説明

台車装置

【課題】 作業性を低下させることなく、作業者の負担を軽減することができる台車装置を提供する。
【解決手段】 ピット2の底面2aに敷設したレール3と、このレール3上を転動する車輪4を四隅に設けた台車5からなる台車装置であって、台車5の四隅に連結手段8を介して配設されると共にピット2を覆うピットカバー9と、これらのピットカバー9の下面に設けたキャスタ14と、キャスタ14が走行する経路15の一部にレール3に並設して敷設され、上昇部16a・平坦部16b・下降部16cを連続して形成するピットカバー用レール16を備え、台車5の移動に伴いキャスタ14がピットカバー用レール16を走行する際には、ピットカバー9が上昇すると共に連結手段8を中心に回動する。連結手段8は、台車5に設けたガイドピン17と、ガイドピン17が嵌合する長孔18を形成すると共にピットカバー9に設けた結合部材19からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接治具などをメインラインと待機場所との間を搬送するための台車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラインにおける溶接作業は、治具にワークをセットした状態で行うが、機種が変更された場合には、治具もその機種に応じたものに変更される。そのため、ピットの底面に敷設したレールを走行する台車を用いて、現機種用の治具をメインラインから離れた待機場所に搬送し、次機種用の治具と交換して再度メインラインに搬送するようにしている。待機場所では、台車に治具を搭載した状態で、その治具の検査や調整などの作業が行われるため、作業者が台車の周りを移動することから台車近傍にはピットを覆おうピットカバーが設けられている。このため、台車を移動するに際しては、手作業でピットカバーを取り外したり取り付けたりしなければならず、作業者にとって負担が大きかった。
【0003】
このような作業者の負担を軽減するために、ピット蓋(ピットカバー)を折畳み式にし、ピット蓋の裏面と台車先端部とを伸縮自在の連結棒で連結して、台車の移動に伴って、ピット蓋を自動的に開閉するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開平07−19234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術においては、ピット蓋が自動的に開閉することにより作業者への負担は軽減されるものの、台車の周りで各種作業を行う作業者にとっては、折畳まれたピット蓋が障害となり、作業性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業性を低下させることなく、作業者の負担を軽減することができる台車装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、ピットの底面に敷設したレールと、このレール上を転動する車輪を四隅に設けた台車からなる台車装置であって、前記台車の四隅に連結手段を介して配設されると共に前記ピットを覆うピットカバーと、これらのピットカバーの下面に設けたキャスタと、このキャスタが走行する経路の一部に前記レールに並設して敷設され、上昇部・平坦部・下降部を連続して形成するピットカバー用レールを備え、前記台車の移動に伴い前記キャスタが前記ピットカバー用レールを走行する際には、前記ピットカバーが上昇すると共に前記連結手段を中心に回動するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の台車装置において、前記連結手段は、前記台車に設けたガイドピンと、このガイドピンが嵌合する長孔を形成すると共に前記ピットカバーに設けた結合部材からなる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の台車装置において、前記ピットカバーは、前記キャスタが前記ピットカバー用レールの上昇部・平坦部・下降部を走行する時以外は、床面とほぼ面一になるものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1、2又は3記載の台車装置において、前記台車に移載用レールを敷設し、この移載用レールに係合する車輪を介して溶接治具を載置したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、作業者によるピットカバーの取り外し取り付け作業を必要としないので、作業者の負担を軽減することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、キャスタがピットカバー用レールの上昇部・平坦部・下降部を走行する際に、ピットカバーが上昇すると共にガイドピンを中心として円滑に回動することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、台車の周りで各種作業を行う作業者にとって、作業性の低下を防止することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、溶接治具を速やかに目的の場所へ搬出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る台車装置の概要平面図、図2は同じく前方右部の斜視図、図3は同じく動作説明図である。
