合成樹脂製容器
【課題】コンパクトに見えやすく、手で把持しやすく、かつ上方からの押圧力に対する強度が良好な、ボトル状の合成樹脂製容器を提供する。
【解決手段】本体1が底面11と側壁12と肩部13とを有し、側壁12の稜線12cの中途部分に凹部15が設けられており、肩部13の傾斜角度θが45°以下であり、肩部13上端を通る第1の水平断面の輪郭が円形(曲率半径R1)であり、側壁12の上端を通る第2の水平断面の輪郭が角に丸み(曲率半径R2)をつけた多角形であり、側壁12の上端と肩部13の上端との高さ方向における中間点を通る第3の水平断面の輪郭における角の曲率半径をR3とするとき、{(R1+R2)/2}>R3>R2である合成樹脂製容器。
【解決手段】本体1が底面11と側壁12と肩部13とを有し、側壁12の稜線12cの中途部分に凹部15が設けられており、肩部13の傾斜角度θが45°以下であり、肩部13上端を通る第1の水平断面の輪郭が円形(曲率半径R1)であり、側壁12の上端を通る第2の水平断面の輪郭が角に丸み(曲率半径R2)をつけた多角形であり、側壁12の上端と肩部13の上端との高さ方向における中間点を通る第3の水平断面の輪郭における角の曲率半径をR3とするとき、{(R1+R2)/2}>R3>R2である合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル状の合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衣料用液体洗剤はボトル状の合成樹脂製容器に収容されているが、衣料用液体洗剤の容器には、持ちやすく、注ぎやすいことが要求される。また複数本をダンボール箱に詰めた形態で、該ダンボール箱を積み重ねても、容器が変形したり破損したりしないように、上方からの押圧力に対して充分な強度を有することも要求される。
従来の衣料用液体洗剤の容器の形状としては、特許文献1に記載されているような把手つき容器が主流であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−72728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境への負荷が少ない衣料用洗剤として、洗浄力を落とさずに使用量を減らした濃縮タイプの液体洗剤の開発が進んでいる。
かかる濃縮タイプの液体洗剤にあっては、従来よりも小型の容器に収容し、小型でありながら従来と同じ回数の洗濯ができることを表示することによって、使用量が少なくて済むことを消費者にわかりやすくアピールできる。
【0005】
本発明者は、よりコンパクトに見えやすい点から、立方体または高さが低い直方体状の合成樹脂製容器に着目して試作を行ったところ、立方体または直方体の上面に口頸部を設けた形状では、圧縮強度が不充分で、上方からの押圧力によって変形が生じ易いことがわかった。さらに、開発を進めるなかで、手で把持しやすくするために、側壁の稜線の中途部分に凹部を設けてみたところ、上方からの押圧力によって該凹部が内方に座屈する場合があることも知見した。側壁が多角筒状の容器においても同様の問題があることもわかった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、コンパクトに見えやすく、手で把持しやすく、かつ上方からの押圧力に対する強度が良好な、ボトル状の合成樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の合成樹脂製容器は、合成樹脂からなり、頂部に口頸部を有する有底多角筒状の本体と、前記口頸部に装着される蓋体とを備え、前記本体は、側壁の上端から口頸部に向かって斜め上方に延びる肩部を有し、前記側壁が、底面の辺から立ち上がる側面と、底面の角から立ち上がる稜線とを備え、少なくとも1本の稜線の中途部分に凹部が設けられており、前記肩部と水平面とのなす傾斜角度θが45°以下であり、前記肩部の上端を通る第1の水平断面の輪郭が略円形であり、第1の水平断面の輪郭の曲率半径をR1とし、前記側壁の上端を通る第2の水平断面の輪郭が略多角形であり、該第2の水平断面の輪郭の角の曲率半径をR2とし、前記側壁の上端と前記肩部の上端との高さ方向における中間点を通る水平断面を第3の水平断面とし、前記第2の水平断面の輪郭の角の頂点Pを通る、該頂点Pと前記第1の水平断面の輪郭との距離方向の直線を直線Qとし、前記第3の水平断面の輪郭と前記直線Qとの、鉛直投影視における交点での、前記第3の水平断面の輪郭の曲率半径をR3とするとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
{(R1+R2)/2}>R3>R2 …(1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパクトに見えやすく、手で把持しやすく、かつ上方からの押圧力に対する強度が良好な、ボトル状の合成樹脂製容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の合成樹脂製容器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す合成樹脂製容器の平面図である。
【図3】図1に示す合成樹脂製容器の正面図である。
【図4】図1に示す合成樹脂製容器の下面図である。
【図5】図3中のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図3中のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図2中のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図3中のD−D線に沿う断面の輪郭を示す図である。
【図9】本発明の合成樹脂製容器の他の例を示す斜視図である。
【図10】図9に示す合成樹脂製容器の断面図である。
【図11】本発明の合成樹脂製容器の他の例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す合成樹脂製容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施の形態として、濃縮タイプの衣料用液体洗剤の容器に好適な、略直方体状のボトル容器を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
