吊りロッドおよびその締付方法
【課題】 美観を向上させるとともに防錆効果を兼ね備えた吊りロッドおよびその締付方法を提供する。
【解決手段】 同軸上に配置される一対のロッド2,3間に、これら一対のロッド2,3を互いに近接・離反させるためのターンバックル部4が設けられた吊りロッド1において、前記一対のロッド2,3間に、前記ターンバックル部4を覆う筒状で、その断面外形が前記一対のロッド2,3の断面外形と相似であるカバーパイプ15を設けた。
【解決手段】 同軸上に配置される一対のロッド2,3間に、これら一対のロッド2,3を互いに近接・離反させるためのターンバックル部4が設けられた吊りロッド1において、前記一対のロッド2,3間に、前記ターンバックル部4を覆う筒状で、その断面外形が前記一対のロッド2,3の断面外形と相似であるカバーパイプ15を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸上に配置される一対のロッド間に、これら一対のロッドを互いに近接・離反させるためのターンバックル部が設けられた吊りロッドおよびその締付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、従来のターンバックル61は、両端に右雌ネジ62aと左雌ネジ62bがそれぞれ形成されたターンバックル胴63と、前記右雌ネジ62aに螺合される右雄ネジ64aが一端に形成されるとともに他端に取付片65aが設けられた第一棒部66aと、前記左雌ネジ62bに螺合される左雄ネジ64bが一端に形成されるとともに他端に取付片(図示せず)が設けられた第二棒部66bとを有している。
【0003】
このターンバックル61は、建築用資材として用いられた場合、壁内に埋設される場合は特に問題はないが、外部で人目に付く部分で使用される場合には、美観が損なわれるといった問題があった。
【0004】
そこで、ターンバックルの美観を向上させるために、図10に示すように、ターンバックル71の外側に断面コ字状のカバー体72を取り付ける構造のものがあった(例えば、特許文献1参照)。また、図11に示すように、固定される一対のロッド73a,73bの端部に、右雌ネジ74aと左雌ネジ74bをそれぞれ形成し、これらロッド73a,73b間に、ロッド73a,73bと同径の胴部75を設け、その胴部75の両端に、前記右雌ネジ74aと左雌ネジ74bにそれぞれ螺合する右雄ネジ76aと左雄ネジ76bを形成した構造のものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平2−18951号公報(図1)
【特許文献2】特開平6−313411号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10に示す構造では、カバー体72を取り付けてはいるものの、カバー体72が断面コ字状であるため、ターンバックル71自体は露出されており、美観を向上させるまでは至っていない。
【0006】
一方、図11に示す構造では、外部に露出されるのは、ロッド73a,73b及びそれと同径の胴部75であるので、美観は改善されてはいるものの、各ネジ74a,74b,76a,76bの部分に、雨が降りかかり錆びてしまうといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は前記の問題を解決するために案出されたものであって、美観を向上させるとともに防錆効果を兼ね備えた吊りロッドおよびその締付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、同軸上に配置される一対のロッド間に、これら一対のロッドを互いに近接・離反させるためのターンバックル部が設けられた吊りロッドにおいて、前記一対のロッド間に、前記ターンバックル部を覆う筒状のカバーパイプを設けたことを特徴とする吊りロッドである。
【0009】
ここで、ターンバックル部とは、ロッド側に雄ネジが形成され、各ロッド間に設けられるターンバックル胴側に雌ネジが形成されたものと、ロッド側に雌ネジが形成され、ターンバックル胴側に雄ネジが形成されたものの両方を含む。
【0010】
前記構成によれば、ターンバックル部をカバーパイプで覆っているので、ターンバックル部を完全に隠すことができ美観を向上できるとともに、ターンバックル部に雨が降りかかるのを防止でき、ターンバックル部が錆びるのを防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記カバーパイプは、前記一対のロッドの断面外形と相似の断面外形となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の吊りロッドである。
【0012】
ここで、ロッドの断面外形と相似の断面外形とは、ロッドよりも若干大きい相似形であって、カバーパイプをロッドの外周面に水密且つ摺動可能に嵌合できる形状を示す。
【0013】
前記構成によれば、ロッドとカバーパイプの外形の統一感が得られ、より一層美観を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、同軸上に配置される一対のロッド間に設けられたターンバックル部を締め付けて、前記一対のロッドを互いに近接・離反させる吊りロッドの締付方法において、前記一対のロッドのうちいずれか一方のロッドの胴部にカバーパイプを予め被せて退避させておき、前記ターンバックル部を締め付けた後に、前記カバーパイプをターンバックル部の周辺部に移動させて、当該ターンバックル部を覆い隠すことを特徴とする吊りロッドの締付方法である。
【0015】
前記締付方法によれば、カバーパイプを予めロッドに被せておくことによって、ターンバックル部を締め付けた後に、カバーパイプをターンバックル部の周辺部に移動させることでターンバックル部を覆い隠すことができる。したがって、カバーパイプを、分割形成することなく予め筒状に一体的に形成でき、カバーパイプの防水性を大幅に高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吊りロッドの美観を向上させることができるとともに、防錆効果も得ることができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した斜視図、図2は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した分解斜視図、図3は本発明に係る吊りロッドの締付方法を示した工程説明図である。
【0019】
