説明

同期機

永久磁石同期機(51)が固定子(53)と回転子(55)とを有し、固定子(53)は好ましくは三相巻線を有し、回転子(55)は永久磁石(57)を有する。固定子(53)は21のスロット(1乃至21)を有し、回転子(55)は4つの磁極(39)を有する。固定子(53)のスロットは、第1高調波が巻線パターンによって抑制され、第2高調波が磁石配置によって抑制されるように巻装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石同期機と高調波抑制方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石によって回転子を励磁する永久磁石同期機は電気励磁同期機に比べてさまざまな利点を有する。例えば、永久磁石同期機では回転子が電気接続部を必要としない。高いエネルギー密度を有する、すなわち磁束密度と磁界強度との積が大きい永久磁石は、エネルギーの弱い永久磁石を凌駕することが実証される。さらに、永久磁石はエアギャップに対して扁平な配置を有することができるだけでなく、一種の集中的な構成(磁束集中形)として配置することもできることが知られている。
【0003】
永久磁石同期機では不利な脈動トルクが現れることがある。従来の電動機について欧州特許第0545060号明細書に述べられたように永久磁石同期機の回転子または固定子を例えば1スロットピッチだけスキューするとトルクの低減をもたらすことができる。従来の巻線、すなわちプルイン技術で製造される巻線を有する永久磁石同期機では一般に、脈動トルクをも生じるコギングトルクを低減させるために1スロットピッチのスキューが行われる。
【0004】
歯巻回コイルを有する永久磁石同期機では例えば、磁石の特別な形状加工によって脈動トルクを低減させることが可能である。その際欠点として、磁石の特殊な形状加工は製造費を高める。
【0005】
三相永久磁石同期機の固定子巻線とこの同期機の回転子構成とに依存してこの同期機はEMF高調波も有する。このEMF高調波は固定子と回転子との間のエアギャップ内の磁界強度分布に関係している。EMF高調波は脈動トルクを引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、簡単なやり方で脈動トルクもしくはコギングトルクを低減させる永久磁石同期機を明示することである。この低減は例えば永久磁石のスキューを利用することなく行われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提起された課題の解決は請求項1による特徴を有する方法においてなされる。他の解決は請求項3の特徴を有する永久磁石同期機において得られる。従属請求項2、4乃至6は本発明の他の有利な諸展開を開示している。
【0008】
永久磁石同期機において高調波を抑制するための方法において、高調波は永久磁石同期機の回転子永久磁石の巻線パターンと磁石配置とによって低減される。この永久磁石同期機は固定子と回転子とを有し、固定子は有利には三相巻線を有し、回転子は永久磁石を有する。この巻線パターンは第1高調波を低減させるのに利用され、磁石配置は第2高調波を低減させるのに利用される。磁石配置は例えば永久磁石の形状、および/または永久磁石の位置決め(例えば永久磁石のスキュー)、および/または磁性材料、つまり永久磁石による回転子の被覆度に関係している。
【0009】
このような方法のために、相応する永久磁石同期機を構成することが可能である。
【0010】
本発明に係る課題をも解決する永久磁石同期機は固定子と回転子とを有する。固定子は三相巻線を有し、回転子は永久磁石を有する。さらに、固定子が21の歯を有し、回転子が4つの磁極を有する。
【0011】
上記実施形態によって、永久磁石同期機が有利なことに高い利用率と高い力率とを有することが可能となる。これが該当するのは、特に、永久磁石同期機が図2による巻線パターンを有する場合である。つまり本発明に係る永久磁石同期機によって、固定子のスロット数と回転子の特定極数との特定組合せでもって、コギングトルクを低減することが可能である。コギングトルクを小さくすることは特に巻線コンセプトから得られる。回転子の極数(=磁極数)は有効極数を示す。本発明によれば有効極数は4である。
【0012】
さらに、コギングトルク低減のための固定子および/または回転子におけるスキューおよび/または梯形配列(梯形スキュー)は本発明に係る同期機では省くことができる。というのも、既にその構造によってトルクリプル低減が達成可能であるからである。スキューおよび/または梯形配列を省くことができることで永久磁石同期機の製造コストが低減する。
【0013】
固定子巻線の通電によってエアギャップ磁界のスペクトルが生成可能である。エアギャップ磁界のこのスペクトルを検討すると、360度の周面にわたって高調波磁界と基本磁界を区別することができる。
【0014】