図1〜8は、本発明に係る容器の第1の実施の形態を示したもので、図1は斜視図、図2は平面図、図3は正面図、図4は下面図、図5は図3中のA−A線に沿う断面図、図6は図3中のB−B線に沿う断面図、図7は図2中のC−C線に沿う断面図である。
図8は図3中のD−D線に沿う断面(第3の水平断面)の輪郭130、水平投影視における第1の水平断面の輪郭160、および水平投影視における第2の水平断面の輪郭120を示した図である。
図中符号1は本体、2は蓋体である。本明細書において、容器の高さ方向を鉛直方向とする。該鉛直方向に垂直な平面を水平面といい、鉛直方向に平行な平面を鉛直面という。また水平面で切った断面を水平断面といい、鉛直面で切った断面を鉛直断面という。
【0011】
本体1は、頂部に口頸部14を有する有底四角筒状である。符号11は底面、12は側壁、13は肩部を示す。図6に示すように、底面11と側壁12との境界部分、側壁12と肩部13との境界部分において、鉛直断面における外面形状が平面である部分を側壁12(高さをH1で示す。)とし、それより下を底面11、それより上を肩部13とする。
本体1の材質は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂である。本実施形態ではHDPE(高密度ポリエチレン)が好適に用いられる。容器の容量は、例えば、本体1の上端まで満杯にしたときの容量が400〜600ml程度が好ましい。樹脂の使用量は、該容量が500mlの容器の場合で45g程度が好ましい。
【0012】
底面11は、図2および図4に示すように、鉛直方向から見たときの輪郭が丸みを帯びた長方形であり、図6に示すように、中心部が内方に向かって膨出する凹面からなる。底面11と側壁12とのなす角11aも、丸みがつけてある。
本明細書において、丸みを帯びた多角形とは、輪郭の辺を外方に向かって膨出する曲線とし、角に丸みをつけた多角形を意味する。辺の中央部における曲率半径は、角の曲率半径よりも大きい。角の曲率半径は、輪郭線上の各点における曲率半径のうち、最も小さい曲率半径とする。
本明細書において、丸みをつけた角の、断面における「角の頂点」とは、該角の輪郭をなす曲線のうち、曲率半径が「角の曲率半径(前記最も小さい曲率半径)」である曲線部分の、長さ方向における中間点をさすものとする。
【0013】
図4の下面図において、長辺方向における長さL1と短辺方向における幅L2との比(L1:L2)は、0.8:1〜1.3:1が好ましく、1:1〜1.2:1がより好ましい。この範囲であると、安定性が良くて倒れ難く、コンパクトに見えやすい。
本実施形態において、短辺方向における長さL2は、持ちやすさ、および注ぎやすさの点から、60〜85mmが好ましく、65〜80mmがより好ましい。
【0014】
側壁12は、底面11の外周から略鉛直方向に立ち上がる四角筒状であり、底面11の長辺から立ち上がる2つの側面(以下、長辺側の側面という。)12a、12aと、底面11の短辺から立ち上がる2つの側面(以下、短辺側の側面という。)12b、12b’と、底面11の角から立ち上がる4本の稜線12cと、4本の稜線12cのうち、1つの短辺側の側面12bの両側に位置する2本の稜線12cの中途部分に設けられた凹部15とからなる。
側壁12は、上方に向かって縮径する方向に若干傾斜しており、図2に示すように、鉛直投影視(鉛直方向から投影視した状態)において、底面11の輪郭よりも、側壁12の上端の輪郭の方が若干内側にある。
本体1の、凹部15が設けられていない部分の水平断面の輪郭は、底面11を鉛直方向から見たときの輪郭と相似形であり、丸みを帯びた長方形である。すなわち4本の稜線12cにも丸みがつけてある。
鉛直投影視における、底面11の輪郭と側壁12の上端の輪郭との距離tは0.5〜1.5mm程度が好ましい。
【0015】
底面11の上端(側壁12の下端)から側壁12の上端までの高さH1は、底面11の全周において一定である。該高さH1と、底面11の短辺方向における幅L2との比(H1:L2)は、1:1〜1.5:1が好ましく、1.2:1〜1.4:1がより好ましい。この範囲であると、コンパクトに見えやすい。
本実施形態において、該高さH1は80〜100mmが好ましく、85〜95mmがより好ましい。
底面11の下端から上端までの高さdは、底面11の全周において一定である。該高さdは5〜10mmが好ましい。
【0016】
凹部15は、図3、7に示すように、鉛直方向を長軸方向とする長楕円状で、鉛直断面においては、中央部が内方に向かって膨出する凹面となっている。また図5に示すように、水平断面においては、平坦面または外方に向かって若干膨出する曲面となっている。
凹部15を設けることによって、容器の持ちやすさ、および注ぎやすさを確保しつつ、短辺側の側面12b、12b’の幅(L2)を大きくすることができる。本実施形態の容器は、凹部15が設けられた短辺側の側面12bを手のひらで覆い、長辺側の側面12aの一方に親指を当て、他方に他の指を当てて容器を把持したときに、持ちやすく、注ぎやすいように構成されている。
【0017】
凹部15の、鉛直方向における長さH2は、人の手幅程度が好ましく、65〜80mmがより好ましい。長さH2がこの範囲であると、容器内の液量が変化して、重心が変化しても、該変化に応じて容器を把持する指の位置を調整することができるので、持ち上げたとき、および注ぐときの、より良い安定性が得られる。
図5に示すように、側壁12の長辺側の側面12aの、水平投影視における、凹部15の円弧状の輪郭15aと、短辺側の側面12bの外面との距離(図5にW1で示す。)は、該距離が最大となる位置で、前記底面11の長辺方向における長さL1の1/2以下が好ましく、(L1)/8〜(L1)/4がより好ましい。
側壁12の短辺側の側面12bの、水平投影視における、凹部15の円弧状の輪郭15bと、長辺側の側面12aに接する鉛直面との距離(図5にW2で示す。)は、該距離が最大となる位置で、前記底面11の短辺方向における幅L2の1/2以下が好ましく、(L2)/8〜(L2)/4がより好ましい。
側壁12の水平断面の、鉛直投影視における、凹部15の外面と、底面11の輪郭の角の頂点との距離(図5にW3で示す。)は、該距離が最大となる位置で3〜8mmが好ましく、4〜6mmがより好ましい。
【0018】
本実施形態において、図3,6,7に示すように、本体1の頂部に設けられた口頸部14は円筒状で、外周面に、後述の注出キャップ201と螺合するネジ部14aを有する。該口頸部14の基端14bの周りに、円環状のフランジ部16を介して、肩部13が設けられている。肩部13は、側壁12の上端から口頸部14に向かって斜め上方に延びる傾斜面からなり、側壁12の上端とフランジ部16の周縁との間の部分をさす。
