説明

吊り治具及び翼環の加工方法

【課題】形状及び大きさの異なる翼環を手間をかけずに吊り上げることが可能な軽量の吊り治具及び翼環の加工方法を提供する。
【解決手段】吊り治具2は、一対のアーム10、20と、一対のアーム10、20を貫通するスライドガイド6と、スライドガイド6に沿って設けられた送りねじ30とを備えている。第1アーム10は、第1貫通穴11を一端部に有し、翼環の内側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第1凹部13を他端部に有している。また、第2アーム20は、第2貫通穴21を一端部に有し、翼環の外側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第2凹部23を他端部に有している。第1アーム10及び第2アーム20の各凹部13、23内に、内側シュラウド51の内周面52及び外側シュラウド55の外周面57にそれぞれ設けられている突起部58、58を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機等の回転機械の構成部材である翼環を加工する工程において翼環を吊り上げるための吊り治具及翼環の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機械である蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機等の構成部材である翼環は、複数の工程を経て製作される。一つの工程が終了して次の工程に翼環を移動させる際には、図12に示すように、まず、翼環50の下に板木3を設置して隙間を設け、次に、この隙間にゴム板4を通して翼環50の下面を覆うように配置し、その後、ゴム板4を挟んだ状態でワイヤーロープ5を翼環50に巻いて、最後にワイヤーロープ5を絞ってクレーンのフックに接続し、翼環50を吊り上げている。
【0003】
一方、翼環を吊り上げるためのものではないが、吊り治具を介して運搬対象物を吊り上げる場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、運搬対象物を吊り上げるための吊り治具が開示されている。この吊り治具は、図13に示すように、棒状のフレーム201と、フレーム201に沿って摺動可能な一対のアーム202と、一対のアーム202の下端にそれぞれ互いに対向するように設けられた爪203と、一対のアーム202をフレーム201沿って摺動させる駆動手段204と、を備えている。
この吊り治具200の駆動手段204は、フレーム201の上面に配置され、一対のアーム202に螺合している送りねじ205と、送りねじ205の一端に接続された電動機207とから構成されている。この電動機207で送りねじ205を回転させることで一対のアーム202を互いに近づけて、一対のアーム202間に配置されている筒状の運搬対象物内に爪203を挿入し、この爪203を運搬対象物に引っ掛けて運搬対象物を吊り上げる。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、水平方向に延びるフレームと、フレームに沿って摺動可能な一対のアームと、一対のアームの下端にそれぞれ互いに対向するように設けられた板状のフランジと、一対のアームをフレームに沿って摺動させる駆動手段と、を備えた吊り治具が開示されている。
この吊り治具の駆動手段は、フレームの長手方向に伸縮自在で、伸縮により一対のアームを互いに近づけたり、離したりするシリンダを備えている。このシリンダで一対のアームを互いに近づけて、一対のフランジを運搬対象物に当接させて吊り上げる。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、フレームと、フレームに沿って摺動可能な一対のアームと、一対のアームの下端にそれぞれ互いに対向するように設けられた凸状の把持部材と、一対のアームを互いに近づけたり、離れたりする向きに移動させるための操作レバーと、を備えた吊り治具が開示されている。
この操作レバーで一対のアームを互いに近づけて、凸状の把持部材を運搬対象物の凹部に挿入したら、操作レバーを所定の位置に設けられている溝に嵌合して操作レバーを固定し、把持部材を運搬対象物に引っ掛けて運搬対象物を吊り上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−173754号公報
【特許文献2】特開昭62−36294号公報
【特許文献3】実開平6−47283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ワイヤーロープを翼環に巻いて翼環を吊り上げる方法では、翼環の下に板木を設けたり、翼環とワイヤーロープとの間にゴム板を挟んだりする手間がかかるので、吊り上げるための準備に時間がかかってしまう。
【0009】
また、特許文献1に記載の吊り治具では、爪部を筒状の運搬対象物内に挿入して引っ掛けた状態で吊り上げるため、筒状でない翼環には適用できない。
そして、特許文献2に記載の吊り治具では、板状のフランジを翼環に当接させて吊り上げるため、突起部がある翼環には適用できない。
