説明

吊り下げ具

【課題】吊り下げ対象のレベル調整をより容易なものとする吊り下げ具を、構造の複雑化を招くことなく、提供する。
【解決手段】弾性変形可能に構成された第一フック部10と、第二フック部11と、第一フック部10と第二フック部11との間にあって両者を連接させる調整部12とを有している。第一フック部10は、フック基部10aを調整部12の一端部12’に一体に連接させると共に、このフック基部10aよりもフック端10bを第二フック部11側に位置させ且つこのフック端10b側に調整部12への引っ掛け部10cを有している。調整部12は、引っ掛け部10cに対する被引っ掛け部12aを多段に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊り下げ対象と、その支持対象との間に介在して、この吊り下げ対象をレベル調整可能に支持対象に吊り下げさせるようにする吊り下げ具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビネット内に調理器具をレベル調整可能に吊り下げる構造として、調理器具の取っ手に係止するフック部を備えた吊り具におけるこのフック部を上下方向に螺進退可能にしたものがある。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−135126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、吊り下げ対象のレベル調整をより容易なものとする吊り下げ具を、構造の複雑化を招くことなく、提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、吊り具を、弾性変形可能に構成された第一フック部と、
第二フック部と、
前記第一フック部と第二フック部との間にあって両者を連接させる調整部とを有しており、
前記第一フック部は、フック基部を調整部の一端部に一体に連接させると共に、このフック基部よりもフック端を第二フック部側に位置させ且つこのフック端側に調整部への引っ掛け部を有しており、
前記調整部は、前記引っ掛け部に対する被引っ掛け部を多段に備えているものとした。
【0006】
第一フック部のフック端側の調整部への引っ掛けにより、調整部と第一フック部とによってループが形成される。この引っ掛け部が引っ掛けられる被引っ掛け部を第一フック部のフック基部との距離を小さくする被引っ掛け部にすればするほど、第一フック部のフック基部とフック端との距離は小さくなり第一フック部はその曲率を小さくする向きに弾性変形される。第一フック部の弾性変形量が大きくなればなるほどそのフック基部と湾曲中心との間に位置される箇所は第二フック部の側から離れる向きに移動される。これにより、第一フック部と第二フック部との間の距離を変えることができ、この距離の変更により吊り下げ具を介して吊り下げられている吊り下げ対象のレベル調整がなされる。
【0007】
前記調整部を、複数の湾曲部又は屈曲部を、隣り合う湾曲部又は屈曲部との間に上下に間隔を開けて備えて、この隣り合う湾曲部又は屈曲部間を被引っ掛け部としてなるものとすることが、好ましい態様の一つである。この場合に、第一フック部を、一端部をフック基部とし他端部をフック端とする略U字状をなす主体部と、この主体部の他端部から側方に延び出してこの主体部の他端部との間に引っ掛け部を形成させる延長部とを有したものとし、さらに、この延長部はその端末側が幅広になるように構成されているものとすれば、被引っ掛け部に引っ掛け部を掛合させた状態を安定的に維持させることができる。
【0008】
また、第二フック部の表面に滑り止め手段を設けさせておけば、第二フック部への典型的には吊り下げ対象の吊り下げ状態をより安定的に維持することができる。
【0009】
また、合成樹脂材料により、第一フック部、第二フック部及び調整部を一体に成形させるようにしておけば、第一フック部に弾性変形特性を適切に備えさせた吊り下げ具を容易に提供することができる。
【0010】
前記第二フック部を、フック基部を調整部の他端部に一体に連接させると共に、そのフック端側に調整部への引っ掛け部を有しているものとすれば、第二フック部と調整部とによってもループを形成させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかる吊り下げ具は、第一フック部と調整部との掛合位置の変更により吊り下げ対象のレベル調整を容易になすことができる。また、かかる吊り下げ具の構造は簡素であり、したがって低廉に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施の形態にかかる吊り下げ具の斜視図である。
【図2】図2は図1の吊り下げ具を含んで構成される収納構造の要部斜視構成図である。
【図3】図1の吊り下げ具の使用状態を示した側面図である。
【図4】図1の吊り下げ具の使用状態を示した側面図であり、図3よりも第一フック部と第二フック部との間の距離を大きくした状態を示している。
【図5】図1の吊り下げ具の第二フック部にさらに引っ掛け部を形成させた例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図5に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について説明する。この実施の形態にかかる吊り下げ具1は、吊り下げ対象2と、その支持対象3との間に介在して、この吊り下げ対象2をレベル調整可能に支持対象3に吊り下げさせるようにするものである。
