説明

吊り戸の支持装置

【課題】 簡単な構成により、折り戸等の吊り戸を開口部に対して容易に着脱できる吊り戸の支持装置を提供する。
【解決手段】 開口部の上部に設けられたレールに沿って走行する吊車11と、開口部に対して開閉可能に支持される吊り戸12の上部に取り付けられ、吊車から下方に垂下する吊軸11aの下端に形成された大径部を水平方向一側から導入する係合溝を備えた保持部13と、係合溝内に上下動可能に取り付けられ且つ弾性部15により上方に付勢され、大径部を係合溝内に導入された状態でロックするロック部材14とを有し、保持部及びロック部は、ロック部が係合溝内から下方に退避し大径部のロックを解除する退避位置において互いに係合する係合機構16を備えるように、吊り戸の支持装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に開閉可能に支持される吊り戸を着脱可能に支持する、吊り戸の支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば家具やクローゼット等の箱物収納体、あるいは住宅の窓や各室間の出入り口等の開口部を開閉するために、折り戸が使用されることがある。このような折り戸は、開口部の上部に設けられたレールに沿って走行する吊車に対して支持装置により支持される吊り戸として構成されている。
折り戸は、レールに沿って吊車が走行することにより、開口部の一側または両側に向かって移動し、同時に折り畳まれて開口部を開放し、または展開されて開口部を閉鎖する。
【0003】
このような折り戸の支持装置は、例えば特許文献1に記載されている。
即ち、特許文献1には、開口部を開閉する扉体と、該開口部の上部に設けられたレールと、該レールに沿って走行するライナーと、該ライナーから垂下された軸の先端に形成された大径鍔部と、折り戸の上部に取り付けられた保持部材とを含み、前記保持部材は、前記ライナーの大径鍔部を水平方向に導入するためのアリ溝と、アリ溝に導入された大径鍔部をロックするロック部とを備え、該ロック部は、スプリングにより常時上方に付勢された状態で上下移動できるように保持部材に取り付けられ、且つ、導入された大径鍔部を下方から弾力的に受け止める凹部を備えており、さらにロック部は大径鍔部をガイドする傾斜面を備えている折り戸の支持装置が開示されている。
【0004】
このような構成の折り戸の支持装置によれば、大径鍔部がロック部の凹部に嵌り込んでロック部によって常時下方から弾力的に押し上げられた状態で保持されて大径鍔部の下方に隙間が発生することがなく、そのため折り戸開閉時や走行時にガタツキやブレ等の発生をなくしてスムーズに作動させることができ、加えてロック部の下方にスプリング収納のためのスペースを十分確保でき、コンパクトに組み込むことができるといった効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-138498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1による折り戸の支持装置においては、折り戸を開口部に取り付ける場合には、ライナーから垂下する軸の先端に形成された大径鍔部を、折り戸に取り付けられた保持部材のアリ溝に対して水平方向に導入する。このとき、大径鍔部の縁部がロック部の傾斜面に当接し、この傾斜面をスプリングの張力に抗して押し下げながら、傾斜面に沿って摺動することにより、大径鍔部はアリ溝内に導入される。
従って、大径鍔部を対応する保持部材のアリ溝内に押し込むだけの簡単な作業によって、折り戸が開口部に対して取り付けられることになる。
【0007】
これに対して、折り戸を開口部から取り外す場合には、ロック部の外部に露出した操作部を手作業によりスプリングの張力に抗して押し下げた状態で、大径鍔部を保持部材のアリ溝内から引き抜く必要がある。
このため、折り戸の開口部からの取り外し作業が煩雑となり、時間がかかってしまう。
このような取り外し作業の煩雑さは、折り戸だけでなく、他の吊り戸においても同様である。
【0008】
また、保持部材は、スプリングを介在させた状態でアリ溝内にロック部を取り付ける構造になっているので、構造が複雑となり、スプリングを圧縮させた状態での組み付けが必要となるため、組立の作業性が良くない。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構成により、折り戸等の吊り戸を開口部に対して容易に着脱できる吊り戸の支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、本発明の構成によれば、開口部の上部に設けられたレールに沿って走行する吊車と、開口部に対して開閉可能に支持される吊り戸の上部に取り付けられ、吊車から下方に垂下する吊軸の下端に形成された大径部を水平方向一側から導入する係合溝を備えた保持部と、係合溝内に上下動可能に取り付けられ且つ弾性部により上方に付勢され、大径部を係合溝内に導入された状態でロックするロック部とを有し、保持部及びロック部は、ロック部が係合溝内から下方に退避し大径部のロックを解除する退避位置において互いに係合する係合機構を備えていることを特徴とする、吊り戸の支持装置により、達成される。
