説明

吊り下げ搬送装置

【課題】 ハンガレールの急激な曲がり区間でも吊り下げ搬送装置が円滑に通過でき、ホイストと駆動装置の連結部の耐久性を向上させること。
【解決手段】 架設されたハンガレール1に沿って移動可能なホイスト2と、これを走行駆動するための駆動装置3と、ブレーキ装置4とを連結して設ける。駆動装置3は、駆動スプロケット10,従動スプロケット11に磁石ベルト12を掛け回し、ハンガレール1に吸着させ、駆動モータ13で駆動スプロケット10を駆動して走行させる。ホイスト2及び非常ブレーキ装置4と駆動装置3との連結部に球面軸受け23を設けると共に、横方向の連結軸25上を移動自在の球面体26を設ける。球面体26及び球面軸受け23により、駆動装置3とホイスト2及び非常ブレーキ装置4との連結部が相互間の上下左右方向の相対角度変位を自在に許容し、互いに連結する他のものの動きを阻害しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシールドトンネル工事においてトンネル内で壁用セグメント等の資機材を天井部から吊り下げて移動する搬送装置に関し、特に敷設されたハンガレールの曲がりに対応してホイストと駆動装置の連結部を自在に屈曲できるものに係る。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り下げ搬送装置には、トンネルの天井部に架設した鋼材から成るハンガレールに磁石ベルトを吸着させて駆動する駆動装置の前方に、資機材を吊り下げることができるホイストを連結して移動させるものがある(特許文献1参照)。ホイストと駆動装置との間は、ホイストから延出した連結杆が、駆動装置のフレームに突設された左右一対のブラケット間に支持された横方向の連結軸で枢支するものである。
【特許文献1】特開2001−226070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シールドマシンの性能が向上した近年、トンネルの曲がりが急になってきており、トンネル内の搬送装置も急な曲がりに対応しなければならない。しかし、従来の吊り下げ搬送装置の連結部では、ハンガレールがトンネルの曲がりに対応して湾曲形成することが困難であるため、直線状のレール同士を角度をつけて結合することとしている。このハンガレールに形成された角部においてホイストと駆動装置との横方向の傾斜を連結軸上の遊びの範囲だけで行っているので、ハンガレールの角部を円滑に通過することができないことがある。特に、ホイストが駆動装置に押される方向で移動するときには相互の追従性が悪くなるのでハンガレールの角部がさらに通過しにくくなる。この場合には、搬送物をシールドマシンの近傍まで他の搬送装置に引き渡して移送しなければならない。ハンガレールの曲がりを緩やかにすれば、進行方向がトンネルの中央線から側方へはずれてしまい、ハンガレールの端部が搬送先のシールドマシンから離れて、本来の搬送位置まで他の移送装置で移動しなければならない。また、ハンガレールの角部を通過できても、連結部に無理な応力が作用して耐久性を低下させるという問題がある。
そこで、本発明は、ハンガレールの急激な曲がりにおいてホイストや駆動装置などの連結部が柔軟に屈曲し、曲がり区間でも円滑に通過できる吊り下げ搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明においては、資機材を吊り上げて水平方向に移動させるホイスト2と、モータ駆動のスプロケット10,11に掛けて引き回される磁石ベルト12を架設されたハンガレール1に吸着させて延長方向に進行させる駆動装置3とを連結した吊り下げ搬送装置において、ハンガレール1の曲がりに応じて駆動装置3とホイスト2との相互角を変更可能に球面軸受け23によって連結し、かつこの球面軸受け23を駆動装置3又はホイスト2に設けた横方向の連結軸26に軸線方向へ移動自在に支持させた。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては、トンネルの大きく湾曲した急な曲がり区間において、ハンガレールに角部が形成されても、ホイストと駆動装置との連結部が両者間の上下左右方向の相対角度変位を無理なく許容し、さらに連結位置が連結軸上を変位するので、ホイストと駆動装置との追従性を向上させることができ、ハンガレールの角部を円滑に通過することができるので、本来の搬送位置まで移動可能になり、複数の搬送装置にわたる搬送物の受け渡しを回避できるし、無理な応力による摩耗劣化を防止し、長期間の使用に耐えることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
図1及び図2において、1はトンネル内の天井部に架設された断面ほぼI字形の鋼材から成るハンガレールである。このハンガレール1には、これに沿って移動可能なホイスト2と、これを走行駆動するための自走可能な駆動装置3と、ブレーキ装置4とが連結され取り付けられる。ホイスト2は、フック付きのワイヤロープを用いて壁面用セグメントSなどの資機材を吊って上げ下げでき、トンネル内をハンガレール1に沿って移動自在である。ホイスト2は、必要に応じて複数連結して使用できる。
【0007】
駆動装置3は、上部が解放した矩形箱状を成すフレーム5を備えている。フレーム5は、ハンガレール1を受け入れることができる間隔をおいて平行に対向する両側の枠板5a,5aと、これらの前後を結合する枠板5b、5cで形成されている。両側の枠板5a,5a間の前後部には、ハンガレール1の下フランジ1a上を延長方向に転動する左右一対の走行車輪7と、下フランジ1aの側縁に接触して延長方向に転動自在の左右一対の横ガイドローラ8と、ハンガレール1の下フランジ1aの下面に接して延長方向に転動する左右一対の縦ガイドローラ9とをそれぞれ備えている。
【0008】
枠板5a,5a間の前後に軸支された駆動スプロケット10,従動スプロケット11には磁石ベルト12が掛け回されている。磁石ベルト12は、ハンガレール1の下フランジ1aに吸着することができる多数の磁石片を備えている。駆動スプロケット10を駆動する減速機付きの駆動モータ13は、一方の枠板5aの外側に固定されている。モータ13には図示しないケーブルを通じて給電される。なお、駆動操作はスイッチ6で行う。
【0009】
