説明

合成梁

【課題】本発明は、木造住宅等の在来軸組構法における主要部材であって、柱に挿嵌されている金物に接合する、合成梁を提供すること。
【解決手段】帯状の鋼板を、長手方向に沿って軽ミゾ形鋼状に折曲形成され、長手両端部のウェブ1に複数のボルト孔4を有し、前記ウェブ1のボルト孔4近傍以外のウェブ背側には複数の突起部1aを有する梁材用の軽ミゾ形鋼であって、前記軽ミゾ形鋼の上下フランジ2先端から外向きに延在するリップ3に、所定の間隔で釘穴7を有してなる略軽ミゾ形鋼において、一対の前記略軽ミゾ形鋼ウェブ1相互を重合し、前記ウェブの突起部1a相互をカシメ5結合で一体化し、断面が略H字形状に形成されて、前記上下フランジ2から延在するリップ3間に、木材6を挿入し、前記リップ3に有する釘穴7から前記木材6が釘8で固定される合成梁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅等の在来軸組構法における主要部材の柱と梁の接合部において、予め木質柱に挿嵌されている金物(プレ−ト形状)に接合する、合成梁(梁断面の中央部は鋼板で、梁の上下は小径な木材を使用)とその製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅建築は大半が木造建築でありその大部分が軸組構法である。その木造軸組構法での3階建以外は、法的規制も少なく構造設計者が設計段階から介入せずに、実務者が自由に設計・施工ができていたため、非常に構造のばらつきが多いのが現状である。しかし、阪神・淡路大震災以降は、被害の多かった在来軸組構法の研究が急増し、詳細な設計法が完備されつつある。また、近年、環境面で森林(若木の場合)でのCO2吸収効果が注目され、森林保全によるCO2排出枠、および林業振興で地方再生も兼ねての林業活性化が叫ばれている。一方、大径の木材や質的に優秀な木材が天然材としては得られなくなってきて、間伐材のような小径木の丸太を有効利用し、これらの丸太から切り出した帯状板材(ラミナ、或いはひき板とも称されている)を複数積層接着してなる集成材が、木造建築における柱、梁等の構造材に広く用いられている。
【0003】
政府は環境保全や、遊休資源の活用に迫れて、農水省では、昨年まとめた農林・林業再生プランで「10年後の木材自給率50%以上」を目指す方針を示していて、「公共建築物木材利用促進法案」では、国や地方が率先して国産材利用に努めるよう明記し、さらに、国が建設する学校や庁舎などでの活用を義務付ける検討をしている。しかし、公共建築や民間の非住宅を木造での大規模な構造にしたくとも、規模が違うため蓄積がある木造住宅の技術は転用できない。すなわち、大規模な木造の技術が系統立っていないのが現状である。
【0004】
木造住宅等の軸組構法は、まず、柱と梁で軸組を構成し、それに壁や床を取り付けて行く構法である。柱には「通し柱」と「管柱」があり、柱の構造的な役割は、通し柱、管柱ともに垂直荷重を支持し、耐力壁として外周に作用する圧縮力や引張力に抵抗し、また、風圧力(水平力)を受ける外壁面での変形を防ぐことである。
【0005】
従来、木造住宅等の軸組構法での通し柱は、柱の中間に梁を差し込むため、柱の断面欠損が大きくて、曲げ耐力は期待できずに引張力も不足する場合が多い。そこで、建築基準法関係告示第1460号で必要性能を確保するため、継手・仕口ではホゾや相欠きと組み合わせながら補強・補助金物等が明記されている。
【0006】
近年、特開2007−284942号公報(第1公知例)では、集成材は製材と比較して高価で高コストのため、集成材の長所(無垢材のような割れによる強度低下の心配がなく、製材では困難であった大断面の木製梁を実現することが可能で、さらに、弱点部が分散することにより、強度や剛性のばらつきが小さいので設計を合理的に行うことができる等)を生かしながら、ロ−コスト化を図る目的で、複数の製材を組み合わせて鋼板で補強した木製梁が開示されている。
