消去するためには、筆記具が鉛筆もしくは特殊なインキを使用したペンが必要で、しかも手書きしかできないため、表示情報に制限がついてしまう。
【0012】本発明はこの様な問題を解決するために鑑みられたもので、その目的とするところは、抜いたり、剥がして再接着することなしに容易に記録情報を変更することができる可逆性記録シートを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】この様な課題を解決するために本発明の可逆性記録シートは、基材上に画像情報を記録する可逆性記録層をもつ可逆性記録シートに於て、前記基材の裏面に弾性層を形成したことを特徴とする。
【0014】
【実施例】以下に本発明を実施例により説明する。
【0015】まず、本実施例で使われる可逆性記録シートの記録原理ついて説明する。本実施例では、熱で記録して、熱で消去するサーモクロミック可逆材料を使用している。図1で感熱層11は、一般的には樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子物質とを主成分としている。この感熱層が透明に見えるのは、樹脂母材中に分散された有機低分子物質粒子が大きな結晶で構成され、一方の側から入射した光は散乱されることなく、他方に通過するためと考えられる。また、不透明部が白く見えるのは、この部分の樹脂母材中に分散された有機低分子物質粒子が微細結晶が集合した多結晶で構成され、この結晶軸が様様な方向に向いているため、一方の側から入射した光は多結晶の界面で乱反射されるためと考えられる。この透明ー白濁の変化を起こす温度T1は、60〜140℃くらいの間で任意に設定可能である。
【0016】(実施例1)図1、図2に第一の実施例の可逆性記録シートの構造の概略図を示す。
【0017】10は、保護層であり、引っ掻き傷等に対して表面を保護する。11は感熱層であり、上記説明のように透明ー白濁温度T1以上になると白濁し、T1より低い温度では透明化する。12は基材で、50μ厚さの透明PETフィルムを用いている。13は接着層であり、基材12と弾性層15の間でスペーサーの役割をしており、30μ厚さで空気層13を形成している。弾性層15はゴムか発泡プラスチックスで形成されており、被接着物表面の凹凸のレベルによって弾性変形量を設定し、材料の弾性係数と厚さが決る。本実施例では、シリコンゴムで2mm厚さの弾性層を用いている。16は粘着層でありアクリル系、スチレン・ブタジェンゴムラテックス系、酢酸ビニル系の粘着剤が使われている。接着層13に囲まれた空気層14の部分は、白濁のコントラストを高めるために設けられており、記録面21は空気層部分を使用している。次に、以上のような構成の可逆性記録シートの使用方法について述べる。
【0018】図3で、被接着物33に可逆性記録シートが粘着層16を介して接着されている。貼付されたままの状態で情報記録を行う場合、30のようなハンディプリンタが好ましい。これは、サーマルヘッド発熱部を感熱記録媒体に直接あてて手で押圧しながら媒体上を走らせる自走式プリンタである。熱ペンでも記録は可能である。31は端面型サーマルヘッドで発熱体がヘッド基板の端に形成されているため書き込み時に印字位置を確認し易くなっている。32はタイミングローラであり、端面型サーマルヘッド31が可逆性記録シート表面を走行するに従って回転し、図示してないがハンディプリンタ30本体に組み込まれたロータリーエンコーダで印字タイミングを生成している。印字動作はヘッド発熱部を可逆性記録シート上の印字開始位置に合わせて手で押し付け印字したい方向に押圧しながら進める。すると、前記タイミングローラ32が可逆性記録シート表面との摩擦力で回転し、ロータリーエンコーダが回転して印字タイミングが発生し、そのタイミングに合わせて所望の情報記録を行う。また、記録方法と同様の方法で消去も行える。この時、端面型サーマルヘッド31を使って印字エネルギーを通常の20〜50%増で行う事によって、感熱記録層12を全面白濁させて消去することができる。ここで、押圧が必要なのは、端面型サーマルヘッド31を可逆性記録シートに十分接触させて熱伝導させる必要があるためである。例えば、ヘッドと可逆性記録シート表面との間に数μでも隙間があいて空気層が介在すると、熱伝導が空気による熱伝達になってしまうため、熱エネルギーが十分伝わらなくなり情報が記録できなくなってしまうことがある。そこで、本実施例では被接着物33表面の凹凸を吸収するために弾性層15を形成してある。弾性層は、数十〜数百μm程度の凹凸を吸収しハンディプリンタ30のヘッド走行を安定させ欠落のない良好な情報記録が行える。以上のように、可逆性記録シートに弾性層と粘着層を形成することによりどこへでも接着可能で、剥がすことなしに良好な情報記および記録情報の書き換えが行える。
【0019】(実施例2)次に第二の実施例について述べる。
【0020】第一の実施例との構成上の違いは、図4のように、弾性層15と粘着層16との間に板状の剛性層41を設けたことである。これは、プラスチック、金属木材などの板状の材料であればどれでも良いが、適度の弾性と剛性が要求されるため本実施例ではプラスチック材料の薄板を使用している。この場合の使用方法としては、被接着物42が布、紙などの剛性がない物の場合である。これらに貼付されたままの状態で情報記録、消去を行うと、もし、第一の実施例の可逆性記録シートだと、被接着物42を移動して、台、机等の固い板状の物の上に置いて情報記録を行わなければならないという制限が生じる。しかし、本実施例では、板状の台に当るものを可逆性記録シート内に設けてあるので、被接着物42を移動して、台状の物に当てる必要がなく書き込み消去ができる。
【0021】
【発明の効果】以上で述べたように、本発明の可逆性記録シートは基材の裏面に弾性層を設けたことにより、被接着物に貼付したままで良好な情報記録、消去が容易にできる。さらに、板状の剛性層を設けることによって被接着物が布、紙等の剛性が低いものであっても、被接着物を移動せずに可逆性記録シートを貼付したままで良好な情報記録、消去が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆性記録シートの構造を示す断面図。
【図2】本発明の可逆性記録シートの斜視図。
【図3】本発明の実施例1の可逆性記録シートの模式図。
【図4】本発明の実施例2の可逆性記録シートの模式図。
【符号の説明】
12 感熱層
13 基材
14 空気層
15 弾性層
16 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材上画像情報を記録する可逆性記録層をもつ可逆性記録シートに於て、前記基材の裏面に弾性層を形成したことを特徴とする可逆性記録シート。
【請求項2】 前記弾性層の裏面に粘着層を形成したことを特徴とする請求項1記載の可逆性記録シート。
【請求項3】 前記弾性層と、前記粘着層との間に板状の剛性層を形成したことを特徴とする請求項1記載の可逆性記録シート。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開平6−55843
【公開日】平成6年(1994)3月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−208196
【出願日】平成4年(1992)8月4日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)