説明

合成樹脂製容器

【課題】径方向からの荷重に対して、胴部に形成された環状の膨出部の凹みの発生を有効に防止することのできる合成樹脂製容器を提供することである。
【解決手段】口部11より下方に筒状の胴部13が形成された合成樹脂製容器(ボトル10)であって、前記胴部13に環状の膨出部32が形成され、前記膨出部32に、該膨出部32を周方向に分ける複数の凹状溝320が鉛直方向に形成された構成となる。これにより、前記膨出部32が径方向からの荷重に対して撓みやすくなるため、薄肉化されたペットボトル等の合成樹脂製容器において、径方向からの荷重(ラインプレッシャー)等に対して、前記膨出部32の凹みを効果的に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を流出、密封する中栓、キャップ等が装着される口部より下方に、環状の膨出部を有する筒状の胴部が形成された合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口部より下方に、筒状の胴部が形成されたペットボトル等の合成樹脂製容器においては、ラベルの保護、或いはデザイン上の目的で、前記胴部に環状の膨出部が形成されている。しかしながら、このような合成樹脂製容器に対する内容物(液体)の充填工程の前後における容器搬送ラインでは多数の容器が密集し、各容器は胴部に形成された膨出部が相互に押し合いながら搬送ラインの両側に設けられたガイドに沿って搬送される。そのため、搬送中に隣接する容器との接触や搬送ラインの両側に設けられた前記ガイドとの接触によって、各容器の胴部に形成された環状の膨出部に径方向の押圧力(ラインプレッシャー)が加わり、前記環状の膨出部に凹みが生じる場合がある。
【0003】
このようなラインプレッシャーによる凹みの発生を防止するため、容器を厚肉化して剛性を向上させることが考えられるが、近年、材料の使用量を低減するために、容器は薄肉化される傾向にあり、厚肉化以外の様々な手段によって所望の強度が容器に付与されている。
【0004】
このような状況において、従来、特許文献1に記載のプラスチックボトル(合成樹脂製容器)が提案されている。このプラスチックボトルは、口部より下方に位置する胴部の所定部位を外周側に膨出させて最大外形部分となる環状の膨出部が形成され、この環状の膨出部が周方向の長さが長い長辺凹面と短い短辺凹面とが交互に全周にわたり連なって多角形状となる構造となっている。このような構造のプラスチックボトルによれば、最大外径部分の環状の膨出部が形成されることにより、隣接するボトルとの接触を前記膨出部に制限し、更に、前記環状の膨出部を、周方向に沿って長辺凹面部と短辺凹面部とが交互に連なった多角形状とすることで、前記膨出部(最大外径部分)の剛性を高めている。これにより、環状の膨出部を含むボトル全体の薄肉化を図りつつ、ボトルの強度を高めることができる。
【0005】
また、特許文献2に記載の合成樹脂製ブローボトル(合成樹脂製容器)が知られている。このブローボトルは、口部より下方に位置する最大外径を保持する胴部の周壁に、所定の間隔をもって配列されるように複数の短尺傾斜リブが形成された構造となっている。このような構造のブローボトルによれば、胴部の周壁に複数の短尺傾斜リブ(傾斜したリブ)が形成されているので、側面強度と座屈強度とを同時に高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−302268号公報
【特許文献2】特開2010−76821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の合成樹脂製容器は、胴部の最大外形部分となる環状の膨出部、或いは最大外径を保持する胴部の周壁の剛性が高くなるが、薄肉化されたペットボトル等の合成樹脂製容器においては剛性の付与にも限界があり、単に剛性を付与するだけでは径方向の荷重(ラインプレッシャー)等による前記膨出部等の凹みは効果的に防止できない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、薄肉化されたペットボトル等の合成樹脂製容器において、径方向からの荷重(ラインプレッシャー)等に対して、胴部に形成された環状の膨出部の凹みの発生を有効に防ぐことのできる合成樹脂製容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部より下方に筒状の胴部が形成された合成樹脂製容器であって、前記胴部に環状の膨出部が形成され、前記膨出部に、該膨出部を周方向に分ける複数の凹状溝が鉛直方向に形成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る合成樹脂製容器においては、
