説明

合成樹脂製のキャップ

【課題】合成樹脂製のキャップにおいて、注出口の液切れ性を格段に改善しつつ、溶出等による容器内溶液への異物混入の問題がない様にする。
【解決手段】容器内溶液を注出するための注出口6を備えている合成樹脂製のキャップ1において、その注出口6に液切れ性を向上させるフィルムFを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に装着される合成樹脂製のキャップに関し、詳細には液切れ性の良い合成樹脂製のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器にその封止部材として装着される合成樹脂製のキャップにおいて、容器が収容する各種液体を注ぎ出すための注出口を備えているものがある。この様な注出口を備えているキャップにおいて、注出口は液垂れがない様、液切れ性の良いものであることが好ましい。
【0003】
そこで、従来より、注出口を備えたキャップにおいては、注出口の液切れ性の改善のための様々な提案がなされている。
【0004】
例えば、特開平2−140249号公報(特許文献1)には、滑剤を添加して、疎水性を増大させた合成樹脂からなる注出口を有する蓋体を成形し、注出時の液垂れを防止する技術が開示されている。この技術によれば、注出口の滑り性を良くすることができることから、液垂れを防止し、注出口の液切れ性を向上させることができると解される。しかしながら、この技術の場合、容器内容液と常時接触する部分から滑剤が溶出して、異物として容器内溶液に混入してしまう可能性があるという問題があり、又、滑剤を添加することから、合成樹脂が改質され成形に問題を生じさせない範囲内でしかそれをすることはできないので、液切れ性を格段に向上させるまで至らなかった。
【0005】
特開平11−11511号公報(特許文献2)には、キャップの注出口部のみ滑剤を添加したプラスチックから形成し、常時容器内容物と接触する部分は滑剤を添加しないプラスチックから形成した容器蓋であって、注出口の液切れ性を良くしつつ、滑剤が溶出しない様にする技術が開示されている。この技術は、前記特許文献1に開示の技術における滑剤の溶出による問題を解消することを課題とするものであり、確かに当該溶出の問題を解消できると解される。しかしながら、この技術における液切れ性の改善の技術自体は、特許文献1に開示のものと同様、滑剤を添加するものであり、液切れ性を格段に向上させることについて解決するものではない。
【0006】
尚、特許文献2には、従来例として、撥水剤をスプレー塗布して、撥水性の被膜を容器口部又は容器蓋の外面に形成する技術も開示されている。しかしながら、撥水剤塗布の技術は、同文献に記載されている様に、均一な厚みで塗布被膜を形成するのが難しい等の課題があり、実用的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−140249号公報
【特許文献2】特開平11−11511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、前記の事情に鑑み、注出口の液切れ性を格段に改善しつつ、溶出等による容器内溶液への異物混入の問題がない合成樹脂製のキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、容器内溶液を注出するための注出口を備えた合成樹脂製のキャップであって、注出口に液切れ性を向上させるフィルムが設けられていることを特徴とする合成樹脂製のキャップである。ここで、当該フィルムは、液切れ性を向上させるフィルムであるところ、容器に収容される内容液の性質に応じて適宜選択され、例えば、容器内溶液が醤油やドレッシング等の食品調味料、又は油等の粘度の高い液体である場合等、それら内容液を速やかに表面上を流動させることができるものが選択される。具体的には、当該フィルムは、撥水性、耐油性等(以後、撥水性等とする)を備えた樹脂であって、例えばフッ素系、シリコーン系の樹脂からなるフィルムが好適に用いられる。より具体的には、フッ素系樹脂であるPCTFE(ポリクロロトリフルオトエチレン)を含むものを選択することができる。又、当該フィルムを後記する様にインサート成形により注出口と一体に設ける場合は、当該フィルムは、キャップ本体の樹脂に対し相溶性のある樹脂と前記撥水性等を備えた樹脂からなる積層フィルムを用いるができ、例えば、キャップ本体がポリオレフィン系樹脂からなるものであれば、それと同質のポリオレフィン系樹脂層と前記撥水性等を備えた樹脂層とからなる積層フィルムとすることができる。また、当該フィルムは、前記の様に積層構造のフィルムを用いるのに代えて、キャップ本体と相溶性のある樹脂に撥水性等のある樹脂を分散させたものを用いることもできる。尚、当該フィルムは上記具体例に限定されず、キャップに貼着するものであってもよい。
【0010】
