説明

合一樹脂粒子の製造方法および合一樹脂粒子、トナー、二成分現像剤、現像装置ならびに画像形成装置

【課題】 粒度分布幅が狭い状態を維持するとともに、短時間で凝集樹脂粒子を粒界のない状態で合一化して合一樹脂粒子を得る合一樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 合一化工程s3では、凝集樹脂粒子スラリーを、所定の加熱加圧条件下で配管内を流過させる。そして、冷却前減圧工程s4では、配管内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子スラリーを、冷却工程s5において所定の温度まで冷却する前に減圧する。そして、減圧工程s6では、配管内を流過して冷却工程s5において冷却された合一樹脂粒子スラリーを大気圧まで減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合一樹脂粒子の製造方法および合一樹脂粒子、トナー、二成分現像剤、現像装置ならびに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体表面に形成される静電潜像に、帯電状態にあるトナーを供給して静電潜像を現像することによってトナー像を形成し、このトナー像を記録媒体に定着させることによって画像を形成する。
【0003】
この方式では、静電潜像にトナーを均一に付着させることによって、画像濃度が高くかつ画質品位に優れる画像が形成される。静電潜像にトナーを均一に付着させる上で、トナーの粒子径が揃って粒度分布の幅が狭く、帯電性能が均一であることが重要である。
【0004】
トナーの粒子径は、帯電性能だけでなく、原稿画像の高精細な再現にも影響を及ぼす。粒子径が小さなトナー、すなわち体積平均粒子径が5〜6μm程度のトナーは、高精細な複写画像を得るのに有効である。
【0005】
したがって、従来からトナー粒子径を揃えかつ小径化するために種々の検討がなされており、たとえば、トナー粒子径を揃える方法として凝集法によりトナーを製造する方法が知られている。凝集法によれば、たとえば、微細な樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子などが分散した水性スラリーに2価または3価の金属塩などの凝集剤を添加することによって、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを凝集させて、トナー粒子である凝集粒子を製造する。凝集法における解決すべき課題としては、過凝集が起こり必要以上に粒子径の大きい粒子が生成して凝集粒子の粒度分布がブロードになり易いこと、凝集粒子の粒子径を制御するために長い時間を掛けて凝集反応を行う必要があることなどが挙げられる。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1には、水系媒体中で、ポリエステルを含有する結着樹脂を乳化する工程、結着樹脂の乳化液に分子量350以下の水溶性含窒素化合物を添加して乳化粒子を凝集させる工程を有することにより、ポリエステルを含有する結着樹脂を用い、かつ有機溶媒を実質的に使用することなく、簡便に、かつ短い製造時間でトナー粒子形状を制御することができる上、粒度分布の狭いトナーを製造する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−108458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるトナーの製造方法では、トナー粒子形状を凝集樹脂粒子から合一樹脂粒子へ変化させるときに、粒界のない合一樹脂粒子を得るために、結着樹脂の軟化温度付近まで加熱した状態で、長時間撹拌する必要があるため、生産性に問題がある。また、長時間高温状態に曝されるため、凝集樹脂粒子中の低融点成分(たとえば、離型剤)が離脱して凝集樹脂粒子表面に露出し、感光体表面へのフィルミングやの要因となり、画像不良を発生してしまう。
【0009】
したがって本発明の目的は、粒度分布幅が狭い状態を維持するとともに、短時間で凝集樹脂粒子を粒界のない状態で合一化して合一樹脂粒子を得る合一樹脂粒子の製造方法および合一樹脂粒子を提供することである。また、その合一樹脂粒子を含むトナー、および該トナーを含む二成分現像剤を提供することである。また、該トナーを含む現像剤または二成分現像剤を用いて現像を行う現像装置、ならびに該現像装置を備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも樹脂を含む樹脂微粒子が凝集した凝集樹脂粒子が液状媒体中に分散した凝集樹脂粒子スラリーを、所定の温度に加熱した状態で、圧力が0.5MPa以上15MPa以下となるように加圧して配管内を流過させ、凝集樹脂粒子が合一化した合一樹脂粒子が液状媒体中に分散した合一樹脂粒子スラリーを得る合一化工程と、
配管内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子スラリーを、所定の温度まで冷却し、かつ所定の圧力まで減圧する冷却減圧工程とを含むことを特徴とする合一樹脂粒子の製造方法である。
【0011】
また本発明は、前記冷却減圧工程は、
配管内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子スラリーを、大気圧より高く、合一化工程における圧力より低い圧力に減圧する冷却前減圧工程と、
配管内を流過して冷却前減圧工程において減圧された合一樹脂粒子スラリーを所定の温度まで冷却する冷却工程と、
配管内を流過して冷却工程において冷却された合一樹脂粒子スラリーを大気圧まで減圧する減圧工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、合一化工程では、前記圧力が、0.5MPa以上5MPa以下であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、合一化工程では、前記圧力が、1MPa以上2MPa以下である特徴とする。
【0014】
また本発明は、合一化工程では、前記所定の温度が、((凝集樹脂粒子の軟化点)−10)℃以上、((凝集樹脂粒子の軟化点)+80)℃以下であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、凝集樹脂粒子スラリーの比熱が4.3J/g・℃以上、8.0J/g・℃以下であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、凝集樹脂粒子の体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記記載の合一樹脂粒子の製造方法によって製造されることを特徴とする合一樹脂粒子である。
【0018】
また本発明は、前記記載の合一樹脂粒子の製造方法によって製造されるトナー粒子により構成されることを特徴とするトナーである。
【0019】
また本発明は、前記記載のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤である。
【0020】
また本発明は、前記記載のトナーを含む現像剤、または前記記載の二成分現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置である。
また本発明は、前記記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、合一化工程では、凝集樹脂粒子スラリーを、所定の加熱加圧条件下で配管内を流過させる。凝集樹脂粒子スラリーを所定の加圧条件下で加圧送液することによって、凝集樹脂粒子が配管内で沈降しない流量を確保することができ、かつ所定の温度に加熱した状態であるので、短時間で凝集樹脂粒子を粒界のない状態で合一化して合一樹脂粒子を得ることができる。そして、冷却減圧工程では、合一樹脂粒子スラリーを、所定の温度まで冷却し、かつ所定の圧力まで減圧するので、合一樹脂粒子の凝集による粒度分布のブロード化を防止して、粒度分布幅が狭い合一樹脂粒子を得ることができる。
【0022】
また本発明によれば、冷却減圧工程は、冷却前減圧工程と、冷却工程と、減圧工程とを含む。そして、冷却前減圧工程では、配管内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子スラリーを、冷却工程において所定の温度まで冷却する前に減圧する。これによって、キャビテーションの発生にともなって配管内で乱流が生じることが抑制されるので、合一樹脂粒子の凝集による粒度分布のブロード化を防止して、粒度分布幅が狭い合一樹脂粒子を得る効果をより顕著に発現させることができる。
【0023】
そして、減圧工程では、配管内を流過して冷却工程において冷却された合一樹脂粒子スラリーを大気圧まで減圧する。つまり、合一樹脂粒子スラリーは、冷却工程の前の冷却前減圧工程と、冷却工程の後の減圧工程とで、段階的に減圧されることになる。このように、合一樹脂粒子スラリーを段階的に減圧することによって、スラリーから液状媒体が蒸発するのが抑制されて、配管内に合一樹脂粒子が融着・凝固する現象を防止することができ、粒度分布幅が狭い合一樹脂粒子を得ることができる。
【0024】
また本発明によれば、合一化工程では、凝集樹脂粒子スラリーを0.5MPa以上5MPa以下に加圧する。これによって、凝集樹脂粒子が配管内で沈降しない充分な流量を確保することができ、かつ短時間で凝集樹脂粒子を粒界のない状態で合一化して合一樹脂粒子を得ることができる。
【0025】
また本発明によれば、合一化工程では、凝集樹脂粒子スラリーを1MPa以上2MPa以下に加圧する。これによって、凝集樹脂粒子が配管内で沈降しない充分な流量を確保することができ、かつ短時間で凝集樹脂粒子を粒界のない状態で合一化して合一樹脂粒子を得る効果をより顕著に発現させることができる。
【0026】