1.前記複数の凹状溝が断面略V字状であること、
2.前記複数の凹状溝が密に形成されていること、
3.前記複数の凹状溝のそれぞれが膨出部の縦幅全体にわたって形成されていること、
4.前記環状の膨出部が胴部の略中央部、及び前記胴部と底部との隣接部分に形成され、前記複数の凹状溝が胴部の略中央部の膨出部に形成されること、
5.前記環状の膨出部が最大外径部分であること、
6.前記合成樹脂製容器が、胴部の側面の一部の凹部に別体の把手を取り付けたボトルであること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る合成樹脂製容器によれば、胴部の環状の膨出部を複数の凹状溝によって分けることにより、前記膨出部が径方向からの荷重に対して撓みやすくなるため、薄肉化されたペットボトル等の合成樹脂製容器において、径方向からの荷重(ラインプレッシャー)等に対して、前記膨出部の凹みを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る合成樹脂製容器を示す正面図である。
【図2】図1に示す合成樹脂製容器の胴部に形成された第1膨出部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面を示す断面図である。
【図4】図3におけるB−B断面を示す拡大断面図である。
【図5A】合成樹脂製容器における第1膨出部に径方向の荷重が作用した状態(その1)を拡大して示す拡大断面図である。
【図5B】合成樹脂製容器における第1膨出部に径方向の荷重が作用した状態(その2)を拡大して示す拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る合成樹脂製容器を示す正面図である。
【図7】図6に示す合成樹脂製容器の胴部に形成された第1膨出部を拡大して示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
本発明の第1の実施の形態に係る合成樹脂製容器は、図1に示すように構成され、この合成樹脂製容器は、二軸延伸ブロー成型により製造されたペットボトル(以下、単にボトルという)である。
【0015】
図1において、このボトル10は、内容物(液体)を注出、密栓する中栓、キャップ等が嵌着される口部11から下方に、肩部12及び筒状の胴部13が順次続き、更に胴部13の下端部に続いて底部14が形成された構造となっている。胴部13の略中央部の円筒状部分に環状の第1膨出部32が形成され、その第1膨出部32の上側に隣接した部位にくびれ部31が形成されている。また、胴部13の底部14との隣接部分にも、第1膨出部32と同様の外径を有する環状の第2膨出部33が形成されている。なお、この第1膨出部32、第2膨出部33は胴部13の最大外形部となっている。
【0016】
また、胴部13のくびれ部31と肩部12との間の部分には、側面の一部に凹部が形成され、別体の把手34が取り付けられている。さらに、胴部13の第1膨出部32と第2膨出部33との間の領域にはラベル(図示略)が装着され、この第1膨出部32と第2膨出部33とによって、胴部13に装着されるラベルの上下方向のずれ及び損傷を防止する。
【0017】
環状の第1膨出部32には、図1とともに、図2に拡大し、また、図3に図1におけるA−A線断面として示すように、前記第1膨出部32を周方向に複数に分ける複数の凹状溝320を鉛直方向(ボトル10の縦方向)に形成し、この凹状溝320に挟まれる部分を溝間部分321としている。
【0018】
そして、複数の凹状溝320は所定の間隔Pで配置され(本実施形態では第1膨出部32に対し12個)、その間隔Pは、第1膨出部32の縦方向の幅Wよりも大きい。各凹状溝320は、第1膨出部32の縦幅(W)全体にわたって形成され、その断面形状が略V字状(図3参照)に形成されている。
【0019】
また、前記凹状溝320を、第1膨出部32の縦幅全体にわたって形成することにより、凹状溝320と凹状溝320に挟まれる溝間部分321が、径方向の荷重(ラインプレッシャー)F(図5A及び図5B参照)が作用した際に、その荷重が作用する方向により撓み易くなる。
【0020】
さらに、各凹状溝320の断面形状を略V字状とすることより、鉛直方向に延びる凹状溝の底部320a(最深部)が線状になるので、第1膨出部32における凹状溝320と凹状溝320に挟まれる溝間部分321が径方向の荷重Fに対して、各凹状溝320の線状の底部320aがヒンジとなって、その荷重が作用する方向により撓み易くなる。
【0021】
