説明

同期光信号発生装置、時間的変調装置、同期光信号発生方法及び時間的変調方法

【課題】入力光信号の偏波に依存しない同期タイミングで同期ビート光信号を発生することである。
【解決手段】変調信号を発生する局所発振部15と、参照光信号と時間的変調された円偏光のビート光信号とを合波する光カプラ11と、非線形効果により、合波された参照光信号及びビート光信号の位相比較信号を生成する位相比較部12と、位相比較信号及び変調信号を乗算して位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として出力する電気ミキサ13と、位相誤差信号を整形するループフィルタ20と、整形された位相誤差信号に基づいて、位相誤差信号を0にするビート光信号を発生して出力するOVCO30と、発生されたビート光信号を、変調信号に基づいて時間的変調する時間的変調部16と、時間的変調されたビート光信号を円偏光にして光カプラ11に出力する円偏光調整部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期光信号発生装置、時間的変調装置、同期光信号発生方法及び時間的変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速の情報通信を行う光通信ネットワークが知られている。例えば、100[Gbit/s]以上の光通信ネットワークにおいて、中継器や受信器は、光ファイバ伝送後のタイミングのずれた光パルスを元のタイミングで整列するリタイミング機能を有する。このリタイミング機能には、通信する光信号に同期した光信号が必要となる。
【0003】
上記同期光信号を発生する装置として、OPLL(Optical Phase-Lock Loop)やPLL(Phase-Lock Loop)を用いた方式のものがあった。例えば、OPLLにより参照光信号に同期したビート光信号を発生する装置が考えられている(例えば、特許文献1参照)。図17を参照して、従来のOPLLにより同期光信号を出力する同期光信号発生装置を説明する。図17に、従来の同期光信号発生装置7の構成を示す。
【0004】
図17に示すように、同期光信号発生装置8は、合波部としての光カプラ81と、光位相比較部としてのSi−APD(Avalanche Photo Diode)82と、ループフィルタ83と、OVCO(Optical Voltage Controlled Oscillator:電圧制御光信号発生源)84と、の三つの要素を備えて構成される。同期させる対象の入力光信号を参照光信号とする。同期光信号発生装置8において、参照光信号に同期したビート光信号をOVCO84から出力する。
【0005】
なお、光学素子と光学素子との間(光経路)は、特に断らない限り、偏波を保持しない通常の光ファイバにより接続されており、電気素子と電気素子との間(電気経路)が導線により接続されている。また、図面上、光経路を太線で図示し、電気経路を細線で示す。これらの事項は、以下同様とする。
【0006】
OVCO84は、LD(Laser Diode)841,842と、光カプラ843とを備える。OVCO84において、出力光波長が異なる2つのLD841,842の出力光を光カプラ843で合波する。ここで、LD841,842の光出力の偏波は同一にする。その結果、二つの光出力は、光カプラ843内で干渉し、光カプラ843が波長の差に応じた周波数で振動するビート光信号を出力する。波長差に対する制限は光カプラ843の帯域で決まる。LD841,842は、駆動電流や制御温度によって出力光の波長を変化させることができる。よって、OVCO84は、参照光信号に応じてLD841,842の出力光の波長を制御し、出力するビート光信号の周波数を変化させ、参照光信号に同期したビート光信号を出力することができる。
【0007】
Si−APD82は、非線形効果としての二光子吸収を用いて二つの入力信号光強度の位相差に応じた電気信号(TPA信号)を位相誤差信号として出力する。ループフィルタ83は、位相誤差信号を平均化して整形し、OVCO84の制御信号として出力する。
【0008】
図18を参照して、位相誤差信号について説明する。図18(a)に、ビート光信号と参照光信号との波形及び時間差τを示す。図18(b)に、時間差τに対するTPA(Two Photon Absorption)信号(TPA電流の信号)I(τ)を示す。
【0009】
Si−APD82は、受光すると、二光子吸収により、参照光信号とビート光信号とのTPA信号Iを出力する。Si−APD82が受光した瞬時の光のパワーをPとすると、I∝Pの関係を有する。図18(a)に示すように、同期光信号発生装置8において、参照光信号と、ビート光信号と、の間に時間差τが発生している場合を考える。Si−APD82から出力されるTPA信号I(τ)は、時間差τに対して、図18(b)に示すような関係を有する。つまり、TPA信号I(τ)は、τ=0の場合に最大になり、所定のオフセット電流を中心として振動している。
【0010】
そして、同期光信号発生装置8は、Si−APD82から出力されるTPA信号I(τ)と、ビート光信号と、の間の時間差τ(位相差)を0にするように動作する。このようにして、Si−APD82等により、光通信における超高速の光信号同士の位相比較が可能となっている。
【0011】
また、OPLLにより線幅の小さい同期ビート光信号を出力する同期光信号発生装置も考えられている(例えば、特許文献2参照)。ここで、図19を参照して、線幅の狭い光信号を用いて同期ビート光信号を出力する同期光信号発生装置9を説明する。図19に、同期光信号発生装置9の構成を示す。
【0012】
図19に示すように、同期光信号発生装置9は、合波部としての光カプラ11と、Si−APD121と、TIA(TransImpedance Amplifier)19と、ループフィルタ20と、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御電気信号発生源)31と、二倍周波数発生器311,312と、RF(Radio Frequency)アンプ32と、DFB(Distributed FeedBack:分布帰還型)−LD331と、LN(Lithium Niobete:ニオブ酸リチウム)位相変調器332と、サーキュレータ341と、AWG(Arrayed Waveguide Grating:アレイ導波路回析格子)342と、FRM(Faraday Rotator Mirror:ファラデーローテーターミラー)351,352と、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)361と、光カプラ37と、を備えて構成される。
【0013】
同期光信号発生装置9は、例えば、160[GHz]の同期ビート光信号を発生する。光カプラ11は、参照光信号と、光カプラ37から出力されるビート光信号と、を合波して出力する。Si−APD121は、光カプラ11から入力される合波された光信号を受光してTPA信号を位相誤差信号として出力する。TIA19は、Si−APD121から入力される位相誤差信号を電圧信号に変換及び増幅して出力する。ループフィルタ20は、TIA19から入力される位相誤差信号を整形して出力する。
【0014】
VCO31は、ループフィルタ20から入力される位相誤差信号に応じて周波数を変化させた電気信号を発生して出力する。二倍周波数発生器311は、VCO31から入力された電気信号の2倍の周波数の電気信号を発生して出力する。二倍周波数発生器312は、二倍周波数発生器311から入力された電気信号の2倍の周波数の電気信号を発生して出力する。RFアンプ32は、二倍周波数発生器312から入力された電気信号を増幅して出力する。VCO31から出力される電気信号の周波数を10[GHz]程度とすると、RFアンプ32から出力される電気信号の周波数が40[GHz]程度となる。
【0015】
DFB−LD331は、単一周波数のレーザ光を出力する。LN位相変調器332は、DFB−LD331から入力されるレーザ光を位相変調して、RFアンプ32から入力される電気信号の周波数(約40[GHz])間隔の細いスペクトル線を有する光コム信号を発生して出力する。LN位相変調器332から出力された光コム信号は、サーキュレータ341を介してAWG342に入力される。AWG342は、LN位相変調器332から入力された光コム信号から波長λ1,λ2のスペクトル線の光信号を選択して出力する。この波長λ1,λ2の周波数間隔が160[GHz]に設定されている。
【0016】
AWG342から出力された波長λ1,λ2の光信号は、偏波がそろっており、それぞれ、FRM351,352で反射され、AWG342を再び通って出力される。また、FRM351,352は、反射により入力光信号の偏波と直交する偏波の光信号を出力する。このため、AWG342から出力された光信号は、波長λ1,λ2のビート光信号となる。AWG342によりビート光信号の偏波純度を高められ、選出したい2つの光スペクトル線が2度AWG342を通過することとにより、光SNR(Signal to Noise Ratio:S/N比)が高くなる(周波数純度が高くなる)。
【0017】
AWG342から出力された波長λ1,λ2のビート光信号(周波数が160[GHz])は、サーキュレータ341を介してEDFA361に入力される。EDFA361は、入力される波長λ1,λ2のビート光信号を増幅して出力する。光カプラ37は、EDFA361から入力される波長λ1,λ2のビート光信号を分波して、一方を外部に出力し、もう一方を帰還して光カプラ11に出力する。このように、同期光信号発生装置8において、線幅の狭い電気信号に基づき生成した光コム信号から波長λ1,λ2の光スペクトル線を選択及び合波して、参照光信号に同期した線幅の狭い光ビート信号を発生する。このため、ループ帯域を小さくできるとともに、位相雑音及びタイミングジッタを低減できる。
【0018】
また、OPLLにより参照光信号に同期した電気信号を出力する同期電気信号発生装置も考えられている(例えば、非特許文献1、2参照)。ここで、図20を参照して、同期電気信号を出力する同期電気信号発生装置10を説明する。図20に、同期電気信号発生装置10の構成を示す。
