説明

合成樹脂製ばね

【課題】螺旋状のスプリング部中に圧縮、引っ張りに対して作用しない部分が極力少なく、また2分割の金型で製作することができる合成樹脂製ばねを提供する。
【解決手段】合成樹脂によって一体に成形された円筒状の合成樹脂製ばねであって、合成樹脂製ばねを構成するスプリング部3a,3b,5a、5bを平面に展開した状態において、前記スプリング部の軸線は少なくとも複数の曲線(A1,B1)、(A2,B2)、(A3,B3)、(A4,B4)からなり、前記曲線はパーティングラインP−Pとの交点E,H,J,Kにおいてリード角が0度となる曲線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製ばねに関し、特に、合成樹脂により成形される合成樹脂製ばねに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のばねは、金属製のばねに比べて耐腐食性に優れ、また電気絶縁性に優れているという性質を備え、また合成樹脂製の容器に組み込んで用いた場合には分別廃棄する必要がなく、射出成形により容易にしかも安価に製造することができるという特質を備えているため、従来から各種用途において広く用いられている。
【0003】
この合成樹脂製ばねとして、例えば、特許文献1(特開平10−73138号公報)に示されるような合成樹脂製コイルばねが提案されている。この提案された合成樹脂製のコイルばねについて、図9に基づいて説明する。
図9に示すように、この合成樹脂製コイルばね10にあっては、同長さ、同じ螺旋方向、同径、同ピッチの複数のスプリングコイル11a、11b、11cが螺旋状態にて互いに組み合わせられ、これらスプリングコイル11a、11b、11cの上下両端に、リング12a,12bが形成されている。尚、これらスプリングコイル11a、11b、11c及びリング12a,12bは射出成形等の手段により一体に形成される。
【0004】
そして、これらスプリングコイル11a、11b、11cが同長さ、同じ螺旋方向、同径、同ピッチで形成されているため、スプリングコイル11a、11b、11cのリード角θ(スプリングコイル11a、11b、11cの軸線と水平面とのなす角度)は、図10に示すように、リング12aからリング12bに亘って、一定の角度で形成される。
なお、図10は前記スプリングコイルの一つを平面状に展開した図であり、横軸に中心角度φ、縦軸にスプリングコイルの高さ寸法(距離)がとられている。
【0005】
この合成樹脂製のコイルばね10にあっては、図9に示すように、複数のスプリングコイル11a,11b,11cが螺旋状態にて互いに組み合わせられているため、射出成形のための金型を複雑なものとし、安価に製造できないという課題があった。因みに、この合成樹脂製コイルばね10を射出成形で製造する場合には、少なくとも六分割程度に分割された金型を用いる必要がある。
【0006】
一方、2分割の金型を用いて成形できる樹脂製コイルばねが、特許文献2(特開2002−13569号公報)に示されている。この樹脂製コイルばねを図11に基づいて説明する。この樹脂製コイルばね20は、基部21と、この基部21から伸びるコイルばね状ばね部22とからなり、前記基部21に樹脂注入部(ゲート)23が設けられている。
そしてまた、この樹脂製コイルばね20は弁体25の下面に形成され、この弁体25及び樹脂製コイルばね20は塗布先部24の内部に収容されている。
【0007】
この樹脂製コイルばね20は、前記ばね部22全長に亘って前記ばね部22の軸心に対して直角に二方向に開閉作動する金型(割り型)を用い、射出成形法により成形される。
そして、このコイルばね状ばね部22の金型分割面(パーティング)の位置P−Pに、前記ばね部20の斜線形状部22bと連続するように、ばね部20の軸心に対して直角方向の水平形状部22aが設けられている。 即ち、金型分割面 (パーティングライン)P−Pにおける、前記ばね部22の斜線形状部22bのずれを抑制するために水平形状部22aが形成されている。
【特許文献1】特開平10−73138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記特許文献2に示された合成樹脂製コイルばねにあっては、ばね部の軸心に対して直角に二方向に開閉作動する金型(割り型)を用い、射出成形法により成形することができるため、容易かつ安価に製造することができる。
しかしながら、金型分割面(パーティングライン)において、前記ばね部には水平形状部が形成されるため、ばね部のリード角θ(ばね部の軸線の接線と水平面とのなす角度)は、図12に示すように、下側部から上端部に向けて一定の角度で形成されると共に、前記金型分割面(パーティングライン)において、リード角θが0度(水平)となる部分が存在する。このリード角θが0度の部分、即ち、ばね部20の水平形状部22aは圧縮、引っ張りに全く寄与しないため、この水平形状部を形成することはコイルばねとしての機能を損なうため、あまり好ましいものではなかった。
