説明

合成樹脂製角型壜体

【課題】 胴部が薄肉化された合成樹脂製角型壜体において、高温充填時(加圧状態)の減圧吸収パネルの外方向への座屈変形を起こさせない程度の膨出変形を達成すると共に、温度低下時(減圧状態)に膨出変形状態が保持される問題を、角形壜体の特に減圧吸収パネル形状の改良により解消することを技術的課題とする。
【解決手段】 4ケの平板状の周壁(5)と周壁(5)を角取り状に連結する4ケのコーナー壁(6)とを有して角筒形状に形成された胴部(4)の周壁(5)に、陥没状に形成された減圧吸収パネル(10)を備えた合成樹脂製角型壜体(1)において、減圧吸収パネル(10)のパネル底面(12)には、上下に一定の間隔を有して形成された断面凸形状の横凸リブ(13)が複数配置されており、横凸リブ(13)の中央部(13a)の縦寸法とその両端部(13b)の縦寸法とが異なる寸法で形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部に減圧吸収パネルを形成したポリエチレンテレフタレート樹脂製2軸延伸ブロー成形ボトルに代表される合成樹脂製角形壜体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す。)樹脂製等の合成樹脂製壜体は水、スポーツ飲料水、お茶、ジュース等の飲料用として幅広く使用されている。特許文献1には角形壜体の代表例である、胴部の平断面形状が角取りした正方形状の壜体が実施例として記載されている(図11参照)。
【0003】
この図11に示される壜体は合成樹脂製の2軸延伸ブロー成形された壜体1であって、上端にテーパー角筒状をした肩部3を介して口筒部2を連設し、下端に底部8を連設した胴部4は、角取りした略正方角筒形状であり、胴部4を周壁5と角取りした部分であるコーナー壁6で形成している。
【0004】
そして、この壜体1では、各周壁5に減圧吸収パネル10が陥没状に形成しているが、内容液を殺菌の目的で80〜90℃程度の高温で充填する用途では、充填時に内部が加圧状態になる場合があるので減圧吸収パネル10が壜体1の外方向に向かって膨出変形するが、充填後は内容液の温度の低下に伴い内部が減圧状態となるので、減圧吸収パネル10が壜体1の内方向に向かって陥没変形する。
【0005】
このように、減圧吸収パネル10が膨出変形及び陥没変形することにより、壜体内の内圧の変化を吸収して減圧吸収パネル10以外の胴部4の局所的な変形を防いだり、外観的に目立たないようにしたりすると云う機能、所謂、壜体1内の圧力変化を吸収する機能(内圧吸収機能)を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−180637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、この種の壜体は、食品向けの用途等に大量に使用されて、多くの場合は使い捨てにされており、そのため、従来より省資源、包装に係るコストの低減の観点から薄肉化による軽量化が要請されている。
【0008】
しかしながら、この薄肉化にも壜体の剛性、そして壜体の成形性の点からおのずと限界があり、上記したような減圧吸収パネルを形成した壜体では、薄肉化により、高温充填時(加圧状態)に外方向に膨出変形した減圧吸収パネルが、充填後の温度の低下による減圧状態において内方向に陥没変形せず、外方向に膨らんだ状態(膨出変形状態)が保持されてしまい、壜体の外観上のデザイン性を損ねるという問題がある。
【0009】
特に、内圧吸収機能を十分発揮させるために1ケの減圧吸収パネルを大きな面積で形成した場合に、このような問題はより深刻なものとなる。
【0010】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、胴部が薄肉化された合成樹脂製角型壜体において、高温充填時(加圧状態)の減圧吸収パネルの外方向への座屈変形を起こさせない程度の膨出変形を達成すると共に、温度低下時(減圧状態)においても膨出変形状態が保持される問題を、角形壜体の特に減圧吸収パネル形状の改良により解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
4ケの平板状の周壁と周壁を角取り状に連結する4ケのコーナー壁とを有して角筒形状に形成された胴部の周壁に、陥没状に形成された減圧吸収パネルを備えた合成樹脂製角型壜体において、
減圧吸収パネルのパネル底面には、上下に一定の間隔を有して形成された断面凸形状の横凸リブが複数配置されており、横凸リブの中央部の縦寸法とその両端部の縦寸法とが異なる寸法で形成されていることを特徴とする、と云うものである。
【0012】
