説明

合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法及びその加工装置

【課題】ブリッジ強度を低下させずに薄皮残りのない周方向スリットを有する合成樹脂製キャップを得る。
【解決手段】 刃先開き角度の違う2種類のカッター7、8を使用して、刃先開き角度が35°〜60°の第1カッター7と、前記第1カッターよりも刃先開き角度が小さく10°〜40°の刃先開き角度を有する第2カッター8の刃先開き角度の違う2種類のカッターを使用し、第1カッターでブリッジ6に達しない深さまで切断する第1切断工程と、第2カッターで少なくともブリッジ6に達するまで切断する第2切断工程の2段階に分けて切断してスリットを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパーエビデントバンド(以下、TEバンドという)付き合成樹脂製キャップにおけるTEバンド破断用の周方向の弱化ラインの加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料ボトル等のキャップとして、例えば図1に示すようなTEバンド付き合成樹脂キャップ1が多用されている。該キャップ1は、TEバンド4とキャップ本体のスカート壁2下端とを連結する破断可能な弱化ラインが、周壁全周にわたって形成されたスリット5と、該スリットを跨いで所定間隔毎に内周面から突出形成された複数個のブリッジ6とにより形成されている。このような合成樹脂製キャップにおけるスリット5は、キャップ成形後にカッターによる切断加工により形成されるが、本出願人は、このようなスリットを良好に形成するために予備カッティングと本カッティングの2段階に分けてカッティングを行なう方法及び装置を先に提供した(特許文献1)。ところで、近年この種キャップにおいて、ボトルへの内容液充填中にボトル口外周ネジ部に付着した内容物をキャップ閉栓後に洗浄できるように、キャップのスカート壁上部に洗浄溝3を設け、充填密封後に例えパストライザー槽での殺菌洗浄中にノズルから噴射される温水や洗浄水が、前記洗浄溝3からキャップ内周面とボトル口外周面との間に進入して、洗い流すようにしているものが多用されている。一方、前記スリット5が形成されている部分は、丁度キャップとボトル口部との隙間が小さい位置に面しているため、汚れがその部分に溜まりやすく、例えば茶飲料の場合は茶渋等の汚れがスリットに進入して付着することがあり、該スリットに対しても外方より積極的に洗浄水を噴射してスリットから洗浄水を進入させて洗浄するようなことが行われている。ところが、従来の前記スリットは幅が細いため洗浄水が通り難く、該スリットに内容物の汚れが付着残留する欠点があり、それを改良するために、本出願人はスリットを形成する切断刃の先端部分の開き角度を15〜45°と比較的大きくし、且つそれに続く部分の開き角度を10〜25°の範囲とすることを提案した(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−71787号公報
【特許文献2】特開2005−255233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献2の方法により、刃先開き角度が大きいカッターでカッティングすることにより、スリットの洗浄性及びスリットからの洗浄水の通りがよくなり、スリットに残留付着した茶渋等の汚れを良好に洗浄除去することが可能となった。しかしながら、従来よりも先端角度が大きなカッターを使用するため、その分カッターの切断性が悪くなり、内周側に薄い膜状の切り残りが発生する場合があった。これはキャップが合成樹脂製のため、カッターの切込みが深くなり残厚が少なくなると、カッターの刃先先端が当たる部分が弾性により薄膜状に伸びきって切断されずに残る現象であり、これを生産現場では薄皮残りと称している。この薄皮残りは、特に切断開始位置に発生し易い。
【0004】