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、螺旋状のスプリング部において、圧縮、引っ張りに対して作用しない部分が極力少なく、また2分割の金型で製作することができる合成樹脂製ばねを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる合成樹脂製ばねは、下端リング部上に形成された螺旋状のスプリング部と、前記スプリング部の上端に形成された上端リング部とを備え、これら部位が合成樹脂によって一体に成形された円筒状の合成樹脂製ばねであって、前記スプリング部を平面に展開した状態において、前記スプリング部の軸線は少なくとも複数の曲線からなり、前記曲線は、パーティングラインとの交点においてリード角が0度となる曲線であることを特徴としている。
【0011】
このように、スプリング部の軸線を構成する曲線が、スプリングの軸線は少なくとも複数の曲線からなり、前記曲線は、パーティングラインとの交点においてリード角が0度となる曲線であるため、スプリング部中に圧縮、引っ張りに対して作用しない部分を極力少なくすることができ、全体がばねとして有効に機能する。尚、前記スプリング部の軸線は、その一部に直線部分を含んでいても良い。
【0012】
ここで、前記スプリング部の軸線を構成する曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、前記スプリング部の軸線を構成する曲線とパーティングラインの交点が、スプリング部の軸線を構成する曲線同士が交わる接続点であることが望ましい。
このように、スプリング部の軸線を構成する曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、リード角が0度の点(曲線の接続点)が、金型のパ−ティングラインとの交点となるように形成されるため、この合成樹脂製ばねは二分割の金型で成形することができ、安価に、しかも効率よく製造することができる。
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる合成樹脂製ばねは、下端リング部上に形成された下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部と、前記下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部の上端に形成された中間リング部と、前記中間リング部上に形成された上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部と、前記上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部の上端に形成された上端リング部とを少なくとも備え、これら部位が合成樹脂によって一体に成形された合成樹脂製ばねであって、前記下部第一スプリング部、下部第二スプリング部、上部第一スプリング部、上部第二スプリング部の各スプリング部を平面に展開した状態において、各スプリング部の軸線は、夫々少なくとも複数の曲線からなり、前記曲線は、パーティングラインとの交点においてリード角が0度となる曲線であることを特徴としている。
【0014】
このように、各スプリング部の軸線を構成する曲線がパーティングラインとの交点においてリード角が0度となる曲線であるため、スプリング部中に圧縮、引っ張りに対して作用しない部分を極力少なくすることができ、全体がばねとして有効に機能する。尚、前記スプリング部の軸線は、直線部分を含んでいても良い。
【0015】
ここで、前記下部第一スプリング部が下端リング部に接続された点を始点として、下部第一リング部が螺旋状に略中心角180度の位置まで形成され、前記上部第一スプリング部が中間リング部を介して前記下部第一スプリング部の終点位置である中心角から、下部第一スプリング部の始点である中心角0度まで、前記下部第一スプリング部の螺旋方向と異なる方向の螺旋状に形成され、かつ、下部第二スプリング部が下部第一スプリング部と同一方向に螺旋状に略中心角180度の位置から略中心角360度の位置まで形成され、前記上部第二スプリング部が中間リング部を介して前記下部第二スプリング部の終点位置である中心角から、下部第二スプリング部の始点である略中心角180度の位置まで、前記下部第二スプリング部の螺旋方向と異なる方向の螺旋状に形成され、前記下部第一スプリング部の上端部と下部第二スプリング部の下端部、下部第一スプリング部の下端部と下部第二スプリング部の上端部、前記上部第一スプリング部の上端部と上部第二スプリング部の下端部、上部第一スプリング部の下端部と上部第二スプリング部の上端部が、圧縮した際、重なり合わないように形成されていることが望ましい。