基本極対数pgは本発明に係る永久磁石同期機ではpg=1である。基本極対数pgは以下の如く定義されている:pgは、エアギャップ磁界のフーリエ解析から得られる最少極対数である。有効極対数pnは回転子の極対数から得られ、従って、回転子が2つの磁極対を有するので2である。
【0015】
そのことから、永久磁石同期機に関して第2高調波の利用が得られる。電気機械エアギャップ内の磁界強度分布の基本波と高調波は例えばフーリエ解析によって突き止めることができる。
【0016】
有利な1構成において固定子の巻線は、特に第5高調波(5pn)、第7高調波(7pn)等の障害となる高調波が小さな振幅を有するように実施されている。第5、第7高調波が不利であるのは、特に、それらが逆向きの回転方向を有し、回転子回転数に伴って第6高調波でのトルク変動をそれぞれもたらすからである。
【0017】
回転子磁界の第5、第7高調波は回転子周波数に伴って回転する。固定子磁界5pnは回転子の回転とは逆方向に回転子周波数の1/5で回転し、固定子磁界7pnは回転子の回転方向に回転子周波数の1/7で回転する。5pn、7pnの固定子磁界および回転子磁界は回転子の回転ごとに6pn回遭遇し、回転子の回転ごとに6pnのトルクリプルを生成する。
【0018】
第5、第7高調波を低減させるために従来は、18のスロットを有する特に同期機の場合巻線の短節巻も行われた。巻線の短節巻もコスト高となるが、本発明に係る永久磁石同期機ではこれを避けることができる。
【0019】
永久磁石同期機の他の有利な1構成においてその固定子が21のスロットを有し、3つのスロットは巻装されていない。永久磁石同期機の有利な1構成において3つの非巻装スロットは永久磁石同期機の冷却に利用される。スロットを通して例えば冷却媒体が誘導可能である。このため1実施例においてスロット内に付加的冷却通路も設けられている。冷却媒体は気体または液体のいずれかである。非巻装スロットは例えばヒートパイプまたはクールジェットの採用を予定することもでき、もしくはこれらのスロットが相応する冷却機構を有する。有利には、3つのスロットは固定子内に対称に配設されている。
【0020】
本発明に係る永久磁石同期機の他の実施形態は、回転子が磁性材料で実質的に75%乃至85%被覆されるように構成されている。磁性材料は実質的に永久磁石である。つまり回転子は、磁性材料での被覆が極ピッチの75%乃至85%であるように構成されている。
【0021】
永久磁石同期機の他の実施において固定子の巻線パターンは、第7高調波がほぼゼロとなり、つまり強く低減されているように構成されている。このような巻線パターンにおいて固定子は21のスロットを有し、それらが符号1乃至21とされている。スロットは三相通電のためU相、V相およびW相で巻回されている。巻回用コイルは第1巻回方向と第2巻回方向とを有し、
a)U相によってスロット1、6、7、11、12、17が充填されており、U相の第1コイルは第1巻回方向でスロット1、6内に構成され、U相の第2コイルは第2巻回方向でスロット7、11内に構成され、U相の第3コイルは第1巻回方向でスロット12、17内に構成されており、
b)V相によってスロット8、13、14、18、19、3が充填されており、V相の第1コイルは第1巻回方向でスロット8、13内に構成され、V相の第2コイルは第2巻回方向でスロット14、18内に構成され、V相の第3コイルは第1巻回方向でスロット19、3内に構成されており、
c)W相によってスロット15、20、21、4、5、10が充填されており、W相の第1コイルは第1巻回方向でスロット15、20内に構成され、W相の第2コイルは第2巻回方向でスロット21、4内に構成され、W相の第3コイルは第1巻回方向でスロット5、10内に構成されている。スロット2、9、16は巻線を充填されておらず−つまり非巻装であり−、例えば永久磁石同期機の冷却に利用することができる。
【0022】
回転子の永久磁石を、または固定子のスロットも、もはやスキューする必要がないことによって、さまざまな利点が得られる。例えば:
−スキュー係数による利用損失は生じない。
−高価なスキュー永久磁石は安価な直線的永久磁石に取替えることができる。
−従来技術により固定子のスロットをスキューさせねばならない場合でも、スロットの形成と巻装とのためにいまや一層安価および/または一層迅速な作製法を投入することができる。
−回転子への永久磁石装着および/または磁性原材料の磁化用の作製手段をスキューなしに簡素化することができる。
−作製は一層簡単に自動化することができる。
−固定子スロットの巻装は、3つのスロットが巻装されないので一層簡単である。
−非巻装スロット内にセンサ(例えば温度センサ)を設置することができ、これらのセンサで例えば温度を測定する。
【0023】