磁石ベルト12はチェーンガイド14により張力を調整される。チェーンガイド14は、側部の枠板5,5間に固定された取付板14aの下方にリンク14bを介して固定位置を上下に変更可能なアーム14cが前後方向に支持され、このアーム14cの両端部にスプロケット14dが回動自在に軸支されている。
【0010】
一方の枠板5aの前後上部にはリミットスイッチ15が夫々突設されており、ハンガレール1上の所定の停止位置に設けられたストライカ16に接触して停止するようになっている。
【0011】
駆動装置3の後方に連結されたブレーキ装置4は一定速度に達したら停止作動する。ブレーキ装置4はフレーム17にハンガレール1上を転動自在の左右一対の走行ローラ18が前後に対向して支持されている。フレーム17内には、駆動装置3の電源に連動して通電されるソレノイド19と、このソレノイド19の励磁により上方へ突出変位する作動ピン20と、常時はハンガレール1の下面に押し当たるようにバネで付勢され、作用ピン20の突出により回転変位してハンガレール1の下面から離れる制動カム21とが設けられている。
【0012】
図3に示すように、ホイスト2の両側から互いに対向しつつ後方に延出した連結アーム22,22の先端部には球面軸受け23がボルトで固定されている。一方、駆動装置3のフレーム5には前方に向かって突設された水平に対向するブラケット24,24間に水平に連結軸25が支持されている。この連結軸25は球面軸受け23に対応する球面体26に自由に貫通している。球面体26は球面軸受け23の凹部に上下に回動自在で、かつ左右に一定範囲で回転変位可能に嵌合する。
【0013】
ブレーキ装置4のフレーム17の後部にはホイスト2におけるものと同様の球球面軸受け23が固定されており、これに対応して駆動装置3のフレーム5の側部の枠板5a,5a間に水平に架設された連結軸25が貫通する球面体26が設けられている。
【0014】
しかして、ホイスト2に壁用セグメントSなどの資機材を吊り、駆動装置3で駆動して、資機材を輸送車からシールドマシンの近傍まで移動させ、下ろして仮積みする。駆動装置3は、磁石ベルト12をハンガレール1に吸着させながら、磁気摩擦力により、強力にホイスト2を走行駆動して資機材を搬送する。走行中一定速度以上になったり、作業終了により通電が断たれると、ブレーキ装置4が作動してハンガレール1に固定される。
【0015】
図4に示すように、トンネルの曲がりが急な区間においてハンガレール1の角部が形成されていると、ここを同図矢印方向へ通過する過程において、先ずホイスト2の駆動装置3に対する横方向への傾斜は、球面軸受け23が球面体26に対して回転変位すると共に、球面体26もろとも連結軸25上を一方向へ移動することにより許容される(図4(a))。そして、駆動装置3自体が傾きを開始するまで球面軸受け23が球面体26と共に連結軸25上を逆方向へ移動し(図4(b)(c))、駆動装置3が傾きを開始してから角部以後の進行側レール1に沿うまで、球面軸受け23が連結軸25上を一方向へ移動すると共に球面体26に対して回転変位することにより駆動装置3のホイスト2に対する傾きの変化を許容する(図4(c)(d))。
同様にして、ブレーキ装置4の駆動装置3に対する横方向への傾斜が後部の球面軸受け23により許容される。後部の球面軸受け23が回転限界に達すると、球面体26と共に連結軸25上を相対移動することによりブレーキ装置4に対する駆動装置3の拡大する傾斜が許容される(図4(c)(d))。従って、駆動装置3とホイスト2及び非常ブレーキ装置4との連結部が相互間の上下方向はもとより左右方向に自在に相対角度変位するし、連結位置が連結軸25上を左右方向に移動するので、非常ブレーキ装置4、駆動装置3、ホイスト2が互いに連結する他のものの動きを阻害することなく追従し、ハンガレール1に沿って曲がり区間を円滑に通過する。連結部には無理な応力が作用しないので、摩耗劣化を回避し、長期間の使用に耐えることができる。
【0016】
なお、本発明は、上記のようなトンネル工事における資機材の搬送用のホイストに限定されるものではなく、搬送物を吊り下げて移動する各種の搬送装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、例えばシールドトンネル工事においてトンネル内で壁用セグメント等の資機材を天井部から吊り下げてシールドマシンの近傍まで移動するホイストと駆動装置との連結を柔軟にし、トンネル内の曲がり部を円滑に通過するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る吊り下げ搬送装置の概略的正面図である。
【図2】駆動装置の平面図である。
【図3】ホイストと駆動装置の連結部の一部を切り欠いた正面図である。
【図4】吊り下げ搬送装置の動きを説明する概略的平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ハンガレール
1a 下フランジ
2 ホイスト
3 駆動装置
4 ブレーキ装置
5 フレーム
7 走行車輪
8 ガイドローラ
9 ガイドローラ
10 駆動スプロケット
12 磁石ベルト
23 球面軸受け
25 連結軸
26 球面体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
資機材を吊り上げて水平方向に移動させるホイストと、
このホイストに連結され、モータ駆動のスプロケットに掛けて引き回される磁石ベルトを架設されたハンガレールに吸着させて延長方向に進行させる駆動装置とを具備する吊り下げ搬送装置において、
前記駆動装置とホイストとを前記ハンガレールの曲がりに応じて相互間の水平方向の傾斜を変更可能に連結し、かつ駆動装置又はホイストに設けられた水平方向の連結軸に軸線上を移動自在に支持される球面軸受けを具備することを特徴とする吊り下げ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−176240(P2006−176240A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369301(P2004−369301)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】