説明

合成シリカガラスの製造方法及び合成シリカガラス

【課題】断面内の屈折率を均等化できる合成シリカガラス及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】合成シリカガラスは、100ppm以上のF元素と、1ppm以上でありかつF元素の含有量の−β/α(式中、αはCl元素1ppmあたり変化する屈折率の値、βはF元素1ppmあたり変化する屈折率の値)倍以下であるCl元素とを含み、屈折率(nd)1.45850をリファレンスとしたときの断面内の比屈折率差が0.01%以下である。合成シリカガラスは、多孔質シリカ原料にフッ素をドープし、透明化されてなり、ドープは、多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む所定温度の雰囲気に配置することで行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成シリカガラスの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ等の光学部材等の素材は、従来、以下のような方法で製造されている。まず、VAD(Vapor phase Axial Deposition)法で合成した多孔質シリカ原料をガラス化装置で脱水及び透明化して合成シリカガラスを作製し、又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法で合成シリカガラスを作製し、次に、その合成シリカガラスを例えば酸水素火炎もしくは電気炉で加熱延伸することでガラスロッドを作製する。
【0003】
得られたガラスロッドに、さらにVAD法等によりシリカガラス粒子を堆積させて多孔質シリカ原料を形成し、ガラス化装置で脱水及び透明化を行うことで、プリフォームを作製する。
【0004】
多孔質シリカ原料を加熱処理する工程で、雰囲気中のフッ化塩素ガスの分圧を高くすると、プリフォームにドープされるフッ素の量が多くなり、負の比屈折率差を形成することができる。特許文献1〜4には、多孔質シリカ原料をSF、SiF、Si、Si等のフッ素ガス雰囲気に配置することで、フッ素をドープした具体例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−199517号公報
【特許文献2】特開2002−114522号公報
【特許文献3】特開2002−316831号公報
【特許文献4】特開2008−189482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の方法では、塩素処理(脱水目的)後にフッ素処理を行うため、フッ素処理時に塩素がフッ素に置換され、塩素が屈折率分布に寄与しない。特許文献1、3及び4の方法では、原料に塩素を含むSiCl等を使用しても多孔質シリカ原料に含有される塩素は少なく、フッ素処理時に塩素がフッ素に置換され、塩素は屈折率分布に寄与しない。また、SiF等を使用するために高温処理が必要であり、これにより多孔質シリカ原料の収縮、つまり嵩密度の増加が発生し、均一なドープが困難になる。このため、多孔質シリカ原料の長軸方向においては加熱処理を制御することにより長軸方向の屈折率分布が均一となるが、断面方向においてはシリカガラスの比屈折率差が合成シリカガラスの断面内において不均一であるため、得られる合成シリカガラスロッド内の断面方向の屈折率が不均等になりやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、合成シリカガラス内の屈折率を均等化できる合成シリカガラスの製造方法及び合成シリカガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む雰囲気に配置することで、形成される比屈折率差の大きさがシリカガラス内において均等化することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 100ppm以上のF元素と、1ppm以上でありかつF元素の含有量の−β/α(式中、αはCl元素1ppmあたり変化する屈折率の値、βはF元素1ppmあたり変化する屈折率の値)倍以下であるCl元素とを含み、屈折率(nd)1.45850をリファレンスとしたときの断面内の比屈折率差が0.01%以下である合成シリカガラス。
【0010】
(2) 多孔質シリカ原料にフッ素をドープし、透明化されてなり、
前記ドープは、前記多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む所定温度の雰囲気に配置することで行う(1)記載の合成シリカガラス。
