説明

同一の波長の組み合わせを用いたアップリンクおよびダウンリンクの信号伝達

本発明は、光直交周波数分割多重(OOFDM)トランシーバを用いた信号送信の分野に関し、同じ組み合わせの波長をアップリンクおよびダウンリンクの信号送信に用いる、という用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光直交周波数分割多重(OOFDM:Optical Orthogonal Frequency Division Multiplex)トランシーバを用いた信号送信の分野に関し、波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON:Wavelength Division Multiplex − Passive Optical Network)において同じ波長の組み合わせを用いて行うアップリンクおよびダウンリンクの信号送信に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドユーザへのブロードバンドサービスの提供について、WDM−PONは、いくつかの優れた特徴を有することから、信頼のできる解決法と見なされてきた。そうした特徴とは、例えば、広い帯域幅が保証された高品質データサービス、高い光分岐率(split ratio)、拡張された送信到達範囲(transmission reach)、集約されたバックホール回線、単純化されたネットワークアーキテクチャ、エンドユーザプライバシ保護の拡張がある。この点については、例えば、非特許文献1または非特許文献2に記載されている。
【0003】
光直交周波数分割多重(OOFDM)技術を使用すればマルチモードファイバ(MMF:Multi Mode Fibre)送信リンクにおける光モード分散効果を緩和できることは公知である。これについては、例えば、非特許文献3に記載されている。これは更に、単一モードファイバ(SMF)型長距離送信システムにおける波長分散補償のために用いることができる点でも効果的である。そうしたシステムについては、例えば、以下の文献に記載されている。すなわち、非特許文献4または非特許文献5である。
【0004】
それ以外に、例えば以下のような効果をもたらす。すなわち、チャネルスペクトル特性の効率的利用、成熟したデジタル信号処理(DSP:Digital Signal Processing)の活用によるコストの効率化、周波数領域および時間領域の両方におけるハイブリッド帯域割り当ての動的実施、そして、光ネットワークの複雑性を大幅に軽減できること、である。
OOFDMの送信性能については、ロングホールシステムを含む全ての光ネットワークシナリオに関する研究が行われ、報告がなされている。例えば、非特許文献6や非特許文献7に記載されたものが挙げられる。また、非特許文献8や非特許文献9などには大都市圏ネットワークが記載されている。あるいは、非特許文献10または非特許文献11などには、ローカルエリアネットワークが記載されている。
【0005】
従来技術の既存システムは全て、オフライン信号処理生成波形を用いた任意波形発生器(AWG:Arbitrary Waveform Generator)からのOOFDM信号の送信が基礎となっている。受信機では、送信されたOOFDM信号がデジタル記憶オシロスコープ(DSO:Digital Storage Oscilloscope)でキャプチャされ、キャプチャされたOOFDMシンボルをオフライン処理して受信データが復調される。こうしたオフライン信号処理の手法では、リアルタイム送信を保証するのに必要な実際のDSPハードウェアの精度および速度により課せられる限界は考慮されない。
【0006】
また、適応変調型光OFDM(AMOOFDM:Adaptively Modulated Optical Orthogonal Frequency Division Multiplex)として知られる信号変調技術を導入することで改善され、以下の効果をもたらすものとなっている。
− システムとしての柔軟性、ロバスト性、送信性能、および互換性;
− 伝送路のスペクトル特性の有効利用、不完全なシステムおよびネットワーク要素の適用的利用、個々のサブキャリヤ電力およびOFDMシンボル内のビットが周波数領域で必要に応じて変更可能であること;
− 既存のマルチモードファイバが使用できること;
− 設置および保守のコストが低いこと。
【0007】
これらの点については、例えば、非特許文献12または非特許文献13に記載され、議論されている。また、それ以外の特性として、以下のものがある。
− アナログデジタル変換(ADC)に関連する信号量子化およびクリッピング効果の影響、および、最適ADCパラメータの決定;
− 送信性能の最大化。
【0008】
これらについては、非特許文献14に記載されている。
また、いくつかの文献は、ダウンリンクおよびアップリンク送信に同じ波長を用いるシステムを開示している。例えば、特許文献1は、ダウンリンクおよびアップリンクの送信に2つの別個のファイバを用いるシステムを開示しているが、これはOFDM信号送信には関連がない。それ以外の文献としては以下のものがある。非特許文献15には、特殊な設計の反射型半導体光増幅器(RSOA:Reflective Semiconductor Optical Amplifier)を用いてダウンリンク信号とアップリンク信号との間の漏話を軽減することが開示されている。ただし、これが有効なのは、信号ビットレートが比較的低い場合のみである。非特許文献16には、SOAを用いてダウンリンク信号を浄化し(clean)、アップリンク信号を変調することが開示されているが、これはOFDM信号送信用に設計されたものではない。非特許文献17には、ダウンリンク、アップリンクの送信に2つの別個のファイバを用いるシステムが開示されており、さらに、低信号速度での送信についても述べられている。非特許文献18には、アップリンク送信専用のシステムが開示されている。これはまた、WDM/TDM PONアーキテクチャでも用いられる。非特許文献19には単一方向送信が開示されている。ここではRSOAは用いられず、アレイ導波路回析格子(AWG)が用いられる。
【0009】
これらの文献はいずれも、ダウンリンク信号とアップリンク信号との間の漏話、そして、後方レイリー散乱の影響という2つの重要な問題に触れていない。これらの2つの要因によって、達成可能な信号送信性能の上限が決定される。例えば、これら2つによる影響を補償しなければ、達成されるアップリンク信号ビットレートの上限は、25kmの距離で7Gb/s未満となる。
【0010】
