説明

合成燃料製造システム

【課題】熱エネルギーを効率的に利用できる合成燃料製造システムを提供すること。
【解決手段】この合成燃料製造システム1は、二酸化炭素をCO2吸収剤に吸収させるCO2吸収装置2と、CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるCO2放出装置4と、二酸化炭素から燃料を合成する燃料合成装置6とを備えている。この合成燃料製造システム1では、CO2放出装置4にてCO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときに用いられた熱エネルギーを利用して、燃料合成装置6が二酸化炭素から合成燃料を生成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成燃料製造システムに関し、さらに詳しくは、熱エネルギーを効率的に利用できる合成燃料製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球温暖化を防止するために二酸化炭素の排出量を低減すべき課題がある。ここで、二酸化炭素は、内燃機関を動力源とする自動車や火力発電所のような発電設備にて排出される排気ガス中に含まれ、また、既に排出されて大気中に含まれている。
【0003】
そこで、将来の合成燃料製造システムでは、排気ガス中あるいは大気中に含まれる二酸化炭素をCO2吸収剤に吸収させて回収し、この二酸化炭素をCO2吸収剤から放出させて合成することにより、合成燃料を製造することが考えられている。これにより、二酸化炭素の排出量を減少させ、また、大気中の二酸化炭素を減少させることができる。かかる構成を採用する従来の合成燃料製造システムとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときには、大きな熱エネルギーが必要となる。また、二酸化炭素と水素とを反応させて合成燃料を製造するときにも、熱エネルギーが必要となる。したがって、合成燃料の製造では、熱エネルギーが効率的に利用されることが好ましい。
【0006】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、熱エネルギーを効率的に利用できる合成燃料製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明にかかる合成燃料製造システムは、二酸化炭素から燃料を合成する合成燃料製造システムであって、二酸化炭素をCO2吸収剤に吸収させるCO2吸収装置と、前記CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるCO2放出装置と、二酸化炭素から燃料を合成する燃料合成装置とを備え、且つ、前記CO2放出装置にて前記CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときに用いられた熱エネルギーを利用して、前記燃料合成装置が二酸化炭素から合成燃料を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明にかかる合成燃料製造システムでは、CO2放出装置にてCO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときに用いられた熱エネルギーを利用して、燃料合成装置が二酸化炭素から合成燃料を生成する。かかる構成では、例えば、熱エネルギーにより高温となった二酸化炭素がCO2放出装置から燃料合成装置に至る途中で外部に放出される構成と比較して、熱エネルギーが効率的に活用される。これにより、熱エネルギーの利用効率が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明の実施例にかかる合成燃料製造システムを示す構成図である。
【図2】図2は、図1に記載した合成燃料製造システムの変形例を示す構成図である。
【図3】図3は、図1に記載した合成燃料製造システムの変形例を示す構成図である。
【図4】図4は、図1に記載した合成燃料製造システムの変形例を示す構成図である。
【図5】図5は、図1に記載した合成燃料製造システムの変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【実施例】
【0011】
[合成燃料製造システム]
図1は、この発明の実施例にかかる合成燃料製造システム1を示す構成図である。この合成燃料製造システム1は、内燃機関を動力源とする自動車や火力発電所のような発電設備にて排出される排気ガス中に含まれる二酸化炭素(CO2)あるいは大気中に含まれる二酸化炭素を回収し、この二酸化炭素と水素(H2)とを合成して合成燃料を製造するシステムに適用される。
【0012】