【0011】
(3) 前記所定温度は800℃未満である(2)記載の合成シリカガラス。
【0012】
(4) 前記所定温度は前記フッ化塩素の沸点以上である(2)又は(3)記載の合成シリカガラス。
【0013】
(5) 前記多孔質シリカ原料は、0.2g/cm以上1.2g/cm以下の密度を有する(2)から(4)いずれか記載の合成シリカガラス。
【0014】
(6) 前記フッ化塩素ガスの分圧が1.0気圧以下で製造される(2)から(5)いずれか記載の合成シリカガラス。
【0015】
(7) 前記フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧超4.0気圧以下の圧力へと加圧してなる(2)から(5)いずれか記載の合成シリカガラス。
【0016】
(8) 前記透明化を、ドーパントが実質的に存在しない雰囲気で行ってなる(2)から(7)いずれか記載の合成シリカガラス。
【0017】
(9) 多孔質シリカ原料にフッ素をドープし、透明化する合成シリカガラスの製造方法であって、
前記ドープは、前記多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む所定温度の雰囲気に配置することで行う製造方法。
【0018】
(10) 前記所定温度は800℃未満である(9)記載の製造方法。
【0019】
(11) 前記所定温度は前記フッ化塩素の沸点以上である(9)又は(10)記載の製造方法。
【0020】
(12) 前記多孔質シリカ原料は、0.2g/cm以上1.2g/cm以下の密度を有する(9)から(11)いずれか記載の製造方法。
【0021】
(13) 前記フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧以下とする(9)から(12)いずれか記載の製造方法。
【0022】
(14) 前記フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧超4.0気圧以下の圧力へと加圧する工程をさらに有する(9)から(12)いずれか記載の製造方法。
【0023】
(15) 前記透明化は、ドーパントが実質的に存在しない雰囲気で行う(9)から(14)いずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む雰囲気に配置することで、形成される比屈折率差の大きさが断面内において均等化する。このようにして、1ppm以上でありかつF元素の含有量の−β/α(式中、αはCl元素1ppmあたり変化する屈折率の値、βはF元素1ppmあたり変化する屈折率の値)倍以下であるCl元素とを含み、屈折率(nd)1.45850をリファレンスとしたときの断面内の比屈折率差が0.01%以下である合成シリカガラスが得られ、断面内の屈折率の均等化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を説明するが、これが本発明を限定するものではない。
【0026】
本発明に係る合成シリカガラスの製造方法は、多孔質シリカ原料にフッ素をドープし、透明化する工程を有する。フッ素がドープされることで負の比屈折率差が形成されるため、屈折率が小さい合成シリカガラスを得ることができる。ここでSF、SiF、Si、Si等の従来のフッ素含有ガスを用いると、形成される比屈折率差の大きさが合成シリカガラスの断面内において不均一であるため、得られる合成シリカガラスの断面内の屈折率が不均等になりやすい。
【0027】
これに対し、本発明では、ドープを、フッ化塩素ガスを含む所定温度の雰囲気に多孔質シリカ原料を配置することで行う。これにより、形成される比屈折率差の大きさが断面内において均等化するため、断面内の屈折率を均等化できる合成シリカガラスを製造することができる。なお、本発明における「断面」とは、棒状である多孔質シリカ原料の長軸に略垂直な断面を指し、かかる断面内の全箇所は製造過程において互いに略同じ処理履歴を経る。
【0028】
その作用を、フッ化塩素ガスの一例であるClFを用いた場合を例示して説明する。雰囲気中のClFが多孔質シリカ原料表面のSiOHに接触すると、そのSiOHがSiOF、SiFもしくはSiCl、SiOClへと変化し、表面にフッ素もしくは塩素がドープされる。このとき、副産物としてHF及びHClが生成する。HFは多孔質シリカ原料内部のSi−O−Si結合を破壊し、そこへClFガスが供給されることによりSiF、SiOFの形でフッ素がドープされる。同様にClガスが供給されることによりSiClやSiOClの形で塩素がドープされる。多孔質シリカ原料の処理ガス接触はフッ素及び塩素に限らず同程度であり、特定量のフッ素がドープされる箇所には、特定量の塩素もドープされる。これにより、フッ素による負の比屈折率差の一部が、塩素による正の比屈折率差により相殺されるため、比屈折率差の大きさが断面内において均等化する。