又、この発明は、液切れ性を向上させるフィルムがインサート成形により注出口と一体に設けられていることを特徴とする前記合成樹脂製のキャップである。
【0011】
又、この発明は、注出口が先端に注出用開口を有する注出筒によって構成され、注出筒の注出用開口の口縁部には液切り部が設けられており、液切れ性を向上させるフィルムが注出筒の少なくとも液切り部の上面に設けられていることを特徴とする合成樹脂製のキャップである。
【0012】
又、この発明は、液切れ性を向上させるフィルムが注出筒の注出用開口に沿って環状に又は部分的に設けられていることを特徴とする合成樹脂製のキャップである。
【0013】
又、この発明は、液切れ性を向上させるフィルムが複数枚に分割されて設けられていることを特徴とする合成樹脂製のキャップである。
【0014】
又、この発明は、注出筒の液切り部の上面が湾曲面であることを特徴とする前記合成樹脂製のキャップである。
【0015】
又、この発明は、注出筒の液切り部の上面が平坦面であることを特徴とする前記合成樹脂製のキャップである。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては、液切れ性を向上させるフィルムが注出口に設けられており、液切れ性を向上させるフィルムの撥水効果等により注出口の液切れ性を改善することができるが、液切れ性を向上させるフィルムは撥水性等を有する物質自体を利用してその効果を得ているものであり、その物質の効果を最大限利用することが可能なものである。即ち、前記の滑剤を添加した技術にあってはごく少量の滑剤をキャップ全体、或いは一部材に混ぜ込んだものであるのに対して、本発明は注出口の表面に当該フィルムを位置させ、フィルム上を液が経由するものであるから、格段に注出口の液切れ性を改善することが可能なものであり、又、フィルムが容器内溶液と常時接触することがあったとしても、撥水性等を有する物質自体からなるフィルム体であることから、溶出の問題もなく使用することが可能なものである。
【0017】
従って、この発明においては、注出口の液切れ性を格段に改善しつつ、溶出等による容器内溶液への異物混入の問題がない合成樹脂製のキャップを得ることができる。
【0018】
又、この発明においては、液切れ性を向上させるフィルムをインサート成形により注出口と一体に設けることとすれば、当該フィルムを注出口に容易に且つ確実に設けることができる。
【0019】
又、この発明においては、液切れ性を向上させるフィルムを注出筒の少なくとも注出用開口の口縁部上面に設けることとすれば、フィルムを設ける面積を小さくしつつ、当該フィルムによる液切れ性の改善効果を確保できる。即ち、注出用開口の口縁部上面は、液注ぎ時に容器内溶液が注出口から離れる箇所であり、少なくともその箇所にフィルムを設けることで、液切れ性を向上させることができる。
【0020】
又、この発明においては、液切れ性を向上させるフィルムを複数枚に分割して設けることとし、注出口における当該フィルムを設ける面の形状に応じ、適宜区分して当該フィルムを設けることとすれば、或いは一枚毎の面積を小さくすることとすれば、フィルムを設ける面積を小さくしつつ、液切れ性を向上させるフィルムをリング状に形成した場合に比べて、当該フィルムに皺等が発生し難くすることができる。
【0021】
又、この発明においては、液切れ性を向上させるフィルムを設ける注出筒の注出用開口の口縁部上面を平坦面とし、その上面に当該フィルムを設けることとすれば、注出筒の注出用開口の口縁部上面が曲面状に形成されたものと比べて、フィルムの位置合わせが容易となり、特にインサート成形する場合においてはキャップの成形が容易となる。即ち、注出筒の注出用開口の口縁部上面の平面形状に合わせた形状のフィルムを位置させることで成形が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示し、図2のI−I線断面図である。
【図2】同上を示す平面図である。
【図3】図1の一部拡大図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態を示し、図5のIV−IV線断面図である。
【図5】同上を示す平面図である。
【図6】図4の一部拡大図である。
【図7】この発明の第3の実施の形態を示し、図8のVII−VII線断面図である。
【図8】同上を示す平面図である。
【図9】図7の一部拡大図である。
【図10】この発明の第4の実施の形態を示し、図11のX−X線断面図である。
【図11】同上を示す平面図である。
【図12】図10の一部拡大図である。
【図13】この発明の第3の実施の形態のキャップを成形する際に利用する金型を示し、撥水性フィルムを金型にインサートした状態における断面図である。
【図14】図13の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。尚、ここで例示する実施の形態はキャップ本体に上蓋がヒンジ結合されてなるいわゆるヒンジキャップについてのものであるが、この発明のキャップは、合成樹脂製で、且つ注出口を備えているものであれば、ヒンジキャップに限らずその適用は可能である。