【0016】
このように構成されているため、下部第一スプリング部及び上部第一スプリング部によって、あたかも一つのスプリング部が形成される。しかも、このスプリング部は螺旋状に中心角0度から略中心角180度の範囲に形成される。
また同様に、下部第二スプリング部及び上部第二スプリング部によって、あたかも一つのスプリング部が形成され、このスプリング部は螺旋状に略中心角180度から略中心角360度(中心角0度)の範囲に形成される。
したがって、本発明にかかる合成樹脂製ばねにあっては、二つの螺旋状のスプリング部が、互いに他のスプリング部の螺旋中に入りこむことなく形成される。その結果、射出成形のための金型を簡単なものすることができ、合成樹脂製ばねを安価に製造することができる。しかも、前記下部第一スプリング部の上端部と下部第二スプリング部の下端部、下部第一スプリング部の下端部と下部第二スプリング部の上端部、前記上部第一スプリング部の上端部と上部第二スプリング部の下端部、上部第一スプリング部の下端部と上部第二スプリング部の上端部が、圧縮した際、重なり合わないように形成されているため、ばねとして有効に機能する。
【0017】
ここで、前記下部第一スプリング部、下部第二スプリング部、上部第一スプリング部、上部第二スプリング部の各スプリング部の軸線を構成する曲線は二つの曲線であり、前記曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、かつ前記曲線とパーティングラインの交点が、軸線を構成する曲線同士が交わる接続点であることが望ましい。
このように、軸線を構成する曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、かつその交点が軸線を構成する曲線同士が交わる接続点であるため、この合成樹脂製ばねは二分割の金型で成形することができ、安価に、しかも効率よく製造することができる。
【0018】
更に、前記上端リング部上に、更に、前記下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部と同一のスプリング部と、中間リング部と同一のリング部と、前記上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部と同一のスプリングとが、順次繰り返し形成されていることが望ましい。このように順次繰り返し形成することにより、所望の高さ寸法を有する合成樹脂製ばねを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、螺旋状のスプリング部において、圧縮、引っ張りに対して作用しない部分が極力少なく、また2分割の金型で製作することができる合成樹脂製ばねを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明にかかる合成樹脂製ばねの一実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。尚、図1は本発明の一実施形態を示す斜視図、図2は図1に示した合成樹脂製ばねの平面図、図3は図1に示した合成樹脂製ばねの側面図、図4は図1に示した合成樹脂製ばねの正面図、図5は図3におけるP−P断面図、図6は図1に示したスプリング部のリード角の変化を示す図である。
【0021】
本発明にかかる合成樹脂製ばねは、図1に示すように、下端リング部2上には下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3bが形成されている。この下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3bの上端には中間リング部4が形成され、この中間リング4部上には、上部第一スプリング部5a及び上部第二スプリング部5bが形成されている。そしてまた、前記上部第一スプリング部5a及び上部第二スプリング部5bの上端には、上端リング部6が形成されている。そして、これら部位は合成樹脂によって一体的に形成されている。
【0022】
更に、前記合成樹脂製ばね1の下部第一スプリング部3a,下部第二スプリング部3b、上部第一スプリング部5a,上部第二スプリング部5bについて、詳述する。
これら下部第一スプリング部3a,下部第二スプリング部3bは、同長さ、同じ螺旋方向、同断面形状、同ピッチに形成されている。また、上部第一スプリング部5a,上部第二スプリング部5bも同様に、同長さ、同じ螺旋方向、同断面形状、同ピッチに形成されている。
【0023】
また、下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3bと、上部第一スプリング部5a及び上部第二スプリング部5bとは、螺旋方向が異なり、同長さ、同断面形状、同ピッチに形成されている。
【0024】
