説明

合成樹脂製キャップ

【課題】容器に打栓し装着する際に、キャップに歪みが生じることがなく、又、容器への保持力を安定したものとすることができる分別回収容易なキャップを提供する。
【解決手段】容器口部に打栓装着されるキャップ本体2と、キャップ本体2に被着される上蓋3とからなる合成樹脂製キャップ1において、前記キャップ本体2は、筒状側壁17の頂面17aに設けられた溝部18を有し、該溝部18が、その内部に周方向弱化線18bを有する破断溝部18Aと、前記破断溝部18Aと対向するように形成された非破断溝部18Bとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器口部に打栓装着される合成樹脂製キャップに関し、具体的にはキャップ本体に分別回収時の取り外しを容易にする溝部を備えたキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境問題やリサイクル等の観点から分別回収が容易なキャップが求められている。キャップの分別回収を容易とするために、嵌合上壁から外周壁に至る肩部を肉厚にせしめたキャップにおいて、周方向に連続し、分別回収時に破断する深溝と延長溝の2つの溝部がキャップの外周壁に形成され、当該深溝の当該延長溝と反対側の隅部に両溝部を破断させるための主竪弱化線が設けられたヒンジキャップがある(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0003】
又、筒状側壁の厚み部分を上端から下方に延びるスリットにより、当該筒状側壁を内側壁部と外側壁部に隔てて連結し、分別回収時に引き裂き可能な引き裂き領域を、下方に深く延びる前記スリットとし、引き裂き不能な固定領域を、下方に浅く延びる前記スリット、又は、前記スリットが形成されず前記内側壁部と外側壁部とを一体化したキャップがある(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−192053号公報
【特許文献2】特開2007−022567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、キャップ本体の筒状側壁の頂面に溝部を備えたキャップは、周方向に引き裂き可能な弱化部を溝部に形成しているので、分別回収時に該弱化部を引き裂くことでキャップの嵌合力を容易に弱めることができる。
【0006】
しかしながら、このようなキャップにおいては、キャップの全周において、溝部を備える範囲と溝部を備えていない範囲があり、これにより打栓装着する際のキャップの拡径が均等に行われず、キャップに歪みが生じる恐れがある。又、打栓後の容器口部への保持力にもバラツキが生じやすくなる。
【0007】
又、筒状側壁の厚み部分を上端から下端に延びるスリットにより、筒状側壁を内外二重壁構造にしたキャップは、キャップ本体の全周にスリットが形成されているので、上記のような問題は比較的生じにくいが、このようなキャップは分別回収時に引き裂き領域を引き裂き、容器に残った固定領域を取り外す際に、引き裂かれた外周壁を摘み部と共に引っ張り上げると、該外周壁が下端から破断しキャップ本体と分離してしまうことがあり、分別回収に支障をきたす恐れがある。
【0008】
そこで、本発明はこの様な問題が発生せず、分別回収容易なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器口部に打栓装着されるキャップ本体と、キャップ本体に被着される上蓋とからなる合成樹脂製キャップにおいて、前記キャップ本体は、筒状側壁の頂面に溝部を備え、該溝部は、その内部に周方向弱化線を有する破断溝部と、前記破断溝部と対向するように設けられた非破断溝部とからなることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0010】
又、本発明は、前記破断溝部と前記非破断溝部は互いに近接して設けられていることを特徴とする分別回収可能な合成樹脂製キャップである。
【0011】
又、本発明は、前記破断溝部と前記非破断溝部は深さが同一に設けられていることを特徴とする分別回収可能な合成樹脂製キャップである。
【0012】
又、本発明は、前記周方向弱化部は前記筒状側壁に設けられた軸方向弱化部と連続していることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のキャップは、そのキャップ本体における筒状側壁の頂面に破断溝部と、該破断溝部と対向するように形成された非破断溝部とを備えているため、キャップを打栓装着する際の拡径をバランスの良いものとすることができ、又、容器口部への保持力を安定したものとすることができる。
【0014】
又、破断溝部と非破断溝部は対向するように設けられており、すなわち、溝部が形成されていない筒状側壁を介して形成されているので、分別回収時に前記破断溝部を引き裂き、筒状側壁の厚み部に安定して引っ張り力をかけることができ、引き裂かれた側壁が下端から破断しキャップ本体と分離する問題を生じることがない。
【0015】
又、前記破断溝部と前記非破断溝部は互いに近接して設けられることにより、溝部をキャップ全周の広い範囲に渡って形成することができ、容器口部への保持力をより安定したものとすることができる。