【0011】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、係合機構は、保持部に設けられた係止部と、ロック部に設けられ、退避位置で係止部に係合するフックと、から成る。
【0012】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、保持部は、ロック部を下方から受容する第一の挿入溝と、弾性部を水平方向他側から受容する第二の挿入溝と、を備え、ロック部は、第一の挿入溝内に挿入された状態で、第二の挿入溝内に挿入された前記弾性部により保持される。
【0013】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、ロック部は、弾性部と一体に構成されている。
【0014】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、ロック部の上面が、吊軸の大径部の導入側に対向するように傾斜して形成されている。
【0015】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、保持部が、ロック部及び弾性部と一体に形成されている。
【0016】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、ロック部のフックが退避位置で保持部から外側に突出する舌片を備える。
【0017】
本発明による吊り戸の支持装置は、好ましくは、舌片の少なくとも水平方向一側の面であって外部から見える部分が、保持部における水平方向一側の面とは異なる色である。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、係合機構、即ち保持部に設けられた係止部とロック部に設けられたフックとが互いに係合することにより、ロック部が退避位置に係止され、保持部の係合溝がロック部から解放される。この状態において、吊軸の下端に形成された大径部は、保持部の係合溝に対してロック部によって妨げられることなく、自由に挿脱することができる。
従って、吊り戸を開口部に対して着脱する場合、手作業でロック部を退避位置に抑えておく必要がなく、両手で吊り戸を持って着脱することが可能となり、作業性が向上する。
【0019】
保持部は、ロック部を下方から受容する第一の挿入溝と、弾性部を水平方向他側から受容する第二の挿入溝と、を備え、ロック部は、第一の挿入溝内に挿入された状態で、第二の挿入溝内に挿入された前記弾性部により保持されることにより、簡単な構成で容易にロック部が第一の挿入溝内に保持される。
【0020】
ロック部が弾性部と一体に構成されている場合には、別体の弾性部を設ける必要がなく、部品点数が少なくなり、組立が容易になる。
【0021】
ロック部の上面が吊軸の大径部の導入側に対向するように傾斜して形成されている場合には、ロック部が係合機構により退避位置に係止されず、係合溝内に位置していても、大径部が係合溝内に押し込まれることにより、大径部の側縁がロック部の傾斜した上面を押動して、ロック部を係合溝から下方に退避させながら、係合溝内に完全に導入される。
従って、大径部を係合溝内に導入する際に、ロック部を手動で退避させる必要がないので、吊り戸を開口部に対して容易に取り付けることができる。
【0022】
保持部がロック部及び弾性部と一体に形成されている場合には、さらに部品点数が少なくなり、組立が容易になると共に、部品コスト及び組立コストが低減される。
【0023】
ロック部のフックが退避位置で保持部から外側に突出する舌片を備える場合には、この舌片を操作することにより、容易に係合機構のフックと係止部との係合を解除することができる。
【0024】
また、舌片の少なくとも水平方向一側の面であって外部から見える部分が、保持部における水平方向一側の面とは異なる色である場合には、周囲と異なる色の舌片部分を外部から視認することよって、容易にロック部が退避位置にあることを確認することができる。
【0025】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、折り戸等の吊り戸を開口部に対して容易に着脱できる吊り戸の支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による吊り戸の支持装置の第一の実施形態である折り戸の支持装置の取付状態を示す、取付面側から見た概略斜視図である。
【図2】図1の折り戸の支持装置における保持部の、逆側から見た分解斜視図である。