まず、本実施の形態に係る吊りロッドの構成を説明する。なお、かかる吊りロッドは、例えば、建物の壁面に取り付けられた庇を上部から吊るために設けられるものであって、庇の上面に設けられた取付金具と、建物の壁面の庇の上方に設けられた取付ブラケットとの間に掛け渡されるように配置される。
【0020】
図1および図2に示すように、かかる吊りロッド1は、同軸上に配置される一対のロッド2,3と、これらロッド2,3間に設けられたターンバックル部4とを有している。ターンバックル部4は、前記一対のロッド2,3を互いに近接・離反させるべく設けられている。
【0021】
各ロッド2,3は、アルミニウム合金製またはステンレス製の円筒部材から構成されている。各ロッド2,3は、一端がプレス加工によって平板状に形成されており、その平板部分11には、ボルト用孔12が形成されている。各ロッド2,3は互いに同径に形成されている。
【0022】
ターンバックル部4は、一方のロッド(以下「第一ロッド」という)2の端部に設けられた左雄ネジ5と、他方のロッド(以下「第二ロッド」という)3の端部に設けられた右雄ネジ6と、左雄ネジ5と右雄ネジ6とを連結させる連結用ナット7と、連結用ナット7を固定するための固定用ナット8とを有している。左雄ネジ5と右雄ネジ6にはネジ頭部(図2参照)14がそれぞれ設けられている。このネジ頭部14を第一ロッド2と第二ロッド3の円筒状端部に挿入して溶接することで、左雄ネジ5が第一ロッド2に、右雄ネジ6が第二ロッド3にそれぞれ固定されている。連結用ナット7は、一端に左雌ネジ9が所定の深さ(吊りロッド1の締付代よりも若干長い距離)で形成され、他端に右雌ネジ10が所定の深さで左雌ネジ9と同軸上に形成されている。固定用ナット8は、右雌ネジ10が貫通して形成されている。
【0023】
第一ロッド2と第二ロッド3(一対のロッド)との間には、ターンバックル部4を覆う筒状のカバーパイプ15が設けられている。カバーパイプ15は、第一ロッド2および第二ロッド3と同等のアルミニウム合金製またはステンレス製の円筒部材から構成されている。カバーパイプ15の表面は、第一ロッド2および第二ロッド3の表面と同等の仕上げ加工(例えば、ヘアライン加工や鏡面加工)が施されている。なお、第一ロッド2および第二ロッド3の表面をヘアライン加工する場合は、その長手方向に沿ってラインが出るように加工を施せば、カバーパイプ15の摺動時に傷が発生しても、その傷が目立ち難くて好ましい。
【0024】
カバーパイプ15は、第一ロッド2および第二ロッド3の断面外形(断面円形)と相似の断面外形(断面円形)となるように構成されている。詳しくは、カバーパイプ15が、第一ロッド2或いは第二ロッド3の外周面に沿って水密且つ摺動可能に嵌合できるように、カバーパイプ15の内径が、第一ロッド2および第二ロッド3の外径よりも所定のクリアランス分のみ大きくなるように形成されている。よって、カバーパイプ15の外径は、第一ロッド2および第二ロッド3の外径よりも、前記クリアランスとカバーパイプ15の肉厚分だけ大きくなっている。すなわち、カバーパイプ15の外形は、第一ロッド2および第二ロッド3の外形よりも若干大きい相似形となっている。
【0025】
カバーパイプ15の一端(本実施の形態では、第二ロッド3側端部)近傍には、ネジ孔16が形成されている。一方、第二ロッド3には、カバーパイプ15を吊りロッド1の使用時の位置に移動させたときに、カバーパイプ15のネジ孔16に対応する部分にネジ孔17が形成されている。これらネジ孔17,16に、例えば、なべ小ネジ18(図1参照)を螺合させることで、カバーパイプ15が第二ロッド3に固定される。
【0026】
次に、図1および図3を参照しながら、本実施の形態に係る吊りロッド1の締付方法について説明する。
【0027】
まず、図3(a)に示すように、第一ロッド2の胴部19にカバーパイプ15を予め被せて退避させる。このとき、第一ロッド2に固定された左雄ネジ5が殆ど露出する位置まで、カバーパイプ15を摺動させておく。そして、固定用ナット8を第二ロッド3の右雄ネジ6に螺合させて、右雄ネジ6の基端部側まで移動させておくとともに、連結用ナット7を左雄ネジ5または右雄ネジ6に螺合させて取り付けておく。そして、第一ロッド2の平板部分11側を、一方の固定側(例えば、庇の上面に設けられた取付金具)にボルト・ナット等の締結部材(図示せず)によって固定する。他方、第二ロッド3の平板部分11側を、他方の固定側(例えば、建物の壁面に設けられた取付ブラケット)にボルト・ナット等の締結部材(図示せず)によって固定する。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、左雄ネジ5と右雄ネジ6を、連結用ナット7の左雌ネジ9と右雌ネジ10(図2参照)にそれぞれ螺合させて、連結用ナット7を回転させながら締め付けていく。このとき、第一ロッド2および第二ロッド3には互いに逆向きのネジ5,6がそれぞれ取り付けられているので、連結用ナット7を一方向に回転することで、第一ロッド2と第二ロッド3とが互いに引き寄せられる。吊りロッド1が所望の長さ或いは所望の引張力を得るように、第一ロッド2と第二ロッド3とが引き寄せられたなら、固定用ナット8を回転させて連結用ナット7に押し付ける。これによって、連結用ナット7はその回転が規制され、左雄ネジ5および右雄ネジ6に固定されることとなる。
【0029】
最後に、図1に示すように、第一ロッド2の胴部19に退避させておいたカバーパイプ15を、第二ロッド3側へ摺動させて、ターンバックル部4を完全に覆い隠したところで、なべ小ネジ18を、ネジ孔17,16へ挿入・螺合させて、カバーパイプ15を第二ロッド3へ固定することで、吊りロッド1の締付けが完了する。
【0030】
以下、本実施の形態に係る吊りロッド1の作用を説明する。
【0031】
前記構成によれば、ターンバックル部4をその全体に亘ってカバーパイプ15で覆っているので、ターンバックル部4を完全に隠すことができる。よって、ネジやナットを隠すことができ、ターンバックル部4の表面には、第一ロッド2および第二ロッド3と同様の表面加工が施されたカバーパイプ15が露出することとなり、美観を大幅に向上させることができる。特に、カバーパイプ15は、その外形が第一ロッド2および第二ロッド3の外形よりも若干大きい相似形となっているとともに、その表面には第一ロッド2および第二ロッド3と同等の表面加工が施されているので、第一ロッド2および第二ロッド3との統一感を確保でき、離れた場所から見れば、吊りロッド1があたかも一本のロッドで構成されているように見える。
【0032】
また、ターンバックル部4を外部から遮断するように、カバーパイプ15を設けているので、ターンバックル部4に雨が降りかかるのを防止できる。よって、ネジやナットを備えるターンバックル部4が錆びるのを防止することができる。特に、カバーパイプ15は、第一ロッド2或いは第二ロッド3の外周面に沿って水密且つ摺動可能に嵌合されているので、第一ロッド2或いは第二ロッド3の表面を伝った雨等の水が、カバーパイプ15内部に流れることはなく、ターンバックル部4の防錆効果を高めている。