上記構成からなる本発明の合成樹脂製角型ボトルでは、減圧吸収パネルに設けた横凸リブの縦寸法を、中央部と両端部とで異なる寸法とすることにより、膨出及び減容に対する減圧吸収パネルの自由な変形動作を確保しつつ、高温充填時(加圧状態)においては減圧吸収パネルの外方向への座屈変形を起こさせない程度の膨出変形を達成すると共に、温度低下時(減圧状態)には減圧吸収パネルの内方向への陥没変形の進展を助長する。
【0013】
特に、減圧吸収パネル内に形成する横凸リブの形状を、その全長にわたって同じ縦寸法からなる所謂ストレートタイプの横凸リブとした場合には、高温充填時(加圧状態)に減圧吸収パネルが反転してしまうことがあり、反転後の形状が半永久的に保持されてしまって温度低下時(減圧状態)に至っても陥没変形が起こり難くなり、変形前の元の形状に戻らなくなる可能性がある。しかし、横凸リブの中央部の縦寸法を、その両端部の縦寸法と異なる寸法で形成することにより、このような減圧吸収パネルの反転の抑制を確実に達成する。
【0014】
また本発明の他の構成は、上記請求項1に記載の発明において、横凸リブの中央部の縦寸法を、両端部の縦寸法よりも狭くした、と云うものである。
【0015】
上記構成では、高温充填時(加圧状態)における減圧吸収パネルの外方向への座屈変形を起こさせない程度の膨出変形と、そこから転じて温度低下時(減圧状態)に至った後の減圧吸収パネルの陥没変形の助長とを達成するが、特に、中央部と両端部の縦寸法が等しいストレートタイプの横凸リブに比較して、同一減圧強度における吸収容量を大きく、すなわち不正変形した点における減圧吸収容量を大きくすることができるため、より大きな減圧吸収機能が発揮されるようになり、減圧吸収パネルの確実な陥没変形を達成する。
【0016】
さらに本発明の他の構成は、上記請求項1又は2に記載の発明において、横凸リブの平面形状を、上下の両辺を互いに接近する方向に凹円弧状に凹ませてなる略凹レンズ状とした、と云うものである。
【0017】
上記構成では、上下の両辺を凹円弧状とすることにより、直線状に形成した場合に比較してよりスムーズな変形動作を達成する。
【0018】
さらに本発明の他の構成は、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、胴部中央に内方向に凹む周溝が形成されて周壁が上下に区分けされており、減圧吸収パネルが、区分けされた上下の周壁のそれぞれに形成されている、と云うものである。
【0019】
上記構成では、減圧吸収パネルを、上部側の胴部壁面と下部側の胴部壁面とに分けた状態で形成することにより、高温充填時(加圧状態)における外方向へのさらなる座屈変形を起こさせない程度の膨出変形を達成し、温度低下時(減圧状態)における確実な陥没変形を確保する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、高温充填時(加圧状態)における減圧吸収パネルの外方向への座屈変形を起こさせない程度の変形を確保し、減圧吸収パネルの反転を確実に防止することができる。
【0021】
また横凸リブの中央部の縦寸法を、両端部の縦寸法よりも狭くした構成にあっては、より大きな減圧吸収機能が発揮されるようになるため、減圧状態における陥没変形を効果的に行うことができ、したがって壜体の外観形状を変形前の元の状態に戻すことができる。
【0022】
また横凸リブの平面形状を、上下の両辺が互いに接近する方向に凹円弧状に凹む略凹レンズ状とした構成にあっては、よりスムーズな膨出変形動作及び陥没変形動作を達成することができる。
【0023】
また胴部の中央に内方向に凹む周溝が形成されて周壁が上下に区分けされており、減圧吸収パネルが、区分けされた上下の周壁のそれぞれに形成されている構成にあっては、1ケ当たりの減圧吸収パネルの面積を小さくすることで、個々の減圧吸収パネルにおける膨出変形量及び陥没変形量を低く抑えることが可能となる。これにより、高温充填時の加圧状態から温度低下時時の減圧状態に至る過程において、膨出変形した減圧吸収パネルを確実に膨出前の元の状態に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の角型壜体の第1実施例を示す正面図である。
【図2】第1実施例における主要部としての減圧吸収パネルを示し、Aは減圧吸収パネルの構成を示す拡大正面図、BはAのb1−b1線における断面図、CはAのc1−c1線における断面図である。
【図3】本発明の角型壜体の第2実施例を示す正面図である。
【図4】第2実施例における主要部としての減圧吸収パネルを示し、Aは減圧吸収パネルの構成を示す拡大正面図、BはAのb2−b2線における断面図、CはAのc2−c2線における断面図である。
【図5】比較例として示す角型壜体の正面図である。