この薄皮残りが発生すると、開栓トルクが増大し開栓性が悪化することになる。さらに、薄皮残りがあると、開栓時にTEバンドが破断されずにバンド外れが生じる恐れもある。薄皮残りを発生させずにスリットを形成するためには、カッターの切込み量をさらに大きくすればよいが、カッターの切込み量を大きくすると、ブリッジが完全に切断、あるいは切込みが深く形成されるおそれがある。事実、本発明者の実験によれば、ブリッジの開栓強度を従来と同等の13kgf維持するように、ブリッジへの切込みを制限して切断した場合は、薄皮残りが40%も発生する現象が生じ、ブリッジ強度を11kgfに低く設定して切込み量を増やした場合は、薄皮残りが解消された。しかしながら、ブリッジ強度が弱いと搬送時やキャッピング時にブリッジ切れが生じる恐れがあるため、ブリッジ強度を低下させずに薄皮残りを解消する方法が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、ブリッジ強度を低下させずに薄皮残りを解消することができる合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法は、タンパーエビデントバンドを有する合成樹脂製キャップのスカート壁下端に周方向に破断可能に形成される弱化ラインが、周方向スリットと該スリットを跨いで内周側に形成された複数個のブリッジからなる合成樹脂製キャップにおけるスリットの形成方法であって、刃先開き角度が35°〜60°の第1カッターで前記ブリッジに達しない深さまで切断する第1切断工程と、前記第1カッターよりも小さい刃先開き角度10°〜40°を有する第2カッターで少なくともブリッジに達するまで切断する第2切断工程を有し、刃先開き角度の違う2種類のカッターを使用して2段階に分けて弱化ラインを形成することを特徴する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法において、前記第1切断工程は2個の前記第1カッターでそれぞれ略半周づつ切断し、第2切断工程は2個の前記第2カッターでそれぞれ略半周づつ切断するようにしたものである。また、請求項3に係る発明は請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法において、前記第2切断工程の切断開始位置が、前記第1切断工程の切断開始位置よりも周方向にずれているようにしたものである。
【0008】
前記加工方法を実施するための本発明の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置は、タンパーエビデントバンドを有する合成樹脂製キャップのスカート壁下端に周方向に破断可能に形成される弱化ラインが、周方向スリットと該スリットを跨いで内周側に形成された複数個のブリッジからなる合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置であって、キャップを回転自在に支持する支持プレートを有するポケットが所定ピッチで設けられた弱化ライン形成ターレット、前記各ポケットに対応して前記支持プレート上に逆さ状態で載置されるキャップの天壁内面を押圧して前記支持プレートとでキャップを挟持してキャップを回転駆動する回転押圧ヘッド、前記スリット形成ターレットの回転軌道の外側に配置され搬送中のキャップにスリットを形成するカッター群からなり、該カッター群が刃先開き角度が35°〜60°でブリッジに達しない深さまで切断する第1カッターと、その下流側に配置され刃先開き角度が10°〜40°で少なくともでブリッジに達するまで切断する第2カッターの組み合わせからなることを特徴するものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置において、前記第1カッターは、断面形状が刃先開き角度α1とその基部から続く開き角度β1からなる2段の開き角度を有し、且つ前記第2カッターは、断面形状が刃先開き角度α2とその基部から続く開き角度β2からなる開き角度を有し、前記開き角度は、α1>β1、α2≧β2、且つα1>α2の関係を満たしてなるようにしたものである。また、請求項6に係る発明は、前記第1カッターが、各カッターが第1切断を半周づつ切断を行うように所定間隔をおいて2個配置され、且つ第2カッターが第2切断をそれぞれ半周づつ切断する2個のカッターで構成されていることを特徴とするものである。さらに、請求項7に係る発明は、請求項4〜6何れかに記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置において、前記第2カッターは、前記第1カッターの切断開始位置よりも周方向にずれた位置で切断を開始するように配置されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の弱化ライン加工方法及び装置によれば、従来と同様なブリッジ強度を維持しながら、薄皮残りが生じないという相反する要求を同時に満足できる合成樹脂製キャップを得ることができる。特に、刃先開き角度の相違する2種類のカッターを使用し、最初に刃先開き角度の大きいカッターで途中まで切込み、次いで刃先開き角度の小さいカッターを使用して少なくともブリッジに達するまで切断するので、ブリッジを破断することなく、且つ薄皮残りを発生させることなくスリットを形成することができる。