ダウンリンクおよびアップリンク信号伝達に同じ組み合わせの波長および/またはファイバを用いたシステムにおける、システム性能の更なる向上のために著しく発達した技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0093360号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Grobe and Elbers (K. Grobe and J. -P. Elbers, in IEEE Commun. Mag. vol. 46, no.1 , pp. 26-34, 2008)
【非特許文献2】Shumate (P. W. Shumate in J. Lightwave Technol.,vol 26, no.9, pp.1093-1103, 2008)
【非特許文献3】Jolley et al. (N.E. Jolley, H. Kee, R. Richard, J. Tang, K. Cordina, presented at the National Fibre Optical Fibre Engineers Conf., Annaheim, CA, March 11, 2005, Paper OFP3)
【非特許文献4】Lowery et al. (A.J. Lowery, L. Du, J. Armstrong, presented at the National Fibre Optical Fibre Engineers Conf., Annaheim, CA, March 5, 2006, paper PDP39)
【非特許文献5】Djordjevic and Vasic (I.B. Djordjevic and B. Vasic, in Opt. express, 14, no9, 37673775, 2006)
【非特許文献6】Masuda et al.( H. Masuda, E. Yamazaki, A. Sano, T. Yoshimatsu, T. Kobayashi, E. Yoshida, Y. Miyamoto, S. Matsuoka, Y. Takatori, M. Mizoguchi, K. Okada, K. Hagimoto, T. Yamada, and S. Kamei, "13.5-Tb/s (1 35x1 1 1 -Gb/s/ch) no-guard-interval coherent OFDM transmission over 6248km using SNR maximized second-order DRA in the extended L-band," Optical Fibre Communication/National Fibre Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC), (OSA, 2009), Paper PDPB5)
【非特許文献7】Schmidt et al. (B.J.C. Schmidt, Z. Zan, L.B. Du, and A.J. Lowery, "100 Gbit/s transmission using single-band direct-detection optical OFDM," Optical Fibre Communication/National Fibre Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC), (OSA, 2009), Paper PDPC3)
【非特許文献8】Duong et al. (T. Duong, N. Genay, P. Chanclou, B. Charbonnier, A. Pizzinat, and R. Brenot, "Experimental demonstration of 1 0 Gbit/s for upstream transmission by remote modulation of 1 GHz RSOA using Adaptively Modulated Optical OFDM for WDM-PON single fiber architecture," European Conference on Optical Communication (ECOC), (Brussels, Belgium, 2008), PD paper Th.3. F.1 )
【非特許文献9】Chow et al. (C.-W. Chow, C.-H. Yeh, C.-H. Wang, F.-Y. Shih, C.-L. Pan and S. Chi, "WDM extended reach passive optical networks using OFDM-QAM," Optics Express, 16, 12096-12101, July 2008)
【非特許文献10】Qian et al. (D. Qian, N. Cvijetic, J. Hu, and T. Wang, "108 Gb/s OFDMA-PON with polarization multiplexing and direct-detection," Optical Fibre Communication/National Fibre Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC), (OSA, 2009), Paper PDPD5)
【非特許文献11】Yang et al. (H. Yang, S.C.J. Lee, E. Tangdiongga, F. Breyer, S. Randel, and A.M.J. Koonen, "40-Gb/s transmission over 100m graded-index plastic optical fibre based on discrete multitone modulation," Optical Fibre Communication/National Fibre Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC), (OSA, 2009), Paper PDPD8)
【非特許文献12】Tang et al. (J. Tang, P.M. Lane and K.A. Shore in IEEE Photon. Technol. Lett, 18, no1, 205-207, 2006 and in J. Lightw. Technol., 24, no1, 429-441, 2006)