さらに、特許文献1及び特許文献2に記載の吊り治具では、電動機やシリンダ等の駆動手段を備えることで重量が増大するため、人がこれらの吊り治具を運搬することは困難である。
【0010】
また、特許文献3に記載の吊り治具では、凸状の把持部材を運搬対象物の凹部に挿入して引っ掛けた状態で吊り上げるため、凹部を有していない翼環には適用できない。また、操作レバーを固定する溝が1カ所しか設けられていないため、一対の把持部材間の距離は常に一定となる。したがって、形状や大きさが異なる複数種類の運搬対象物を搬送する場合には対応できない。
【0011】
そこで、本発明は、形状及び大きさの異なる翼環を手間をかけずに吊り上げることが可能な軽量の吊り治具及び翼環の加工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決する本発明に係る吊り治具は、回転機械の翼環を吊り上げる吊り治具であって、
スライドガイドと、前記スライドガイドに摺動自在に取り付けられる第1摺動部を一端側に有し、前記翼環の内側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第1凹部を他端部に有する第1アームと、
前記スライドガイドに摺動自在に取り付けられる第2摺動部を一端側に有し、前記翼環の外側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第2凹部を他端側に有し、前記第1アームと対向するように設けられる第2アームと、
前記スライドガイドに沿って設けられ、前記第1アーム及び第2アームの少なくとも一方に形成されたねじ穴に螺合する送りねじと、を備え、
前記送りねじの回転によって前記第1アーム及び前記第2アームの前記少なくとも一方を前記スライドガイドに沿って移動させて、前記第1アームと前記第2アームとの間の距離を調整するようにしたことを特徴とする。
【0013】
上記吊り治具によれば、第1アームの第1凹部及び第2アームの第2凹部内に、翼環の内側シュラウドの突起部及び外側シュラウドの突起部をそれぞれ引っ掛けて翼環を吊り上げるので、従来のワイヤーロープで吊り上げる際に、翼環の下に板木をかませたり、ワイヤーロープと翼環との間にゴム板を挟んだりする手間を省くことができ、作業効率が向上する。
また、送りねじを回転させることで、第1アーム及び第2アームの移動量を調整することができるので、形状や大きさの異なる翼環を吊り上げることができる。
さらに、吊り治具は、第1アーム及び第2アームを送りねじで摺動させる機能を備えた簡素な機構とすることで、軽量化が可能となり、人が吊り治具を手で運搬することができる。
【0014】
また、前記第1摺動部は、前記第1アームの前記一端側に形成され、前記スライドガイドが貫通する貫通穴であり、
前記第2摺動部は、前記第2アームの前記一端側に形成され、前記スライドガイドが貫通する貫通穴としてもよい。
【0015】
このように、第1摺動部及び第2摺動部をそれぞれ貫通穴とすることで、第1アーム及び第2アームはスライドガイドに沿って摺動することができる。
【0016】
また、前記スライドガイドの長手方向に沿った前記送りねじの前記スライドガイドに対する移動を規制する移動規制部を更に備えることとしてもよい。
【0017】
上記移動規制部によれば、送りねじがスライドガイドに対して不動となるため、送りねじを回転させたときに、第1アーム及び第2アームの少なくとも一方をスライドガイドに沿って確実に移動させることができる。
【0018】
また、前記ねじ穴は、前記第1アーム及び前記第2アームの両方に形成され、
前記送りねじは、
前記第1アームの前記ねじ穴及び前記第2アームのねじ穴のいずれか一方に螺合する左ねじ部と、
前記第1アームの前記ねじ穴及び前記第2アームのねじ穴の他方に螺合する右ねじ部と、
前記左ねじ部と前記右ねじとの間に設けられ、前記左ねじ部及び前記右ねじ部とは直径が異なる異径部とを有し、
前記移動規制部は、一端が前記スライドガイドに固定され、他端が前記異径部に嵌合されて、前記異径部を前記スライドガイドに回転自在に支持することとしてもよい。
【0019】
このように、送りねじの左ねじ部が第1アーム及び第2アームのねじ穴のいずれか一方に螺合し、送りねじの右ねじ部が第1アーム及び第2アームのねじ穴の他方に螺合しているため、送りねじを回転させることで、第1アーム及び第2アームを互いに近づく向きへ移動させたり、離れる向きへ移動させたりすることができる。
【0020】
また、前記第1アームの前記第2アームに対向する面には、前記第1凹部と前記第1貫通穴との間の位置に前記第2アームから遠ざかる方向に窪んだ窪み部が形成されており、
前記第2アームの前記第1アームに対向する面には、前記第2凹部と前記第2貫通穴との間の位置に前記第1アームから遠ざかる方向に窪んだ窪み部が形成されていることとしてもよい。
【0021】
このように、第1アームと第2アームとの互いに対向する面にそれぞれ窪み部を設けることで、吊り上げられた翼環と第1アームとの間、及び翼環と第2アームとの間にそれぞれ隙間が形成されるため、翼環と第1アームと、及び翼環と第2アームとの干渉を防止することができる。
【0022】