【図3】図1の折り戸の支持装置の取付前の状態を示す、(A)斜視図及び(B)断面図である。
【図4】図1の折り戸の支持装置の取付途中の状態を示す、(A)斜視図及び(B)断面図である。
【図5】図1の折り戸の支持装置の取付後の状態を示す、(A)斜視図及び(B)断面図である。
【図6】図1の折り戸の支持装置の取り外し前の状態を示す、(A)斜視図及び(B)断面図である。
【図7】図1の折り戸の支持装置の取り外し後の状態を示す、(A)斜視図及び(B)断面図である。
【図8】本発明による吊り戸の支持装置の第二の実施形態である折り戸の支持装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明による吊り戸の支持装置の第三の実施形態である折り戸の支持装置の構成を示す概略正面図である。
【図10】図9の折り戸の支持装置のA−A線断面図である。
【図11】図9の折り戸の支持装置の取付面側から見た斜視図である。
【図12】図9の折り戸の支持装置の取付面側から見た分解斜視図である。
【図13】図9の折り戸の支持装置における保持部材を示す、(A)正面図,(B)B−B線断面図及び(C)C−C線断面図である。
【図14】図9の折り戸の支持装置の取り外し前の状態を示す、(A)正面図及び(B)断面図である。
【図15】図9の折り戸の支持装置の取り外し後の状態を示す断面図である。
【図16】図9の折り戸の支持装置の係合機構の係合解除の状態を示す断面図である。
【図17】図9の折り戸の支持装置のロック部材によるロック状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2は、本発明による吊り戸の支持装置の第一の実施形態である折り戸の支持装置10の構成を示している。
図1に示すように、折り戸の支持装置10は、建物等に設けられた開口部の上部に設けられたレール(図示せず)に沿って折り戸を移動可能に支持するためのものであって、このレールに沿って走行する吊車11と、折り戸12の上部に取り付けられ、吊車11から下方に垂下する吊軸11aに連結される保持部としての保持部材13と、から構成されている。
ここで、折り戸12は、一方の側縁側で所謂センターヒンジ(図示省略)により折り畳み可能に連結された、例えば一対の扉体から構成されている。そして、各扉体は、他方の側縁側の上部で、上述した保持部材13及び吊車11を介して、開口部の上部においてレールに沿って移動可能に支持されている。
【0028】
吊車11は、図示に鎖線で示すように、直方体状の本体11bと、本体11bの長手方向(図1においてX方向)に並んだ一対の車軸11cにそれぞれ取り付けられた二対の車輪11dを有している。
これらの車輪11dは、少なくとも本体11bの下面より下方に突出しており、断面が中空方形のレール内を転動する。
【0029】
吊車11の吊軸11aは、炭素鋼等の金属材料から構成されており、本体11bの中心付近から下方に垂下している。吊軸11aの上端にはネジ孔11eが設けられ、このネジ孔11eに固定ネジ(図示せず)が挿通され締め付けられることにより、吊軸11aの上端は、本体11bに固定される。
ここで、上述したレールの下面中央には、レールの長手方向に沿って延びる溝部が形成されており、吊軸11aは、この溝部を通って、レールの下方に突出している。
これにより、吊軸11aは、吊車11のレールに沿った移動に伴って、レール下方でレールに沿って移動する。
さらに、吊軸11aの下端には、大径部11fが形成されている。この大径部11fは、吊軸11aの他の部分である小径部11gより大きい直径を有しており、下縁周囲が面取り処理されている。
【0030】
保持部材13は、ポリアセタール等の樹脂材料から構成されており、図1に示すように、折り戸12の表面に当接する取付面13a側から水平に反対方向(図1においてY方向)に延びる係合溝13bを備えている。係合溝13bは、取付面13a側が開放しており、Y方向の反対側では閉じている。
係合溝13bは、上述した吊軸11aの下端に形成された大径部11fを水平方向に受容する。また、係合溝13bは、上側に、吊軸11aの小径部11gに対応し、その水平移動を可能にするための、係合溝13bより細い間隙13cを備えている。
尚、保持部材13の係合溝13bへの吊軸11a及び大径部11fの挿脱を妨げないように、折り戸12は、保持部材13が取り付けられた状態で、係合溝13b及び間隙13cに対応した切欠き(図示省略)を有している。
【0031】
保持部材13は、さらに、図2に示すように、係合溝13bから下方に延びる第一の挿入溝13dと、係合溝13bからY方向に延びる第二の挿入溝13eと、を有している。
第一の挿入溝13dは、保持部材13の下方に開放しており、下方からロック部としてのロック部材14を受容する。
また、第二の挿入溝13eは、Y方向に開放しており、逆Y方向に弾性部としてのバネ部材15を受容する。
【0032】