【0019】
図20に示すように、同期電気信号発生装置10は、光カプラ101と、EDFA102と、Si−APD103と、ループフィルタ104と、VCO105と、RFアンプ106と、モードロックレーザ107と、PC(Polarization Controller:偏波コントローラ)108と、を備えて構成される。
【0020】
モードロックレーザ107は、入力される電気信号に応じたクロック光信号を出力する。先ず、光カプラ101により、参照光信号とクロック光信号が合波されて出力される。光カプラ101から出力された光信号は、EDFA102により増幅されてSi−APD103に入力される。
【0021】
Si−APD103は、2光子吸収により、EDFA102から入力された参照光信号とクロック光信号とが合波された光信号のTPA信号を位相誤差信号として出力する。Si−APD103から出力された位相誤差信号は、ループフィルタ104により整形され、VCO105に出力される。VCO105は、ループフィルタ104から入力された位相誤差信号に応じた周波数の電気信号を発生し、外部に出力するとともに、RFアンプ106に出力する。また、VCO105から出力された電気信号は、RFアンプ106により増幅されてモードロックレーザ107に入力される。モードロックレーザ107により発生されたクロック信号は、PC108により偏波が調整されて光カプラ101に入力される。このようにして、参照光信号に同期した電気信号を得る。
【0022】
図21を参照して、同期電気信号発生装置10のTPA信号の偏波依存性について説明する。図21(a)に、時間差τに対するTPA信号の関係を示す。図21(b)に、時間tに対するTPA信号の関係を示す。
【0023】
同期電気信号発生装置10において、PC108によりクロック信号の偏波を変更した場合のSi−APD103が出力するTPA信号を図21(a),(b)に示す。図21(a),(b)において、PC108の調整により直線偏光のクロック信号を出力した場合のTPA信号を実線で示し、円偏光のクロック信号を出力した場合のTPA信号を点線で示す。
【0024】
図21(a)に示すように、直線偏光のクロック信号を光カプラ101に入力したTPA信号の波形と、円偏光のクロック信号を光カプラ101に入力したTPA信号の波形とでは、オフセット値が異なる。このため、図21(b)に示すように、オフセットを合わせると、直線偏光のクロック信号を光カプラ101に入力したTPA信号の波形と、円偏光のクロック信号を光カプラ101に入力したTPA信号の波形とには、時間tについて周期の10分の1程度のタイミングのずれ(タイミングオフセット)が発生している。
【0025】
また、上記のようなSi−APDにおける位相誤差信号の偏波依存性を低減するための技術が考えられている。具体的には、Si−APDに入射させる2つの光信号の一方を円偏光にする構成である(例えば、非特許文献3参照)。
【0026】
図22を参照して、2つの光信号を合波してSi−APDに入力した場合に、Si−APDから出力されるTPA信号の偏波依存性を説明する。図22(a)に、時間差τに対する、少なくとも一方が直線偏光の2つの光信号を合波した場合のTPA信号を示す。図22(b)に、時間差τに対する、少なくとも一方が円偏光の光信号を合波した場合のTPA信号を示す。
【0027】
図22(a)において、互いに同じ方向の直線偏光の2つの光信号を合波した場合の位相誤差信号を実線で示し、互いに直交する直線偏光の2つの光信号を合波した場合の位相誤差信号を点線で示し、直線偏光及び円偏光の光信号を合波した場合の位相誤差信号を破断線で示す。図22(a)に示すように、偏波が異なると、位相誤差信号のオフセット値及び振幅がともに異なっている。
【0028】
図22(b)において、円偏光及び直線偏光の光信号を合波した場合のTPA信号を実線で示し、互いに同じ回転方向の円偏光の2つの光信号を合波した場合のTPA信号を破断線で示し、互いに逆回転方向の円偏光の2つの光信号を合波した場合のTPA信号を点線で示す。図22(b)に示すように、図22(a)に比べて、偏波が異なっても、TPA信号の振幅が同一になっている。
【0029】
一方を円偏光にして合波した場合のTPA信号I(τ)は、次式(1)〜(4)により記述される。
【数1】

【0030】
但し、
I(τ):二光子吸収によりSi−APDに発生する光電流(TPA信号)、
E(t):時間の関数である電場、
η:二光子吸収効率に関する定数、
〜S:片方の入射光の規格化Stokesベクトル、
S’〜S’:もう片方の入射光の規格化Stokesベクトル、
g(t):片方の入射光のエンベロープ、
g’(t):もう片方の入射光のエンベロープ、
B1:I(τ)のオフセット値、
C1:I(τ)の振幅、
である。
【0031】
図23(a)に、時間tに対するエンベロープg (t)の波形を示す。図23(b)に、時間差τに対するTPA信号I(τ)の波形を示す。式(1)〜(4)に示すエンベロープg(t)、g’(t−τ)は、図23(a)に示すような波形である。このとき、式(2)に示すTPA信号I(τ)は、図23(b)に示すような波形となり、式(3)、(4)で表されるオフセット値B1及び振幅C1を有する。Si−APDへの2つの入力光信号のうち、片方を円偏光にすると、振幅C1は変化せず、オフセット値B1が変化する。
【特許文献1】国際公開第03/104886号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/007615号パンフレット
【非特許文献1】Reza Salem,T.E.Murphy,“Broad-Band Optical Clock Recovery System Using Two-Photon Absorption,” Photonics Technology Letters,vol.16,no.9,2141-2143,2004
【非特許文献2】Reza Salem,G.E.Tudury,T.U.Horton,G.M.Carter and T.E.Murphy,“Polarization-Insensitive Optical Clock Recovery at 80 Gbi/s Using a Silicon Photociode,”Photonics technology letters,vol.17,no.9,pp.1968-1970,2005.
【非特許文献3】Reza Salem and Thomas E.Murphy,“Polarization-insensitive cross correlation using two-photon absorption in a silicon photodiode,”Optics letters,vol.29,no.13,pp.1524-1526,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
しかし、従来のOPLLを利用した同期光信号発生装置において、Si−APDにおけるTPA信号I(τ)の偏波依存性を無くすために片方の入力光信号を円偏光にしたとしても、TPA信号I(τ)の振幅C1を偏波無依存化できるが、オフセット値B1を偏波無依存化できない。このため、参照光信号や、帰還されるビート光信号(以下、この2つを入力光信号とする)の偏波が変わることにより、同期ビート信号のタイミングオフセットが生じる。
【0033】
本発明の課題は、入力光信号の偏波に依存しない同期タイミングで同期ビート光信号を発生することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記課題を解決するために、本発明に係る同期光信号発生装置は、
所定周波数の変調信号を発生する局所発振部と、
参照光信号と時間的変調された円偏光のビート光信号とを合波する合波部と、
非線形効果により、前記合波された参照光信号及びビート光信号の位相を比較し位相比較信号を生成する位相比較部と、
前記位相比較信号及び前記変調信号を乗算して当該位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として出力する電気ミキサと、
前記位相誤差信号を整形する整形部と、
前記整形された位相誤差信号に基づいて、当該位相誤差信号を0にするビート光信号を発生して出力するビート光信号発生部と、
前記ビート光信号発生部により発生されたビート光信号を、前記変調信号に基づいて時間的変調する時間的変調部と、
前記時間的変調されたビート光信号を円偏光にして前記合波部に出力する円偏光調整部と、を備える。
【0035】
好ましくは、前記円偏光調整部は、偏波コントローラである。
【0036】
好ましくは、前記合波部は、ハーフミラーであり、
前記円偏光調整部は、1/4波長板であり、
前記1/4波長板から前記位相比較部までの光路が空間光学系により構成され、
前記ビート光信号発生部から前記1/4波長板までの光路を通る光信号の偏波を直線偏光に保持する偏波保持部を備える。
【0037】
好ましくは、前記時間的変調部は、前記ビート光信号を構成する一方の波長の光信号を位相変調する位相変調部を備える。
【0038】
好ましくは、前記時間的変調部は、
前記ビート光信号を構成する第1及び第2の波長の光信号を抽出するアレイ導波路回析格子と、
前記第2の波長の光信号及び位相変調された第1の波長の光信号を反射するファラデーローテータミラーと、を備え、
前記位相変調部は、前記アレイ導波路回析格子から出力される前記第1の波長の光信号を位相変調し、
前記アレイ導波路回析格子は、前記ファラデーローテータミラーにより反射された、前記第2の波長の光信号及び前記位相変調された第1の波長の光信号を合波しビート光信号として出力する。
【0039】
好ましくは、前記ビート光信号発生部は、
前記位相誤差信号に応じた周波数間隔の光コム信号を発生する光コム発生部と、
前記発生された光コム信号から第1及び第2の波長の線スペクトルの光信号を選択して抽出する2モード選択部と、
前記抽出された第1及び第2の波長の光信号を合波してビート光信号を発生して出力する2モード合波部と、を備える。
【0040】
好ましくは、前記2モード選択部及び前記2モード合波部は、ファブリペローエタロンにより構成される。