【非特許文献13】Tang and Shore (J. Tang and K.A. Shore, in J. Lightw. Technol., 24, no6, 2318-2327, 2006)
【非特許文献14】Tang and Shore (J. Tang and K.A. Shore, in J. Lightw. Technol., 25, no3, 787-798, 2007)
【非特許文献15】Huang et al. (Yin-Hsun Huang; Gong-Cheng Lin; Hai-Lin Wang; Yi-Hung Lin; Sun-Chien Ko; Jy-Wang Liaw; Gong-Ru Lin;, "Weak-resonant-cavity FPLD based down-stream amplitude squeezer for injection-locking RSOA transmitter in DWDM-PON," Lasers and Electro-Optics, 2009 and 2009 Conference on Quantum electronics and Laser Science Conference. CLEO/QELS 2009. Conference on, vol., no., pp.1-2, 2-4 June 2009)
【非特許文献16】Takesue et al. (Takesue, H.; Sugie, T.;, "Wavelength channel data rewrite using saturated SOA modulator for WDM networks with centralized light sources," Lightwave Technology, Journal of, vol.21 , no.11 , pp. 2546- 2556, Nov. 2003)
【非特許文献17】Huang et al. (Ming-Fang Huang; Jianjun Yu; Hung-Chang Chien; Chowdhury, A.; Chen, J.; Sien Chi; Gee-Kung Chang;, "A Simple WDM-PON Architecture to Simultaneously Provide Triple-play Services by Using One Single Modulator," Optical Fiber communication/National Fiber Optic Engineers Conference, 2008. OFC/NFOEC 2008. Conference on, vol., no., pp.1-3, 24-28 Feb. 2008)
【非特許文献18】Cho et al. (Cho, Seung-Hyun; Lee, Wooram; Park, Mahn Yong; Lee, Jiehyun; Kim, Chulyoung; Jeong, Geon; Kim, Byoungwhi;, "Demonstration of Burst Amplified Uplink for RSOA-based WDM/TDM Hybrid PON Systems Using SOA as a Multi-Channel Preamplifier," Optical Communications, 2006. ECOC 2006. European Conference on, vol., no., pp.1-2, 24-28 Sept. 2006)
【非特許文献19】Bock et al. (Bock, C ; Prat, J.; Walker, S.D.;, "Hybrid WDM/TDM PON using the AWG FSR and featuring centralized light generation and dynamic bandwidth allocation," Lightwave Technology, Journal of, vol.23, no.12, pp.3981-3988, Dec. 2005)
【非特許文献20】Cho et al. (K. Y. Cho, Y. Takushima, and Y. C. Chung, in IEEE Photon. Technol. Lett. vol.20, no.18, pp.1533-1535, 2008) 、または、 文献Omella et al. (M. Omella, V. Polo, J. Lazaro, B. Schrenk and J. Prat, presented at the European Conference on Optical Communication (ECOC), Brussels, Belgium, 2008, PD Paper Tu.3.E.4)
【非特許文献21】Yeh et al. (C. H. Yeh, C.W. Chow, C. H. Wang, F. Y. Shih, H. C. Chien, and S. Chi, in Opt. Express., vol.16, no.16, pp.12296-12301, 2008)
【非特許文献22】Lee et al. (W. Lee, M. H. Park, S. H. Chao, J. Lee, C. Kim, G. Jeong, and B. W. Kim, in IEEE Photon. Technol. Lett. vol.17, no.11, pp. 2460-2462, 2005) 、または、文献Omella et al. (M. Omella, I. Papagiannakis, B. Schrenk, D. Klonidis, J. A. Lazaro, A. N. Birbas, J. Kikidis, J. Prat, and I. Tomkos, in Opt. Express., vol.17, no.7, pp.5008-5013, 2009)
【非特許文献23】Duong et al. (T. Duong, N. Genay, P. Chanclou, B. Charbonnier, A. Pizzinat, and R. Brenot, presented at the European Conference on Optical Communication (ECOC), Brussels, Belgium, 2008, PD Paper Th.3.F.1 )