【0033】
さらに、前記実施の形態に係る吊りロッド1の締付方法によれば、カバーパイプ15を予め第一ロッド2に被せて退避させておくことによって、ターンバックル部4を締め付けた後に、カバーパイプ15をターンバックル部4の周辺部に移動させることでターンバックル部4を覆い隠すことができる。したがって、カバーパイプを吊りロッドの径方向外側から挟み込んで被せる場合のように分割形成する必要はなく、カバーパイプ15を予め円筒状に一体的に形成できるので、カバーパイプ15の強度および防水性を大幅に高めることができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、第一ロッド2および第二ロッド3に各雄ネジ5,6を取り付けて、その間に雌ネジ9,10を有する固定用ナット8を介設しているが、各ロッドに雌ネジを形成して、両側に雄ネジが形成された部材を各ロッド間に介設するようにしてもよい。
【0035】
ところで、図4は本発明に係る吊りロッドを二股状に支持する二股取付金具を示した平面図および側面図、図5は本発明に係る吊りロッドの取付状態を示した平面図および側面図である。
【0036】
図5に示すように、吊りロッド1を二股状に支持する際には、図4に示す二股取付金具21を用いる。図4および図5に示すように、二股取付金具21は、一端に固定側の取付ブラケット(例えば、建物の壁面から突出する取付ブラケット)29を取り付けるブラケット取付部22が形成され、他端に吊りロッド1の端部を固定・支持する吊りロッド取付部23が形成されている。
【0037】
吊りロッド取付部23は、固定側の取付ブラケット29の中心線L1に対して線対称に開く開き角度Aで二股状に分岐して形成された一対の脚部24を有している。吊りロッド取付部23は、二股状の各脚部24に設けられた一対のボルト用孔25と、一対のナット収容ポケット26とを有している。ナット収容ポケット26は、締結部材であるナット(図5参照)27を、当該ナット27がその軸周りに回転しないように支持するように構成されている。ナット収容ポケット26は、二股状の一対の脚部24の内側にそれぞれ対称的に形成されており、各ナット収容ポケット26の外側には、ボルト用孔25がそれぞれ形成されている。ここで、一対の脚部24の内側とは、各脚部24の互いに向かい合う側をいい、外側とは、各脚部24の内側の反対側で外方に向いた側をいう。
【0038】
この二股取付金具21を用いて吊りロッド1を支持するに際しては、まず、各ナット収容ポケット26にナット27を挿入しておき、各脚部24の外側に、吊りロッド1の平板部分11を合わせて、平板部分11のボルト用孔12にボルト28を挿入して、ナット収容ポケット26内のナット27に螺合させる。このとき、ナット27は、回転しないように支持されているので、ナット27を支持することなく、ボルト28を回転させるだけで、容易に固定作業を行うことができる。また、ナット27が二股状の一対の脚部24の内側に支持されているので、ボルト28の締付作業は、スペースが十分に空いている一対の脚部24の外側で円滑に行うことができる。
【0039】
さらに、前記二股取付金具21によれば、複数の吊りロッド1を一定の開き角度で対称的に支持できるので、荷重を均等に分散でき、吊りロッド1や二股取付金具21に局部的に荷重が集中するのを防止できる。
【0040】
なお、二股部分の開き角度は、取付部位や支持荷重に応じて適宜設定されるものである。二股取付金具は、複数種の開き角度のものを製作しておき、取付状態に応じて好適な開き角度の二股取付金具を選択して使用するようにすれば便利である。
【0041】
図6は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第二の形態を示した締付前の断面図および締付後の断面図である。
【0042】
図6に示すように、本実施の形態に係る吊りロッド31は、カバーパイプ32の一端の内周面に、ゴム等の弾性体からなる止水リング33が設けられている。第一ロッド34の左雄ネジ5側端部および第二ロッド35の右雄ネジ6側端部には、第一ロッド34および第二ロッド35の胴部36よりも径が小さい小径部37がそれぞれ形成されている。小径部37は、その外径が、止水リング33の内径よりも、移動クリアランス分小さくなるように形成されている。各小径部37の内側には、左雄ネジ5および右雄ネジ6のネジ頭部14がそれぞれ挿入されて溶接固定されている。胴部36と小径部37との境界部分は、テーパ状に加工され、ターンバックル部4側端部に向かうに連れて外径が連続的に小さくなる傾斜部38が形成されている。なお、本実施の形態では、止水リング33を設けてターンバックル部4への水の浸入を防止しているので、カバーパイプ32の内径を、図1で示したカバーパイプ15よりも若干大きくして、各ロッド34,35に対する移動を円滑に行うように構成してもよい。
【0043】
以上説明した部分以外の構成については、図1に示した吊りロッド1と同様であるので同じ符号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施の形態に係る吊りロッド31を締め付けるに際しては、まず、第一ロッド34が第二ロッド35の下側になるように設置する。そして、図6(a)に示すように、第一ロッド34の胴部36にカバーパイプ32を退避させる。このとき、カバーパイプ32の止水リング33が、第一ロッド34のターンバックル部4側に位置するように、カバーパイプ32を第一ロッド34に被せる。ここで、前記構成によれば、止水リング33は、第一ロッド34の小径部37の周部に位置するので、左雄ネジ5を完全に露出させる位置までカバーパイプ32を移動させることができる。
【0045】
そして、ターンバックル部4の締付けを行った後、図6(b)に示すように、第一ロッド34の胴部36に退避させておいたカバーパイプ32を、第二ロッド35側へ移動させて、ターンバックル部4を完全に覆い隠したところで、図示しないなべ小ネジを、ネジ孔へ挿入・螺合させて、カバーパイプ32を第二ロッド35へ固定する。
【0046】
このとき、止水リング33は、第二ロッド35の傾斜部38に押し付けられるのでシールとしての機能を発揮し、第二ロッド35とカバーパイプ32との接合部分の水密性を高めることができる。そして、この止水リング33は、ターンバックル部4の上側に設けられ、第二ロッド35に降りかかった雨水等の水が、カバーパイプ32の内部に浸入するのを防止できるので、ターンバックル部4に水が流れることはなく、防錆作用を高めることができる。