フランジ部16は傾斜面からなっており、その傾斜角度は肩部13の傾斜角度θよりも小さい。
口頸部14の基端14bは、鉛直方向から見たとき円形であり、フランジ部16の周縁16aは、該口頸部14の基端14bと同心円状の円形である。図2に示すように、肩部13の上端はフランジ部16の周縁16aであり、円形である。したがって肩部13の上端を通る第1の水平断面の輪郭160は円形となる。該第1の水平断面の輪郭160の曲率半径をR1とする。
なお、フランジ部16を設けない場合、肩部13の上端は口頸部14の基端14bとなる。
【0019】
本発明において、肩部13と水平面とのなす傾斜角度θは45°以下である。45°以下であると、容器がコンパクトに見えやすい。
本発明における肩部13と水平面とのなす傾斜角度θは、稜線12cの延長部分(図2にSで示す。)における角度であり、図7,8に示すように、後述の第2の水平断面の輪郭120の角の頂点Pを通る、該頂点Pと第1の水平断面の輪郭160との距離方向の直線Qと水平面とのなす角度をいう。
後述の実施例にも示すように、該傾斜角度θが小さくて容器全体の形状が直方体により近い方がコンパクト感が増すが、圧縮強度が低くなる。コンパクト感の点で傾斜角度θは35°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、25°以下がさらに好ましい。また成形性の点で13°以上が好ましく、良好な圧縮強度が得られやすい点で19°以上がより好ましい。
本実施形態において、側壁12の上端からフランジ部16に向かう方向において、肩部13の傾斜角度θは一定であるが、本発明の効果を損なわない範囲で変化してもよい。
【0020】
図8は、側壁12の上端と肩部13の上端との高さ方向における中間点を通る第3の水平断面(D−D線に沿う断面)の輪郭130を示した図である。この図には、水平投影視における、側壁12の上端を通る第2の水平断面の輪郭120、および第1の水平断面の輪郭160も示す。
図8に示すように、側壁12の上端を通る第2の水平断面の輪郭120は、丸みを帯びた長方形である。該第2の水平断面の輪郭120の角の曲率半径をR2とする。R2はR1より小さい(R1>R2)。
側壁12の上端と肩部13の上端との高さ方向における中間点を通る第3の水平断面の輪郭130は、外方に向かって膨出する4つの辺と、丸みを有する4つの角とからなる。第2の水平断面の輪郭120の角の頂点Pを通る、第1の水平断面の輪郭160との頂点Pとの距離方向の直線を直線Qとし、第3の水平断面の輪郭130と直線Qとの、鉛直投影視における交点での、第3の水平断面の輪郭130の曲率半径をR3とする。
【0021】
本実施形態において、上記曲率半径R1、R2、R3は上記式(1)を満たす。これにより、上方からの押圧力による凹部15の座屈を防止しつつ、良好な圧縮強度が得られる。
仮に、稜線12cの延長部分Sにおける曲率半径を、側壁12の上端からフランジ部16に向かう方向に、一定の比率で漸次変化させてなめらかな曲面とすると、R3はR1とR2の平均値と等しくなり、{(R1+R2)/2}=R3となる。
R3をR1とR2の平均値よりも小さくして{(R1+R2)/2}>R3とすると、稜線12cの延長部分Sが隆起した形状となり、R3が小さいほど該隆起の立ち上がりが鋭くなる。
本実施形態では、R3がR1とR2の平均値よりも小さく、かつR2よりも大きく形成されており、稜線13cの延長部分Sが若干隆起した形状となっている。
【0022】
本実施形態において、口頸部14の基端14bの外径D1は23〜53mmが好ましく、44〜53mmがより好ましい。フランジ部16の周縁の外径D2は、口頸部14の基端14bの外径D1より大きく、前記底面11の短辺方向における幅L2より小さい範囲で設定される。該外径D2は、D1+{(L2−D1)×0.1}〜D1+{(L2−D1)×0.6}が好ましい。
R1は、前記フランジ部16の周縁の外径D2の1/2である。R2は3〜15mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。R3は3〜34mmが好ましく、5〜31mmがより好ましい。
【0023】
図1に示すように、蓋体2は、口頸部14に嵌合される注出キャップ201と、該注出キャップ201に着脱可能に被せられるカバーキャップ202とからなる。
注出キャップ201は、樋状の注出ノズル211を備えており、特定の一方向に注ぎやすくなっている。注出キャップ201の周壁212は、上部周壁212aと下部周壁212bとからなり、上部周壁212aの外周面にはカバーキャップ202と螺合するネジ部が設けられている。下部周壁212bの内周面には、容器の口頸部14のネジ部14aと螺合するネジ部が設けられている。
注出キャップ201は、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料からなる。
注出キャップ201は、樋状の注出ノズル211の底面が、側壁12のうち、凹部15を有していない短辺側の側面12b’に最も近くなるように、口頸部14に固定されている。すなわち、凹部15を有する短辺側の側面12bを手のひらで覆うように、本体1を把持した状態で、液体を注ぎやすい構成となっている。
なお、蓋体2の構造は本実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
【0024】
本実施形態の容器は、肩部13の傾斜角度θが45°以下と小さいためコンパクトに見えやすい。また側壁12の稜線12cに凹部15が設けられているため、容器を手で持ちやすく、注ぎやすい。
また本実施形態によれば、{(R1+R2)/2}>R3>R2とすることにより、良好な圧縮強度が得られるとともに、凹部15の座屈も抑えることができる。
後述の実施例に示すようにR3≦R2では、上方からの押圧力に対して本体1が変形しやすい。これはR3が小さいほど、前記稜線12cの延長部分Sにおける隆起の立ち上がりが鋭くなり、上方からの押圧力が側壁12のうちの側面12a、12a、12b、12b’に向かう方向へ分散されやすくなるためと考えられる。側壁12の稜線12c部分に比べて、面積が広い側面12a、12a、12b、12b’の部分は上方からの力でたわみやすい。