この合成燃料製造システム1は、CO2吸収装置2と、CO2放出装置4と、熱供給装置3と、H2製造装置5と、燃料合成装置6と、燃料貯蔵容器7とを備える(図1参照)。CO2吸収装置2は、二酸化炭素をCO2吸収剤に吸収させる装置である。このCO2吸収装置2は、例えば、自動車や発電設備の排気装置あるいは大気雰囲気中に配置されて、排気ガス中あるいは大気中に含まれる二酸化炭素をCO2吸収剤に吸収させて回収する。CO2吸収剤は、二酸化炭素を吸収および放出できる材料である。このCO2吸収剤には、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、アミン、これらの水溶液などが採用され得る。熱供給装置3は、熱エネルギーをCO2放出装置4に供給する装置である。CO2放出装置4は、二酸化炭素をCO2吸収剤から放出させる装置である。このCO2放出装置4は、二酸化炭素を吸収したCO2吸収剤に熱エネルギーを付与して、CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させる。H2製造装置5は、水素を製造する装置である。このH2製造装置は、製造した水素を燃料合成装置6に供給する。燃料合成装置6は、二酸化炭素と水素とを反応させて合成燃料を製造する装置である。この燃料合成装置6は、CO2放出装置4からの二酸化炭素と、H2製造装置からの水素とを反応させて合成し、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、炭化水素系燃料などを製造する。燃料貯蔵容器7は、製造された合成燃料を貯蔵する装置である。
【0013】
この合成燃料製造システム1では、まず、CO2吸収装置2にて、自動車や発電設備の排気ガス中あるいは大気中に含まれる二酸化炭素がCO2吸収剤に吸収されて回収される。次に、CO2放出装置4にて、この二酸化炭素がCO2吸収剤から放出されて分離される。このとき、熱供給装置3から供給される熱エネルギーが用いられて、二酸化炭素がCO2吸収剤から昇温除去される。次に、燃料合成装置6にて、この二酸化炭素とH2製造装置5からの水素とが用いられて合成燃料が製造される。そして、この合成燃料が燃料合成装置6から燃料貯蔵容器7に搬送されて貯蔵される。また、貯蔵された合成燃料が、例えば、自動車や火力発電所にて使用される。これにより、炭素を含む燃料を使用しつつ大気中への二酸化炭素の放出量を低減できる燃料サイクルが実現される。また、従来の内燃機関や発電設備などの使用を継続できる。
【0014】
[エネルギー効率の向上]
ここで、CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときには、大きな熱エネルギーが必要となる。また、二酸化炭素と水素とを反応させて合成燃料を製造するときにも、熱エネルギーが必要となる。したがって、合成燃料の製造にあたり、二酸化炭素を放出させるとき用いられた熱エネルギーが効率的に利用されることが好ましい。
【0015】
そこで、この合成燃料製造システム1は、CO2放出装置4にてCO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときに用いられた熱エネルギーを利用して、燃料合成装置6が二酸化炭素から燃料を合成する。これにより、熱エネルギーの利用効率が高められる。
【0016】
例えば、この実施例では、以下の構成が採用されている(図1参照)。すなわち、CO2放出装置4と燃料合成装置6とが保温パイプ81を介して接続されている。この保温パイプ81は、CO2放出装置4から燃料合成装置6への二酸化炭素の通路となる。また、保温パイプ81は、断熱材から成り、保温機能を有している。
【0017】
かかる構成では、まず、CO2放出装置4にて、二酸化炭素がCO2吸収剤から放出されて分離される。このとき、熱エネルギーが熱供給装置3からCO2放出装置4に供給され、この熱エネルギーにより二酸化炭素が吸着剤から昇温除去されて高温となる。そして、この高温の二酸化炭素が保温パイプ81を介して燃料合成装置6に搬送される。したがって、二酸化炭素がCO2放出装置4から燃料合成装置6に搬送されるときに、二酸化炭素の温度低下(熱エネルギーの放出)が抑制される。そして、燃料合成装置6にて、この高温の二酸化炭素が用いられて合成燃料が生成される。これにより、熱エネルギーが効率的に利用される。なお、二酸化炭素は、CO2放出装置4から燃料合成装置6に搬送されるときに、単独かつ液化されて搬送される。また、CO2放出装置4から燃料合成装置6までの距離は、一般に離れている。
【0018】
[効果]