【0047】
また、止水リング33と、第二ロッド35の傾斜部38との摩擦力で、カバーパイプ32を第二ロッド35に固定するように構成すれば、図1におけるなべ小ネジ18を省略でき、美観をさらに高めることができる。
【0048】
図7は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第三の形態を示した断面図である。
【0049】
図7に示すように、本実施の形態に係る吊りロッド41は、カバーパイプ43の一端の内周面に、雌ネジ44が形成されている。第一ロッド45の左雄ネジ5側端部および第二ロッド46の右雄ネジ6側端部には、第一ロッド45および第二ロッド46の胴部47よりも径が小さい小径部48がそれぞれ形成されている。小径部48は、その外径が、雌ネジ44の内周径よりも、小さくなるように形成されている。各小径部48の内側には、左雄ネジ5および右雄ネジ6のネジ頭部14がそれぞれ挿入されて溶接固定されている。吊りロッド41の使用時に、上側に配置されるロッド(本実施の形態では第二ロッド46)の小径部48の外周面には、カバーパイプ43に形成された雌ネジ44が螺合する雄ネジ49が形成されている。本実施の形態では、雌ネジ44と雄ネジ49との螺合により、カバーパイプ43が第二ロッド46に固定されるので、カバーパイプ43を第二ロッド46に固定するためのネジ孔は設けなくてよい。
【0050】
なお、本実施の形態では、上側に配置される第二ロッド46の小径部48のみに、雄ネジ49を形成しているが、第一ロッド45の小径部48にも雄ネジを形成してもよい。この場合は、第一ロッド45、第二ロッド46のどちらでも上側に配置することができる。
【0051】
以上説明した部分以外の構成については、図1に示した吊りロッド1と同様であるので同じ符号を付してその説明を省略する。
【0052】
前記構成の吊りロッド41によれば、カバーパイプ43に形成された雌ネジ44と第二ロッド46の小径部48に形成された雄ネジ49とを螺合させることで、カバーパイプ43を第二ロッド46に固定しているので、第二ロッド46とカバーパイプ43との接合部分の水密性を高めることができる。よって、図6に示した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、カバーパイプ43を第二ロッド46に固定するためのネジ孔は必要なく、さらになべ小ネジを用いる必要がないので、美観をさらに高めることができる。
【0054】
図8は、本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第四の形態を示した平面図である。
【0055】
図8に示すように、本実施の形態に係る吊りロッド51は、少なくとも第一ロッドまたは第二ロッド(本実施の形態では、第二ロッド52)のボルト用孔12が形成された平板部分53が所定角度で屈曲されている。平板部分53は、ボルト用孔12が形成された部分よりもロッド寄部分で屈曲されており、建物の壁面から突出する取付ブラケット29に対して、吊りロッド51が屈曲して支持されるように構成されている。
【0056】
前記構成の吊りロッド51を使用するに際しては、取付ブラケット29の左右両側に、一対の吊りロッド51を取り付ける。吊りロッド51は、取付ブラケット29を基点として二股状に取り付けられる。各吊りロッド51の平板部分53で、取付ブラケット29を挟むように配置し、各吊りロッド51のボルト用孔12および取付ブラケット29のボルト用孔54にボルト55を挿入して、ナット56で締め付ける。
【0057】
前記構成によれば、図4および図5に示した二股取付金具21を用いることなく、簡単に一対の吊りロッド51を二股状に取り付けることが可能となる。また、平板部分53を屈曲させる工具を用いれば、取付現場で屈曲角度の微調整を行うことが可能となる。
【0058】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、カバーパイプ15,32,43はアルミニウム合金またはステンレスにて形成されているが、これに限られるものではなく、樹脂や弾性体で形成してもよい。この場合、カバーパイプの表面は、各ロッドの表面と似せた表面加工としてもよいし、全く別の表面加工或いは色としてデザイン上のアクセントとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した分解斜視図である。
【図3】本発明に係る吊りロッドの締付方法を示した(a)は第一工程説明図、(b)は第二工程説明図である。
【図4】本発明に係る吊りロッドを二股状に支持する二股取付金具を示した(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明に係る吊りロッドの取付状態を示した(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第二の形態を示した(a)は締付前の断面図、(b)は締付後の断面図である。
【図7】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第三の形態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第四の形態を示した平面図である。
【図9】従来のターンバックルを示した側面図である。
【図10】従来の他のターンバックルを示した斜視図である。
【図11】従来のさらに他のターンバックルを示した断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 吊りロッド
2 (第一)ロッド
3 (第二)ロッド
4 ターンバックル部
15 カバーパイプ
19 胴部
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸上に配置される一対のロッド間に、これら一対のロッドを互いに近接・離反させるためのターンバックル部が設けられた吊りロッドおよびその締付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、従来のターンバックル61は、両端に右雌ネジ62aと左雌ネジ62bがそれぞれ形成されたターンバックル胴63と、前記右雌ネジ62aに螺合される右雄ネジ64aが一端に形成されるとともに他端に取付片65aが設けられた第一棒部66aと、前記左雌ネジ62bに螺合される左雄ネジ64bが一端に形成されるとともに他端に取付片(図示せず)が設けられた第二棒部66bとを有している。
【0003】