ロック部材14は、ポリアセタール等の樹脂から構成されており、図2に示すように、第一の挿入溝13dのXY平面における断面形状とほぼ同じ断面形状に形成されている。これらの断面形状は、ロック部材14が第一の挿入溝13d内でZ軸の周りに回動しないように、またXY方向に移動しない形状に選定されている。具体的には、ロック部材14は、図示の場合、X軸方向両側に張り出したガイド部14f,14gを備え、第一の挿入溝13dはこれに対応する断面形状を備えている。これにより、ロック部材14は、第一の挿入溝13d内をZ方向にのみ移動可能である。
ロック部材14の上面14aは、図3(B)に示すように、保持部材13の取付面13a側(逆Y方向)に向かって斜めに傾斜した斜面として形成されている。
ロック部材14の上面14aのY方向側の端面は、吊軸11aのロックすべき大径部11fの周面に対応して、水平断面円弧状の凹面14bとして形成されている。
また、ロック部材14は、その下面側に、バネ部材15が係合する突起14cを有している。
【0033】
さらに、ロック部材14は、その保持部材13の取付面13aの内面に沿って下方に延びる細長い延長部14dを備えており、その先端から取付面13a側に突出したフック14eを有している。
延長部14cは、その弾性により、Y方向に弾性変形可能であり、フック14eはこれに伴ってY方向へ移動可能である。
これに対応して、保持部材13の取付面13aの内側には、図2に示すように、係止部13fが形成されている。
上述したフック14e及び係止部13fは、係合機構16を構成している。
【0034】
バネ部材15は、例えばステンレス材や炭素鋼等の材料から構成されており、図2に示すように、垂直部15aと、この垂直部15aの上下端から逆Y方向に延びる上部15b及び下部15cと、を備えている。
上部15bは、下部15cよりも長く形成されており、その先端が上方に向かって屈曲している。
従って、バネ部材15の上部15bが第二の挿入溝13e内に挿入されると、その屈曲した先端が、既に第一の挿入溝13d内に受容されているロック部材14の突起14cに係合すると共に、下部15bは、第二の挿入溝13eの下側に設けられた切欠き13gに嵌入する。
バネ部材15は、ロック部材14との係合により、第二の挿入溝13e内に保持されると共に、その上部15bがロック部材14を上方に向かって押圧する。このとき、ロック部材14は、その上面の最高部が、第一の挿入溝13dの上面に当接することにより、保持部材13の係合溝13a内のロック位置に保持される。その際、ロック部材14の凹面14bは、係合溝13a内に導入された大径部11fの側面に対向して、大径部11fの逆Y方向への移動を規制する。
【0035】
また、ロック部材14がバネ部材15の張力に抗して下方に移動されたとき、ロック部材14のフック14eが、保持部材13の取付面13aに形成された係止部13fに係合する。そのため、ロック部材14は、保持部材13の係合溝13aから下方に移動した退避位置で係止される。これにより、保持部材13の係合溝13aは、ロック部材14に妨げられることなく、吊軸11aの大径部11fの係合溝13aに対する着脱を可能にする。
【0036】
本発明による折り戸の支持装置10は、以上のように構成されており、折り戸12に対し以下のように設置される。
即ち、保持部材13の取付面13aが折り戸12の上端付近の側面に対して固定される。この固定は、例えば保持部材13の取付面13aに設けられたネジ孔13hに固定ネジ(図示せず)が挿通され、折り戸12に対してネジ止めされることにより行なわれる。
【0037】
また、保持部材13は、前もってその第一の挿入溝13d及び第二の挿入溝13e内にそれぞれロック部材14及びバネ部材15が挿入されている。この場合、まず第一の挿入溝13d内にロック部材14が挿入される。その後、第二の挿入溝13e内にバネ部材15が挿入され、その上部15bの屈曲部分がロック部材14の突起14cに係合する。
これにより、ロック部材14は、バネ部材15により第一の挿入溝13d内に保持されると共に、上方に向かって付勢される。
【0038】
この状態から、折り戸12を開口部に取り付ける作業について、図3から図5を参照して説明する。
まず、図3に示すように、作業者は、折り戸12を持ち上げて、折り戸12に取り付けられた保持部材13の係合溝13bを、吊り車11から垂下する吊軸11aの大径部11fの高さ位置に合わせる。
【0039】
続いて、作業者は、折り戸12を水平移動させて、保持部材13を逆Y方向に移動させる。これにより、吊軸11aの大径部11fが、保持部材13に対して相対的にY方向に移動し、保持部材13の係合溝13b内に導入される。
このとき、大径部11fのY方向への相対移動により、大径部11fがロック部材14の傾斜した上面14aに当接する。これにより、図4に示すように、大径部11fは、バネ部材15の張力に抗して、ロック部材14を下方に押動しながら、係合溝13b内に進入する。