また本発明によれば、合一化工程では、凝集樹脂粒子スラリーを、((凝集樹脂粒子の軟化点)−10)℃以上、((凝集樹脂粒子の軟化点)+80)℃以下に加熱する。これによって、凝集樹脂粒子の濃度が高いスラリーであっても、粒界のない合一樹脂粒子を得ることができる。
【0027】
また本発明によれば、凝集樹脂粒子スラリーの比熱が4.3J/g・℃以上、8.0J/g・℃以下である。これによって、合一化工程における加熱温度が高くなり過ぎるのを抑制した状態で、粒界のない合一樹脂粒子を、生産性を低下させることなく得ることができる。
【0028】
また本発明によれば、凝集樹脂粒子の体積平均径が3μm以上10μm以下である。これによって、凝集樹脂粒子の内部にまで熱が伝わりやすくなるので、粒界がなく、高耐久性の合一樹脂粒子を得ることができる。凝集樹脂粒子の体積平均径が3μm未満では、凝集樹脂粒子同士の凝集が生じやすい。凝集樹脂粒子の体積平均径が10μmを超えると、熱が伝わりにくく、粒界のない合一樹脂粒子を得ることが困難となる。
【0029】
また本発明によれば、前記の方法によって製造された合一樹脂粒子であるので、粒度分布幅が狭く、粒界がない耐久性の高い合一樹脂粒子となる。
【0030】
また本発明によれば、前記の方法によって製造されたトナーであるので、粒度分布幅が狭く、粒界がない耐久性の高いトナーとなり、現像槽などでの長期間の撹拌に耐えることが可能なトナーとなる。
【0031】
また本発明によれば、前記トナーと、キャリアとを含む二成分現像剤なので、長期間にわたって帯電安定性が高い二成分現像剤となる。
【0032】
また本発明によれば、前記トナーを含む現像剤、または前記二成分現像剤を用いて現像を行う現像装置が実現される。
また本発明によれば、前記現像装置を備える画像形成装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明における合一樹脂粒子の製造方法は、少なくとも樹脂を含む樹脂微粒子を液状媒体中に分散させて樹脂微粒子のスラリーを調製する樹脂微粒子調製工程と、樹脂微粒子のスラリーに含まれる樹脂微粒子を凝集させて凝集樹脂粒子のスラリーを得る樹脂粒子凝集工程と、凝集樹脂粒子を所定の加熱加圧条件下で合一化させて合一樹脂粒子のスラリーを得る合一化工程と、合一樹脂粒子のスラリーを所定の圧力に減圧する冷却前減圧工程と、合一樹脂粒子のスラリーを所定の温度まで冷却する冷却工程と、合一樹脂粒子のスラリーを大気圧まで減圧する減圧工程とを含む。ここで、合一化とは、凝集樹脂粒子を加熱して、溶融、一体化することである。
【0034】
本発明の製造方法によって作製される合一樹脂粒子は、たとえば、電子写真方式の画像形成装置において現像剤として使用されるトナー、液晶材料を封入するガラス基板を支持するための樹脂スペーサなどに適用することができる。
【0035】
図1は、本発明の実施の一形態である合一樹脂粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0036】
[樹脂微粒子調製工程]
ステップs1の樹脂微粒子調製工程は、ステップs1−(a)の溶融混練工程と、ステップs1−(b)の粗粉砕工程と、ステップs1−(c)の粉砕工程と、ステップs1−(d)の樹脂微粒子冷却工程と、ステップs1−(e)の樹脂微粒子減圧工程とを含み、少なくとも樹脂を含む樹脂微粒子を液状媒体中に分散させて樹脂微粒子のスラリーを調製する工程である。
【0037】
本発明に用いられる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。本発明の合一樹脂粒子をトナー用途に用いる場合には、透明性に優れ、得られるトナー粒子である合一樹脂粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与することができ、カラートナーの結着樹脂に好適であるという観点から、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。また、トナーの低温定着化を図ることができるという観点から、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とをグラフト化したものも好適に用いることができる。
【0038】
造粒操作を容易に実施すること、得られる粒子の形状および大きさを均一にすることなどを考慮すると、樹脂の軟化温度は150℃以下であることが好ましく、60〜150℃であることが特に好ましい。その中でも、重量平均分子量が50000〜300000の樹脂が好ましい。本発明の合一樹脂粒子をトナー用途に用いる場合には、樹脂の重量平均分子量が50000未満では、定着後の機械的強度が低く、画像欠落などの現象を起こすおそれがあり、300000を超えると、低温定着性を低下させてしまうおそれがある。
【0039】
樹脂は、1種を単独で使用でき、または、異なる2種以上を併用できる。さらに、同じ樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれかまたは全部が異なるものを複数種用いることができる。
【0040】
(溶融混練工程)
ステップs1−(a)の溶融混練工程は、樹脂とそれ以外の材料とを溶融混練して、樹脂を含む溶融混練物を作製する工程であり、トナー用途の合一樹脂粒子を製造する場合には、樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤などを含有した溶融混練物を作製する工程である。液晶用樹脂スペーサ用途の合一樹脂粒子を製造する場合には、溶融混練工程は省略できる。
【0041】
トナー用の着色剤としては、染料および顔料が挙げられるが、その中でも顔料を用いることが好ましい。顔料は、染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、顔料を用いることによって耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0042】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0043】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0044】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0045】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
【0046】
上記以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用できる。これらの着色剤は、1種を単独で使用してもよく、また色の異なる2種以上を併用して使用してもよい。また同色系の複数の着色剤を併用することもできる。着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。マスターバッチにおける樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒
また、着色剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。これにより、着色剤の添加によるフィラー効果を抑え、かつ、高着色力を有するトナーを得ることができる。着色剤の配合量が20重量部を超えると、着色剤のフィラー効果によって、トナーの定着性が低下するおそれがある。
【0047】
トナー用の離型剤は、トナーを記録媒体に定着させる際にトナーに離型性を付与するために添加される。したがって、離型剤を使用しない場合と比較して高温オフセット開始温度を高め、耐高温オフセット性を向上させることができる。また、トナーを定着させる際の加熱によって離型剤を溶融させ、定着開始温度を低下させ、耐ホットオフセット性を向上させることができる。本発明に用いられる離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。離型剤の使用量は特に限定されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部以上20重量部以下である。離型剤が20重量部よりも多く含まれると、感光体上へのフィルミング、キャリアへのスペントが起こりやすくなるおそれがあり、0.2重量部未満であると、離型剤の機能を十分発揮できないおそれがある。離型剤の融点は特に制限されないけれども、融点が高すぎると定着性(離型性)改良に効果がなく、低すぎると保存性などを悪化させてしまうため、30〜120℃が好ましい。
【0048】
トナー用の帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加される。本発明に用いられる帯電制御剤としては、特に限定されるものではなく、公知の正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用することができる。たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤が挙げられる。
【0049】
帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。相溶性の帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生し、非相溶性の帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電特性を付与することができない。
【0050】
溶融混練物は、たとえば、樹脂および着色剤と、必要に応じて離型剤、帯電制御剤などを混合機で乾式混合し、得られる粉体混合物を混練機で混練することによって製造できる。混練温度は、結着樹脂の溶融温度以上の温度(通常は80〜200℃程度、好ましくは100〜150℃程度)である。
【0051】
