説明

合成樹脂製容器蓋

【課題】容器の口頸部(52)から容器蓋(2)を離脱せしめて口頸部を開封する際に容器蓋に加えなければならない必要開封トルクを増大せしめる等の他の問題を発生せしめることなく、容器蓋の天面壁(4)とスカート壁(6)との境界領域に衝撃が加えられても容器の口頸部の密封が容易には毀損されない、改良された合成樹脂製容器蓋を提供する。
【解決手段】シールリング(42)を外側筒状シール片(40)の内周面基部から半径方向内方に向かって下方ではなくて上方に5乃至15度である傾斜角度をなして傾斜する環状下面(48)を有する形態にせしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂から一体成形された合成樹脂製容器蓋、更に詳しくは、円形天面壁、天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁を具備し、天面壁の内面には下方に延出し容器の口頸部上端部の内周面に密接せしめられる内側筒状シール片と下方に延出し容器の口頸部上端部の外周面に密接せしめられる外側筒状シール片と、容器の口頸部上端部の上端面に密接せしめられるシールリングとが形成されている合成樹脂製容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されている如く、ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器、特に日本茶の如き内容物が80乃至90℃程度の高温で充填される所謂ホットパック充填に使用される容器、の口頸部に適用される容器蓋として、合成樹脂から一体に成形された容器蓋が実用に供されている。容器の口頸部上端部は、水平な上端面、鉛直な内周面、鉛直な外周面、上端面と内周面とを接続する断面形状が弧状或いは他の適宜の形状である内側境界面、上端面と外周面とを接続する断面形状が弧状である外側境界面によって規定されている。容器蓋の天面壁の内面には、下方に延出し口頸部上端部の内周面に密接せしめられる内側筒状シール片と、下方に延出し口頸部上端部の外周面に密接せしめられる外側筒状シール片と、口頸部上端部の上端面に密接せしめられるシールリングとが形成されている。下記特許文献1に開示されている容器蓋においては、シールリングは断面形状が略半球状である環状突条から構成されている。かような形態のシールリングに代えて、外側筒状シール片の内周面基部から水平に或いは半径方向内方に向かって下方に若干の傾斜角度で傾斜せしめられた環状下面を有するシールリングが形成されている容器蓋も実用に供されている。
【特許文献1】特開2002−173157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者等の経験によれば、上述したとおりの従来の容器蓋には、特に使用材料の節約或いは軽量化のために天面壁の厚さを1.0mm程度に低減した場合、例えば容器蓋が装着された容器が倒立状態で落下せしめられることによって容器蓋の天面壁とスカート壁との境界領域に衝撃が加えられた時に、容器の口頸部の密封が毀損されてしまうことが少なくない、という問題が存在する。
【0004】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その技術的課題は、天面壁の厚さを1.0mm程度に低減した場合でも、容器の口頸部から容器蓋を離脱せしめて口頸部を開封する際に容器蓋に加えなければならない必要開封トルクを増大せしめる等の他の問題を発生せしめることなく、容器蓋の天面壁とスカート壁との境界領域に衝撃が加えられても容器の口頸部の密封が容易には毀損されない、改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、シールリングを外側筒状シール片の内周面基部から半径方向内方に向かって下方ではなくて上方に5乃至15度である傾斜角度をなして傾斜する環状下面を有する形態にせしめることによって、上記技術的課題を達成することができることを見出した。上記傾斜角度が過小の場合には、容器蓋の天面壁とスカート壁との境界領域に加えられる衝撃に対する密封維持特性が不充分になり、上記傾斜角度が過大になると必要開封トルクが過剰に増大してしまう。
【0006】
本発明によれば、上記技術的課題を達成する合成樹脂製容器蓋として、口頸部上端部が水平な上端面、鉛直な内周面、鉛直な外周面、該上端面と該内周面とを接続する内側境界面、及び該上端面と該外周面とを接続する弧状断面形状の外側境界面によって規定されている容器に適用される、合成樹脂から一体成形された合成樹脂製容器蓋であって、
円形天面壁、及び該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁を具備し、該天面壁の内面には、下方に延出し該口頸部上端部の該内周面に密接せしめられる内側筒状シール片と、下方に延出し該口頸部上端部の該外周面に密接せしめられる外側筒状シール片と、該口頸部上端部の該上端面に密接せしめられるシールリングとが形成されている合成樹脂製容器蓋において、