また、請求項2及び請求項6の構成によれば、ひとつのカッターで半周づつカッティングするので、全周を同一カッターにより連続して切断する場合と比べて、発熱の上昇を抑えることができ良好に切断することができる。さらに、請求項3及び請求項7の構成によれば、第2切断工程の切断開始位置が、第1切断工程の切断開始位置とずれた位置に設定されているので、薄皮残りが発生しやすい切断開始位置がずれ、より良好に薄皮残りを発生させることなく、弱化ラインを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される合成樹脂製キャップの実施形態を示し、該合成樹脂製キャップ(以下、単にキャップという)は、ボトル口に付着した内容物を密封後に洗浄除去できるようにしたボトル口洗浄用キャップに適用した場合を示し、周方向のスリット部を除き公知の合成樹脂製キャップと同様である。該キャップ1は、スカート壁2の上方部に洗浄溝3が設けられ、TEバンド4とキャップ本体のスカート壁2下端とを連結する破断可能な弱化ライン9が、周壁全周にわたって形成されたスリット5と、該スリット5を跨いで所定間隔毎に内周面から突出形成されたブリッジ6とにより形成されている。このような合成樹脂製キャップにおけるスリット5は、キャップ成形後にカッターによる切断加工により形成されるが、本発明ではスリット5を図3に要部断面形状を示す刃先開き角度の違う2種類のカッターを使用して、図2に示すように2段階で切断して形成する。まず、図2(a)に示すように第1カッター7でブリッジに達しない深さまで切断する第1切断を行ない、次いで同図(b)に示すように第2カッター8で少なくともブリッジ6に達するまで切断する。第2切断は、図示のように第2カッター8の刃先がブリッジ6に僅かに切り込む程度が望ましい。
【0012】
第1カッター7は第2カッター8よりも刃先開き角度が大きく形成され、それぞれのカッターは、断面形状が図3に示すように、刃先開き角度α1、α2とその基部から続く外方開き角度β1、β2の2段の開き角度を有し、α1>β1、α2≧β2の関係にあり、且つα1>α2の関係を満たすものでなければならない。さらに、上記関係を満たし、具体的には第1のカッターではα1=35〜60°、β1=15〜30°の範囲が望ましく、第2カッターでは、α2=10〜40°、β2=8〜20°の範囲が望ましい。第2カッターではα2=β2でも可能であり、その場合は1段の開き角度となる。
このように刃先開き角度の大きい第1カッターで最初に切断し、次いで刃先開き角度の小さい第2カッターで切断することによって、刃先開き角度の大きいカッターで切断する場合の問題点を解消することができる。そして、各カッターの刃先開き角度を2段階にすることによって、より効果的にスリットの幅を広げることを可能としたものである。上記第1のカッターではα1が35°以下であるとスリットの幅を大きくする効果が少なく、且つ60°以上であると刃先開き角度が大き過ぎ、切断性が極端に悪化するので上記範囲が望ましい。また、β1は、前記刃先開き角度α1部分の刃先幅P1−1と関係するものであり、刃先先端からの距離P1−1位置からの開き角度を小さくすることによって、切込みが進んだ場合のスリット外周面側のスリット幅の広がり過ぎを防止して、適度のスリット幅を確保するものであり、α1より小さい角度であれば任意であるが、β1=15〜30°の範囲が望ましい。そして、開き角度がα1である先端部の刃先幅P1−1は、スリット形成部の肉厚よりも薄くするのが望ましい。P1−2は全体の刃幅であり、α1、β1によって定まる。同様な理由で第2カッターにおけるα2、β2、及びP2−1及びP2−2も上記範囲が望ましい。
【0013】
そして、本実施形態では、さらに、第1カッター及び第2カッターともそれぞれ2個づつ用意し、それぞれのカッターで周方向に約180°強切断し、第1切断及び第2切断とも異なる2つのカッターを使用して周方向切断を行なうこと、及び第1切断が終了して第2切断に移る際、第2切断開始位置は第1切断開始位置から円周方向に約60°ずらして切断を開始するようにしている。
【0014】