【図6】比較例における減圧吸収パネルの構成を示し、Aは減圧吸収パネルの拡大正面図、BはAのb3−b3線及びc3−c3線における断面図である。
【図7】耐圧測定の解析結果をボトル容量増加として示すグラフである。
【図8】耐圧測定の解析結果をパネル膨らみ量として示すグラフである。
【図9】減圧吸収容量測定試験の結果を示すグラフである。
【図10】図9を部分的に拡大して示すグラフである。
【図11】従来の角型壜体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の角型壜体の第1実施例を示す正面図、図2は第1実施例における主要部としての減圧吸収パネルを示し、Aは減圧吸収パネルの構成を示す拡大正面図、BはAのb1−b1線における断面図、CはAのc1−c1線における断面図である。なお、図2は上側の減圧吸収パネル10aの構成を示したものであるが、下側の減圧吸収パネルの拡大正面図10bについても同様の構成である。
【0026】
図1に示されるように、第1実施例として示す角型壜体1Aは、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形品である。この角型壜体1Aは口筒部2と、テーパー角筒形状をした肩部3と、平断面形状が角取りをした正四角形の角筒構造の胴部4と、底部8を有する500ml用のものである。そして胴部4は、正面、背面、右側面及び左側面を構成する4ケの周壁5と、隣接する周壁5を角取り状に連結する4ケのコーナー壁6とから形成される。
【0027】
胴部4の略1/2の中央高さ位置には、角型壜体1Aの内方向に凹んで周壁5の面剛性や座屈強度を大きくする周溝7が形成されており、この周溝7によって上下に区分けされた周壁5の各部分に減圧吸収パネル10(10a,10b)が形成されている。
【0028】
図2に示すように、減圧吸収パネル10は、周壁5を陥没形状に形成され、中央部側の幅寸法が口筒部2(または底部8)側の幅寸法よりも若干広めに形成してなる略台形状の枠部11を有して形成されている。枠部11の内側には陥没形成されたパネル底面12が設けられている。パネル底面12には、外方向に突出する断面凸形状に形成され、且つ高さ方向に所定の間隔を有して並設された複数の横凸リブ13が一体に形成されている。
【0029】
第1実施例に示す角型壜体1Aでは、横凸リブ13の長手方向の中央部13aの縦寸法(高さ方向の幅寸法)w1が、その両側の端部13b,13b(以下、両端部13bという。)の縦寸法w2に比較して幅狭く形成されており(w1<w2)、横凸リブ13の平面形状は上下の両辺13c,13cの中央部近傍の対向間隔を互いに接近する方向に凹円弧状に凹ませてなる略凹レンズ状である。
【0030】
パネル底面12の周壁5に対する深さ寸法d1は2.0mmで形成されているのに対し、横凸リブ13の周壁5に対する深さ寸法d2は1.5mmで形成されており、パネル底面12からの横凸リブ13の実質的な突出寸法(d2−d1)は0.5mmに設定されている。
【0031】
図3は本発明の角型壜体の第2実施例を示す正面図、図4は第2実施例における主要部としての減圧吸収パネルを示し、Aは減圧吸収パネルの構成を示す拡大正面図、BはAのb2−b2線における断面図、CはAのc2−c2線における断面図である。なお、図4は上側の減圧吸収パネル10aの構成を示したものであるが、下側の減圧吸収パネルの拡大正面図10bの構成も同様である。
【0032】
第2実施例に示す角型壜体1Bが、上記第1実施例の角型壜体1Aと異なる点は、減圧吸収パネル10の、特に横凸リブ13の構成にあり、その他の構成は上記第1実施例の角型壜体1Aと同様である。よって、以下においては主として異なる部分である減圧吸収パネル10の構成について説明する。
【0033】
第2実施例に示す角型壜体1Bでは、横凸リブ13の長手方向の中央部13aの縦寸法w1が、その両端部13bの縦寸法w2に比較して幅広く形成されており(w1>w2)、横凸リブ13の平面形状は、上下の両辺13c,13cの中央部近傍の対向間隔を互いに離れる方向に凸円弧状に突出させてなる略凸レンズ状である。
【0034】
なお、パネル底面12の周壁5に対する深さ寸法d1、横凸リブ13の周壁5に対する深さ寸法d2、及びパネル底面12からの横凸リブ13の実質的な突出寸法(d2−d1)は上記第1実施例と同様である。
【0035】
図5は比較例として示す角型壜体の正面図、図6は比較例における減圧吸収パネルの構成を示し、Aは減圧吸収パネルの拡大正面図、BはAのb3−b3線及びc3−c3線における断面図である。なお、図6は上側の減圧吸収パネル10aの構成を示したものであるが、下側の減圧吸収パネル10bの構成も上記同様である。
【0036】
