説明

同軸ケーブル及びその加工品

【課題】 確実に、しかも安価にケーブル表面に帯電した静電気を防止できる同軸ケーブル並びにその加工品を提供することにある。
【解決手段】内部導体(2)、ふっ素樹脂からなる誘電体層(3)、外部導体(4)、及び、被覆層(5)からなる同軸ケーブル(1)において、被覆層(5)に表面活性剤からなる帯電防止剤(6)が3%〜10%含有される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波測定器機器等などの用途に適した同軸ケーブル及びその加工品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波測定器機器間を同軸ケーブルで接続して使用した場合、測定器の移動に伴う同軸ケーブルの表面に帯電していた静電気が放電し、測定器の測定値に悪影響が生ずるという問題、あるいは、静電気の放電により測定器が故障するというより深刻な問題があった。
この問題を解決するため、同軸ケーブルの全長に渡って金属編組チューブを被覆し、除電する方法がある。
しかしながら、この方法は、金属編組チューブの内面が同軸ケーブルの全長に渡って外表面と接触していないと除電が確実にできないという問題があった。
また、測定器機器に使用する同軸ケーブルも外径が同じでなく、各種サイズの外径の同軸ケーブルが使用されているので、金属編組チューブのサイズも同軸ケーブルのサイズに合わせて用意する必要があり、コストアップを招くとともに、管理に工数が掛る問題もあった。
一方、絶縁電線の最外層に帯電防止剤を塗布した帯電防止層を設けた絶縁電線が知られている。(特許文献1)
しかしながら、この方法では、塗布した帯電防止剤が剥がれ除電効果が無くなるという耐久性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−182925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は従来の問題点を解消するとともに、耐久性があり、しかも確実で安価に静電気を防止できる同軸ケーブル並びにその加工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者によれば
内部導体、フッ素樹脂からなる誘電体層、外部導体、及び、被覆層からなる同軸ケーブルにおいて、該被覆層に表面活性剤からなる帯電防止剤が3%〜
10%の範囲で含有されていることを特徴とする同軸ケーブル並びにその加工品が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成を採る本発明によれば、以下のような顕著な作用・効果が奏される。
a.被覆層全体に帯電防止剤を含有したので均一に抵抗値を下げることができ、むらの無い確実な静電気の除電ができる。
b.被覆層のみに帯電防止剤を含有したので、コア層である誘電体層には影響を与えないので高周波特性、絶縁特性、加工特性には影響を与えない。
c.帯電防止剤が透明なので被覆層あるいは誘電体層の色目に影響を与えない。
d.使用する各種サイズの同軸ケーブルにも柔軟に対応できる。
e.金属編組チューブと比較し、柔軟性の確保、コストの低減が可能。
f.帯電防止剤は被覆層表面に塗布された状態でなく被覆層全体に均一に含有しているので塗布の場合のように表面から剥がれないので耐久性に優れている。
g. ケーブルの両端にコネクタを接続する加工品の場合においても、コネクタとの電気的な導通を取るための特段の加工が不要のため工数が削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の同軸ケーブルの一例を示す平面図である。
【図2】本発明の同軸ケーブル加工品の態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、本発明の同軸ケーブル(1)は中心導体(2)、誘電体層(3)、外部導体(4)及び、静電気を除去するための帯電防止剤(6)が含有されている被覆層(5)から構成されている。
図2は本発明の別態様である、同軸ケーブル加工品(7)であり、(1)〜(6)は図1、2と同様であり、(8)は同軸ケーブル(1)の両端に装着されたコネクタである。
【0009】
本発明で特徴的なことは、表面活性剤の帯電除去効果を利用し、被覆層に表面活性剤からなる帯電防止剤(6)を3%〜10%の範囲で含有させたことにある。
ここで、表面活性剤としては、アニオン系活性剤、カチオン系活性剤、ノニオン系活性等各種の活性剤があるが、これらの中でも、カチオン系表面活性剤が除電効果に優れているとともに、透明性も高いので好ましく、その中でもエステルを含むカチオン系表面活性剤がさらに好ましい。
こうすることにより、被覆層(5)全体に帯電防止剤を含有したので均一に抵抗値を下げることができ、むらの無い確実な静電気の除電ができる。
また、被覆層(5)のみに帯電防止剤(6)を含有したので、内層のコア層である誘電体層(3)の高周波特性、絶縁特性、成型性等の加工特性には影響を与えない。
さらに、カーボンや酸化チタンを帯電防止剤とした場合と異なり、帯電防止剤(6)が透明なので被覆層あるいは誘電体層の色目に影響を与えず、ケーブルの柔軟性も確保できる。
さらに、使用する各種サイズの同軸ケーブルにも柔軟に対応できるとともに、金属編組チューブと比較し、コストの低減が可能である。
また、ケーブルの両端にコネクタを接続する加工品の場合においても、コネクタとの電気的な導通を取るための特段の加工が不要のため工数が削減できる。
なお、帯電防止剤(6)を3%〜10%の範囲で含有させた理由は、あまり少ないと除電効果そのものが得られなく、逆に多過ぎると被覆層の引張特性等の機械的特性、押出特性等の加工特性が悪化するからである。
【0010】
被覆層(5)としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーンゴム等各種被覆材料が選択可能であるが、屈曲性、加工性帯電防止剤(6)の分散性を考慮するとポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が特に好ましい。
【0011】
次に、本発明で使用する同軸ケーブルのその余の構成について述べる。
同軸ケーブル(1)としては、外径が2.0mm〜8.0mmの細径化ないし極細化ケーブルが好ましく用いられる。このとき、中心導体(2)としては、通常、直径が0.15〜0.6mmのスズ入り銅合金、銀銅合金線、軟銅線等からなる導線の単線又はそれらを撚り合わせた、外径が0.45mm〜1.7mmの細線が好ましい。
【0012】
中心導体(2)を被覆する誘電体層(3)は、絶縁性を有する任意の合成樹脂、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂などで構成される。同軸ケーブルの信号伝送特性及びハンダ固定を行う際の耐熱性の点では、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂が好ましく用いられる。この誘電体層(3)は、その強度及び同軸ケーブルの外形寸法を考慮し、0.5mm〜1.5mmの厚さに調整すればよい。
【0013】
誘電体層(3)上に被覆されるシールド層としての外部導体(4)は、通常、スズ入り銅合金線、銀銅合金線や軟銅線などの横巻きや編組、縦添え等が用いられる。そのなかでも、銅箔巻きと編組の組合わせが特にシールド効果に優れ、好ましく用いられる。
構成する各素線の素線径は、シールド層の凹凸を少なくし、同時に、仕分け作業のし易さ及び機械的強度を考慮して、0.08mm〜0.2mmの範囲から適宜設定すればよい。
【0014】
以上、図1に示す、本願発明の長尺の同軸ケーブル(1)の構成について説明したが、次に、図2に基づき、本発明の別態様である同軸ケーブル加工品(7)について説明する。
加工品の場合には、上述した同軸ケーブル(1)は、その両端が端末加工された後、両端にコネクタ等の接続部材を接続する。コネクタ(8)としては、樹脂製、金属製等各種コネクタがあるが、除電性から導電樹脂性よりも抵抗値が低く導電性に優れた金属性コネクタが望ましい。
また、コネクタの種類では、SMA型、N型、BNC等各種仕様のコネクタが使用できる。
なお、金属性コネクタ(8)は同軸ケーブルの被覆層(5)表面となるべく全周に渡って電気的に導通していることが肝要である。
【0015】
「実施例」
直径0.32mmの銀メッキ銅被鋼線を7本撚り合わせてなる外径が0.96mmの中心導体(2)の外周に、厚さ1.01mmのPTFE樹脂を誘電体層(3)として被覆した。次いで、誘電体層(3)外周に、素線径が0.05mmの銀メッキ銅箔線を巻き、素線径が0.08mmの銀メッキ軟銅線を編組して外部導体(4)を形成し、更にその周りに被覆層(5)としてポリウレタン樹脂100部に対し、帯電防止剤(6)として、エステルを含むカチオン系表面活性剤を5%含有した樹脂を厚さ0.45mmに押出被覆して、外径4.47mmの図1に示す同軸ケーブル(1)を作成した。
次いで、この同軸ケーブル(1)を982mmに切断、端末加工して各端末に金属製コネクタ(8)をハンダ付けにより接続した。
この際、図2に示すように、同軸ケーブル(1)の片端に金属製コネクタ(8)としてSMA型コネクタ(オス)、他方の端部にN型コネクタ(オス)を接続した。
この結果、コネクタ(8)が装着された長さが1000mmの本発明の同軸ケーブル加工品(7)が得られた。
【0016】
上記にて作成した同軸ケーブル加工品(7)を市販の静電気測定装置及び表面抵抗計に接続し除電効果を検証した。
この結果を下記、表1に示す。
【表1】