以上説明したように、この合成燃料製造システム1では、CO2放出装置4にてCO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときに用いられた熱エネルギーを利用して、燃料合成装置6が二酸化炭素から合成燃料を生成する(図1参照)。かかる構成では、例えば、熱エネルギーにより高温となった二酸化炭素がCO2放出装置から燃料合成装置に至る途中で外部に放出される構成と比較して、熱エネルギーが効率的に活用される。これにより、熱エネルギーの利用効率が向上する利点がある。
【0019】
[変形例1]
図2は、図1に記載した合成燃料製造システム1の変形例1を示す構成図である。同図において、図1に記載した合成燃料製造システム1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
この変形例1の合成燃料製造システム1は、図1の燃料合成装置6に代えて、逆シフト反応装置11とF−T反応装置12とを備える(図2参照)。逆シフト反応装置11は、二酸化炭素と水素とを混合して、水性ガスの逆シフト反応により一酸化炭素(CO)が生成する装置である。この逆シフト反応装置11は、CO2放出装置4に対して保温パイプ81を介して接続される。また、逆シフト反応装置11は、H2製造装置5に接続される。F−T反応装置12は、フィッシャー・トロプシュ法により、一酸化炭素および水素から合成燃料を生成する装置である。このF−T反応装置12は、逆シフト反応装置11に接続される。また、逆シフト反応装置11とF−T反応装置12とが保温パイプ82を介して接続される。この保温パイプ82は、逆シフト反応装置11からF−T反応装置12への一酸化炭素および水素の通路となる。また、保温パイプ82は、断熱材から成り、保温機能を有する。また、F−T反応装置12は、燃料貯蔵容器7に接続される。
【0021】
この変形例1の合成燃料製造システム1では、まず、CO2放出装置4にて、二酸化炭素がCO2吸収剤から放出されて分離される。このとき、熱エネルギーが熱供給装置3からCO2放出装置4に供給され、この熱エネルギーにより二酸化炭素が吸着剤から昇温除去され、また、高温となる。次に、この高温の二酸化炭素が保温パイプ81を介して逆シフト反応装置11に搬送される。したがって、二酸化炭素がCO2放出装置4から逆シフト反応装置11に搬送されるときに、二酸化炭素の温度低下が抑制される。また、水素がH2製造装置5から逆シフト反応装置11に供給される。次に、逆シフト反応装置11にて、この高温の二酸化炭素と水素とが混合されて、一酸化炭素が生成される。次に、この一酸化炭素と水素とが逆シフト反応装置11から保温パイプ82を介してF−T反応装置12に搬送される。したがって、一酸化炭素および水素が逆シフト反応装置11からF−T反応装置12に搬送されるときに、一酸化炭素および水素の温度低下が抑制される。そして、F−T反応装置12にて、高温の一酸化炭素および高温の水素から合成燃料が生成される。これにより、熱エネルギーが効率的に利用される(省エネルギー化が可能となる)。
【0022】
なお、水性ガスのシフト反応(数式(1)参照)では、500[℃]を越える領域にて平衡が左辺の反応物側に偏る。したがって、高温の二酸化炭素が保温パイプ81を介して逆シフト反応装置11に供給されることにより、一酸化炭素が効率的に生成される(逆シフト反応)。また、フィッシャー・トロプシュ法においても、合成燃料の生成にあたり一酸化炭素および水素を数百[℃]に昇温する必要がある。したがって、高温の一酸化炭素および水素が保温パイプ82を介してF−T反応装置12に供給されることにより、合成燃料が効率的に生成される。
【0023】
【数1】

【0024】
[変形例2]
図3は、図1に記載した合成燃料製造システム1の変形例2を示す構成図である。同図において、図1および図2に記載した合成燃料製造システム1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
この変形例2の合成燃料製造システム1は、図2の構成に加えて、CO2吸収剤放熱装置13を備える(図3参照)。このCO2吸収剤放熱装置13は、CO2吸収剤から熱エネルギーを放出させる装置である。CO2吸収剤放熱装置13は、その入口側にて、CO2放出装置4およびH2製造装置5に対してそれぞれ接続される。また、CO2吸収剤放熱装置13は、その出口側にて、逆シフト反応装置11に対して保温パイプ83を介して接続される。この保温パイプ83は、CO2吸収剤放熱装置13から逆シフト反応装置11への水素の通路となる。また、保温パイプ83は、断熱材から成り、保温機能を有する。
【0026】
