説明

各種被着体の接着方法

【課題】本発明の目的は、2−シアノアクリレート系接着剤組成物自体の速硬化性、安定性や接着性といった性能を損なわずに被着物から空間内に放散されるホルムアルデヒドが実質的に皆無となる2−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いた各種被着体の接着方法を提供することにある。
【解決手段】2−シアノアクリレートを主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物を用いて各種被着体を接着した後、接着層の表面を表面処理剤で処理する接着方法であって、表面処理剤で処理した被着物からのホルムアルデヒドの放散量がJIS K5601−4−1(2003)に準拠した方法で測定して、接着剤組成物0.5g当たり0.1mg/L以下である2−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いて各種被着体の接着することにより上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被着体を2−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いて接着した際に被着物から放散されるホルムアルデヒドを低減する各種被着体の接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2−シアノアクリレート系接着剤は、主成分である2−シアノアクリレートのもつ特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着するわずかな水分等のような微弱なアニオン等によって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接着することができるものである。このため、いわゆる瞬間接着剤として工業用、医療用、家庭用等の分野において広く用いられている。
【0003】
しかし、近年化学物質を放散する建材・内装等の使用による家屋や家具あるいは自動車の内装材などから、空間内に放出される気体ホルムアルデヒドによる、所謂シックハウス症候群が重要問題視されており、ホルムアルデヒドの発生源の1つと考えられている接着剤中におけるホルムアルデヒド分の低減も課題となっている。2−シアノアクリレート系接着剤は、フェノール・ホルムアルデヒド系接着剤等とは異なり、非ホルムアルデヒド系接着剤に該当する。それにもかかわらず、上記用途の中でも密閉性が高い空間での使用において建築基準法に定められているホルムアルデヒドの規制値をさらに下回る、実質的にホルムアルデヒド皆無の接着剤を要望する傾向が強くなってきている。
【0004】
2−シアノアクリレート系接着剤の主成分である2−シアノアクリレートは、一般的にシアノ酢酸エステルとホルムアルデヒド縮合物を例えば有機溶剤中で縮合し、得られた縮合体を更に高温解重合を行って製造される。しかしこの方法で得られる粗2−シアノアクリレートは、一般的に90%程度と純度が高くなく、接着性能、安定性において劣る為、さらに蒸留精製工程を経て、97%以上の高純度の2−シアノアクリレートとしたものが使用される。
【0005】
そのため、2−シアノアクリレート系接着剤組成物においては原料から起因する遊離のホルムアルデヒドが極わずかに含まれる。又、不純物として存在するメチロール基付加物が熱によって脱離してホルムアルデヒド分が発生することもあり、建築基準法に定められているホルムアルデヒドの放散速度の基準値は下回るものの、従来の2−シアノアクリレート系接着剤を硬化させた硬化物から放散するホルムアルデヒドの放散量を実質的に皆無とすることは困難であった。
【0006】
また、2−シアノアクリレート系接着剤組成物を早期に硬化させる技術としては、2−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いて各種被着体を接着した後、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはエチレンジアミン等の有機アミン類の有機溶剤溶液を接着層の表面に塗布もしくは散布する処理方法が知られている。
【0007】
2−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いて各種被着体を接着した後、これらの有機アミン類の有機溶剤溶液で処理をした場合、2−シアノアクリレート系接着剤の硬化物から放散されるホルムアルデヒド分は、処理しない場合よりは削減されるが、充分ではないうえに有機アミン類や有機溶剤による臭気が発生するため、密閉性が高い空間空間での使用においてはこれらの臭気も問題となる。
【0008】
本発明者らは、先にシアノアクリレート系接着剤硬化物からのホルムアルデヒド放散量の低減に関し、2−シアノアクリレートを主成分とした接着剤組成物において該接着剤組成物を硬化させた硬化塗膜から放散するホルムアルデヒド分の放散速度が3μg/m・h以下となる2−シアノアクリレート系接着剤組成物(特許文献1)を提案した。これに対し本発明は、空間内に放散されるホルムアルデヒドが実質的に皆無となり、臭気も低減された2−シアノアクリレート系接着剤を用いた各種被着体の接着方法を提供するものである。
【0009】
【特許文献1】特願2006−220201号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、2−シアノアクリレート系接着剤自体の速硬化性、安定性や接着性といった性能を損なわずに被着物から空間内に放散されるホルムアルデヒドが実質的に皆無となり、臭気も低減された2−シアノアクリレート系接着剤を用いた各種被着体の接着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、2−シアノアクリレート系接着剤を用いて各種被着体の接着方法を工夫することにより課題を解決する方法について鋭意検討の結果、2−シアノアクリレートを主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物を用いて各種被着体を接着した後接着層の表面を表面処理剤で処理する接着方法であって、表面処理剤で処理した被着物からのホルムアルデヒドの放散量がJIS K5601−4−1(2003)に準拠した方法で測定して、接着剤組成物0.5g当たり0.1mg/L以下であることを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いた各種被着体の接着方法により、空間内に放散される気体ホルムアルデヒドが実質的に皆無となることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明の接着方法によれば、2−シアノアクリレート系接着剤自体の速硬化性、安定性や接着性といった性能を損なわずに2−シアノアクリレート系接着剤を硬化させた硬化物から空間内に放散されるホルムアルデヒドが実質的に皆無となり、臭気も低減された2−シアノアクリレート系接着剤を用いた各種被着体の接着方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における2−シアノアクリレートは、式(1)で示される2−シアノアクリレートが好適に用いられる。