【0014】
図2は、食器2aを吊り下げ状態で収納するようにした食器収納構造を、かかる吊り下げ具1を含んで構成させた例を示している。図中符号3aは、前記支持対象3となるバーであり、収納空間を構成する一対の側壁3c、3cの上部間に架設されている。図示の例では、かかるバー3aは山部と谷部3bを交互に備えた蛇行状に成形されており、その谷部3bに吊り下げ具1を構成する後述の第一フック部10が引っ掛けられるようになっている。図中符号2bは、食器2aを抱持するシート体である。シート体2bの左右の上端部にそれぞれ吊り下げ具1が備えられ、この左右の吊り下げ具1、1の第一フック部10をそれぞれ前記バー3aに引っ掛けることでこのシート体2b内に抱持された食器2aが吊り下げ状態で収納される。すなわち、この例では、かかるシート体2bが前記吊り下げ対象2となっている。シート体2bの上端部には吊り下げ具1の後述の第二フック部11を引っ掛け可能な管状部2cが形成されており、吊り下げ具1はこの管状部2cにかかる第二フック部11を挿通してシート体2bの上端部に備えられるようになっている。この食器収納構造においては、吊り下げ具1を構成する第一フック部10と後述する調整部12との掛合位置を後述するように変えることで、吊り下げられたシート体2bの下端2dと収納空間を構成する底壁3dとの間に、シート体2bの大きさやこれに抱持される食器2aの大きさや数や抱持態様などにかかわらず、所望の間隔を確保できるようになっている。すなわち、この食器収納構造では、前記掛合位置の変更により、吊り下げ対象2となるシート体2bの下端2dのレベルを調整できるようになっている。
【0015】
かかる吊り下げ具1は、弾性変形可能に構成された第一フック部10と、第二フック部11と、この第一フック部10と第二フック部11との間にあって両者を連接させる調整部12とを有している。この実施の形態にあっては、合成樹脂材料により、第一フック部10、第二フック部11及び調整部12を一体に成形させて、吊り下げ具1を構成させており、第一フック部10に弾性変形特性を適切に備えさせた吊り下げ具1を容易に提供できるようになっている。図示の例では、かかる吊り下げ具1は、帯状体に複数箇所においてその幅方向に湾曲中心線を沿わせた湾曲を施すようにして、成形されている。図示の例では、第二フック部11及び調整部12での厚さに比べて第一フック部10はやや薄くなっており、これにより第一フック部10は前記弾性変形特性を備えるようになっている。第一フック部10へのかかる弾性変形特性の付与は、例えば、かかる第一フック部10を軟質の合成樹脂により、第二フック部11及び調整部12を硬質の合成樹脂により、吊り下げ具1を二色成形により成形することでも可能である。なお、かかる吊り下げ具1は金属材料から構成することも可能であり、また、金属材料と合成樹脂材料とを組み合わせることにより構成することも可能である。
【0016】
前記第一フック部10は、フック基部10aを調整部12の一端部12’に一体に連接させると共に、このフック基部10aよりもフック端10bを第二フック部11側に位置させ且つこのフック端10b側に調整部12への引っ掛け部10cを有している。この実施の形態にあっては、かかる第一フック部10は、一端部をフック基部10aとし他端部10d’をフック端10bとする略U字状をなす主体部10dと、この主体部10dの他端部10d’から側方に延び出してこの主体部10dの他端部10d’との間に引っ掛け部10cを形成させる延長部10eとを有している。また、この延長部10eはその端末側が幅広になるように構成されている。
【0017】
一方、前記調整部12は、前記引っ掛け部10cに対する被引っ掛け部12aを多段に備えている。
【0018】
この実施の形態にあっては、かかる調整部12は、複数の湾曲部12bを、隣り合う湾曲部12bとの間に上下に間隔を開けて備えて、この隣り合う湾曲部12b間を被引っ掛け部12aとしてなる。図示の例では、かかる調整部12は、その一端部12’と他端部12”とを結ぶ仮想の中心線x(図3)を挟んだ一方側x’と他方側x”とに交互に湾曲部12bを位置させるように蛇行状に成形されている。
【0019】
第一フック部10の主体部10dは、前記仮想の中心線xを挟んだ一方側x’にあって、この仮想の中心線xの側を湾曲内側とするように形成されている。第一フック部10の延長部10eはこの主体部10dの他端部10d’との間に水平方向に間隔を形成させるようにして、前記仮想の中心線xから離れる方向に延びだしている。すなわち、第一フック部10の主体部10dは側面視の状態においてU字状を呈し、第一フック部10の延長部10eは主体部10dの他端部10d’とにより平面視の状態においてU字状を呈する引っ掛け部10cを形成させている。
【0020】
図示の例では、被引っ掛け部12aは調整部12に上下三段に形成されている。図示の例では、前記仮想の中心線xを挟んだ他方側x”から、被引っ掛け部12aに引っ掛け部10cを入り込ませることにより、第一フック部10のフック端10b側が調整部12に係脱可能に引っ掛けられるようになっている。
【0021】