溶融混練には、二軸押し出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)などの1軸もしくは2軸の押出機、ニーディックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式のものが挙げられる。溶融混練物は冷却されて固化物となる。溶融混練物の冷却固化物は、カッターミル、フェザーミル、ジェット・ミルなどの粉体粉砕機によって粗粉砕され、溶融混練物の粗粉末が得られる。粗粉末の粒径は特に制限されないけれども、好ましくは450〜1000μm、さらに好ましくは500〜800μm程度である。
【0052】
(粗粉砕工程)
ステップs1−(b)の粗粉砕工程は、樹脂(溶融混練工程を経た場合には溶融混練物、以下、溶融混練物も含めて樹脂と呼ぶ場合がある)を粗粉砕して液状媒体中に分散させ、樹脂の粗粉を含むスラリーを得る工程である。樹脂と混合する液状媒体としては、樹脂を溶解せずかつ均一に分散させ得る液状媒体であれば特に制限されないけれども、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理、取扱い易さなどを考慮すると、水やアルコールなどの親水性媒体が好ましい。樹脂の粗粉と液状媒体との混合は、一般的な混合機を用いて行われ、それによって樹脂の粗粉を含むスラリーが得られる。
【0053】
次に、樹脂の粗粉を含むスラリー中の樹脂粗粉を粉砕する。この樹脂粗粉の粉砕は、特に限定されることなく公知の方法によって行うことができるが、ステップs1−(c)の粉砕工程と、ステップs1−(d)の樹脂微粒子冷却工程と、ステップs1−(e)の樹脂微粒子減圧工程とを含み、高圧ホモジナイザによって行うのが好ましい。
【0054】
高圧ホモジナイザとしては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)およびアルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、nano3000(商品名、株式会社美粒製)などを挙げることができるが、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザを用いるのが好ましい。
【0055】
図2は、高圧ホモジナイザ200の構成を示す図である。高圧ホモジナイザ200は、タンク201と、加圧ユニット202と、加熱器203と、粉砕用ノズル204と、減圧モジュール205と、冷却機206とを含んで構成される。タンク201は、内部空間を有する容器状部材であり、樹脂粗粉が液状媒体中に分散されるスラリーを貯留する。加圧ユニット202は、樹脂粗粉を含むスラリーを加圧する。加熱器203は、加圧ユニット202によって加圧される樹脂粗粉を含むスラリーを加熱する。粉砕用ノズル204は、加熱加圧状態にある樹脂粗粉を含むスラリーを、その内部に形成される流路に流過させることによって、樹脂粗粉を粉砕し、樹脂微粒子のスラリーを作製する。減圧モジュール205は、加熱加圧状態にある樹脂微粒子のスラリーを突沸による泡の発生が起こらないように減圧する。冷却機206は、加熱状態にある樹脂微粒子のスラリーを冷却する。
【0056】
(粉砕工程)
ステップs1−(c)の粉砕工程は、樹脂粗粉を含むスラリーを、高圧ホモジナイザ200によって加熱加圧下で粉砕用ノズル204に形成される流路を流過させて、樹脂粗粉を粉砕して樹脂微粒子とし、樹脂微粒子のスラリーを得る工程である。
【0057】
樹脂粗粉を含むスラリーは、樹脂粗粉の軟化温度よりも高い温度となるように加熱器203によって加熱されて、加圧ユニット202によって加圧される。そして、樹脂粗粉を含むスラリーが、粉砕用ノズル204の入口から粉砕用ノズル204内に導入されて、粉砕が開始される。
【0058】
このとき、樹脂微粒子の体積平均粒子径を所望の範囲に調整するには、樹脂粗粉を粉砕するときの加熱加圧条件を制御することや、樹脂粗粉を粉砕用ノズル204に形成される流路を流過させるときの流過速度、流過距離などを制御すること、樹脂粗粉のスラリー中の固形分濃度、粉砕の回数を適宜調整することなどによって微調整することができる。
【0059】
(樹脂微粒子減圧工程)
ステップs1−(d)の樹脂微粒子減圧工程は、加熱加圧状態にある樹脂微粒子のスラリーを減圧する工程である。高圧ホモジナイザ200の減圧モジュール205によって、加熱加圧状態にある樹脂微粒子のスラリーが、バブリング(泡の発生)が起こらない程度の圧力まで減圧される。
【0060】
(樹脂微粒子冷却工程)
ステップs1−(e)の樹脂微粒子冷却工程は、加熱状態にある樹脂微粒子のスラリーを冷却する工程である。冷却には、高圧ホモジナイザ200の冷却機206が用いられ、液温が樹脂微粒子のガラス転移温度以下の温度になるまで冷却される。
【0061】
[樹脂粒子凝集工程]
ステップs2の樹脂粒子凝集工程は、樹脂微粒子のスラリーに、この分野で常用される公知の凝集剤を添加し、撹拌手段を含む公知の造粒装置により樹脂微粒子を凝集させ、凝集樹脂粒子のスラリーを調製する工程である。
【0062】
樹脂粒子凝集工程におけるスラリーの液温は、所定の昇温速度で上昇させ、目標到達温度が樹脂のガラス転移温度(Tg)の±10℃の範囲に設定されている。目標到達温度は、凝集樹脂粒子の形状を左右する。目標到達温度が、((樹脂のTg)−10)℃より低くなると、凝集が起こりにくくなり、((樹脂のTg)+10)℃より高くなると、過凝集が起こってしまう。
【0063】
また、樹脂微粒子のスラリーと凝集剤との混合において、撹拌手段による撹拌速度、撹拌時の到達温度、昇温速度および凝集剤の添加量を適宜選択することによって、所望の体積平均粒子径を有する凝集樹脂粒子を得ることができる。凝集樹脂粒子の体積平均粒子径は、3〜10μmに制御されるのが好ましい。これによって、凝集樹脂粒子の内部にまで熱が伝わりやすくなるので、粒界がなく、高耐久性の合一樹脂粒子を得ることができる。凝集樹脂粒子の体積平均径が3μm未満では、凝集樹脂粒子同士の凝集が生じやすい。凝集樹脂粒子の体積平均径が10μmを超えると、熱が伝わりにくく、粒界のない合一樹脂粒子を得ることが困難となる。
【0064】
また、樹脂粒子凝集工程においては、凝集樹脂粒子のスラリーの比熱が、4.3〜8.0J/g・℃となるように制御するのが好ましい。凝集樹脂粒子スラリーの比熱は、スラリー中の凝集樹脂粒子と液状媒体との混合比率によって調整することができる。これによって、後工程の合一化工程における加熱温度が高くなり過ぎるのを抑制した状態で、粒界のない合一樹脂粒子を、生産性を低下させることなく得ることができる。凝集樹脂粒子スラリーの比熱が4.3J/g・℃未満では、スラリー中の凝集樹脂粒子の濃度が低すぎるため、生産性が悪い。凝集樹脂粒子スラリーの比熱が8.0J/g・℃を超えると、凝集樹脂粒子を加熱加圧下で合一化処理して合一樹脂粒子を得る後工程の合一化工程において、1パスで合一樹脂粒子とすることが困難となり、生産性が悪い。
【0065】
ここで、凝集樹脂粒子スラリーの比熱は、次のようにして算出した値である。示差走査熱量計を用いて、200℃まで昇温し、200℃から速度10℃/分で0℃まで降温して冷却した試料を10℃/分で昇温した時に示すピークのチャートを求め、凝集樹脂粒子の比熱を求める。そして、水の比熱を4.2J/g・℃とし、下記式(1)に従い、凝集樹脂粒子スラリーの比熱を計算する。
C1=(C2×M/100)+(C3×(100−M)/100) …(1)
[式中、C1は凝集樹脂粒子スラリーの比熱(J/g・℃)を示し、C2は凝集樹脂粒子の比熱(J/g・℃)を示し、C3は水の比熱を示し、Mは凝集樹脂粒子スラリー中の凝集樹脂粒子の重量割合(重量%)を示す。]
【0066】
次に、凝集樹脂粒子のスラリーに含まれる凝集樹脂粒子を合一化して合一樹脂粒子を得る。この合一化処理は、ステップs3の合一化工程と、ステップs4の冷却前減圧工程と、ステップs5の冷却工程と、ステップs6の減圧工程とを含む。
【0067】
図3は、凝集樹脂粒子から合一樹脂粒子を作製する合一化処理装置300の構成を示す図である。本実施の形態では、合一化処理は、合一化処理装置300によって行う。合一化処理装置300は、タンク301と、加圧ユニット302と、加熱器303と、第1減圧モジュール304と、冷却機305と、第2減圧モジュール306とが、配管307に連結された構成である。配管307は、コイル状に形成されたコイル状配管であることが好ましい。
【0068】
タンク301は、内部空間を有する容器状部材であり、凝集樹脂粒子が液状媒体中に分散されるスラリーを貯留する。加圧ユニット302は、モーノポンプ、ロータリーポンプなどによって実現され、配管307内を流過する凝集樹脂粒子のスラリーを所定の圧力に加圧する。加熱器303は、配管307内を流過して加圧ユニット302によって加圧された凝集樹脂粒子のスラリーを、圧力を維持した状態で所定の温度に加熱する。加熱器303は、配管307の外周面に沿って設けられ、熱媒体(たとえば水蒸気)が流過可能な配管と、配管に熱媒体を供給する加熱媒体供給手段とを含む加熱装置である。加熱媒体供給手段は、たとえば、ボイラである。
【0069】
凝集樹脂粒子のスラリーが、加圧ユニット302によって加圧され、加熱器303によって加熱されて、所定の加熱加圧条件下で配管307内を流過することによって、凝集樹脂粒子が合一化されて合一樹脂粒子となる。第1減圧モジュール304は、配管307内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子のスラリーを所定の圧力になるまで減圧する。冷却機305は、配管307内を流過する合一樹脂粒子のスラリーを所定の温度まで冷却する。そして、第2減圧モジュール306は、配管307内を流過する合一樹脂粒子のスラリーを大気圧まで減圧する。
【0070】
[合一化工程]
ステップs3の合一化工程は、ステップs3−(a)の加圧工程と、ステップs3−(b)の加熱工程とを含み、合一化処理装置300を用いて、凝集樹脂粒子のスラリーを所定の加熱加圧条件下で配管307内を流過させて、凝集樹脂粒子を合一化して合一樹脂粒子とし、合一樹脂粒子のスラリーを得る工程である。
【0071】
(加圧工程)
