説明

合成モルタル材料

多成分合成樹脂系、固定構成要素を固着するためのその使用及びその製造方法、及び明細書に記載された本発明に基づくさらなる実施態様、その際に多成分合成樹脂系は、その成分の少なくとも1つの中に1つ又は複数の微細分散したガスを含む。当該使用はとりわけ土木建築において行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分合成樹脂系、固定要素(Befestigungselementen)を固着する(Fixierung)ための前記系の使用及び前記系の製造方法、及び本発明の以下に挙げられたさらなる実施態様に関する。
【0002】
エポキシ合成樹脂系又はポリウレタン合成樹脂系又はラジカル硬化性合成樹脂系等のような多成分合成モルタルを、建築分野における固定材料として、特にアンカー固定要素(Verankerungselemente)用の接着剤として、使用することは知られている。
【0003】
例えば単純に、実地におけるこの種の多成分合成モルタルの取り扱いは − 例えばスタティックミキサーを備えたマルチチャンバカートリッジ、マルチチャンバパネトーネ又はマルチチャンババッグ又は他のマルチチャンバ系の形で使用する際に − それにも関わらずさらなる単純化、例えば、押込み力(Auspresskraft)を、及び製造する際の容器の充填に必要な圧力を減少させるための、排出する際のさらに改善された流動性、材料の減量等が望まれうる。特に、しばしば必要な高い押込み力は、使用者に疲れをまねきうるものであり、かつこの種の系の受け入れを妨害しうる。この種の系の価格を低下させるため、並びに収縮特性を改善するために、大きな割合の充填剤を考慮に入れることは普通である − しかしながら、例えばカートリッジから押し込むために必要とされる力が増大し、かつ安定性(クリープ、流れ落ち及びしたたりに対する耐性)は、増加する密度及びそれゆえより強い重力の作用に基づいて低下することを犠牲にして。後者は、特に、メッシュスリーブと組み合わせた空洞れんが(Hohlkammersteinen)中での使用の際に極めて不利でありうる。補充して又は選択的に増粘剤も添加されることができる − そうすれば確かに、安定性が増大するが、しかしながら新たに、押込み性が犠牲になるという欠点を伴う。すなわち − 一方では押込み性と他方では安定性との間に、常にジレンマが存在したままである。
【0004】
故に、本発明の課題は、改善された性質を、特に前の段落に挙げられた性質に関して、とりわけより低い密度、より少なく必要な押込み力及び/又は改善された安定性の方向で、有する、新規の多成分合成樹脂系を提供すること、並びにそのような性質を改善する方法を見出すことである。
【0005】
通常、公知のこの種の合成樹脂系の組成物は、遅くとも最終的に分包する(Abpackung)前に事実上完全に脱気される、それというのもとりわけ − 巨視的にも、例えば小気泡(Luftblaeschen)として目に見える − ガスポケット(Gaseinschluesse)が妨げになるとみなされるからであり、かつ凝離又は他の不均質性をまねきうるからである。
【0006】
ガス類又は空気のようなガス混合物の存在が、特に微細に分散された、好ましくは原子状態の(atomarer)形、分子状態の(molekularer)形及び/又は微細に(例えばミクロ)分散した形で、この種の固定材料中で許容されることができるだけでなく、むしろその際に安定性及び/又は押込み性に関して改善をもたらすことができるので、改善された取扱い性が見出されることができることが、目下意外にも見出された。前記のジレンマは、それゆえ意外にも克服されることができる:目下、同時に安定性及び押込み性が高められることができる。基体中の穴からのアンカー固定要素の引張強さ及び引抜き力(Auszugskraft)のような他の重要な機械的性質は、影響を受けないか又は関連があるほど影響を受けない。プラス効果は、相応する合成樹脂系が同じ体積で、より少ない質量でもあり(より低い密度)、こうして良好な固定作用の達成のためにより少ない材料装填が必要であることである。驚異的なことに、本発明による合成樹脂系はまた、小泡形成又はガス成分及び他の成分の部分的又は完全な分離のような凝離現象となることなく、卓越して貯蔵可能でもある。貯蔵性は、泡安定剤の添加によりさらに改善されることができる。