【非特許文献24】Guo et al. (L. Q. Guo, and M. J. Connelly, in Optics Communications, vol.281, no.17 pp.4470-4473, 2008)、または、文献Arellano and Prat (C. Arellano, and J. Prat, presented at the International Conference on Transparent Optical Network (ICTON), 2005. Paper We.A1.4)
【非特許文献25】J. L. Wei, A. Hamie, R. P. Giddings, and J. M. Tang, "Semiconductor optical amplifier-enabled intensity modulation of adaptively modulated optical OFDM signals in SMF-based IMDD systems," J. Lightwave Technol., vol.27, no.16, pp.3679-3689, 2009)
【非特許文献26】Wei et al. (J. L. Wei, X. L. Yang, R.P. Giddings and J. M. Tang, in Opt. Express., vol.17, no.11, pp.9012-9027, 2009)
【非特許文献27】Giddings et al. (R.P. Giddings, X.Q. Jin and J.M. Tang in Opt. Express, 17, 2009)
【非特許文献28】Wei et al. (J.L. Wei, X.Y. Yang, R. P. Giddings and J.M. Tang in Opt. Express, 17, 9012-9027, 2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、光ネットワークアーキテクチャの変更なしに、入出力再構成可能性の向上や動的帯域割り当てが確実に実現できるようにすること、を目的とする。
また、本発明は、WDM−PONにおいて、同じ組み合わせの波長を用いてダウンリンクおよびアップリンクの信号送信を行うこと、を目的とする。
また、本発明は、WDM−PONにおいて、同じファイバを用いてダウンリンクおよびアップリンクの信号送信を行うこと、を目的とする。
【0014】
また、本発明は、少なくともCバンドにおいて、広い波長窓を有するカラーレス(colourless)の光トランシーバを提供することを目的とする。
更に、本発明は、追加のハードウェアなしに、伝達路におけるスペクトル変形の事前補償を行えるようにすることを目的とする。
また、本発明は、ダウンリンク、アップリンク送信間の漏話を軽減することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、後方レイリー散乱の影響を軽減することを目的とする。
また、本発明は、反射型半導体光増幅器(RSOA)の動作条件を最適化することで光ネットワークユニットにおけるトランシーバの構造を単純化することを目的とする。
また、本発明は、RSOAの設計を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、上記の目的は、独立請求項において定義された構成によって達成される。
【発明の効果】
【0017】
また、好適な実施の形態を従属請求項において定義してある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の受動光ネットワークを示す図である。
【図2】反射型半導体光増幅器(RSOA)を示す概略図である。
【図3】ファイバ分散がある場合とファイバ分散がない場合とでの、半導体光増幅器(SOA)、0.3および0.9の後面反射率を有するおよび反射型半導体光増幅器(RSOA)について、km単位の送信距離を横軸に、信号線の通信速度(signal line rate)をGb/s単位で示す図である。
【図4】バイアス電流を100mAとして、SOA、0.3、0.6、0.9の後面反射率を有するRSOAについて、dBm単位の光入力電力を横軸に、光利得をdB単位で示す図である。
【図5】注入光電力を−10dBmとして、SOA、0.3、0.6、0.9の後面反射率を有するRSOAについて、mA単位のバイアス電流を横軸に、光利得をdB単位で示す図である。
【図6】注入光電力を+10dBmとして、SOA、0.3、0.6、0.9の後面反射率を有するRSOAについて、mA単位のバイアス電流を横軸に、光利得をdB単位で示す図である。
【図7】強度変調器としてRSOAを用いた、カラーレスかつリアルタイムの光直交周波数分割多重(OOFDM)送信を行うための試験システム構成を示す図である。
【図8】(a)は、下記の5つの異なるシナリオについて、MHz単位の周波数を横軸に、正規化電力をdB単位で示す図であって、それらシナリオとは、(1)RSOA単独、(2)DAC周波数応答のみが存在する電気的アナログ背中合わせ(back-to-back)構成、(3)RSOAおよびDACからの組み合わせ負担(combined contribution)、(4)送信機の逆高速フーリエ変換(IFFT)から受信機の高速フーリエ変換(FFT)への光背中合わせ構成、(5)全長25kmの送信システム、である。 (b)は、光背中合わせ構成および25kmのSSMF構成について、1550nmの波長におけるMHz単位の周波数を横軸に、正規化送受信サブキャリヤ電力をdB単位で示す図である。なお、同図には更に、周波数を横軸に、誤り分布を%単位で示してある。
【図9】光背中合わせ構成の場合および25kmのSSMFでの送信の場合について、1535、1540、1550、1560nmの波長でのビット誤り率(BER)性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、同じ組み合わせの波長を用いてダウンリンクおよびアップリンクの信号送信を行うOFDM型受動光ネットワーク(PON)アーキテクチャを開示しており、当該アーキテクチャは以下を有する。
(a)電力スプリッタと、
(b)エンドユーザごとの光カプラと、
(c)(b)の光カプラから出る信号のユーザ部分に連結された光検出器と、
(d)OOFDM信号入力用のポート1、RSOA装置に向けて信号を送信すると共にエンドユーザアップリンク信号を受信するポート2、そして、アップリンク信号を送信するポート3という3つのポートを有する光サーキュレータと、
(e)直列接続された2つのSOA(Semiconductor Optical Amplifier)、または、1つの反射型半導体光増幅器(RSOA)に直列接続された1つのSOA、または、1つのRSOAから成る信号浄化兼信号受信装置と、