該シールリングは該外側筒状シール片の内周面基部から半径方向内方に延びる環状下面を有し、該環状下面は半径方向内方に向かって上方に5乃至15度の傾斜角度をなして傾斜せしめられている、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の合成樹脂製容器蓋によれば、後述する実験例及び有限要素法に基づくシミュレーション分析から明確に理解される如く、必要開封トルクを増大せしめる等の他の問題を発生せしめることなく、容器蓋の天面壁とスカート壁との境界領域に衝撃が加えられた時の密封維持特性が大幅に向上せしめられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0009】
図1を参照して説明すると、本発明に従って構成された全体を番号2で示す容器蓋は、日本茶の如き内容物を80乃至90℃程度に加熱して容器に充填する所謂ホットパック充填方式の場合に好適に使用し得るものであり、ポリプロピレン又はポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から全体が一体に形成されている。かかる容器蓋2は、円形天面壁4と、この天面壁4の周縁から垂下する円筒形スカート壁6とを具備している。スカート壁6には周方向に延びる破断可能ライン8が形成されており、スカート壁6は破断可能ライン8よりも上方の主部10と破断可能ライン8よりも下方のタンパーエビデント裾部12とに区画されている。スカート壁6の内周面下部には周方向に間隔をおいて軸線方向に延びる多数の突条14が配設されている。上記破断可能ライン8は、突条14の軸線方向中間部において、スカート壁6の外周面から切断刃(図示していない)を作用せしめ、突条14の少なくとも一部を残留せしめてスカート壁6を切断することによって形成されている。突条14の各々の切断されることなく残留せしめられた部分が所謂橋絡部16を構成し、タンパーエビデント裾部12は橋絡部16を介してスカート壁6の主部10に接続されている。
【0010】
スカート壁6の主部10の外周面には、その下端部近傍に、下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状部18が形成されている。タンパーエビデント裾部12の外周面も、下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状にせしめられている。主部10の外周面における円錐台形状部18の上方に位置する部分には、そこに掛けられる指の滑りを防止するための凹凸形状20が形成されている。スカート壁6の主部10の内周面には雌螺条22が形成されている。かかる雌螺条22は、周方向に適宜の間隔をおいた複数個の部位に、螺子高さが低減せしめられていて通気路をして機能する低螺子部24を有する。スカート壁6の主部10の上部には、周方向に間隔をおいた部位にて、周方向に延びる洗浄用スリット(切溝)25が形成されている。
【0011】
タンパーエビデント裾部12の内周面には係止手段26が形成されている。図示の実施形態における係止手段26は、周方向に間隔をおいて配設された6個の突出片28から構成されている。突出片28の各々は、タンパーエビデント裾部12の内周面に接続されている基縁から半径方向内方に向かって上方に傾斜して突出せしめられている。突出片28の各々の周方向中間部には突出端から基部に向かって延びるスリット30が形成されている。所望ならば、他の適宜の形態の突出片、突条又は突起等から係止手段を構成することもできる。
【0012】
図1と共に図2を参照して説明すると、天面壁4の内面中央部には、周方向に間隔をおいて半径方向に延在する3個のリブ32と、隣接するリブ32間に配置され周方向に弧状に延在する3個のリブ34とが配設されている。リブ32及びリブ34の構成及び作用は、本出願人の出願に係る特願2007−191375号の明細書及び図面に詳細に説明されているので、リブ32及びリブ34の説明はかかる明細書及び図面に委ね、本明細書においては説明を省略する。天面壁4の内面周縁とスカート壁6の内周面上端との境界領域には周方向に間隔をおいて軸線方向に延びる多数のリブ36が形成されている。かかるリブ36の構成及び作用は、本出願人の出願に係る特願2008−14207号の明細書及び図面に詳細に説明されているので、リブ36の説明はかかる明細書及び図面に委ね、本明細書においては説明を省略する。
【0013】
図1及び図2と共に図3を参照して説明を続けると、天面壁4の内面には、外側筒状シール片38、内側筒状シール片40及びシールリング42が配設されていることが重要である。
【0014】