【0016】
又、前記破断溝部と前記非破断溝部は深さが同一に設けられていることにより、対向する溝部のバランスを容易に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図2のI−I線における断面図である。
【図2】本発明のキャップの平面図である。
【図3】図2のIII−III線における閉蓋時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図1乃至3に基づき説明する。キャップ1は合成樹脂からなり、図示されない容器に打栓し装着され、使用される。キャップ1は、キャップ本体2とキャップ本体2に被着される上蓋3とを備えている。本実施の形態において、キャップ本体2と上蓋3はヒンジ4により結合されている。
【0019】
キャップ本体2はその先端が放射状の注出筒5と、注出筒5に頂壁6を介して連結された筒部7とを備える。注出筒5の内方の頂壁6には、流体の流通を遮断する遮断壁8が設けられているが、この遮断壁8には、無端状の裂溝9とプルリング10が設けられ、プルリング10は裂溝9の内側に配設される。本実施の形態において遮断壁8は略三角形状に設けられているが、円形、楕円形、多角形等の他の形状も適宜選択することが可能である。
【0020】
頂壁6には、注出筒5と同心状の係止筒11が設けられる。係止筒11は注出筒5より大径に形成される。
【0021】
上蓋3は、天壁12及び天壁12に連続するスカート部13を備え、ヒンジ部4と反対側の下端部には鍔部14が設けられている。天壁12の内面には、閉蓋時に注出筒先端の外周を圧接するように形成されたアウターリング15とその内側に配設され、注出筒の内周を圧接するインナーリング16が同心円状に立設されている。
【0022】
キャップ本体2の外周である筒状側壁17の頂面17aには高さ方向に溝部18が形成されており、又、その内周面17cには、図示されない容器の容器口部にキャップ1が打栓装着される際に、当該容器口部とキャップ本体2とを嵌合するための嵌合突条17dを有する。
【0023】
図2に示すように、平面視において、溝部18は係止筒11の外周を囲むように設けられる。又、溝部18は、破断溝部18A及び非破断溝部18Bにより構成され、両溝部18A,18Bは溝部の形成されていない筒状側壁17を介して設けられ、本実施の形態では、凹状に形成された指掛け部17b及び後述する軸方向弱化部19を介して設けられている。
【0024】
破断溝部18Aは、分別回収が容易であること、及び後述する非破断溝部18Bの形成される範囲を考慮し、その中心角度θが90°≦θ≦270°となるような筒状側壁17の範囲に形成されている。又、その底部18aにはその全体に亘って、周方向弱化線18bが設けられ、軸方向弱化部19と連続している。本実施の形態ではθ=約194°である。又、破断溝部18Aは、その底部18aの位置が軸方向に対して嵌合突条17dよりも高く、且つ、頂壁6の下面6aよりも低くなるように形成される。
【0025】
軸方向弱化部19は、周方向弱化線18bに連続する弱化線を有し、筒状側壁17を、頂面17aから筒状側壁17の底部側一端を残すような形で切り欠いて形成された凹所であり、ヒンジ4の近傍に設けられている。具体的には、ヒンジ4の非破断溝部18B側の端部4aに連続するように設けられている。
【0026】
非破断溝部18Bは、破断溝部18Aとは異なり周方向弱化線18bを有さない溝であり、破断溝部18Aと対向するように形成される。非破断溝部18Bは、筒状側壁17の破断溝部18Aが形成されていない範囲に形成され、平面視において、弧状に形成される破断溝部18Aと非破断溝部18Bは、互いにキャップ内方へ向き合って形成される。尚、非破断溝部18Bの形成される筒状側壁17の範囲の中心角度は破断溝部18Aと同一でなくともよい。又、弧状に形成される破断溝部18Aと非破断溝部18Bの中央部が略180°間隔で離間するように配置し、左右のバランスを考慮した溝部18とすることもできる。
【0027】
本実施の形態では、非破断溝部18Bは、その空間の断面が破断溝部18Aの当該断面と同形状、且つ、その底部18aは破断溝部18Aの底部18aと軸方向に対して同じ深さに位置するように形成されている。
【0028】
又、上蓋3のインナーリング16とスカート部13との間には、中脚20が設けられている。本実施の形態において、中脚20は、アウターリング15から垂設されており、上蓋3の閉蓋時において、中脚20は、注出筒5と係止筒11との間に設けられた頂壁6の当接面6bに略接するように設けられている。
【0029】
尚、中脚20はキャップ1の打栓装着の際に上蓋3を支持できればよく、閉蓋時には中脚20を当接面6bに略接させず、打栓時にのみ当接面6bに当接させるように設けることもできる。更に、中脚20は全周に亘って設けられていることが望ましく、閉蓋時に係止筒11に当接するように形成することにより、シール性を高めることが可能である。
【0030】
キャップ1の分別回収時の工程について説明する。軸方向弱化部19及び周方向弱化線18bを切り裂いてキャップ1を分別する際には、使用者が指で摘む箇所(摘み部)が必要となるが、本実施の形態では上蓋3がその役割を担っている。尚、当該摘み部には、ヒンジ4等、他の部位も適宜利用することができ、又、新たに設けることもできる。