【0040】
その後、大径部11fが係合溝13b内に完全に導入されると、即ち大径部11fが係合溝13bのY側の側壁に当接する格納位置に達すると、大径部11fがロック部材14の凹面14bを越える。これにより、図5に示すように、ロック部材14は、大径部11fによる下方への押動から解放されるので、バネ部材15の張力により上方に移動して、その上面14aの最高部が係合溝13bの上面に当接して、ロック位置に位置する。
このとき、大径部11fは、係合溝13b内において、Y方向に関して、一側で係合溝13bの端壁により、他側でロック部材14の凹面14bにより挟持され、格納位置にロックされる。
以上の手順により、折り戸12の開口部への取付が完了する。この場合、ロック部材14を手動で退避位置に保持する必要がないので、作業者は両手で折り戸12を持つことができ、容易に保持部材13の係合溝13b内に吊軸11aの大径部11fを誘導し、導入することができる。
【0041】
続いて、折り戸12を開口部から取り外す場合の作業について、図6及び図7を参照して説明する。
まず図6に示すように、ロック部材14をバネ部材15の張力に抗して下方に移動させ、係合機構16により、即ちロック部材14のフック14eを保持部材13の係止部13fに係合させることにより、ロック部材14を退避位置に係止する。
これにより、保持部材13の係合溝13bは、ロック部材14に妨げられることなく、大径部11fの移動を可能にする。
【0042】
次に、作業者は、折り戸12を水平移動させて、保持部材13をY方向に移動させる。これにより、吊軸11aの大径部11fが、保持部材13に対して相対的に逆Y方向に移動し、保持部材13の係合溝13bから取り出される。
このとき、ロック部材14は、係合機構16により退避位置に係止されているので、作業者は、ロック部材14を手動で退避位置に保持しておく必要がなく、両手で折り戸12を持って作業することができる。
折り戸12を取り出した後、係合機構16の係合を解除する。即ち、ロック部材14のフック14eを保持部材13の係止部13fから外す。これにより、ロック部材14は、バネ部材15の張力により、係合溝13b内のロック位置に復帰する。
【0043】
このように、本実施形態の折り戸の支持装置10によれば、折り戸12の開口部への着脱の際に、ロック部材14が係合機構16により退避位置に係止されるので、作業者は、手動でロック部材14を退避位置に保持する必要がなく、両手で折り戸12を持って作業することができるので、作業性が向上する。
また、保持部材13に対してロック部材14及びバネ部材15を挿入する際に、まずロック部材14を保持部材13の第一の挿入溝13d内に挿入し、続いてバネ部材15を保持部材13の第二の挿入溝13e内に挿入すればよく、その際バネ部材15を弾性変形させながら挿入する必要がないので、組立を容易に行うことができる。
【0044】
図8は、本発明による吊り戸の支持装置の第二の実施形態である折り戸の支持装置20の構成を示している。
図8において、折り戸の支持装置20は、図1及び図2に示した折り戸の支持装置10と比較して、保持部に対してロック部及びバネ部が一体に構成されている点で異なる構成である。
【0045】
即ち、折り戸の支持装置20は、吊車11と、折り戸の上部に取り付けられ、吊車11から下方に垂下する吊軸11aに連結される保持部21と、から構成されている。
保持部21は、例えばポリアセタール等の樹脂材料から構成されており、図8に示すように、折り戸の表面に当接する取付面21a側から水平方向反対側に向かって(図8にてY方向)に延びる係合溝21bを備えている。この場合、係合溝21bは、取付面21aと反対側も開放している。
【0046】
係合溝21bは、吊軸11aの下端に形成された大径部11fを水平方向に受容するために、その上側に、吊軸11aの小径部11gの水平移動を可能にするため、係合溝21bより細い間隙21cを備えている。
この場合、間隙21cは、取付面21aとは反対側が閉じており、その閉塞端に吊軸11aが当接することにより、吊軸11a及び大径部11fのY方向の移動が規制されて、大径部11fが格納位置に位置決めされる。
【0047】
保持部21は、さらに係合溝21bの下側に、ロック部22を備えている。
このロック部22は、保持部21と一体に構成されていると共に、保持部21と同じ弾性を有する材料から形成されることによって、弾性部として機能する。
ロック部22は、保持部21の取付面21aとは反対側で保持部21に対して揺動可能に支持されたレバー状に形成されている。これにより、ロック部22は、その取付面21a側の自由端22dが、弾性に基づいてZ方向に揺動可能である。
【0048】
さらに、ロック部22の自由端側の上面22aは、保持部21の取付面21a側(逆Y方向)に向かって斜めに傾斜した斜面として形成されている。