このターンバックル61は、建築用資材として用いられた場合、壁内に埋設される場合は特に問題はないが、外部で人目に付く部分で使用される場合には、美観が損なわれるといった問題があった。
【0004】
そこで、ターンバックルの美観を向上させるために、図10に示すように、ターンバックル71の外側に断面コ字状のカバー体72を取り付ける構造のものがあった(例えば、特許文献1参照)。また、図11に示すように、固定される一対のロッド73a,73bの端部に、右雌ネジ74aと左雌ネジ74bをそれぞれ形成し、これらロッド73a,73b間に、ロッド73a,73bと同径の胴部75を設け、その胴部75の両端に、前記右雌ネジ74aと左雌ネジ74bにそれぞれ螺合する右雄ネジ76aと左雄ネジ76bを形成した構造のものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平2−18951号公報(図1)
【特許文献2】特開平6−313411号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10に示す構造では、カバー体72を取り付けてはいるものの、カバー体72が断面コ字状であるため、ターンバックル71自体は露出されており、美観を向上させるまでは至っていない。
【0006】
一方、図11に示す構造では、外部に露出されるのは、ロッド73a,73b及びそれと同径の胴部75であるので、美観は改善されてはいるものの、各ネジ74a,74b,76a,76bの部分に、雨が降りかかり錆びてしまうといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は前記の問題を解決するために案出されたものであって、美観を向上させるとともに防錆効果を兼ね備えた吊りロッドおよびその締付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、同軸上に配置される一対のロッド間に、これら一対のロッドを互いに近接・離反させるためのターンバックル部が設けられた吊りロッドにおいて、前記一対のロッド間に、前記ターンバックル部を覆う筒状のカバーパイプを設けたことを特徴とする吊りロッドである。
【0009】
ここで、ターンバックル部とは、ロッド側に雄ネジが形成され、各ロッド間に設けられるターンバックル胴側に雌ネジが形成されたものと、ロッド側に雌ネジが形成され、ターンバックル胴側に雄ネジが形成されたものの両方を含む。
【0010】
前記構成によれば、ターンバックル部をカバーパイプで覆っているので、ターンバックル部を完全に隠すことができ美観を向上できるとともに、ターンバックル部に雨が降りかかるのを防止でき、ターンバックル部が錆びるのを防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記カバーパイプは、前記一対のロッドの断面外形と相似の断面外形となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の吊りロッドである。
【0012】
ここで、ロッドの断面外形と相似の断面外形とは、ロッドよりも若干大きい相似形であって、カバーパイプをロッドの外周面に水密且つ摺動可能に嵌合できる形状を示す。
【0013】
前記構成によれば、ロッドとカバーパイプの外形の統一感が得られ、より一層美観を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、同軸上に配置される一対のロッド間に設けられたターンバックル部を締め付けて、前記一対のロッドを互いに近接・離反させる吊りロッドの締付方法において、前記一対のロッドのうちいずれか一方のロッドの胴部にカバーパイプを予め被せて退避させておき、前記ターンバックル部を締め付けた後に、前記カバーパイプをターンバックル部の周辺部に移動させて、当該ターンバックル部を覆い隠すことを特徴とする吊りロッドの締付方法である。
【0015】
前記締付方法によれば、カバーパイプを予めロッドに被せておくことによって、ターンバックル部を締め付けた後に、カバーパイプをターンバックル部の周辺部に移動させることでターンバックル部を覆い隠すことができる。したがって、カバーパイプを、分割形成することなく予め筒状に一体的に形成でき、カバーパイプの防水性を大幅に高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吊りロッドの美観を向上させることができるとともに、防錆効果も得ることができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した斜視図、図2は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した分解斜視図、図3は本発明に係る吊りロッドの締付方法を示した工程説明図である。
【0019】
まず、本実施の形態に係る吊りロッドの構成を説明する。なお、かかる吊りロッドは、例えば、建物の壁面に取り付けられた庇を上部から吊るために設けられるものであって、庇の上面に設けられた取付金具と、建物の壁面の庇の上方に設けられた取付ブラケットとの間に掛け渡されるように配置される。
【0020】
図1および図2に示すように、かかる吊りロッド1は、同軸上に配置される一対のロッド2,3と、これらロッド2,3間に設けられたターンバックル部4とを有している。ターンバックル部4は、前記一対のロッド2,3を互いに近接・離反させるべく設けられている。
【0021】
各ロッド2,3は、アルミニウム合金製またはステンレス製の円筒部材から構成されている。各ロッド2,3は、一端がプレス加工によって平板状に形成されており、その平板部分11には、ボルト用孔12が形成されている。各ロッド2,3は互いに同径に形成されている。
【0022】
ターンバックル部4は、一方のロッド(以下「第一ロッド」という)2の端部に設けられた左雄ネジ5と、他方のロッド(以下「第二ロッド」という)3の端部に設けられた右雄ネジ6と、左雄ネジ5と右雄ネジ6とを連結させる連結用ナット7と、連結用ナット7を固定するための固定用ナット8とを有している。左雄ネジ5と右雄ネジ6にはネジ頭部(図2参照)14がそれぞれ設けられている。このネジ頭部14を第一ロッド2と第二ロッド3の円筒状端部に挿入して溶接することで、左雄ネジ5が第一ロッド2に、右雄ネジ6が第二ロッド3にそれぞれ固定されている。連結用ナット7は、一端に左雌ネジ9が所定の深さ(吊りロッド1の締付代よりも若干長い距離)で形成され、他端に右雌ネジ10が所定の深さで左雌ネジ9と同軸上に形成されている。固定用ナット8は、右雌ネジ10が貫通して形成されている。
【0023】
