説明

合成樹脂製ボトル

【課題】減圧吸収パネルによる減圧の吸収量を低下させることなく、内部が加圧状態から減圧状態に転じても減圧吸収パネルが円滑に凹入状態に戻るようにした合成樹脂製ボトルを提供する。
【解決手段】減圧吸収パネル9の外周縁10の内側に位置する溝部11を設ける。溝部11の開放側の端縁を減圧吸収パネル9の外周縁10より胴部4の内方に形成する。溝部11の縦方向の中央部に、縦方向に沿った所定の長さ範囲にわたる溝部11の底部を浅く形成した浅底部15を設ける。浅底部15と減圧吸収パネル9の外周縁10との間から外周縁10よりも低い高さに突出して浅底部15に沿って延びる突出部16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部に減圧吸収パネルを備える合成樹脂製ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂により形成されたボトルにおいては、高温に加熱した内容物を充填する所謂高温充填が行われるものがある。この種のボトルは、高温で充填された内容物が冷却されると、ボトル内が減圧状態となり、ボトルが醜く変形することがある。
【0003】
そこで、ボトル内部に生じた負圧を分散吸収してボトルの変形を抑制するために、胴部に減圧吸収パネルを設けたボトルが知られている(特許文献1参照)。減圧吸収パネルは、縦長の四角形状の周縁を有し、その周縁の内側に沿って縦方向に延びる溝部を備えている。
【0004】
これによれば、ボトル内部の減圧に応じて溝幅を介して減圧吸収パネルがその形状を維持してボトルの内側に移動するので、ボトルの外観を損なうことなく減圧を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−104474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のボトルは、ボトル内部の減圧に対しては、ボトルの外観を損なうことなく吸収できる反面、ボトル内部が加圧状態となった場合の変形については殆ど考慮されていない。
【0007】
即ち、内容物の高温充填時にボトル内部が加圧状態になったときには、減圧吸収パネルが胴部から膨出することにより加圧分を吸収するが、その後冷却されてボトル内部が負圧に転じたとき、減圧吸収パネルが凹入状態に戻らない場合がある。特に、容量を増加させると、ボトルは胴部が縦長となり、それに伴い減圧吸収パネルの形状も縦長に形成されるため、減圧吸収パネルの縦方向の中央部やその近傍に膨出変形が残存し易い。
【0008】
このため、減圧吸収パネルの一部が胴部から突き出てボトルの外観が損なわれるだけでなく、内容物の充填後に行われる胴部外周へのシュリンクラベルの装着も円滑に行うことができない不都合がある。
【0009】
本発明は、かかる不都合に鑑み、内部が加圧状態から減圧状態に転じたときに減圧吸収パネルが円滑に凹入状態となるようにした合成樹脂製ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、縦方向に延びる筒状の胴部に縦長の四角形状の外周縁を有する減圧吸収パネルを備える合成樹脂製ボトルであって、前記減圧吸収パネルが、その少なくとも縦方向の外周縁の内側に沿って延びる溝部を備え、該溝部の開放側の端縁が減圧吸収パネルの外周縁より胴部の内方に形成されているものにおいて、前記溝部の縦方向の中央部に、縦方向に沿った所定の長さ範囲にわたる該溝部の底部を浅く形成した浅底部を備え、前記浅底部と減圧吸収パネルの前記外周縁との間から該外周縁よりも低い高さに突出して該浅底部に沿って延びる突出部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記溝部の縦方向の中央部に備える前記浅底部は、該溝部の拡開を適度に制限する。即ち、減圧吸収パネルがボトル胴部の外側に向って膨出したとき、前記浅底部がその膨出方向と逆方向への引っ張り力を減圧吸収パネルに対して付与する。そして、前記浅底部の減圧吸収パネルに対する引っ張り力は、減圧吸収パネルの膨出量の増加に伴い増加し、過剰な膨出状態となることを抑制する。
【0012】
このような前記浅底部の作用により、ボトルの内部が加圧状態となったときには、前記浅底部により過剰な減圧吸収パネルの膨出を抑制し、ボトルの内部が減圧状態に転じたときには、当該減圧による胴部内方への減圧吸収パネルの引き込み力と前記浅底部の引っ張り力とが合成されて、比較的強い力で減圧吸収パネルを胴部内方へ引き戻す。これにより、膨出状態の減圧吸収パネルを迅速に且つ確実に凹入状態とすることができる。
