説明

合成樹脂製天板

【課題】 軽量で作業性が良く、曲げ剛性、耐久性に優れ、リサイクルにも適用できる合成樹脂製天板を提供する。
【解決手段】 合成樹脂製天板1において、片面はフラット面であり、反対側の面には周縁リブ4a、4bと該周縁リブ4a、4bの内側に複数の区画リブ7、8が設けられた一組の板状体2、3を、リブを有する面側同士を対向させてそれぞれの周縁リブ4a、4bと複数の区画リブ7、8とを溶着して内部に区画された中空構造を有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット上の積載物、とりわけ紙製品や畳まれた状態の段ボールケース等の上面に載置する合成樹脂製天板に関し、更に詳細には、載置後に、パレットと積載物とをバンドで緊締するようにして積載物を保護すると共に、搬送、運搬、保管する際に使用される合成樹脂製天板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パレット、紙製品や畳まれた状態の段ボールケース等の積載物及び天板をバンドで緊締するために使用されている天板には、主として厚みが9mmから15mm程度の木製の板材が使用されている。この木製の天板は、吸湿したり、腐食、黴、虫が発生して積載物である紙製品や畳まれた状態の段ボールケース等の品質を損なったり、埃が付着しても洗浄清掃が困難であったり、木屑等の異物が発生したり、あるいは上記の腐食、黴、虫の発生を防ぐ目的で防腐処理が施されることによりその防腐剤が染み出したりするため、特に積載物が食品包装用資材の場合には食品衛生上の問題が生じる。
【0003】
また、木製の天板では、上述の吸湿、腐食、黴、虫の他、木材繊維の摩耗や損傷により耐久性が低く、頻繁に防腐剤を補充しなければならないうえ、材料のリサイクルに際しても問題がある。
【0004】
このため、このような木製の天板を衛生性等の問題からプラスチック段ボールに置き換えた天板も一部で使用されている。このプラスチック段ボールは合成樹脂で形成されているので、木製の板材の欠点である吸湿、腐食、黴、木屑の問題が発生せず、積載物が食品包装用資材の場合にも木製の板材に比較して食品衛生上の問題が生じにくいという利点がある。また、端部を閉塞して中空構造を形成することにより埃や水、虫の侵入を防いで衛生性を改善したものもある。
【0005】
具体的には、プラスチック段ボールの平面部の端部にV字溝を加工し90°折り曲げた後、他のパネルで折り曲げた端部を閉塞する方法や(例えば、特許文献1参照)、プラスチック段ボールの開口している端面を「く」字溝状に加熱溶融した後溶融面同士を溶着することにより閉塞する方法(例えば、特許文献2参照)、プラスチック段ボールの端面にコーナー部材とフレーム部材を嵌め込んで開口している端面を閉塞する方法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【0006】
しかしながら、プラスチック段ボールの天板には、通常、高密度ポリエチレンやポリプロピレンのような材料が使用されており、上述の木製の天板と比較すると弾性係数が数分の1から10分の1程度しかなく、また構造的には2枚のプラスチック板間を所定間隔のリブで繋いだ形態により曲げ剛性に方向性を生じ、特にリブに対して直角にバンドを緊締する緊締力に対して必要十分な曲げ剛性を得ることが困難となる。
【0007】
これに対して十分な曲げ剛性を得ようとすると、天板の厚みを大幅に増大させることが必要となって重量増を招き、人間が持ち運ぶ際の作業性の低下、原材料の使用量の増大による天板のコストアップ、トラック輸送時の輸送効率の低下等の種々の問題を生じてしまう。
【0008】
こうした問題を解決するために、合成樹脂で一体に形成された天板本体と、樹脂や金属等で形成された補強用の骨格部材とから構成されているパレット用天板部材(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0009】
このパレット用天板部材は、片側の面がフラット面で反対側の面がリブ構造となっており、天板本体の弾性係数の低さを補う目的で、金属等で形成された補強用の骨格部材がそのリブ構造面側に取り付けられ、これにより天板本体の厚みの増大を防いでいる。
【0010】