【0041】
好ましくは、前記時間的変調部は、前記2モード選択部により選択された第1の波長の光信号を時間的変調し、当該時間的変調した第1の波長の光信号と前記第2の波長の光信号とを合波して出力する。
【0042】
好ましくは、前記2モード選択部及び前記2モード合波部は、前記時間的変調部を含み、当該時間的変調部により時間的変調されたビート光信号を発生して出力する。
【0043】
好ましくは、前記時間的変調部は、前記ビート光信号を位相変調する位相変調部を備える。
【0044】
好ましくは、前記局所発振部からの変調信号の位相をシフトして、前記電気ミキサ又は前記時間的変調部に出力する位相シフタを備える。
【0045】
本発明に係る時間的変調装置は、
第1及び第2の波長の光信号から構成されるビート光信号の前記第1の波長の光信号を位相変調する位相変調部と、
前記位相変調された第1の波長の光信号と前記第2の波長の光信号とを合波してビート光信号として出力する合波部と、を備える。
【0046】
本発明に係る同期光信号発生方法は、
参照光信号と時間的変調された円偏光のビート光信号とを合波する工程と、
非線形効果により、前記合波された参照光信号及びビート光信号の位相を比較して位相比較信号を生成する工程と、
前記位相比較信号と、所定周波数の変調信号を乗算して当該位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として出力する工程と、
前記位相誤差信号を整形する工程と、
前記整形された位相誤差信号の微分値信号に基づいて、当該微分値信号を0にするビート光信号を発生して出力する工程と、
前記発生されたビート光信号を、前記変調信号に基づいて時間的変調する工程と、
前記時間的変調されたビート光信号を円偏光にして前記合波に用いる時間的変調された円偏光のビート光信号として出力する工程と、を含む。
【0047】
本発明に係る時間的変調方法は、
第1及び第2の波長の光信号から構成されるビート光信号の前記第1の波長の光信号を位相変調する工程と、
前記位相変調された第1の波長の光信号と前記第2の波長の光信号とを合波してビート光信号として出力する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、帰還するビート光信号を時間的変調し、円偏光にして復調することにより、位相比較信号の微分値を位相誤差信号として得ることができ、入力光信号の偏波に依存しない同期タイミングで同期ビート光信号を発生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。但し、本発明は図示例に限定されるものではない。
【0050】
先ず、図1を参照して、本実施の形態の同期光信号発生装置1の装置構成を説明する。図1に、本実施の形態の同期光信号発生装置1の構成を示す。
【0051】
図1に示すように、同期光信号発生装置1は、合波部としての光カプラ11と、位相比較部12と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、ビート光信号発生部としてのOVCO30と、局所発振部15と、時間的変調部16と、円偏光調整部17と、を備えて構成される。OVCO30は、VCO31と、RFアンプ32と、光コム発生部33と、2モード選択部34と、2モード合波部35と、を備えて構成される。合波部としては、光カプラ11に限定されるものではなく、ハーフミラー等、他の合波部としてもよい。
【0052】
光カプラ11は、図示しない外部機器から入力される同期させたい参照光信号と円偏光調整部17から出力されるビート光信号とが入力され、その2つの光を合波して出力する。位相比較部12は、光カプラ11から出力された合波された光信号が入力され、その光信号から参照光信号とビート光信号との位相差を示す位相比較信号を出力する。位相比較部12は、非線形効果である2光子吸収により位相比較信号としてのTPA信号(TPA電流)を出力する位相比較器である。以下、一例として、位相比較部12が、Si−APDであるものとして説明するが、Si−PD等、他の二光子吸収による位相比較部を用いることとしてもよい。位相比較部12の出力信号を、RF信号とする。
【0053】
電気ミキサ13は、位相比較部12から出力された位相比較信号と、局所発振部15から出力される変調信号とが入力され、その2つの電気信号を乗算して位相比較信号を復調し位相誤差信号として出力する。電気ミキサ13の出力信号を、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号とする。
【0054】
ループフィルタ20は、電気ミキサ13から出力された位相誤差信号を整形して出力する。OVCO30は、ループフィルタ20から入力された整形後の位相誤差信号に応じて、参照光信号に同期した波長λ1,λ2のビート光信号を出力する。
【0055】
VCO31は、ループフィルタ20から出力された整形後の位相誤差信号が入力され、その位相誤差信号に応じた周波数の電気信号を発生して出力する。RFアンプ32は、VCO31から出力された電気信号が入力され、その電気信号を増幅して出力する。光コム発生部33は、RFアンプ32から出力された電気信号が入力され、その電気信号の周波数間隔(繰り返し周波数)の光コム信号を出力する。光コム信号は、VCO31の電気信号の周波数間隔の複数のスペクトル線を有する光信号である。各スペクトル線間の差周波数の線幅は狭い。このようにして、OVCO30は、ループフィルタ20から入力される位相誤差信号を0にするようなビート光信号を出力する。
【0056】
2モード選択部34は、光コム発生部33から出力される光コム信号が入力され、その光コム信号のうち、所定の波長λ1,λ2のスペクトル線(所定の2つのモード)の光信号を選択して出力する。2モード合波部35は、2モード選択部34から出力された波長λ1,λ2の光信号が入力され、その波長λ1,λ2の光信号を合波し光ビート光信号として外部に出力するとともに、時間的変調部16にも出力する。なお、2モード合波部35が合波する波長λ1,λ2の光信号の偏波は合っているものとする。
【0057】
局所発振部15は、所定周波数の電気信号を変調信号として出力する。局所発振部15の出力信号を、LO信号とする。時間的変調部16は、2モード合波部35から出力されたビート光信号と局所発振部15から出力された局所周波数信号とが入力され、その局所周波数信号に基づいてビート光信号に時間的変調をかけて出力する。円偏光調整部17は、時間的変調部16から出力された時間的変調後のビート光信号が入力され、そのビート光信号を位相比較部12の入力時に円偏光となるよう調整して光カプラ11に出力する。ビート光信号は、位相比較部12に帰還される。このように、同期光信号発生装置1は、位相誤差信号が0になるところでロックされ、参照光信号に同期したビート光信号を出力する。
【0058】
次に、図2〜図10を参照して、同期光信号発生装置1の動作を説明する。従来の技術で述べたように、二光子吸収の位相比較部12(Si−APD)に入力する2つの光信号のうち、片方を円偏光にすると、位相比較部12から出力される位相比較信号(TPA電流)の振幅が、入力光信号の偏波によらず一定となり、そのオフセット値が入力光信号の偏波に依存する。このため、TPA電流を時間で微分すれば、そのオフセット値がキャンセルされ、その微分値信号が、入力光信号の偏波によらず同一の信号となる。同期光信号発生装置1では、時間的変調部16によりビート光信号に時間的変調がかけられ、円偏光調整部17により円偏光に調整され、参照信号とともに位相比較部12に入力され、電気ミキサ13により位相比較部12のTPA信号が復調されることで、TPA信号の時間的な微分値信号が位相誤差信号として得られる。
【0059】
ここで、ビート光信号に対する時間的変調と、TPA信号に対する復調とにより、TPA信号の時間的な微分値信号が得られることを説明する。先ず、参照光信号とビート光信号との時間差τに対して得られる位相比較部12のTPA信号をX(τ)とする。所定の時間差τにて局所発振部15による時間的変調sinωtを振幅Dで、時間的変調部16によりビート光信号に加えると、TPA信号X(τ)がXsin(τ+Dsinωt)で記述される。
【0060】
ここで、TPA信号X(τ)をテイラー展開すると、次式(5)で表される。ここでは、Dが小さい極限では式(5)の右辺の第二項がX(τ)の微分値と等しくなることを意味する。
【数2】

【0061】
また、局所発振部15がDsinωtで駆動されて電気ミキサ13に入力され、また電気ミキサ13に式(5)のTPA信号が入力されると、電気ミキサ13の出力は、式(5)の右辺の第二項にsinωtを乗じた値となる。というのは、通常用いられる電気ミキサでは、入力DC成分が無視されるからである。
【0062】
式(5)の右辺の第二項にsinωtを乗じた値は、次式(6)で示される。また、式(6)からDC成分を抜き出すと、次式(7)の値が得られる。
【数3】

【0063】
時間振幅Dが小さな極限では、式(7)がTPA信号の微分値に一致する。式(7)の値は、電気ミキサ13の出力信号である。通常の動作では、時間振幅Dが有限の値をとり、その値はできる限り小さく抑制されるため、電気ミキサ13の出力信号がほぼTPA信号の微分値に一致する。ただし、通常の動作での時間振幅Dの大きさは、ビート光信号の周期に比較すると十分小さな値であり、且つタイミングジッタよりは大きな値である必要がある。
【0064】
次いで、図2を参照して時間的変調の例を説明する。図2に、時間的変調がなされた信号の波形を示す。図2において、横軸の「ピリオド」とは、ビート光信号の一周期であり、以下の図でも同様とする。また、時間的変調周期をΔtで示す。
【0065】
時間的変調部16において、例えば、図2に示すように、所定の時間tからt+4Δtまで、変調量が振動するように時間的変調がなされる。また、時間的変調信号の周波数は、OPLL信号周波数に比較して小さいことが必要である。つまり、次式(8)を満たす。
(時間的変調周期Δt)≫(OPLL出力信号の一周期) …(8)
【0066】
また、時間的変調信号の周波数は、OPLLループ帯域に比較して大きいことが必要である。つまり、次式(9)を満たす。