【0029】
フッ化塩素ガスは、ClFに限らず、上記のような作用を呈するものであれば、特に限定されず、例えば、ClF、ClF等であってよく、1種又は2種以上を組み合わせて使用してよい。また、ドープ時の雰囲気は、フッ化塩素ガスに限らず他のガスを含んでよい。
【0030】
多孔質シリカ原料は、従来公知の方法、例えばVAD(Vapor phase Axial Deposition)法で合成したものであってよい。
【0031】
フッ化塩素ガスを含む雰囲気の所定温度は、過大であると、多孔質シリカ原料の密度が大きく増加し、多孔質シリカ原料内部へのドープが不充分になりやすい一方、過小であると、フッ化塩素の気体での供給量が少なくなり、ドープ効率が低下する。そこで、所定温度は、800℃未満であることが好ましく、より好ましくは500℃以下であり、フッ化塩素の沸点(例えば、ClFであれば11.75℃)以上であることが好ましい。フッ化塩素ガスは、SiF等の従来の処理ガスと比較して低温処理が可能であるため、多孔質シリカ原料の収縮が抑制される。これにより、嵩密度の増加を抑制され、均一ドープ、高濃度ドープが可能となる。また、HF及びHClがイオン化して多孔質シリカ原料内部へと侵入しやすい点で、雰囲気の所定温度は100℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上である。
【0032】
多孔質シリカ原料の密度は、過大であると、多孔質シリカ原料内部へのドープが不充分になりやすい点を考慮し、適宜設定されてよい。ただし、前述のように、本発明では、従来のガス(1000〜1200℃)に比べて低温でフッ素ドープが可能であるため、従来許容されるよりも高い密度の多孔質シリカ原料を使用することもできる。具体的に、多孔質シリカ原料の密度の下限は、0.2g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.3g/cmであり、最も好ましくは0.4g/cmである。多孔質シリカ原料の密度の上限は、1.2g/cmであることが好ましく、より好ましくは1.1g/cmであり、最も好ましくは1.0g/cmである。なお、本明細書における多孔質シリカ原料の密度は、非接触式の形状測定装置を用いて多孔質シリカ原料の体積を測定し、その体積と重量から嵩密度を算出することで得られる。
【0033】
ドープ時のフッ化塩素ガスの分圧は、高くなるにつれ、多孔質シリカ原料内部へのドープが促進される一方、過大であると、設備及びコストの観点で不利である。前述のように、本発明では、フッ化塩素ガスを用いることで多孔質シリカ原料内部へのドープが既に容易であるため、雰囲気を加圧する工程を行わなくてもよい。即ち、フッ化塩素ガスの分圧は1.0気圧以下であってよい。かかる態様では、加圧のための設備及びコストを削減することができる。ただし、フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧超4.0気圧以下の圧力へと加圧することは、簡便な加圧設備及び低コストで多孔質シリカ原料内部へのドープをより促進できる点で好ましい。かかる加圧時のフッ化塩素ガスの分圧の下限は、より好ましくは1.1気圧、最も好ましくは2.0気圧であり、上限は、より好ましくは4.0気圧、最も好ましくは3.0気圧である。
【0034】
次に、フッ素がドープされた多孔質シリカ原料を透明化する。これにより、屈折率が低下した透明な合成シリカガラスが得られる。透明化は、従来公知の条件に従ってよく、特に限定されないが、例えば、多孔質シリカ原料を約1000〜約1300℃で約1〜約20時間に亘り加熱し、さらに約1350〜約1600℃で加熱してよい。透明化の間、加圧をしてもよく、減圧をしてもよい。
【0035】
透明化は、ドープと同一雰囲気で行ってもよく、あるいは異なる雰囲気で行ってもよい。後者は、フッ素がドープされた多孔質シリカ原料を、予め形成しておいた雰囲気に移すだけで、透明化を開始できるので、製造時間を短縮できる点で好ましい。後者の場合、透明化時の雰囲気にはドーパントが実質的に存在しないことが一般的である。なお、ここでいう「実質的に存在しない」とは、全く存在しないのみならず、不可避的に存在する量(例えば、多孔質シリカ原料の表面から僅少量のドーパントが雰囲気へと逃避する)程度で存在することも包含する。