また、前記送りねじの端部に穴が形成されていることとしてもよい。
【0023】
このように、送りねじの端部に穴が形成されているので、当該穴に六角棒スパナ等の工具を係合することで、送りねじを容易に回転させることができる。
【0024】
また、前記穴は、前記送りねじの端部に連結されたキャップに形成されていることとしてもよい。
【0025】
送りねじは長尺なので、当該送りねじの端部に穴を加工することが困難であるが、別体のキャップを用いることで、送りねじの端部に穴を容易に設けることができる。
また、送りねじの径よりも大きな径を有するキャップを用いることで、送りねじに直接穴を設けるよりもさらに大きなトルクをかけることが可能となる。
【0026】
また、前記スライドガイドに取り付けられたアイボルトを更に備えることとしてもよい。
【0027】
このように、アイボルトが設けられることで、フック等の吊り具の脱着が容易となる。
【0028】
また、本発明に係る翼環の加工方法は、上述した吊り治具で、前記翼環の前記内側シュラウド及び前記外側シュラウドに設けられた前記突起部をそれぞれ前記第1アームの前記第1凹部及び前記第2アームの前記第2凹部に引っ掛けた状態で翼環を吊り上げて、前記翼環を第1工作機械まで搬送することを特徴とする。
【0029】
上記翼環の加工方法によれば、翼環の内側シュラウド及び外側シュラウドに設けられている両突起部をそれぞれ第1アームの第1凹部及び第2アームの第2凹部に引っ掛けることで、翼環を吊り上げることができる。これにより、翼環を第1工作機械へ搬送することができる。
また、第1アーム及び第2アームで翼環を直接吊り上げることで、従来のワイヤーロープで吊り上げる際に、翼環の下に板木をかませたり、ワイヤーロープと翼環との間にゴム板を挟んだりする手間を省くことができ、作業効率が向上する。
さらに、送りねじを回転させることで、第1アーム及び第2アームの移動量を調整することができるので、形状や大きさの異なる翼環を吊り上げることができる。
【0030】
また、前記第1工作機械にて前記翼環の前記内側シュラウドの内周面及び前記外側シュラウドの外周面のうち何れか一方を加工するとともに、当該加工する面に設けられている前記突起部を切断し、
加工された前記翼環を、前記内側シュラウドの外周面及び前記外側シュラウドの内周面が、前記翼環の径方向に直交する方向に沿って上方に向かうにしたがって羽根側に倒れ、前記翼環の径方向に直交する方向に対して傾斜するように配し、
二股に分岐した一対の脚を有する二股部及び前記二股部の上に延設されて吊り具装着用の吊り穴が形成された被吊上げ部を有する治具本体と、前記二股部の一対の脚のうち一方の第1脚に固定される第1当接部材と、前記二股部の一対の脚のうち他方の第2脚に形成された貫通ねじ穴に螺合する送りねじと、当該送りねじの前記第1脚に近い端部に固定される第2当接部材とを備えた他の吊り治具の当該送りねじの回転によって、前記第2当接部材を移動させて、前記一対の脚間に配置された前記内側シュラウド及び前記外側シュラウドの何れか一方を前記第2当接部材で前記第1当接部材に押し付けながら前記翼環を吊り上げて、前記翼環を第2工作機械まで搬送することとしてもよい。
【0031】
上記翼環の加工方法によれば、翼環の内側シュラウドの外周面及び外側シュラウドの内周面の何れか一方に第1当接部材を当接させて翼環を吊り上げると、内側シュラウドの外周面の上端部又は外側シュラウドの内周面の上端部が、第1当接部材の上方を羽根側に超えて位置することとなる。これにより、内側シュラウドの外周面の上端部又は外側シュラウドの内周面の上端部が第1当接部材に引っ掛かった状態となることで、翼環を吊り上げることができる。したがって、内側シュラウド及び外側シュラウドに突起部が無い翼環を吊り上げて第2工作機械へ搬送することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、形状及び大きさの異なる翼環を少ない手間で吊り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る吊り治具の一部を断面で示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る吊り治具を示す側面図である。
【図3】図1のA−A´断面図である。
【図4】吊り治具で翼環を吊り上げた状態を示す正面図である。
【図5】図4のB矢視図である。
【図6】図4のC矢視図である。
【図7】吊り治具で翼環を吊り上げた状態を示す斜視図である。
【図8】反転した翼環を示す斜視図である。
【図9】他の吊り治具を示す正面図である。
【図10】他の吊り治具で翼環を吊り上げた状態を示す斜視図である。
【図11】吊り治具の他の実施例を示す正面図である。
【図12】従来のワイヤーロープで翼環を吊り上げる方法を示す図である。
【図13】従来の吊り治具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る吊り治具について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明では、圧縮機に設けられた翼環を吊り治具で吊り上げる場合について説明するが、これに限定されるものではなく、蒸気タービンやガスタービンに設けられる翼環にも適用することができる。また、静翼及び動翼の何れにも適用可能である。
なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る吊り治具の一部を断面で示す正面図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る吊り治具を示す側面図である。
図1及び図2に示すように、圧縮機の静翼用の翼環を吊り上げる吊り治具2は、互いに対向して配置された一対のアーム10、20と、一対のアーム10、20を貫通するスライドガイド6と、スライドガイド6に沿って設けられた送りねじ30と、スライドガイド6の上面に取り付けられたアイボルト8とを備えている。
【0036】
一対のアーム10、20のうち第1アーム10は、第1貫通穴11を一端部に有し、翼環の内側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第1凹部13を他端部に有している。また、第2アーム20は、第2貫通穴21を一端部に有し、翼環の外側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第2凹部23を他端部に有している。
【0037】
第1アーム10の第1凹部13及び第2アーム20の第2凹部23は共に貫通穴である。なお、第1凹部13及び第2凹部23は貫通穴に限定されるものではなく、窪みでもよい。
【0038】
第1アーム10の第2アーム20に対向する面14には、第1凹部13と第1貫通穴11との間の位置に第2アーム20から遠ざかる方向に窪んだ窪み部15が形成されている。また、第2アーム20にも、第1アーム10と同様に、第2アーム20の第1アーム10に対向する面24には、第2凹部23と第2貫通穴21との間の位置に第1アーム10から遠ざかる方向に窪んだ窪み部25が形成されている。
【0039】
スライドガイド6は、第1アーム10の第1貫通穴11及び第2アーム20の第2貫通穴21に挿通されている。そして、第1アーム10及び第2アーム20はスライドガイド6に沿って摺動自在である。
【0040】
スライドガイド6は、角柱形状を有し、アイボルト8を螺合するためのねじ穴61が設けられている。
【0041】
送りねじ30は、第1アーム10及び第2アーム20にそれぞれ形成された第1ねじ穴12及び第2ねじ穴22に螺合している。この送りねじ30は、第1アーム10の第1ねじ穴12に螺合する左ねじ部31と、第2アーム20の第2ねじ穴22に螺合する右ねじ部33と、左ねじ部31と右ねじとの間に設けられ、左ねじ部31及び右ねじ部33よりも直径が小さい異径部32とを有している。
【0042】
送りねじ30の回転によって第1アーム10及び第2アーム20をスライドガイド6に沿って摺動させて、第1アーム10と第2アーム20との間の距離を調整することができる。具体的には、第2アーム20側から第1アーム10を向かって見た状態で送りねじ30を反時計回りに回転させると、第1アーム10及び第2アーム20は互いに近づく向きへ移動する。一方、送りねじ30を時計回りに回転させると、第1アーム10及び第2アーム20は互いに離れる向きへ移動する。
【0043】
また、送りねじ30の両端には、穴付キャップ34がピン36にてそれぞれ連結されている。なお、送りねじ30の各端部に穴を形成してもよい。
【0044】
スライドガイド6には、送りねじ30の異径部32に嵌合された移動規制部40が取り付けられている。
【0045】
図3は、図1のA−A´断面図である。図3に示すように、移動規制部40は凹部42を有し、かつ、移動規制部40の上面には円盤状の突起部41が設けられている。この突起部41がスライドガイド6に形成された位置決め用穴62に嵌合するとともに、スライドガイド6に形成された座ぐり穴63(図1参照)内に設けられたボルト64により、移動規制部40はスライドガイド6に固定されている。
移動規制部40の凹部42内に送りねじ30の異径部32が嵌めこまれており、移動規制部40はこの異径部32をスライドガイド6に回転自在に支持している。この移動規制部40によって、スライドガイド6の長手方向に沿った送りねじ30のスライドガイド6に対する移動を規制することができる。
【0046】
図4は、一対のアーム10、20が翼環に当接した状態を示す正面図である。また、図5及び図6は、それぞれ図4のB矢視図及びC矢視図である。
図4〜図6に示すように、一対のアーム10、20を翼環50に当接させる際は、送りねじ30の第2アーム20側の端部に接続されているキャップ34の穴に六角ボルト等の工具を差し込んで、送りねじ30を反時計回りに回転させることによって、一対のアーム10、20を互いに近づく向きに移動させる。そして、第1アーム10及び第2アーム20の各凹部13、23内に、内側シュラウド51の内周面52及び外側シュラウド55の外周面57にそれぞれ設けられている突起部58、58を挿入する。このとき、各シュラウド51、55に設けられている突起部58、58の高さはそれぞれ異なるので、両突起部58、58が、各凹部13、23内に挿入されればよい。