しかしながら、天板本体のフラット面が、通常、積載物との接触面になるため、反対側のリブ構造により構成された面が常に上面側となり、リブとリブの間の凹部に埃、異物が溜まりやすく衛生上問題があり、また、自動化ラインで天板部材を積載物の上に載置したり撤去したりする際には、リブが形成された面をエアーで吸引することができず、フラット面しかバキューム式リフトが使えないという問題もある。
【0011】
さらに、パレット、積載物及び天板部材をバンドで緊締する際、天板本体のバンドが接触する箇所のリブがバンドの緊締力で局部的に変形したり破損したりする恐れがあり、これを防止するために金属等の補強用の骨格部材を使用する場合、リサイクルに際しては合成樹脂部分と金属部分を分離しなければならないという問題もある。
【特許文献1】特開2000−071325号公報
【特許文献2】特開2000−158530号公報
【特許文献3】特開2002−096875号公報
【特許文献4】特開2001−018967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、軽量で作業性が良く、曲げ剛性、耐久性に優れ、リサイクルにも適用できる合成樹脂製天板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明等は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、片側の面がフラット面であり、反対側の面には周縁リブと該周縁リブの内側に複数の区画リブが設けられた一組の板状体を、リブを有する面側同士を対向させてそれぞれの周縁リブと複数の区画リブとを溶着し、溶着された複数の区画リブによって区画された中空構造を有する構造とすることによって、軽量化が図れると共に曲げ剛性や耐久性に優れ、バンド緊締時にも十分な強度を有する合成樹脂製天板を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、合成樹脂製天板において、片面はフラット面であり、反対側の面には周縁リブと該周縁リブの内側に複数の区画リブが設けられた一組の板状体を、リブを有する面側同士を対向させてそれぞれの周縁リブと複数の区画リブとを溶着して内部に区画された中空構造を有することを特徴とする合成樹脂製天板を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
天板内部がリブによって区画された複数の中空構造により構成されているので、高密度ポリエチレンやポリプロピレンのような材料を使用した場合でも木製の板材に比べ天板の厚みを大幅に増大させる必要はなく、バンドの緊締力に対する必要かつ十分な曲げ剛性が得られ、かつ、区画リブ同士は格子状に配設されているので曲げ剛性に方向性も無い。
【0016】
さらに、自動化ラインで天板を積載物の上に載置したり撤去したりする際、構造上全ての表面が平滑なため、天板の表面をエアーで吸引するバキューム式リフトの使用が可能であるから機械適正にも優れ、原料には合成樹脂のみを使用するためリサイクル性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図1は本発明の合成樹脂製天板1の斜視図、図2は図1に示した合成樹脂製天板の内部構造を示す部分破断斜視図、図3は図1のA−A線に沿った垂直側断面図、図4は図3のB−B線に沿った水平断面図、図5は本発明の合成樹脂製天板の他の実施形態を示す図3のB−B線に沿った水平断面図、図6は本発明の合成樹脂製天板を切断することにより新たな合成樹脂製天板とした状態を示す平面図、図7は本発明の合成樹脂製天板とパレットにより積載物を緊締した状態を示す斜視図である。
【0018】
合成樹脂製天板1は、高密度ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を使用し、上面側板状体2と下面側板状体3とを溶着して一体構造としたものであり、上面側板状体2と下面側板状体3とは、同一形状に射出成形、圧縮成形等により成形されて、全体の厚さは15mm≦H1≦25mmの厚さとなっている(図1参照)。
【0019】
上面側板状体2と下面側板状体3とは、上記したように同一形状となっているので、以下、下面側板状体3について説明する。
【0020】