(時間的変調周期Δt)≪(ループ帯域の逆数) …(9)
本実施の形態では、例えば、
(ループ帯域の逆数=10[μs])≫(時間的変調周期=100[ns])≫(OPLL出力信号(ビート光信号)の周期=6.25[ps])
の関係を満たすように設定されている。
【0067】
次いで、図3及び図4を参照して、時間的変調・復調の様子を説明する。図3(a)に、時間差τに対するTPA信号の一例と時間的変調するポイントA,B,Cとを示す。図3(b)に、図3(a)のTPA信号の微分値信号を示す。図4(a)に、図3(a)のポイントA,B,Cにおける時間的変調後のTPA信号の波形を示す。図4(b)に、局所発振部15のLO信号と図3(a)のポイントA,B,Cにおける復調信号との波形を示す。
【0068】
位相比較部12の出力信号は、ビート光信号に時間的変調を加えないと、図3(a)に示す実線、破断線、点線のように、時間差τに対してオフセット値が異なるTPA信号となる。このような場合に、時間的変調部16により、局所発振部15が発生する変調信号の周波数で時間的変調をかける。ここで、時間差τ<0、τ=0、τ>0の各所定値のTPA信号を、順に、ポイントA,B,Cとする。
【0069】
すると、ポイントA,B,Cにおける位相比較部12の出力信号(TPA信号)は、図4(a)に示すような波形となる。さらに、局所発振部15から出力されるLO信号(変調信号)と、ポイントA,B,Cにおける電気ミキサ13の出力信号(復調信号)とは、図4(b)に示すような波形となる。図4(b)に示すように、復調信号のDC成分(平均値)は、ポイントAで正の値となり、ポイントBで0の値となり、ポイントCで負の値となる。つまり、復調信号は、図3(a)のTPA信号の微分値になっていることが分かる。なお、図3(a)のTPA信号の微分値信号は、図3(b)に示す波形となる。
【0070】
次いで、図5を参照して、局所発振部15の変調信号の適切な周波数範囲について説明する。図5に、電気ミキサ13の出力信号の周波数分布を示す。
【0071】
電気ミキサ13の出力信号は、図5に示すような周波数分布となる。ここで、局所発振部15の変調信号の周波数をfLOとする。位相比較部12から出力されるTPA信号は、局所発振部15の変調信号で時間的に変調されているため、周波数fLOに信号成分を有する。また、電気ミキサ13のアイソレーション不足により、電気ミキサ13の出力信号に現れている。電気ミキサ13から出力される復調信号は、TPA信号と局所発振部15の変調信号との乗算成分を有するため、DC成分と2×fLO成分とを有する。
【0072】
電気ミキサ13の出力信号は、ループフィルタ20により復調信号DC成分のみが抽出されて整形されてOVCO30(VCO31)に入力される。よって、ループフィルタ20には、電気ミキサ13の出力信号から、fLO成分と2×fLO成分とを効率よく減衰するローパスフィルタを用いることが好ましい。このため、局所発振部15の変調信号の周波数fLOは、OPLLのループ帯域より大きいことが好ましい。また、周波数fLOが、OPLLのループ帯域の10倍より大きいことがさらに好ましい。
【0073】
次に、図6〜図10を参照して、時間的変調部16の時間的変調方法として、第1〜第4の時間的変調方法を順に説明する。なお、従来、位相変調器を用いて光信号を位相変調する構成はあった(例えば、特許文献2参照)。しかし、光信号(特にビート光信号)に対して時間的変調をかける技術はなかった。
【0074】
先ず、図6〜図8を参照して、第1の時間的変調方法を説明する。図6に、第1の時間的変調方法による位相変調部16Aを用いた装置構成を示す。
【0075】
第1の時間的変調方法は、ビート光信号を構成する波長λ1,λ2のCW(Continuous Wave:連続波)光のうち、片方(波長λ1)を位相変調することにより時間的変調を行う方法である。図2に示すように、時間的変調は、位相変調により実現できる。第1の時間的変調方法において、図6に示すように、時間的変調部16は、位相変調部16Aと、光カプラ160と、により構成される。例えば、局所発振部15から出力された変調信号がRFアンプ151により増幅されて位相変調部16Aに出力される。
【0076】
位相変調部16Aは、局所発振部15から入力された変調信号の電圧でビート光信号の波長λ1成分を位相変調する。位相変調部16Aにより位相変調されたビート光信号の波長λ1成分と、ビート光信号の波長λ2成分とは、光カプラ160により合波され、時間的変調後のビート光信号として円偏光調整部17に出力される。
【0077】
ここで、第1の時間的変調方法によるビート光信号の位相の変化を説明する。先ず、ビート光信号の波長λ1成分の電場をE(t)とし、同じく波長λ2成分の電場をE(t)とする。また、電場E(t)=sin(ωt+φ)、電場E(t)=sinωtとする。但し、ω:波長λ1に対応する角速度、ω:波長λ2に対応する角速度、φ:位相変調部16Aによる位相変調量、である。本実施の形態では、例えば、193[THz](波長1550[nm])程度のビート光信号を想定するが、これに限定されるものではない。
【0078】
すると、時間的変調後のビート光信号のパワーP(t)は、次式(10)により記述される。
【数4】

【0079】
式(10)において、(1+cos((ω−ω)t−φ))/2の成分がビート光信号のエンベロープ成分(例えば、160[GHz])であり、sin(((ω+ω)t+φ)/2)の成分(例えば、193[THz])が搬送波の成分となる。式(10)から、位相変調部16Aの位相変調量φを0から2πまで変化させると、ビート光信号の位相も0から2πまで変化することが分かる。すなわち、波長λ1成分の任意の位相変調により、ビート光信号を自在に時間的変調することができる。
【0080】
図7を参照して、位相変調部16Aに入力する変調信号の電圧を説明する。図7に、位相変調部16Aに加えた電圧に対するビート光信号の強度時間波形を示す。
【0081】
図7において、Vπは、位相変調部16Aがビート光信号を構成する搬送波の位相をπずらすために必要な印加電圧である。通常のLN位相変調器を用いる場合に、Vπは3〜5[V]程度である。
【0082】
位相変調部を通過する光の変調時間量Tと、その時間的変調に必要な電圧Vとは、次式(11)に従う。
【数5】

但し、Tperiod-of-BeatSignal:入力ビート光信号の一周期である。ビート光信号の周波数が160[GHz]である場合に、Tperiod-of-BeatSignalは、6.25[ps]となる。一般的には、Tperiod-of-BeatSignal=1/fbeatである。ただし、fbeat:ビート光信号の周波数である。
【0083】
例えば、図7に示すように、160[GHz]のビート光信号の周波数を半周期である3.125[ps]だけ時間的に変調させるためには、式(11)によりV=Vπの印加電圧を必要とする。よって、ビート光信号を時間的変調するために位相変調部16Aに入力する局所発振部15の変調信号の電圧値は、比較的小さい。
【0084】
また、第1の時間的変調方法では、変調周波数の上限が位相変調部16Aの帯域で決まる。このため、例えば、50[GHz]程度までの変調周波数が可能である。そして、時間的変調量はビート光信号の周期の数倍程度まで可能である。例えば、160[GHz]のビート光信号であれば、容易に6.25[ps]は変調可能である。
【0085】
ここで、図8を参照して、第1の時間的変調方法を行う時間的変調部の一例としての時間的変調部161を説明する。図8に、時間的変調部161の構成を示す。
【0086】
図8に示すように、時間的変調部161は、サーキュレータ1611と、AWG1612と、LN位相変調器1613と、FRM1614と、VOA(Variable Optical Attenuator)1615と、FRM1616と、を備えて構成される。
【0087】
サーキュレータ1611は、OVCO30から入力された光コム信号(ビート光信号)をAWG1612に出力するとともに、AWG1612から入力されたビート光信号を(円偏光調整部17に)出力する。AWG1612は、サーキュレータ1611から入力される光コム信号(ビート光信号)から波長λ1,λ2のスペクトル線の光信号を選択し、波長λ1の光信号をLN位相変調器1613に出力し、波長λ2の光信号をVOA1615に出力する。
【0088】
LN位相変調器1613は、局所発振部15からの変調信号と、AWG1612からの波長λ1の光信号と、が入力される。LN位相変調器1613は、入力された変調信号の電圧に応じて、波長λ1の光信号の位相を変調して出力する。LN位相変調器1613から出力された波長λ1の光信号は、FRM1614で反射され、LN位相変調器1613を介し、AWG1612に再び入力される。VOA1615は、AWG1612からの波長λ2の光信号が入力され、その波長λ2の光信号にLN位相変調器1613と等しい減衰をかけて出力する。VOA1615から出力された波長λ2の光信号は、FRM1616で反射され、VOA1615を介し、AWG1612に再び入力される。
【0089】
LN位相変調器1613、VOA1615を介して入力された波長λ1,λ2の光信号は、AWG1612により合波されてビート光信号としてサーキュレータ1611を介して円偏光調整部17に出力される。
【0090】
AWG1612から出力された波長λ1,λ2の光信号は、偏波がそろっており、それぞれ、LN位相変調器1613、VOA161を介して、FRM16141,1615で反射され、AWG1612を再び通って出力される。また、FRM16141,1615は、反射により入力光信号の偏波と直交する偏波の光信号を出力する。このため、AWG1612から出力された光信号は、波長λ1,λ2のビート光信号となる。AWG1612によりビート光信号の偏波純度を高められ、選出したい2つの光スペクトル線が2度AWG1612を通過することとにより、光SNRが高くなる。
【0091】
次いで、図9及び図10を参照して、第2の時間的変調方法を説明する。図9に、第2の時間的変調方法による装置構成を示す。
【0092】