図4は、本実施形態に係るキャップの弱化ライン加工装置を備えたキャップの製造装置を示し、図示しない成形装置で成形されたキャップは、供給ターレット10を介してフィン修正ステーションに供給され、フィン修正ターレット11による搬送中にTEバンドに設けられたフィンやフラップが折り曲げ加工され、さらに中継ターレット12を介して、スリット形成ステーション13に供給される。スリット形成ステーション13には、図5に示すように、キャップ1を回転自在に支持する支持プレート14を有するポケット15が所定ピッチで設けられたスリット形成ターレット16が他のターレットと同期して回転駆動可能に配置されている。また、前記各ポケットに対応して前記支持プレート上に逆さ状態で載置されるキャップの天壁内面を押圧して、前記支持プレート14とでキャップ1を挟持して所定の回転速度で回転駆動するための回転押圧ヘッド17が上下動可能に設けられている。そして、前記スリット形成ターレット16の回転軌道の外側に搬送中のキャップにスリットを形成するためのカッター群20が適宜のカッターホルダ25に固定されて配置されている。
【0015】
本実施形態に係るカッター群20の配置の詳細を図6及び図7を参照しながら説明する。本実施形態のカッター群は、ターレットの回転方向上流側から順に2個の第1カッター21−1、21−2と2個の第2カッター22−1、22−2と4個のカッターからなり、さらに第2カッター22−2の下流側にキャップスカート壁上方に形成する洗浄用スリットを形成するための洗浄溝形成用カッター23が配置されている。前記第1カッター及び第2カッターとも刃長が、キャップのスリット形成部外周の半周よりも僅かに長い長さ、つまりキャップが等速回転しながら該カッター位置を通過する間に、一つのカッターで半周よりも僅かに長い範囲にスリットが形成できるような長さa、c、e、g(図6ではスリット形成ターレットの中心に対する円弧角度で表している、以下同様)に形成されている。第1カッター21−1と第1カッター21−2の間隔bは、その間をキャップが1回転弱回転して通過できる間隔に設定している。そして、第1カッター21−2と第2カッター22−1との間隔d(図7では半時計方向円弧DEに相当する)は、第1カッター21−1、21−2により全周に形成された第1段階スリットに続いて第2段階スリットを形成するのに第2カッターでの切断始めを第1カッター21−2の切断始めの位置と所定間隔(図7では半時計方向円弧CEに相当する)ずれるように設定されている。本実施形態では約60°ずらして位置されているが、この値はこれに限るものではない。そして、第2カッター22−1、22−2間の間隔f(図7では半時計方向円弧FGに相当する)は、第1カッター間の間隔と同様に、その間をキャップが1回転弱回転して通過できる間隔に設定している。
【0016】
上記カッター群の配置によるキャップへのスリットの形成は、図7に模式的に示すように、キャップが区間aを通過することによって約1/2強回転して第1カッター21−1による切断開始位置Aから切断終了位置Bまでの半周以上の第1切断がされ、その後b区間を通過する間に約1回転弱して第1カッター21−2が配置されている位置に達し、区間cを通過することによって約1/2強回転して第1カッター21−2による切断開始位置Cから切断終了位置Dまでの残り半周の第1切断がなされて全周に亘る第1切断を終了する。第1カッター21−1による切断開始位置及び切断終了位置が、第1カッター21−2の切断終了位置B及び切断開始位置Cと重なるようにすることによって、両カッター間の切断繋ぎ目に切断残りが生じることなく、全周に亘って完全に切断することができる。本実施形態では、第1カッター21−1の切断と第1カッター21−2の切断、及び後述する第2カッター22−1の切断と第2カッター22−2の切断が、それぞれ重複部(図7において、時計方向円弧BC、DA、FG、HEに相当する)を有し、約12〜13°の範囲にわたって重って切断するように配置してある。
【0017】
ついで、第1カッタ21−2による第1切断終了後d区間を通過する間に、キャップは、半回転以上(区間c<区間dの関係にある)回転して第2カッター22−1の切断開始位置Eに達し、第2カッター22−1による第2切断が開始される。したがって、キャップにおいて第2切断開始位置は、図7に示すように、第1切断開始位置Cよりも円周方向下流側にずらした位置で第2切断が開始されることになる。その理由は、薄皮残りはカッターの切り始めに発生し易いため、第1切断開始位置と第2切断開始位置をずらすことによって、より良好に薄皮残りが生じることなく、良好に切断することができる。第1切断開始位置と第2切断開始位置のずれ、つまり図7におけるCとEの間隔は、上記効果を奏するためには約20°〜160°の範囲であれば良いが、間隔が小さすぎると効果が少なく、広過ぎるとその分余分なスペースを必要とするので、35°〜90°の範囲がより望ましい。
【0018】