【0024】
先ず、第1の実施の形態を図1乃至図3に基づき説明する。
【0025】
キャップ1は、合成樹脂により一体に形成される本体2とそれにヒンジ部3を介して結合された上蓋4とからなる。このキャップ1は、液体が収容される容器のキャップとして用いられるものであり、本体2に、容器口部への装着部5と、容器内の液体を注出するための注出口6とを備えている。
【0026】
本体2において、装着部5は、筒状の装着用外筒5bによって構成されており、容器口部の外側に装着され、内壁に形成されている係合部5aにより、その固定が可能なものとなっており、又、注出口6は、装着部5の上部に連続して設けられている円筒状の注出筒6bによって構成され、その先端の注出用開口6aから容器内溶液の注出が可能なものとなっている。
【0027】
そして、この発明のキャップ1には、注出口6に液切れ性を向上させるフィルム、フィルムFが設けられている。このフィルムFが設けられていることで、キャップ1は、フィルムFの撥水効果等により注出口6の液切れ性を改善することができるが、フィルムFは、その効果を最大限利用することが可能なものであり、フィルムFが注出口6の少なくとも注出用開口6aの液切り部6dの上面6e上に設けられていれば、注出口6の液切れ性を改善することが可能なものであり、又、フィルムFが容器内溶液と常時接触することがあったとしても、フィルムFは撥水性等を備えた物質で表面が形成されるので、溶出の問題もない。
【0028】
即ち、この発明のキャップ1は、注出口6の液切れ性を格段に良くしつつも、溶出等による容器内溶液への異物混入の問題がない様にすることができるものとなっている。
【0029】
ここで、この発明のキャップ1において、フィルムFは、撥水性等を備えたフィルムであるところ、容器に収容される内容液の性質に応じて適宜選択され、例えば、容器内溶液が醤油やドレッシング等の食品調味料、又は油等の粘度の高い液体である場合等、それら内容液を速やかに表面上を流動させることができるものが選択される。具体的には、フィルムFは、撥水性、耐油性等を有する樹脂であって、例えばフッ素系、シリコーン系の樹脂からなるフィルムが好適に用いられる。より具体的には、フッ素系の樹脂であるPCTFE(ポリクロロトリフルオトエチレン)を含むものとすることができる。又、フィルムFをインサート成形により注出口6と一体に設ける場合は、フィルムFは、キャップ本体2の樹脂に対し相溶性のある樹脂と前記撥水性等を有する樹脂とからなる積層フィルムを用いることができ、例えば、キャップ本体2がポリオレフィン系樹脂からなるものであれば、それと同質のポリオレフィン系の樹脂層と前記撥水性等を有する樹脂層とからなる積層フィルムとすることができる。また、フィルムFは、前記の様に積層構造のフィルムを用いるのに代えて、キャップ本体2と相溶性のある樹脂に撥水性等のある樹脂を分散させたものを用いることもできる。尚、フィルムFは上記具体例に限定されず、キャップ1に貼着するものであってもよい。
【0030】
又、この発明のキャップ1において、フィルムFは、インサート成形の技術により注出口6と一体に設けたものとすることができる。これによれば、フィルムFを容易に且つ確実に注出口6に設けることができる。尚、フィルムFを注出口6に設ける方法としては、インサート成形の技術以外にも、フィルム固着の公知の技術を利用することができる。
【0031】
尚、注出口6において、注出筒6bの注出用開口6aを画定する先端口縁部6cには、容器内容液の注出の際に液切りをする液切り部6dが設けられているが、この実施の形態において、フィルムFは、この液切り部6dの上面6eを含め、注出筒6bの内面6f全体に設けられている。又、液切り部6dは、注出筒6bの先端口縁部6cにおいて、外方に向けて鍔状に且つ先細に突出して形成されたものとなっているが、この実施の形態において、その上面6eはキャップ外方へ湾曲したラッパ形状のものとなっている。更に、フィルムFには、液切り部6dの上面6eと固着している環状の部分に切り欠きF0が設けられており、その環状の部分において皺が発生し難い構造になっている。
【0032】
次に、第2の実施の形態を図4乃至図6に基づき説明する。
【0033】
第2の実施の形態は、液切れ性を向上させるフィルム、フィルムFを注出筒6bの液切り部6dの上面6e及びそれに連続する注出筒6bの内面6fの上部部分のみに設けたものである。
【0034】
この実施の形態によれば、フィルムFを設ける面積を小さくしつつ、液切れ性の改善効果を確保することができる。
【0035】
次に、第3の実施の形態を図7乃至図9に基づき説明する。
【0036】
第3の実施の形態は、液切れ性を向上させるフィルム、フィルムFを注出筒6bの液切り部6dの略上面6e部分のみに設けたものである。