ステップs3−(a)の加圧工程は、合一化処理装置300の加圧ユニット302で行われる工程であり、配管307内を流過する凝集樹脂粒子のスラリーを、0.5〜15MPa、好ましくは0.5〜5MPa、さらに好ましくは1〜2MPaの圧力に加圧する。このように、凝集樹脂粒子スラリーを所定の加圧条件下で加圧送液することによって、凝集樹脂粒子が配管307内で沈降しない流量を確保することができる。圧力が0.5MPa未満では、配管307内を流過する凝集樹脂粒子スラリー中の凝集樹脂粒子が配管307内で沈降し、配管307が閉塞する。圧力が15MPaを超えると、凝集樹脂粒子に過度のエネルギーを与えることになり、凝集樹脂粒子が微粒子に分解し、合一樹脂粒子を得ることができないばかりか、後工程である減圧工程の耐圧を超えるため運転が困難となる。
【0072】
(加熱工程)
ステップs3−(b)の加熱工程は、合一化処理装置300の加熱器303で行われる工程であり、配管307内を流過して加圧ユニット302によって加圧された凝集樹脂粒子のスラリーを、圧力を維持した状態で所定の温度に加熱する。
【0073】
加圧工程において前記所定の圧力で加圧され、加熱工程において所定の温度に加熱された凝集樹脂粒子のスラリーは、内径が2.0〜5.0mmに設定されている配管307内を、流量100〜500mL/minで流過する。また、合一化処理装置300において加圧ユニット302の入口から加熱器303の出口までの距離、つまり、凝集樹脂粒子スラリーが所定の加熱加圧条件下で配管307内を流過する距離は、流過時間が1分間程度になるように設定されている。
【0074】
以上のように、凝集樹脂粒子のスラリーを、所定の加熱加圧条件下で配管307内を1分間程度流過させることによって、凝集樹脂粒子は粒界のない状態で合一化して合一樹脂粒子となる。このとき、合一樹脂粒子は、凝集樹脂粒子が加熱・一体化されて合一化されたものであるので、その体積平均粒子径は、凝集樹脂粒子の体積平均粒子径と同等である。
【0075】
このように、短時間で粒界のない合一樹脂粒子を得ることができるので、合一樹脂粒子をトナーとして使用する場合には、合一樹脂粒子中に含まれる離型剤などの低融点成分が脱離するのが防止される。したがって、低融点成分が合一樹脂粒子の表面に露出するのが防止されるので、感光体表面へのフィルミングが防止されて、画像不良の発生を抑制することができる。
【0076】
また、加熱工程では、凝集樹脂粒子のスラリーを、((凝集樹脂粒子の軟化点)−10)℃以上、((凝集樹脂粒子の軟化点)+80)℃以下に加熱するのが好ましい。これによって、凝集樹脂粒子の濃度が高いスラリーであっても、粒界のない合一樹脂粒子を得ることができる。加熱温度が((凝集樹脂粒子の軟化点)−10)℃未満では、粒界のない合一樹脂粒子を得ることができず、(凝集樹脂粒子の軟化点)+80)℃を超えると、低融点成分が脱離しやすい。
【0077】
[冷却前減圧工程]
ステップs4の冷却前減圧工程は、合一化処理装置300の第1減圧モジュール304で行われる工程であり、配管307内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子のスラリーを、大気圧よりも高く、合一化工程における圧力よりも低い圧力になるまで減圧する。このとき、合一樹脂粒子スラリーの温度は、圧力の低下にともなって低下する。冷却前減圧工程では、配管307内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子のスラリーを、後工程である冷却工程において所定の温度まで冷却する前に減圧する。これによって、キャビテーションの発生にともなって配管307内で乱流が生じることが抑制されるので、合一樹脂粒子の過凝集による粒度分布のブロード化を防止して、粒度分布幅が狭い合一樹脂粒子を得ることができる。
【0078】
冷却前減圧工程では、減圧を段階的に徐々に行うようにするのが好ましく、このような段階的に減圧を行う第1減圧モジュール304としては、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の多段減圧装置を挙げることができる。多段減圧装置は、加熱加圧された合一樹脂粒子のスラリーを多段減圧装置内に導入する入口通路と、入口通路に連通するように形成されて、減圧された合一樹脂粒子のスラリーを多段減圧装置外に排出する出口通路と、入口通路と出口通路との間に設けられて、連結部材を介して複数の減圧部材が連結されてなる多段減圧通路とを含んで構成される。
【0079】
合一化工程において加熱器303から排出された合一樹脂粒子のスラリーは、加熱器303と多段減圧装置の入口通路とを連結する配管307内を流過して、多段減圧装置の入口通路に導入される。
【0080】
多段減圧装置において、多段減圧通路に用いられる減圧部材としては、たとえば、パイプ状部材が挙げられる。連結部材としては、たとえば、リング状シール部材が挙げられる。内径の異なる複数のパイプ状部材をリング状シール部材にて連結することによって多段減圧通路が構成される。たとえば、多段減圧通路は、入口通路から出口通路に向けて、1個の第1パイプ状部材に、これに対して2〜3倍程度の内径を有する第2パイプ状部材が1個連結され、次に、第2パイプ状部材に対して0.2〜0.5倍程度の内径を有する第3パイプ状部材が1個連結され、さらに、第3パイプ状部材に対して1.3〜2倍程度の内径を有する第4パイプ状部材が1〜3個程度連結されて構成されている。
【0081】
このような多段減圧通路内に加圧状態にある合一樹脂粒子のスラリーを流過させると、バブリングを起すことなく、合一樹脂粒子のスラリーを大気圧より高く、合一化工程において加えた圧力より低い圧力(好ましくは、合一化工程において加えた圧力に対して30%以上70%以下の圧力状態)になるまで減圧できる。この多段減圧装置では、入口通路の内径と出口通路の内径とが同じ寸法になるように構成してもよく、または出口通路の内径が入口通路の内径よりも大きくなるように構成してもよい。
【0082】
多段減圧装置内で減圧された合一樹脂粒子のスラリーは、出口通路から該多段減圧装置の外部に排出されて、配管307内を流過して冷却機305に導入される。
【0083】
[冷却工程]
ステップs5の冷却工程は、合一化処理装置300の冷却機305で行われる工程であり、配管307内を流過する合一樹脂粒子のスラリーを所定の温度まで冷却する。このとき、合一樹脂粒子スラリーの圧力は、温度の低下にともなって低下する。冷却機305には、耐圧構造を有する一般的な液体冷却機を使用でき、たとえば、合一樹脂粒子のスラリーが流過する配管307の周囲に冷却水を循環させる配管を設け、冷却水を循環させることによって合一樹脂粒子のスラリーを30℃程度になるまで冷却する。
【0084】
[減圧工程]
ステップs6の減圧工程は、合一化処理装置300の第2減圧モジュール306で行われる工程であり、冷却工程において冷却されて配管307内を流過する合一樹脂粒子のスラリーを、大気圧になるまで減圧する。このとき、合一樹脂粒子スラリーの温度は、圧力の低下にともなって低下する。
【0085】
合一樹脂粒子のスラリーは、冷却工程の前の冷却前減圧工程と、冷却工程の後の減圧工程とで、段階的に減圧されることになる。このように、合一樹脂粒子のスラリーを段階的に減圧することによって、スラリーから液状媒体が蒸発するのが抑制されて、配管307内に合一樹脂粒子が融着・凝固する現象を防止することができ、粒度分布幅が狭い合一樹脂粒子を得ることができる。
【0086】
第2減圧モジュール306は、前述した第1減圧モジュール304と同様に、多段減圧装置で構成されるのが好ましい。多段減圧通路内に合一樹脂粒子のスラリーを流過させて、バブリングが起こらないように、合一樹脂粒子のスラリーを大気圧になるまで減圧する。
【0087】
[洗浄工程]
ステップs7の洗浄工程は、合一樹脂粒子のスラリー中に含まれる合一樹脂粒子を洗浄する。合一樹脂粒子の洗浄は、高分子分散剤およびこれに由来する不純物などを除去するために実施される。高分子分散剤および不純物が合一樹脂粒子に残留すると、合一樹脂粒子をトナー粒子として用いた場合、トナー粒子の帯電性能が不安定になるおそれがある。また空気中の水分の影響によって帯電量が低下するおそれがある。
【0088】
合一樹脂粒子の洗浄は、たとえば、合一樹脂粒子のスラリーに水を加えて撹拌し、遠心分離などによって分離される上澄み液を除去することによって行うことができる。合一樹脂粒子の洗浄は、導電率計などを用いて測定した上澄み液の導電率が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで繰返し行うことが好ましい。これにより、高分子分散剤およびこれに由来する不純物類の残留を一層確実に防ぐことができる。
【0089】
洗浄に用いる水は、導電率が20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような洗浄水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって調製することができる。またこれらの方法のうち、2種以上を組合せて水を調製してもよい。合一樹脂粒子の水洗は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。また洗浄水の温度は特に制限されるものではないが、10℃以上、合一樹脂粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましい。合一樹脂粒子が2種以上の樹脂を含む場合、ここでいうガラス転移温度(Tg)以下とは、2種以上の樹脂のガラス転移温度(Tg)の中で、最も低いガラス転移温度(Tg)の値以下を示す。
【0090】
[分離工程]
ステップs8の分離工程では、洗浄後の合一樹脂粒子を含有する水性媒体の混合物から、合一樹脂粒子を分離し回収する。水性媒体からの合一樹脂粒子の分離は、特に限定されるものではないが、たとえば、濾過、吸引濾過、遠心分離などによって行うことができる。
【0091】