【0013】
しかも、減圧吸収パネルの溝部のうち、加圧時の応力が集中する部分である縦方向の中央部を含む所定の長さ範囲に前記浅底部が設けられているので、当該中央部における部分的な膨出変形を抑制することができる。
【0014】
ところで、前記浅底部により減圧吸収パネルの膨出が抑えられるとき、減圧吸収パネルの外周縁のうちの前記浅底部に対応する位置では、該浅底部が膨出変形を抑えた分、加圧時の応力が集中して、当該減圧吸収パネルの外周縁が部分的に膨出する場合がある。そこで、本発明においては、浅底部と減圧吸収パネルの外周縁との間に、浅底部に沿って延びる前記突出部を備えている。該突出部は、浅底部と減圧吸収パネルの外周縁との間にあって加圧時の応力を分散する。これにより、前記浅底部が設けられている位置で、減圧吸収パネルの外周縁の部分的な変形が防止され、外観を良好に維持することができる。
【0015】
従って、本発明の合成樹脂製ボトルは、内部が高温充填時の加圧状態からその後の冷却時の減圧状態に転じたとき減圧吸収パネルが円滑に凹入状態となり、ボトルの外観の低下が防止できて、内容物の充填後に行われる胴部外周へのシュリンクラベルの装着も円滑に行うことができる。
【0016】
なお、前記突出部は、減圧吸収パネルの外周縁よりも低い高さに突出していることにより、胴部にシュリンクラベルを装着する際に突出部が邪魔になることはない。
【0017】
また、本発明において、前記突出部は、前記浅底部に比して縦方向の長さ寸法が小とされていることが好ましい。突出部は、前記浅底部に比してその縦方向の長さ寸法が大きくても、浅底部からの応力を分散して変形を防止することができる。しかし、突出部の縦方向の長さ寸法を過剰に大とすると、減圧吸収パネルによる減圧吸収を阻害することも考えられる。そこで、本発明者は各種試験に基づき、最も好ましい形態として、突出部を浅底部よりも縦方向の長さ寸法を小とした。これによって、減圧吸収パネルによる十分な減圧吸収量を得ながら、加圧時には減圧吸収パネルの過剰な膨出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の合成樹脂製ボトルを示す側面図。
【図2】図1のボトルの平面図。
【図3】図1の要部の拡大図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】図3のV−V線断面図。
【図6】浅底部及び突出部の輪郭を他部の輪郭と重ねて比較する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示す本実施形態のボトル1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるプリフォーム(図示せず)をブロー成形により二軸延伸してなる角型PETボトルである。
【0020】
図1及び図2に示すように、ボトル1は、口部2と、口部2から下方に向かって次第に拡径する肩部3と、肩部3の下方に連設された角筒状の胴部4と、胴部4の下部に連設されて胴部4を閉塞する接地底部5とを備えている。
【0021】
このボトル1は、お茶やジュース等の飲料を収容するものであり、内容物充填ラインにおいては、内容物を高温加熱した状態で充填する所謂ホットパックが行われる。また、このボトル1は、外観が縦長形状で容量が400ミリリットルとされるものである。なお、以下の説明においては、ボトル1の接地底部5を接地させて起立状態としたときの高さ方向を、ボトル1の縦方向とする。
【0022】
口部2の外周には、図示しないキャップを螺着するための螺条6が形成されている。胴部4は、同一形状の4つの主要な側壁面7と、互いに隣り合う側壁面7の間を繋ぐ隅角面8とを備えて大略四角筒状に形成されている。
【0023】
側壁面7には、ホットパックの後にキャップにより封止されたボトル1の内部が、内容物の冷却に伴って減圧状態となった場合、その減圧を吸収するための減圧吸収パネル9が形成されている。
【0024】
減圧吸収パネル9は、図3及び図4に示すように、縦方向に延びる一対の縦側縁10aと、両縦側縁10aの上端と下端との夫々を繋ぐようにして横方向に延びる一対の横側縁10bとからなる縦長の略四角形状の外周縁10を有している。
【0025】