これに対して、R3>R2であると、上方からの押圧力が側壁12のうちの稜線12cに向かって集中されやすくなるため、圧縮強度が向上すると考えられる。
一方、後述の実施例に示すように、R3が{(R1+R2)/2}より大きいと、上方からの押圧力によって、凹部15が内方に座屈しやすい。これは上方からの押圧力が稜線12cに向かって集中しすぎるためと考えられる。
したがって、本発明では、R3がR2よりも大きく、かつR1とR2の平均値よりも小さくなるように設計することにより、前記稜線12cの延長部分Sがほどよく隆起して、上方からの押圧力が、側面12a、12a、12b、12b’と稜線12cにバランス良く分配され、凹部15の座屈を防止しつつ良好な圧縮強度が得られると考えられる。
【0025】
なお、本実施形態の容器は、濃縮タイプの衣料用液体洗剤の容器に好適であるが、本発明は、これに限らず各種の合成樹脂製容器に適用でき、用途に応じて大きさ、形状等も本発明の範囲内で変更可能である。
容器の材質は、プラスチックボトルの材料として公知の合成樹脂を適宜用いることができる。
本実施形態では底面11および側壁12の形状が、それぞれ四角形および四角筒状であるが、これに限らず、底面がn角形(nは3〜8の整数)で側壁がn角筒状であってもよい。出荷時等におけるダンボール等への収納効率の点、およびコンパクト感の点では四角形および四角筒状が好ましい。
本体1の凹部15の形状および数も変更可能である。例えば4本の稜線12cの全部に凹部15を設けてもよい。
図9および10は、凹部25の輪郭25a、25bを鉛直方向の中央部がくびれた形状とした変形例を示したものである。図11および図12は、凹部35の形状を、鉛直断面において略くの字状とした変形例である。これらの変形例においても本実施形態と同様の効果が得られる。
図9〜12において、図1〜8と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。なお、図10および図12は、第1の実施形態における図2中のC−C線に沿う断面に相当する断面図である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(例5)
上記第1の実施形態の容器と同じ形状の合成樹脂製容器を実際に製造した。作成した容器の本体の材質、成形法、寸法は以下の通りである。
材質:高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂。
成形法:2軸延伸ブロー成形。
寸法:L1=84mm、L2=78mm、t=0.8mm、H1=95mm、d=6mm、H2=70mm、W1=13mm、W2=15mm、W3=4.2mm、D1=44.6mm、D2=62.4mm、R1=31.2mm、R2=6mm、R3=7.2mm、θ=19°。
樹脂の使用量:45g。
【0027】
得られた容器本体に対して、上方から鉛直方向に荷重をかけて圧縮したときの、鉛直方向における寸法減少量(押し込み量)を測定し、荷重(単位:N)を縦軸、押し込み量(単位:mm)を横軸とするグラフAを得た。グラフAの結果に基づいて、圧縮強度および耐座屈性を下記の評価基準で評価した。また、外観を下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(例1〜4、例6〜9)
容器本体のθおよびR3を、表1に示すように変化させたときの、圧縮強度、耐座屈性、外観についてコンピュータシミュレーションを用いて評価した。表1において例4〜6が実施例であり、例1〜3および例7〜9は比較例である。
圧縮強度および座屈性については、例5で得たグラフAのデータをもとにシミュレーション解析を行った。外観については三次元形状シミュレーションを行った。
【0029】
<評価基準>
[圧縮強度]
押し込み量が4mmであるときの荷重F(単位:N)を求め、以下の基準で圧縮強度を評価した。該Fが大きい方が圧縮強度に優れる。
○:Fが230N以上。
△:Fが200N以上、230N未満。
×:Fが200N未満。
[耐座屈性]
押し込み量が5mmに達するまで荷重を徐々に増大させたときの、荷重(単位:N)を縦軸、押し込み量(単位:mm)を横軸とするグラフにおいて、荷重が減少する点が存在すれば座屈が生じたと判断する。以下の基準で評価した。
○:荷重が減少する点は無い。
△:荷重が急激に減少する点は存在しないが、荷重が緩やかに減少する点が存在する。
×:荷重が急激に減少する点が存在する。
[外観]
(A)容器のコンパクト感および(B)肩部表面のなめらかさを目視で評価した。製品としては(B)肩部表面のなめらかさが悪いと採用できない。
○:(A)、(B)の両方が良好である。
△:(B)は良好であるが、(A)が劣る。
×:(B)が劣る。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示されるように、{(R1+R2)/2}>R3>R2である例4〜6では、良好な圧縮強度が得られるとともに、凹部15の座屈も抑えられた。外観も良好であった。
これに対して、R3≧{(R1+R2)/2}である実施例1〜3は、圧縮強度は例4〜6と同等であるが、凹部の座屈が生じやすい。
R2≧R3である例7〜9は、凹部の座屈は生じ難いが、圧縮強度が劣る。また肩部表面の外観が良くない。
肩部の傾斜角度θについては、大きいとコンパクト感が低下し、小さいと圧縮強度が低下する傾向がある。
【符号の説明】
【0032】
1…本体、2…蓋体、11…底面、12…側壁、12c…稜線、13…肩部、14…口頸部、15…凹部、120…第2の水平断面の輪郭、130…第3の水平断面の輪郭、160…第1の水平断面の輪郭。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル状の合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衣料用液体洗剤はボトル状の合成樹脂製容器に収容されているが、衣料用液体洗剤の容器には、持ちやすく、注ぎやすいことが要求される。また複数本をダンボール箱に詰めた形態で、該ダンボール箱を積み重ねても、容器が変形したり破損したりしないように、上方からの押圧力に対して充分な強度を有することも要求される。
従来の衣料用液体洗剤の容器の形状としては、特許文献1に記載されているような把手つき容器が主流であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−72728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境への負荷が少ない衣料用洗剤として、洗浄力を落とさずに使用量を減らした濃縮タイプの液体洗剤の開発が進んでいる。