【0014】
【化1】

(式中Rは炭素数1〜16の置換基を有していてもよい飽和または不飽和の脂肪族もしくは脂環族基又は芳香族基を示す。)
【0015】
2−シアノアクリレ−トの具体例としては、例えば、2−シアノアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、オクチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、エチルヘキシル、ドデシル、アリル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシプロピル、ベンジル、フェニル、クロロエチル、テトラヒドロフルフリル等のエステル類が挙げられる。また、これらの2−シアノアクリレートは1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、従来、2−シアノアクリレート系接着剤に添加して用いられている増粘剤を目的に応じ、本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物の特性を阻害しない範囲で適宜、添加配合して使用することができる。
増粘剤としては、例えば、ポリメタクリル酸アルキル単独重合体、異種のメタクリル酸エステルの共重合体、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの共重合体や、アクリルゴム、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−α−シアノアクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用しても良い。具体的な化合物としては、例えば、ポリメタクリル酸アルキル単独重合体としては、ポリメチルメタクリレート(PMMAと以下略記する。)、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等が挙げられる。異種のメタクリル酸エステルの共重合体、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの共重合体の原料として使用される化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−iso−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−iso−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−iso−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−iso−ブチル等が挙げられる。ポリメタクリル酸アルキル、異種のメタクリル酸エステルの共重合体、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの共重合体については、特に限定されないが、通常、重量平均分子量10万〜200万ものが用いられる。また、増粘剤の含有量はα−シアノアクリレ−ト100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部用いられ、好ましくは1〜30重量部用いられる。
【0017】
又、2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、従来、2−シアノアクリレート系接着剤に添加して用いられている速硬化添加剤を目的に応じ、本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物の特性を阻害しない範囲で適宜、添加配合して使用することができる。 速硬化添加剤としては、多価アルコール類、ポリアルキレンオキサイド誘導体、カリックスアレン化合物等が挙げられる。
【0018】
速硬化添加剤のうち、多価アルコール類として具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ポリブタジエンジオール、クロルプロピレングリコール、3−メチルペンタンジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられ、これらの誘導体としては、そのアルキル、アルケニル、アリール、及びアラルキルエーテル、又はエステル、具体的には例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、テトラメチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール酢酸エステル、エチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、エチルセロソルブステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、セロソルブアクリレート、セロソルブメタクリレート、セロソルブクロトネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
速硬化添加剤のうち、ポリアルキレンオキサイド誘導体としては、式(2)
【化2】

(式中、X およびX は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基を示す。pは1以上の整数、qは2以上の整数を示し、末端は環形成されていてもよい。)
なる繰り返し単位を有する化合物から選ばれた1種以上が挙げられる。
【0020】
ポリアルキレンオキサイド誘導体の具体的な例としては次の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
トリオキサン重合体、ポリアルキレングリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(400、1000、etc )、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシド、ポリ3,3−ビス(クロロメチル)ブチレンオキシド、ポリ1,3−ジオキソラン、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックポリマーなど。)、
【0022】