【0007】
本発明は、それゆえ、冒頭に記載された多成分合成樹脂系であって、前記成分の少なくとも1つが、1つ又は複数の(好ましくは原子状態で、分子状態で及び/又はミクロ分散して分布している)微細分散したガス類、特に空気を含む、多成分合成樹脂系に関する。
【0008】
前記ガス又はガス類の分布は、有利に、泡安定剤類(例えばシリコーン含有の泡安定剤類又は(特にこのことが望まれる特定の工業において)シリコーン不含の泡安定剤類)の添加により安定化されることができる。
【0009】
さらなる一実施態様において、本発明は、1つ又は複数の固定要素を基体中に固定するための多成分合成樹脂系の使用に関し、前記使用に際し多成分合成樹脂系を使用し、前記多成分合成樹脂系は、その少なくとも1つの成分中に、好ましくは全ての(例えば二成分系の場合にすなわち双方の)成分中に、1つ又は複数の微細分散した(好ましくは原子状態で、分子状態で及び/又はミクロ分散して分布している)ガス類、特に空気を含む。
【0010】
本発明は、特に固定構成要素を固着するために使用するための、多成分合成樹脂系の製造方法にも関し、前記方法は、前記合成樹脂系の少なくとも1つの成分中に空気のような1つ又は複数のガス類を、微細に分散させる、特に溶解させる及び/又は分散させることにより特徴付けられる。
【0011】
上記及び/又は下記に使用される一般的な表現は、好ましくは以下に定義されるとおりであり、ここで、特許請求の範囲を含めた当該開示の範囲内で、より一般的な表現が互いに独立して(個々に、複数について又は全てが)、より特別な定義により置き換えられることができ、これらは本発明のそれぞれ好ましい実施態様となる:
多成分合成樹脂系は2つ又はより多くの成分を含み、前記成分はそれらの混合後にポリ反応(Polyreaktion)をもたらし、かつ例えば硬化しながら固体プラスチック材料を形成する反応性樹脂系であると理解されるべきである。例えば、前記成分は、合成モルタル(成分(a))及び硬化剤(成分(b))であってよい。ポリ反応をもたらす添加剤に加え、硬化をもたらす他の添加剤、例えば、セメント、無水物又は半水和物としてのセッコウ、マグネシア結合剤、リン酸塩結合剤、生石灰、水ガラス又はケイ酸塩コンクリートのような、溶液から又は水和により硬化可能な鉱物質材料も、1つ又は複数の前記成分及び/又は別個の成分中で考慮に入れられてよく、かつ硬化に寄与しうる。これらは、例えば、0(特に0.1)〜80質量%、例えば1〜50質量%の割合で存在していてよい。
【0012】
この種の多成分合成樹脂系の例として、特にエポキシ樹脂(合成モルタル成分 二官能性及び/又は多官能性のエポキシド、硬化剤成分 二官能性及び/又は多官能性の有機のアミノ化合物類及び/又はメルカプト化合物類)、ポリウレタン又はポリ尿素又はそれらの混合物(合成モルタル成分 ジイソシアナート及び/又はポリイソシアナート、場合によりプレポリマーとしても、硬化剤成分 2つ又はより多くのヒドロキシ基、アミノ基又はヒドロキシ基及び/又はアミノ基を有する有機化合物又はそれらの混合物)、アルコキシシランを末端基とするプレポリマー(合成モルタル成分 アルコキシシランを末端基とするプレポリマー、硬化剤成分 水及び/又は有機酸(類)又は無機酸(類))を基礎とするもの、又は合成モルタル成分として反応性オレフィンを基礎とするもの(相補的な硬化剤成分 それぞれラジカルの硬化剤)を基礎とするもののような、合成モルタル及び1つ又は複数の相補的な硬化剤を基礎とするもの、例えば(メタ)アクリルエステル又は(メタ)アクリルアミドを基礎とするものを特に挙げることができ、ここでこの概念は特に、モノ(メタ)アクリラート、ジ(メタ)アクリラート、トリ(メタ)アクリラート又はポリ(メタ)アクリラート(特に、エポキシ(メタ)アクリラート、ウレタン(メタ)アクリラート、尿素(メタ)アクリラート、ウレタン/尿素(メタ)アクリラート、エトキシル化ビスフェノール−A−ジ−(メタ)アクリラート等のようなビニルエステル、及び場合により例えばアルキル−(メタ)アクリラート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート又はブタンジオールジ(メタ)アクリラートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート及び/又はアルキル(メタ)アクリラートのような反応性希釈剤)のようなアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル及び/又はアミド((メタ)アクリルは常にアクリル及び/又はメタクリルを表す)を含み;ここで、そのような系の2つ又はより多くの混合物も考慮に値し、かつここで括弧中に示された変法がそれぞれ、考えられる実施態様の例である。