なお、外側シュラウド55及び内側シュラウド51にそれぞれ設けられている突起部58、58のうち、低い位置に設けられている外側シュラウド55の突起部58が、第2アーム20の第2凹部23の内周下面26に接触するように第2アーム20を配してもよい。このとき、高い位置に設けられている内側シュラウド51の突起部58は第1アーム10の第1凹部13の内周下面16に接触していなくても第1凹部13内に挿入されていればよい。
なお、各シュラウド51、55に設けられている突起部58、58の高さ位置が同じ場合は、両突起部58、58が、それぞれ第1凹部13の内周下面16及び第2凹部23の内周下面26に接触するように吊り治具2の高さを調整することが望ましい。
【0047】
そして、第1アーム10及び第2アーム20をそれぞれ内側シュラウド51の内周面52及び外側シュラウド55の外周面57に当接させる。
【0048】
一対のアーム10、20の互いに対向する面14、24にはそれぞれ窪み部15、25が形成されているので、内側シュラウド51の内周面52及び外側シュラウド55の外周面57はそれぞれ各凹部13、23の周辺部分にのみ当接している。したがって、第1アーム10と内側シュラウド51の内周面52との間、及び第2アーム20と外側シュラウド55の外周面57との間にはそれぞれ隙間Sが形成される。
【0049】
そして、吊り治具2を上昇させると、各シュラウド51、55に設けられている突起部58、58が、それぞれ第1凹部13及び第2凹部に引っ掛かることで翼環50を吊り上げることができる。
【0050】
上述した構成からなる吊り治具2は、送りねじ30で一対のアーム10、20を移動させるという簡素な機構のため、軽量化が可能であり、人が手で持ち運ぶことができる。
【0051】
次に、吊り治具2を使って、翼環50を加工する工作機械へ翼環50を搬送する方法について説明する。
【0052】
まず、作業員が、翼環50の載置されている場所に複数の吊り治具2を持って移動する。なお、吊り治具2をクレーン等の揚重装置に吊った状態で吊り治具2を搬送してもよい。
次に、分割された円弧状の翼環50の両端部にそれぞれ吊り治具2を取り付ける。
【0053】
図7は、吊り治具2で翼環50を吊り上げた状態を示す斜視図である。
図7に示すように、吊り治具2の取付けは、上述したように、送りねじ30を回転させることによって、一対のアーム10、20を互いに近づく向きに移動させて、内側シュラウド51の内周面52及び外側シュラウド55の外周面57にそれぞれ設けられている突起部58、58を、第1アーム10及び第2アーム20の各凹部13、23内にそれぞれ挿入し、第1アーム10及び第2アーム20をそれぞれ内側シュラウド51の内周面52及び外側シュラウド55の外周面57に当接させる。
【0054】
次に、クレーン等の揚重装置のフック70をアイボルト8に掛けて、翼環50の内側シュラウド51及び外側シュラウド55に設けられた突起部58、58をそれぞれ第1アーム10の第1凹部13及び第2アーム20の第2凹部23に引っ掛けた状態で翼環50を吊り上げる。
【0055】
吊り上げた状態で翼環50が安定していることを確認したら、翼環50を第1工作機械まで搬送する。
第1の工作機械では、内側シュラウド51の内周面52を加工するとともに、この内周面52に設けられている突起部58を切断する。
【0056】
図8は、反転した翼環50を示す斜視図である。
図8に示すように、内周面52の加工が終了したら、翼環50を反転させる。
反転した翼環50の内側シュラウド51の外周面53及び外側シュラウド55の内周面56は、翼環50の径方向に直交する方向に沿って上方に向かうにしたがって内側シュラウド51と外側シュラウド55との間に設けられている羽根54側に倒れ、翼環50の径方向に直交する方向に対して傾斜している。なお、以下の説明では、上方に向かうにしたがって羽根54側に倒れている内側シュラウド51の外周面53側の上端部を傾斜端部59という。
【0057】
次に、他の吊り治具を用いて翼環50の内側シュラウド51を把持して吊り上げる。以下では、まず、他の吊り治具の構造を説明し、その後、他の吊り治具を用いて翼環50を吊り上げる方法について説明する。
【0058】
図9は、他の吊り治具を示す正面図である。
図9に示すように、他の吊り治具100は、二股に分岐した一対の脚111を有する治具本体102と、一対の脚111のうち一方の第1脚112に固定される第1当接部材104と、一対の脚111のうち他方の第2脚113に形成された貫通ねじ穴114に螺合する送りねじ108と、当該送りねじ108の第1脚112に近い端部に固定される第2当接部材106とを備えている。
【0059】
治具本体102は、二股に分岐した一対の脚111を有する二股部110と、当該二股部110の上に延設されて吊り具装着用の吊り穴121が形成された被吊上げ部120とから構成されている。
【0060】
被吊上げ部120は、第2脚113側から第1脚112側に向かう方向に沿って第1脚112から突出するように延在している。
この被吊上げ部120に形成されている吊り穴121は、第1脚112から突出した部分及び二股部110の上方部分に複数形成されている。
【0061】