【0007】
また、実開昭57−119021号公報(第2公知例)では、梁材ではないが、住宅壁用の複合桟材として木材取り付け作業の能率が上がる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−284942号
【特許文献2】実開昭57−119021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現在木造建築における柱、梁等の構造材に多く使用されている集成材は、ラミナ(挽き板)の高強度樹種のみでは高コストになるため、強度の弱い樹種から強い樹種まで、広い範囲の樹種の中から選択して効率的な断面形状にしている。しかし、そのため管理が広範囲になり在庫も増えてくる。さらに、ラミナの反り・割れ・節等の管理も必要であり、強度の確保とコストとは反比例していてコスト削減に努力はしているが、製材品より依然高価である。また、木質の小口から水を吸水する可能性があり、施工現場での雨天時の対応(材料置き場の養生管理・建て方中止等)が必要になる。
【0010】
次いで、第1公知例の場合は、複数の製材品が梁成方向に重ねられ、該複数の製材品の側面に配置された鋼板に、鋲で固定する工法であるが、各製材品は反り・割れ・節・曲がり・捻れ等の欠点を持っており、当然各製材品の欠点を考慮して組み立てられるが、寸法精度を守るのはコスト的に難しく、また、前記組み立て時の製材品の癖に鋼板がなじみ固定され、部材の形状寸法・曲がり・捻れ等の品質上の問題が発生する可能性がある。
【0011】
また、第2公知例の場合は、住宅壁用の複合桟材として考案されている引用文献には、板状体15a、15bの間にスポットを施す部位毎に、細片の板状体20を配置すると記載されており、製作する順序は、長尺の板状体15に割付位置を出して細片の板状体20を組み合わせる。その後、細片の板状体20の位置を注意(間隔・直角・出入り等)しながら仮付を行う。仮付け後に、部材の形状(曲がり・間隔・直角・出入り等))の確認及び寸法精度の確認を行ってから、スポットを施し、製品検査を行う工程と思われるが、単品の割には工程が煩雑でコスト高になる可能性がある。また、剣先部22に木材14を当接しプレスのような治工具で固定するとのことであるが、木材の種類や養生状態にもよるが、木材が割れる恐れがあり、さらに、製品寸法や施工の誤差を、何処で調整するのか記載されていないので定かではないが、複数の複合桟材が組み立てられた場合は、仕上げ面での化粧合板24の平滑性が保てないと思われる。
【0012】
本発明の解決すべき課題は、上述した品質、コストの問題点を解決することであり、さらに、従来の木質梁で対応できなかった大規模な建築物の技術上の問題点を解決することである。また、杉をはじめとする低強度樹種の活用を促進するとともに、効率的な断面形状で断面性能が高い合成梁を低コストで提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、曲げ強度および引張強度が必要な当該部には鋼板を使用し、納まりが必要な当該部には小径な木材を使用することでの技術的知見を得た。具体的には、木造住宅の梁は、住宅内部の家具、居住者等の荷重が梁にかかり、曲げ応力となり、梁成の中心を境に梁の上側に圧縮応力、下側には引張応力が生じている。そのため、従来の木造住宅の梁では高強度樹種のベイマツ等が使用されている。本発明の技術では、応力に対処する箇所は鋼板を使用し、梁のホゾ等での接合箇所には低強度樹種を使用する。すなわち、各資材の特徴を生かすことで、強度の確保と低強度樹種活用の両立が可能にすることができることに想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
【0014】