かかる第一フック部10のフック端10b側の調整部12への引っ掛けにより、調整部12と第一フック部10とによってループLが形成される。この引っ掛け部10cが引っ掛けられる被引っ掛け部12aを第一フック部10のフック基部10aとの距離を小さくする被引っ掛け部12aにすればするほど、第一フック部10のフック基部10aとフック端10bとの距離は小さくなり第一フック部10はその曲率を小さくする向きに弾性変形される。第一フック部10の弾性変形量が大きくなればなるほどそのフック基部10aと湾曲中心10fとの間に位置される箇所は第二フック部11の側から離れる向きに、図3に示される例では上方に、移動される。(図4)これにより、第一フック部10と第二フック部11との間の距離を変えることができ、この距離の変更により吊り下げ具1を介して吊り下げられている吊り下げ対象2のレベル調整がなされる。
【0022】
また、この実施の形態にあっては、第一フック部10の前記延長部10eはその端末側が幅広になるように構成されている。これにより、この実施の形態にあっては、被引っ掛け部12aに引っ掛け部10cを掛合させた状態が安定的に維持されるようになっている。
【0023】
前記第二フック部11は、フック基部11aを調整部12の他端部12”に一体に連接させると共に、前記仮想の中心線xの他方側x”に湾曲部を位置させ、かつ、フック端11bをフック基部11aの下方であって前記仮想の中心線xの一方側x’に位置させるように形成されている。
【0024】
この第二フック部11の表面に滑り止め手段を設けておけば、第二フック部11への典型的には吊り下げ対象2の吊り下げ状態をより安定的に維持することができる。例えば、第二フック部11にシボ加工などを施してその表面を粗面とすることにより、第二フック部11に滑り止め手段を備えさせることができる。
【0025】
図5は、第二フック部11のフック端11b側に、さらに調整部12への引っ掛け部11cを備えさせた例を示している。すなわち、この例では、第二フック部11のフック端11bから先にこのフック端11bから前記フック基部11aに向けて延びると共に、途中から湾曲して前記仮想の中心線xから離れる方向に延びる延長部11dを形成し、この延長部11dの湾曲箇所を調整部12の最下段の被引っ掛け部12aに引っ掛け可能とした引っ掛け部11cとしている。この延長部11dは、第一フック部10と同様に弾性変形可能に構成される。このようにした場合、第二フック部11と調整部12とによってループLを形成させることができる。
【0026】
なお、図示の例とは逆に、この実施の形態にかかる吊り下げ具1は、第二フック部11を前記支持対象3に引っ掛け、第一フック部10を前記吊り下げ対象2に引っ掛けるようにして用いることもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 第一フック部
10a フック基部
10b フック端
10c 引っ掛け部
11 第二フック部
12 調整部
12’ 一端部
12a 被引っ掛け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能に構成された第一フック部と、
第二フック部と、
前記第一フック部と第二フック部との間にあって両者を連接させる調整部とを有しており、
前記第一フック部は、フック基部を調整部の一端部に一体に連接させると共に、このフック基部よりもフック端を第二フック部側に位置させ且つこのフック端側に調整部への引っ掛け部を有しており、
前記調整部は、前記引っ掛け部に対する被引っ掛け部を多段に備えていることを特徴とする吊り下げ具。
【請求項2】
調整部は、複数の湾曲部又は屈曲部を、隣り合う湾曲部又は屈曲部との間に上下に間隔を開けて備えて、この隣り合う湾曲部又は屈曲部間を被引っ掛け部としてなることを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ具。
【請求項3】
第一フック部は、一端部をフック基部とし他端部をフック端とする略U字状をなす主体部と、
この主体部の他端部から側方に延び出してこの主体部の他端部との間に引っ掛け部を形成させる延長部とを有しており、
この延長部はその端末側が幅広になるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の吊り下げ具。
【請求項4】
第二フック部の表面に滑り止め手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吊り下げ具。
【請求項5】
合成樹脂材料により、第一フック部、第二フック部及び調整部を一体に成形させてなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の吊り下げ具。
【請求項6】
第二フック部は、フック基部を調整部の他端部に一体に連接させると共に、そのフック端側に調整部への引っ掛け部を有していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の吊り下げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149667(P2012−149667A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6976(P2011−6976)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(501300104)学校法人 多摩美術大学 (25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】