第1脚112に固定されている第1当接部材104は、第1脚112に形成されたねじ穴115に螺合している第1当ボルトである。この第1当ボルトの頭部は、第1脚112の第2脚113に対向する面116側に設けられている。
【0062】
また、第2当接部材106は、送りねじ108の軸方向に沿って送りねじ108に形成されたねじ穴109に螺合して送りねじ108に固定される第2当ボルトである。第2当接部材106と第1当接部材104とは互いに対向するように配置されている。
【0063】
そして、送りねじ108の第1脚112と反対側の端部には、送りねじ108を回転させるためのハンドル107が設けられている。このハンドル107で送りねじ108を回転させることで、第2当接部材106を送りねじ108の軸方向に沿って移動させて、第2当接部材106と第1当接部材104との間の距離を調整することができる。
【0064】
さらに、一対の脚111の互いに対向する面116、117側で、かつ、一対の脚111のそれぞれの付け根部118、119に逃げ溝122が形成されている。そして、この逃げ溝122は、各脚112、113の付け根に沿うように形成されている。
【0065】
図10は、他の吊り治具100で翼環50を把持する状態を示す斜視図である。
図10に示すように、上述した構成からなる他の吊り治具100で翼環50の内側シュラウド51を把持する際は、内側シュラウド51と外側シュラウド55との間に第1脚112を差し込み、続いて、ハンドル107で送りねじ108を時計回りに回転させることによって、第2当接部材106を第1当接部材104に向かって移動させる。そして、第1当接部材104及び第2当接部材106をそれぞれ内側シュラウド51の外周面53及び内周面52に当接させて翼環50を把持する。
【0066】
このとき、上述したように、第1脚112の付け根部118に逃げ溝122が形成されているため、内側シュラウド51と二股部110とは干渉しない。
【0067】
上述した構成からなる他の吊り治具100は、翼環50の内側シュラウド51及び外側シュラウド55のいずれか一方を把持する(詳細は後述する)機能を有していればよいため、軽量化が可能であり、人が手で持ち運ぶことができる。
【0068】
次に、他の吊り治具100を用いて翼環50を吊り上げる方法について説明する。
【0069】
まず、作業員が、翼環50の載置されている場所に複数の他の吊り治具100を持って移動する。なお、他の吊り治具100をクレーン等に吊った状態で搬送してもよい。
【0070】
次に、図10に示すように、円弧状の内側シュラウド51の両端部にそれぞれ他の吊り治具100を取り付ける。
他の吊り治具100の取付けは、上述したように、ハンドル107を回転させることによって、.第1当接部材104及び第2当接部材106をそれぞれ内側シュラウド51の外周面53及び内周面52に当接させて翼環50を把持する。
【0071】
また、治具本体102の吊り穴121にシャックル124を取り付ける。このとき、翼環50及び他の吊り治具100の重心の鉛直方向直上に位置する吊り穴121を選択する。すなわち、吊り上げる翼環50の形状等に応じてシャックル124を取り付ける吊り穴121を選択する。
【0072】
次に、クレーン等の揚重装置のフック70をシャックル124に掛けて、他の吊り治具100及び翼環50を吊り上げる。このとき、翼環50及び他の吊り治具100の重心の鉛直方向直上で吊っているため、翼環50は水平に吊られる。吊り上げた状態で翼環50が安定していることを確認したら、翼環50を第2工作機械まで搬送する。
【0073】
なお、他の吊り治具100で翼環50の内側シュラウド51を把持して翼環50を吊り上げる場合について説明したが、内側シュラウド51に限定されるものではなく、外側シュラウド55を把持して吊り上げる場合にも適用可能である。
【0074】
上述したように、本実施形態における吊り治具2によれば、送りねじ30を回転させて、スライドガイド6に沿って第1アーム10及び第2アーム20を互いに近づく方向へ移動させることで、内側シュラウド51及び外側シュラウド55に設けられている各突起部58、58をそれぞれ第1凹部13及び第2凹部23に引っ掛けて、翼環50を吊り上げることができる。
【0075】
送りねじ30の左ねじ部31が第1アーム10の第1ねじ穴12に螺合し、送りねじ30の右ねじ部33が第2アーム20の第2ねじ穴22に螺合しているため、送りねじ30を回転させることで、第1アーム10及び第2アーム20を互いに近づく向きへ移動させたり、離れる向きへ移動させたりすることができる。
【0076】
また、送りねじ30は、移動規制部40を有しているので、送りねじ30を回転させたときに、送りねじ30がスライドガイド6に沿って移動することなく、第1アーム10及び第2アーム20をスライドガイド6に沿って確実に移動させることができる。
【0077】
そして、吊り治具2で翼環50を直接吊り上げることで、従来のワイヤーロープで吊り上げる際に、翼環50の下に板木をかませたり、ワイヤーロープと翼環50との間にゴム板を挟んだりする手間を省くことができ、作業効率が向上する。
【0078】