したがって、以下の説明において、下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3bについて説明し、必要に応じて上部第一スプリング部5a及び上部第二スプリング部5bの説明を加える。
【0025】
前記下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3bの断面形状は、図5に示すように、内周側の厚さ寸法Tが外周側の厚さ寸法tよりも大きな寸法に形成されている。即ち、下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3b断面形状の上下部には、傾斜部3a1,3b1が形成されている。また、前記下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3b断面形状の内側部には、直線部3a2,3b2が形成され、外側部には、円弧部3a3,3b3が形成されている。
尚、上部第一スプリング部5a及び上部第二スプリング部5bも、前記した下部第一スプリング部3a及び下部第二スプリング部3bと同一の断面形状を備えている。
【0026】
また、下部第一スプリング部3a、下部第二スプリング部3b、上部第一スプリング部5a、上部第二スプリング部5bの軸線は、図6に示すように形成されている。
この軸線はスプリング部の断面中心を連ねた線であって、スプリング部の軸線を円筒状の合成樹脂製ばね1を平面上に展開すると図6に示すように表される。この図6にあっては、下部第一スプリング部3aと下端リング2との接続点を始点(中心角0度)として、横軸に円筒状合成樹脂製ばねの軸線を中心とする中心角度、縦軸に下端リング部から上端リング部に至る高さ寸法(距離)が取られている。
【0027】
そして、下部第一スプリング部3aは中心角0度から中心角180度まで形成され、下部第二スプリング部3bは中心角180度から中心角360度形成され、夫々の上端に中間リング部4が形成されている。
また、下部第一スプリング部3aの軸線は二つの曲線A1,B1から構成され、パ−ティングライン(金型の分割線)P−P線上で、リード角θが0度になる曲線が選択されている。ここで、前記リード角θは、スプリング部の軸線の接線と水平面とのなす角度である。
【0028】
具体的に一例を挙げれば、二つの曲線A1,B1は、同一半径の円の一部を描く二次曲線を選択するのが望ましい。
即ち、曲線A1は、図6のC点(パ−ティングラインと下端リング部の接点)を中心した円の4分の1円として描かれる。曲線B1は、図6のD点(パ−ティングラインと中間リング部の交点)を中心した円の4分の1円として描かれる。したがって、曲線A1と曲線Bとの接続点Eにおいて、両曲線A1,B1は滑らかな曲線となり、接続点Eにおけるリード角θは0度となる。
【0029】
また、下部第二スプリング部3bは、前記下部第一スプリング部3aと始点が中心角で180度ずれているのみで、同一の曲線で構成されている。即ち、曲線A2は、図6のF点(パ−ティングラインと下端リング部の接点)を中心した円の4分の1円として描かれる。曲線B2は、図6のG点(パ−ティングラインと中間リング部の交点)を中心した円の4分の1円として描かれる。したがって、曲線A2と曲線B2との接続点Hにおいて、両曲線A2,B2は滑らかな曲線となり、接続点Hにおけるリード角θは0度となる。
【0030】
更に、上部第一スプリング部5a、上部第二スプリング部5bについて説明する。
上部第一スプリング部5aは、中間リング部4上面の中心角180度の位置から上端リング6部の下面の中心角0度位置まで形成されている。また、上部第二スプリング部5bは、中間リング部4上面の中心角360度の位置から上端リング部6の下面の中心角180度位置まで形成されている。
【0031】
また、上部第一スプリング部5aの軸線は二つの曲線A3,B3から構成され、パ−ティングライン(金型の分割線)P−P線上で、リード角θが0度になる曲線が選択される。
具体的に一例を挙げれば、二つの曲線A3,B3は、同一半径の円の一部を描く二次曲線である。即ち、曲線A3は、図6のI点(パ−ティングラインと上端リング部の交点)を中心した円の4分の1円として描かれる。曲線B3は、図6のD点(パ−ティングラインと中間リングの交点)を中心した円の4分の1円として描かれる。
したがって、曲線A3と曲線B3との接続点Jにおいて、両曲線A3,B3は滑らかな曲線となり、接続点Jにおけるリード角θは0度となる。
【0032】
また、上部第二スプリング部5bは、前記上部第一スプリング部5aと始点が中心角として180度ずれているのみで、同一の曲線で構成されている。
即ち、曲線A4は、図6のL点(パ−ティングラインと上端リング部の交点)を中心した円の4分の1円として描かれる。曲線B4は、図6のG点(パ−ティングラインと中間リング部の交点)を中心した円の4分の1円として描かれる。