[乾燥工程]
ステップs9の乾燥工程では、洗浄、分離後の合一樹脂粒子を乾燥させる。合一樹脂粒子の乾燥は、特に限定されるものではないが、凍結乾燥法、気流式乾燥法などによって実施できる。
【0092】
以上のような本発明の製造方法によって作製される合一樹脂粒子は、前述したように、粒度分布幅が狭く、粒界のない耐久性の高い合一樹脂粒子であるので、トナーや液晶用樹脂スペーサなどに好適に使用することができる。また、本発明の製造方法によって作製される合一樹脂粒子をトナーとして使用した場合には、粒界のない耐久性の高いトナー粒子となるので、現像槽などでの長期間の撹拌に耐えることが可能なトナーとなる。
【0093】
次に、本発明の製造方法によって作製される合一樹脂粒子をトナーとして使用する場合の具体例について以下に説明する。
【0094】
本発明のトナーには、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましく、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0095】
外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し1〜10重量部であることが好ましく、5重量部以下がより好適である。また、外添剤は、一次粒子の個数平均粒子径が10〜500nmであることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることによって、トナーの流動性向上効果が一層発揮され易くなる。
【0096】
以上のようにして、必要に応じて外添剤が外添されるトナーは、そのまま一成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して二成分現像剤として使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。また一成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。
【0097】
二成分現像剤として使用する場合、本発明のトナーをキャリアとともに用いる。本発明のトナーは前述したように、現像槽などでの長期間の撹拌に耐えることが可能なトナーである。このようなトナーを含む二成分現像剤は、長期間にわたって帯電安定性が高い二成分現像剤となる。
【0098】
キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアシド、ポリビニルラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれも、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0099】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。また、キャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0100】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0101】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm)を例にとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
【0102】
図4は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置100においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置100は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0103】
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像手段14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像手段14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11の回転方向まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像手段14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
【0104】
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0105】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
【0106】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。
【0107】
これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上200重量部以下である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0108】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2.5μm以下である。
【0109】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。
【0110】
電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10重量部以上300重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上150重量部以下である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0111】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0112】
このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10μm以上50μm以下、さらに好ましくは15μm以上40μm以下である。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0113】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
【0114】
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
【0115】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像手段14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLED(Light Emitting Diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0116】
図5は、本発明の現像装置である現像手段14の構成を示す図である。現像手段14は、本発明のトナーを含む現像剤、または二成分現像剤を用いて現像を行う。本発明のトナーは、前述したように、離型剤などの低融点成分が表面に露出するのが防止されたトナーである。このようなトナーを含む現像剤を用いて現像を行う現像手段14は、感光体ドラム11表面へのフィルミングを抑止することが可能であり、そのため画像不良の発生を防止することができる。
【0117】
現像手段14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ22、供給ローラ23、撹拌ローラ24などのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ22が回転駆動可能に設けられる。
【0118】
現像ローラ22は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ22表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ22表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。
【0119】
供給ローラ23は現像ローラ22を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ22周辺にトナーを供給する。撹拌ローラ24は供給ローラ23を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ23周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
【0120】
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置100においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0121】
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0122】
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。
【0123】
フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
【0124】
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0125】
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。
【0126】
定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
【0127】