図示の実施形態における内側筒状シール片38は、天面壁4の内面から下方に延出しており、その外周面は容器蓋2の中心軸線44(図1)に対して傾斜角度θ1をなして下方に向かって半径方向外方(図2において左方)に傾斜して延出し、次いで上記中心軸線44に対して傾斜角度θ2をなして下方に向かって半径方向内方(図2において右方)に傾斜して延出している。従って、内側筒状シール片38の外周面には傾斜方向が逆転する屈折部46が存在する。上記傾斜角度θ1は5乃至25度程度であるのが好適であり、上記傾斜角度θ2は5乃至30度程度であるのが好適である。図3に図示する断面図において、内側筒状シール片38の外周面における屈折部46よりも下方の主部は上記傾斜角度θ2をなして実質上直線状に延びているが、下端部は略円弧状に延びている。内側筒状シール片38の内周面は、上記中心軸線44に対して傾斜角度θ3をなして下方に向かって半径方向外方に傾斜して延出し、次いで上記中心軸線44に対して実質上平行に延出している。成形後の型抜きの容易性等の見地から、屈折部46よりも上方の部分において傾斜角度θ3は上記傾斜角度θ1よりも大きいのが好都合であり、傾斜角度θ3は7乃至30度程度でよい。内側筒状シール片38の外周面及び内周面が上述したとおりに形成されている故に、図3を参照することによって明確に理解される如く、内側筒状シール片38の肉厚は下方に向かって漸次減少せしめられている。
【0015】
図示の実施形態における外側筒状シール片40も、天面壁4の内面から下方に延出せしめられている。外側筒状シール片40の延出長さは内側筒状シール片38の延出長さよりも短く、外側筒状シール片40の延出長さは内側筒状シール片38の延出長さの略3分の1程度である。外側筒状シール片40の内周面は、上記中心軸線44に対して傾斜角度θ4をなして下方に向かって半径方向内方に傾斜して延出し、次いで下方に向かって半径方向外方に傾斜して延びている。上記傾斜角度θ4は5乃至23度程度でよい。外側筒状シール片40の内周面における下方に向かって半径方向内方に傾斜して延びる部分は直線状であり、下方に向かって半径方向外方に傾斜して延びる部分は略弧状である。外側筒状シール片40の内周面には、周方向に間隔をおいて軸線方向に延びる通気溝47が形成されている。外側筒状シール片40の外周面は、上記中心軸線44に対して傾斜角度θ5をなして下方に向かって半径方向内方に傾斜して直線状に延びている。傾斜角度θ5は上記傾斜角度θ4よりも幾分大きく15乃至25度であり、従って外側筒状シール片40の肉厚も下方に向かって漸次低減せしめられているのが好都合である。
【0016】
シールリング42は、外側筒状シール片40の内周面基部から半径方向内方に延びる環状下面48を有する。この環状下面48は半径方向内方に向かって上方に傾斜角度θ6をなして傾斜せしめられていることが重要であり、傾斜角度θ6は5乃至15度であることが重要である。後述する実験例及び有限要素法に基づくシミュレーション分析から理解される如く、傾斜角度θ6が過小になると、天面壁4とスカート壁6との境界領域に加えられる衝撃に対する密封維持特性が低減し、傾斜角度θ6が過大になると、容器の口頸部から容器蓋2を離脱せしめて口頸部を開封する際の必要開封トルクが過大になってしまう。環状下面48の傾斜角度θ6については次の事実も留意されるべきである。即ち、当業者には周知の如く、図1乃至図3に図示するとおりの形態の容器蓋2を適宜の合成樹脂から圧縮成形或いは射出成形によって製造する場合、成形後に発生する天面壁4における樹脂の収縮(所謂ヒケ)に起因して天面壁4は幾分凹状に変形せしめられる。それ故に、成形型の設計において環状下面48の傾斜角度θ6を例えば10度に設定すると、実際に製造された容器蓋2における環状下面48の傾斜角度θ6は幾分減少して例えば5度となる。図示の実施形態においては、シールリング42は環状下面48の内周縁に続いて略鉛直に上方に延びる内周面50も有する。そしてシールリング42の内周面50の上端と上記内側筒状シール片38の基部との間には、内周面50の上端から半径方向内方に略水平に延び、次いで略半円形状に延びる下面が規定されている。
【0017】
図4には、容器蓋2を容器の口頸部に装着して口頸部を密封した状態が図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器は略円筒形状の口頸部52を備えている。口頸部52の外周面には雄螺条54とこの雄螺条54の下方に位置する環状係止あご部56(図4)が形成されている。雄螺条54よりも上方に位置する上端部は、実質上水平に延在する環状上端面58、実質上鉛直に延在する円筒状内周面60、実質上鉛直に延在する円筒状外周面62、上端面58を内周面60に接続する弧状断面形状の内側境界面64及び上端面58を外周面62に接続する弧状断面形状の外側境界面66によって規定されている。内側境界面64は逆円錐台形状等の他の適宜の形態にせしめることもできる。