(1)帯状の鋼板を、長手方向に沿って軽ミゾ形鋼状に折曲形成され、長手両端部のウェブに複数のボルト孔を有し、前記ウェブのボルト孔近傍以外のウェブ背側には複数の突起部を有している梁材用の軽ミゾ形鋼であって、前記軽ミゾ形鋼の上下フランジ先端から外向きに延在するリップに、所定の間隔で釘穴を有してなる略軽ミゾ形鋼において、一対の前記略軽ミゾ形鋼ウェブ相互を重合し、前記ウェブの突起部相互をカシメ結合で一体化し、断面が略H字形状に形成されて、前記上下フランジから延在するリップ間に、木材を挿入し、前記リップに有する釘穴から前記木材が釘で固定されることを特徴とする合成梁に関するものであり、さらに、好ましくは、上記のリップの中心部近傍において凸面を内側に湾曲した溝等を施すことが望ましい。
【0015】
(2)前記略H字形状のリップの内側に、コ字形状を有する長尺の補助材が、挿入されていることを特徴とする合成梁に関するものであり、さらに、好ましくは、前記コ字形状の短辺中心部近傍において凸面を内側に湾曲した溝等を施すことが望ましい。
【0016】
(3)帯状の鋼板を長手方向に沿って、まず、軽ミゾ形鋼状に折曲形成し、長手両端部のウェブに複数のボルト孔を施し、前記ウェブのボルト孔近傍以外のウェブ背側には複数の突起部を施した梁材用の軽ミゾ形鋼であって、前記軽ミゾ形鋼の上下フランジ先端から外向きに延在するリップに、所定の間隔で釘穴を施してなる略軽ミゾ形鋼において、一対の前記略軽ミゾ形鋼ウェブ相互を重合し、前記ウェブの突起部相互をカシメ結合で一体化し、断面を略H字形状に形成した後、前記上下フランジから延在するリップ間に、木材を挿入し、前記リップに有する釘穴から前記木材を、釘で固定することを特徴とする合成梁の製造方法に関するものであり、上記においては、前記リップに凸面を内側に湾曲した溝等を施す構造が好ましい。
【0017】
(4)前記略H字形状のリップの内側に、コ字状形状に折曲形成した長尺鋼板を、挿入することを特徴とする合成梁の製造方法に関するものであり、上記においては、前記コ字形状の短辺に凸面を内側に湾曲した溝等を施す構造が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
(A)本発明に係る合成梁によれば、木質柱の中心線上に挿嵌されている金物(プレ−ト形状)と当該合成梁とブレ−スが、同一方向で軸心が通っている構造である。したがって、軸力系の強力な耐力壁で、耐震性、耐久性を重要視した設計を合理的に行うことができ、粘り強い構造となる。さらに、従来の木造梁と異なりクリ−プ現象(床のたわみが進行して元に戻らない)が少ない等の効果も得られる。
【0019】
(B)本発明に係る合成梁によれば、木質の通し柱を大断面にすると、半剛接合でのラ−メン系の耐力壁を作ることができる。具体的には、大断面の通し柱の中心線上に挿嵌されている金物(プレ−ト形状)に、当該合成梁の双ウェブを差し込む形状である。すなわち、サンドイッチ状態の前記双ウェブ間を、ボルトで緊結することによりプレ−ト(金物)が曲げ応力に抵抗する。したがって、木造住宅等以外でも大スパンの構造が可能になり、耐震性、耐久性を重要視した設計を合理的に行うことができ、粘り強い構造を得ることができる。
【0020】
(C)本発明に係る合成梁によれば、異種資材の組み合わせにより各々の特徴を生かすことで、強度の確保と低強度樹種活用との両立ができる合成梁である。例えば、強度が必要な当該部に鋼板を加工して使用し、当該梁と間柱等のホゾでの接合箇所には杉等を載置し効率的な断面を形成する。したがって、ロングスパンの対応が可能であり、さらに、断面性能が高くて低コストの極めて実用性のある合成梁を得ることができ、国内人口林資源の豊富な杉をはじめとする低強度樹種の活用を促進し有効活用を図ることもできる。
【0021】