(f)前記2つのSOAから成るシステムのうち2番目のものまたはRSOAを光サーキュレータのポート3に接続する送信ライン。
【0020】
図1は、本発明のPON(Passive Optical Amplifier)アーキテクチャを示す。
電力スプリッタは、受信したダウンリンクの光信号をNエンドユーザに分割する。Nは2pで表され、pは5〜10の範囲である。pの値は6とするのが通常であり、好ましい。
光カプラは分割された光信号を、エンドユーザに送る部分とアップリンク送信に用いる部分とに分ける。エンドユーザに送る部分は光信号の30〜50%(好ましくは約40%)であり、信号の残りの部分(50〜70%、好ましくは約60%)は、信号浄化装置に送られる。
【0021】
光サーキュレータに送られるダウンリンク信号の部分は、当該サーキュレータの前段に配置されたSOA装置で浄化することができるが、必須ではない。
RSOA装置は、ダウンリンク信号を浄化すると共に、エンドユーザから発せられた信号を送信するのに用いられる。光カプラは市販のものであり、様々な分岐率で用いることができる。
【0022】
光センサは、光カプラから出た信号のエンドユーザ部分に結合され、当該信号をエンドユーザに送信する。光サーキュレータは3つのポートを有する。ポート1は入力信号(予め浄化されたものでもよい)の受信に用いられ、ポート2はRSOA装置に向けての信号送信およびエンドユーザからの信号の受信に用いられ、ポート3はアップリンク信号の送信に用いられる。
【0023】
RSOA装置に入る電気信号については、当該装置に入る前に反転させることで、ダウンリンク信号とアップリンク信号との間の漏話を軽減することが好ましい。
本発明による第1の実施の形態では、信号浄化兼エンドユーザ信号送信装置は、直列接続された2つのSOAから成る。
光増幅器は、光信号を(先ず電気信号に変換することなく)増幅する装置である。入射光は、増幅器の利得媒体における誘導放出によって増幅される。反射型半導体光増幅器(RSOA)において、利得媒体は半導体により実現される。RSOAは、ファブリペローレーザダイオードと類似した構成を有するが、追加の構成として、端面に反射防止設計要素を有する。端面での反射は、反射防止コーティングおよび/または傾斜導波管および/または窓領域を持たせることで、0.001%未満にまで下げることができる。こうした構成では、キャビティからの電力の損失は利得よりも大きく、そのために、増幅器をレーザとして動作させることはできない。これらは通常、周期表の13族から15族の金属を含む化合物(例:GaAs/AlGaAs、InP/InGaAs、InP/InGaAsP、InP/InAlGaAs)から作られる。動作の際の信号波長は、通常0.85μmから1.6μmの範囲であり、生成される利得は最高で30dBである。
【0024】
OOFDM送信性能の波長依存性を軽減するために、SOAの動作条件を最適化する必要がある。SOAの動作条件を最適化することで、もはや波長に依存しない(すなわち「カラーレス」となった)OOFDM送信機を作り出すことができる。これは、バイアス電流、駆動電流、および、注入される光電力を調節することで実現される。
最適なSOA動作条件は波長に依存する。CW波長が大きくなると、最適SOAバイアス電流は小さくなり、最適光入力電力および駆動電流のピークトゥーピーク電力はほとんど変化しない。最適光入力電力は、波長に依存しないことが望まれる。この結果を実現するのに必要な最適バイアス電流は、波長が短くなるにつれて大きくなるように制御する。
【0025】
SOA強度変調器の出力において、時間tにおける、変調後光信号の電力および位相は、以下のように書き表すことができる。
Pout(t) = Pin(t)exp[h(t)]
Φout(t) = Φin(t) - 1/2αh(t)
上記の式において、Pout、Φoutはそれぞれ、光出力信号の電力、位相であり、Pin、Φinは光入力信号の電力、位相である。hは集積SOAの光利得であり、αは線幅助長係数である。入力光信号と出力光信号とが線形関係があることは、追加の放送信号および/またはリンクスペクトル変形の事前補償を請け負う信号を、SOA強度変調器の送信性能に影響を及ぼすことなしに、入力光信号に変調することができる、ということを示している。
【0026】
第1のSOAは信号の浄化に用いられ、利得対入力電力曲線における非線形部分に対する作業を行う。当該信号における大きな強度ピークは切り捨てられ、小さいピークは増幅され、それによって実質的に平坦な応答曲線が生成される。第1のSOAから出た信号は第2のSOAに送られる。当該第2のSOAは、アップリンク送信のためにエンドユーザから発せられる信号も受信する。前記エンドユーザ信号は、第1のSOAによって生成される相当に平坦な応答曲線に重畳される。
【0027】
本発明による第2の好適な実施の形態では、上記2つの直列接続されたSOAが1つのRSOAに置き換えられる。
低コストかつ小型で電力消費が小さいこと、ファイバ送信窓全体を完全にカバーできること、大規模のモノリシック集積が可能であることから、反射型半導体光増幅器(RSOA)は顧客光ネットワーク装置(ONU)にとって非常に望ましいものである。RSOAを用いることで、例えば以下のような、いくつかの重要なWDM−PON機能が実現されてきた。
− 非特許文献20に記載された信号変調;
− 非特許文献21に記載されたカラーレスネットワーク運用;
− 非特許文献22に記載された双方向性送信網アーキテクチャ。
【0028】
図2にRSOAを示す。
強度変調・直接検波(IMDD)シングルモードファイバ(SMF)でのRSOA強度変調済みAMOOFDM信号の送信性能の実験的検証については、非特許文献23に報告されている。
ここで挙げる必要のある重要問題は数多い。例えば、RSOA性能に影響を及ぼす物理機構を特定し、RSOAの動作条件および設計を最適化することで、送信性能、システムの柔軟性およびロバスト性を最大限に高める必要がある。通常のバイアス電流および駆動電流に加えて、RSOAに対しては更に、ダウンリンク電気OFDM信号のインバース(inverse)である電流によってバイアスを加えることで、アップリンク信号とダウンリンク信号との間の漏話効果を軽減することができる。
【0029】
標準シングルモードファイバ(SMF)の波長分散を補償するのにRSOA強度変調由来の周波数チャープを用いるのも効果的である。
RSOAは、構成要素コストの低さ、光利得の高さ、ノイズ指数の低さ、光信号消光比の大きさのため、SOAの代替としては非常に魅力的である。この点については、例えば、非特許文献24に記載されている。