【0036】
なお、ドープ及び透明化に用い得る装置は、従来周知であるため、その説明を省略する。
【0037】
このようにして製造される合成シリカガラスは、光ファイバ、光学系装置のレンズ、ミラー、プリズム、窓部材等の光学部材として有用である。
【0038】
本発明の方法で製造される合成シリカガラスは、100ppm以上のF元素と、1ppm以上でありかつF元素の含有量の−β/α(式中、αはCl元素1ppmあたり変化する屈折率の値、βはF元素1ppmあたり変化する屈折率の値)倍以下であるCl元素とを含み、屈折率(nd)1.45850をリファレンスとしたときの断面内の比屈折率差が0.01%以下である。なお、F元素及びCl元素の量はイオンクロマトグラフ分析により測定され、合成シリカガラスの断面における平均値である。
【0039】
また、断面内の比屈折率差は、合成シリカガラスの断面における重心と、外周より内側に10mmの任意の1箇所とにおける比屈折率の差である。比屈折率は、次の式に基づいて算出される。
屈折率A = α×Cl元素量(ppm) + β×F元素量(ppm) + 1.45850
(式中、αはCl元素含有量1ppmの変化による屈折率変化量の値であり、Cl元素濃度と屈折率との関数を近似曲線とし、その曲線における傾き、即ちSi−Clの場合1.3×10−7であり、
βは、F元素含有量1ppmの変化による屈折率変化量の値、F元素濃度と屈折率との関数を近似曲線とし、その曲線における傾き、即ちSi−Fの場合−3.8×10−7である。)
比屈折率 =(1.45850−屈折率A) / 1.45850 × 100
【0040】
F元素の含有量は100ppm以上、より好ましくは1000ppm以上、最も好ましくは2000ppm以上であり、所望の屈折率変化の程度、Cl元素の量等に依存して適宜選択される。一方、Cl元素の含有量は検出限界である1ppm以上、より好ましくは10ppm以上、最も好ましくは20ppm以上であり、F元素の含有量に対して−β/α倍以下である。
【0041】
断面内の比屈折率差は、合成シリカガラスの屈折率(nd)1.45850に対し0.01%以下であることが好ましく、より好ましくは0.005%以下である。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
VAD法で合成した密度0.5g/cmの多孔質シリカ原料の棒状体を公知のドープ装置のシリカガラス炉内に挿入した。シリカガラス炉内にはArガスを満たしておき、このシリカガラス炉内に、500℃に保ったClFガスを500sccm、560秒で供給し、0.3気圧(ClFガスの分圧)へと昇圧した。その後、シリカガラス炉内の条件を保ち4時間保持させた。その後、多孔質シリカ原料を1100〜1200℃に設定した別の炉内に挿入し、減圧下3〜10時間に亘って加熱し、その後1200〜1400℃に昇温し減圧下で10〜20時間に亘って加熱することで、透明化を行い、合成シリカガラスを得た。
【0043】
<実施例2>
ドープ時の温度を500℃ではなく150℃にし、ClFガス分圧を0.3気圧ではなく0.25気圧にした点を除き、実施例1と同様の手順で合成シリカガラスを得た。
【0044】
<実施例3>
ドープ時の温度を500℃ではなく800℃にし、ClFガス分圧を0.3気圧ではなく0.1気圧にした点を除き、実施例1と同様の手順で合成シリカガラスを得た。
【0045】
<実施例4>
VAD法で合成した密度0.5g/cmの多孔質シリカ原料を公知のドープ装置のシリカガラス炉内に挿入した。シリカガラス炉内にはArガスを満たしておき、このシリカガラス炉内を20℃に保った状態で、Arガスと置換しながらClFガスを500sccm、550秒流して0.9気圧(ClFガスの分圧)まで昇圧した。その後、シリカガラス炉内の条件を保ち330時間保持させた。その後、多孔質シリカ原料を1100〜1200℃に設定した別の炉内に挿入し、減圧下3〜10時間に亘って加熱し、その後1200〜1400℃に昇温し減圧下で10〜20時間に亘って加熱することで透明化を行い、合成シリカガラスを得た。
【0046】
(比較例1)
VAD法で合成した密度0.5g/cmの多孔質シリカ原料を公知のドープ装置のシリカガラス炉内に挿入した。シリカガラス炉内にはArガスを満たしておき、このシリカガラス炉内を500℃に保った状態で、Arガスと置換しながらSiFガスを500sccm、700秒流して0.3気圧(SiFガスの分圧)まで昇圧した。その後、シリカガラス炉内の条件を保ち4時間保持させた。その後、多孔質シリカ原料を1100〜1200℃に設定した別の炉内に挿入し、減圧下3〜10時間に亘って加熱し、その後1200〜1400℃に昇温し減圧下で10〜20時間に亘って加熱することで透明化を行い、合成シリカガラスを得た。