ポリアルキレングリコールモノエーテル(例えば、メチルカルビトール、カルビトール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールプロピルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエーテルなど。)、ポリアルキレングリコールジエーテル(例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジステアリルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなど。)、
【0023】
ポリアルキレングリコールモノエステル(例えば、ジエチレングリコールモノプロピオネート、テトラエチレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチレート、ポリエチレングリコールモノアセテート、ポリエチレングリコールモノプロピオネート、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールセバケート、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ジエチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールクロトネートなど。)、ポリアルキレングリコールジエステル(例えば、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジステアレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジクロトネート、ポリエチレングリコールジアセテート、ポリエチレングリコールジ−n−ブチレート、ポリエチレングリコールジウラレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジクロトネート、ポリエチレングリコールジ−2−シアノアクリレート、ポリエチレングリコールステアリル−メタクリレート、ポリエチレングリコールラウリル−アクリレートなど。)、
【0024】
ポリアルキレングリコールモノエーテルモノエステル(例えば、メチルカルビトール、カルビトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラオキシエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル等のグリコールモノエーテル化合物のアクリレート、メタクリレート、クロトネート、又は2−シアノアクリレートなど。)、その他ビスフェノールA−ポリアルキレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−ポリアルキレンオキシド付加物、グリセリン−ポリアルキレンオキシド付加物、アジピン酸−ポリアルキレンオキシド付加物、トリメット酸−ポリアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。その他環状化合物としては例えば、18−クラウン−6−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−5−エーテル、ジチオ−15−クラウンエーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6−エーテル、 1.2−ナフト−15−クラウン−5−エーテル、 1.2−メチルベンゾ−18−クラウン−6−エーテルなども使用することができ、これらの添加剤は1種又は2種以上を使用してもよい。
【0025】
カリックスアレン化合物としては、従来公知のカリックスアレン化合物を用いることができ、具体的には式(3)
【化3】

(式中、Rは水素原子、更に置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシル基および置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基であり、RはH又は置換されていてもよいアルキル基である。また、yは4,6又は8である。)
【0026】
で示されるカリックスアレン化合物があげられる。このようなカリックスアレン化合物としては、具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−ブチル−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、或いは例えば特開昭60−179428号公報に記載されている37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)−カリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)−カリックス〔4〕アレン等が好ましく用いられる。
【0027】
これら速硬化添加剤は本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物の硬化速度をさらに速めるために添加される。本発明において速硬化添加剤の添加量は通常、2−シアノアクリレート100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.005〜1重量部である。
【0028】
また、本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、従来、2−シアノアクリレート系接着剤に添加して用いられている安定剤(例えば、二酸化イオウ、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル、HBF4 、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤や、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール、ピロガロール等のラジカル重合禁止剤等)、可塑剤(フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソデシル等)、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤、脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸等、目的に応じ、2−シアノアクリレートモノマーの安定性を阻害しない範囲で適宜、添加配合して使用することができる。
【0029】
本発明の接着方法において、硬化物から空間内に放散されるホルムアルデヒドが実質的に皆無となるメカニズムの詳細は不明であるが、シアノアクリレート系接着剤組成物からなる接着層の表面に表面処理剤を散布又は塗布する事によって、当該表面にホルムアルデヒド分を透過しない硬化層が形成され、ホルムアルデヒド分の放散を防止すると推測される。
【0030】