【0031】
(1)使用者が、キャップ1が開蓋された状態で、上蓋3を摘んで前記容器のある方向に引っ張ることで軸方向弱化部19が切り裂かれる。更に使用者が同方向に引っ張ることで軸方向弱化部19と連続するキャップ本体2における筒状側壁17の底部側一端が切り裂かれる。
【0032】
(2)(1)の工程と同時又は次いで、破断溝部18Aの底面の周方向弱化線18bの一部も又切り裂かれる。
【0033】
(3)次に、使用者が、容器に対して略水平方向に上蓋3を摘んで引っ張ると、周方向弱化線18bはキャップ本体2の周方向に沿って切り裂かれていく。
【0034】
(4)この工程により、キャップ本体2と当該容器との嵌合は緩み、キャップ1が当該容器から外すことができる。
【0035】
この際、上蓋3と、破断溝部18Aにより切り裂かれた筒状側壁17を把持し、更に上方に引き上げて容器に残ったキャップ本体2を取り外すことができるが、破断溝部18Aと非破断溝部18Bは溝部が形成されていない筒状側壁17を介して設けられており(本実施の形態では、指掛け部17b)、引き上げ時に筒状側壁17の厚み部分に安定して力を加えることができる。
【0036】
尚、破断溝部18A及び非破断溝部18Bは互いに近接して設けられることが望ましい。本実施の形態では、平面視において、弧状の破断溝部18Aと非破断溝部18Bの一方の端部が縦方向弱化部19、他方の端部が指掛け部17bを介して略接するように設けられる。即ち、筒状側壁17の厚み方向に凹状にせしめた箇所のみを除いて溝部18が設けられている。尚、本実施例は破断溝部18Aと非破断溝部18Bの少なくとも一方端部が近接しておればよい。このように設けることで溝部18を筒状側壁17の広い範囲に渡って形成することができ、キャップを打栓装着する際の拡径、又は、容器口部への保持力をより安定したものとすることができる。
【0037】
又、キャップ1は、溝部18がキャップ本体2の頂面17aに略全周に亘って設けられており、溝部18を構成する破断溝部18A及び非破断溝部18Bが共にその底部18a,18aが同じ深さに位置するように形成されているため、前記容器にキャップ1を打栓し装着する際の拡径、又は、容器口部への保持力を均等なものとすることができ、打栓時において、キャップ本体2に僅かな歪みが生じ、上蓋3を被着した際にキャップ本体2と上蓋3との間に隙間が生じるようなこともない。
【0038】
尚、本発明の破断溝部18A及び非破断溝部18Bは、本実施の形態のように一対の溝部に限らず、例えば、破断溝部に対向する2つの非破断溝部のような変形例を含むものである。
【0039】
本発明はヒンジキャップのみに適用されるものではなく、スクリューキャップにも応用することができる。スクリューキャップに本発明を応用する際には、上蓋3又はヒンジ4の代わりとなる使用者が指で摘むための摘み部が軸方向弱化部19の近傍に設けられる。尚、当該摘み部の形状は適宜選択が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 キャップ 2 キャップ本体 3 上蓋
4 ヒンジ 4a 端部 5 注出筒
6 頂壁 6a 下面 6b 当接面
7 筒部 8 遮断壁 9 裂溝
10 プルリング 11 係止筒 12 天壁
13 スカート部 14 鍔部 15 アウターリング
16 インナーリング 17 側壁 17a 頂面
17b 指掛け部 17c 内周面 17d 嵌合突条
18 溝部 18A 破断溝部 18B 非破断溝部
18a 底部 18b 周方向弱化線 19 軸方向弱化部
20 中脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に打栓装着されるキャップ本体と、キャップ本体に被着される上蓋とからなる合成樹脂製キャップにおいて、
前記キャップ本体は、筒状側壁の頂面に溝部を備え、該溝部は、その内部に周方向弱化線を有する破断溝部と、該破断溝部と対向するように設けられた非破断溝部とからなることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記破断溝部と前記非破断溝部は互いに近接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記破断溝部と前記非破断溝部は深さが同一に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記周方向弱化部は前記筒状側壁に設けられた軸方向弱化部と連続していることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の合成樹脂製キャップ。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25424(P2012−25424A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165220(P2010−165220)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】