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。
【0128】
レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置100内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0129】
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0130】
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。
【0131】
外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
【0132】
本発明のトナーを含む現像剤を用いて現像を行う現像手段14を備える画像形成装置100によって画像を形成することにより、長期にわたって安定して高画質な画像を得ることができる。
【0133】
(実施例)
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。実施例および比較例における各物性値は、以下に示すようにして測定した。
【0134】
<樹脂の軟化温度(T1/2)>
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−500C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gをシリンダに挿入し、ダイから押出されるように荷重10kgf/cm(0.980665MPa)を与えながら、昇温速度毎分6℃(6℃/min)で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度を軟化温度として求めた。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものを用いた。
【0135】
<凝集樹脂粒子の体積平均粒子径>
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター株式会社製)50mlに、凝集樹脂粒子20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)を用いて、超音波周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:MultisizerIII、ベックマン・コールター株式会社製)を用い、アパーチャ径100μm、測定粒子数50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から凝集樹脂粒子の体積平均粒子径を求めた。
【0136】
<凝集樹脂粒子の比熱>
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、200℃まで昇温し、200℃から速度10℃/分で0℃まで降温して冷却した試料を10℃/分で昇温した時に示すピークのチャートを求め、凝集樹脂粒子の比熱を求めた。水の比熱を4.2J/g・℃とし、下記式(1)に従い、凝集樹脂粒子スラリーの比熱を計算した。
C1=(C2×M/100)+(C3×(100−M)/100) …(1)
[式中、C1は凝集樹脂粒子スラリーの比熱(J/g・℃)を示し、C2は凝集樹脂粒子の比熱(J/g・℃)を示し、C3は水の比熱を示し、Mは凝集樹脂粒子スラリー中の凝集樹脂粒子の重量割合(重量%)を示す。]
【0137】
<実施例および比較例のトナーの作製>
(実施例1)
[樹脂微粒子調製工程]
(溶融混練工程)
ポリエステル(結着樹脂、ガラス転移温度(Tg)63.8℃、軟化温度(T1/2)120℃、Mw=82000)79重量部、マスターバッチ(C.I.Pigment Blue15:3を40重量%含有)16重量部、パラフィンワックス(離型剤、商品名:HNP11、日本精鑞株式会社製、融点68℃)4重量部、およびアルキルサリチル酸金属塩(帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)1重量部を、ヘンシェルミキサによって10分間混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)を用いて溶融混練を行い、溶融混練物1を得た。
【0138】
(粗粉砕工程)
溶融混練工程で得られた溶融混練物1の900重量部を、分散剤(商品名:ニューコール10N(固形分濃度25.8%)、日本乳化剤株式会社製)120重量部、湿潤剤(商品名:エアロール(固形分濃度72.0%)、東邦化学工業株式会社製)2重量部、イオン交換水1978重量部とともにPUCコロイドミル(商品名、日本ボールバルブ株式会社製)へ投入し、湿式粉砕して溶融混練物の粗粉スラリー1を得た。
【0139】
(粉砕工程、樹脂微粒子冷却工程、樹脂微粒子減圧工程)
次に、高圧ホモジナイザnano3000で、以下の粉砕条件において、溶融混練物の粗粉スラリー1に含まれる溶融混練物を粉砕して微粒子化し、冷却し、減圧することによって樹脂微粒子スラリー1を得た。
【0140】
<粉砕条件>
圧力:167MPa
設定温度:190℃
ノズル径:0.07mm
【0141】
[樹脂粒子凝集工程]
樹脂微粒子調製工程で得られた樹脂微粒子スラリー1の600重量部に、凝集剤(1級塩化ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)22.2重量部を加え、クレアミックスWモーションを用いて以下の凝集条件で樹脂微粒子スラリー1に含まれる樹脂微粒子を凝集させることで、凝集樹脂粒子1の水分散体(比熱:4.8J/g・℃)を作製した。得られた水分散体中の凝集樹脂粒子1の体積平均粒子径は、5.0μmであった。
【0142】
<凝集条件>
到達温度:62℃
昇温速度:1.5℃/min
回転数(ロータ/ステータ):18000rpm/0rpm
設定温度保持時間:10分間
【0143】
[合一化工程]
凝集樹脂粒子1の水分散体500重量部に分散剤(商品名:ニューコール10N(固形分濃度25.8%)、日本乳化剤株式会社製)を5重量部加え、モーノポンプ(加圧装置、商品名:ヘイシンモーノポンプ、兵神装備株式会社製)で0.5MPaに加圧し、圧力を維持した状態で、130(凝集樹脂粒子の軟化温度+10)℃に加熱し、管内径3.0mmのコイル状配管内を流量200mL/minで1分間流過させて、合一樹脂粒子1の水分散体を得た。
【0144】
[冷却前減圧工程]
入口から内径0.5mm、1.5mm、0.75mm、1.5mm、1.0mmのパイプ状の減圧部材が順に配置された多段減圧装置を用いて、合一樹脂粒子1の水分散体をパイプ状減圧部材内に流過させ、0.3MPaまで減圧した。このとき、温度は、120℃であった。
【0145】
[冷却工程]
内部配管として耐圧配管を備えたリービッヒ冷却器を用いて、0.3MPaまで減圧された合一樹脂粒子1の水分散体を内部配管内に流過させ、30℃まで冷却した。このとき、圧力は、0.3MPaであった。
【0146】
[減圧工程]
入口から内径1.0mmのパイプ状の減圧部材が配置された多段減圧装置を用いて、合一樹脂粒子1の水分散体をパイプ状減圧部材内に流過させ、大気圧まで減圧した。このとき、温度は、28℃であった。
【0147】
以上のようにして得られた合一樹脂粒子1の水分散体を、イオン交換水で充分に洗浄した後乾燥させることで合一樹脂粒子であるトナー粒子1を得て、このトナー粒子1を実施例1のトナー1とした。
【0148】
(実施例2)
合一化工程における処理圧力を15.0MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナー2を得た。
【0149】
(実施例3)
合一化工程における処理圧力を5.0MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のトナー3を得た。
【0150】
(実施例4)
合一化工程における処理圧力を1.0MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のトナー4を得た。
【0151】
(実施例5)
合一化工程における処理圧力を2.0MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のトナー5を得た。
【0152】
(実施例6)
合一化工程における処理圧力を1.5MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のトナー6を得た。
【0153】
(実施例7)
樹脂粒子凝集工程における到達温度を56℃にして得た凝集樹脂粒子6の水分散体(比熱:4.8J/g・℃、体積平均粒子径:2.8μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のトナー7を得た。
【0154】
(実施例8)
樹脂粒子凝集工程における到達温度を57℃にして得た凝集樹脂粒子7の水分散体(比熱:4.8J/g・℃、体積平均粒子径:3.0μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のトナー8を得た。
【0155】
(実施例9)
樹脂粒子凝集工程における到達温度を67℃にして得た凝集樹脂粒子8の水分散体(比熱:4.8J/g・℃、体積平均粒子径:7.0μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のトナー9を得た。
【0156】
(実施例10)
樹脂粒子凝集工程における到達温度を68℃にして得た凝集樹脂粒子9の水分散体(比熱:4.8J/g・℃、体積平均粒子径:7.2μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のトナー10を得た。
【0157】
(実施例11)
合一化工程における加熱温度を105(凝集樹脂粒子の軟化温度−15)℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のトナー11を得た。