ロック部22の上面22aのY方向側の端面は、吊軸11aのロックすべき大径部11fの周面に対応して、円弧状の凹面22bとして形成されている。
【0049】
また、ロック部22は、その自由端側の下面に、下方に突出したフック22cを有している。
これに対して、保持部21の係合溝21bの下側には、図8に示すように、係止部21dが形成されている。
そして、上述したフック22c及び係止部21dが、係合機構23を構成している。
これにより、ロック部22の自由端22d側がその弾性に抗して下方に揺動すると、フック22cが、保持部21側の係止部21dに係合して、ロック部22が係合溝21bから下方に移動した退避位置で係止される。これにより、保持部21の係合溝21bは、ロック部22に妨げられることなく、吊軸11aの大径部11fの係合溝21bに対する着脱を可能にする。
ここで、ロック部22は、弾性変形しない無負荷状態で、その上面22aの最上部が、係合溝21bの上壁面に当接した状態にある。従って、ロック部22は、下方に向かって弾性変形したとき、弾性変形に基づく復元力によって上方に付勢されることになる。
【0050】
このような構成の折り戸の支持装置20が設置された折り戸を開口部に取り付ける場合、作業者は、折り戸12を持ち上げて、折り戸12に取り付けられた保持部21の係合溝21bを、吊り車11から垂下する吊軸11aの大径部11fの高さ位置に合わせる。
続いて、作業者は、折り戸12を水平移動させて、保持部21を逆Y方向に移動させる。これにより、吊軸11aの大径部11fが、保持部21に対して相対的にY方向に移動し、保持部21の係合溝21b内に導入される。
このとき、大径部11fのY方向への相対移動により、大径部11fがロック部22の傾斜した上面22aに当接する。これにより、大径部11fは、ロック部22の弾性に抗して、ロック部22を下方に押動しながら、係合溝21b内に進入する。
【0051】
その後、大径部11fが係合溝21b内に完全に導入されると、即ち吊軸11aが間隙21cのY側の側壁に当接して、大径部11fが格納位置に達すると、大径部11fがロック部22の凹面22bを越える。これにより、ロック部22は、大径部11fによる下方への押動から解放されるので、ロック部22自体の弾性変形に基づく復元力により上方に移動して、その上面22aの最高部が係合溝21bの上面に当接して、ロック位置に位置する。
このとき、吊軸11aが、間隙21c内において、Y方向に関して一側で間隙21cの端壁により、また大径部11fが、Y方向に関して他側でロック部22の凹面22bにより規制され、大径部11fは、格納位置にロックされる。
以上で、折り戸12の開口部への取付が完了する。この場合、ロック部22を手動で退避位置に保持する必要がないので、作業者は両手で折り戸12を持つことができ、容易に保持部21の係合溝21b内に吊軸11aの大径部11fを誘導し、導入することができる。
【0052】
これに対して、折り戸12を開口部から取り外す場合には、まず自由端22dを押し下げ、ロック部22を弾性変形させ、係合機構23により、即ちロック部22のフック22cを保持部21の係止部21dに係合させることにより、ロック部22を退避位置に係止する。
これにより、保持部21の係合溝21bは、ロック部22に妨げられることなく、大径部11fの移動を可能にする。
【0053】
次に、作業者は、折り戸12を水平移動させて、保持部21をY方向に移動させる。これにより、吊軸11aの大径部11fが、保持部21に対して相対的に逆Y方向に移動し、保持部21の係合溝21bから取り出される。
このとき、ロック部22は、係合機構23により退避位置に係止されているので、作業者は、ロック部22を手動で退避位置に保持しておく必要がなく、両手で折り戸12を持って作業することができる。
折り戸12を取り出した後、係合機構23の係合を解除する。即ち、自由端22dを押し上げ、ロック部22のフック22cを保持部21の係止部21dから外す。これにより、ロック部22は、それ自体の弾性変形による復元力により、係合溝21b内のロック位置に復帰する。
【0054】
図9〜図11は、本発明による吊り戸の支持装置の第三の実施形態である折り戸の支持装置30の構成を示している。
図9〜図11において、折り戸の支持装置30は、図1及び図2に示した折り戸の支持装置10と比較して、以下の点で異なる構成である。
即ち、折り戸の支持装置30においては、ロック部材14の延長部14dがフック14eよりもさらに下方に延び、フック14eの下方に舌片14hを有している。
舌片14hは、ロック部材14が保持部材13に対して下方に移動した退避位置において、少なくともその一部が、保持部材13の取付面13aの下端から下方に突出する。
【0055】