以上のようにして第2切断が開始され、キャップは第2カッター22−1による切断開始位置Eから切断終了位置Fまでの区間eを通過することによって約1/2強回転して半周以上の第2切断がなされ、その後f区間を通過する間に約1回転弱して第2カッター22−2が配置されている位置に達し、第2カッター22−2による切断開始位置Gから切断終了位置Hまでの区間gを通過することによって約1/2強回転して残り半周の第2切断がなされ、第2切断を終了して、弱化ラインの形成を終了する。
以上のように、刃先開き角度が相違する上記2種類のカッターで2段階に分けて切断することによって、薄皮残りが発生せずに、且つブリッジ強度が11〜17kgfを確保できる合成樹脂製キャップを得ることができる。
【実施例1】
【0019】
上記弱化ライン加工装置において、第1カッターの刃先の開き角度をα1=42°、β1=20°、第2カッターの刃先開き角度をα2=32°、β2=16°、P1=0.5mm、P2=0.4mmのカッターを使用し、口径(呼び径)28mmのボトル用の図1に示す形状のボトル口洗浄用キャップの弱化ライン加工を行った。その際、第1切断での第1カッター21−1と第1カッター21−2との切断開始部及び切断終了部での重なり部の角度、及び第2切断段階での第2カッター22−1と第2カッター22−2との切断開始部及び切断終了部での重なり部の角度を、それぞれ約12°〜13°の範囲に設定し、且つ第2切断カッター22−1の切断開始位置を第1切断カッター21−2の切断開始から約60°ずらして開始するようにした。そして、弱化ラインの形成は、ブリッジ強度13kgfが得られることを目標にして、高さ2.5mm、幅3.5mmのスリットを形成した。弱化ラインの形成は、第1切断における切込み深さを図2に示すようにブリッジ近くまで切りこみ、第2切断での切込みは第2カッターの刃先が僅かにブリッジに切りこむ程度に切り込んでいった。なお、ブリッジ間の間隔は適宜選択できるが、周方向に2.0〜4.0mmの範囲の間隔が望ましい。
【0020】
そのような切断を試料20個について行い、得られた各キャップのブリッジ強度を測定すると共に、薄皮残りの発生を調べた。その結果を表1に示す。表1においては、ブリッジ強度については、20個における最大値と最小値、及び平均値を示している。その結果、ブリッジ強度については、平均値が13.467kgfであり、目標とする13kgfを得ることができた。また、薄皮残りについては、1個も観察されず試料全てについて薄皮残りがなく、良好に切断されていることが確認された。一方、比較例として、前記第1カッターのみで、ブリッジに達するまで切断して、弱化ラインを形成した(即ち、従来の方法に相当する)。その結果を、同様に表1に対比して示す。その結果、比較例の場合は、ブリッジ強度は実施例の場合より若干低かったが、ほぼ目標とするブリッジ強度が得られた。しかしながら、20個中8個に薄皮残りが発生した。そのことは、比較例の場合は、従来のブリッジ強度を維持しようとすれば多くの薄皮残りが発生するので、弱いブリッジ強度でしか薄皮残りの発生を抑制できないが、実施例の場合は従来と同様なブリッジ強度を得ながら薄皮残りの発生がないキャップを得ることができることを示している。
以上の結果より、本発明の方法及び装置が、薄皮残りの低減に対して優れた効果を奏することが確認された。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、タンパーエビデントバンドを有する合成樹脂製キャップの弱化ライン加工に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るTEバンド付き合成樹脂製キャップの一部断面正面図である。
【図2】弱化ライン形成工程を示す要部断面図であり、(a)は第1切断時の状態、(b)は第2切断時の状態を示す。
【図3】(a)は第1カッターの要部正面断面図、(b)は第2カッターの要部正面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るキャップの弱化ライン加工装置を備えたキャップ製造ラインの配置平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るキャップの弱化ライン加工装置の要部断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るキャップの弱化ライン加工装置におけるカッター群の配置を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るキャップの弱化ライン加工方法の工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ボトル口洗浄用剛性樹脂製キャップ 2 スカート壁