そして、断面略V字状の各凹状溝320の角度αは60°乃至150°が好ましく、より好ましくは80°乃至130°である。前記角度αが60°未満の場合、ボトルのブロー成形時に凹状溝320となる箇所が金型に接触せずに成形(賦形)不良となるおそれがある。また、前記角度αが150°を越えると、溝間部分321と凹状溝320の周長差が減少して底部320aが有するヒンジ効果が薄れ、径方向の荷重が作用する側の凹状溝320の方向に溝間部分321が撓み難くなり、さらに凹状溝320に溝間部分321が嵌り込んでしまうと、隣接するボトル同士が固定されるブロッキング現象が発生し、容器搬送に支障を来すおそれがある。さらに前記嵌り込みは、装着されたラベルの損傷の原因となる。
【0022】
また、断面略V字状の各凹状溝320は、例えば、図3のB−B線断面となる図4に示すように、凹状溝320の底部320aが、第1膨出部32より下方の壁面に段差なく続くように設定されている。
【0023】
そして、本実施形態のボトル10に内容物(液体)を充填する工程においては、前述したように、各ボトル10では、最大外径部分となる第1膨出部32及び第2膨出部33に、隣接するボトル10の第1膨出部32及び第2膨出部33との接触、或いは搬送ラインに設けられたガイドとの接触により、径方向の荷重Fが加わる。
【0024】
しかしながら、最大外径部分となる環状の第1膨出部32に、鉛直方向に延びる複数の凹状溝320を形成し、前記第1膨出部32を複数の溝間部分321に分断しているため、例えば、図5A及び図5Bに示すように、隣り合う2つの凹状溝320(1)、320(2)に挟まれる溝間部分321が、周方向において比較的短い距離で湾曲した凸形状(アーチ状)となる。このため、この撓みの形態は詳細に図示しないが、溝間部分321に径方向の荷重Fが作用した場合は図5Aに破線で示すように、また、凹状溝320近傍の溝間部分321に径方向の荷重Fが作用した場合は図5Bに破線で示すように、それぞれ撓み易くになっている。特に、各凹状溝320(1)、320(2)が断面略V状に形成されているので、例えば図5Aの場合は、凹状溝320の底部320a(1)、320a(2)、320a(3)、320a(4)が、図5Bの場合は、凹状溝320の底部320a(1)、320a(2)、320a(3)が、それぞれヒンジになって、溝間部分321がより撓み易い。
【0025】
このように、本実施形態のボトル10では、第1膨出部32における隣り合う2つの凹状溝320(1)、320(2)の間の溝間部分321が径方向に撓み易いので、第1膨出部32に対する径方向の荷重に対して第1膨出部32の凹みの発生を効果的に防止することができる。
【0026】
本発明の第2の実施形態に係る合成樹脂製容器は、図6及び図7に示すように構成される。この合成樹脂製容器も、第1の実施形態と同様に、二軸延伸ブロー成型により製造されたペットボトル(以下、単にボトルという)である。なお、図6はボトルの正面図であり、図7は図6に示すボトルの胴部に形成された第1膨出部を拡大して示す拡大斜視図である。
【0027】
図6において、このボトル100は、第1の実施形態の場合(図1乃至図4参照)と同様に、口部11、肩部12、胴部13及び底部14によって構成され、胴部13には、くびれ部31及び別体の把手34が形成されるとともに、最大外径部分となる環状の第1膨出部32及び第2膨出部33が形成されている。
【0028】
第1膨出部32には、図6と共に図7に拡大して示すように、当該第1膨出部32を周方向に複数に分ける鉛直方向の凹状溝320が形成され、この凹状溝320に挟まれる部分を溝間部分321としている。この場合、複数の凹状溝320は、所定の間隔Pで配置されるが、環状の第1膨出部32全体に形成される凹状溝320の数は第1の実施形態の場合(図1及び図2参照)より多く(本実施形態では第1膨出部32に対し24個)、その間隔Pは、第1膨出部32の縦方向の幅Wよりも小さい(図7参照)。なお、複数の凹状溝320の配列間隔Pは、第1膨出部32の縦方向の幅Wより小さく形成したがこれに限定されず、複数の凹状溝320の配列間隔Pと第1膨出部32の縦方向の幅Wとが同じであってもよい。
【0029】
そして、複数の凹状溝320の配列間隔Pが第1膨出部32の縦方向の幅Wより小さく、或いは同じに形成された場合が、前記凹状溝320が密に形成された状態である。
【0030】
そして、本実施形態のボトル100では、第1膨出部32が密に形成された複数の凹状溝320によって多くの溝間部分321に分断されるので、隣り合う2つの凹状溝320(1)、320(2)に挟まれる溝間部分321が、更に短い距離で湾曲した凸形状(アーチ状)となる(図5A及び図5B参照)。そのため、本実施形態に係るボトル100では、凹状溝320と凹状溝320に挟まれる部分の溝間部分321がより撓み易くなり、第1膨出部32に対する径方向の荷重に対して凹みの発生をより効果的に防止することができる。
【0031】