(D)本発明に係る合成梁によれば、一対にした軽ミゾ形鋼梁のジョイント部における従来工法での仕口(形状)は、軽ミゾ形鋼梁両端の双ウェブ背間に、ジョイント用のガセットプレ−ト(単板)が挿入され、ボルト等で緊結されている。また、前記軽ミゾ形鋼中間部の双ウェブ背間には、前記ガセットプレ−ト厚と同等の短片プレ−ト(かい板)が複数挿入されて梁が構成されており、ガセットプレ−トと前記軽ミゾ形鋼梁との軸芯は一致している。しかし、当考案の場合は、かい板が無くても、当該合成梁とガセットプレ−トとの軸芯は一致する発明である。したがって、かい板が不必要になるため、鋼材の重量が削減し、製造工程が短縮化されて生産効率がアップする。さらに、品質管理も単純化される。すなわち、低コストでの合成梁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る合成梁の第1の実施例を示す模式図であり、(a)はA−A断面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C平面図である。
【図2】第1の実施例の合成梁を形成する略軽ミゾ形鋼の製造工程の一例を示す説明図であり、(a)は略軽ミゾ形鋼の突起部ウェブの加工前、(b)は突起部ウェブの加工後の模式図である。
【図3】本発明に係る合成梁の第2の実施例を示す模式図であり、(a)はA−A断面図、(b)はB−B断面図である。
【図4】第2の実施例の合成梁を形成する略軽ミゾ形鋼の製造工程の一例を示す説明図であり、(a)は略軽ミゾ形鋼の突起部ウェブの加工前、(b)は突起部ウェブの加工後の模式図である。
【図5】補助材の第2の実施例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図5に基づいて、本発明を実施するための最良の形態を実施例で説明する。
尚、合成梁用鋼板の材質としては、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融55%アルミニュウム−亜鉛合金めっき鋼板等が望ましいが、特に限定されるものではない。製作する機械については特に問わないが、例えば、軽ミゾ形鋼の形状を成形加工する方法としては、引き抜き成形方法、プレス加工方法、ロ−ル成形方法等のいずれかで成形することができる。木材の材質は、杉をはじめとする低強度樹種から選別することもできる。
【0024】
(実施例1)
図1は、本発明に係る合成梁の第1の実施例を示す模式図であり、(a)はA−A断面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C平面図、図2は合成梁を形成する略軽ミゾ形鋼の製造工程の一例を示す説明図であり、(a)は略軽ミゾ形鋼の突起部ウェブの加工前、(b)は突起部ウェブの加工後の模式図である。この例において、ウェブ1、ハット型ウェブ1a、フランジ2、リップ3,湾曲状の溝3a、ボルト孔4、カシメ5,木材6,釘穴7、および釘8から構成される。以下、これに沿って説明する。
【0025】
まず、略軽ミゾ形鋼を製作するが、長尺鋼板を曲げ加工する前に、鋼板長辺両側端近傍に約300mm前後の間隔で、直径4.5mm程度の釘穴7の穴加工を行う。次に、図2(a)に示すように、釘穴7が加工されている長尺鋼板を、長手方向に沿ってコ字形状に折曲形成してウェブ1とフランジ2を、さらに、前記コ字形状の上下のフランジ2の先端を上下に直角折曲し、リップ3を形成する。その際、前記リップ3の中心部近傍を湾曲した溝3aの形状に施す。
【0026】
リップ3の一部を湾曲した溝3aの形状にするのは、図1(b)等に示すように、当該略軽ミゾ形鋼を一対にした断面において、前記湾曲状の溝3aの間に、前記湾曲状の溝3a間より僅かに大きい木材6が挿入されると、スプリングバック作用の効果で、木材6が狭持されるためである。
【0027】
尚、スプリングバック機能として、湾曲状の溝3aの形状を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、湾曲状の溝3aと同程度の機能(スプリングバック機能で木材を挟めたとき、満足すべき狭持強度が得られること)が発揮できるものであれば、公知の何れの方法でも良い。例えば、三角形、台形、半円形、半楕円形および弓形等の溝を挙げることができる。