さらに、一対のアーム10、20の互いに対向する面14、24には、それぞれ窪み部15、25が設けられていることで、吊り上げられた翼環50と各アーム10、20との間に隙間Sが形成されるので、翼環50と各アーム10、20との干渉を防止することができる。
【0079】
送りねじ30の端部に連結されたキャップ34に穴が形成されているので、当該穴に六角棒スパナ等の工具を係合することで、送りねじ30を容易に回転させることができる。
また、送りねじ30の径よりも大きな径を有するキャップ34を用いることで、送りねじ30に直接穴を設けるよりもさらに大きなトルクをかけることが可能となる。
また、送りねじ30は長尺なので、送りねじ30の端部に穴を加工することが困難であるが、別体のキャップ34を用いることで、送りねじ30の端部に穴を容易に設けることができる。
【0080】
そして、スライドガイド6の上面にアイボルト8が設けられているので、フック70の脱着が容易である。
さらに、翼環50の加工方法によれば、翼環50の内側シュラウド51及び外側シュラウド55に設けられている両突起部58、58をそれぞれ吊り治具2の第1凹部13及び第2凹部23に引っ掛けることで翼環50を吊り上げて、翼環50を第1工作機械まで搬送することができる。
【0081】
また、第1工作機械で加工されて内側シュラウド51の突起部58が無くなった翼環50を、他の吊り治具100で内側シュラウド51を把持することで翼環50を吊り上げることができる。これにより、第1工作機械によって加工された翼環50を第2工作機械へ搬送することができる。
【0082】
次に、吊り治具の他の実施例について説明する。以下の説明において、上記の実施例に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0083】
図11は、吊り治具の他の実施例を示す正面図である。
図11に示すように、吊り治具80は、アイボルト8と、スライドガイド6と、一対のアーム82と、送りねじ90とを備えている。
【0084】
一対のアーム82のうち第1アーム84は、スライドガイド6の端部に溶接等により固定されている。また、第1アーム84の窪み部15には、送りねじ90の端部を支持するための第3凹部86が形成されている。そして、この第3凹部86内には送りねじ30の端部に係合される移動規制部88が設けられている。
【0085】
送りねじ90は、第2アーム20の第2ねじ穴22に螺合する右ねじ部92と、ねじが形成されていない円柱部94とを有している。ねじが形成されていない円柱部94は、第3凹部86内に嵌合されて送りねじ90の軸方向への移動を制限する移動規制部88に回転自在に支持されている。本実施例では、移動規制部88として円すいころ軸受を用いた。一方、送りねじ90の右ねじ部92は、第2アーム20に形成された第2ねじ穴22に螺合している。
【0086】
送りねじ90の回転によって第2アーム20を第1アーム84側へ向かってスライドガイド6に沿って摺動させて、第1アーム84と第2アーム20との間の距離を調整することができる。具体的には、送りねじ90を反時計回りに回転させると、第2アーム20は第1アーム84に近づく向きへ移動する。一方、送りねじ90を時計回りに回転させると、第2アーム20は第1アーム84から離れる向きへ移動する。
吊り治具80によれば、送りねじ90の円柱部94が、移動規制部88に支持されているため、送りねじ90を回転させたときに、送りねじ90がスライドガイド6に沿って移動することなく、第2アーム20をスライドガイド6に沿って確実に移動させることができる。
【符号の説明】
【0087】
2 吊り治具
3 板木
4 ゴム板
5 ワイヤーロープ
6 スライドガイド
8 アイボルト
10 第1アーム
11 第1貫通穴
12 第1ねじ穴
13 第1凹部
14 面
15 窪み部
16 第1凹部の内周下面
20 第2アーム
21 第2貫通穴
22 第2ねじ穴
23 第2凹部
24 面
25 窪み部
26 第2凹部の内周下面
30 送りねじ
31 左ねじ部
32 異径部
33 右ねじ部
34 キャップ
36 ピン
40 移動規制部
41 突起部
42 凹部
50 翼環
51 内側シュラウド
52 内周面
53 外周面
54 羽根
55 外側シュラウド
56 内周面
57 外周面
58 突起部
59 傾斜端部
61 ねじ穴
62 位置決め用穴
63 座ぐり穴
64 ボルト
70 フック
80 吊り治具
82 一対のアーム
84 第1アーム
86 第3凹部
88 移動規制部
90 送りねじ
92 右ねじ部
94 円柱部
100 他の吊り治具
102 治具本体
104 第1当接部材
106 第2当接部材
107 ハンドル
108 送りねじ
109 ねじ穴
110 二股部
111 一対の脚
112 第1脚
113 第2脚
114 貫通ねじ穴
115 ねじ穴
116 面
117 面
118 付け根部
119 付け根部
120 被吊上げ部
121 吊り穴
122 逃げ溝
124 シャックル
200 吊り治具
201 フレーム
202 一対のアーム
203 爪
204 駆動手段
205 送りねじ
207 電動機
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の翼環を吊り上げる吊り治具であって、