かかる濃縮タイプの液体洗剤にあっては、従来よりも小型の容器に収容し、小型でありながら従来と同じ回数の洗濯ができることを表示することによって、使用量が少なくて済むことを消費者にわかりやすくアピールできる。
【0005】
本発明者は、よりコンパクトに見えやすい点から、立方体または高さが低い直方体状の合成樹脂製容器に着目して試作を行ったところ、立方体または直方体の上面に口頸部を設けた形状では、圧縮強度が不充分で、上方からの押圧力によって変形が生じ易いことがわかった。さらに、開発を進めるなかで、手で把持しやすくするために、側壁の稜線の中途部分に凹部を設けてみたところ、上方からの押圧力によって該凹部が内方に座屈する場合があることも知見した。側壁が多角筒状の容器においても同様の問題があることもわかった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、コンパクトに見えやすく、手で把持しやすく、かつ上方からの押圧力に対する強度が良好な、ボトル状の合成樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の合成樹脂製容器は、合成樹脂からなり、頂部に口頸部を有する有底多角筒状の本体と、前記口頸部に装着される蓋体とを備え、前記本体は、側壁の上端から口頸部に向かって斜め上方に延びる肩部を有し、前記側壁が、底面の辺から立ち上がる側面と、底面の角から立ち上がる稜線とを備え、少なくとも1本の稜線の中途部分に凹部が設けられており、前記肩部と水平面とのなす傾斜角度θが45°以下であり、前記肩部の上端を通る第1の水平断面の輪郭が略円形であり、第1の水平断面の輪郭の曲率半径をR1とし、前記側壁の上端を通る第2の水平断面の輪郭が略多角形であり、該第2の水平断面の輪郭の角の曲率半径をR2とし、前記側壁の上端と前記肩部の上端との高さ方向における中間点を通る水平断面を第3の水平断面とし、前記第2の水平断面の輪郭の角の頂点Pを通る、該頂点Pと前記第1の水平断面の輪郭との距離方向の直線を直線Qとし、前記第3の水平断面の輪郭と前記直線Qとの、鉛直投影視における交点での、前記第3の水平断面の輪郭の曲率半径をR3とするとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
{(R1+R2)/2}>R3>R2 …(1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパクトに見えやすく、手で把持しやすく、かつ上方からの押圧力に対する強度が良好な、ボトル状の合成樹脂製容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の合成樹脂製容器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す合成樹脂製容器の平面図である。
【図3】図1に示す合成樹脂製容器の正面図である。
【図4】図1に示す合成樹脂製容器の下面図である。
【図5】図3中のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図3中のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図2中のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図3中のD−D線に沿う断面の輪郭を示す図である。
【図9】本発明の合成樹脂製容器の他の例を示す斜視図である。
【図10】図9に示す合成樹脂製容器の断面図である。
【図11】本発明の合成樹脂製容器の他の例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す合成樹脂製容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施の形態として、濃縮タイプの衣料用液体洗剤の容器に好適な、略直方体状のボトル容器を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
図1〜8は、本発明に係る容器の第1の実施の形態を示したもので、図1は斜視図、図2は平面図、図3は正面図、図4は下面図、図5は図3中のA−A線に沿う断面図、図6は図3中のB−B線に沿う断面図、図7は図2中のC−C線に沿う断面図である。
図8は図3中のD−D線に沿う断面(第3の水平断面)の輪郭130、水平投影視における第1の水平断面の輪郭160、および水平投影視における第2の水平断面の輪郭120を示した図である。
図中符号1は本体、2は蓋体である。本明細書において、容器の高さ方向を鉛直方向とする。該鉛直方向に垂直な平面を水平面といい、鉛直方向に平行な平面を鉛直面という。また水平面で切った断面を水平断面といい、鉛直面で切った断面を鉛直断面という。
【0011】
本体1は、頂部に口頸部14を有する有底四角筒状である。符号11は底面、12は側壁、13は肩部を示す。図6に示すように、底面11と側壁12との境界部分、側壁12と肩部13との境界部分において、鉛直断面における外面形状が平面である部分を側壁12(高さをH1で示す。)とし、それより下を底面11、それより上を肩部13とする。
本体1の材質は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂である。本実施形態ではHDPE(高密度ポリエチレン)が好適に用いられる。容器の容量は、例えば、本体1の上端まで満杯にしたときの容量が400〜600ml程度が好ましい。樹脂の使用量は、該容量が500mlの容器の場合で45g程度が好ましい。
【0012】
底面11は、図2および図4に示すように、鉛直方向から見たときの輪郭が丸みを帯びた長方形であり、図6に示すように、中心部が内方に向かって膨出する凹面からなる。底面11と側壁12とのなす角11aも、丸みがつけてある。
本明細書において、丸みを帯びた多角形とは、輪郭の辺を外方に向かって膨出する曲線とし、角に丸みをつけた多角形を意味する。辺の中央部における曲率半径は、角の曲率半径よりも大きい。角の曲率半径は、輪郭線上の各点における曲率半径のうち、最も小さい曲率半径とする。