【0013】
ビニル基を含む合成モルタル及びラジカル硬化剤を基礎とするラジカル硬化系、特にビニルエステル樹脂(合成モルタル成分 ヒドロキシ(メタ)アルキルアクリラートを有する又は有しないアルキルジアクリラート及び/又は2つのアクリル末端基及び/又はメタクリル末端基を有するマクロモノマー、硬化剤成分 ラジカル硬化剤)又は前記のようなその他のラジカル硬化可能な樹脂が特に好ましい。合成モルタル成分の属する反応性成分(モノマー類、プレポリマー類及び/又はマクロモノマー類)は、合成モルタル成分の全質量を基準として、例えば5〜100質量%、例えば10〜60質量%の割合で、存在していてよい。
【0014】
1つ又は複数の合成モルタル成分中で、既に上記で定義されたような、反応性希釈剤、又は他の又は別の反応性希釈剤、例えばラジカル硬化系のための、例えばスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン又はt−ブチルスチレンのようなp−n−アルキル−スチレンが考慮に入れられてよく;前記反応性希釈剤は、完全な反応性合成樹脂の全質量を基準として、例えば0〜80質量%、例えば1〜50質量%の量で考慮に入れられてよい。
【0015】
前記硬化剤成分は、ラジカル硬化系の場合に1つ又は複数の開始剤類又は他の系のための前記のようなものを含む。ラジカル硬化系の場合に、硬化剤成分中の開始剤(類)として、常用の開始剤類又は粘液質化された硬化剤類が、充填剤添加剤及び/又は溶剤を有して又は有さずに使用される。全ての硬化剤成分の量は、硬化剤成分の質量を基準として、例えば、0.1〜100質量%の範囲内、考えられる好ましい変型において5〜50質量%である。考えられる硬化剤類、特にアニオン開始剤類、カチオン開始剤類又はとりわけラジカル開始剤類は、例えば、独国特許(DE)第101 15 587号明細書に挙げられており、本明細書ではこれに関連して参照により取り入れられる。考えられる一例は、過酸化ジベンゾイルである。
【0016】
それに加え、例えば常用の促進剤、例えばアミン系促進剤、防止剤(特に合成モルタル中で、しかし硬化剤成分中でも選択的に又は補充して)、例えばフェノチアジン、フェノール類又はヒドロキノン類のようなヒドロキシル化ベンゼン類、ホスフィット、メチレンブルー又はN−オキシドラジカル誘導体類等、又はそれらの2つ又はより多くの混合物が、常用の量で、例えば反応性合成樹脂の全質量を基準として全部合わせて0.0001〜10質量%の質量割合で、添加されていてよい。
【0017】
本発明による多成分合成樹脂系は、それらの1つ又は複数の成分中に、1つ又は複数の別の添加剤類を含んでいてよい。別の添加剤類として、可塑剤類、非反応性希釈剤類又は可撓性付与剤類、例えば溶剤類、安定剤類(例えばHALS)、硬化触媒類、レオロジー助剤類、チキソトロープ剤類、反応速度の制御剤類、例えば防止剤類又は促進剤類もしくは触媒類、湿潤剤類、染料類又は特に顔料類のような着色添加剤類、例えば前記成分の、それらの混合をより良好な制御するための多様な着色のため、又は本発明による使用により得ることができるコーティングでの特定の着色のため、分散剤類、乳化剤類、酸化防止剤類、光安定剤類、UV安定剤類又はIR安定剤類、防炎加工剤類、接着促進剤類(Haftvermittler)、流れ調整剤類(Verlaufsmittel)、又は特に泡安定剤類(例えばシリコーンベース又は特にシリコーン不含のベースの)又は他の添加剤等、又はそれらの2つ又はより多くの混合物が含まれていてよい。この種の別の添加剤類は、好ましくは全部合わせて、反応性合成樹脂の全質量を基準として、全部で0〜50質量%、例えば0.01〜10質量%の質量割合で、存在していてよい。
【0018】