また、舌片14hは、ロック部材14と一体に形成されていると共に、保持部材13の取付面13a側の表面のうち、少なくともロック部材14の退避位置で保持部材13の取付面13aの下端から下方に突出して、取付面側に露出する部分が、保持部材13とは異なる色を有している。舌片14hの色は赤や黄色等のいわゆる警戒色であることが好ましく、保持部材13に対し彩度や明度に差があることが好ましい。例えば保持部材13が白色とし、舌片14hを赤色とすることができる。
ここで、舌片14hの色は、材料自体の色であってもよく、また表面への塗装や蒸着等による着色であってもよい。
尚、舌片14h全体またはロック部材14全体が同じ色を有していてもよい。
【0056】
保持部材13は、係止部13fの上側に、ロック位置でロック部材14のフック14eを受容する貫通穴13iを有している。この貫通穴13iは貫通していない凹みであってもよいが、貫通穴とすることにより製造時の型抜きが容易となる。
【0057】
さらに、折り戸の支持装置30においては、図12に示すように、ロック部材14のガイド部14f,14gが上方に向かって延びている。
これに対して、保持部材13は、図13に示すように、第一の挿入溝13dの一部、即ちロック部材14のガイド部14f,14gに対応する領域が切り欠かれている。
これにより、ロック部材14のガイド部14f,14gが、保持部材13の第一の挿入溝13d内をZ方向に摺動する。その際、ガイド部14f,14gがZ方向に長いことから、ガイド部14f,14gは、保持部材13の第一の挿入溝13d内を安定して案内されることになる。
【0058】
このような構成の折り戸の支持装置30によれば、ロック部材14が退避位置に在る場合には、図14に示すように、ロック部材14の舌片14hが保持部材13の取付面13aの下端から下方に突出している。このように突出していることにより、舌片14hを操作するだけで容易に退避位置におけるロック部材14の係合を解除することができる。
また、ロック部材14の舌片14hは、保持部材13の取付面13aの下端から露出して外部から視認可能である部分が保持部材13とは異なる色であるので、ロック部材14が退避位置に在ることが容易に視認され得る。
【0059】
折り戸の支持装置30が設置された折り戸を開口部に取り付ける場合には、図1及び図2に示した折り戸の支持装置10の場合と同様にして、ロック部材14がロック位置に在る状態で、作業者は両手で折り戸を持ち上げて、保持部材13の係合溝13bを、吊り車11から垂下する吊軸11aの大径部11fの高さ位置に合わせる。
このとき、ロック部材14がロック位置に在ることを確認する必要があるが、ロック部材14の舌片14hが保持部材13の取付面13aの下端から下方に突出しているか否かを確認すればよい。即ち、保持部材13とは異なる色の舌片14hが保持部材13の取付面13aの下端に見えるか否かを確認すればよい。即ち、ロック部材14がロック位置に在る場合には、保持部材13の取付面13aの下端から下方に突出した舌片14hは視認されない。
【0060】
続いて、吊り軸11aの大径部11fを相対的に保持部材13の係合溝13b内に水平に押し込むことにより、折り戸12の開口部への取付を容易に行なうことができる。
【0061】
これに対して、折り戸12を開口部から取り外す場合について、図9,図10,図14〜図17を参照して説明する。
まず図10において、ロック部材14のフック14eを保持部材13の取付面13aにおける貫通穴13iから押し出して、ロック部材14をバネ部材15の張力に抗して下方に移動させ、図14に示すように、ロック部材14のフック14e保持部材13の係止部13fに係合させて、ロック部材14を退避位置に係止する。
【0062】
次に、作業者は、折り戸12を水平移動させて、保持部材13をY方向に移動させる。これにより、吊軸11aの大径部11fが、保持部材13に対して相対的に逆Y方向に移動し、保持部材13の係合溝13bから取り出される。このとき、ロック部材14は係合機構16により退避位置に係止されているので、作業者は両手で折り戸12を持って作業することができる。
【0063】
その後、作業者は、係合機構16の係合を解除する。即ち、ロック部材14の舌片14hを図16にて矢印Aで示すように手指等により押し込んで、ロック部材14のフック14eを保持部材13の係止部13fから外す。これにより、図17に示すように、ロック部材14は、バネ部材15の張力により、係合溝13b内のロック位置に復帰する。
以上で、折り戸12の取り外しが完了する。
【0064】
この場合、ロック部材14のガイド部14f,14gがZ方向に長いことから、ロック部材14は保持部材13の第一の挿入溝13d内においてZ方向に安定して案内される。従って、折り戸12の重量が増大しても、ロック部材14が折り戸12の荷重により第一の挿入溝13d内でずれたり傾いたりするようなことがない。
【0065】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