本明細書において、丸みをつけた角の、断面における「角の頂点」とは、該角の輪郭をなす曲線のうち、曲率半径が「角の曲率半径(前記最も小さい曲率半径)」である曲線部分の、長さ方向における中間点をさすものとする。
【0013】
図4の下面図において、長辺方向における長さL1と短辺方向における幅L2との比(L1:L2)は、0.8:1〜1.3:1が好ましく、1:1〜1.2:1がより好ましい。この範囲であると、安定性が良くて倒れ難く、コンパクトに見えやすい。
本実施形態において、短辺方向における長さL2は、持ちやすさ、および注ぎやすさの点から、60〜85mmが好ましく、65〜80mmがより好ましい。
【0014】
側壁12は、底面11の外周から略鉛直方向に立ち上がる四角筒状であり、底面11の長辺から立ち上がる2つの側面(以下、長辺側の側面という。)12a、12aと、底面11の短辺から立ち上がる2つの側面(以下、短辺側の側面という。)12b、12b’と、底面11の角から立ち上がる4本の稜線12cと、4本の稜線12cのうち、1つの短辺側の側面12bの両側に位置する2本の稜線12cの中途部分に設けられた凹部15とからなる。
側壁12は、上方に向かって縮径する方向に若干傾斜しており、図2に示すように、鉛直投影視(鉛直方向から投影視した状態)において、底面11の輪郭よりも、側壁12の上端の輪郭の方が若干内側にある。
本体1の、凹部15が設けられていない部分の水平断面の輪郭は、底面11を鉛直方向から見たときの輪郭と相似形であり、丸みを帯びた長方形である。すなわち4本の稜線12cにも丸みがつけてある。
鉛直投影視における、底面11の輪郭と側壁12の上端の輪郭との距離tは0.5〜1.5mm程度が好ましい。
【0015】
底面11の上端(側壁12の下端)から側壁12の上端までの高さH1は、底面11の全周において一定である。該高さH1と、底面11の短辺方向における幅L2との比(H1:L2)は、1:1〜1.5:1が好ましく、1.2:1〜1.4:1がより好ましい。この範囲であると、コンパクトに見えやすい。
本実施形態において、該高さH1は80〜100mmが好ましく、85〜95mmがより好ましい。
底面11の下端から上端までの高さdは、底面11の全周において一定である。該高さdは5〜10mmが好ましい。
【0016】
凹部15は、図3、7に示すように、鉛直方向を長軸方向とする長楕円状で、鉛直断面においては、中央部が内方に向かって膨出する凹面となっている。また図5に示すように、水平断面においては、平坦面または外方に向かって若干膨出する曲面となっている。
凹部15を設けることによって、容器の持ちやすさ、および注ぎやすさを確保しつつ、短辺側の側面12b、12b’の幅(L2)を大きくすることができる。本実施形態の容器は、凹部15が設けられた短辺側の側面12bを手のひらで覆い、長辺側の側面12aの一方に親指を当て、他方に他の指を当てて容器を把持したときに、持ちやすく、注ぎやすいように構成されている。
【0017】
凹部15の、鉛直方向における長さH2は、人の手幅程度が好ましく、65〜80mmがより好ましい。長さH2がこの範囲であると、容器内の液量が変化して、重心が変化しても、該変化に応じて容器を把持する指の位置を調整することができるので、持ち上げたとき、および注ぐときの、より良い安定性が得られる。
図5に示すように、側壁12の長辺側の側面12aの、水平投影視における、凹部15の円弧状の輪郭15aと、短辺側の側面12bの外面との距離(図5にW1で示す。)は、該距離が最大となる位置で、前記底面11の長辺方向における長さL1の1/2以下が好ましく、(L1)/8〜(L1)/4がより好ましい。
側壁12の短辺側の側面12bの、水平投影視における、凹部15の円弧状の輪郭15bと、長辺側の側面12aに接する鉛直面との距離(図5にW2で示す。)は、該距離が最大となる位置で、前記底面11の短辺方向における幅L2の1/2以下が好ましく、(L2)/8〜(L2)/4がより好ましい。
側壁12の水平断面の、鉛直投影視における、凹部15の外面と、底面11の輪郭の角の頂点との距離(図5にW3で示す。)は、該距離が最大となる位置で3〜8mmが好ましく、4〜6mmがより好ましい。
【0018】
本実施形態において、図3,6,7に示すように、本体1の頂部に設けられた口頸部14は円筒状で、外周面に、後述の注出キャップ201と螺合するネジ部14aを有する。該口頸部14の基端14bの周りに、円環状のフランジ部16を介して、肩部13が設けられている。肩部13は、側壁12の上端から口頸部14に向かって斜め上方に延びる傾斜面からなり、側壁12の上端とフランジ部16の周縁との間の部分をさす。
フランジ部16は傾斜面からなっており、その傾斜角度は肩部13の傾斜角度θよりも小さい。
口頸部14の基端14bは、鉛直方向から見たとき円形であり、フランジ部16の周縁16aは、該口頸部14の基端14bと同心円状の円形である。図2に示すように、肩部13の上端はフランジ部16の周縁16aであり、円形である。したがって肩部13の上端を通る第1の水平断面の輪郭160は円形となる。該第1の水平断面の輪郭160の曲率半径をR1とする。
なお、フランジ部16を設けない場合、肩部13の上端は口頸部14の基端14bとなる。
【0019】
本発明において、肩部13と水平面とのなす傾斜角度θは45°以下である。45°以下であると、容器がコンパクトに見えやすい。
本発明における肩部13と水平面とのなす傾斜角度θは、稜線12cの延長部分(図2にSで示す。)における角度であり、図7,8に示すように、後述の第2の水平断面の輪郭120の角の頂点Pを通る、該頂点Pと第1の水平断面の輪郭160との距離方向の直線Qと水平面とのなす角度をいう。
後述の実施例にも示すように、該傾斜角度θが小さくて容器全体の形状が直方体により近い方がコンパクト感が増すが、圧縮強度が低くなる。コンパクト感の点で傾斜角度θは35°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、25°以下がさらに好ましい。また成形性の点で13°以上が好ましく、良好な圧縮強度が得られやすい点で19°以上がより好ましい。
本実施形態において、側壁12の上端からフランジ部16に向かう方向において、肩部13の傾斜角度θは一定であるが、本発明の効果を損なわない範囲で変化してもよい。
【0020】
図8は、側壁12の上端と肩部13の上端との高さ方向における中間点を通る第3の水平断面(D−D線に沿う断面)の輪郭130を示した図である。この図には、水平投影視における、側壁12の上端を通る第2の水平断面の輪郭120、および第1の水平断面の輪郭160も示す。