比較例として示す角型壜体1Cが、上記第1実施例及び第2実施例の角型壜体1A,1Bと異なる点も、減圧吸収パネル10の特に横凸リブ13の構成にある。すなわち、比較例として示す角型壜体1Cの横凸リブ13は、上下の両辺13c,13cの対向間隔が横凸リブ13の全範囲に亘って同一の縦寸法wで形成された所謂ストレートタイプである。
なお、その他の構成は上記第1実施例及び第2実施例と同様である。
【0037】
次に、本発明の角型壜体の作用効果を確認するため、第1実施例、第2実施例及び比較例に示す角型壜体1(1A、1B及び1C)についての耐圧測定試験及び減圧吸収容量測定試験を行ったので以下に説明する。
【0038】
図7は耐圧測定の解析結果をボトル容量増加として示すグラフ、図8は耐圧測定の解析結果をパネル膨らみ量として示すグラフ、図9は減圧吸収容量測定試験の結果を示すグラフ、図10は図9を部分的に拡大して示すグラフである。
【0039】
なお、図7は横軸を内圧(kg/cm)、縦軸をボトル容量増加(ml)にしてグラフ化したものであり、図8は横軸を内圧(kg/cm)、縦軸をパネル膨らみ量(mm)にしてグラフ化したものである。また図9及び図10は横軸を減圧強度(kPa)、縦軸を吸収容量(ml)にしてグラフ化したものである。
【0040】
また図7乃至図10においては、第1実施例の角型壜体1Aに対する結果をT1(実線)で、第2実施例の角型壜体1Bに対する結果をT2(一点鎖線)で、比較例の角型壜体1Cに対する結果をC(破線)でそれぞれ示している。
【0041】
(1)耐圧測定
耐圧測定の解析結果は、高温充填によって角型壜体1内が加圧状態となったときに、減圧吸収パネルの角型壜体1外方向への膨出変形を想定した場合のシミュレーション結果として示すものである。
【0042】
第1実施例、第2実施例及び比較例における角型壜体1のそれぞれについて、内圧0.05kg/cm及び内圧0.2kg/cmの場合におけるボトル容量増加量(ml)及びパネル膨らみ量(mm)の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
図7、図8及び表1の結果から、内圧0.05kg/cmの場合においては、ボトル容量増加量及びパネル膨らみ量は、ストレートタイプの横凸リブ13を備えた比較例(C)として示す角型壜体1Cが最も小さく、次に小さいのが第1実施例(T1)の角型壜体1Aであり、第2実施例(T2)の角型壜体1Bが最も大きいことがわかる。また内圧0.2kg/cmの場合においては、第1実施例(T1)の角型壜体1A及び第2実施例(T2)の角型壜体1Bのボトル容量増加量及びパネル膨らみ量は、比較例(C)の角型壜体1Cとほぼ同等であることがわかる。
【0045】
しかしながら、図7及び図8に示すように、各角型壜体1の内圧を徐々に上昇させて行くと、内圧が概ね0.05kg/cmを超えたときに、比較例(C)の角型壜体1Cの場合には減圧吸収パネル10が反転することが確認された。なお、減圧吸収パネル10が反転する様子は、図7及び図8のグラフ上にS字カーブとして示されており、S字カーブが最初に形成されるグラフ上の位置C1(図8参照)は減圧吸収パネル10が反転を開始する変曲点C1である。
【0046】
比較例(C)の角型壜体1Cのように、内圧上昇中に減圧吸収パネル10が一度反転してしまうと、その後に減圧しても反転状態が保持されてしまうため、角型壜体1の外観(デザイン性)を損ねる結果となる。
【0047】
他方、第1実施例(T1)及び第2実施例(T2)の角型壜体1A及び1Bでは、減圧吸収パネル10は反転することなく、内圧の上昇にほぼ比例してボトル容量が増加する傾向が見られた。
これらの結果、第1実施例(T1)の角型壜体1A及び第2実施例(T2)の角型壜体1Bは、比較例(C)の角型壜体1Cに比較して耐圧特性に優れていることが確認できた。
【0048】
(2)減圧吸収容量測定試験
減圧吸収容量測定試験は、高温充填により加圧状態にある角型壜体1が、その後の内容液の温度の低下に伴って内部が減圧状態となったときに、減圧吸収パネル10の角型壜体1内方向への陥没変形を想定したものである。
【0049】
測定する角型壜体1に水を満量充填し、その口筒部にゴム栓付ビューレットを装着し、真空ポンプを作動させ、マノメータで0.4kPa/秒のスピードで減圧し、角型壜体1が局部的な陥没変形や座屈変形等の不正変形した時のビューレットの値を読んで、テスト前後のビューレットの値差から減圧吸収容量を算出する。
【0050】
図9及び図10に示すように、ほぼ全範囲にわたり吸収容量が最も大きいのは第1実施例(T1)の角型壜体1Aであり、第2実施例(T2)の角型壜体1Bと比較例(C)の角型壜体1Cの吸収容量はほぼ同等であることがわかる。
【0051】