したがって、曲線A4と曲線B4との接続点Kにおいて、両曲線A4,B4は滑らかな曲線となり、接続点Hにおけるリード角θは0度となる。
【0033】
尚、この具体例にあっては、前記説明から明らかなように、曲線A1,B1,A2,B2,A3,B3,A4,B4は、同一半径の円の一部を描く二次曲線が用いられている。
【0034】
このように、各スプリング部の軸線が形成されているため、図12に示すようなばね部に水平形状部を形成することなく、リード角が中心角0度の極小領域を形成することができため、スプリング部中において圧縮、引っ張りに対して作用しない部分を極力少なくすることができる。
また、リード角が0度の点(曲線の接続点)が中心角180度の間隔をもって形成され、しかも前記点を金型のパ−ティングラインが横切るように形成されるため、二分割の金型で成形することができ、安価に、しかも効率よく合成樹脂製ばねを製造することができる。
【0035】
また、上部第一のスプリング部5aは,中間リング部4を介して下部第一スプリング部3aと共に一つのスプリングを形成し、また上部第二のスプリング部5bも,中間リング部4を介して下部第二スプリング部3bと共に一つのスプリングを形成している。
【0036】
即ち、前記下部第一スプリング部3aと上部第一のスプリング部5aによって形成されるスプリングは、下部第一スプリング部3aによって中心角0度の位置から中心角180度の位置まで右回りの螺旋状に形成され、更に上部第一スプリング部5aによって中心角180度の位置から中心角0度の位置まで左周りの螺旋状に形成されている。
また下部第二スプリング部3bと上部第二のスプリング部5bによって形成されるスプリングは、下部第二スプリング部3bによって中心角180度の位置から中心角360度の位置まで右回りの螺旋状に形成され、更に上部第二のスプリング部5bによって中心角360度の位置から中心角180度の位置まで左周りの螺旋状に形成されている。
【0037】
このように、上部第一のスプリング部5a及び下部第一スプリング部3aとで形成されるスプリング部内部に、上部第二のスプリング部5b及び下部第二のスプリング部3bとで形成されるスプリング部が螺旋状に入り込んでいないために、金型を容易にかつ安価に製造することができる。
【0038】
上記実施形態形態にあっては、各スプリング部を構成する二つの曲線として円を形成する二次曲線を例示したが、本発明にあっては二つの曲線に限定されるものではなく、また円を形成する二次曲線に限定されるものではない。例えば、放物線を形成する二次曲線であっても良いし、また3つ以上の曲線を組み合わせたものであっても良い。尚、下端リング部、中間リング部、上端リング部の近傍において、前記スプリング部の軸線が直線状に形成されていても良い。
【0039】
また、上記実施形態では、前記下部第一スプリング部の中心角が0度から180度、下部第二スプリング部の中心角が180度から360度、上部第一スプリング部の中心角が180度から0度、上部第二スプリング部の中心角が360度から180度であることを説明したが、ばねを圧縮した際、前記下部第一スプリング部の上端部と下部第二スプリング部の下端部、下部第一スプリング部の下端部と下部第二スプリング部の上端部、前記上部第一スプリング部の上端部と上部第二スプリング部の下端部、上部第一スプリング部の下端部と上部第二スプリング部の上端部が重なり合わないようにするため、その角度を若干、小さめの角度に形成するのが好ましい。
【0040】
更に、上端リング部上に、前記下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部と同一のスプリング部を形成し、更にその上に中間リング部と同一のリング部を形成し、更にそのリング部の上に、前記上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部と同一のスプリングを形成しても良く、これらを順次繰り返し形成しても良い。
このように形成することにより、所望の高さ寸法を有する合成樹脂製ばねを得ることができる。
【0041】
次に、本発明にかかる合成樹脂製ばねの第二の実施形態について、図7及び図8に基づいて説明する。尚、図7(a)は、第二の実施形態の側面図、(b)は平面図であり、図8は、図8は図7に示したスプリング部のリード角の変化を示す図である。
この合成樹脂製ばね7は、下端リング部7a上に形成された螺旋状のスプリング部7bと、前記スプリング部7bの上端に形成された上端リング部7cとを備えている。そして、これら部位は、合成樹脂によって一体に成形され、全体形状として、円筒形状に形成れている。
【0042】