充填剤類も、1つ又は複数の成分中に存在していてよい。充填剤類として、所望の場合には、粉末として、粒状の形又は成形体の形で添加されていてよい、常用の充填剤類、特に白亜、石英粉末、砂、ポリマー粉末等、又は他の、例えば国際公開(WO)第02/079341号及び国際公開(WO)第02/079293号に挙げられたようなもの(前記パンフレットは本明細書中でこれに関連して参照により取り入れられる)、又はそれらの混合物が使用されることができる。充填剤類は、本発明による多成分合成樹脂系の1つ又はより多くの成分中で考慮に入れられてよい。充填剤(類)の割合は、反応性合成樹脂の全質量を基準として、例えば0(又は例えば0.1)〜80質量%であってよい。
【0019】
反応モルタル対硬化剤成分(反応モルタル:硬化剤成分)の質量比は、例えば1:3〜50:1の範囲内、例えば1:1〜10:1である。
【0020】
考えられる好ましい一実施態様において、架橋性の多成分反応性合成樹脂系、すなわち反応して熱硬化性プラスチックになるものが使用される。
【0021】
好ましくは、本発明による(又は本発明により使用されうる又は製造可能な)合成樹脂系は、二成分キット又は三成分キット(好ましくは成分(a)及び(b)を有する二成分キット)として、特にダブルチャンバ装置又はさらにマルチチャンバ装置として、考慮に入れられてよく、前記キットは、互いに反応することができる成分(a)及び(b)を、これらの成分が貯蔵の間に互いに反応することができないように、好ましくは、これらの成分が使用前に互いに接触しないようにして含む。例えば、2つ又はより多くのチャンバを有するフィルムバッグ、又は2つ又はより多くのこの種の容器の複数のチャンバ又はセット(例えば束(Gebinde))を有するバケツ(Eimer)又はたらい(Wannen)のような容器が特に適しており、ここでそれぞれの硬化可能な材料の2つ又はより多くの成分、特に上記及び下記に定義されるような二成分(a)及び(b)は、それぞれ空間的に互いに別個にキット又はセットとして存在し、その場合に、内容物は、混合後に又は混合しながら、使用箇所(特にドリル穴のような凹み(Aussparung)、特にアンカー固定手段、例えばアンカーロッド(Ankerstangen)等のような固定手段を固定するため)へ、常用の助剤と共に適用され;並びに固定目的のためにチャンバ中に硬化可能な材料用の複数の又は好ましくは2つの成分(特に(a)及び(b))が、上記及び下記の組成物とともに保存のために使用の前に含まれている好ましくは多成分カートリッジ又は特に二成分カートリッジ、ここで好ましくはスタティックミキサーも、相応するキットに含まれ、このミキサーは、ドリル穴のような凹み中へ直接押し込むことにより混合を可能にする。フィルムバッグ及び多成分カートリッジの場合に、空にするための装置も、多成分キットに含まれうるが、しかし、これは好ましくはまた(例えば何度も使用するために)キットから独立していてよい。
【0022】
微細分散した(Feinverteilt)は、ガス小泡の大きさが好ましくは1mm又はそれ未満、好ましくは0.1mm又はそれ未満であることを意味し、かつ特に好ましい一実施態様において、前記ガスが、又はガス混合物(特に空気)の場合に前記ガス類又はその含分が、原子状態で(希ガスの場合)、分子状態で及び/又はミクロ分散した小気泡の形で、前記合成樹脂の少なくとも1つの成分中に存在している、すなわち特に溶解されている及び/又は分散されている。これらの記載は、特に、体積が、ガス又はガス類の放圧のために、ごく僅かにないしほぼ平衡状態で又は平衡状態へ変わり得る特定の静置時間後に包装された形にあてはまる。
【0023】
ガス又はガス混合物、例えば空気の体積割合は、好ましくは、多成分合成樹脂系の全ての成分の全体積を基準として、前記成分(類)の放圧された形で1〜20体積%の範囲内、例えば2〜15体積%の範囲内、例えば4〜10体積%の範囲内である。その場合に、(匹敵しうる圧縮性を保証するために)前記ガス又はガス混合物は、全ての成分中で、好ましくはそれぞれほぼ同じ(例えば、互いに多くとも±10の相対パーセントまでの偏差を示す)体積%割合で考慮に入れられてよい。
【0024】
"成分"は、上記及び下記で、容器又はチャンバ中に装入される材料又は混合物のみであり、カートリッジ、バッグ等のような包装ではないと理解されるべきである。
【0025】
本発明は、好ましい一実施態様において、すぐ使用できる包装された形の多成分合成樹脂系に(例えば二成分キットの形で)も、並びに本発明による使用のために使用可能であるか又は特に準備されている微細分散したガス又は微細分散したガス類を有する個々のすでに包装された成分にも関する。