【0016】
本発明に係る台車装置は、図1に示すように、床面1に設けた平行な2本のピット2の底面2aに夫々敷設した1本のレール3と、これらのレール3上を転動する車輪4を四隅に設けた台車5などからなる。台車5は、一方のピット2に収まり、前後に車輪4を支持する基台6aと、他方のピット2に収まり、前後に車輪4を支持する基台6bと、基台6aと基台6bを接続する前後に設けた2つの接続部材7と、各基台6a,6bの前後に連結手段8を介して設けた4つのピットカバー9などからなる。接続部材7は、2本のピット2で挟まれた床面1を跨いで基台6aと基台6bを接続している。10は作業者が台車5を押すための操作バーである。
【0017】
また、床面1の所定の場所には、レール3と直交する方向に2本のメインレール11が敷設されている。メインレール11は、待機場所で整備された溶接治具12を台車5に載せて待機場所からメインラインに搬送する際に、使用される。溶接治具12は、レール3を走行する台車5からメインレール11に移され、車輪(不図示)をメインレール11に係合させてメインラインに搬送される。溶接治具12をメインラインに搬送した空の台車5は、再び待機場所に戻される。
【0018】
ピットカバー9は、ピット2を覆うもので、夫々下面に支持部材13を介してキャスタ14を設けている。そして、キャスタ14が走行するピット2の底面2aに形成される経路15のうちで、メインレール11の端部11aに対向する場所には、レール3に並設して上昇部16a・平坦部16b・下降部16cを連続して形成するピットカバー用レール16が敷設されている。上昇部16aと下降部16cは、対称に形成され、キャスタ14が登る方を上昇部16aとし、下る方を下降部16cとする。ピットカバー用レール16は、2本のピット2の夫々2箇所に、合計4つ敷設される。なお、キャスタ14が走行する経路15の全てにレールを敷設してもよいし、上昇部16a・平坦部16b・下降部16cの部分だけにレールを敷設してもよい。
【0019】
キャスタ14がピットカバー用レール16を走行すると、各基台6a,6bに連結手段8を介して回動自在に取り付けられているピットカバー9は、床面1とほぼ面一の状態から、全体を上昇させながらその端部9aを持ち上げ、その状態を維持した後、再び床面1とほぼ面一の状態に戻る。キャスタ14がピットカバー用レール16を走行していない場合には、ピットカバー9は床面1とほぼ面一になっている。なお、支持部材13のピットカバー9下面に対する取付位置は、ピットカバー9の中央部より連結手段8寄りになっている。これは、キャスタ14がピットカバー用レール16を走行する際に、ピットカバー9の端部9aが円滑により高く持ち上がるようにするためである。
【0020】
連結手段8は、図2に示すように、基台6aの接続部材7に設けたガイドピン17と、このガイドピン17が係合する長孔18を形成すると共に、ピットカバー9の端部9bに設けた結合部材19からなる。ガイドピン17の先端部17aは、結合部材19の抜け防止のため、ボルトの頭部のように、長孔18の幅よりも大き目に形成されている。なお、ガイドピン17をピットカバー9の端部9bに設け、長孔18を形成した結合部材19を基台6aの接続部材7に設けて、ガイドピン17を長孔18に係合させることもできる。
【0021】
また、基台6a,6bには、夫々溶接治具12の車輪(不図示)が係合する移載用レール21が、レール3と直交する方向に4本敷設されている。移載用レール21の長さは、基台6a,6bの幅とほぼ同じである。また、各基台6a,6bに敷設される移載用レール21の間隔は、メインレール11の間隔と同じである。そして、溶接治具12を台車5からメインレール11に移す際には、メインレール11と移載用レール21は、連結されるべく位置決めされる。なお、ピット2に臨むメインレール11の端部11aは、移載用レール21の端部21aとピット2の壁面2bとの隙間22の分だけ、ピット2内へ突出している。23はピット2を覆う固定蓋である。
【0022】