スライドガイドと、
前記スライドガイドに摺動自在に取り付けられる第1摺動部を一端側に有し、前記翼環の内側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第1凹部を他端部に有する第1アームと、
前記スライドガイドに摺動自在に取り付けられる第2摺動部を一端側に有し、前記翼環の外側シュラウドに設けられた突起部が引っ掛かる第2凹部を他端側に有し、前記第1アームと対向するように設けられる第2アームと、
前記スライドガイドに沿って設けられ、前記第1アーム及び第2アームの少なくとも一方に形成されたねじ穴に螺合する送りねじと、を備え、
前記送りねじの回転によって前記第1アーム及び前記第2アームの前記少なくとも一方を前記スライドガイドに沿って移動させて、前記第1アームと前記第2アームとの間の距離を調整するようにしたことを特徴とする吊り治具。
【請求項2】
前記第1摺動部は、前記第1アームの前記一端側に形成され、前記スライドガイドが貫通する貫通穴であり、
前記第2摺動部は、前記第2アームの前記一端側に形成され、前記スライドガイドが貫通する貫通穴であることを特徴とする請求項1に記載の吊り治具。
【請求項3】
前記スライドガイドの長手方向に沿った前記送りねじの前記スライドガイドに対する移動を規制する移動規制部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の吊り治具。
【請求項4】
前記ねじ穴は、前記第1アーム及び前記第2アームの両方に形成され、
前記送りねじは、
前記第1アームの前記ねじ穴及び前記第2アームのねじ穴のいずれか一方に螺合する左ねじ部と、
前記第1アームの前記ねじ穴及び前記第2アームのねじ穴の他方に螺合する右ねじ部と、
前記左ねじ部と前記右ねじとの間に設けられ、前記左ねじ部及び前記右ねじ部とは直径が異なる異径部とを有し、
前記移動規制部は、一端が前記スライドガイドに固定され、他端が前記異径部に嵌合されて、前記異径部を前記スライドガイドに回転自在に支持することを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の吊り治具。
【請求項5】
前記第1アームの前記第2アームに対向する面には、前記第1凹部と前記第1貫通穴との間の位置に前記第2アームから遠ざかる方向に窪んだ窪み部が形成されており、
前記第2アームの前記第1アームに対向する面には、前記第2凹部と前記第2貫通穴との間の位置に前記第1アームから遠ざかる方向に窪んだ窪み部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載の吊り治具。
【請求項6】
前記送りねじの端部に穴が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうち何れか一項に記載の吊り治具。
【請求項7】
前記穴は、前記送りねじの端部に連結されたキャップに形成されていることを特徴とする請求項6に記載の吊り治具。
【請求項8】
前記スライドガイドに取り付けられたアイボルトを更に備えることを特徴とする請求項1〜7のうち何れか一項に記載の吊り治具。
【請求項9】
請求項1〜8のうち何れか一項に記載の吊り治具で、前記翼環の前記内側シュラウド及び前記外側シュラウドに設けられた前記突起部をそれぞれ前記第1アームの前記第1凹部及び前記第2アームの前記第2凹部に引っ掛けた状態で翼環を吊り上げて、前記翼環を第1工作機械まで搬送することを特徴とする翼環の加工方法。
【請求項10】
前記第1工作機械にて前記翼環の前記内側シュラウドの内周面及び前記外側シュラウドの外周面のうち何れか一方を加工するとともに、当該加工する面に設けられている前記突起部を切断し、
加工された前記翼環を、前記内側シュラウドの外周面及び前記外側シュラウドの内周面が、前記翼環の径方向に直交する方向に沿って上方に向かうにしたがって羽根側に倒れ、前記翼環の径方向に直交する方向に対して傾斜するように配し、
二股に分岐した一対の脚を有する二股部及び前記二股部の上に延設されて吊り具装着用の吊り穴が形成された被吊上げ部を有する治具本体と、前記二股部の一対の脚のうち一方の第1脚に固定される第1当接部材と、前記二股部の一対の脚のうち他方の第2脚に形成された貫通ねじ穴に螺合する送りねじと、当該送りねじの前記第1脚に近い端部に固定される第2当接部材とを備えた他の吊り治具の当該送りねじの回転によって、前記第2当接部材を移動させて、前記一対の脚間に配置された前記内側シュラウド及び前記外側シュラウドの何れか一方を前記第2当接部材で前記第1当接部材に押し付けながら前記翼環を吊り上げて、前記翼環を第2工作機械まで搬送することを特徴とする請求項9に記載の翼環の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−246123(P2012−246123A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121419(P2011−121419)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】