第2の時間的変調方法は、入力光信号(ビート光信号)そのものを位相変調する方法である。図9に示すように、第2の時間的変調方法では、図6に示すように、時間的変調部16は、位相変調部16Bにより構成される。例えば、局所発振部15から出力された変調信号がRFアンプ152により増幅されて位相変調部16Bに出力される。位相変調部16Bは、RFアンプ152から入力された変調信号の電圧に応じて、入力されたビート光信号に位相変調をかけて出力する。
【0093】
第2の時間的変調方法は、最も構成が簡単である。また、ビート光信号に限らず、任意の光信号を時間的に変調できる。また、高速の変調が可能である。例えば、変調周波数の最大値を50[GHz]にできる。
【0094】
図10を参照して、第2の時間的変調方法に必要な電圧を説明する。図10に、位相変調部16Bに加えた電圧に対するビート光信号の強度時間波形を示す。
【0095】
図10において、Vπは、位相変調部16Bが搬送波であるビート光信号の位相をπずらすために必要な印加電圧値であり、例えば3〜5[V]程度である。
【0096】
位相変調部を通過する光の変調時間量Tと、その時間的変調に必要な電圧Vとは、次式(12)に従う。
【数6】

但し、Tperiod:入力光信号の搬送波の一周期である。
【0097】
例えば、入力光信号の波長を1533.33[nm](193.0[THz])とすると、T=5.18[fs]となる。このとき、160[GHz]のビート光信号を半周期である3.125[ps]時間的に遅延させるためには、式(12)より、図10に示すように1206・Vπの電圧の印加が必要となる。
【0098】
次いで、第3の時間的変調方法を説明する。第3の時間的変調方法は、空間光学系において、空間の光路長を振動させることにより時間的変調を行う方法である。例えば、入力光信号を第1の固定ミラーにより反射させるとともに、その反射光を第1、第2の可動ミラーで反射し、その反射光を第2の固定ミラーにより反射させて出力する構成を考える。第1、第2の可動ミラーにピエゾ素子等のアクチュエータが取り付けられている。局所発振部から出力されRFアンプにより増幅された変調信号により、アクチュエータを振動させる。第3の時間的変調方法によれば、遅延量を大きくとることができる。その反面、アクチュエータが機械的な振動をするので、メガヘルツオーダの変調信号による時間的変調が困難である。
【0099】
次いで、第4の時間的変調方法を説明する。第4の時間的変調方法は、モードロックレーザの繰り返し周波数を変調することにより時間的変調を行う方法である。局所発振部から出力された変調信号により、モードロックレーザを駆動してレーザ光を出力させる。このように、繰り返し周波数の増減を通じて出力パルスのタイミングを変調する。タイミング変調度は、周波数ずれに時間を乗じた値となる。第4の時間的変調方法によれば、大きなタイミング変調を行える。その反面、ループ帯域よりも大きな変調周波数が必要であり、メガヘルツオーダの変調信号による時間的変調が困難である。
【0100】
以上、本実施の形態によれば、光カプラ11が参照光信号と時間的変調された円偏光のビート光信号とを合波し、位相比較部12がその合波された参照光信号及びビート光信号の位相比較信号(TPA信号)を生成し、電気ミキサ13がその位相比較信号と局所発振部15の変調信号とを乗算して(復調して)位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として出力してループフィルタ20が整形する。そして、OVCO30がその整形された位相誤差信号に基づいて、当該位相誤差信号が0になるビート光信号を発生して出力し、時間的変調部16がOVCO30により発生されたビート光信号を局所発振部15の変調信号に基づいて時間的変調し、円偏光調整部17が時間的変調されたビート光信号を円偏光にして光カプラ11に出力する。このように、OPLLにおいて、ビート光信号に時間的変調をかけ、円偏光にし、位相比較信号を復調することにより、位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として得る。このため、OPLLにおける入力光信号(参照光信号、帰還するビート光信号)の偏波に依存しない同期タイミングで同期ビート光信号を発生できる。
【0101】
また、OVCO30は、VCO31と、光コム発生部33と、2モード選択部34と、2モード合波部35と、を備える。このため、OVCO30から出力する同期ビート光信号の線幅を狭くでき、その位相雑音を低減し、ループ帯域を小さくできるとともに、ループ長を適切にできる。
【0102】
また、時間的変調部16が第1の時間的変調方法を行うものである場合に、位相変調部16Bで位相を0から2πまで変えることにより、ビート光信号の位相も0から2πまで自在に変化できる。また、局所発振部15からの比較的低い電圧の変調信号を用いてビート光信号の時間的変調を容易に行うことができる。
【0103】
また、第1の時間的変調方法を行う時間的変調部161は、AWG1612、FRM1614,1616を含んで構成され、波長λ1、λ2の光信号がAWG1612を2回通る。このため、帰還するビート光信号の光SNRを高くできる。
【0104】
また、時間的変調部16が第2の時間的変調方法を行うものである場合に、局所発振部15からの変調信号を用いてビート光信号の時間的変調を行うことができるとともに、時間的変調部16の装置構成を簡単にできる。
【実施例1】
【0105】
図11を参照して、上記実施の形態の具体的な一実施例としての実施例1を説明する。図11に、本実施例の同期光信号発生装置2の構成を示す。但し、上記実施の形態で説明した構成と同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0106】
本実施例の同期光信号発生装置2は、第1の時間的変調方法によりビート光信号に時間的変調をかけるとともに、参照光信号に同期した同期ビート光信号を出力する装置である。図11に示すように、同期光信号発生装置2は、光カプラ11と、Si−APD121と、TIA19と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、OVCO301と、局所発振部15と、時間的変調部161と、位相シフタ18と、PC171と、を備えて構成される。OVCO301は、VCO31と、二倍周波数発生器311,312と、RFアンプ32と、DFB−LD331と、LN位相変調器332と、サーキュレータ341と、AWG342と、FRM351,352と、EDFA361と、光カプラ37と、を備える。
【0107】
局所発振部15は、所定周波数の局所的な電気信号(変調信号)を発生して出力する。光カプラ11は、参照光信号とPC171から入力された円偏光のビート光信号とを合波して出力する。Si−APD121は、光カプラ11から出力された合波後の光信号が入力され、参照光信号とビート光信号との位相比較信号(TPA信号)を出力する。位相比較信号は、TIA19で電圧信号にされて増幅され、電気ミキサ13により、局所発振部15から入力された変調信号と乗算されて復調されて出力される。この復調信号が、位相比較信号の微分値信号であり、位相誤差信号として用いられる。
【0108】
位相誤差信号は、ループフィルタ20により整形されOVCO301のVCO31に入力される。VCO31は、ループフィルタ20から入力された位相誤差信号に応じて周波数を変化した電気信号を発生して出力する。VCO31から出力された電気信号は、二倍周波数発生器311,312により周波数が4倍にされ、RFアンプ32により増幅される。DFB−LD331は、CW光を発生して出力する。LN位相変調器332は、DFB−LD331から出力されたCW光をRFアンプ32から出力された電気信号の周波数間隔の光コム信号に変換して出力する。
【0109】
LN位相変調器332から出力された光コム信号は、サーキュレータ341を介してAWG342に入力され、AWG342により、波長λ1、λ2のスペクトル線の光信号が選択され、FRM351,352で反射されて合波され、波長λ1、λ2のビート光信号が出力される。AWG342から出力されたビート光信号は、サーキュレータ341を介してEDFA361により増幅されて外部に出力されるとともに、時間的変調部161に出力される。このように、OVCO301は、波長λ1、λ2の光信号がAWG342を2回通る。このため、ビート光信号の光SNRを高くできる。
【0110】
位相シフタ18は、局所発振部15から出力された変調信号が入力され、その変調信号を設定された位相量だけシフトして時間的変調部161のLN位相変調器1613に出力する。この位相シフト量は、同期光信号発生装置2の経路等に因り、位相誤差信号振幅が最大になるように調整される。
【0111】
時間的変調部161により時間的変調されたビート光信号は、サーキュレータ1611から出力され、PC171に入力される。PC171は、サーキュレータ1611から入力されたビート光信号がSi−APD121の入力で円偏光になるよう偏波を調整して光カプラ11に出力する。
【0112】
ここで、位相シフタ18の機能について説明する。図3(a)において、ポイントA,B,Cにおいて時間的変調を加えた場合の時間経路例を基に考える。同期光信号発生装置2において、電気ミキサ13に入力されるLO信号は、電気経路の長さに因り、cos(ωt+φ)と記述できる。また、ポイントA,B,Cの信号は、順に、cos(ωt+π)、cos(2ωt+π)、cosωtと記述できる。電気ミキサ13は乗算をする。このため、ポイントA,B,Cの信号は、順に、次式(13)〜(15)で記述される。
【数7】

【0113】
ポイントA,Cにおいて、ループフィルタ20で抽出されるDC成分(低周波成分)は、式(13),(15)の各第1項である。式(14)により、ポイントBでは、φに関わらずDC成分が常にゼロとなる。ポイントA,Cでは、DC成分がφの値により増減し、且つ正負が反転する。同期動作を実現するには、非同期であるがOPLLの出力周波数と参照光信号のビットレートとがほとんど同じ状態で、位相誤差信号振幅が最大値になるように、位相シフタ18によりφを調整する。但し、局所発振部15からLN位相変調器1613へと、局所発振部15から電気ミキサ13へと、の導線の長さを変調波長の波長の1/5以下の誤差で同一にした場合は位相シフタ18が無くとも、ある程度の振幅の位相誤差信号が得られる。