図8に示すように、側壁12の上端を通る第2の水平断面の輪郭120は、丸みを帯びた長方形である。該第2の水平断面の輪郭120の角の曲率半径をR2とする。R2はR1より小さい(R1>R2)。
側壁12の上端と肩部13の上端との高さ方向における中間点を通る第3の水平断面の輪郭130は、外方に向かって膨出する4つの辺と、丸みを有する4つの角とからなる。第2の水平断面の輪郭120の角の頂点Pを通る、第1の水平断面の輪郭160との頂点Pとの距離方向の直線を直線Qとし、第3の水平断面の輪郭130と直線Qとの、鉛直投影視における交点での、第3の水平断面の輪郭130の曲率半径をR3とする。
【0021】
本実施形態において、上記曲率半径R1、R2、R3は上記式(1)を満たす。これにより、上方からの押圧力による凹部15の座屈を防止しつつ、良好な圧縮強度が得られる。
仮に、稜線12cの延長部分Sにおける曲率半径を、側壁12の上端からフランジ部16に向かう方向に、一定の比率で漸次変化させてなめらかな曲面とすると、R3はR1とR2の平均値と等しくなり、{(R1+R2)/2}=R3となる。
R3をR1とR2の平均値よりも小さくして{(R1+R2)/2}>R3とすると、稜線12cの延長部分Sが隆起した形状となり、R3が小さいほど該隆起の立ち上がりが鋭くなる。
本実施形態では、R3がR1とR2の平均値よりも小さく、かつR2よりも大きく形成されており、稜線13cの延長部分Sが若干隆起した形状となっている。
【0022】
本実施形態において、口頸部14の基端14bの外径D1は23〜53mmが好ましく、44〜53mmがより好ましい。フランジ部16の周縁の外径D2は、口頸部14の基端14bの外径D1より大きく、前記底面11の短辺方向における幅L2より小さい範囲で設定される。該外径D2は、D1+{(L2−D1)×0.1}〜D1+{(L2−D1)×0.6}が好ましい。
R1は、前記フランジ部16の周縁の外径D2の1/2である。R2は3〜15mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。R3は3〜34mmが好ましく、5〜31mmがより好ましい。
【0023】
図1に示すように、蓋体2は、口頸部14に嵌合される注出キャップ201と、該注出キャップ201に着脱可能に被せられるカバーキャップ202とからなる。
注出キャップ201は、樋状の注出ノズル211を備えており、特定の一方向に注ぎやすくなっている。注出キャップ201の周壁212は、上部周壁212aと下部周壁212bとからなり、上部周壁212aの外周面にはカバーキャップ202と螺合するネジ部が設けられている。下部周壁212bの内周面には、容器の口頸部14のネジ部14aと螺合するネジ部が設けられている。
注出キャップ201は、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料からなる。
注出キャップ201は、樋状の注出ノズル211の底面が、側壁12のうち、凹部15を有していない短辺側の側面12b’に最も近くなるように、口頸部14に固定されている。すなわち、凹部15を有する短辺側の側面12bを手のひらで覆うように、本体1を把持した状態で、液体を注ぎやすい構成となっている。
なお、蓋体2の構造は本実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
【0024】
本実施形態の容器は、肩部13の傾斜角度θが45°以下と小さいためコンパクトに見えやすい。また側壁12の稜線12cに凹部15が設けられているため、容器を手で持ちやすく、注ぎやすい。
また本実施形態によれば、{(R1+R2)/2}>R3>R2とすることにより、良好な圧縮強度が得られるとともに、凹部15の座屈も抑えることができる。
後述の実施例に示すようにR3≦R2では、上方からの押圧力に対して本体1が変形しやすい。これはR3が小さいほど、前記稜線12cの延長部分Sにおける隆起の立ち上がりが鋭くなり、上方からの押圧力が側壁12のうちの側面12a、12a、12b、12b’に向かう方向へ分散されやすくなるためと考えられる。側壁12の稜線12c部分に比べて、面積が広い側面12a、12a、12b、12b’の部分は上方からの力でたわみやすい。
これに対して、R3>R2であると、上方からの押圧力が側壁12のうちの稜線12cに向かって集中されやすくなるため、圧縮強度が向上すると考えられる。
一方、後述の実施例に示すように、R3が{(R1+R2)/2}より大きいと、上方からの押圧力によって、凹部15が内方に座屈しやすい。これは上方からの押圧力が稜線12cに向かって集中しすぎるためと考えられる。
したがって、本発明では、R3がR2よりも大きく、かつR1とR2の平均値よりも小さくなるように設計することにより、前記稜線12cの延長部分Sがほどよく隆起して、上方からの押圧力が、側面12a、12a、12b、12b’と稜線12cにバランス良く分配され、凹部15の座屈を防止しつつ良好な圧縮強度が得られると考えられる。
【0025】
なお、本実施形態の容器は、濃縮タイプの衣料用液体洗剤の容器に好適であるが、本発明は、これに限らず各種の合成樹脂製容器に適用でき、用途に応じて大きさ、形状等も本発明の範囲内で変更可能である。
容器の材質は、プラスチックボトルの材料として公知の合成樹脂を適宜用いることができる。
本実施形態では底面11および側壁12の形状が、それぞれ四角形および四角筒状であるが、これに限らず、底面がn角形(nは3〜8の整数)で側壁がn角筒状であってもよい。出荷時等におけるダンボール等への収納効率の点、およびコンパクト感の点では四角形および四角筒状が好ましい。
本体1の凹部15の形状および数も変更可能である。例えば4本の稜線12cの全部に凹部15を設けてもよい。
図9および10は、凹部25の輪郭25a、25bを鉛直方向の中央部がくびれた形状とした変形例を示したものである。図11および図12は、凹部35の形状を、鉛直断面において略くの字状とした変形例である。これらの変形例においても本実施形態と同様の効果が得られる。
図9〜12において、図1〜8と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。なお、図10および図12は、第1の実施形態における図2中のC−C線に沿う断面に相当する断面図である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(例5)