外周縁10の内側には、縦方向に延びる一対の縦溝11aと、両縦溝11aの上端と下端との夫々を繋ぐようにして横方向に延びる一対の横溝11bとからなる縦長の略四角形状に連続する溝部11が形成されている。外周縁10の縦側縁10aと溝部11の縦溝11aとの間には、縦方向に延びる段部12が形成されている。
【0026】
溝部11に包囲される内側には、縦長の略四角形状に形成された隆起部13が形成されており、隆起部13の内側には胴部4の内側に向って縦長に凹入された谷部14が形成されている。溝部11はその開放側の端縁が減圧吸収パネル9の外周縁10より胴部4の内方に位置し、減圧吸収パネル9において、溝部11の底部が最も深く形成されている。
【0027】
また、図3及び図5に示すように、溝部11の縦溝11aにおける縦方向の中央部には、溝部11における他の底部よりも浅い浅底部15が形成されている。更に、浅底部15と減圧吸収パネル9の縦側縁10aとの間に位置する段部12には、胴部4の外方に突出する突出部16が形成されている。
【0028】
ここで、溝部11の深さ方向を高さ方向として説明すると、図5及び図6に示すように、浅底部15は、溝部11の他の部分における底部よりも高い位置にあるが、減圧吸収パネル9の外周縁10よりも低く、段部12と同等の高さとされている。突出部16は、隆起部13よりも高い位置まで突出しているが、その頂部は縦側縁10aよりも低い位置にある。
【0029】
また、図3に示すように、浅底部15と突出部16とは共に縦方向に延びており、突出部16の縦方向の長さ寸法L1は、浅底部15の縦方向の長さ寸法L2より小となっている。本実施形態においては、浅底部15の長さ寸法L2は、減圧吸収パネル9の縦方向の全長の寸法Lの約1/3に設定されている。また、本実施形態においては、突出部16の長さ寸法L1は、浅底部15の長さ寸法L2の約80%に設定されている。
【0030】
次に、以上のように構成されたボトル1の作用を説明する。減圧吸収パネル9が以上の構成を有することにより、胴部4の各側壁面7において減圧吸収パネル9が胴部4の内方に向って円滑に凹入し、また、外方に向って円滑に膨出するので、ボトル1の内部に生じた圧力変化に円滑に追従し、ボトル1の外観が良好に維持される。
【0031】
更に詳しく説明すれば、ボトル1は、内容物充填ラインにおいて前述のホットパックが行われると、内容物の充填中からキャップによる封止後冷却が開始するまでの間ボトル1の内部が加圧された状態となる。
【0032】
内部が加圧状態にあるボトル1においては、減圧吸収パネル9が胴部4内方から押され、溝部11がその溝幅を拡開させるように撓んで隆起部13が胴部4の外方に変位する。溝部11は、減圧吸収パネル9の内側全周にわたって連続して設けられているので、溝部11の全周にわたって撓む。これにより、減圧吸収パネル9が胴部4から膨出して加圧分を吸収する。
【0033】
ここで、胴部4が縦長であることにより減圧吸収パネル9及び溝部11の周形状も縦長とされている。このため、溝部11のうち、縦方向に延びる縦溝11aの中央部分に応力が集中し易く、この位置では溝部11の拡開が限界に達して溝部11が反転するおそれがある。そこで、減圧吸収パネル9は、縦溝11aの中央部分に浅底部15を備えている。浅底部15は、溝部11の溝幅が拡開するときに、この拡開動作に対抗する方向に引っ張り力を発生させる。そして、浅底部15が発生させる引っ張り力は、ボトル1内部の加圧量に応じて変化し、減圧吸収パネル9の膨出量の増加に伴って浅底部15の引っ張り力も増加する。
【0034】
これにより、溝部11の縦溝11aの中央部分では、浅底部15の引っ張り力により溝幅の拡開が抑えられ、減圧吸収パネル9の一部のみ過剰な膨出状態となることが防止されて、減圧吸収パネル9を全体にわたり均一に膨出させることができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、浅底部15の長さ寸法L2を、減圧吸収パネル9の縦方向の全長の寸法Lの約1/3に設定しているが、浅底部15の長さ寸法L2が過剰に大であると、減圧吸収パネル9の膨出を抑制する度合いが大きくなって、減圧吸収パネル9の膨出が困難となる。本発明者の知見によれば、浅底部15が適度な膨出を許容し且つ十分な引っ張り力を発生させるために、浅底部15の長さ寸法L2は、減圧吸収パネル9の縦方向の全長の寸法Lの1/5〜1/2の範囲内に設定することが好ましい。
【0036】