例えば、上述した実施形態においては、保持部材13は別体のロック部材14及びバネ部材15を備え、あるいは保持部21は一体のロック部22を備えているが、これに限らず、保持部材13に対して、別体に構成された、弾性材料から成る、すなわちバネ部材の機能を備えたロック部材が取り付けられるようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、延長部14cに設けられたフック14eと保持部材13の取付面13aの内側に形成された係止部13fとからなる係合機構16を有しているが、フックと係止部との関係が逆であってもよいし、他の様々な係合機構を採用し得る。
【0066】
また、上述した実施形態においては、折り戸の支持装置10,20として構成されているが、折り戸に限らず、開口部の上部に設けられたレールに沿って移動可能に吊り下げられた種々の吊り戸を支持するための吊り戸の支持装置として構成することも可能である。
【0067】
以上述べたように、本発明によれば、簡単な構成により、折り戸等の吊り戸を開口部に対して容易に着脱できる、極めて優れた吊り戸の支持装置が提供される。
【符号の説明】
【0068】
10,20,30 折り戸の支持装置
11 吊車
11a 吊軸
11f 大径部
12 折り戸
13 保持部材
13b 係合溝
13d 第一の挿入溝
13e 第二の挿入溝
13f 係止部
13i 貫通穴
14 ロック部
14a,22a 上面
14b,22b 凹面
14c 突起
14d 延長部
14e,22c フック
14h 舌片
15 バネ部材
16,23 係合機構
21 保持部
22 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の上部に設けられたレールに沿って走行する吊車と、
前記開口部に対して開閉可能に支持される吊り戸の上部に取り付けられ、前記吊車から下方に垂下する吊軸の下端に形成された大径部を水平方向一側から導入する係合溝を備えた保持部と、
前記係合溝内に上下動可能に取り付けられ且つ弾性部により上方に付勢され、前記大径部を前記係合溝内に導入された状態でロックするロック部とを有し、
前記保持部及び前記ロック部は、前記ロック部が係合溝内から下方に退避し前記大径部のロックを解除する退避位置において互いに係合する係合機構を備えている
ことを特徴とする、吊り戸の支持装置。
【請求項2】
前記係合機構は、
前記保持部に設けられた係止部と、
前記ロック部に設けられ、前記退避位置で前記係止部に係合するフックと、
から成ることを特徴とする、請求項1に記載の吊り戸の支持装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記ロック部を下方から受容する第一の挿入溝と、前記弾性部を水平方向他側から受容する第二の挿入溝と、を備え、
前記ロック部は、前記第一の挿入溝内に挿入された状態で、前記第二の挿入溝内に挿入された前記弾性部により保持されることを特徴とする、請求項1または2に記載の吊り戸の支持装置。
【請求項4】
前記ロック部は、前記弾性部と一体に構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の吊り戸の支持装置。
【請求項5】
前記ロック部の上面が、前記吊軸の大径部の導入側に対向するように傾斜して形成されていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の吊り戸の支持装置。
【請求項6】
前記保持部が、前記ロック部及び前記弾性部と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1,2,4または5の何れかに記載の吊り戸の支持装置。
【請求項7】
前記ロック部のフックは、前記退避位置で、前記保持部から外側に突出する舌片を備えることを特徴とする、請求項2に記載の吊り戸の支持装置。
【請求項8】
前記舌片における少なくとも前記水平方向一側の面であって外部から見える部分が、前記保持部における前記水平方向一側の面とは異なる色であることを特徴とする、請求項7に記載の吊り戸の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−7459(P2012−7459A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190898(P2010−190898)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【特許番号】特許第4832587号(P4832587)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000119449)磯川産業株式会社 (41)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)
【Fターム(参考)】