上記第1の実施形態の容器と同じ形状の合成樹脂製容器を実際に製造した。作成した容器の本体の材質、成形法、寸法は以下の通りである。
材質:高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂。
成形法:2軸延伸ブロー成形。
寸法:L1=84mm、L2=78mm、t=0.8mm、H1=95mm、d=6mm、H2=70mm、W1=13mm、W2=15mm、W3=4.2mm、D1=44.6mm、D2=62.4mm、R1=31.2mm、R2=6mm、R3=7.2mm、θ=19°。
樹脂の使用量:45g。
【0027】
得られた容器本体に対して、上方から鉛直方向に荷重をかけて圧縮したときの、鉛直方向における寸法減少量(押し込み量)を測定し、荷重(単位:N)を縦軸、押し込み量(単位:mm)を横軸とするグラフAを得た。グラフAの結果に基づいて、圧縮強度および耐座屈性を下記の評価基準で評価した。また、外観を下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(例1〜4、例6〜9)
容器本体のθおよびR3を、表1に示すように変化させたときの、圧縮強度、耐座屈性、外観についてコンピュータシミュレーションを用いて評価した。表1において例4〜6が実施例であり、例1〜3および例7〜9は比較例である。
圧縮強度および座屈性については、例5で得たグラフAのデータをもとにシミュレーション解析を行った。外観については三次元形状シミュレーションを行った。
【0029】
<評価基準>
[圧縮強度]
押し込み量が4mmであるときの荷重F(単位:N)を求め、以下の基準で圧縮強度を評価した。該Fが大きい方が圧縮強度に優れる。
○:Fが230N以上。
△:Fが200N以上、230N未満。
×:Fが200N未満。
[耐座屈性]
押し込み量が5mmに達するまで荷重を徐々に増大させたときの、荷重(単位:N)を縦軸、押し込み量(単位:mm)を横軸とするグラフにおいて、荷重が減少する点が存在すれば座屈が生じたと判断する。以下の基準で評価した。
○:荷重が減少する点は無い。
△:荷重が急激に減少する点は存在しないが、荷重が緩やかに減少する点が存在する。
×:荷重が急激に減少する点が存在する。
[外観]
(A)容器のコンパクト感および(B)肩部表面のなめらかさを目視で評価した。製品としては(B)肩部表面のなめらかさが悪いと採用できない。
○:(A)、(B)の両方が良好である。
△:(B)は良好であるが、(A)が劣る。
×:(B)が劣る。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示されるように、{(R1+R2)/2}>R3>R2である例4〜6では、良好な圧縮強度が得られるとともに、凹部15の座屈も抑えられた。外観も良好であった。
これに対して、R3≧{(R1+R2)/2}である実施例1〜3は、圧縮強度は例4〜6と同等であるが、凹部の座屈が生じやすい。
R2≧R3である例7〜9は、凹部の座屈は生じ難いが、圧縮強度が劣る。また肩部表面の外観が良くない。
肩部の傾斜角度θについては、大きいとコンパクト感が低下し、小さいと圧縮強度が低下する傾向がある。
【符号の説明】
【0032】
1…本体、2…蓋体、11…底面、12…側壁、12c…稜線、13…肩部、14…口頸部、15…凹部、120…第2の水平断面の輪郭、130…第3の水平断面の輪郭、160…第1の水平断面の輪郭。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなり、頂部に口頸部を有する有底多角筒状の本体と、前記口頸部に装着される蓋体とを備え、
前記本体は、側壁の上端から口頸部に向かって斜め上方に延びる肩部を有し、
前記側壁が、底面の辺から立ち上がる側面と、底面の角から立ち上がる稜線とを備え、少なくとも1本の稜線の中途部分に凹部が設けられており、
前記肩部と水平面とのなす傾斜角度θが45°以下であり、
前記肩部の上端を通る第1の水平断面の輪郭が略円形であり、第1の水平断面の輪郭の曲率半径をR1とし、
前記側壁の上端を通る第2の水平断面の輪郭が略多角形であり、該第2の水平断面の輪郭の角の曲率半径をR2とし、
前記側壁の上端と前記肩部の上端との高さ方向における中間点を通る水平断面を第3の水平断面とし、
前記第2の水平断面の輪郭の角の頂点Pを通る、該頂点Pと前記第1の水平断面の輪郭との距離方向の直線を直線Qとし、
前記第3の水平断面の輪郭と前記直線Qとの、鉛直投影視における交点での、前記第3の水平断面の輪郭の曲率半径をR3とするとき、
下記式(1)を満たすことを特徴とする合成樹脂製容器。
{(R1+R2)/2}>R3>R2 …(1)
【請求項1】
合成樹脂からなり、頂部に口頸部を有する有底多角筒状の本体と、前記口頸部に装着される蓋体とを備え、
前記本体は、側壁の上端から口頸部に向かって斜め上方に延びる肩部を有し、
前記側壁が、底面の辺から立ち上がる側面と、底面の角から立ち上がる稜線とを備え、少なくとも1本の稜線の中途部分に凹部が設けられており、
前記肩部と水平面とのなす傾斜角度θが45°以下であり、
前記肩部の上端を通る第1の水平断面の輪郭が略円形であり、第1の水平断面の輪郭の曲率半径をR1とし、
前記側壁の上端を通る第2の水平断面の輪郭が略多角形であり、該第2の水平断面の輪郭の角の曲率半径をR2とし、
前記側壁の上端と前記肩部の上端との高さ方向における中間点を通る水平断面を第3の水平断面とし、
前記第2の水平断面の輪郭の角の頂点Pを通る、該頂点Pと前記第1の水平断面の輪郭との距離方向の直線を直線Qとし、
前記第3の水平断面の輪郭と前記直線Qとの、鉛直投影視における交点での、前記第3の水平断面の輪郭の曲率半径をR3とするとき、
下記式(1)を満たすことを特徴とする合成樹脂製容器。
{(R1+R2)/2}>R3>R2 …(1)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−148506(P2011−148506A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9210(P2010−9210)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
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