【0037】
この実施の形態によれば、フィルムFを設ける面積を更に小さくすることができ、液切れ性の改善効果を確保することができる。
【0038】
次に、第4の実施の形態を図10乃至図12に基づき説明する。
【0039】
第4の実施の形態は、注出筒6bの液切り部6dの上面6eを平坦面とし、その平坦な液切り部6dの上面6e部分にフィルムFを設けたものである。
【0040】
この実施の形態によれば、フィルムFを上面6eの平坦面に位置させるので、、フィルムFを予め上面6eの平坦面に合わせた平坦形状とすることができ、注出筒の注出用開口の口縁部上面が曲面状に形成されたものと比べて、フィルムの位置合わせが容易となる。これにより、特にインサート成形によりフィルムFを設ける際に、フィルムFの位置ずれや皺等が発生し難くすることができる。
【0041】
ここで、インサート成形の技術を利用して、フィルムFを注出口6に設けつつ、キャップ1を成形する方法について説明する。
【0042】
図13乃至14に示す様に、先ず、成形型M内の液切り部6dの上面6eの成形位置に撥水性フィルムFを当てがい、吸引路Sから空気を吸引してフィルムFをそこに位置させ、次いで、射出路Iから成形型M内に樹脂を射出して流動させ、そして、撥水性フィルムFを注出口6の成形部分に溶着させつつ、キャップ1を成形する。この様にすることで、フィルムFを注出口6に一体的に設けつつ、キャップ1を成形することができる。尚、この実施の形態においては、液切り部6dの上面6eが平坦面であることから、成形型Mの加工が容易であるという利点がある。
【0043】
以上、この発明の第1乃至第4の実施の形態を説明したが、この発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、フィルムFを前記の実施の形態の様に注出用開口6aに沿って環状に設けるのに代えて、部分的に設ける様にすることもでき、具体的には、ヒンジキャップの場合、ヒンジ部とは反対側から容器内溶液の注出がされることが通常であることから、口縁部6cにおける注出用開口6aを介してヒンジ部3と対向する側の部分のみにフィルムFを設ける様にすることもできる。又、フィルムFを複数枚に分割して設ける様にすることもでき、注出口6におけるフィルムFを設ける面の形状に応じ、適宜区分してフィルムFを設ける様にすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 キャップ
2 本体
3 ヒンジ部
4 上蓋
5 装着部
5a 係合部
5b 装着用外筒
6 注出口
6a 注出用開口
6b 注出筒
6c 口縁部
6d 液切り部
6e 液切り部上面
6f 注出筒内面
F フィルム
F0 切り欠き



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内溶液を注出するための注出口を備えた合成樹脂製のキャップであって、注出口に液切れ性を向上させるフィルムが設けられていることを特徴とする合成樹脂製のキャップ。
【請求項2】
該フィルムがインサート成形により該注出口に一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製のキャップ。
【請求項3】
該注出口が先端に注出用開口を有する注出筒によって構成され、該注出筒の該注出用開口の口縁部には液切り部が設けられており、該フィルムが該注出筒の少なくとも該液切り部の上面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂製のキャップ。
【請求項4】
該フィルムが該注出筒の該注出用開口に沿って環状に又は部分的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の合成樹脂製のキャップ。
【請求項5】
該フィルムが複数枚に分割されて設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の合成樹脂製のキャップ。
【請求項6】
該注出筒の該液切り部の該上面が湾曲面であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の合成樹脂製のキャップである。
【請求項7】
該注出筒の該液切り部の該上面が平坦面であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の合成樹脂製のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−79544(P2011−79544A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233146(P2009−233146)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】