以上の耐圧測定試験及び減圧吸収容量測定試験の結果から、総合的に第1実施例(T1)に示す角型壜体1Aが耐圧特性及び減圧吸収特性に優れており、最も加圧状態において膨出変形し難く、且つ減圧状態において陥没変形し易い壜体であることが確認された。
この結果、略凹レンズ状の横凸リブ13からなる減圧吸収パネル10を備えた第1実施例(T1)に示す角型壜体1Aが、高温充填及び充填後の内容液の温度の低下という一連の内圧変化の過程において、角型壜体の外観上のデザイン性を保持する上で最も優れた壜体ということができる。
【0052】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施例では、周壁5の高さ方向のほぼ中央に周溝7を形成して区分けした上下の周壁5のそれぞれに、減圧吸収パネル10a,10bを配置した角型壜体1の構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、周溝7を有せず上下に区分けされていない周壁5に大きな面積からなる減圧吸収パネルを形成し、この減圧吸収パネル内に上述の横凸リブ13を形成した構成からなる角型壜体1とすることも可能である。
【0054】
上下の周壁5に減圧吸収パネル10a,10bを区分けする構成では、上下の減圧吸収パネルの変形動作を独立させることができるため、高温充填時(加圧状態)における外方向への座屈変形を起こさせない程度の膨出変形を達成し、温度低下時(減圧状態)における確実な陥没変形を達成することにより、膨出変形した減圧吸収パネルを膨出変形前の元の状態に確実に復帰させることができる。
【0055】
一方、周壁5に大きな面積からなる減圧吸収パネルでは、区分けした構成に比較してより大きな耐圧特性及び減圧吸収特性を有して減圧吸収パネルを変形動作させることが可能である。
【0056】
また上記各実施例では、角型壜体1として正方角筒形状の胴部4を有する壜体を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、長方角筒形状の胴部4を有する角型壜体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の合成樹脂製角形壜体は、胴部が薄肉化された合成樹脂製角型壜体において、高温充填時(加圧状態)から温度低下時(減圧状態)に転じる際に発生する膨出変形が保持されるという問題を解消したものであり、省資源、コスト低減等を考慮した容器分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B,1C ; 角型壜体
2 ; 口筒部
3 ; 肩部
4 ; 胴部
5 ; 周壁
6 ; コーナー壁
7 ; 周溝
8 ; 底部
10 ; 減圧吸収パネル
11 ; パネル枠部
12 ; パネル底面
13 ; 横凸リブ
13a ; 横凸リブの中央部
13b ; 横凸リブの端部
13c ; 横凸リブの上下の両辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4ケの平板状の周壁(5)と前記周壁(5)を角取り状に連結する4ケのコーナー壁(6)とを有して角筒形状に形成された胴部(4)の前記周壁(5)に、陥没状に形成された減圧吸収パネル(10)を備えた合成樹脂製角型壜体(1)において、
前記減圧吸収パネル(10)のパネル底面(12)には、上下に一定の間隔を有して形成された断面凸形状の横凸リブ(13)が複数配置されており、前記横凸リブ(13)の中央部(13a)の縦寸法とその両端部(13b)の縦寸法とが異なる寸法で形成されていることを特徴とする合成樹脂製角型壜体。
【請求項2】
横凸リブ(13)の中央部(13a)の縦寸法(w1)を、両端部(13b)の縦寸法(w2)よりも狭くした請求項1記載の合成樹脂製角型壜体。
【請求項3】
横凸リブ(13)の平面形状を、上下の両辺を互いに接近する方向に凹円弧状に凹ませてなる略凹レンズ状とした請求項2記載の合成樹脂製角型壜体。
【請求項4】
胴部(4)の中央に内方向に凹む周溝(7)が形成されて周壁(5)が上下に区分けされており、減圧吸収パネル(10)が、区分けされた上下の周壁(5)のそれぞれに形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の合成樹脂製角型壜体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14343(P2013−14343A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146626(P2011−146626)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】