【0026】
固定要素を固着するための本発明による多成分合成樹脂系の使用は、とりわけ土木建築において、固定要素、特に、金属(合金を含めて)又は他の材料からなる、例えばねじ棒(Gewindestangen)のようなアンカー固定要素の固定の際に、板、柱、床、階段、壁、天井、道路舗装材(Strassenbelaegen)等のような(例えばコンクリート、天然石、中実石材又は多孔石材からなる石積み、アスファルト、さらにプラスチック又は木材からなる)固体の収容材料(基体)中で、特に穴、とりわけドリル穴のような凹み(Ausnehmungen)中で、特に行われる。本発明による使用の際に、本発明による多成分合成樹脂系が使用され、このことは特に、その成分が、使用に際して又は使用中に、混合され(例えばマルチチャンバカートリッジの使用の場合にスタティックミキサーを用いて)、及び引き続いて又は同時に凹み、特にドリル穴中へ、導入され、その際に同時に又は引き続いて、少なくとも1つの固定要素が、例えばビーティング(Schlagen)及び/又は回転により同様に導入されることを意味する。反応性成分の反応により、同時に及び引き続いて固体材料への硬化が行われ、これにより固定要素の保持が得られる。
【0027】
固定材料の性質及び使用の際に生じる結果の測定は、例えば密度、引抜き力、引張強さ、押込み力及び安定性に関して、一般的に(その中に前記の組成以外についても)実施例に記載された方法により行われることができる。
【0028】
この場合に、例えば1〜20%の範囲内の、合成モルタル成分及び/又は硬化剤成分の密度の低下、例えば脱気された多成分合成樹脂系の95〜105%の範囲内の、匹敵しうる必要とされる引抜き力、例えば脱気された多成分合成樹脂系の90〜110%の範囲内の、匹敵しうる引張強さ、例えば脱気された多成分合成樹脂系の70〜100%未満の範囲内の、カートリッジからの減少された押込み力、及び/又は改善された安定性が例えば、他の相対的な機械的なパラメーターが、妨げられて損なわれることなく、観察されることができる。
【0029】
本発明は、多成分合成樹脂の密度の減少のため、必要とされる(例えばカートリッジ又はフィルムバッグからの)押込み力の減少のため、安定性の増大のため及び/又は引張強さの増大のための、微細分散した形の1つ又は複数のガス類、特に空気の使用にも関し、ここで前記空気は、多成分合成樹脂系の1つ又は複数の成分中に微細分散した形で、例えば以下の方法において記載されるように、導入される。
【0030】
本発明による方法は、多成分合成樹脂系の1つ又は複数の成分(二成分系の場合に、例えば、前記のような成分(a)及び//又は(b))中に、(詰め替え前又は詰め替え中に)空気のような1つ又は複数のガスが、例えばビーティング、剪断、撹拌、吹き込み、化学的発生及び/又は超音波により、微細に分散される、特に溶解される及び/又は分散されることを含む。
【0031】
前記方法は、高められた温度、低められた温度及び/又は室温で、例えば−20〜50℃の範囲内の温度で、実施されることができる。
【0032】
ガス又はガス類又は(空気のような)ガス混合物は、既に完全にか又は部分的に1つ又は複数の成分中に含まれていてよい(例えば巨視的に目に見える気泡の形で)及び/又はこれもしくはこれらは、前記方法の間に供給されることができる。
【0033】
前記方法は、例えば、大気圧及び/又はそれを上回る及び/又はそれを下回る圧力で実施されることができる。
【0034】
全ての例示的に(例えば"例えば(z.B.)"、"例えば(beispielsweise)"の後、"のような(wie)"の前等)挙げられた範囲及び定義は、好ましい範囲又は定義を表しうるが、しかし必ず表すものではない。より一般的な範囲又は定義は、(特に請求の範囲において、しかしまた、明細書において)互いに独立して、単独で又は複数について、より狭い範囲又は定義により置き換えられることができ、これらはそれぞれ本発明のより好ましい変型を表しうる。
【0035】