3 洗浄溝 4 タンパーエビデントバンド
5 スリット 6 ブリッジ
7、21−1、21−2 第1カッター 9 弱化ライン
8、22−1、22−2 第2カッター
10 供給ターレット 11 フィン修正ターレット
12 中継ターレット 13 スリット形成ステーション
14 支持プレート 15 ポケット
16 スリット形成ターレット 17 回転押圧ヘッド
20 カッター群 23 洗浄溝形成用カッター
25 カッターホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパーエビデントバンドを有する合成樹脂製キャップのスカート壁下端に周方向に破断可能に形成される弱化ラインが、周方向スリットと該スリットを跨いで内周側に形成された複数個のブリッジからなる合成樹脂製キャップにおけるスリットの形成方法であって、刃先開き角度が35°〜60°の第1カッターで前記ブリッジに達しない深さまで切断する第1切断工程と、前記第1カッターよりも小さい刃先開き角度10°〜40°を有する第2カッターで少なくともブリッジに達するまで切断する第2切断工程を有し、刃先開き角度の違う2種類のカッターを使用して2段階に分けて弱化ラインを形成することを特徴する合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法。
【請求項2】
前記第1切断工程は2個の前記第1カッターでそれぞれ略半周づつ切断し、第2切断工程は2個の前記第2カッターでそれぞれ略半周づつ切断する請求項1に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法。
【請求項3】
前記第2切断工程の切断開始位置が、前記第1切断工程の切断開始位置よりも周方向にずれている請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工方法。
【請求項4】
タンパーエビデントバンドを有する合成樹脂製キャップのスカート壁下端に周方向に破断可能に形成される弱化ラインが、周方向スリットと該スリットを跨いで内周側に形成された複数個のブリッジからなる合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置であって、キャップを回転自在に支持する支持プレートを有するポケットが所定ピッチで設けられた弱化ライン形成ターレット、前記各ポケットに対応して前記支持プレート上に逆さ状態で載置されるキャップの天壁内面を押圧して前記支持プレートとでキャップを挟持してキャップを回転駆動する回転押圧ヘッド、前記スリット形成ターレットの回転軌道の外側に配置され搬送中のキャップにスリットを形成するカッター群からなり、該カッター群が刃先開き角度が35°〜60°でブリッジに達しない深さまで切断する第1カッターと、その下流側に配置され刃先開き角度が10°〜40°で少なくともでブリッジに達するまで切断する第2カッターの組み合わせからなることを特徴する合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置。
【請求項5】
前記第1カッターは、断面形状が刃先開き角度α1とその基部から続く開き角度β1からなる2段の開き角度を有し、且つ前記第2カッターは、断面形状が刃先開き角度α2とその基部から続く開き角度β2からなる開き角度を有し、前記開き角度は、α1>β1、α2≧β2、且つα1>α2の関係を満たしてなる請求項4に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置。
【請求項6】
前記第1カッターは第1切断を略半周づつ切断を行うように所定間隔をおいて2個配置され、且つ前記第2カッターは第2切断を略半周づつ切断を行なうように2個配置されてなることを特徴とする請求項5に記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置。
【請求項7】
前記第2カッターは、前記第1カッターの切断開始位置よりも周方向にずれた位置で切断を開始するように配置されている請求項4〜6何れかに記載の合成樹脂製キャップの弱化ライン加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−136638(P2007−136638A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337101(P2005−337101)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】