【0030】
しかしながら、SOAは、入力飽和電力が大きいことから、良好な光直線性(optical linearity)を示す。SOA強度変調器はWDM−PON用のAMOOFDMモデムで使用することができる。これについては、例えば、非特許文献25または非特許文献26に述べられている。これら文献の執筆者によれば、距離60kmの、SOA強度変調済みAMOOFDM信号のカラーレス30Gb/sシングルモードファイバ送信については、1510nmから1590nmの範囲の波長において可能である。
【0031】
この第2の実施の形態で、RSOAは光サーキュレータのポート2に連結される。駆動電流は通常80〜120mAの範囲であり、約100mAが好ましい。消光比が過度に高いと、信号クリッピングが発生し、信号に歪みが生じる。
しかしながら、低い光入力電力で動作するRSOAを用いることの利点は、標準SMFの分散パラメータによって生じるものとは符号が反対の、制御可能な負周波数チャープを相当に生じさせることができる、という点であることに留意すべきである。こうした特性を利用することで、リンク電力量が固定の場合の送信容量、または、送信容量が固定の場合のリンク電力量のいずれかを向上させることができる。このことは、例えば図3に見られる。同図には、RSOAの後面反射率rを様々に変えながら、SOAおよびRSOAに波長分散がある場合とない場合とについて送信性能を比較した結果を示してある。最長100km以上の距離では、ファイバ分散がある場合は、ファイバ分散がない場合よりも送信容量が高くなることが分かる。RSOAの負周波数チャープは動作条件に応じて決まるものであり、そのため、分散補償は動的制御可能となる。SMFの正周波数チャープは距離に正比例する。例えば、通常の80kmの送信距離の場合、約2dBの負の電力ペナルティが存在し、それは、2dBの光電力利得があることを意味する。いずれの場合も、RSOA動作条件およびRSOA設計の最適化が非常に重要である。
【0032】
本発明による第3の実施の形態における浄化兼ユーザデータ受信システムは、第1のSOAがRSOAに直列連結されて成る。
やはり、第2のSOAまたは前記RSOAを動作させることで、エンドユーザから発せられた信号をアップリンク送信のために光領域に変換する。その後、信号は伝送路を通って光サーキュレータのポート2に送られる。
【0033】
アップリンク送信では、エンドユーザから発せられたOOFDM信号を用いてSOA/RSOAを駆動し、SOA/RSOAに注入されたダウンリンク光信号を変調させる。再変調後の光信号は、光サーキュレータのポート2に入り、その後、下り送信に用いられるのと同じファイバリンクに結合される。アップリンク送信のためにエンドユーザによって生成される信号は単一バンド信号であり、それは、後方レイリー散乱の影響を軽減するためである。
【0034】
その後、エンドユーザ信号は、光サーキュレータのポート3を経て、ダウンリンク信号と同じ組み合わせの波長で送信される。
また、本発明は、同じ組み合わせの波長でダウンリンクおよびアップリンクの信号送信を行う方法を開示する。当該方法は以下のステップから成る。
(a)Nユーザの間でダウンリンク信号を分離する電力スプリッタを設けるステップと、
(b)各エンドユーザにつき1つずつ、N個の光カプラを設けるステップと、
(c)各光カプラにおいて信号を2つの部分に分離するステップと、
(d)光信号の第1の部分を電気信号の生成のために光センサに送り、その後、選択されたエンドユーザに送るステップと、
(e)ダウンリンクの電気信号を反転するステップと、
(f)3つ以上のポートを有する光サーキュレータのポート1に光信号の第2の部分を送るステップと、
(g)光サーキュレータのポート2から出る信号を、直列接続された2つのSOAから成るシステムのうち先ず第1のSOAに送り、その後第2のSOAに送る、あるいは、前記信号を、1つのSOAがRSOAに直列接続されて成るシステムのうち先ずSOAに送り、その後RSOAに送る、あるいは、光サーキュレータのポート2から出る前記信号をRSOAに送るステップと、
(h)ステップ(e)の反転後のダウンリンク電気信号をRSOAまたは第2のSOA装置に送るステップと、
(i)選択されたエンドユーザから生じた単一バンド信号を、第2のSOAまたはRSOAのいずれかの浄化信号に重畳するステップと、
(j)前記選択されたエンドユーザの信号を伝送ラインを通して光サーキュレータのポート2に送るステップと、
(k)光サーキュレータのポート2に入るアップリンク信号を、ダウンリンク信号に用いられたのと同一のルートを用いて、前記光サーキュレータのポート3を通して送るステップ。
【0035】
SOAおよびRSOAは最適化される。また、SOAまたはRSOAの動作条件は、入力光電力に関して利得が一定である領域で作動するように選択される。
加えて、電力入力は、受信機側で最適振幅が得られるように変調される。高周波キャリヤでは非常に大きな損失が生じるのに対して、低周波キャリヤの損失は非常に小さいことが知られている。受信機側では、振幅範囲が狭いため、信号は低周波では切り捨てられ、高周波でかろうじて検出される。この問題を補償するために、入力電力を変調して、低周波における振幅を狭くする。周波数が高くなるにつれ、前記入力電力は次第に大きくなる。こうした動きを図8(b)に示す。
【0036】
後方レイリー散乱およびアップリンク信号とダウンリンク信号との間の漏話という2つの主要問題は、それぞれ、アップリンク単一バンド信号を用いること、そして、電気的ダウンリンク信号を反転することによって、大幅に軽減される。
実施例
実施例1
図2は、長さLのキャビティを有するRSOA強度変調器を示す概略図である。後面には高反射コーティングが施されるのに対し、前面のコーティングはSOAと同様のものである。後面の反射率は記号rで示す。
【0037】
光利得特性に関するRSOAおよびSOAの性能を比較し、その結果を検討した。時間tにおける光利得GRSOAおよびGSOAはそれぞれ以下のように定義される。
RSOA(t) = Pout(t)/Pin(t)
SOA(t) = P+Z=L(t)/Pin(t)
上記の式において、Pout、Pin、P+は、それぞれ、出力光信号、入力光信号、そして前方伝搬光信号の電力である。
【0038】
SOAおよびRSOAへの持続波(CW)光入力電力に基づき、様々な後面反射率の値で算出した光利得を、図4に示す。また、SOAおよびRSOAへのバイアス電流を横軸に、様々な値の後面反射率で算出した光利得をグラフ化した。図5のグラフは入力光電力が−10dBmの場合であり、図6のグラフは入力光電力が+10dBmの場合である。