以上のように構成された本発明に係る台車装置の動作について説明する。段取り変えのため、溶接治具12を待機場所からメインラインに搬送する場合に、作業者は溶接治具12を台車5に載せて、操作バー10を握って台車5を押す。すると、台車5はレール3上を車輪4が転動して、メインレール11の方向に移動する。その際、ピットカバー9は床面1とほぼ面一の状態で、ピットカバー9に設けたキャスタ14もピット2の底面2aの経路15を進む。
【0023】
更に、図3に示すように、キャスタ14が最初のピットカバー用レール16の上昇部16aに到達し、上昇部16aを登り始めると、前部の左右に設けた2つのピットカバー9は連結手段8の働きで、全体を上昇させながらその端部9aを持ち上げ始める。キャスタ14が平坦部16bに到達すると、全体の上昇具合及び端部9aの持ち上がり具合は最大となる。キャスタ14が平坦部16bを走行する時は、ピットカバー9全体の上昇具合及び端部9aの持ち上がり具合は最大の状態で維持される。
【0024】
そして、キャスタ14が下降部16cを下り始めると、ピットカバー9は連結手段8の働きで、全体を下降させながらその端部9aを下げ始める。再び、キャスタ14がピット2の底面2aに到達すると、ピットカバー9は床面1とほぼ面一の状態に戻る。キャスタ14が平坦部16bを走行する時に、ほぼピット2の幅と同じ幅に形成されたピットカバー9は、ピット2内へ突出している1本目のメインレール11の端部11aを越えるので、前部の左右に設けた2つのピットカバー9が1本目のメインレール11の端部11aに干渉することがない。
【0025】
同様な動作により、前部の左右に設けた2つのピットカバー9がピット2内へ突出している2本目のメインレール11の端部11aを越えると共に、後部の左右に設けた2つのピットカバー9がピット2内へ突出している1本目のメインレール11の端部11aを越えると、台車5はストッパ(不図示)に当接して停止する。この状態で、メインレール11と移載用レール21が連結される。すると、作業者は溶接治具12を移載用レール21からメインレール11に載せ代えて、溶接治具12をメインラインに搬送する。台車の周りにはピット2を覆おうピットカバー9が設けられているので、作業者は治具の検査や調整などの作業を安全に行うことができる。空になった台車5は、上述とは逆の動作により待機場所に戻される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、作業者によるピットカバーの取り外し取り付け作業を必要としないため、作業者の負担が軽減され、作業環境の向上に寄与するので、利用拡大が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る台車装置の概要平面図
【図2】本発明に係る台車装置の前方右部の斜視図
【図3】本発明に係る台車装置の動作説明図
【符号の説明】
【0028】
1…床面、2…ピット、2a…底面、3…レール、4…車輪、5…台車、6a,6b…基台、7…接続部材、8…連結手段、9…ピットカバー、11…メインレール、12…溶接治具、14…キャスタ、15…経路、16…ピットカバー用レール、16a…上昇部、16b…平坦部、16c…下降部、17…ガイドピン、18…長孔、19…結合部材、21…移載用レール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピットの底面に敷設したレールと、このレール上を転動する車輪を四隅に設けた台車からなる台車装置であって、前記台車の四隅に連結手段を介して配設されると共に前記ピットを覆うピットカバーと、これらのピットカバーの下面に設けたキャスタと、このキャスタが走行する経路の一部に前記レールに並設して敷設され、上昇部・平坦部・下降部を連続して形成するピットカバー用レールを備え、前記台車の移動に伴い前記キャスタが前記ピットカバー用レールを走行する際には、前記ピットカバーが上昇すると共に前記連結手段を中心に回動することを特徴とする台車装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記台車に設けたガイドピンと、このガイドピンが嵌合する長孔を形成すると共に前記ピットカバーに設けた結合部材からなる請求項1記載の台車装置。
【請求項3】
前記ピットカバーは、前記キャスタが前記ピットカバー用レールの上昇部・平坦部・下降部を走行する時以外は、床面とほぼ面一になる請求項1又は2記載の台車装置。
【請求項4】
前記台車に移載用レールを敷設し、この移載用レールに係合する車輪を介して溶接治具を載置した請求項1、2又は3記載の台車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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