【0028】
次いで、図2(b)に示すように、ウェブ1の全面を所定の間隔で絞り加工を施し、弁当箱状のハット型ウェブ1aを複数製作する。前記弁当箱状のハット型ウェブ1aとウェブ1で段差をつけるのは、図1に示すように、スリット形状にした合成梁の両端部を、柱に挿嵌されているプレ−ト(図示を省略した)に挿入して嵌め合わせ、双ウェブ1でサンドイッチ形状にするためである。したがって、ウェブ1に有するボルト孔4に挿入して緊結されたボルト(図示を省略した)の作用により、柱と梁が一体化され強固に接続された構造になる。前記弁当箱状のハット型ウェブ1aの絞り深さは、前記柱に挿嵌されているプレ−ト(図示を省略した)の約半分にする。すなわち、図1(c)に示すように、ウェブの突起部1aを重合し一対にすることにより、隣接するリップ1間には隙間が生じる、その隙間が、柱に挿嵌されている前記プレ−ト厚の空間になる。ゆえに、前記弁当箱状のハット型ウェブ1aの絞りの深さは、前記ガセットプレ−ト厚の約半分である。
【0029】
前記ウェブ1と弁当箱状のハット型ウェブ1aの位置・形状・寸法等は、設計時の諸条件により決定する。例えば、まず架構構法(軸力系・ラ−メン系等)を決めて、それから、設計荷重・外力等を計算して、通し柱、梁等の断面を決定する。合成梁端部ウェブ1の寸法は、柱に挿嵌されているプレ−ト(図示を省略した)に合わせた形状・寸法になるが、合成梁中間部での軸力系耐力壁の場合は、耐力壁ブレ−スの位置を決めると管柱の位置が決まり、そこから、管柱の位置を基準にしてハット型ウェブ1aの位置・形状・寸法等が決まる。すなわち、合成梁の管柱位置の双ウェブ1の隙間に、管柱取り付け用プレ−ト兼ブレ−ス用のガセットプレ−ト(図示を省略した)を挿入し、サンドイッチ形状の双ウェブ間をボルト(図示を省略した)で緊結するが、そのガセットプレ−トに当接しているウェブ1に隣接する箇所が、ハット型ウェブ1aの位置となる。また、ラ−メン系の耐力壁の場合は、管柱・ブレ−スが不必要なので所定の等間隔でウェブ1aを設けるが、その間隔は、略軽ミゾ形鋼部材が単独状態で生じる断面方向のねじりに対して、抑制できる間隔にする。これにより、当該略軽ミゾ形鋼のウェブ間を強固に固定される合成梁を作ることができる。当該略軽ミゾ形鋼のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、ウェブ寸法200〜600mm程度、フランジ寸法50〜100mm程度であり、長さは3〜12m程度まで製作が可能で、板厚は1.6〜6.0mm程度である。
【0030】
続いて、前記で製作された略軽ミゾ形鋼の背中を合わせて略H字形状に組み立てる。まず、図1に示すように、背中合わせに配置した略軽ミゾ形鋼相互のウェブ1を重合し、ウェブ1の位置、フランジ2の水平段差の有無、ウェブ1a等の接触状況を確認し、図1(b)及び図1(c)に示すように、重合したウェブ1aの所定の位置にカシメ加工5を施し、強固に固定された略H字形状形鋼を製作する。尚、固定手段はカシメ、ボルト・ナットによる緊結、ねじ止め、溶接等が挙げられるが、所要の強度が得られれば公知の何れの方法でも良い。また、カシメ加工等の間隔は、1個当たりの強度(許容耐力)を考慮してバランス良く配置し加工を施す。当該H字形状形鋼のサイズは、ウェブ寸法200〜600mm程度、フランジ寸法100〜200mm程度、長さは3〜12m程度まで製作が可能である。
【0031】