この変形例2の合成燃料製造システム1では、まず、CO2放出装置4にて、二酸化炭素がCO2吸収剤から昇温除去されるときに高温となり、CO2放出装置4から保温パイプ81を介して逆シフト反応装置11に搬送される。また、高温のCO2吸収剤がCO2放出装置4からCO2吸収剤放熱装置13に搬送される。また、CO2吸収剤放熱装置13には、H2製造装置5から水素が供給される。そして、CO2吸収剤放熱装置13にて、CO2吸収剤から熱エネルギーが取得され、この熱エネルギーにより水素が加熱される。具体的には、CO2吸収剤がH2製造装置5からの水素により冷却されることにより、水素が加熱されて高温となる。そして、この高温の水素が保温パイプ83を介して逆シフト反応装置11に供給される。そして、逆シフト反応装置11にて、これらの高温の二酸化炭素と高温の水素とが混合されて、一酸化炭素が生成される。これにより、一酸化炭素の生成が効率的に行われる。次に、この一酸化炭素と水素とが逆シフト反応装置11から保温パイプ82を通ってF−T反応装置12に搬送される。したがって、一酸化炭素および水素が逆シフト反応装置11からF−T反応装置12に搬送されるときに、一酸化炭素および水素の温度低下が抑制される。そして、F−T反応装置12にて、高温の一酸化炭素および高温の水素から合成燃料が生成される。これにより、熱エネルギーが効率的に利用される。
【0027】
なお、この合成燃料製造システム1では、図1〜図3に記載した構成が併用されることにより、さらに熱エネルギーが効率的に利用され得る。
【0028】
[変形例3]
図4は、図1に記載した合成燃料製造システム1の変形例3を示す構成図である。同図において、図1〜図3に記載した合成燃料製造システム1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
この変形例3の合成燃料製造システム1は、図2のH2製造装置5に代えてメタン・水供給装置14を備え、また、図2の逆シフト反応装置11に代えて水蒸気/炭酸ガス改質装置15を備える(図4参照)。メタン・水供給装置14は、水蒸気/炭酸ガス改質装置15に接続されて、メタン(CH4)および水(H2O)を水蒸気/炭酸ガス改質装置15に供給する装置である。水蒸気/炭酸ガス改質装置15は、水蒸気/炭酸ガス改質法により、水およびメタンから水素を生成する。この水蒸気/炭酸ガス改質装置15は、CO2放出装置4に対して保温パイプ81を介して接続される。また、水蒸気/炭酸ガス改質装置15は、保温パイプ82を介してF−T反応装置12に接続される。
【0030】
この変形例3の合成燃料製造システム1では、まず、CO2放出装置4にて、二酸化炭素がCO2吸収剤から放出されて分離される。このとき、熱エネルギーが熱供給装置3からCO2放出装置4に供給され、この熱エネルギーにより二酸化炭素が吸着剤から昇温除去され、また、高温となる。次に、この高温の二酸化炭素が保温パイプ81を介して水蒸気/炭酸ガス改質装置15に搬送される。したがって、二酸化炭素がCO2放出装置4から水蒸気/炭酸ガス改質装置15に搬送されるときに、二酸化炭素の温度低下が抑制される。次に、メタンおよび水がメタン・水供給装置14から水蒸気/炭酸ガス改質装置15に供給される。次に、水蒸気/炭酸ガス改質装置15にて、メタンおよび水から水素が生成され、この水素と一酸化炭素との合成ガスが生成される。次に、一酸化炭素および水素が水蒸気/炭酸ガス改質装置15から保温パイプ82を通ってF−T反応装置12に搬送される。したがって、一酸化炭素および水素が水蒸気/炭酸ガス改質装置15からF−T反応装置12に搬送されるときに、一酸化炭素および水素の温度低下が抑制される。そして、F−T反応装置12にて、高温の一酸化炭素および高温の水素から合成燃料が生成される。これにより、熱エネルギーが効率的に利用される(省エネルギー化が可能となる)。
【0031】
なお、水蒸気/炭酸ガス改質法は、大きな吸熱反応である。したがって、高温の二酸化炭素が保温パイプ81を介して水蒸気/炭酸ガス改質装置15に供給されることにより、水蒸気/炭酸ガス改質反応が促進されて、水素が効率的に生成される。
【0032】
[変形例4]
図5は、図1に記載した合成燃料製造システム1の変形例4を示す構成図である。同図において、図1〜図4に記載した合成燃料製造システム1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
この変形例4の合成燃料製造システム1は、図3のH2製造装置5に代えてメタン・水供給装置14を備え、また、図3の逆シフト反応装置11に代えて水蒸気/炭酸ガス改質装置15を備える(図5参照)。
【0034】