下面側板状体3は、積載物との接触面はフラット面となっており、このフラット面と反対側の面が、板状部4と、板状部4の周縁4aに立設された周縁リブ5と、板状部4の周縁4bに立設された周縁リブ6が同一の高さに立設された構造を有している(図2参照)。この板状部4の肉厚は2〜4mm程度であり、通常は3mm程度である。なお、上記フラット面は必ずしも下面板状体3(又は上面板状体2)の全面である必要はなく、バキューム式リフトが使用できる範囲をフラット面とすることでよい。
【0021】
さらに、板状部4の周縁リブ5と周縁リブ6が立設された側には、所定の間隔を置いて周縁リブ5の間を区画する複数の区画リブ7と、所定の間隔を置いて周縁リブ6の間を区画する複数の区画リブ8が立設されている。これらの周縁リブ5、6、区画リブ7、8の肉厚も上記板状部4の肉厚とほぼ同程度で2〜4mmとされ、通常は3mm程度であるが、射出成形により成形することから、金型の抜きを考慮して、各リブの先端部は付け根部分よりもその肉厚はやや薄くなっている。例えば、各リブの付け根部分を3mmとする場合は、先端部の肉厚は2.5mm程度であり、また、より軽量化を図る目的で付け根部分を2.5mmとする場合は、先端部の肉厚は2.0mm程度とすることがよい。
【0022】
この複数の区画リブ7と複数の区画リブ8とは、上記周縁リブ5及び周縁リブ6と同一の高さとなっており(図3参照)、区画リブ7は周縁リブ5と平行であり、区画リブ8は周縁リブ6と平行となっている(図4参照)。
【0023】
このように構成された上面側板状体2と下面側板状体3のそれぞれの周縁リブ5同士、周縁リブ6同士、区画リブ7同士、及び区画リブ8同士を、その端面においてそれぞれ溶着接合することにより合成樹脂製天板1が形成される。溶着接合の方法は公知の手段でよく、例えば、加熱した金属板に上面板状体2のリブの端面と下面板状体3のリブの端面を押し当て、それぞれのリブの端面が溶融した状態で貼り合わせることで、合成樹脂製天板1が得られる。
【0024】
上記したように、合成樹脂製天板1は高密度ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を使用して全厚15mm〜25mm程度の厚さとして形成されるため、軽量化と強度、剛性等を確保する点から、周縁リブ5、6と区画リブ7、8、及び、区画リブ7、8同士によって形成される1つの区画A1の平面積は、10cm 〜100cm の範囲であることが好ましく、特に20cm 〜70cm の範囲が好ましい。なお、合成樹脂製天板1の四隅の角部は、特に作業中に積載物や地面に衝突することもあるため、合成樹脂製天板1の四隅に更に補強用リブRを形成することが好ましい。この場合には、この四隅の区画部分の平面積A2は上記の範囲よりも小さくなるが(図4参照)、例えば7cm 〜10cm の範囲とすれば良い。
【0025】
もちろん、四隅以外の区画部分にも補強用リブRを形成することも可能であるが、合成樹脂製天板1の全厚が15mm〜25mm程度であり、板状部4の肉厚が2〜4mm程度であれば、十分な強度と剛性が得られるため、軽量化の点も考慮すれば、四隅以外の区画部分全部に補強用リブRを形成する必要はなく、必要な箇所に適宜形成することでよい。
【0026】
また、荷物を積載するパレットの大きさは、通常、複数の種類のものがあり、使用される合成樹脂製天板の大きさを、このパレットの大きさに応じて使い分けることが便利である。したがって、図5、図6に示すように、他の実施形態の合成樹脂製天板1において、区画リブ7、8のうち、複数の種類のパレットに応じて、予め決められた位置にある区画リブ7a、8aについて、その区画リブ周縁7a、8aを境界として合成樹脂製天板1を切断し、サイズの異なる合成樹脂製天板1を得られるようにすることが好ましい。
【0027】
この場合、切断後の合成樹脂製天板1のコーナー部のR形状を形成するために、区画リブ7a、8aについて、それぞれが周縁リブ5、6との連結部付近で平面視円弧状の湾曲リブ7b、8bを有し、さらに区画リブ7aと8aの交差する近傍で平面視円弧状に連結する湾曲リブ7cを有するように形成されているとよい。
【0028】
このような構成とすることで、例えば図6(a)に示すように、上記の区画リブ7a、8aと湾曲リブ7b、8b、7cに沿った切断線9で合成樹脂製天板部材1を切断することにより、図6(b)に示すようなサイズの異なる新たな合成樹脂製天板1を得ることができる。
【0029】