また、ホットパックにより内容物が充填されて封止されたボトル1は、内容物が冷却されたことにより内部が加圧状態から減圧状態に転じる。このときには、減圧吸収パネル9が胴部4内方に引き込まれ、溝部11を介して隆起部13が胴部4の内方に変位する。溝部11は、減圧吸収パネル9の内側全周にわたって連続して設けられているので、膨出の際と同様に、溝部11の全周にわたって撓む。これにより、減圧吸収パネル9が胴部4の内方に凹入して減圧分を吸収する。
【0037】
減圧吸収パネル9が膨出状態から凹入状態に転じるとき、ボトル1内部からの引き込み力が減圧吸収パネル9に付与されるが、同時に浅底部15の引っ張り力が作用する。これにより、減圧吸収パネル9を確実に凹入状態とすることができ、例えば、溝部11の一部(浅底部15以外の部分)が膨出反転状態で残留する事態も生じない。
【0038】
ところで、浅底部15がその引っ張り力により減圧吸収パネル9の過剰な膨出を抑制しているとき、浅底部15と減圧吸収パネル9の縦側縁10aとの間に応力が集中して、当該縦側縁10aを部分的に膨出変形させてしまうことが考えられる。
【0039】
そこで、本実施形態においては、図3に示すように、浅底部15に隣接して突出部16を設けている。突出部16は、減圧吸収パネル9が膨出する際に浅底部15に対応する位置における応力を分散し、減圧吸収パネル9の縦側縁10aにおける過剰な膨出変形を抑制する。
【0040】
従って、減圧吸収パネル9が膨出する際に浅底部15が膨出変形を抑制し、同時に突出部16が効率よく応力を分散して減圧吸収パネル9の過剰な膨出変形を防止することができる。これにより、膨出状態から凹入状態に転じた減圧吸収パネル9に膨出変形が残存することも防止される。
【0041】
なお、本実施形態においては、突出部16の長さ寸法L1を、浅底部15の長さ寸法L2の約80%に設定しているが、突出部16は、上述した通り浅底部15に対応する位置における応力を分散するためのものである。よって、突出部16を、その長さ寸法L1が浅底部15の長さ寸法L2を超えて設ける必要はない。また、突出部16の長さ寸法L1が過剰に大であると、減圧吸収パネル9の縦側縁10aの柔軟性が阻害されることも考えられる。本発明者の知見によれば、突出部16が減圧吸収パネル9の縦側縁10aの柔軟性を阻害することなく膨出時の応力を確実に分散するためには、突出部16の長さ寸法L1は、浅底部15の長さ寸法L2の50%〜100%の範囲内に設定されていればよく、突出部16による上記作用を確実に得るためには、浅底部15の長さ寸法L2の70%〜90%の範囲内に設定することが好ましい。
【0042】
また、本実施形態においては、略四角形状の溝部11について説明したが、これに限るものではない。例えば、図示しないが、図3を参照して説明すれば、隆起部13の上下端が夫々上下の横側縁10bに連接する形状であることによって、溝部11が隆起部13の両側に沿った一対の縦溝11aのみからなる場合でも、前記浅底部15及び突出部16を設けて上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、胴部4形状が角型のボトル1を例に挙げて説明したが、胴部が円形の合成樹脂製ボトルにも採用できる。
【符号の説明】
【0044】
1…合成樹脂製ボトル、4…胴部、9…減圧吸収パネル、11…溝部、15…浅底部、16…突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に延びる筒状の胴部に縦長の四角形状の外周縁を有する減圧吸収パネルを備える合成樹脂製ボトルであって、前記減圧吸収パネルが、その少なくとも縦方向の外周縁の内側に沿って延びる溝部を備え、該溝部の開放側の端縁が減圧吸収パネルの外周縁より胴部の内方に形成されているものにおいて、
前記溝部の縦方向の中央部に、縦方向に沿った所定の長さ範囲にわたる該溝部の底部を浅く形成した浅底部を備え、
前記浅底部と減圧吸収パネルの前記外周縁との間から該外周縁よりも低い高さに突出して該浅底部に沿って延びる突出部を備えることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【請求項2】
前記突出部は、前記浅底部に比して縦方向の長さ寸法が小とされていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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