ここでは、被覆層の帯電電圧値の許容値及び被覆層の表面抵抗値の許容値は以下とした。
帯電電圧値の許容値: 100V以下
表面抵抗値の許容値:1.0×10MΩ以下
また、同表中の◎、○、△、×は以下の状態を表している。
◎:被覆層の帯電電圧値、表面抵抗値ともに規定値を満足する最も好ましい状態
○:帯電電圧値、表面抵抗値共に規定値を満たす好ましい状態
△:帯電電圧値、表面抵抗値のいずれかが規定値を満たしていない状態
×:帯電電圧値、表面抵抗値共に規定値を満たしていない状態
表1に示すように、帯電防止剤が3%〜10%の範囲で含有されている場合には、十分な除電効果が得られていることが確認できる。
なお、上記では、同軸ケーブル(1)に装着するコネクタ(8)としてSMA型コネクタとN型コネクタの組み合わせで説明したが、両端ともSMA型コネクタや両端ともN型コネクタの組み合わせにおいても同様の結果が得られていることを付記しておく。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の同軸ケーブル及びその加工品は電気特性を計測する測定器と測定物を繋ぐ伝送ケーブル、計測器(電子機器)間を繋ぐ伝送ケーブルとして使用できるだけでなく、医療機器、電子機器にも応用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 同軸ケーブル
2 内部導体
3 誘電体層
4 外部導体
5 被覆層
6 帯電防止剤
7 同軸ケーブル加工品
8 コネクタ







【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体、ふっ素樹脂からなる誘電体、外部導体、及び、被覆層からなる同軸ケーブルにおいて、該被覆層に表面活性剤からなる帯電防止剤が3%〜10%の範囲で含有されていることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
該帯電防止剤がエステルを含むカチオン系表面活性剤である請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
該被覆層がポリウレタン又はポリ塩化ビニルである請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の同軸ケーブルの両端に該被覆層と電気的に導通している金属製コネクタが接続されている同軸ケーブル加工品。






【図1】
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【図2】
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