第一ロッド2と第二ロッド3(一対のロッド)との間には、ターンバックル部4を覆う筒状のカバーパイプ15が設けられている。カバーパイプ15は、第一ロッド2および第二ロッド3と同等のアルミニウム合金製またはステンレス製の円筒部材から構成されている。カバーパイプ15の表面は、第一ロッド2および第二ロッド3の表面と同等の仕上げ加工(例えば、ヘアライン加工や鏡面加工)が施されている。なお、第一ロッド2および第二ロッド3の表面をヘアライン加工する場合は、その長手方向に沿ってラインが出るように加工を施せば、カバーパイプ15の摺動時に傷が発生しても、その傷が目立ち難くて好ましい。
【0024】
カバーパイプ15は、第一ロッド2および第二ロッド3の断面外形(断面円形)と相似の断面外形(断面円形)となるように構成されている。詳しくは、カバーパイプ15が、第一ロッド2或いは第二ロッド3の外周面に沿って水密且つ摺動可能に嵌合できるように、カバーパイプ15の内径が、第一ロッド2および第二ロッド3の外径よりも所定のクリアランス分のみ大きくなるように形成されている。よって、カバーパイプ15の外径は、第一ロッド2および第二ロッド3の外径よりも、前記クリアランスとカバーパイプ15の肉厚分だけ大きくなっている。すなわち、カバーパイプ15の外形は、第一ロッド2および第二ロッド3の外形よりも若干大きい相似形となっている。
【0025】
カバーパイプ15の一端(本実施の形態では、第二ロッド3側端部)近傍には、ネジ孔16が形成されている。一方、第二ロッド3には、カバーパイプ15を吊りロッド1の使用時の位置に移動させたときに、カバーパイプ15のネジ孔16に対応する部分にネジ孔17が形成されている。これらネジ孔17,16に、例えば、なべ小ネジ18(図1参照)を螺合させることで、カバーパイプ15が第二ロッド3に固定される。
【0026】
次に、図1および図3を参照しながら、本実施の形態に係る吊りロッド1の締付方法について説明する。
【0027】
まず、図3(a)に示すように、第一ロッド2の胴部19にカバーパイプ15を予め被せて退避させる。このとき、第一ロッド2に固定された左雄ネジ5が殆ど露出する位置まで、カバーパイプ15を摺動させておく。そして、固定用ナット8を第二ロッド3の右雄ネジ6に螺合させて、右雄ネジ6の基端部側まで移動させておくとともに、連結用ナット7を左雄ネジ5または右雄ネジ6に螺合させて取り付けておく。そして、第一ロッド2の平板部分11側を、一方の固定側(例えば、庇の上面に設けられた取付金具)にボルト・ナット等の締結部材(図示せず)によって固定する。他方、第二ロッド3の平板部分11側を、他方の固定側(例えば、建物の壁面に設けられた取付ブラケット)にボルト・ナット等の締結部材(図示せず)によって固定する。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、左雄ネジ5と右雄ネジ6を、連結用ナット7の左雌ネジ9と右雌ネジ10(図2参照)にそれぞれ螺合させて、連結用ナット7を回転させながら締め付けていく。このとき、第一ロッド2および第二ロッド3には互いに逆向きのネジ5,6がそれぞれ取り付けられているので、連結用ナット7を一方向に回転することで、第一ロッド2と第二ロッド3とが互いに引き寄せられる。吊りロッド1が所望の長さ或いは所望の引張力を得るように、第一ロッド2と第二ロッド3とが引き寄せられたなら、固定用ナット8を回転させて連結用ナット7に押し付ける。これによって、連結用ナット7はその回転が規制され、左雄ネジ5および右雄ネジ6に固定されることとなる。
【0029】
最後に、図1に示すように、第一ロッド2の胴部19に退避させておいたカバーパイプ15を、第二ロッド3側へ摺動させて、ターンバックル部4を完全に覆い隠したところで、なべ小ネジ18を、ネジ孔17,16へ挿入・螺合させて、カバーパイプ15を第二ロッド3へ固定することで、吊りロッド1の締付けが完了する。
【0030】
以下、本実施の形態に係る吊りロッド1の作用を説明する。
【0031】
前記構成によれば、ターンバックル部4をその全体に亘ってカバーパイプ15で覆っているので、ターンバックル部4を完全に隠すことができる。よって、ネジやナットを隠すことができ、ターンバックル部4の表面には、第一ロッド2および第二ロッド3と同様の表面加工が施されたカバーパイプ15が露出することとなり、美観を大幅に向上させることができる。特に、カバーパイプ15は、その外形が第一ロッド2および第二ロッド3の外形よりも若干大きい相似形となっているとともに、その表面には第一ロッド2および第二ロッド3と同等の表面加工が施されているので、第一ロッド2および第二ロッド3との統一感を確保でき、離れた場所から見れば、吊りロッド1があたかも一本のロッドで構成されているように見える。
【0032】
また、ターンバックル部4を外部から遮断するように、カバーパイプ15を設けているので、ターンバックル部4に雨が降りかかるのを防止できる。よって、ネジやナットを備えるターンバックル部4が錆びるのを防止することができる。特に、カバーパイプ15は、第一ロッド2或いは第二ロッド3の外周面に沿って水密且つ摺動可能に嵌合されているので、第一ロッド2或いは第二ロッド3の表面を伝った雨等の水が、カバーパイプ15内部に流れることはなく、ターンバックル部4の防錆効果を高めている。
【0033】
さらに、前記実施の形態に係る吊りロッド1の締付方法によれば、カバーパイプ15を予め第一ロッド2に被せて退避させておくことによって、ターンバックル部4を締め付けた後に、カバーパイプ15をターンバックル部4の周辺部に移動させることでターンバックル部4を覆い隠すことができる。したがって、カバーパイプを吊りロッドの径方向外側から挟み込んで被せる場合のように分割形成する必要はなく、カバーパイプ15を予め円筒状に一体的に形成できるので、カバーパイプ15の強度および防水性を大幅に高めることができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、第一ロッド2および第二ロッド3に各雄ネジ5,6を取り付けて、その間に雌ネジ9,10を有する固定用ナット8を介設しているが、各ロッドに雌ネジを形成して、両側に雄ネジが形成された部材を各ロッド間に介設するようにしてもよい。
【0035】
ところで、図4は本発明に係る吊りロッドを二股状に支持する二股取付金具を示した平面図および側面図、図5は本発明に係る吊りロッドの取付状態を示した平面図および側面図である。
【0036】
図5に示すように、吊りロッド1を二股状に支持する際には、図4に示す二股取付金具21を用いる。図4および図5に示すように、二股取付金具21は、一端に固定側の取付ブラケット(例えば、建物の壁面から突出する取付ブラケット)29を取り付けるブラケット取付部22が形成され、他端に吊りロッド1の端部を固定・支持する吊りロッド取付部23が形成されている。