なお、前述した各実施形態では、第1膨出部32に複数の凹状溝320が形成したが、第2膨出部33にも複数の凹状溝を形成してもよい。
【0032】
また、各凹状溝320は、断面略V字状に形成されていたが、これに限定されず、径方向の荷重によって溝間部分321が撓み得るものであれば、底部が平坦な凹状溝であってもよい。
【0033】
また、第1膨出部32に形成される複数の凹状溝320は、所定の間隔P(等間隔)に配置されているが、これら複数の凹状溝320は、ランダムな間隔にて配置されるものであってもよい。例えば、ボトル10に把手34を取り付ける際には、把手34を取り付ける側面凹部は、図示しないが前記把手34を取り付けるための凹部をボトル10に設けるために厚肉にする必要があり、一方、前記側面凹部の周辺は薄肉となり、特に把手34の下方の胴部13の剛性が低下する傾向にある。このため、把手34を側面凹部に取り付ける形態のボトルにおいては、把手34の下方に位置する環状の第1膨出部32(剛性の低い箇所)に凹状溝320を前述の密な間隔で設けると、好適に前記第1膨出部32の凹みの発生が防止される。
【0034】
更に、各凹状溝320は、第1膨張部32の縦幅(W)全体にわたって形成されるものであったが、第1膨張部32の縦幅(W)の一部に形成されるものであってもよく、このような形態であっても、径方向の荷重によって溝間部分321はその径方向の荷重が向かう側の方向に撓み得る。
【0035】
また、前述した第1及び第2の実施形態では、最大外径部分となる環状の膨出部に凹状溝を形成したが、これに限定されることはなく、胴部の高さ方向のいずれかの箇所、例えば、ボトルの肩部の下方と胴部の略中央の部分において、前述した凹状溝を有する環状の膨出部を形成して最大外径に準ずる部分とすると共に、ラインプレッシャー等における前記環状の膨出部の凹みを防止してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上、説明したように、本発明に係る合成樹脂製容器は、径方向からの荷重(例えば、前述したラインプレッシャー)に対して容器の胴部に形成された環状の膨出部の凹みの発生を効果的に防止することができ、薄肉化されたペットボトル等の合成樹脂製容器として有用である。
【符号の説明】
【0037】
11 口部
12 肩部
13 胴部
14 底部
31 くびれ部
32 第1膨出部
33 第2膨出部
34 把手
320(320(1)、320(2)、320(3)、320(4)) 凹状溝
320a(320a(1)、320a(2)、320a(3)、320a(4)) 底部
321 溝間部分
10、100 ボトル(合成樹脂製容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部より下方に筒状の胴部が形成された合成樹脂製容器であって、
前記胴部に環状の膨出部を形成し、
前記膨出部に、該膨出部を周方向に分ける複数の凹状溝を鉛直方向に形成した合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記複数の凹状溝のそれぞれは、断面略V字状に形成された請求項1記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記複数の凹状溝が密に形成された請求項1または2記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記複数の凹状溝のそれぞれが膨出部の縦幅全体にわたって形成された請求項1乃至3のいずれかに記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記環状の膨出部が胴部の略中央部、及び前記胴部と底部との隣接部分に形成され、
前記複数の凹状溝が前記胴部の略中央部の膨出部に形成された請求項1乃至4のいずれかに記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記環状の膨出部が前記胴部の最大外径部分である請求項1乃至5のいずれかに記載の合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記合成樹脂製容器が、胴部の側面の一部の凹部に別体の把手を取り付けたボトルである請求項1乃至6のいずれかに記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82471(P2013−82471A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222908(P2011−222908)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】