本発明に係る永久磁石同期機では、高調波特性をさらに向上しかつトルクリプルを付加的に改善するために、回転子永久磁石のスキューおよび/または固定子巻線のスキューおよび/または相応する梯形配列および/または巻線短節巻等の措置を付加的に実施することができる。これらの手段の付加的投入は、望ましくないその他の高調波がこれらの手段で低減できるように、永久磁石同期機の改善に利用することもできる。例えば、個々の措置はそれぞれ別の高調波を低減するのに利用することができ、高調波特性の向上をもたらすことができる。
【0024】
永久磁石同期機はさらに、q=7/4の孔数が存在するように構成することができる。孔数qは、1相の巻線が極当り幾つのスロットに分配されているのかを明示する。つまりqは極および相当りのスロット数である。まさに孔数のこの値は、極数とスロット数との最小公倍数がきわめて高くなるうえできわめて重要である。
【0025】
回転子永久磁石のコギングトルクを固定子歯で小さく抑えるために、スロット数と極数は最小公倍数が極力高くなるように選択しなければならない。これが達成されるのは、極対数(有効極対数)が素数であるときである。つまり有効極対数は1つの素数である。
【0026】
永久磁石同期機の他の1構成において永久磁石の縁領域が沈下されており、これにより永久磁石の縁に一層大きなエアギャップが生じる。
【0027】
本発明では、例えば極数の選択、スロット数の選択等の、共同でコギング(コギングトルク)を小さくする複数の措置を組合せ、第7高調波を抑制するのに特定の巻線パターンを応用するのが有利である。これに加えて、有利な磁石配置および/または磁石幅を選択することによって第5高調波を抑制することができる。第5高調波の抑制は、例えば80%の極被覆の他に、有利な磁石輪郭によっても達成される。磁石配置は特に回転子極の磁性材料による被覆に関係している。巻線パターンおよび/または磁石配置は、例示的に指摘したのとは別の高調波が抑制可能であるように変更しておくこともできる。
【0028】
本発明と本発明の有利な諸構成は図面を元に例示的に詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1が示す永久磁石同期機51は固定子53と回転子55を有する。回転子55が永久磁石57を有する。固定子がコイル59を有し、積層固定子53の内部でのコイル59の推移は一点鎖線で示してある。コイル59によって巻線が構成されている。コイル59がコイルエンド61を形成する。この永久磁石同期機51は軸63を駆動すべく設けられている。
【0030】
図2は、三相電流の3つの相U、V、Wで通電可能な永久磁石同期機の巻線パターンを示している。永久磁石同期機の固定子に関する巻線図は、21のスロットを有する固定子に関係している。21のスロットは符号1乃至21とされている。図2に示していない付属する回転子は4つの極(磁極)、つまり2つの極対を有する。図2の巻線図によれば固定子が9つのコイルを有し、図2によれば相U、V、Wがそれぞれ3つのコイルを有する。図2による巻線は中性点30を有する。スター結線が有利となるのは、特に、第3高調波が消去されていないときである。第3高調波が重要でない場合、巻線図はデルタ結線に変更しておくことができる。但しデルタ結線は図示されていない。スロット1乃至21の巻装によってコイルが形成される。コイルは異なる巻回方向44を有し、巻回方向44は矢印で示してある。図2には第1巻回方向41と第2巻回方向42が明示されている。
【0031】
U相ではスロット1、6、7、11、12、17が充填(巻装)されており、U相の第1コイルは第1巻回方向41でスロット1、6内に構成され、U相の第2コイルは第2巻回方向42でスロット7、11内に構成され、U相の第3コイルは第1巻回方向41でスロット12、17内に構成されている。
【0032】
V相ではスロット8、13、14、18、19、3が充填(巻装)されており、V相の第1コイルは第1巻回方向41でスロット8、13内に構成され、V相の第2コイルは第2巻回方向42でスロット14、18内に構成され、V相の第3コイルは第1巻回方向41でスロット19、3内に構成されている。
【0033】
W相ではスロット15、20、21、4、5、10が充填(巻装)されており、W相の第1コイルは第1巻回方向41でスロット15、20内に構成され、W相の第2コイルは第2巻回方向42でスロット21、4内に構成され、W相の第3コイルは第1巻回方向41でスロット5、10内に構成されている。
【0034】
スロット2、9、16は巻線を充填されていない。
【0035】
図3が示す固定子用積層板32は21のスロット1乃至21および同数の歯65とを有する。スロット2、9、16は冷却通路34を受容すべく設けられている。
【0036】
図4は回転子55を横断面図で示す。さらにこの図は極ピッチ38の磁石被覆36を示す。回転子55は4つの極39を有する。極39は永久磁石57によって形成されている。永久磁石57は支持体35上に被着されている。支持体は軸63上にある。図4において4つの極のそれぞれについて磁石被覆36は極ピッチの約80%である。
【0037】
図2乃至図4により構成される永久磁石同期機は特に以下の巻線係数を有する:
【0038】
【表1】

【0039】
その際、第1欄に極対数p、第2欄に巻線係数が示してある。巻線係数は以下の如く計算される:
【0040】
【数1】

【0041】
k+1は1つの相の巻装されたスロットの数を明示する。巻線係数は、ベクトル加算された相間電圧の合計と相間電圧値の合計との商である。
【0042】
ベクトルaiは相間電圧の電圧ベクトルの振幅を明示する。ベクトルΦiは電圧ベクトルの角度を明示し、ベクトルwiは、往路導体であるか復路導体であるのかを明示する。
【0043】
【数2】

【0044】
以下の関係が成り立つ:
K:=5
j:=√−1
p:=1..15
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】永久磁石同期機の略構造を示す。
【図2】巻線図である。
【図3】21のスロットを有し、3つのスロットが巻装されていない固定子用板片を示す。
【図4】極ピッチの磁石被覆を示す。
【符号の説明】
【0046】
1乃至21 スロット
30 スター結線
35 支持体
36 磁石被覆
38 極ピッチ
39 磁極
41 第1巻回方向
42 第2巻回方向
44 巻回方向
51 同期機
53 固定子
55 回転子
57 永久磁石
59 コイル
61 コイルエンド
63 軸
U、V、W 相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子(53)と回転子(55)とを有する永久磁石同期機(51)において高調波を抑制するための方法であって、固定子(53)が有利には三相巻線を有し、回転子(55)が永久磁石(57)を有するものにおいて、第1高調波が巻線パターンによって抑制され、第2高調波が磁石配置によって抑制され、磁石配置が特に磁石幅および/または極被覆とに関係していることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項3乃至6のいずれか1つに記載の永久磁石同期機が使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
固定子(53)と回転子(55)とを有する永久磁石同期機(51)であって、固定子(53)が有利には三相巻線を有し、回転子(55)が永久磁石(57)を有するものにおいて、固定子(53)が21のスロット(1乃至21)を有し、回転子(55)が4つの磁極(39)を有することを特徴とする永久磁石同期機(51)。
【請求項4】
固定子(53)が3つの非巻装スロット(2、9、16)を有することを特徴とする請求項3記載の永久磁石同期機(51)。
【請求項5】
回転子(55)が、磁性材料(57)により実質的に75%乃至85%被覆されていることを特徴とする請求項3または4記載の永久磁石同期機(51)。
【請求項6】
1乃至21のスロットを有する固定子(53)が相(U)、相(V)および相(W)用に三相に巻回されており、コイルが巻回用に第1巻回方向(41)と第2巻回方向(42)とを有し、
a)相(U)ではスロット(1、6、7、11、12、17)が充填されており、相(U)用第1コイルが第1巻回方向(41)でスロット(1、6)内に構成され、U相用第2コイルが第2巻回方向(42)でスロット(7、11)内に構成され、U相用第3コイルが第1巻回方向(41)でスロット(12、17)内に構成されており、
b)相(V)ではスロット(8、13、14、18、19、3)が充填されており、相(V)用第1コイルが第1巻回方向(41)でスロット(8、13)内に構成され、相(V)用第2コイルが第2巻回方向(42)でスロット(14、18)内に構成され、相(V)用第3コイルが第1巻回方向(41)でスロット(19、3)内に構成されており、
c)相(W)ではスロット(15、20、21、4、5、10)が充填されており、相(W)用第1コイルが第1巻回方向でスロット(15、20)内に構成され、相(W)用第2コイルが第2巻回方向(42)でスロット(21、4)内に構成され、相(W)用第3コイルが第1巻回方向(41)でスロット(5、10)内に構成されており、
スロット(2、9、16)が巻線を充填されていないことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1つに記載の永久磁石同期機(51)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−514166(P2008−514166A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530700(P2007−530700)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054350
【国際公開番号】WO2006/029967
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】