図1に示すように、H字形状形鋼の上下のリップ3間に、事前に木材6両端部がスリット加工された木材6を挿入する。この場合、木材6の幅寸法は湾曲状の溝3a間より僅かに大きめに製作されている。湾曲状の溝3a間に木材6を挿入することにより、両サイドのリップ3が僅かに開き、リップ3のスプリングバック作用の効果により木材6が狭持される。続いて、釘穴7に釘8等を挿入するが、事前に木材6の反り等が湾曲状の溝3aの凸面で狭持されているため、釘8等の締付け作業時に、木材6の変動がなく容易に取付作業ができ、作業の効率化が図ることができる。尚、固定手段は、釘、木ねじ、グル−ラムリベット、ドラフトピン、ラグスクリュ−、ボルト・ナット等による締着等が挙げられるが、所要の強度が得られれば公知の何れの方法でも良い。
【0032】
尚、上述した木材6両端部に加工をするスリットは、軸力系(筋かい)構法での主にブレ−ス用で、そのガセットプレ−トが貫通するためのスリットであり、架構構法がラ−メン系等の場合は、スリットが不必要になる場合もある。
【0033】
(実施例2)
図3は、本発明に係る合成梁の第2の実施例を示す模式図であり、(a)はA−A断面図、(b)はB−B断面図、図4は合成梁を形成する略軽ミゾ形鋼の製造工程の一例を示す説明図であり、(a)は略軽ミゾ形鋼の突起部ウェブの加工前、(b)は突起部ウェブの加工後の模式図である。この例において、ウェブ1、ハット型ウェブ1a、フランジ2、リップ3,湾曲状の溝3a、ボルト孔4、カシメ5,木材6,釘穴7、釘8および補助材9から構成される。以下、これに沿って説明する。
【0034】
まず、略軽ミゾ形鋼を製作するが、長尺鋼板を曲げ加工する前に、鋼板長辺両側端近傍に約300mm前後の間隔で、直径4.5mm程度の釘穴7の穴加工を行う。次に、図4(a)に示すように、釘穴7が加工されている長尺鋼板を、長手方向に沿ってコ字形状に折曲形成してウェブ1とフランジ2を、さらに、前記コ字形状の上下のフランジ2の先端を、上下に直角折曲しリップ3を成形する。
【0035】
次いで、図4(b)に示すように、ウェブ1の全面を所定の間隔で絞り加工を施し、弁当箱状のハット型ウェブ1aを複数製作する。前記弁当箱状のハット型ウェブ1aとウェブ1で段差をつけるのは、図3に示すように、スリット形状にした合成梁の両端部を、柱に挿嵌されているプレ−ト(図示を省略した)に挿入して嵌め合わせ、双ウェブ1でサンドイッチ形状にするためである。したがって、ウェブ1に有するボルト孔4に挿入して緊結されたボルト(図示を省略した)の作用により、柱と梁が一体化され強固に接続された構造になる。前記弁当箱状のハット型ウェブ1aの絞り深さは、前記柱に挿嵌されているプレ−ト(図示を省略した)の約半分にする。すなわち、図1(c)に示すように、ウェブの突起部1aを重合し一対にすることにより、隣接するリップ1間には隙間が生じる、その隙間が、柱に挿嵌されている前記プレ−ト厚の空間になる。ゆえに、前記弁当箱状のハット型ウェブ1aの絞りの深さは、前記ガセットプレ−ト厚の約半分である。
【0036】
前記ウェブ1と弁当箱状のハット型ウェブ1aの位置・形状・寸法等は、設計時の諸条件により決定する。例えば、まず架構構法(軸力系・ラ−メン系等)を決めて、それから、設計荷重・外力等を計算して、通し柱、梁等の断面を決定する。合成梁端部ウェブ1の寸法は、柱に挿嵌されているプレ−ト(図示を省略した)に合わせた形状・寸法になるが、合成梁中間部での軸力系耐力壁の場合は、耐力壁ブレ−スの位置を決めると管柱の位置が決まり、そこから、管柱の位置を基準にしてハット型ウェブ1aの位置・形状・寸法等が決まる。すなわち、合成梁の管柱位置の双ウェブ1の隙間に、管柱取り付け用プレ−ト兼ブレ−ス用のガセットプレ−ト(図示を省略した)を挿入し、サンドイッチ形状の双ウェブ間をボルト(図示を省略した)で緊結するが、そのガセットプレ−トに当接しているウェブ1に隣接する箇所が、ハット型ウェブ1aの位置となる。また、ラ−メン系の耐力壁の場合は、管柱・ブレ−スが不必要なので所定の等間隔でウェブ1aを設けるが、その間隔は、カシメ加工5等の接合強度を考慮してバランス良く配置する。これにより、当該略軽ミゾ形鋼のウェブ間を強固に固定される合成梁を作ることができる。当該略軽ミゾ形鋼のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、ウェブ寸法200〜600mm程度、フランジ寸法50〜100mm程度であり、長さは3〜12m程度まで製作が可能で、板厚は1.6〜6.0mm程度である。