【0018】
主として図1及び図4を参照して説明を続けると、容器の口頸部52に容器蓋2を装着して口頸部52を密封する際には、口頸部52に容器蓋2を被嵌して閉方向、即ち図1及び図4において上方から見て時計方向に回転せしめ、口頸部52の雄螺条54に容器蓋2の雌螺条22を螺合せしめる。所要トルクで容器蓋2を閉方向に回転せしめて図4に図示する状態にせしめると、内側筒状シール片38は口頸部52内に進入せしめられ、内側筒状シール片38の屈折部46の外周面が口頸部52の円筒状内周面60に密接せしめられる。外側筒状シール片40はその内周面が口頸部52の円筒状外周面62に密接せしめられる。他方、シールリング42はその環状下面48が口頸部52における上端面58に、更に詳しくは外側境界面66の内周縁から上端面58の半径方向中間部に渡って、密接せしめられる。かくして口頸部52が容器蓋2によって密封される。容器蓋2のタンパーエビデント裾部12に形成されている係止手段26は半径方向外方に弾性的に変形して口頸部52の環状あご部56を通過し、次いで弾性的に復元して環状あご部56の下面に係止せしめられる。
【0019】
容器の口頸部52を開封する際には、容器蓋2を開方向、即ち図1及び図4において上方から見て反時計方向に回転せしめる。かくすると、タンパーエビデント裾部12は、その内周面に形成されている係止手段26が口頸部52の外周面に形成されている環状あご部56の下面に係止せしめられている故に、上昇が阻止されるが、容器蓋2のその他の部分は回転よって雄螺条54と雌螺条22との螺合が解除されるのに応じて上昇せしめられる。従って、スカート壁6に形成されている破断可能ライン8、更に詳しくはその橋絡部16に相当な応力が生成されて橋絡部16が破断され、タンパーエビデント裾部12がスカート壁6の主部10から分離される。次いで、容器蓋2の、タンパーエビデント裾部12以外の部分は回転と共に上方に自由に移動せしめられ、口頸部52から離脱せしめられる。
【0020】
図示の実施形態においては、例えば、容器の口頸部52を一旦開封した後に内容物を残留せしめた状態で容器蓋2を口頸部52に装着して口頸部52を仮密封した後に、内容物の腐食に起因して容器内圧が過剰に増大した場合には、増大した内圧によって容器蓋2の天面壁4が上方にドーム上に膨出され、これに起因して内側筒状シール片38及びシールリング42が夫々口頸部52の内周面60及び上端面58から離隔し、従って外側筒状シール片40の内周面に形成されている通気溝48、雌螺条22の低螺子部24を通して内圧が開放され、かくして容器の爆発等の事態発生が回避される。
【0021】
有限要素法に基づくシミュレーション分析
ADINA R&D Inc.から商品名「ADINA」として販売されているシミュレーションソフトを使用して、ポリエチレンテレフタレート製の容器の口頸部(その形態は図4に図示するとおりである)にポリプロピレンから圧縮成形した図1乃至図4に図示するとおりの形態(但しシールリングの下面傾斜角度θ6は、夫々、−5度、0度、5度、10度、15度及び20度)の容器蓋を装着して図4に図示するとおりの状態にせしめた時の、容器の口頸部に対する内側筒状シール片、外側筒状シール片及びシールリングの密接力を求めた。その結果は、下記表1に示すとおりであった。
【0022】
【表1】

【0023】
上記表1の結果を分析すると、環状下面の傾斜角度θ6が−5度及び0度の場合には、シールリングの密接力が過小であり、それ故に天面壁とスカート壁との境界領域に衝撃が加えられた場合、口頸部の密封が毀損されてしまう虞があることが想定される。他方、環状下面の傾斜角度θ6が20度になると、シールリングの密接力及び内側筒状シール片の密接力が過大になり、それ故に口頸部から容器蓋を離脱せしめて口頸部を開封する際の必要開封トルクが過剰に増大することが想定される。そして、環状下面の傾斜角度θ6が5度、10度及び15度の場合には、特にシールリングの密接力が適切な値となり、それ故に必要開封トルクを過大にせしめることなく、衝撃に対する充分な密封特性を得ることができることが想定される。
【0024】
実験例及び比較実験例
実験例1
ポリプロピレンから図1乃至図4に図示するとおりの形態の容器蓋を圧縮成形した。天面壁の厚さは0.95mmであり、シールリングの下面傾斜角度θ6は5度であった。ポリエチレンテレフタレート製の呼び容積が500mlで呼び口径が28mmの容器に87℃の熱水を充填し、かかる容器の口頸部に上記容器蓋を垂直押圧力20kgf及び巻き締めトルク22kgf・cmで装着した。容器蓋を装着した直後に容器を横倒し、容器蓋に76℃の温水シャワーを3.5分間施し、次いで50℃の温水シャワーを4.2分間施し、しかる後に40℃の温水シャワーを4.0分間施し、更に35℃の温水シャワーを2.5分間施した。