なお、上記他の実施形態における合成樹脂製天板において、湾曲リブ7b、8b、7cを合成樹脂製天板1の中心線10、11に対して対称に配設することにより、合成樹脂製天板1の上下面や左右方向等を選ばずに切断線9をどの向きから取っても切断可能な構造とすることができる。
【0030】
次に、図7を参照しながら、パレット12に積載した積載物13を本発明による合成樹脂製天板1を使用して挟持し、バンド14で緊締する方法について説明する。まず、パレット12のデッキ部15の載置面16に紙製品や畳まれた状態の段ボールケース等の積載物13を載置する。そして、パレット12の一方の方向にある2つのうちの1つのフォーク挿入口に通したバンド14aを所定の位置に掛け渡し、その後バンド14aの端部を溶着や結束等の適当な手段により結合する。これを他のフォーク挿入口についても同様に行う。さらに、パレット12の他の方向にある2つのフォーク挿入口に通したバンド14bについても、上記と同様にして適当な手段により結合する。
【0031】
こうしてバンド14a、14bを緊締して積載物13を固定しても、合成樹脂製天板1の内部が周縁リブ5、6及び区画リブ7、8によって区画される複数の中空構造により構成されているので断面係数の高い構造が形成され、高密度ポリエチレンやポリプロピレンのような材料を使用した場合でも、木製の板材に比べ合成樹脂製天板1の厚みを大幅に増大させる必要がない。さらに区画リブ7と区画リブ8は直交方向に配設されているので、バンドの緊締力に対する必要かつ十分な曲げ剛性が得られ、合成樹脂製天板1の湾曲変形が防止でき、確実に積載物13を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の合成樹脂製天板の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の合成樹脂製天板の内部構造を示す部分破断斜視図である。
【図3】図3は、図1のA―A線に沿った垂直側断面図である。
【図4】図4は、図3のB―B線に沿った水平断面図である。
【図5】図5は、本発明の合成樹脂製天板の他の実施形態を示す図3のB―B線に沿った水平断面図である。
【図6】図6は、本発明の合成樹脂製天板の他の実施形態を示す平面図である。
【図7】図7は、本発明の合成樹脂製天板とパレットにより積載物を緊締した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 合成樹脂製天板
2 上面側板状体
3 下面側板状体
4 板状部
5 周縁リブ
6 周縁リブ
7 区画リブ
8 区画リブ
9 切断線
10 中心線
11 中心線
12 パレット
13 積載物
14 バンド
15 デッキ面
16 載置面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製天板において、
片面はフラット面であり、反対側の面には周縁リブと該周縁リブの内側に複数の区画リブが設けられた一組の同形状の板状体を、
リブを有する面側同士を対向させてそれぞれの該周縁リブと複数の該区画リブとを溶着して内部に区画された中空構造を有するようにしたこと
を特徴とする合成樹脂製天板。
【請求項2】
該合成樹脂製天板の厚みが15mm〜25mmである請求項1に記載の合成樹脂製天板。
【請求項3】
該周縁リブと該区画リブによって形成される1つの区画の平面積が、10cm 〜100cm の範囲である請求項1又は2に記載の合成樹脂製天板。
【請求項4】
該合成樹脂製天板の四隅の区画部分に更に補強用リブを形成した請求項1〜3のいずれかに記載の合成樹脂製天板。
【請求項5】
該区画リブと該周縁リブとの連結部と、該区画リブ同士の連結部とに湾曲リブを有する請求項1〜4のいずれかに記載の合成樹脂製天板。
【請求項6】
該合成樹脂製天板が、高密度ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂により成形されている請求項1〜5のいずれかに記載の合成樹脂製天板。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−131238(P2006−131238A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319266(P2004−319266)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】