【0037】
一方、補助材9を別工程で製作する。まず、長尺鋼板を曲げ加工をする前に、鋼板長辺両側端近傍に釘穴7の穴加工を行うが、図3に示すように、補助材9は、リップ3間の内側の位置に載置している。そこで、その釘穴7の間隔は、前記リップ3の釘穴7に合致させ、その釘穴径は、前記釘穴径7より製作誤差を考慮して少し大きめの穴加工を施す。次に、図5に示すように、釘穴7が加工されている長尺鋼板を長手方向に沿って、コ字形状に折曲げて補助材9を製作する。その際、前記補助材9の短辺の中心部近傍を湾曲した溝3aの形状に施す。
【0038】
補助材9の短辺の一部を湾曲した溝3aの形状にするのは、図3(b)等に示すように、フランジ2に載置されている補助材9の断面において、湾曲状の溝3aの間に、前記湾曲状の溝3a間より僅かに大きい木材6が挿入されると、スプリングバック作用の効果で、木材6が狭持されるためである。当該補強材のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、ウェブ寸法91.0mm〜188.0mm程度、フランジ寸法40〜70mm程度であり、長さは3〜12m程度まで製作が可能で、板厚は1.6〜9.0mm程度である。
【0039】
尚、スプリングバック機能として、湾曲状の溝3aの形状を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、湾曲状の溝3aと同程度の機能(スプリングバック機能で木材を挟めたとき、満足すべき狭持強度が得られること)が発揮できるものであれば、公知の何れの方法でも良い。例えば、三角形、台形、半円形、半楕円形および弓形等の溝を挙げることができる。
【0040】
続いて、図3に示すように、上述して製作された略軽ミゾ形鋼の背中を合わせて略H字形状に組立てて、さらに、補助材9を組込む。まず、背中合わせに配置した略軽ミゾ形鋼相互のウェブ1を重合し、ウェブ1の位置、フランジ2の水平段差の有無、ウェブ1a等の接触状況を確認し、図3(b)及び図1(c)に示すように、重合したウェブ1aの所定の位置にカシメ加工5を施し、強固に固定された略H字形状形鋼を製作する。次に、補助材9をリップ3間に挿入する。尚、固定手段はカシメ、ボルト・ナットによる緊結、ねじ止め、溶接等が挙げられるが、所要の強度が得られれば公知の何れの方法でも良い。また、カシメ加工等の間隔は、1個当たりの強度(許容耐力)を考慮してバランス良く配置し加工を施す。当該H字形状形鋼のサイズは、ウェブ寸法200〜600mm程度、フランジ寸法100〜200mm程度、長さは3〜12m程度まで製作が可能である。
【0041】
尚、前記で補助材9をフランジ2の上下に載置することにより、設計上の制約で、梁の成(高さ)を小さくおさえたい場合に効果が得られる。例えば、断面二次モ−メントにおいて、中立軸から上(下)のフランジとリップまでの距離が短くなる分、断面二次モ−メントに有効である箇所の断面積を大きくする。すなわち、中立軸から上下に距離が減った分、板厚を調整した補助材9を加えてフランジとリップの断面積を増加させ、イ−ブンな断面性能にすることである。
【0042】
図3に示すように、H字形状形鋼の上下の湾曲状の溝3a間に、事前に木材6両端部がスリット加工された木材6を挿入する。この場合、木材6の幅寸法は湾曲状の溝3a間より僅かに大きめに製作されている。湾曲状の溝3a間に木材6を挿入することにより、両サイドのリップ3が僅かに開き、リップ3のスプリングバック作用の効果により木材6が狭持される。続いて、釘穴7に釘8等を挿入するが、事前に木材6の反り等が湾曲状の溝3aの凸面で狭持されているため、釘8等の締付け作業時に、木材6の変動がなく容易に取付作業ができ、作業の効率化が図ることができる。尚、固定手段は、釘、木ねじ、グル−ラムリベット、ドラフトピン、ラグスクリュ−、ボルト・ナット等による締着等が挙げられるが、所要の強度が得られれば公知の何れの方法でも良い。