次いで、5℃の恒温室に7日間保存した後に、容器の口頸部から容器蓋を離脱して口頸部を開封する際の最大必要トルクを測定した。5個の容器蓋につての平均必要トルクは下記表2に記載のとおりであった。
更に、容器蓋が装着されている10個の容器を、上端面が水平に対して10度の傾斜角度を有する傾斜平面である鋼製ブロック上に、100cm上方の位置から倒立状態で落下せしめて容器蓋の天面壁とスカート壁の境界領域を鋼製ブロックの傾斜平面に衝突せしめ、しかる後に容器の口頸部の密封が毀損されたか否かを検査した。密封が毀損されたか否かの判定は、水に混入されると発色する試薬中に容器の口頸部に装着されている容器蓋を浸漬せしめ、容器に収容されている水が発色するか否かによって判定した。10個の容器について検査したところ、下記表2に記載のとおりの結果であった。
【0025】
実験例2
シールリングの下面傾斜角度θ6が10度であることを除いて実験例1と同様にして、開封の際平均必要トルクを測定し、そしてまた密封が毀損されたか否かを判定した。その結果は下記表2に記載のとおりであった。
【0026】
実験例3
シールリングの下面傾斜角度θ6が15度であることを除いて実験例1と同様にして、開封の際平均必要トルクを測定し、そしてまた密封が毀損されたか否かを判定した。その結果は下記表2に記載のとおりであった。
【0027】
比較実験例1
シールリングの下面傾斜角度θ6が−5度であることを除いて実験例1と同様にして、開封の際平均必要トルクを測定し、そしてまた密封が毀損されたか否かを判定した。その結果は下記表2に記載のとおりであった。
【0028】
比較実験例2
シールリングの下面傾斜角度θ6が0度であることを除いて実験例1と同様にして、開封の際平均必要トルクを測定し、そしてまた密封が毀損されたか否かを判定した。その結果は下記表2に記載のとおりであった。
【0029】
比較実験例3
シールリングの下面傾斜角度θ6が20度であることを除いて実験例1と同様にして、開封の際平均必要トルクを測定し、そしてまた密封が毀損されたか否かを判定した。その結果は下記表2に記載のとおりであった。
【0030】
【表2】

【0031】
上記実験例及び比較実験例から、シールリングの下面傾斜角度θ6が5度、10度及び15度の場合には、開封の際の必要トルクを過大にせしめることなくして、容器蓋の天面壁とスカート壁との境界領域に衝撃が加えられた時の密封維持特性を充分なものにせしめることができることが理解される。一方、シールリングの下面傾斜角度θ6が−5度及び0度の場合には密封維持特性が不充分になり、シールリングの下面傾斜角度が20度の場合には必要トルクが過大になることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を、一部を断面で示す正面図。
【図2】図1に図示する容器蓋の底面図。
【図3】図1に図示する容器蓋の一部を示す拡大断面図。
【図4】図1に図示する容器蓋を容器の口頸部に装着して口頸部を密封した状態を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0033】
2:容器蓋
4:天面壁
6:スカート壁
38:内側筒状シール片
40:外側筒状シール片
42:シールリング
48:シールリングの環状下面
52:容器の口頸部
58:口頸部の上端面
60:口頸部の内周面
62:口頸部の外周面
64:口頸部の内側境界面
66:口頸部の外側境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部上端部が水平な上端面、鉛直な内周面、鉛直な外周面、該上端面と該内周面とを接続する内側境界面、及び該上端面と該外周面とを接続する弧状断面形状の外側境界面によって規定されている容器に適用される、合成樹脂から一体成形された合成樹脂製容器蓋であって、
円形天面壁、及び該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁を具備し、該天面壁の内面には、下方に延出し該口頸部上端部の該内周面に密接せしめられる内側筒状シール片と、下方に延出し該口頸部上端部の該外周面に密接せしめられる外側筒状シール片と、該口頸部上端部の該上端面に密接せしめられるシールリングとが形成されている合成樹脂製容器蓋において、
該シールリングは該外側筒状シール片の内周面基部から半径方向内方に延びる環状下面を有し、該環状下面は半径方向内方に向かって上方に5乃至15度の傾斜角度をなして傾斜せしめられている、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−149886(P2010−149886A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328588(P2008−328588)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】