【0158】
(実施例12)
合一化工程における加熱温度を110(凝集樹脂粒子の軟化温度−10)℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12のトナー12を得た。
【0159】
(実施例13)
合一化工程における加熱温度を200(凝集樹脂粒子の軟化温度+80)℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のトナー13を得た。
【0160】
(実施例14)
合一化工程における加熱温度を205(凝集樹脂粒子の軟化温度+85)℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例14のトナー14を得た。
【0161】
(実施例15)
比熱が4.25J/g・℃の凝集樹脂粒子の水分散体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例15のトナー15を得た。
【0162】
(実施例16)
比熱が4.30J/g・℃の凝集樹脂粒子の水分散体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例16のトナー16を得た。
【0163】
(実施例17)
比熱が8.0J/g・℃の凝集樹脂粒子の水分散体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例17のトナー17を得た。
【0164】
(実施例18)
比熱が8.05J/g・℃の凝集樹脂粒子の水分散体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例18のトナー18を得た。
【0165】
(比較例1)
合一化工程における処理圧力を0.45MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のトナーH1を製造した。
【0166】
(比較例2)
合一化工程における処理圧力を15.05MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のトナーH2を製造した。
【0167】
(比較例3)
合一化工程をシングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)で、6時間80℃で撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のトナーH3を製造した。
【0168】
<評価>
実施例1〜18および比較例1〜3のトナーについて、以下に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0169】
[合一化時間]
実施例、および比較例の条件で、5分未満で合一化処理が完了したものを「○」、5分以上、もしくは、処理できなかったためトナーが得られなかったものを「×」とした。
【0170】
[トナーの粒径分布]
実施例、および比較例の条件で得られたトナーの体積平均粒子径の変動係数と、凝集樹脂粒子の体積平均粒子径の変動係数との変化率が5%未満のものを「○」、変化率が5%以上10%未満のものを「△」、変化率が10%以上のものを「×」とした。
【0171】
[トナーの合一性]
100mlビーカーに、トナー2.0g、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlおよび純水50mlを加えて良く撹拌し、分散液を調製した。この分散液を、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)により出力50μAにて5分間処理し、さらに分散させた。6時間静置して上澄み液を取り除いた後、純水50mlを加え、マグネチックスターラにて5分間撹拌した後、メンブランフィルター(口径1μm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブランフィルター上の洗浄物をシリカゲル入りデシケーターにて約一晩、真空乾燥した。
【0172】
このようにして表面を洗浄したトナー粒子の表面に、スパッタ蒸着により金属膜(Au膜、膜厚0.5μm)を形成した。この金属膜被覆試料から、走査型電子顕微鏡(商品名:S−570、株式会社日立製作所製)により、加速電圧5kVで、また1000倍の倍率で、無作為に200〜300個を抽出して写真撮影を行った。この電子顕微鏡写真データを、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)で画像解析した。画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析パラメータは、小図形除去面積:100画素、収縮分離:回数1;小図形:1;回数:10、雑音除去フィルタ:無、シェーディング:無、結果表示単位:μmとした。これより得られた粒子の最大長(MXLNG)、周囲長(PERI)、図形面積(AREA)から、下記式(2)によって形状係数SF−2を得た。
SF−2={(PERI)/AREA}×(100/4π) …(2)
【0173】
SF2が、100以上115未満のものを「○」、115以上130未満のものを「△」、130以上のものを「×」とした。なお、表1中の「−」は、トナーが製造できずに評価できなかったことを示す。
【0174】
【表1】

【0175】
表1から明らかに、実施例1〜18のトナーは、粒界の発生が防止された状態で、短時間で合一化された合一樹脂粒子であることがわかる。なお、撹拌および加熱による従来の合一化方法でトナー粒子を製造した比較例3では、粒界のない状態で合一化させるのに要する時間が長かった。
【0176】
次に、上記実施例および比較例で得られたトナーを含む二成分現像剤を用いて、以下の評価を行い、その結果を表2にまとめた。
【0177】
<二成分現像剤の作製>
キャリアとして、体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対する実施例および比較例のトナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて40分間混合して、実施例1〜18および比較例1〜3のトナーを含む二成分現像剤を作製した。
【0178】
<評価>
[画像再現性]
実施例、および比較例で得られたトナーを含む二成分現像剤を、複写機(シャープ株式会社製:MX−7001N)にそれぞれ充填し、画像濃度が0.3であり、直径が5mmであるハーフトーン画像を画像濃度0.3以上0.5以下で複写できる条件において、線幅が正確に100μmである細線のオリジナル画像が形成されている原稿を記録媒体に複写し、得られたコピー画像を測定サンプルとした。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)によって測定される光学反射濃度である。
【0179】
この測定サンプルに形成された細線を粒子アナライザ(商品名:ルーゼックス450、株式会社ニレコ製)によって100倍に拡大し、100倍に拡大された細線が映し出されたモニタ画像から、インジケータによって、コピー画像に形成された細線の線幅を測定した。
【0180】
コピー画像に形成された細線には凹凸があり、その細線の線幅は測定位置によって異なるので、複数の測定位置において線幅を測定して、線幅の平均値を算出し、この線幅の平均値をコピー画像に形成された細線の線幅とした。このとき、転写不良などで100μmに満たない線幅はカウントせず、線幅の平均値を算出する際に100μm未満である線幅の値は用いなかった。コピー画像に形成された細線の線幅を、オリジナル画像の線幅である100μmで除し、得られた値を100倍したものを細線再現性の値とした。細線再現性の値が100に近いほど、細線の再現性がよく、画像再現性に優れ、解像性に優れるので、画像再現性が良好であることを示す。
【0181】
画像再現性を以下の評価基準に基づいて評価した。
○:良好。細線再現性の値が100以上105未満である。
△:可。細線再現性の値が105以上110未満である。
×:不良。細線再現性の値が110以上である。
【0182】
[長期での画像再現性]
実施例、および比較例で得られたトナーを含む二成分現像剤を複写機(シャープ株式会社製:MX−7001N)にそれぞれ充填し、連続して10000枚印字後、前記画像再現性と同様にして、画像評価した。
【0183】
[総合評価]
上記の種々の評価結果を、○:2点、△:1点、×:0点として合計した得点により、総合評価を次の基準で評価した。
◎:合計点数が7点以上。
○:合計点数が6点である。
△:合計点数が5点である。
×:合計点数が4点以下もしくは×が1つ以上ある。
【0184】
【表2】

【0185】
表2から明らかに、実施例1〜18のトナーを含む二成分現像剤を用いた場合には、長期にわたって画像再現性に優れたものであった。
【0186】
<実施例および比較例の液晶用樹脂スペーサの作製>
(実施例19)
[樹脂微粒子調製工程]
(粗粉砕工程)
ポリエステル(結着樹脂、ガラス転移温度(Tg)63.8℃、軟化温度(T1/2)120℃、Mw=82000)の900重量部を、分散剤(商品名:ニューコール10N(固形分濃度25.8%)、日本乳化剤株式会社製)120重量部、湿潤剤(商品名:エアロール(固形分濃度72.0%)、東邦化学工業株式会社製)2重量部、イオン交換水1978重量部とともにPUCコロイドミル(商品名、日本ボールバルブ株式会社製)へ投入し、湿式粉砕して粗粒子スラリー19を得た。
【0187】
(粉砕工程、樹脂微粒子冷却工程、樹脂微粒子減圧工程)
次に、高圧ホモジナイザnano3000で、以下の粉砕条件において、粗粒子スラリー19に含まれる樹脂を粉砕して微粒子化し、冷却し、減圧することによって樹脂微粒子スラリー19を得た。
【0188】
<粉砕条件>
圧力:210MPa
設定温度:190℃