前記スプリング部7bを平面に展開すると、その軸線は、図8に示すように、複数の曲線が接続された曲線として表すことができる。この軸線はスプリング部7bの断面中心を連ねた線であり、この図8にあっては、下端リング部7aとスプリング部7bとの接続点を始点(中心角0度)として、横軸に円筒状合成樹脂製ばね7の軸線を中心とする中心角度、縦軸に下端リング部7bから上端リング部7cに至る寸法(距離)が取られている。
なお、図8においては、中心角度として720度まで図示し、その後は省略している。
【0043】
そして、スプリング部7aの軸線は、複数の曲線M1〜Mnから構成され、パ−ティングライン(金型の分割線)P−P線上で、リード角θが0度になる曲線が選択されている。ここで、前記リード角θは、スプリング部の軸線の接線と水平面とのなす角度である。
【0044】
具体的に一例を挙げれば、複数の曲線M1〜Mnは、同一半径の円の一部を描く二次曲線を選択するのが望ましい。即ち、曲線M1は、図8のN1点(パ−ティングラインと下端リング部の接点)を中心した円の4分の1円として描かれる。曲線M2は、図8のN2点を中心した円の4分の1円として描かれる。そして、順次、N3点、N4点、N5点…NN点を中心した円の4分の1円として描かれる。
したがって、複数の曲線M1〜Mnの接続点は、O1点、O2点、O3点、O4点,O5点…ON点(図示せず)において接続されると共に、滑らかな曲線となり、前記接続点におけるリード角θは0度となる。
【0045】
また、前記スプリング部7aの軸線を構成する曲線M1〜MnとパーティングラインP−Pとが中心角90度、中心角270度、中心角450度、中心角630度…と、中心角180度の間隔をもって交わる。更に、前記スプリング部7aの軸線を構成する曲線M1〜MnとパーティングラインP−Pの交点が、スプリング部7aの軸線を構成する曲線同士が交わる接続点O1点、O3点、O5点…等でもある。
【0046】
したがって、前記接続点O1点、O3点、O5点等のパーティングラインとの交点においてもリード角が0度となるため、スプリング部中に圧縮、引っ張りに対して作用しない部分を極力少なくすることができる。
また、スプリング部の軸線を構成する曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、リード角が0度の点(曲線の接続点)が、金型のパ−ティングラインとの交点となるように形成されるため、この合成樹脂製ばねは二分割の金型で成形することができ、安価に、しかも効率よく製造することができる。
【0047】
尚、上記実施形態にあっては、前記スプリング部の軸線が複数の曲線から成る場合を示したが、図8の仮想線で示すように、パーティングラインとの交点を含まない領域において、直線部分Q1,Q2,Q3を含んでいても良い。
また、上記第二の実施形態形態にあっては、各スプリング部を構成する二つの曲線として円を形成する二次曲線を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、放物線を形成する二次曲線であっても良いし、また3つ以上の曲線を組み合わせたものであっても良い。
更に、上端リング部上に、スプリング部と同一のスプリング部を形成し、更にその上に下端リング部と同一のリング部を形成しても良く、これらを順次繰り返し形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、成形技術によって製造される合成樹脂製ばねに好適に用いられるものであり、製造された合成樹脂製ばねは、各種用途において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は本発明の一実施形態にかかる合成樹脂製ばねを示す斜視図である。
【図2】図2は図1に示した合成樹脂製ばねの平面図である。
【図3】図3は図1に示した合成樹脂製ばねの側面図である。
【図4】図4は図1に示した合成樹脂製ばねの正面図である。
【図5】図5は図3におけるP−P断面図である。
【図6】図6は図1に示したスプリング部のリード角の変化を示す図である。
【図7】図7(a)は、第二の実施形態の側面図、(b)は平面図である。
【図8】図8は、図7に示したスプリング部のリード角の変化を示す図である。
【図9】図9は従来の合成樹脂製ばねを示す斜視図である。
【図10】図10は図9に示した合成樹脂製ばねのリード角の変化を示す図である。
【図11】図11は従来の合成樹脂製ばねを示す斜視図である。
【図12】図12は図11に示した合成樹脂製ばねのリード角の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 構成樹脂製ばね
2 下端リング部
3a 下部第一スプリング部
3b 下部第二スプリング部
4 中間リング部
5a 上部第一スプリング部
5b 上部第二スプリング部
6 上端リング部
A1〜A4 各スプリング部の軸線を構成する曲線
B1〜B4 各スプリング部の軸線を構成する曲線
M1〜MN スプリング部の軸線を構成する曲線
P−P パーティングライン