"含んでなる(Umfassend)"、"含んでなる(umfassen)"、"含む(beinhaltend)"又は"含む(beinhalten)"はそれぞれ、前記の成分に加えて、さらに別の成分が含まれていてよいことを意味するのに対し、"からなる(bestehen aus)"、"から構成される(zusammengesetzt aus)"及び"を有する(enthalten(d))"は、これと関連している前記の成分が、確定的に列挙されることを意味する。成分が"考慮に入れられる(vorgesehen)"又は"存在している"場合には、これは、相応する系がこの成分を含有する(含む)ことを意味する。
【0036】
前記及び下記で、パーセントの割合の記載又は含量の記載は、他に示されない限り、それぞれ質量パーセントを意味する。
【0037】
本発明の特に好ましい実施態様は、主たる請求項及び特に従属請求項に − 従って前記請求項はここでは参照により明細書へ採用される − 並びに実施例に見出される。
【0038】
次の例は、本発明の説明に利用されるが、本発明の範囲を限定するものではない:
メタクリラート及び鉱物質充填剤からなる製剤を基礎とする市販製品、FIS V 360 S、fischerwerke、Waldachtal、Deutschland(商品番号94404、Fischerwerke、Denzlingen、Deutschland)を、同じであるが、モルタル及び硬化剤中でディソルバーを用いて空気を撹拌混入することにより密度が低下された(空気含量約5体積%)生成物と比較する。第1表には、双方の系の得られた性質が対比されている。
【0039】
第1表:エアポケット(Lufteinschluesse)を有する/有しない合成樹脂系の性質(特にプラスの性質は下線を引くことにより強調されている):
【表1】

【0040】
測定法の説明(再現可能に短く示してください):
1) 固定要素と、硬化された合成樹脂系との結合の試験のために、それぞれの2成分合成樹脂系を、コンクリート中に穴あけされており、14mm(直径)×95mm(ドリル穴の深さ)の寸法の極めて十分に清浄化されたドリル穴中に、スタティックミキサーを備えたダブルチャンバカートリッジを用いて導入する。合成樹脂材料中へ、ボルトM12を押し入れる(埋込み深さ95mm)。硬化時間(20℃で45min)後に、狭い支柱支えを用いる引抜き試験により破壊荷重を測定する。前記試験は、油圧シリンダー及びロードセル(Kraftmessdose)を備えた三脚(Dreibeinstativs)を用い、破壊が約5〜30秒後に行われるように調節された速度で行われる。
2) 引張強さは、DIN EN ISO 527-Iに従って決定される。
3) 押込み力(Auspresskraft)は、相応するスタティックミキサーを備えたダブルチャンバカートリッジのピストンを、100mm/minの送り速度で2本の押し棒により前向きに回転させ、かつそのために必要な力を、ロードセルを介して測定することにより決定される。
4) 安定性は、反応性合成樹脂混合物を、カートリッジからスタティックミキサーを経て、垂直な平面上に排出し、かつ前記混合物のクリープ、流れ落ち及び/又はしたたりを観察することによる主観的な評価により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分合成樹脂系において、前記多成分合成樹脂系の少なくとも1つの成分が、1つ又は複数の微細分散したガス類を含むことを特徴とする、多成分合成樹脂系。
【請求項2】
ガス又はガス類が、原子状態で、分子状態で及び/又はミクロ分散して分布している、請求項1記載の多成分合成樹脂系。
【請求項3】
ガス類がガス混合物、特に空気である、請求項1又は2のいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項4】
二成分系である、請求項1から3までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項5】
合成モルタル成分として、エポキシ樹脂、ポリウレタン又はポリ尿素又はそれらの混合物、アルコキシシランを末端基とするプレポリマーを基礎とするか又は特に反応性オレフィンを基礎とし、例えば、モノアクリラート、ジアクリラート、トリアクリラート又はポリアクリラート又は好ましくはエポキシアクリラート、ウレタンアクリラート、尿素アクリラート、ウレタン/尿素アクリラート又はエトキシル化ビスフェノール−A−ジ−(メタ)アクリラートのようなビニルエステル樹脂のような(メタ)アクリルエステル又は(メタ)アクリルアミドを基礎とする合成モルタル成分、ここでこの概念は特にアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル及び/又はアミドを含む;又はその他のラジカル硬化可能な樹脂;又は2つ又はより多くのこれらの材料の混合物;及び硬化剤成分を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項6】