【0037】
吊りロッド取付部23は、固定側の取付ブラケット29の中心線L1に対して線対称に開く開き角度Aで二股状に分岐して形成された一対の脚部24を有している。吊りロッド取付部23は、二股状の各脚部24に設けられた一対のボルト用孔25と、一対のナット収容ポケット26とを有している。ナット収容ポケット26は、締結部材であるナット(図5参照)27を、当該ナット27がその軸周りに回転しないように支持するように構成されている。ナット収容ポケット26は、二股状の一対の脚部24の内側にそれぞれ対称的に形成されており、各ナット収容ポケット26の外側には、ボルト用孔25がそれぞれ形成されている。ここで、一対の脚部24の内側とは、各脚部24の互いに向かい合う側をいい、外側とは、各脚部24の内側の反対側で外方に向いた側をいう。
【0038】
この二股取付金具21を用いて吊りロッド1を支持するに際しては、まず、各ナット収容ポケット26にナット27を挿入しておき、各脚部24の外側に、吊りロッド1の平板部分11を合わせて、平板部分11のボルト用孔12にボルト28を挿入して、ナット収容ポケット26内のナット27に螺合させる。このとき、ナット27は、回転しないように支持されているので、ナット27を支持することなく、ボルト28を回転させるだけで、容易に固定作業を行うことができる。また、ナット27が二股状の一対の脚部24の内側に支持されているので、ボルト28の締付作業は、スペースが十分に空いている一対の脚部24の外側で円滑に行うことができる。
【0039】
さらに、前記二股取付金具21によれば、複数の吊りロッド1を一定の開き角度で対称的に支持できるので、荷重を均等に分散でき、吊りロッド1や二股取付金具21に局部的に荷重が集中するのを防止できる。
【0040】
なお、二股部分の開き角度は、取付部位や支持荷重に応じて適宜設定されるものである。二股取付金具は、複数種の開き角度のものを製作しておき、取付状態に応じて好適な開き角度の二股取付金具を選択して使用するようにすれば便利である。
【0041】
図6は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第二の形態を示した締付前の断面図および締付後の断面図である。
【0042】
図6に示すように、本実施の形態に係る吊りロッド31は、カバーパイプ32の一端の内周面に、ゴム等の弾性体からなる止水リング33が設けられている。第一ロッド34の左雄ネジ5側端部および第二ロッド35の右雄ネジ6側端部には、第一ロッド34および第二ロッド35の胴部36よりも径が小さい小径部37がそれぞれ形成されている。小径部37は、その外径が、止水リング33の内径よりも、移動クリアランス分小さくなるように形成されている。各小径部37の内側には、左雄ネジ5および右雄ネジ6のネジ頭部14がそれぞれ挿入されて溶接固定されている。胴部36と小径部37との境界部分は、テーパ状に加工され、ターンバックル部4側端部に向かうに連れて外径が連続的に小さくなる傾斜部38が形成されている。なお、本実施の形態では、止水リング33を設けてターンバックル部4への水の浸入を防止しているので、カバーパイプ32の内径を、図1で示したカバーパイプ15よりも若干大きくして、各ロッド34,35に対する移動を円滑に行うように構成してもよい。
【0043】
以上説明した部分以外の構成については、図1に示した吊りロッド1と同様であるので同じ符号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施の形態に係る吊りロッド31を締め付けるに際しては、まず、第一ロッド34が第二ロッド35の下側になるように設置する。そして、図6(a)に示すように、第一ロッド34の胴部36にカバーパイプ32を退避させる。このとき、カバーパイプ32の止水リング33が、第一ロッド34のターンバックル部4側に位置するように、カバーパイプ32を第一ロッド34に被せる。ここで、前記構成によれば、止水リング33は、第一ロッド34の小径部37の周部に位置するので、左雄ネジ5を完全に露出させる位置までカバーパイプ32を移動させることができる。
【0045】
そして、ターンバックル部4の締付けを行った後、図6(b)に示すように、第一ロッド34の胴部36に退避させておいたカバーパイプ32を、第二ロッド35側へ移動させて、ターンバックル部4を完全に覆い隠したところで、図示しないなべ小ネジを、ネジ孔へ挿入・螺合させて、カバーパイプ32を第二ロッド35へ固定する。
【0046】
このとき、止水リング33は、第二ロッド35の傾斜部38に押し付けられるのでシールとしての機能を発揮し、第二ロッド35とカバーパイプ32との接合部分の水密性を高めることができる。そして、この止水リング33は、ターンバックル部4の上側に設けられ、第二ロッド35に降りかかった雨水等の水が、カバーパイプ32の内部に浸入するのを防止できるので、ターンバックル部4に水が流れることはなく、防錆作用を高めることができる。
【0047】
また、止水リング33と、第二ロッド35の傾斜部38との摩擦力で、カバーパイプ32を第二ロッド35に固定するように構成すれば、図1におけるなべ小ネジ18を省略でき、美観をさらに高めることができる。
【0048】
図7は本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第三の形態を示した断面図である。
【0049】
図7に示すように、本実施の形態に係る吊りロッド41は、カバーパイプ43の一端の内周面に、雌ネジ44が形成されている。第一ロッド45の左雄ネジ5側端部および第二ロッド46の右雄ネジ6側端部には、第一ロッド45および第二ロッド46の胴部47よりも径が小さい小径部48がそれぞれ形成されている。小径部48は、その外径が、雌ネジ44の内周径よりも、小さくなるように形成されている。各小径部48の内側には、左雄ネジ5および右雄ネジ6のネジ頭部14がそれぞれ挿入されて溶接固定されている。吊りロッド41の使用時に、上側に配置されるロッド(本実施の形態では第二ロッド46)の小径部48の外周面には、カバーパイプ43に形成された雌ネジ44が螺合する雄ネジ49が形成されている。本実施の形態では、雌ネジ44と雄ネジ49との螺合により、カバーパイプ43が第二ロッド46に固定されるので、カバーパイプ43を第二ロッド46に固定するためのネジ孔は設けなくてよい。
【0050】
なお、本実施の形態では、上側に配置される第二ロッド46の小径部48のみに、雄ネジ49を形成しているが、第一ロッド45の小径部48にも雄ネジを形成してもよい。この場合は、第一ロッド45、第二ロッド46のどちらでも上側に配置することができる。
【0051】