なお、ここでは、40mAの固定のピークトゥーピーク(PTP)値を有する10GHzの正弦波駆動電流を用いた。
【0039】
図4、5、6から見て取れることは、RSOAとSOAとが類似した光利得変化傾向を有すること、にもかかわらず、特定の動作条件で光利得差が生じること、である。図4に示すように、光入力電力が−10dBm未満の場合、RSOAの光利得はSOAよりも大きくなり、当該利得は後面反射率が高いほど大きい。こうした傾向は、10dBm超の入力電力に対応する強飽和領域では逆転する。
実施例2
本発明による別の実施例では、1GHzのRSOA強度変調器の性能を、25kmの標準シングルモードファイバ(SSMF)での、7.5Gb/sのカラーレス・リアルタイム・エンドトゥーエンド光直交周波数分割多重(OFDM)送信において評価した。実験設備を図7に示す。
【0040】
Altera Stratix II GXフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)型OOFDMトランシーバアーキテクチャを選択したが、これは、リアルタイムデジタル信号処理(DSP)、チャネル推定、シンボル同期、ビット誤り率(BER)計測、オンライン性能監視を行うものであり、強度変調器をRSOAに置き換えた点を除けば、非特許文献27に記載されたものと同じである。各サブキャリヤのデジタル振幅はオンラインで調節可能であった。32のサブキャリヤが用いられ、うち正周波数帯域の15がデータの搬送に用いられた。8サンプルサイクリックプリフィックスを用い、各OOFDMシンボルに40のサンプルを与えた。内蔵システムクロックは100MHzに設定した。そして、並列信号処理の手法を用いた結果、100MHzシンボルレートが得られた。8ビットのデジタルアナログ変換/アナログデジタル変換(DAC/ADC)を4GS/sで動作させ、2GHzの信号帯域幅を実現した。15の情報搬送サブキャリヤ全てで16−QAMを採った。OOFDMトランシーバは、原信号(raw signal)で7.5Gb/sのビットレートを実現し、そのうち6Gb/sはユーザデータを送るのに用いた。
【0041】
可変レーザ光源によって持続波(CW)光波を供給し、その後、当該持続波(CW)光波を、光出力電力が変調可能なエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)、マルチプレクサ、そして、挿入損失が1 .4dBの光サーキュレータに通した。そこから、光サーキュレータに通したCW光波を、5dBmの光電力で、1.125GHzの電気変調帯域幅を有するRSOAに導入した。2GHzの2.1Vピークトゥーピーク電気アナログリアルタイムOFDM信号と84mAのDCバイアス電流を、6GHzの帯域幅バイアスティーに印加し、RSOA内でCW光波を変調した。変調後のリアルタイムOOFDM信号は、その後、5dBの損失を伴って、25kmのSSMFを通して送信された。
【0042】
受信機では、デマルチプレクサ、可変光減衰器、そして3dBカプラの通過後に、−17dBmの受信感度を有する12GHzのPIN+TIA光センサを用いて、伝送されたOOFDM信号を、データ復調のために電気領域に変換した。このRSOA駆動電流およびバイアス電流、並びに5dBmCW光電力は、データ伝送中のパラメータ最適化から得られた最適値であった。これらのパラメータ値は、Cバンド内の光波長に関しては、実質的に変化しなかった。
【0043】
図8(a)は、第1サブキャリヤに正規化された計測周波数応答を、以下の複数の異なるシナリオについて示している。
(1)RSOA単独;
(2)DAC周波数応答のみが存在する電気的アナログ背中合わせ構成;
(3)RSOAおよびDACからの組み合わせ負担(combined contribution);(4)送信機の逆高速フーリエ変換(IFFT)から受信機の高速フーリエ変換(FFT)への光背中合わせ構成(optical back-to-back configuration);
(5)全長25kmの送信システム
同図からは、25kmのシステムの周波数応答が、信号スペクトル領域で最高26dB減衰したことが見て取れる。こうした急速なロールオフは、主に以下の3つの要因によると考えられる。すなわち、DAC(入力フィルタリングに起因)、RSOA(狭い変調帯域幅に起因)、動的RSOA周波数チャープ効果による信号スペクトル変形である。前記変形は、非特許文献28に述べられている通り、動作条件の影響を非常に受けやすい。
【0044】
電力負荷が等しい場合、FFT出力において、低周波サブキャリヤの複素値は符号付き8ビット値の範囲からオーバーフローする一方、高周波サブキャリヤの配置点(constellation point)は互いにマージし始め、計測された総チャネルBERは1.0×10-2よりも悪いという結果になった。
図8(b)は、光背中合わせかつ25kmのSSMF送信の場合について、可変電力負荷技術の実施および効果を示す。送信機における可変電力が負荷されたサブキャリヤ電力と、受信機におけるチャネル等化前の受信サブキャリヤ電力とを、いずれも第1サブキャリヤに正規化し、周波数を横軸として示してある。また、当該グラフには誤り分布も示してある。送信機における各サブキャリヤのデジタルサブキャリヤ振幅を調節して、全てのサブキャリヤにおいて、確実にBER分布が10%未満で実質的に均一になるようにした。加えて、総チャネルBERも最小となった。
【0045】
サブキャリヤ振幅分布およびRSOA動作条件を最適化した後、OOFDM信号を、リアルタイム7.5Gb/sで、25kmのSSMFエンドツーエンド送信した場合のBER性能を、異なる複数の波長について図9に示してある。同図からは、Cバンドの全波長にわたってBERは1.0×10-3未満であり、2dB未満の電力ペナルティが実現されたことが見て取れる。これは、リアルタイムRSOA型トランシーバでカラーレス動作をサポートできることを示している。光波長が短くなるにつれて電力ペナルティが急激に下がる様子が図9に見られるが、これは、短波長によってRSOA変調後信号の消光比が大きくなることで説明がつく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ組み合わせの波長を用いてダウンリンクおよびアップリンクの信号送信を行うカラーレス光OFDM(OOFDM:Optical Orthogonal Frequency Division Multiplex)型の受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)アーキテクチャであって、