本発明における表面処理剤としては、シアノアクリレート系接着剤組成物からなる接着層表面に散布又は塗布する事によって、ホルムアルデヒド分の放散を防止出来る物質で、かつ、臭気が発生しないものであれば特に限定する物ではなく、具体的には、水、尿素、塩化アンモニウムや重炭酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、有機アミド化合物類等が挙げられ、これらの中でも水、有機アミド化合物類が好ましく、表面処理剤(水を除く)は水に溶解もしくは分散させた状態で用いることが好ましい。
【0031】
本発明における有機アミド化合物類としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、ヒドラジド系化合物などを挙げることができ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0032】
飽和脂肪酸アミドとしては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどを挙げることができる。
【0033】
有機アミド化合物類の具体的な市販品としては、例えば、リケンレジンFC18−6、FC−12R、FCS−20、FC−100(三木理研工業社製) エアクリン(一方社油脂工業社製)、ケムキャッチH6000−HS:大塚化学社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明における表面処理剤の使用量は、表面処理剤の種類により異なるが、通常、シアノアクリレート系接着剤組成物1重量部に対し0.05重量部〜5重量部であり、0.2重量部〜4重量部が好ましく、0.5重量部〜2重量部がさらに好ましい。
【0035】
本発明において、表面処理剤(水を除く)を水に溶解もしくは分散させた場合の表面処理剤(水を除く)の水に対する濃度は、表面処理剤(水を除く)の種類により異なるが、通常、0.5wt%〜50wt%であり、1wt%〜30wt%が好ましく、2wt%〜20wt%がさらに好ましい。
【0036】
本発明における、各種被着体の接着方法としては、例えば、被着体をシアノアクリレート系接着剤組成物を用いて接着した後、接着層の表面に表面処理剤をスプレーなどを用いて散布する方法や、刷毛を用いて塗布する方法などが挙げられる。
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。 尚、臭気の判定およびホルムアルデヒドの放散量は、以下に示す方法により求めた。
【0038】
(ホルムアルデヒドの放散量の測定)
被着物からのホルムアルデヒドの放散量は、大きさ150mm×150mmの硬質ガラス板1枚にシアノアクリレート系接着剤組成物0.5gを全面に均一塗布した試験片1枚とする以外は、JIS K5601−4−1(2003)に準拠(アセチルアセトン吸光光度法により定量)した方法で測定した。
(臭気の判定)
シアノアクリレート系接着剤組成物0.5gを全面に均一塗布した後、表面処理剤で処理したものおよび表面処理剤で処理を行わないもの(未処理)について、1時間養生し、硬化塗膜からの臭気を判定した。 尚、臭気の判定方法は「○:鼻から50cmの位置で臭気を感じない、×:鼻から30cmの位置で臭気を感じる」で行い、臭気を感じる場合は臭気の種類について記載した。
【実施例1】
【0039】
エチル−2−シアノアクリレート精製品A(純度98.2%)100重量部に対し、0.001重量部のホウフッ化水素酸と0.1重量部のハイドロキノンを添加したシアノアクリレート系接着剤組成物0.5gを150mm×150mmのガラス試験板の全面に塗布し、さらに、表面処理剤として水を1.0gスプレー散布し、常温で1時間養生した硬化塗膜につき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【実施例2】
【0040】
実施例1において水を1.0gスプレー散布する代わりに表面処理剤としてリケンレジンFC−100(有機アミド化合物類の10%水溶液)を1.0gスプレー散布する以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【実施例3】
【0041】
エチル−2−シアノアクリレート精製品A(純度98.2%)100重量部の代わりに
エチル−2−シアノアクリレート精製品B(純度99.9%)100重量部を用いる以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【実施例4】
【0042】
実施例3において水を1.0gスプレー散布する代わりに表面処理剤としてリケンレジンFC−100(有機アミド化合物類の10%水溶液)を1.0gスプレー散布する以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【実施例5】
【0043】
実施例3において水を1.0gスプレー散布する代わりに表面処理剤としてリケンレジンFC−100を4倍量の水で希釈した溶液1.0gスプレー散布する以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【実施例6】
【0044】
実施例3において水を1.0gスプレー散布する代わりに表面処理剤としてリケンレジンFC−12R(有機アミド化合物類の15%水溶液)を1.0gスプレー散布する以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【0045】
(比較例1)
実施例1において表面処理剤として水を1.0gスプレー散布しない以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
実施例1において水を1.0gスプレー散布する代わりに表面処理剤としてn―ヘプタンを1.0gスプレー散布する以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【0047】
(比較例3)
実施例1において水を1.0gスプレー散布する代わりに表面処理剤としてアクセラレーターPC(芳香族系アミン化合物の有機溶剤溶液:田岡化学工業社製)1.0gスプレー散布する以外は実施例1と同様の操作をおこなったものにつき、臭気の有無およびホルムアルデヒド分の放散量を測定した結果を表1に示す。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−シアノアクリレートを主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物を用いて各種被着体を接着した後、接着層の表面を表面処理剤で処理する接着方法であって、表面処理剤で処理した被着物からのホルムアルデヒドの放散量がJIS K5601−4−1(2003)に準拠した方法で測定して、接着剤組成物0.5g当たり0.1mg/L以下であることを特徴とする各種被着体の接着方法。
【請求項2】
前記表面処理剤が水及び/又は有機アミド化合物類から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の各種被着体の接着方法。