【0114】
以上、本実施例によれば、上記実施の形態と同様に、入力光信号の偏波に依存しない同期ビート光信号を発生できる。また、第1の時間的変調方法を行うので、ビート光信号の時間的変調を容易に行うことができる。また、時間的変調部161により、波長λ1、λ2の光信号がAWG1612を2回通る。このため、帰還するビート光信号の光SNRを高くできる。さらに、既製の光学部品を用いて装置構成を容易に実現できる。
【0115】
また、局所発振部15の変調信号の位相を、位相誤差信号振幅が最大となる量シフトする位相シフタ18を備える。このため、位相誤差信号の振幅を最大にできる。これにより、位相誤差信号のSNRを高くでき、タイミングジッタを小さくできる。
【実施例2】
【0116】
図12を参照して、上記実施の形態の具体的な一実施例としての実施例2を説明する。図12に、本実施例の同期光信号発生装置3の構成を示す。但し、上記実施の形態及び実施例で説明した構成と同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0117】
本実施例の同期光信号発生装置3は、第1の時間的変調方法によりビート光信号に時間的変調をかけるとともに、参照光信号に同期した同期ビート光信号を出力する装置である。図12に示すように、同期光信号発生装置3は、ハーフミラー111と、レンズ112と、Si−APD121と、TIA19と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、OVCO302と、偏波保持部としてのPMF(Polarization Maintaining Fiber:偏波保持ファイバ)45,46と、局所発振部15と、位相シフタ18と、時間的変調部162と、1/4波長板172と、を備えて構成される。
【0118】
OVCO302は、VCO31と、二倍周波数発生器311,312と、RFアンプ32と、DFB−LD331と、偏波保持部としてのPMF41〜44と、LN位相変調器332と、偏波保持部としてのPBS(Polarized Beam Splitter:偏光ビームスプリッタ)343と、AWG342と、FRM351,352と、偏波保持部としてのPM(Polarization Maintaining:偏波保持)−EDFA362と、光カプラ37と、を備えて構成される。時間的変調部162は、偏波保持部としてのPBS1617と、AWG1612と、LN位相変調器1613と、FRM1614と、VOA1615と、FRM1616と、を備えて構成される。PBS343,1617は、PBC(Polarized Beam Combiner:偏波合成器)でもよい。
【0119】
ハーフミラー111、レンズ112、Si−APD121及び1/4波長板172により、空間光学系Fが構成されている。空間光学系Fでは、光学素子同士が光ファイバでなく空間を介するよう構成され、空間中では偏波が変化しない。ハーフミラー111は、参照光信号を透過するとともに、1/4波長板172から出射される円偏光のビート光信号を反射し、参照光信号と同じ方向(レンズ112)に出射する。レンズ112は、ハーフミラー111から出射された光信号をSi−APD121の表面に集光する。Si−APD121は、入射された光信号の位相比較信号を発生して出力する。
【0120】
OVCO302において、DFB−LD331とLN位相変調器332との間がPMF41を介して接続され、LN位相変調器332とPBS332との間がPMF42を介して接続され、PBS332とPM−EDFA362との間がPMF43を介して接続され、PM−EDFA362と光カプラ37との間がPMF44を介して接続される。PMF41〜44を通過する光信号は、偏波が保持される。DFB―LD331から出力される直線偏光のCW光は、PMF41を介してLN位相変調器332に入力され、LN位相変調器332により直線偏光の光コム信号に変換されて出力される。PBS343は、LN位相変調器332からPMF42を介して入力される直線偏光の光コム信号を反射してAWG342に出力するとともに、AWG342から入力される直線偏光の波長λ1,λ2のビート光信号をPMF43を介してPM−EDFA362に出力する。PM−EDFA362は、PBS343から入力される直線偏光のビート光信号の偏波を保持し増幅して出力する。
【0121】
PM−EDFA362から出力された直線偏光のビート光信号は、PMF44を介して光カプラ37により分波され、外部に出力されるとともに、PMF45を介して時間的変調部162のPBS1617に出力される。PBS1617は、PMF45を介して入力された直線偏光のビート光信号を反射してAWG1612に出力するとともに、AWG1612から入力される直線偏光のビート光信号を、時間的変調されたビート光信号としてPMF46を介して1/4波長板172に出力する。1/4波長板172は、直線偏光を円偏光に変換する機能を有する。このため、1/4波長板172は、PMF46を介して入力された直線偏光のビート光信号を円偏光に変換してハーフミラー111に出力する。
【0122】
以上、本実施例によれば、上記実施の形態と同様に、入力光信号の偏波に依存しない同期ビート光信号を発生できる。また、第1の時間的変調方法を行うので、ビート光信号の時間的変調を容易に行うことができる。さらに、円偏光調整部17に1/4波長板172を用いるので、PC171のような偏波の調整を不要にできる。
【0123】
また、実施例1と同様に、時間的変調部162により、波長λ1、λ2の光信号がAWG1612を2回通る。このため、帰還するビート光信号の光SNRを高くできる。さらに、位相シフタ18により、位相誤差信号の振幅を最大にでき、位相誤差信号のSNRを高くでき、タイミングジッタを小さくできる。
【実施例3】
【0124】
図13を参照して、上記実施の形態の具体的な一実施例としての実施例3を説明する。図13に、本実施例の同期光信号発生装置4の構成を示す。但し、上記実施の形態及び実施例で説明した構成と同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
本実施例の同期光信号発生装置4は、第1の時間的変調方法によりビート光信号に時間的変調をかけるとともに、参照光信号に同期した同期ビート光信号を出力する装置である。図13に示すように、同期光信号発生装置4は、光カプラ11と、Si−APD121と、TIA19と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、OVCO303と、局所発振部15と、位相シフタ181と、時間的変調部163と、PC171と、を備えて構成される。
【0126】
OVCO303は、VCO31と、RFアンプ32と、DFB−LD331と、LN位相変調器332と、AWG342と、光カプラ344,345と、PC353と、光カプラ354と、を備えて構成される。時間的変調部163は、LN位相変調器1613と、PC1618と、光カプラ1619と、EDFA1620と、を備えて構成される。
【0127】
同期光信号発生装置4において、位相シフタ181は、局所発振部15から入力される変調信号を、位相誤差信号振幅が最大になるような位相量シフトして出力する。電気ミキサ13は、TIA19からの時間的に調整され増幅された位相比較信号と、局所発振部15から出力されて位相シフタ181により位相シフトされた変調信号と、が入力されて、それら2つの信号を乗算して位相比較信号の微分値信号を生成し位相誤差信号として出力する。
【0128】
OVCO303において、LN位相変調器332から出力される光コム信号は、AWG342に入力される。AWG342は、LN位相変調器332から入力される光コム信号から波長λ1,λ2の線スペクトルの光信号を出力する。AWG342から出力された波長λ1の光信号は、光カプラ344により分波され、光カプラ354に出力されるとともに、時間的変調部163のLN位相変調器1613に出力される。AWG342から出力された波長λ2の光信号は、光カプラ345により分波され、PC353を介して光カプラ354に出力されるとともに、時間的変調部163のPC1618に出力される。PC353は、AWG342から入力された波長λ2の光信号の偏波を、光カプラ354に入力される波長λ1の光信号の偏波に調整して出力する。光カプラ344から出力された波長λ1の光信号と、PC353から出力された波長λ2の光信号とは、光カプラ354により合波され、ビート光信号として外部に出力される。
【0129】
時間的変調部163において、LN位相変調器1613は、局所発振部15から出力されてRFアンプ151により増幅された変調信号の電圧に応じて、光カプラ343から入力される波長λ1の光信号の位相を変調して光カプラ1619に出力する。PC1618は、光カプラ344から入力される波長λ2の光信号の偏波を、光カプラ1619に入力される波長λ2の光信号の偏波に調整して出力する。LN位相変調器1613から出力される波長λ1の光信号と、PC1618から出力される波長λ2の光信号とは、光カプラ1619により合波されてEDFA1620により増幅され、時間的変調されたビート光信号としてPC171に出力される。
【0130】
以上、本実施例によれば、上記実施の形態と同様に、入力光信号の偏波に依存しない同期ビート光信号を発生できる。また、第1の時間的変調方法を行うので、ビート光信号の時間的変調を容易に行うことができる。また、OVCO303と時間的変調部163とで、波長λ1,λ2の波長の選択部分(2モード選択部34)が共通であり、装置構成を簡単にできる。特に、同期光信号発生装置2,3に比べて、AWGが1つで済み、製造コストを低減できる。
【0131】
また、実施例1と同様に、位相シフタ181により、位相誤差信号の振幅を最大にでき、位相誤差信号のSNRを高くでき、タイミングジッタを小さくできる。
【実施例4】
【0132】