ノズル径:0.07mm
【0189】
[樹脂粒子凝集工程]
樹脂微粒子調製工程で得られた樹脂微粒子スラリー19の600重量部に凝集剤(1級塩化ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)22.2重量部を加え、クレアミックスWモーションを用いて以下の凝集条件で樹脂微粒子スラリー19に含まれる樹脂微粒子を凝集させることで、凝集樹脂粒子19の水分散体(比熱:5.0J/g・℃)を作製した。得られた水分散体中の凝集樹脂粒子19の体積平均粒子径は、5.0μmであった。
【0190】
<凝集条件>
到達温度:62℃
昇温速度:1.5℃/min
回転数(ロータ/ステータ):18000rpm/0rpm
設定温度保持時間:10分間
【0191】
[合一化工程]
凝集樹脂粒子19の水分散体500重量部に分散剤(商品名:ニューコール10N(固形分濃度25.8%)、日本乳化剤株式会社製)を5重量部加え、モーノポンプ(加圧装置、商品名:ヘイシンモーノポンプ、兵神装備株式会社製)で1.5MPaに加圧し、圧力を維持した状態で、130(凝集樹脂粒子の軟化温度+10)℃に加熱し、管内径3.0mmのコイル状配管内を流量200mL/minで1分間流過させて、合一樹脂粒子19の水分散体を得た。
【0192】
[冷却前減圧工程]
入口から内径0.5mm、1.5mm、0.75mm、1.5mm、1.0mmのパイプ状の減圧部材が順に配置された多段減圧装置を用いて、合一樹脂粒子19の水分散体をパイプ状減圧部材内に流過させ、1MPaまで減圧した。このとき、温度は、120℃であった。
【0193】
[冷却工程]
内部配管として耐圧配管を備えたリービッヒ冷却器を用いて、1MPaまで減圧された合一樹脂粒子19の水分散体を内部配管内に流過させ、30℃まで冷却した。このとき、圧力は、0.9MPaであった。
【0194】
[減圧工程]
入口から内径1.0mmのパイプ状の減圧部材が配置された多段減圧装置を用いて、合一樹脂粒子19の水分散体をパイプ状減圧部材内に流過させ、大気圧まで減圧した。このとき、温度は、28℃であった。
【0195】
以上のようにして得られた合一樹脂粒子19の水分散体を、イオン交換水で充分に洗浄した後乾燥させることで合一樹脂粒子19を得た。
【0196】
[分級工程]
合一樹脂粒子19から、ロータリー式分級機で粗大粒子を分級除去することによって、実施例19の樹脂スペーサを得た。
【0197】
(比較例4)
合一化工程における処理圧力を0.45MPaとし、冷却前減圧工程における処理圧力を0.3MPaとしたこと以外は実施例19と同様にした。
【0198】
(比較例5)
合一化工程における処理圧力を15.05MPaとしたこと以外は実施例19と同様にした。
【0199】
<評価>
実施例19および比較例4,5で得られた樹脂スペーサを用いて、以下に示す評価を行い、その結果を表3にまとめた。
【0200】
[樹脂スペーサの製造安定性]
実施例、および比較例の条件で、安定して運転でき樹脂スペーサが得られたものを○、運転できずに樹脂スペーサが得られなかったものを×とした。
【0201】
[形状係数SF1(真球度)、形状係数SF2(凸凹度)]
100mlビーカーに、樹脂スペーサ2.0g、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlおよび純水50mlを加えて良く撹拌し、分散液を調製した。この分散液を、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)により出力50μAにて5分間処理し、さらに分散させた。6時間静置して上澄み液を取り除いた後、純水50mlを加え、マグネチックスターラにて5分間撹拌した後、メンブランフィルター(口径1μm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブランフィルター上の洗浄物をシリカゲル入りデシケーターにて約一晩、真空乾燥した。
【0202】
このようにして表面を洗浄した樹脂スペーサ粒子の表面に、スパッタ蒸着により金属膜(Au膜、膜厚0.5μm)を形成した。この金属膜被覆試料から、走査型電子顕微鏡(商品名:S−570、株式会社日立製作所製)により、加速電圧5kVで、また1000倍の倍率で、無作為に200〜300個を抽出して写真撮影を行った。この電子顕微鏡写真データを、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)で画像解析した。画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析パラメータは、小図形除去面積:100画素、収縮分離:回数1;小図形:1;回数:10、雑音除去フィルタ:無、シェーディング:無、結果表示単位:μmとした。これより得られた粒子の最大長(MXLNG)、周囲長(PERI)、図形面積(AREA)から、下記式(3)、(4)によって形状係数SF−1、SF−2を得た。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) …(3)
SF−2={(PERI)2/AREA}×(100/4π) …(4)
SF1およびSF2については、100〜105を○、それ以外×とした。
【0203】
[総合評価]
上記の種々の評価結果を、○:2点、△:1点、×:0点として合計した得点により、総合評価を次の基準で評価した。
◎:合計点数が5点以上。
○:合計点数が4点である。
△:合計点数が3点である。
×:合計点数が3点以下もしくは×が1つ以上ある。
【0204】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の実施の一形態である合一樹脂粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】高圧ホモジナイザ200の構成を示す図である。
【図3】凝集樹脂粒子から合一樹脂粒子を作製する合一化処理装置300の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。
【図5】本発明の現像装置である現像手段14の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0206】
2 トナー像形成手段
3 転写手段
4 定着手段
5 記録媒体供給手段
6 排出手段
11 感光体ドラム
12 帯電手段
13 露光ユニット
14 現像手段
15 クリーニングユニット
100 画像形成装置
200 高圧ホモジナイザ
300 合一化処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂を含む樹脂微粒子が凝集した凝集樹脂粒子が液状媒体中に分散した凝集樹脂粒子スラリーを、所定の温度に加熱した状態で、圧力が0.5MPa以上15MPa以下となるように加圧して配管内を流過させ、凝集樹脂粒子が合一化した合一樹脂粒子が液状媒体中に分散した合一樹脂粒子スラリーを得る合一化工程と、
配管内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子スラリーを、所定の温度まで冷却し、かつ所定の圧力まで減圧する冷却減圧工程とを含むことを特徴とする合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記冷却減圧工程は、
配管内を流過する加熱加圧状態にある合一樹脂粒子スラリーを、大気圧より高く、合一化工程における圧力より低い圧力に減圧する冷却前減圧工程と、
配管内を流過して冷却前減圧工程において減圧された合一樹脂粒子スラリーを所定の温度まで冷却する冷却工程と、
配管内を流過して冷却工程において冷却された合一樹脂粒子スラリーを大気圧まで減圧する減圧工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
合一化工程では、前記圧力が、0.5MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
合一化工程では、前記圧力が、1MPa以上2MPa以下である特徴とする請求項1または2に記載の合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
合一化工程では、前記所定の温度が、((凝集樹脂粒子の軟化点)−10)℃以上、((凝集樹脂粒子の軟化点)+80)℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
凝集樹脂粒子スラリーの比熱が4.3J/g・℃以上、8.0J/g・℃以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
凝集樹脂粒子の体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の合一樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の合一樹脂粒子の製造方法によって製造されることを特徴とする合一樹脂粒子。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の合一樹脂粒子の製造方法によって製造されるトナー粒子により構成されることを特徴とするトナー。
【請求項10】
請求項9に記載のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項11】
請求項9に記載のトナーを含む現像剤、または請求項10に記載の二成分現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−31096(P2010−31096A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192880(P2008−192880)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】