(a)電力スプリッタと、
(b)エンドユーザごとの光カプラと、
(c)(b)の光カプラから出る信号のユーザ部分に連結された光検出器と、
(d)OOFDM信号入力用のポート1、RSOA装置に向けてOOFDM信号を送信すると共にエンドユーザアップリンク単一バンド信号を受信するポート2、そして、アップリンクOOFDM信号を送信するポート3という3つのポートを有する光サーキュレータと、
(e)直列接続された2つのSOA、または、1つの反射型半導体光増幅器(RSOA)に直列接続された1つのSOA、または、1つのRSOAから成る信号浄化兼信号受信装置と、
(f)2つのSOAシステムのうち2番目のものまたはRSOAを光サーキュレータのポート3に接続する送信ラインと、を有し、
SOAおよびRSOAの両方または一方を強度変調器として用いることでカラーレス処理を実施すること、
を特徴とするカラーレスOOFDM型の受動光ネットワークアーキテクチャ。
【請求項2】
前記信号浄化兼信号受信装置は、2つの直列接続されたSOAまたは1つのRSOAに直列接続された1つのSOAから成ること、
を特徴とする請求項1に記載のカラーレスOOFDM型の受動光ネットワークアーキテクチャ。
【請求項3】
前記信号浄化兼信号受信装置は1つのRSOAから成ること、
を特徴とする請求項1に記載のカラーレスOOFDM型の受動光ネットワークアーキテクチャ。
【請求項4】
SOA強度変調器およびRSOA強度変調器の両方または一方を用いた、同じ組み合わせの波長によるダウンリンクおよびアップリンクのOOFDM信号送信を目的とした、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャの利用方法であって、
(a)OOFDMダウンリンク信号をNユーザに分割する電力スプリッタを設けるステップと、
(b)各エンドユーザにつき1つずつ、N個の光カプラを設けるステップと、
(c)各光カプラにおいて信号を2つの部分に分けるステップと、
(d)光信号の第1の部分を電気信号の生成のために光センサに送り、その後、選択されたエンドユーザに送るステップと、
(e)ダウンリンクの電気信号を反転するステップと、
(f)3以上のポートを有する光サーキュレータのポート1に光信号の第2の部分を送るステップと、
(g)光サーキュレータのポート2から出る光信号を、エンドユーザから発せられた単一バンド信号も受信するRSOA装置に送り、さらに、反転後のダウンリンク信号をRSOA装置に送るステップと、
(h)選択されたエンドユーザから発せられた単一バンド信号を浄化信号に重畳するステップと、
(i)前記選択されたエンドユーザの信号を、送信ラインを通して光サーキュレータのポート2に送るステップと、
(j)光サーキュレータのポート2に入るアップリンク信号を、ダウンリンク信号に用いられたのと同一のルートを用いて、前記光サーキュレータのポート3から送るステップと、を有し、
前記カラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャの性能が波長に依存すること、
を特徴とするカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項5】
前記電力スプリッタは入力信号をNユーザに分割し、Nは2pで表され、pは5から10の範囲であること、
を特徴とする請求項4に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項6】
前記光カプラは分割した入力信号を、エンドユーザに向かう30%から50%の部分と光サーキュレータに送られる50%から70%の部分とに分けること、
を特徴とする請求項4または5に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項7】
前記光カプラは分割した入力信号を、エンドユーザに向かう40%の部分と光サーキュレータに送られる60%の部分とに分けること、
を特徴とする請求項6に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項8】
RSOAは、直列接続された2つのSOAまたは1つのSOAに接続された1つのRSOAと置き換えられ、
第1のSOA、すなわち、前記直列接続された2つのSOAのうちの第1のSOAまたは前記1つのRSOAに接続された1つのSOAはダウンリンク信号の浄化に用いられ、前記直列接続された2つのSOAのうちの2つ目のSOAまたは前記1つのRSOAは、エンドユーザから発せられた信号を受信した上で、前記第1のSOAからの浄化後の送信信号に加えるためであること、
を特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項9】
前記RSOAは、80から120mA、好ましくは約100mAの駆動電流においてピークトゥーピーク値を有すること、
を特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項10】
入力電力は、キャリヤの周波数が大きくなるにつれて振幅が大きくなるように変調されること、
を特徴とする請求項4乃至9のいずれか一項に記載のカラーレスOOFDM型のPONアーキテクチャ利用方法。
【請求項11】
同一のファイバにおいてダウンリンクおよびアップリンクの信号送信を行う目的で同じ組み合わせの波長を利用する、という請求項1に記載のカラーレスOOFDM型のPONの使用法。
【請求項12】
カラーレス送信の実現のために用いる、というSOAまたはRSOAを強度変調器として用いる使用法。
【請求項13】
RSOAが、標準SMFの分散パラメータを補償することを目的として周波数成分におけるネガティブチャープを有すること、
を特徴とする請求項12に記載のSOA強度変調器またはRSOA強度変調器の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−509771(P2013−509771A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535850(P2012−535850)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066475
【国際公開番号】WO2011/051451
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512053107)バンガー ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】