図14を参照して、上記実施の形態の具体的な一実施例としての実施例4を説明する。図14に、本実施例の同期光信号発生装置5の構成を示す。但し、上記実施の形態及び実施例で説明した構成と同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
本実施例の同期光信号発生装置5は、第1の時間的変調方法によりビート光信号に時間的変調をかけるとともに、参照光信号に同期した同期ビート光信号を出力する装置である。図14に示すように、同期光信号発生装置5は、光カプラ11と、Si−APD121と、TIA19と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、OVCO301と、局所発振部15と、位相シフタ18と、時間的変調部としてのLN位相変調器164と、PC171と、を備えて構成される。
【0134】
LN位相変調器164は、位相シフタ18から入力される変調信号の電圧に応じて、OVCO301の光カプラ37から入力されるビート光信号を位相変調し、時間的変調されたビート光信号としてPC17に出力する。
【0135】
以上、本実施例によれば、上記実施の形態と同様に、入力光信号の偏波に依存しない同期ビート光信号を発生できる。また、第2の時間的変調方法を行うので、ビート光信号の時間的変調を行うことができるとともに、装置構成を簡単にできる。特に、同期光信号発生装置2,3に比べて、AWGが1つで済み、製造コストを低減できる。
【0136】
また、実施例1と同様に、位相シフタ18により、位相誤差信号の振幅を最大にでき、位相誤差信号のSNRを高くでき、タイミングジッタを小さくできる。
【実施例5】
【0137】
図15を参照して、上記実施の形態の具体的な一実施例としての実施例5を説明する。図15に、本実施例の同期光信号発生装置6の構成を示す。但し、上記実施の形態及び実施例で説明した構成と同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0138】
本実施例の同期光信号発生装置6は、第1の時間的変調方法によりビート光信号に時間的変調をかけるとともに、参照光信号に同期した同期ビート光信号を出力する装置である。図15に示すように、同期光信号発生装置6は、光カプラ11と、Si−APD121と、TIA19と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、OVCO304と、局所発振部15と、位相シフタ18と、PC171と、を備えて構成される。
【0139】
OVCO304は、VCO31と、二倍周波数発生器311,312と、RFアンプ32と、DFB−LD331と、LN位相変調器332と、時間的変調部161と、EDFA361と、光カプラ37と、を備えて構成される。LN位相変調器332から出力された光コム信号は、時間的変調部161のサーキュレータ1611を介してAWG1612に出力される。また、AWG1612から出力されるLN位相変調器332から出力された時間的変調されたビート光信号は、EDFA361により増幅され、光カプラ37により分波され、外部とPC171とに出力される。
【0140】
つまり、同期光信号発生装置6から外部に出力されるビート光信号は、時間的変調されたビート光信号となる。このため、外部のビート光信号を用いるアプリケーション等が、時間的変調されたビート光信号を許容する場合に、同期光信号発生装置6が適用可能となる。
【0141】
以上、本実施例によれば、上記実施の形態と同様に、入力光信号の偏波に依存しない同期ビート光信号を発生できる。また、第1の時間的変調方法を行うので、ビート光信号の時間的変調を容易に行うことができる。さらに、OVCO304が時間的変調部161を含むので、装置構成を簡単にできる。特に、同期光信号発生装置2,3に比べて、AWGが1つで済み、製造コストを低減できる。
【0142】
また、実施例1と同様に、時間的変調部161により、波長λ1、λ2の光信号がAWG1612を2回通る。このため、帰還するビート光信号の光SNRを高くできる。さらに、位相シフタ18により、位相誤差信号の振幅を最大にでき、位相誤差信号のSNRを高くでき、タイミングジッタを小さくできる。
【実施例6】
【0143】
図16を参照して、上記実施の形態の具体的な一実施例としての実施例6を説明する。図16に、本実施例の同期光信号発生装置7の構成を示す。但し、上記実施の形態及び実施例で説明した構成と同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0144】
本実施例の同期光信号発生装置7は、第1の時間的変調方法によりビート光信号に時間的変調をかけ、参照光信号に同期した同期ビート光信号を出力する装置である。図16に示すように、同期光信号発生装置7は、光カプラ11と、Si−APD121と、TIA19と、電気ミキサ13と、ループフィルタ20と、OVCO305と、局所発振部15と、位相シフタ18と、時間的変調部161と、PC171と、を備えて構成される。
【0145】
OVCO305は、VCO31と、二倍周波数発生器311,312と、RFアンプ32と、DFB−LD331と、LN位相変調器332と、ファブリペローエタロン346と、EDFA361と、光カプラ37と、を備えて構成される。
【0146】
ファブリペローエタロンは、ファブリペロー干渉系のうち、干渉間距離が固定されている光学素子であり、入力光のうち、特定の波長が強められて出力される。ファブリペローエタロンが透過する特定の波長の間隔は、FSR(Free Spectral Range)として設定されている。また、ファブリペローエタロンは、出力光の波長精度を保つため、温度調整が必要となる。
【0147】
ファブリペローエタロン346は、例えば、FSRが160[GHz]に設定されているものとする。ファブリペローエタロン346は、LN位相変調器332から出力された光コム信号が入力され、その光コム信号からFSRに対応する波長(λ1,λ2)の光信号を透過し(例えば160[GHz]の)ビート光信号としてEDFA361に出力する。
【0148】
以上、本実施例によれば、上記実施の形態と同様に、入力光信号の偏波に依存しない同期ビート光信号を発生できる。また、第1の時間的変調方法を行うので、ビート光信号の時間的変調を容易に行うことができる。さらに、OVCO304にAWGを用いることなくファブリペローエタロン346を用いて構成するので、装置構成を簡単にできる。特に、同期光信号発生装置2,3に比べて、AWGが1つで済み、製造コストを低減できる。
【0149】
また、実施例1と同様に、時間的変調部161により、波長λ1、λ2の光信号がAWG1612を2回通る。このため、帰還するビート光信号の光SNRを高くできる。さらに、位相シフタ18により、位相誤差信号の振幅を最大にでき、位相誤差信号のSNRを高くでき、タイミングジッタを小さくできる。
【0150】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る同期光信号発生装置、時間的変調装置、同期光信号発生方法及び時間的変調方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【0151】
例えば、上記実施の形態、各実施例及び以下に述べる構成の一部又は全部のうち、少なくとも2つの構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【0152】
また、上記実施の形態、各実施例では、OVCOとして、光コム発生部、2モード選択部、2モード合波部により、線幅の狭いビート光信号を発生する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、従来の同期光信号発生装置7のように、LDを用いたOVCO等、他のOVCOを用いる構成としてもよい。
【0153】
また、上記実施の形態、各実施例では、位相比較部12として、非線形効果として二光子吸収を利用したSi−APD121を用いる構成としたが、これに限定されるものではなく、他の非線形効果を利用したものとしてもよい。例えば、光ファイバ中の四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)を利用する位相比較部を用いてもよい。FWMを利用する位相比較部は、FWMによって新しく生じたFWM光を光フィルタを用いて抜き出し、フォトダイオードで電流に変換し位相比較信号として出力する。FWMを利用する位相比較部は、例えば、HNLF(Highly Nonlinear Fiber:高非線形ファイバ)等の非線形媒質や、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等を用いる。
【0154】
また、位相比較部としては、光ファイバ中の相互位相変調(XPM:Cross Phase Modulation)を利用する位相比較部を用いてもよい。XPMを利用する位相比較部は、XPMによって光信号の波長が移動し、移動した波長を持つXPM光を光フィルタで抜き出しフォトダイオードで電流に変換し位相比較信号として出力する。
【0155】
また、非線形光学結晶における第二次高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)を利用する位相比較部を用いてもよい。SHGを利用する位相比較部は、SHG光を光フィルタで抜き出しフォトダイオードで電流に変換し位相比較信号として出力する。
【0156】
また、擬似位相整合(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)におけるSHGを利用する位相比較部を用いてもよい。PPLNにおけるSHGを利用する位相比較部は、SHG光を光フィルタで抜き出しフォトダイオードで電流に変換し位相比較信号として出力する。他にも、位相比較部として、PMT(Photo Multiplier Tube:光電子倍増管)を利用したもの、カー効果を利用したもの等としてもよい。
【0157】
また、上記実施の形態及び各実施例で説明した同期光信号発生装置の各構成要素の細部構成、及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明に係る実施の形態の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図2】時間的変調がなされた信号の波形を示す図である。