前記成分の少なくとも1つの中に、溶液及び/又は水和により硬化可能な少なくとも1つの鉱物質材料、特にセメント、セッコウ、マグネシア結合剤、リン酸塩結合剤、水ガラス又はケイ酸塩コンクリート、を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項7】
1つ又は複数の合成モルタル成分中に反応性希釈剤を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項8】
多成分合成樹脂系の1つ又は複数の成分中に、別の添加剤類を全部合わせて0〜50質量%の割合で含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項9】
多成分キット、特に二成分キットの形で、好ましくはダブルチャンバカートリッジの形で分包されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項10】
ガス又はガス類が、1mm又はそれ未満の直径、特に0.1mm又はそれ未満の直径を有するガス小泡の形で、存在している、請求項1から9までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項11】
使用するために包装された形の、請求項10記載の多成分合成樹脂系。
【請求項12】
ガス又はガス混合物の体積割合が、合成樹脂系の全ての成分の全体積を基準として、1〜20体積%、好ましくは2〜15体積%の範囲内、特に3〜15体積%又は4〜10体積%の範囲内、である、請求項1から11までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系。
【請求項13】
ガス又はガス混合物が、全ての成分中に、好ましくはそれぞれほぼ同じ体積%割合で、存在している、請求項12記載の多成分合成樹脂系。
【請求項14】
1つ又は複数の固定構成要素を基体中に固定するにあたり、請求項1から13までのいずれか1項記載の多成分合成樹脂系を使用し、前記多成分合成樹脂系が前記成分の少なくとも1つの中に、1つ又は複数の微細分散した(好ましくは原子状態で、分子状態で及び/又はミクロ分散して分布している)ガス類、特に空気、を含むことを特徴とする、多成分合成樹脂系の使用。
【請求項15】
多成分合成樹脂系の使用を土木建築において、特に固定手段、とりわけアンカー固定手段を、凹み、好ましくはドリル穴中に固定するために、行う、請求項14記載の使用。
【請求項16】
合成樹脂系の少なくとも1つの成分中に、空気のような1つ又は複数のガス類を微細に分散させる、特に請求項1から13までのいずれか1項記載の、多成分合成樹脂系の製造方法。
【請求項17】
ガス又はガス類を、1つ又は複数の成分中に、好ましくはビーティング、せん断、撹拌、吹き込み、化学的発生及び/又は超音波により、好ましくは前記成分を分包する前又は分包する間に、それぞれ微細に分散させる、特に溶解させる及び/又は分散させる、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2010−513575(P2010−513575A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536615(P2009−536615)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008180
【国際公開番号】WO2008/058588
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509003117)フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Weinhalde 14−18, D−72178 Waldachtal, Germany
【Fターム(参考)】