この変形例4の合成燃料製造システム1では、まず、CO2放出装置4にて、二酸化炭素がCO2吸収剤から昇温除去されて高温となり、CO2放出装置4から保温パイプ81を介して水蒸気/炭酸ガス改質装置15に搬送される。また、高温のCO2吸収剤がCO2吸収剤放熱装置13に搬送される。また、CO2吸収剤放熱装置13には、メタン・水供給装置14からメタンおよび水が供給される。そして、CO2吸収剤放熱装置13にて、CO2吸収剤から熱エネルギーが取得され、この熱エネルギーによりメタンおよび水が加熱される。具体的には、CO2吸収剤がメタン・水供給装置14からのメタンおよび水により冷却されることにより、メタンおよび水が加熱されて高温となる。そして、この高温のメタンおよび水が保温パイプ83を介して水蒸気/炭酸ガス改質装置15に供給される。そして、水蒸気/炭酸ガス改質装置15にて、メタンおよび水から水素が生成され、この水素と一酸化炭素との合成ガスが生成される。このとき、高温の二酸化炭素がCO2放出装置4から供給されるので、水蒸気/炭酸ガス改質反応が促進されて水素が効率的に生成される。次に、この一酸化炭素と水素とが水蒸気/炭酸ガス改質装置15から保温パイプ82を通ってF−T反応装置12に搬送される。したがって、一酸化炭素および水素が水蒸気/炭酸ガス改質装置15からF−T反応装置12に搬送されるときに、一酸化炭素および水素の温度低下が抑制される。そして、F−T反応装置12にて、高温の一酸化炭素および高温の水素から合成燃料が生成される。これにより、熱エネルギーが効率的に利用される。
【0035】
なお、この合成燃料製造システム1では、図1、図4および図5に記載した構成が併用されることにより、さらに熱エネルギーが効率的に利用され得る。
【0036】
[変形例5]
なお、変形例1および変形例2の合成燃料製造システム1では、H2製造装置5が水の電気分解により水素を生成して逆シフト反応装置11に供給しても良い(図2および図3参照)。このとき、水の電気分解により生ずる酸素が熱供給装置3に供給されて、CO2吸収剤から二酸化炭素を昇温除去するための熱エネルギーの生成(燃料の燃焼)に用いられることが好ましい(図示省略)。かかる構成では、熱供給装置3に空気が供給される構成と比較して、より大きな熱エネルギーが効率的に取得される。これにより、熱供給装置3に対する燃料供給量を低減できる。
【0037】
[変形例6]
また、この合成燃料製造システム1では、水の電気分解により生成されたブラウンガス(水素:酸素=2:1)が熱供給装置3に供給されて、CO2吸収剤から二酸化炭素を昇温除去するための熱エネルギーの生成に用いられることが好ましい(図示省略)。かかる構成では、熱供給装置3に空気が供給される構成と比較して、より大きな熱エネルギーが効率的に取得される。これにより、熱供給装置3に対する燃料供給量を低減できる。なお、ブラウンガスは、燃焼前後のモル比が3:2になること並びに窒素等を含まないことにより、燃焼温度が向上する。また、この行程にて、CO2の発生を抑制できる。
【0038】
[変形例7]
また、この合成燃料製造システム1では、プロセスに用いられるエネルギーが自然エネルギー(太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、潮力発電、地熱発電、水力発電など)から取得されることが好ましい(図示省略)。これにより、システム全体としてのカーボンニュートラルを実現できる。
【0039】
また、上記の構成では、燃料の製造が自然エネルギーの発電施設の近傍にて行われることにより、送電によるエネルギーロスが低減される(図示省略)。これにより、既存の液体燃料あるいはガス燃料の輸送手段を用いて遠方での消費を行い得る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、この発明にかかる合成燃料製造システムは、熱エネルギーを効率的に利用できる点で有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 合成燃料製造システム
2 CO2吸収装置
3 熱供給装置
4 CO2放出装置
5 H2製造装置
6 燃料合成装置
7 燃料貯蔵容器
11 逆シフト反応装置
12 F−T反応装置
13 CO2吸収剤放熱装置
14 メタン・水供給装置
15 水蒸気/炭酸ガス改質装置
81〜83 保温パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素から燃料を合成する合成燃料製造システムであって、
二酸化炭素をCO2吸収剤に吸収させるCO2吸収装置と、前記CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるCO2放出装置と、二酸化炭素から燃料を合成する燃料合成装置とを備え、且つ、前記CO2放出装置にて前記CO2吸収剤から二酸化炭素を放出させるときに用いられた熱エネルギーを利用して、前記燃料合成装置が二酸化炭素から合成燃料を生成することを特徴とする合成燃料製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−235736(P2010−235736A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84456(P2009−84456)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】