【図3】(a)は、時間差τに対するTPA信号の一例と時間的変調するポイントA,B,Cとを示す図である。(b)は、(a)のTPA信号の微分値信号を示す図である。
【図4】(a)は、図3(a)のポイントA,B,Cにおける時間的変調後のTPA信号の波形を示す図である。(b)は、局所発振部15のLO信号と図3(a)のポイントA,B,Cにおける復調信号との波形を示す図である。
【図5】電気ミキサの出力信号の周波数分布を示す図である。
【図6】第1の時間的変調方法による位相変調部を用いた装置構成を示す図である。
【図7】位相変調部に加えた電圧に対するビート光信号の強度時間波形を示す図である。
【図8】時間的変調部の構成を示す図である。
【図9】第2の時間的変調方法による装置構成を示す図である。
【図10】位相変調器に加えた電圧に対するビート光信号の強度時間波形を示す図である。
【図11】本発明に係る実施例1の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図12】本発明に係る実施例2の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図13】本発明に係る実施例3の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図14】本発明に係る実施例4の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図15】本発明に係る実施例5の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図16】本発明に係る実施例6の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図17】従来の第1の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図18】(a)は、ビート光信号と参照光信号との波形及び時間差τを示す図である。(b)は、時間差τに対する位相誤差信号I(τ)を示す図である。
【図19】従来の第2の同期光信号発生装置の構成を示す図である。
【図20】従来の同期電気信号発生装置の構成を示す図である。
【図21】(a)は、時間差τに対するTPA信号の関係を示す図である。(b)は、時間tに対するTPA信号の関係を示す図である。
【図22】(a)は、時間差τに対する、少なくとも一方が直線偏光の2つの光信号を合波した場合のTPA信号を示す図である。(b)は、時間差τに対する、少なくとも一方が円偏光の光信号を合波した場合のTPA信号を示す図である。
【図23】(a)は、時間tに対するエンベロープg(t)の波形を示す図である。(b)は、時間差τに対するTPA信号I(τ)の波形を示す図である。
【符号の説明】
【0159】
1,2,3,4,5,6,7,8,9 同期光信号発生装置
10 同期電気信号発生装置
11 光カプラ
F 空間光学系
111 ハーフミラー
112 レンズ
12 位相比較部
121 Si−APD
15 局所発振部
151,152 RFアンプ
16 時間的変調部
16A,16B 位相変調部
160 光カプラ
161,162,163 時間的変調部
1611 サーキュレータ
1612 AWG
1613 LN位相変調器
1614,1616 FRM
1615 VOA
1617 PBS
1618 PC
1619 光カプラ
1620 EDFA
164 LN位相変調器
17 円偏光調整部
171 PC
172 1/4波長板
18 位相シフタ
19 TIA
20 ループフィルタ
30,301,302,303,304,305 OVCO
31 VCO
311,312 二倍周波数発生器
32 RFアンプ
33 光コム発生部
331 DFB−LD
332 LN位相変調器
34 2モード選択部
341 サーキュレータ
342 AWG
343 PBS
344,345 光カプラ
346 ファブリペローエタロン
35 2モード合波部
351,352 FRM
353 PC
354 光カプラ
361 EDFA
362 PM−EDFA
37 光カプラ
41,52,53,44,45,46 PMF
81 光カプラ
82 Si−APD
83 ループフィルタ
84 OVCO
841,842 LD
843 光カプラ
101 光カプラ
102 EDFA
103 Si−APD
104 ループフィルタ
105 VCO
106 RFアンプ
107 モードロックレーザ
108 PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の変調信号を発生する局所発振部と、
参照光信号と時間的変調された円偏光のビート光信号とを合波する合波部と、
非線形効果により、前記合波された参照光信号及びビート光信号の位相を比較し位相比較信号を生成する位相比較部と、
前記位相比較信号及び前記変調信号を乗算して当該位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として出力する電気ミキサと、
前記位相誤差信号を整形する整形部と、
前記整形された位相誤差信号に基づいて、当該位相誤差信号を0にするビート光信号を発生して出力するビート光信号発生部と、
前記ビート光信号発生部により発生されたビート光信号を、前記変調信号に基づいて時間的変調する時間的変調部と、
前記時間的変調されたビート光信号を円偏光にして前記合波部に出力する円偏光調整部と、を備える同期光信号発生装置。
【請求項2】
前記円偏光調整部は、偏波コントローラである請求項1に記載の同期光信号発生装置。
【請求項3】
前記合波部は、ハーフミラーであり、
前記円偏光調整部は、1/4波長板であり、
前記1/4波長板から前記位相比較部までの光路が空間光学系により構成され、
前記ビート光信号発生部から前記1/4波長板までの光路を通る光信号の偏波を直線偏光に保持する偏波保持部を備える請求項1又は2に記載の同期光信号発生装置。
【請求項4】
前記時間的変調部は、前記ビート光信号を構成する一方の波長の光信号を位相変調する位相変調部を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の同期光信号発生装置。
【請求項5】
前記時間的変調部は、
前記ビート光信号を構成する第1及び第2の波長の光信号を抽出するアレイ導波路回析格子と、
前記第2の波長の光信号及び位相変調された第1の波長の光信号を反射するファラデーローテータミラーと、を備え、
前記位相変調部は、前記アレイ導波路回析格子から出力される前記第1の波長の光信号を位相変調し、
前記アレイ導波路回析格子は、前記ファラデーローテータミラーにより反射された、前記第2の波長の光信号及び前記位相変調された第1の波長の光信号を合波しビート光信号として出力する請求項4に記載の同期光信号発生装置。
【請求項6】
前記ビート光信号発生部は、
前記位相誤差信号に応じた周波数間隔の光コム信号を発生する光コム発生部と、
前記発生された光コム信号から第1及び第2の波長の線スペクトルの光信号を選択して抽出する2モード選択部と、
前記抽出された第1及び第2の波長の光信号を合波してビート光信号を発生して出力する2モード合波部と、を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の同期光信号発生装置。
【請求項7】
前記2モード選択部及び前記2モード合波部は、ファブリペローエタロンにより構成される請求項6に記載の同期光信号発生装置。
【請求項8】
前記時間的変調部は、前記2モード選択部により選択された第1の波長の光信号を時間的変調し、当該時間的変調した第1の波長の光信号と前記第2の波長の光信号とを合波して出力する請求項6に記載の同期光信号発生装置。
【請求項9】
前記2モード選択部及び前記2モード合波部は、前記時間的変調部を含み、当該時間的変調部により時間的変調されたビート光信号を発生して出力する請求項6に記載の同期光信号発生装置。
【請求項10】
前記時間的変調部は、前記ビート光信号を位相変調する位相変調部を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の同期光信号発生装置。
【請求項11】
前記局所発振部からの変調信号の位相をシフトして、前記電気ミキサ又は前記時間的変調部に出力する位相シフタを備える請求項1から10のいずれか一項に記載の同期光信号発生装置。
【請求項12】
第1及び第2の波長の光信号から構成されるビート光信号の前記第1の波長の光信号を位相変調する位相変調部と、
前記位相変調された第1の波長の光信号と前記第2の波長の光信号とを合波してビート光信号として出力する合波部と、を備える時間的変調装置。
【請求項13】
参照光信号と時間的変調された円偏光のビート光信号とを合波する工程と、
非線形効果により、前記合波された参照光信号及びビート光信号の位相を比較して位相比較信号を生成する工程と、
前記位相比較信号と、所定周波数の変調信号を乗算して当該位相比較信号の微分値信号を位相誤差信号として出力する工程と、
前記位相誤差信号を整形する工程と、
前記整形された位相誤差信号の微分値信号に基づいて、当該微分値信号を0にするビート光信号を発生して出力する工程と、
前記発生されたビート光信号を、前記変調信号に基づいて時間的変調する工程と、
前記時間的変調されたビート光信号を円偏光にして前記合波に用いる時間的変調された円偏光のビート光信号として出力する工程と、を含む同期光信号発生方法。
【請求項14】
第1及び第2の波長の光信号から構成されるビート光信号の前記第1の波長の光信号を位相変調する工程と、
前記位相変調された第1の波長の光信号と前記第2の波長の光信号とを合波してビート光信号として出力する工程と、を含む時間的変調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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