【0047】
(比較例2)
VAD法で合成した密度0.3g/cmの多孔質シリカ原料を公知のドープ装置のシリカガラス炉内に挿入した。シリカガラス炉内には窒素ガスを満たしておき、このシリカガラス炉内を1200℃に保った状態で、窒素ガス雰囲気にClガスを700sccm流し、8時間保持した。その後、シリカガラス炉内を1000℃に保った状態で、窒素ガス及び塩素ガス雰囲気に、SiFガスを500sccm流し、4時間保持した。その後、多孔質シリカ原料を1100〜1200℃に設定した別の炉内に挿入し、減圧下3〜10時間に亘って加熱し、その後1200〜1400℃に昇温し減圧下で10〜20時間に亘って加熱することで透明化を行い、合成シリカガラスを得た。
【0048】
[評価]
実施例1〜4及び比較例1〜2で得た合成シリカガラスについて、屈折率(nd)1.45850をリファレンスとしたときの断面の比屈折率差をデジタル精密屈折計によって測定した。また、F元素及びCl元素の含有量をイオンクロマトグラフ分析によって測定した。この結果を表1に示す。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
100ppm以上のF元素と、1ppm以上でありかつF元素の含有量の−β/α(式中、αはCl元素1ppmあたり変化する屈折率の値、βはF元素1ppmあたり変化する屈折率の値)倍以下であるCl元素とを含み、屈折率(nd)1.45850をリファレンスとしたときの断面内の比屈折率差が0.01%以下である合成シリカガラス。
【請求項2】
多孔質シリカ原料にフッ素をドープし、透明化されてなり、
前記ドープは、前記多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む所定温度の雰囲気に配置することで行う請求項1記載の合成シリカガラス。
【請求項3】
前記所定温度は800℃未満である請求項2記載の合成シリカガラス。
【請求項4】
前記所定温度は前記フッ化塩素の沸点以上である請求項2又は3記載の合成シリカガラス。
【請求項5】
前記多孔質シリカ原料は、0.2g/cm以上1.2g/cm以下の密度を有する請求項2から4いずれか記載の合成シリカガラス。
【請求項6】
前記フッ化塩素ガスの分圧が1.0気圧以下で製造される請求項2から5いずれか記載の合成シリカガラス。
【請求項7】
前記フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧超4.0気圧以下の圧力へと加圧してなる請求項2から5いずれか記載の合成シリカガラス。
【請求項8】
前記透明化を、ドーパントが実質的に存在しない雰囲気で行ってなる請求項2から7いずれか記載の合成シリカガラス。
【請求項9】
多孔質シリカ原料にフッ素をドープし、透明化する合成シリカガラスの製造方法であって、
前記ドープは、前記多孔質シリカ原料を、フッ化塩素ガスを含む所定温度の雰囲気に配置することで行う製造方法。
【請求項10】
前記所定温度は800℃未満である請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記所定温度は前記フッ化塩素の沸点以上である請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
前記多孔質シリカ原料は、0.2g/cm以上1.2g/cm以下の密度を有する請求項9から11いずれか記載の製造方法。
【請求項13】
前記フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧以下とする請求項9から12いずれか記載の製造方法。
【請求項14】
前記フッ化塩素ガスの分圧を1.0気圧超4.0気圧以下の圧力へと加圧する工程をさらに有する請求項9から12いずれか記載の製造方法。
【請求項15】
前記透明化は、ドーパントが実質的に存在しない雰囲気で行う請求項9から14いずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−246157(P2012−246157A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117713(P2011−117713)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】