以上説明した部分以外の構成については、図1に示した吊りロッド1と同様であるので同じ符号を付してその説明を省略する。
【0052】
前記構成の吊りロッド41によれば、カバーパイプ43に形成された雌ネジ44と第二ロッド46の小径部48に形成された雄ネジ49とを螺合させることで、カバーパイプ43を第二ロッド46に固定しているので、第二ロッド46とカバーパイプ43との接合部分の水密性を高めることができる。よって、図6に示した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、カバーパイプ43を第二ロッド46に固定するためのネジ孔は必要なく、さらになべ小ネジを用いる必要がないので、美観をさらに高めることができる。
【0054】
図8は、本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第四の形態を示した平面図である。
【0055】
図8に示すように、本実施の形態に係る吊りロッド51は、少なくとも第一ロッドまたは第二ロッド(本実施の形態では、第二ロッド52)のボルト用孔12が形成された平板部分53が所定角度で屈曲されている。平板部分53は、ボルト用孔12が形成された部分よりもロッド寄部分で屈曲されており、建物の壁面から突出する取付ブラケット29に対して、吊りロッド51が屈曲して支持されるように構成されている。
【0056】
前記構成の吊りロッド51を使用するに際しては、取付ブラケット29の左右両側に、一対の吊りロッド51を取り付ける。吊りロッド51は、取付ブラケット29を基点として二股状に取り付けられる。各吊りロッド51の平板部分53で、取付ブラケット29を挟むように配置し、各吊りロッド51のボルト用孔12および取付ブラケット29のボルト用孔54にボルト55を挿入して、ナット56で締め付ける。
【0057】
前記構成によれば、図4および図5に示した二股取付金具21を用いることなく、簡単に一対の吊りロッド51を二股状に取り付けることが可能となる。また、平板部分53を屈曲させる工具を用いれば、取付現場で屈曲角度の微調整を行うことが可能となる。
【0058】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、カバーパイプ15,32,43はアルミニウム合金またはステンレスにて形成されているが、これに限られるものではなく、樹脂や弾性体で形成してもよい。この場合、カバーパイプの表面は、各ロッドの表面と似せた表面加工としてもよいし、全く別の表面加工或いは色としてデザイン上のアクセントとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の形態を示した分解斜視図である。
【図3】本発明に係る吊りロッドの締付方法を示した(a)は第一工程説明図、(b)は第二工程説明図である。
【図4】本発明に係る吊りロッドを二股状に支持する二股取付金具を示した(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明に係る吊りロッドの取付状態を示した(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第二の形態を示した(a)は締付前の断面図、(b)は締付後の断面図である。
【図7】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第三の形態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る吊りロッドを実施するための最良の第四の形態を示した平面図である。
【図9】従来のターンバックルを示した側面図である。
【図10】従来の他のターンバックルを示した斜視図である。
【図11】従来のさらに他のターンバックルを示した断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 吊りロッド
2 (第一)ロッド
3 (第二)ロッド
4 ターンバックル部
15 カバーパイプ
19 胴部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に配置される一対のロッド間に、これら一対のロッドを互いに近接・離反させるためのターンバックル部が設けられた吊りロッドにおいて、
前記一対のロッド間に、前記ターンバックル部を覆う筒状のカバーパイプを設けたことを特徴とする吊りロッド。
【請求項2】
前記カバーパイプは、前記一対のロッドの断面外形と相似の断面外形となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の吊りロッド。
【請求項3】
同軸上に配置される一対のロッド間に設けられたターンバックル部を締め付けて、前記一対のロッドを互いに近接・離反させる吊りロッドの締付方法において、
前記一対のロッドのうちいずれか一方のロッドの胴部にカバーパイプを予め被せて退避させておき、前記ターンバックル部を締め付けた後に、前記カバーパイプをターンバックル部の周辺部に移動させて、当該ターンバックル部を覆い隠すことを特徴とする吊りロッドの締付方法。
【請求項1】
同軸上に配置される一対のロッド間に、これら一対のロッドを互いに近接・離反させるためのターンバックル部が設けられた吊りロッドにおいて、
前記一対のロッド間に、前記ターンバックル部を覆う筒状のカバーパイプを設けたことを特徴とする吊りロッド。
【請求項2】
前記カバーパイプは、前記一対のロッドの断面外形と相似の断面外形となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の吊りロッド。
【請求項3】
同軸上に配置される一対のロッド間に設けられたターンバックル部を締め付けて、前記一対のロッドを互いに近接・離反させる吊りロッドの締付方法において、
前記一対のロッドのうちいずれか一方のロッドの胴部にカバーパイプを予め被せて退避させておき、前記ターンバックル部を締め付けた後に、前記カバーパイプをターンバックル部の周辺部に移動させて、当該ターンバックル部を覆い隠すことを特徴とする吊りロッドの締付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−307874(P2006−307874A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127383(P2005−127383)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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