【0043】
尚、上述した木材6両端部に加工をするスリットは、軸力系(筋かい)構法での主にブレ−ス用で、そのガセットプレ−が貫通するためのスリットであり、架構構法がラ−メン系等の場合は、スリットが不必要となる場合もある。
【0044】
以上説明したように本発明に係る合成梁によれば、異種資材の組み合わせにより、各々の特徴を生かすことで、強度の確保と間伐材等の小径低強度樹種活用の両立が可能な合成梁である。すなわち、断面性能が高く、低コストで極めて実用性があり、耐震性、耐久性を重要視した木造住宅や、大規模な建築物の構造設計を合理的に行うことができる。また、国内人口林資源の豊富な杉をはじめとする低強度樹種の活用を促進し有効活用を図ることもでき、建設業界およびCO2絡みの環境面での社会に与える効用は極めて大きい。
【符号の説明】
【0045】
1 ウェブ
1a ハット型ウェブ
2 フランジ
3 リップ
3a 湾曲状の溝
4 ボルト孔
5 カシメ
6 木材
7 釘穴
8 釘
9 補助材
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の鋼板を、長手方向に沿って軽ミゾ形鋼状に折曲形成され、長手両端部のウェブに複数のボルト孔を有し、前記ウェブのボルト孔近傍以外のウェブ背側には複数の突起部を有する梁材用の軽ミゾ形鋼であって、前記軽ミゾ形鋼の上下フランジ先端から外向きに延在するリップに、所定の間隔で釘穴を有してなる略軽ミゾ形鋼において、一対の前記略軽ミゾ形鋼ウェブ相互を重合し、前記ウェブの突起部相互をカシメ結合で一体化し、断面が略H字形状に形成されて、前記上下フランジから延在するリップ間に、木材を挿入し前記リップに有する釘穴から前記木材が釘で固定されることを特徴とする合成梁。
【請求項2】
前記略H字形状のリップの内側に、コ字形状を有する長尺補助材が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の合成梁。
【請求項3】
帯状の鋼板を長手方向に沿って、まず、軽ミゾ形鋼状に折曲形成し、長手両端部のウェブに複数のボルト孔を施し、前記ウェブのボルト孔近傍以外のウェブ背側には複数の突起部を施した梁材用の軽ミゾ形鋼であって、前記軽ミゾ形鋼の上下フランジ先端から外向きに延在するリップには、所定の間隔で釘穴を施してなる略軽ミゾ形鋼において、一対の前記略軽ミゾ形鋼ウェブ相互を重合し、前記ウェブの突起部相互をカシメ結合で一体化し、断面を略H字形状に形成した後、前記上下フランジから延在するリップ間に、木材を挿入し前記リップに有する釘穴から前記木材を釘で固定することを特徴とする合成梁の製造方法。
【請求項4】
前記略H字形状のリップの内側に、コ字形状に折曲形成した長尺鋼板を、挿入することを特徴とする請求項1に記載の合成梁の製造方法。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77567(P2012−77567A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225732(P2010−225732)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【特許番号】特許第4648503号(P4648503)
【特許公報発行日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(506200083)
【Fターム(参考)】