θ リード角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端リング部上に形成された螺旋状のスプリング部と、前記スプリング部の上端に形成された上端リング部とを備え、これら部位が合成樹脂によって一体に成形された円筒状の合成樹脂製ばねであって、
前記スプリング部を平面に展開した状態において、前記スプリング部の軸線は少なくとも複数の曲線からなり、前記曲線は、パーティングラインとの交点においてリード角が0度となる曲線であることを特徴とする合成樹脂製ばね。
【請求項2】
前記スプリング部の軸線を構成する曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、かつ前記スプリング部の軸線を構成する曲線とパーティングラインの交点が、スプリング部の軸線を構成する曲線同士が交わる接続点であることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ばね。
【請求項3】
下端リング部上に形成された下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部と、前記下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部の上端に形成された中間リング部と、前記中間リング部上に形成された上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部と、前記上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部の上端に形成された上端リング部とを少なくとも備え、これら部位が合成樹脂によって一体に成形された合成樹脂製ばねであって、
前記下部第一スプリング部、下部第二スプリング部、上部第一スプリング部、上部第二スプリング部の各スプリング部を平面に展開した状態において、各スプリング部の軸線は、夫々少なくとも複数の曲線からなり、
前記曲線は、パーティングラインとの交点においてリード角が0度となる曲線であることを特徴とする合成樹脂製ばね。
【請求項4】
前記下部第一スプリング部が下端リング部に接続された点を始点として、下部第一リング部が螺旋状に略中心角180度の位置まで形成され、
前記上部第一スプリング部が中間リング部を介して前記下部第一スプリング部の終点位置である中心角から、下部第一スプリング部の始点である中心角0度まで、前記下部第一スプリング部の螺旋方向と異なる方向の螺旋状に形成され、
かつ、下部第二スプリング部が下部第一スプリング部と同一方向に螺旋状に略中心角180度の位置から略中心角360度の位置まで形成され、前記上部第二スプリング部が中間リング部を介して前記下部第二スプリング部の終点位置である中心角から、下部第二スプリング部の始点である略中心角180度の位置まで、前記下部第二スプリング部の螺旋方向と異なる方向の螺旋状に形成され、
前記下部第一スプリング部の上端部と下部第二スプリング部の下端部、下部第一スプリング部の下端部と下部第二スプリング部の上端部、前記上部第一スプリング部の上端部と上部第二スプリング部の下端部、上部第一スプリング部の下端部と上部第二スプリング部の上端部が、圧縮した際、重なり合わないように形成されていることを特徴とする請求項3に記載された合成樹脂製ばね。
【請求項5】
前記下部第一スプリング部、下部第二スプリング部、上部第一スプリング部、上部第二スプリング部の各スプリング部の軸線を構成する曲線は二つの曲線であり、前記曲線とパーティングラインとが中心角180度の間隔をもって交わり、かつ前記曲線とパーティングラインの交点が、軸線を構成する曲線同士が交わる接続点であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載された合成樹脂製ばね。
【請求項6】
前記上端リング部上に、更に、前記下部第一スプリング部及び下部第二スプリング部と同一のスプリング部と、中間リング部と同一のリング部と、前記上部第一スプリング部及び上部第二スプリング部と同一のスプリングとが、順次繰り返し形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載された合成樹脂製ばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−285423(P2007−285423A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114049(P2006−114049)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(502413201)エルフ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】